(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ファンが前記貯蔵室及び冷却フィンの間に配置され、前記貯蔵室外の気体として前記冷却フィンを通過した直後の気体が用いられることを特徴とする請求項3に記載の鮮度判定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の冷蔵庫では、ガスセンサからの電気信号の時間的変化に基づいて判定を行うため、ガスセンサを常にオンの状態にしておく必要がある。このため、時間の経過とともに、ガスセンサによるガス濃度測定の基準値がずれていくことは避けられず、鮮度の判定の精度が時間の経過とともに低下する問題が生じる。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記の課題を解決するものであり本発明は、測定に適合した基準値が設定されたセンサの信号に基づく正確な食品の鮮度判定が常に可能な鮮度判定装置及びこの鮮度判定装置を備えた冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
冷蔵庫の冷蔵室に備えられる貯蔵室の中の食品の鮮度を判定する鮮度判定装置であって、
鮮度判定の開始を示す信号を発信するスタートスイッチと、
前記貯蔵室の中に配置される感知部を有し、前記感知部に接する気体の所定のガス成分の濃度に対応した信号を発信するガスセンサと、
前記貯蔵室外の気体を前記感知部に供給する気体供給部と、
前記ガスセンサの信号に基づいて基準値を決定する基準値決定部と、
前記ガスセンサの信号に基づいて食品の鮮度を判定する判定部と、を備え、
前記スタートスイッチの信号を受信したとき、
前記気体供給部は、前記貯蔵室外の気体を前記感知部に供給し、
前記基準値決定部は、前記感知部に前記貯蔵室外の気体が接するときにおける前記ガスセンサの信号に基づいて基準値を決定し、
前記判定部は、前記基準値と、前記気体供給部による前記貯蔵室外の気体の供給停止後であって、前記感知部に前記貯蔵室内の気体が接するときにおける前記ガスセンサの信号に基づく値との差に基づいて、前記貯蔵室の中の食品の鮮度を判定することを特徴とする。
【0007】
ここで、感知部に供給する「貯蔵室外の気体」は、冷蔵室の中の気体である。気体は原則として空気であるが、酸素の濃度を低下させた空気や不活性ガスもあり得る。
本発明によれば、貯蔵室の中の食品の鮮度判定を開始するたびに、ガスセンサの基準値を決定するので、測定に適合した基準値が設定されたガスセンサの信号に基づく正確な食品の鮮度判定を常に行うことができる。
【0008】
また本発明は、
前記判定部の判定結果を表示する表示装置を更に備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、表示装置によって、食品の鮮度判定の結果を使用者に明確に知らせることができる。
【0010】
また本発明は、
前記気体供給部はファンを含み、
前記ファンにより流動した前記貯蔵室外の気体が、前記貯蔵室に設けられるスリットを通過して、前記感知部に達することを特徴とする。
【0011】
本発明では、ファンが貯蔵室の外側に配置される場合も、貯蔵室の中に配置される場合もあり得る。前者の場合には、ファンにより吐出された気体がスリットを通過して貯蔵室の中に送り込まれる。後者の場合には、ファンの吸引力により、貯蔵室の外の気体がスリットットを通過して貯蔵室の中に吸い込まれる。
【0012】
本発明によれば、ガスセンサの基準値を決定するため、ガスセンサを貯蔵室の中から外へ移動させる機構を備える必要がない。よって、シンプルな機構で、測定に適合した基準値の設定を実現できる。また、貯蔵室に設けられたスリットの開口面積は小さいので、気体供給部による貯蔵室外の気体の供給が停止している間は、貯蔵室の内部及び外部の間の気体の流れを最小限に抑えることができる。
【0013】
また本発明は、
前記ファンが前記貯蔵室及び冷却フィンの間に配置され、前記貯蔵室外の気体として前記冷却フィンを通過した直後の気体が用いられることを特徴とする。
