【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者:公益社団法人土木学会、刊行物名:第11回複合・合成構造の活用に関するシンポジウム 講演集(CD−ROM)(52)、刊行物の発行日:平成27年11月5日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記継手鋼管の外周面又は前記第2の鋼管の外周面に接合され、前記継手鋼管の前記開口を挟んで当該開口から離間した位置を前記継手鋼管の長手方向に延在する一対の開き防止鋼を更に有し、
前記継手鋼管の前記開口の幅が前記平鋼板の厚さよりも大きく、前記一対の開き防止鋼の間において前記継手鋼管の外面と前記第2の鋼管との間に前記充填材が充填されたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の鋼管井筒構造の橋脚。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の多柱式橋脚では、複数の鋼管が離間して配置されており、地震時には各々の鋼管が概ね独立した態様で地震力(横力)に抵抗する。そのため、多柱式橋脚全体として地震耐力を高めるためには、鋼管の本数を多くするか、つなぎ部材の剛性を高くする、或いはそれと共に鋼管の離間距離を大きくする等の対策が必要になり、橋脚の平面視における寸法が大きくなる上、資材コストや施工コストの増大を招く。
【0008】
ここで、橋脚の基礎として用いられる鋼管矢板井筒基礎を小さくして、フーチングを設けることなく各鋼管を地上にまで延ばして橋脚の柱として利用することにより、橋脚においてフーチングの省略と、平面寸法の縮小及びコスト低減とを図ることが考えられる。ところが、このような構成にする場合であっても、橋脚全体としての地震耐力を高めるためには、互いに隣接配置された鋼管の連結部には高いせん断耐力(せん断ずれ抵抗力)が必要になる。しかしながら、従来の鋼管杭の継手構造では、せん断耐力が未だ十分ではなく、更に高いせん断耐力を有する継手が必要になる。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑み、高いせん断耐力を有する鋼管継手を提供することを第1の課題とし、高いせん断耐力を有する継手によって接合された複数の鋼管により構成される鋼管井筒構造の橋脚を提供することを第2の課題とする。また、高いせん断耐力を有する継手構造の転用により、施工性を改善できるハーフプレキャストコンクリート構造の橋脚を提供することを第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の課題を解決するために、本発明は、互いに隣接して配置される第1の鋼管(2
−1)及び第2の鋼管(2
−2)を接続するための鋼管継手(10)であって、前記第1の鋼管の外周面に接合され、当該第1の鋼管に沿って延在する第1継手部材(11)と、前記第2の鋼管の外周面に接合され、当該第2の鋼管に沿って延在する第2継手部材(12)とを有し、前記第1継手部材が、前記第2の鋼管に対向する位置に形成された開口(13a)を有するC字状の断面形状を呈し、前記第1の鋼管の長手方向について見た時に凹凸をなす内面を有する継手鋼管(13)を含み、前記第2継手部材が、前記継手鋼管の内部に配置される先端を有する平鋼板(16)と、当該平鋼板の前記継手鋼管の内部に配置される部分の両主面に設けられ、当該両主面に前記第2の鋼管の長手方向について凹凸形状を形成する複数の突起(17)とを含み、前記継手鋼管の内面と前記平鋼板及び前記突起の外面との間に充填材(19)が充填された構成とする。
【0011】