【0014】
冷蔵室内を循環した気体が冷却フィンを通過するとき、気体中の食品が腐敗する過程で放出されるガス成分の一部は、凝縮温度以下に冷却されて凝縮する。また、水溶性のものは、冷却フィンに付着した水分に溶ける。これにより、腐敗する過程で放出されるガス成分の一部が冷却フィンに付着して除去される。
本発明によれば、冷却フィンを通過した直後の気体をガスセンサの感知部に供給するので、腐敗によるガス成分の少ない気体を用いてガスセンサの基準値設定を行うことができる。これにより、正確な食品の鮮度判定が可能となる。
【0015】
また本発明は、上記の何れかの鮮度判定装置を備えた冷蔵庫である。本発明によれば、上記の鮮度判定装置が奏する任意の作用効果を有する。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明においては、測定に適合した基準値が設定されたセンサの信号に基づく正確な食品の鮮度判定が常に可能な鮮度判定装置及びこの鮮度判定装置を備えた冷蔵庫を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫の説明)
図1は、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫を前側から見た側面図である。
図2は、
図1の矢印Aで示す貯蔵室の部分を拡大して示した斜視図である。はじめに、
図1及び
図2を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫2の概要を説明する。
【0019】
本実施形態に係る冷蔵庫2は、5個の収容室を有しており、
図1では、一番上の冷蔵室6は扉が取り除かれて、内部が視認可能な状態で示されている。取り除かれた扉4は、
図6に示されている。
図1において、冷蔵室6内の矢印Aで示す領域に、生鮮食料品、特に肉や魚を貯蔵するための貯蔵室8が備えられている。貯蔵室8には、
図2から明らかなように、上側の貯蔵室引出10及び下側の貯蔵室引出10’が備えられている。本実施形態に係る鮮度判定装置は、上側の貯蔵室引出10に貯蔵された生鮮食品の鮮度判定を行う。
冷蔵室6より下の他の収容室は、それぞれ冷蔵室、冷凍室、野菜室の機能を有するが、本実施形態に係る鮮度判定装置と関連しないので、更に詳細な説明は省略する。
【0020】
(本発明の1つの実施形態に係る鮮度判定装置の説明)
図3は、貯蔵室8の内部構造を示す図であって、(a)は、
図1の断面B−Bから見た側面断面図であり、(b)は、(a)に示す図に気体の流れを矢印で示した図である。
図4は、貯蔵室8及びその周辺領域の内部構造を示す図であって、(a)は、
図1の断面B−Bから見た側面断面図であり、(b)は、(a)に示す図に気体の流れを矢印で示した図である。
図5は、本発明の1つの実施形態に係る鮮度判定装置20の制御の基本構成を示すブロックダイアグラムである。
図6は、本発明の鮮度判定装置20による鮮度判定の結果を表示装置40に表示した場合の一例を示す模式図である。
【0021】
図3から
図6を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る鮮度判定装置20の概要を説明する。 本実施形態に係る鮮度判定装置20は、冷蔵庫2の冷蔵室6に備えられる貯蔵室8の中の食品の鮮度を判定する。
図5に、本実施形態に係る鮮度判定装置20の主要な構成機器が示されている。
鮮度判定装置20は、
(1)貯蔵室8の中に配置される感知部30aを有し、感知部30aに接する気体の所定のガス成分の濃度に対応した信号を発信するガスセンサ30及びガスセンサ30からの信号に基づいた値を定めるガスセンサ制御部51と、
(2)ファン32及びファン32を起動、停止するためのファン制御部53、並びに冷蔵室6及び貯蔵室8に設けられた気体の流路を備え、貯蔵室8外の気体をガスセンサ30の感知部30aに供給する気体供給部と、
(3)鮮度判定の開始を示す信号を発信するスタートスイッチ62及び鮮度判定を行う食品を選択するための選択スイッチ64a〜64dで構成される入力部60と、
(4)ガスセンサ30の信号に基づいて基準値を決定する基準値決定部52と、
(5)ガスセンサ30の信号に基づいて食品の鮮度を判定する判定部54と、を備える。
【0022】
このような構成機器により、スタートスイッチ62の信号を受信したとき、
(1)気体供給部は、貯蔵室8外の気体をガスセンサ30の感知部30aに供給し、
(2)基準値決定部52は、感知部30aに貯蔵室8外の気体が接するときにおけるガスセンサ30の信号に基づいて基準値を決定し、
(3)判定部54は、基準値と、気体供給部による貯蔵室8外の気体の供給停止後であって、感知部30aに貯蔵室8内の気体が接するときにおけるガスセンサ30の信号に基づく値との差に基づいて、貯蔵室8の中の食品の鮮度を判定する。
【0023】
本実施形態に係る鮮度判定装置20は、更に、表示装置40及び表示装置40に画像を表示させるための表示制御部55を備える。よって、表示装置40に判定部54による鮮度判定の結果を表示することができるので、鮮度判定の結果を使用者に明確に知らせることができる。
上記のガスセンサ制御部51,基準値決定部52,ファン制御部53,判定部54及び表示制御部55は、鮮度判定装置20の制御部50に備えられている。
【0024】
本実施形態では、ガスセンサ30として半導体ガスセンサを用いることができる。半導体ガスセンサは、酸化スズ、酸化亜鉛等の酸化金属系の半導体を用いて、ガスに触れると電気伝導度が変化することによりガス濃度を検出する。半導体ガスセンサは小型で低価格であり、感度高く、応答が速いという利点を有する。本実施形態では、測定を行うガス成分として、主に腐敗の進行の過程で肉や魚から発生するアンモニアガスを検知する。ただし、ガスセンサ30は半導体ガスセンサに限られるものではなく、その他の既知のあらゆるガスセンサを用いることができる。
ファン32として、冷蔵室内の気体を循環させる電動ファンと同様のファンを用いることができる。
【0025】
上記の制御部50,表示装置40及び入力部60は、冷蔵室6を開閉する扉4に取り付けられる。制御部50は、扉4の外側の薄板と断絶材の間に配置される。表示装置40及び入力部60は、
図6に示すように、扉4の外側から、視認または操作できるような位置に設置される。
【0026】
ファン32は、冷蔵室6の中であって貯蔵室8の外側に配置される。特に、
図4に示すように、冷蔵室6の中を循環する気体を冷却する冷却フィン34及び貯蔵室8の間に配置される。
冷蔵室内を循環した気体が冷却フィンを通過するとき、食品が腐敗する過程で放出されるガス成分の一部は、凝縮温度以下に冷却されて凝縮する。また、水溶性のものは、冷却フィンに付着した水分に溶ける。これにより、腐敗する過程で放出されるガス成分の一部が冷却フィンに付着して除去される。
本実施形態では、冷却フィン34を通過した直後の気体をガスセンサ30の感知部30aに供給するので、腐敗によるガス成分の少ない気体を用いてガスセンサ30の基準値設定を行うことができる。これにより、正確な食品の鮮度判定が可能となる。
【0027】
鮮度判定装置20は、
図5に示された機器だけでなく、気体供給部の一部であるに冷蔵室6及び貯蔵室8に設けられた気体の流路も含む。以下に、気体供給部の気体の流路及び流路内のガスセンサ30の設置位置について説明する。
図3から明らかなように、貯蔵室8の上側には、貯蔵室上側流路14が設けられている。ガスセンサ30は、貯蔵室上側流路14の中央位置の貯蔵室上側流路14の流路壁14aに取り付けられる。ガスセンサ30の感知部30aは、貯蔵室8内の貯蔵室引出10の上方に下向きに配置されている。この配置により、ファン32による貯蔵室8外の気体の供給が停止後は、貯蔵室引出10に載せられた食品の腐敗に伴うガス成分を含む気体が、確実にガスセンサ30の感知部30aに接する状態になる。ただし、ガスセンサ30の感知部30aの設置位置はこれに限られるものではなく、貯蔵室8内の任意の位置に配置することができる。その場合でも、食品の腐敗に伴うガス成分の測定を確実に行うことができる。
【0028】