この構成によれば、継手鋼管の内面が第1の鋼管の長手方向について見た時に凹凸をなし、平鋼板の継手鋼管の内部に配置される部分の両主面に第2の鋼管の長手方向について凹凸形状を形成する複数の突起が設けられ、継手鋼管の内面と平鋼板及び突起の外面との間に充填材が充填されたことにより、第1の鋼管に接合された継手鋼管と第2の鋼管に接合された平鋼板とのせん断耐力が高くなる。特に、継手鋼管の開口が第2の鋼管に対向する位置に形成されたことにより、せん断力を受けた継手鋼管が開口を広げるように開こうとした時に第2の鋼管によって開きを阻止されることで、継手鋼管と充填材との縁切れが生じず、せん断ずれが防止される、即ちせん断耐力が向上する。
【0012】
また、上記の発明において、前記継手鋼管(13)の内面には、周方向に延在する複数の突条(21)が形成された構成とするとよい。
【0013】
この構成によれば、継手鋼管と充填材とがずれようとする向きと交差する方向に突条が延在するため、継手鋼管と充填材との縁切れを効果的に抑制できる。即ち鋼管継手のせん断耐力を効果的に向上させることができる。
【0014】
また、上記の発明において、前記突起(17)が、前記平鋼板(16)の主面に接合されたスタッド(25)を含む構成とするとよい。
【0015】
この構成によれば、平鋼板の主面からの突出量が大きな突起を比較的簡単に形成することができる。そして、平鋼板からの突起の突出量が大きくなることにより、充填材にせん断力を伝える支圧面が大きくなるため、充填材の破壊が抑制され、鋼管継手のせん断耐力が向上する。
【0016】
また、上記の発明において、前記突起(17)が、前記平鋼板(16)に形成された貫通孔(16a)に挿入され、前記平鋼板に接合された柱状体(24)を含む構成とするとよい。
【0017】
この構成によれば、断面が大きく且つ平鋼板の主面からの突出量が大きな突起を比較的簡単に形成することができる。そして、突起の断面積及び突出量の増大によって継手延在方向における突起の投影面積が大きくなること、即ち充填材にせん断力を伝える支圧面が大きくなることにより、充填材の破壊が抑制され、鋼管継手のせん断耐力が向上する。
【0018】
また、上記の発明において、前記柱状体(24)が、鋼管部(22)と、当該鋼管部の内部に充填され固化した充填部(23)とを含む構成とするとよい。
【0019】
この構成によれば、断面が大きな柱状体を容易且つ安価に形成することができる。また、柱状体が中空に形成され、中空部に充填材が充填される構成に比べ、柱状体を中実に、即ち内部にエア溜まりによる充填漏れが生じない形態に形成でき、柱状体のせん断強度を安定させることができる。
【0020】
また、上記の発明において、前記鋼管継手(10)が、前記継手鋼管(13)の外周面又は前記第2の鋼管(2
−2)の外周面に接合され、前記継手鋼管の前記開口(13a)を挟んで当該開口から離間した位置を前記継手鋼管の長手方向に延在する一対の開き防止鋼(14)を更に有し、前記継手鋼管の前記開口の幅が前記平鋼板の厚さよりも大きく、前記一対の開き防止鋼の間において前記継手鋼管の外面と前記第2の鋼管との間に前記充填材(19)が充填された構成とするとよい。
【0021】
この構成によれば、施工誤差のために継手鋼管が第2の鋼管の外面から離間していても、継手鋼管が開口を広げるように開こうとした時に、継手鋼管の外面と第2の鋼管との間に充填された充填材によって継手鋼管の開きが阻止されるため、継手鋼管と充填材との縁切れによるせん断ずれが確実に防止される。即ち、鋼管継手のせん断耐力をより確実に向上させることができる。
【0022】
また、第2の課題を解決するために、本発明は、平面視において閉環状に連続するように配置され、地盤(G)中に延在する基礎部(2A)と地上に延在する柱部(2B)とを有する複数の鋼管(2)により構成される鋼管井筒構造の橋脚(1)であって、互いに隣接して配置された一対の鋼管が、前記基礎部及び前記柱部において、上記の鋼管継手(10)によって互いに接合されている構成とする。
【0023】
この構成によれば、複数の鋼管の互いに隣接するもの同士を、基礎部及び柱部の両方に亘って高いせん断力もって接合することができ、橋脚全体としての地震耐力を大幅に向上させることができる。そして、このような鋼管井筒構造で橋脚が構成されることにより、フーチングを省略できる上、橋脚の平面寸法を小さくすることができる。また、互いに隣接する一対の鋼管を鋼管継手により互いに係合させながら複数の鋼管を平面視において閉環状に連続するように配置することによって基礎部及び柱部を構築できるため、橋脚の資材コスト及び施工コストを低減できる。