ガスセンサ30と流路壁14aとの間に開口16が設けられており、貯蔵室上側流路14側と貯蔵室引出10側との間で、気体が流れるようになっている。ただし、開口16の面積は小さいので、ファン32が停止している間は、開口16を通過する気体の流れは少ない。
【0029】
貯蔵室上側流路14の右側端部の貯蔵室8を形成する壁部8aには、スリット12が設けられている。これにより、貯蔵室8の内部及び外部の間で、気体が流れるようになっている。ただし、スリット12の面積は小さいので、ファン32が停止している間は、スリット12を通過する気体の流れは少ない。
【0030】
以上のような冷蔵庫2の構成部材により、気体がファン32からガスセンサ30の感知部30aへ流れる流路が形成されている。
図3(b)及び
図4(b)の矢印に示すように、ファン32を起動させると、冷却フィン34を通過した直後の気体が、スリット12を通過して、貯蔵室上側流路14に流入する。気体は、貯蔵室上側流路14を中央の方向に流れて、ガスセンサ30の設置位置に達する。そして、ガスセンサ30の周囲の開口15を通過して、ガスセンサ30の感知部30aに接するように流れる。気体はガスセンサ30を回り込んで、確実に感知部30aに接するように流れる。その後、気体は、貯蔵室引出10の中を流れて、
図2及び
図3(b)に示す貯蔵室8及び貯蔵室引出10の背面側の開口18から、外へ流出する。
【0031】
以上のように、ガスセンサ30の感知部30aは、貯蔵室引出10の上方に下向きに配置され、貯蔵室8外の気体は、上側から下向きにガスセンサ30を回り込むように流れる。よって、ファン32を起動させることにより、貯蔵室8外の気体を確実に感知部30aに接するようすることができる。また、ファン32を停止させると、貯蔵室8内の気体が速やかに感知部30aに接するようになる。
【0032】
本実施形態に係る鮮度判定装置20の構成機器は、冷蔵庫2の中に組み込まれており、1つの筐体の中に収められた装置ではない。構成機器の中には、上記の気体供給部を構成する気体の流路のように、冷蔵庫2の構成部材の一部を用いているものも含まれる。また、ファン32は、気体をガスセンサ30に供給するためだけでなく、冷蔵室6の中の気体を流動させるその他の用途に用いることもできる。
【0033】
(鮮度判定のための制御処理の一例の説明)
図7は、本発明の1つの実施形態に係る鮮度判定装置20における鮮度判定のための制御処理の一例を示すフローチャートである。
図8は、生鮮食品の鮮度判定を行うためのセンサ出力及び細菌数の相関関係、及び鮮度判定の判定基準の一例を示したグラフである。
次に、
図7及び
図8を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る鮮度判定装置20における鮮度判定のための制御処理の一例を説明する。
【0034】
上記のように、
図6には扉4に設けられたスタートスイッチ62、選択スイッチ64a〜64d、及び鮮度判定の結果を表示する表示装置40が示されている。スタートスイッチ62は、押し釦スイッチになっており、押動操作により信号を発するようになっている。選択スイッチ64a〜dも、それぞれ押し釦スイッチになっており、押動操作により信号を発するようになっている。選択スイッチ64aを押動操作すると、鮮度を判定する食品として牛肉を選択することになり、選択スイッチ64bを押動操作すると、鮮度を判定する食品として豚肉を選択することになり、選択スイッチ64cを押動操作すると、鮮度を判定する食品として鶏肉を選択することになり、選択スイッチ64dを押動操作すると、鮮度を判定する食品として魚を選択することになる。
スタートスイッチ62,選択スイッチ64a〜dとして、押し釦スイッチ以外の任意のスイッチを用いることもできる。また、表示装置40に表示されたカーソルを移動させてスイッチ操作することもできるし、表示装置40がタッチパネルであれば、タッチパネル操作でスイッチ操作することもできる。
【0035】
図7のフローチャートにおいて、まず、スタートスイッチ62がオンになったか否か判断する(ステップS2)。つまり、使用者が
図6に示すスタートスイッチ62を操作したか否か判断する。この判断で、もし、スタートスイッチ62がオンになっていない(NO)と判別したときには、ステップS2の判断処理を繰り返す。つまり、スタートスイッチ62がオンになるまで待機状態になっている。ステップS2の判断で、もし、スタートスイッチ62がオンになった(YES)と判別したときには、次に、選択スイッチ64a〜64dの何れかが選択されたか否か判断する(ステップS4)。
【0036】
この判断で、もし、選択スイッチ64a〜64dの何れも選択されていない(NO)と判別したときには、ステップS4の判断処理を繰り返す。つまり、何れかの選択スイッチ64a〜dが選択されるまで待機状態になっている。ステップS4の判断で、もし、何れかの選択スイッチ64a〜64dが選択された(YES)と判別したときには、次に、選択された食品のセンサ出力−細菌数の相関データ及び鮮度判定の判定基準を、制御部50のROMから読み出す(ステップS6)。
【0037】
<センサ出力−細菌数の相関データ及び鮮度判定の判定基準の説明>
図8には、センサ出力−細菌数の相関データ及び鮮度判定の判定データの一例を示すグラフである。グラフの縦軸にはセンサ出力Sを示し、横軸には細菌数Pを示す。縦軸は、1.000の場合が基準値であり、値が1.000から0に近くなるにつれて、検出ガス濃度が増加することを示す。横軸の単位は、CFU/gである。CFUは、Colony Forming Unit(コロニーフォーミングユニット)の略称である。横軸のスケールは対数で示されている。
【0038】
センサ出力の値は、用いるガスセンサによって異なるが、ガス濃度の測定値はガスセンサが異なっても基本的に同一である。よって、ガスセンサが異なっても、ガス濃度及び細菌数の相関データは不変である。よって、個々のガスセンサにおいてセンサ出力及びガス濃度の換算データを用いれば、
図8に示す相関データを鮮度判定に汎用的に用いることができる。
【0039】
センサ出力−細菌数の相関データは、半導体ガスセンサが設置された密封容器内に試験用の食品を入れ、所定期間を経過したときの所定にガス成分の濃度、つまりガスセンサの出力を記録し、そのセンサ出力に対応した食品の細菌数を計測して記録した。この計測を繰り返して、データを集積した。ここで所定にガス成分は、主にアンモニアガスである。牛肉、豚肉、鶏肉及び魚のそれぞれについて、同様の試験を繰り返してデータを集積して、センサ出力−細菌数の相関データを作成した。これにより、牛肉、豚肉、鶏肉及び魚のそれぞれに関して、センサ出力及び細菌数の精度の高い相関データを得ることができた。
【0040】
図8では、選択スイッチ64bの豚肉が選択された場合、及び選択スイッチ64dの魚が選択された場合の相関データを示している。比較のために、豚肉及び魚の相関データを同じグラフ上に示している。
図8から明らかなように、ガスセンサ30の出力が同じ値であっても、豚肉と魚では存在する細菌数が異なる。センサ出力Sが1.000に近い場合、つまりガス濃度が非常に低い場合を除いて、センサ出力S値が同じであっても、豚肉の細菌数の方が魚の細菌数より多くなっている。
【0041】
図8のグラフの横軸に、鮮度に関する判定基準が示されている。
ここで、食品中に介在する細菌(中温性好気性細菌)の菌数の多少により食品の微生物汚染状況(衛生状態)を判断する代表的な衛生指標菌(汚染指標菌)を下表に示す。
(判定の基準を表す表)
【0042】
この判定基準に基づけば、細菌数が1×10
7CFU/g以上となると初期腐敗が始まり、1×10
8CFU/g以上となると腐敗が始まると考えられる。よって、N1=1×10
7CFU/g,N2=1×10
8CFU/gとすると、細菌数がN1未満の場合に「可食」と判定し、細菌数がN1以上、N2未満の場合に「要加熱」と判定し、細菌数がN2以の場合に「不可食」と判定する。ここで
「可食」とは、食品を問題なく食べることができることを意味する。「要加熱」とは、安全のため食品を加熱してから食べる必要があることを意味する。「不可食」とは、加熱したとしても食品を食べてはいけないことを意味する。本実施形態では、細菌数に基づく判定なので、客観性の高い適確な判断が実現できる。
【0043】