【0024】
また、上記の発明において、前記複数の鋼管(2)のうちの少なくとも一部の内部に、前記基礎部(2A)と前記柱部(2B)とに亘るように中詰コンクリート(8)が充填されている構成とするとよい。
【0025】
この構成によれば、鋼管における曲げモーメントが比較的大きくなる部分の曲げ耐力が中詰コンクリートによって増強されるため、鋼管の肉厚を薄くして資材コストを低減することができる。
【0026】
また、第3の課題を解決するために、本発明は、中空の断面形状を有し、鉛直方向に積み重ねられる複数の柱部分(34)を有するハーフプレキャストコンクリート構造の橋脚(31)であって、各柱部分が、平面視において周方向に並べられ、当該柱部分の外周部を構成する中空断面形状の複数のハーフプレキャスト部材(36)と、前記複数のハーフプレキャスト部材の内部に充填される現場打ちコンクリートからなる内部コンクリート部(38)と、互いに隣接する一対のハーフプレキャスト部材の間に設けられる継手(40)とを有し、前記継手が、前記一対のハーフプレキャスト部材の一方(36
−1)に設けられ、鉛直に延在する第1継手部材(41)と、前記一対のハーフプレキャスト部材の他方(36
−2)に設けられ、鉛直に延在する第2継手部材(42)とを有し、前記第1継手部材が、前記一方のハーフプレキャスト部材の外面に沿って設けられ、前記他方のハーフプレキャスト部材に対向する位置に形成された開口(43a)を有するC字状の断面形状を呈すると共に、鉛直方向について見た時に凹凸をなす内面を有する継手鋼管部(43)と、当該継手鋼管部の前記開口と相反する側に接合され、前記一方のハーフプレキャスト部材に埋設される埋設部(45)とを含み、前記第2継手部材が、前記継手鋼管部の内部に配置される先端及び前記他方のハーフプレキャスト部材に埋設される基端を有する平鋼板(46)と、当該平鋼板の前記継手鋼管部の内部に配置される部分の両主面に設けられ、当該両主面に鉛直方向について凹凸形状を形成する複数の突起(47)とを含み、前記継手鋼管部の内面と前記平鋼板及び前記突起の外面との間に充填材(49)が充填された構成とする。
【0027】
この構成によれば、継手鋼管部の内面が鉛直方向について見た時に凹凸をなし、平鋼板の継手鋼管部の内部に配置される部分の両主面に鉛直方向について凹凸形状を形成する複数の突起が設けられ、継手鋼管部の内面と平鋼板及び突起の外面との間に充填材が充填されたことにより、一方のハーフプレキャスト部材に設けられた継手鋼管部と他方のハーフプレキャスト部材に設けられた平鋼板とのせん断耐力が高くなる。特に、継手鋼管部の開口が他方のハーフプレキャスト部材に対向する位置に形成されたことにより、せん断力を受けた継手鋼管部が開口を広げるように開こうとした時に他方のハーフプレキャスト部材によって開きを阻止されることで、継手鋼管部と充填材との縁切れが生じず、せん断ずれが防止される、即ちせん断耐力が向上する。また、互いに隣接する一対のハーフプレキャスト部材を継手により互いに接合することができ、ハーフプレキャスト部材内に設けられる鉄筋同士を接続する必要がない上、現場打ちコンクリートのために型枠を組み立てる必要もないため、ハーフプレキャストコンクリート構造の橋脚の施工性を改善することができる。
【発明の効果】
【0028】
このように本発明によれば、高いせん断耐力を有する鋼管継手、高いせん断耐力を有する継手によって接合された複数の鋼管により構成される鋼管井筒構造の橋脚、及び、施工性を改善できるハーフプレキャストコンクリート構造の橋脚を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0031】
≪第1実施形態≫
まず、
図1〜
図9を参照して第1実施形態に係る鋼管井筒構造の橋脚1について説明する。
図1は、第1実施形態に係る鋼管井筒構造の橋脚1の正面図である。