図7のフローチャートの説明に戻り、ステップS6の後、ガスセンサ30を起動し(ステップS8)、ファン32を起動する(ステップS10)。次に、時間T1が経過したか否か判断する(ステップS12)。ここで、時間T1は、ファン32の起動後、貯蔵室8外の気体が、完全にガスセンサ30の感知部30aに接する状態になる時間に対応するのが好ましい。気体の流動のばらつきも考慮すると、時間T1として5〜20秒を例示することができる。ただし、これに限られるものではなく、状況に応じて、時間T1として任意の値を採用することができる。
【0044】
ステップS12の判断で、もし、時間T1が経過していない(NO)と判別したときには、ステップS12の判断処理を繰り返す。つまり、時間T1が経過するまで待機状態になっている。ステップS12の判断で、もし、時間T1が経過した(YES)と判別したときには、次に、ガスセンサ30の信号に基づく値A0を取得し(ステップS14)、取得した値A0を基準値として決定する(ステップS16)。つまり、ガスセンサ30の感知部30aに貯蔵室8外の気体が接するときにおけるガスセンサ30の信号に基づいて基準値を決定する。
【0045】
ステップS16の後、ファン32を停止する(ステップS18)。これにより、気体供給部による貯蔵室8外の気体の供給が停止する。次に、時間T2が経過したか否か判断する(ステップS20)。ここで、時間T2は、気体供給部による貯蔵室8外の気体の供給停止後、貯蔵室8内の気体が、完全にガスセンサ30の感知部30aに接する状態になる時間に対応するのが好ましい。気体の流動のばらつきも考慮すると、時間T2として5〜20秒を例示することができる。ただし、これに限られるものではなく、状況に応じて、時間T2として任意の値を採用することができる。
【0046】
ステップS20の判断で、もし、時間T2が経過していない(NO)と判別したときには、ステップS20の判断処理を繰り返す。つまり、時間T2が経過するまで待機状態になっている。ステップS20の判断で、もし、時間T2が経過した(YES)と判別したときには、次に、ガスセンサ30の信号に基づく値A1を取得する(ステップS224)。そして、取得した値A1と上記の基準値A0との差からセンサ出力Sを求める(ステップS24)。
次に、センサ出力S及び上記のセンサ出力−細菌数の相関データを参照して、食品の細菌数Pを求める(ステップS26)。例えば、センサ出力Sの値が0.7の場合、魚であれば、細菌数Pが約1×10
3CFU/gであり、豚肉であれば、細菌数Pが約1×10
5CFU/gである。
【0047】
次に、求めた細菌数Pに基づく鮮度判定を行う。始めに、細菌数Pが、初期腐敗開始に対応するN1未満であるか否か判断する(ステップS28)。この判断で、もし、細菌数PがN1未満である(YES)と判別したときには、「可食」と判定し(ステップS30)、ステップS38へ進む。
ステップS28の判断で、もし、細菌数PがN1以上である(NO)と判別したときには、次に、細菌数Pが、腐敗開始に対応するN2未満であるか否か判断する(ステップS32)。この判断で、もし、細菌数PがN2未満である(YES)と判別したときには、「要加熱」と判定し(ステップS34)、ステップS38へ進む。
【0048】
ステップS32の判断で、もし、細菌数PがN2以上である(NO)と判別したときには、「不可食」と判定し(ステップS36)、ステップS38へ進む。
以上のように、ステップ22からステップS36の制御処理により、基準値A0と、気体供給部による貯蔵室8外の気体の供給停止後であって、ガスセンサ30の感知部30aに貯蔵室8内の気体が接するときにおけるガスセンサ30の信号に基づく値A1との差であるセンサ出力Sに基づいて、貯蔵室8の中の食品の鮮度を判定することができる。
図6には、鮮度判定をする食品として魚が選択され、鮮度判定の結果が[要加熱」だった場合の表示装置40での表示例を示す
【0049】
ステップ38では、ガスセンサ30を停止して(ステップS38)、鮮度判定のための制御処理を終了する。
このように、ガスセンサ30は、鮮度判定を行うときだけ稼働するので、エネルギ消費を削減できる。特に、ガスセンサ30が感度を上げるためにヒータを備えている場合には、より大きな省エネ効果が期待できる。
【0050】
以上のように、スタートスイッチ62の信号を受信したとき、ファン32及び気体の流路から構成される気体供給部は、貯蔵室8外の気体をガスセンサ30の感知部30aに供給し、基準値決定部52は、感知部30aに貯蔵室8外の気体が接するときにおけるガスセンサ30の信号に基づいて基準値A0を決定し、判定部54は、基準値A0と、気体供給部による貯蔵室8外の気体の供給停止後であって、感知部30aに貯蔵室8内の気体が接するときにおけるガスセンサ30の信号に基づく値A1との差であるセンサ出力Sに基づいて、
図8に示すセンサ出力−細菌数の相関データ及び鮮度判定の判定基準を用いて、貯蔵室8の中の食品の鮮度を判定することができる。
【0051】
よって、貯蔵室8の中の食品の鮮度判定を開始するたびに、ガスセンサ30の基準値A0を決定するので、測定に適合した基準値A0が設定されたガスセンサ30の信号に基づく正確な食品の鮮度判定を常に行うことができる。
【0052】
特に、気体供給部はファン32を含み、ファン32により流動した貯蔵室8外の気体が、貯蔵室8に設けられるスリット12を通過して、ガスセンサ30の感知部30aに達するようになっている。
【0053】
よって、ガスセンサ30の基準値A0を決定するため、ガスセンサ30を貯蔵室8の中から外へ移動させる機構を備える必要がない。よって、シンプルな機構で、測定に適合した基準値A0の設定を実現できる。また、貯蔵室8に設けられたスリット12の開口面積は小さいので、気体供給部による貯蔵室8外の気体の供給が停止している間は、貯蔵室8の内部及び外部の間の気体の流れを最小限に抑えることができる。
【0054】
更に、冷蔵室6内を循環した気体が冷却フィン34を通過するとき、気体中の食品が腐敗する過程で放出されるガス成分の一部が、凝縮温度以下に冷却されて凝縮する。また、水溶性のものは、冷却フィン34に付着した水分に溶ける。これにより、腐敗する過程で放出されるガス成分の一部が冷却フィン34に付着して除去される。
【0055】
よって、冷却フィン34を通過した直後の気体をガスセンサ30の感知部30aに供給するので、腐敗によるガス成分の少ない気体を用いてガスセンサ30の基準値設定を行うことができる。これにより、正確な食品の鮮度判定が可能となる。
【0056】
上記の鮮度判定装置20を備えた冷蔵庫2は、上記の鮮度判定装置20が奏する任意の作用効果を有することができる。
【0057】
(その他の実施形態の説明)
上記の実施形態では、表示装置40に鮮度判定の結果を表示したが、鮮度判定装置20が表示装置40を備えない場合もあり得る。この場合、例えば、音声やランプ等で鮮度判定の結果を報知することも考えられる。また、鮮度判定の結果に基づく自動制御も可能である。例えば、細菌数Pの値が初期腐敗の開始に対応するN1に近くなっている場合に、冷蔵項2の冷却能力を高める制御を行うことも考えられる。
【0058】
上記の実施形態では、使用者の操作に基づいて、スタートスイッチ62から鮮度判定の開始を示す信号が発信されるが、これに限られるものではない。スタートスイッチが操作スイッチではなく、所定の条件が成立したときに、鮮度判定の開始を示す信号が発信されるようにすることもできる。所定の条件としては、所定の期間が経過や所定にタイミングになった場合、温度センサ等の値が所定の値になった場合を例示することができる。
【0059】
上記の実施形態では、制御部50は鮮度判定装置20専用の制御装置になっているが、これに限られるものではなく、冷蔵庫2本体の制御装置の一部を用いて、上記の鮮度判定の制御処理を行うこともできる。
【0060】
上記の実施形態では、食品の鮮度判定を「可食」、「要加熱」。「不可食」の3段階で示したが、これに限られるものではない、更に多くの段階に分けて判定結果を示すこともできる。また、危険度をパーセント等で定量的に示すこともあり得る。
【0061】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。