図1に示されるように、橋脚1は、地盤G中にて鉛直に延在する基礎部2Aと地上にて鉛直に延在する柱部2Bとを有する複数の鋼管2(2
−1〜2
−4)により構成された本体部1Aと、本体部1Aの上端に橋軸直角方向に延出するように一体に構築された梁部1Bとを有している。梁部1Bの上には、橋の上部構造3が載置される。本実施形態では、橋の上部構造3は、橋軸方向に互いに隣接する一対の橋脚1、1間に架け渡される複数の桁4と、複数の桁4の上に構築される床版5とを有している。複数の桁4は、橋軸方向に互いに平行に延在しており、橋軸直角方向に互いに隣接する桁4同士は対傾構6によって互いに連結されている。
【0032】
図2は、
図1中のII−II断面図である。
図1及び
図2に示されるように、橋脚1は、本体部1Aを構成する複数の鋼管2が平面視において閉環状に連続するように配置された鋼管井筒構造とされている。本実施形態では、平面視において想像線で示される正方形をなすように配置された4本の鋼管2により橋脚1の本体部1Aが構成されている。ここで、正方形をなすとは、鋼管2の中心2Xが正方形の頂点に位置することを意味する。鋼管2は、長手方向に連続する1本の鋼管材により構成されてもよく、公知のジョイントを介して長手方向に接続される複数の鋼管材によって構成されてもよい。正方形の辺(つまり、互いに隣接する一対の鋼管2の中心2X同士を結ぶ線)(以下、鋼管中心線7と称する)に沿って互いに隣接する一対の鋼管2は、全長に亘って、つまり基礎部2A及び柱部2Bの両方において、鋼管継手10を介して互いに接合されている。
【0033】
鋼管2の内部には、大きな曲げモーメントが発生する基礎部2Aと柱部2Bとの境界部(地盤Gの表面)を跨いで基礎部2Aと柱部2Bとに亘った鉛直方向の一部に中詰コンクリート8が充填されている。本実施形態では全ての鋼管2の内部に中詰コンクリート8が充填されている。他の実施形態では、一部の鋼管2の内部に中詰コンクリート8が充填されてもよい。このような中詰コンクリート8は、鋼管2の内部に吊型枠9を支持するストッパを予め接合しておき、鋼管2の建て込み後に吊型枠9をストッパに支持させることで固定し、その上に所定厚さのコンクリートを打設することにより構築することができる。以下、
図2の左上から時計回りに順に第1鋼管2
−1、第2鋼管2
−2、第3鋼管2
−3、第4鋼管2
−4として説明する。
【0034】
図3は、
図2中のIII部の拡大図である。なお、
図3は、第1鋼管2
−1と第2鋼管2
−2との間の鋼管継手10を示しているが、互いに隣接する他の2本の鋼管2間の鋼管継手10も同じ構成となっている。そのため、ここでは第1鋼管2
−1と第2鋼管2
−2との間の鋼管継手10のみを説明する。
図3に示されるように、鋼管継手10は、第1鋼管2
−1の外周面に接合され、第1鋼管2
−1に沿って鉛直に延在する第1継手部材11と、第2鋼管2
−2の外周面に接合され、第2鋼管2
−2に沿って鉛直に延在する第2継手部材12とを主要素として構成される。
【0035】
なお、
図2に示されるように、それぞれの鋼管2の外周面には、相違角が90度となる2箇所に第1継手部材11又は第2継手部材12が接合される。本実施形態では、それぞれの鋼管2に1つの第1継手部材11と1つの第2継手部材12とが相対的に同じ配置で接合されている。これにより、全ての鋼管2が同一形状になるため、施工が容易である。他の実施形態では、ある鋼管2に2つの第1継手部材11が接合され、これに隣接する鋼管2に2つの第2継手部材12が接合され、2種類の鋼管2が交互に配置されることによって閉環状とされてもよい。
【0036】
図3に戻り、第1継手部材11は、鉛直方向に延在するスリット状の開口13aを有するC字状の断面形状を呈する継手鋼管13を有している。継手鋼管13は、軸心が鋼管中心線7の上に位置し且つ開口13aが第1鋼管2
−1と相反する側で鋼管中心線7の上に位置する配置及び向きとされている。つまり、継手鋼管13は開口13aを第2鋼管2
−2に対向させている。継手鋼管13は、第1鋼管2
−1側における鋼管中心線7を挟む両側部分を全長に亘って第1鋼管2
−1に溶接により接合されている。
【0037】
継手鋼管13と第2鋼管2
−2との間には、第2継手部材12及び開口13aを挟んで開口13aの幅よりも若干大きく離間した位置に一対の開き防止鋼14が配置されている。本実施形態では、開き防止鋼14は丸鋼により形成され、第2鋼管2
−2の外周面に接合されている。他の実施形態では、開き防止鋼14は、四角鋼や平鋼により形成されてもよく、継手鋼管13の外周面に接合されてもよい。
【0038】
一対の開き防止鋼14は、鋼管中心線7の方向について見た時に、第2鋼管2
−2よりも(第2鋼管2
−2の外面における鋼管中心線7上の点よりも)第1鋼管2
−1側に突出している。更に言うと、第2鋼管2
−2の杭打ち時の施工精度にも依るが、一対の開き防止鋼14は、継手鋼管13の外周面に当接するように、或いは継手鋼管13との離間距離が第2鋼管2
−2と継手鋼管13との離間距離(継手鋼管13の開口13aを形成する一対の縁部と第2鋼管2
−2の外周面との離間距離)よりも小さくさなるように、配置及び断面寸法が定められている。これにより、継手鋼管13と第2鋼管2
−2との間には間隙gが形成されている。
【0039】
第2継手部材12は、継手鋼管13の開口13aの幅よりも小さな厚さを有すると共に、第2鋼管2
−2の外周面に接合される基端及び継手鋼管13の内部に配置される先端を有する平鋼板16と、平鋼板16の継手鋼管13の内部に配置される部分に両主面から突出するように設けられた円柱状の突起17とを有している。平鋼板16は、基端及び先端が鋼管中心線7の上に位置するように、つまり第2鋼管2
−2の外周面のうち、第1鋼管2
−1に最も近い位置からこれを通る法線に沿って突出するように配置されている。平鋼板16は、基端の両側部分を全長に亘って第2鋼管2
−2に溶接により接合されている。
【0040】
継手鋼管13の内面と平鋼板16及び突起17の外面との間には、充填材19が充填され、固化している。これにより、第1継手部材11と第2継手部材12とが一体化され、第1鋼管2
−1と第2鋼管2
−2とが互いに接合される。また、継手鋼管13と第2鋼管2
−2との間に間隙gが形成されていることから、充填材19は継手鋼管13の外、即ち少なくとも一対の開き防止鋼14の間(一対の開き防止鋼14と第2鋼管2
−2の外周面及び継手鋼管13の外周面とにより囲まれる部分)にも充填されている。
【0041】
図4は、
図3中のIV−IV断面図であり、
図5は、充填材19が充填される前の鋼管継手10を破断して示す斜視図である。
図4及び
図5に示されるように、継手鋼管13の内面には、周方向に延在する複数の突条21が鉛直方向に沿って設けられている。本実施形態では、突条21は概ね二等辺三角形の断面形状を有し、鉛直方向に連続するように設けられている。他の実施形態では、突条21が正三角形や鋸刃状等の三角形の断面形状や、台形や矩形等の四角形の断面形状を有していてもよく、スパイラル状に(水平面に対して傾斜して)延在していてもよい。このような突条21が形成されたことにより、継手鋼管13の内面は、鉛直方向について見た時に(以下、「鉛直方向に沿って」と言う。)凹凸をなしている。突条21は、継手鋼管13の内部に充填材19が充填された後、継手鋼管13と充填材19との鉛直方向のずれを防止するずれ防止部として機能する。上記構成の継手鋼管13は、鋼板の一方の面に公知の方法によって突条21を形成した後、或いは圧延時に一方の面に突条21が形成されるように鋼板を製造した後、開口13aを形成する円弧状に鋼板を曲げ加工することによって形成することができる。本実施形態では突条21が継手鋼管13の内面の全面に形成されているため、継手鋼管13の内面は、周方向のどの縦断面においても鉛直方向に沿って凹凸をなしているが、継手鋼管13の内面の一部のみが鉛直方向に沿って凹凸をなしていてもよい。
【0042】
第2継手部材12を構成する突起17は、継手鋼管13の開口13aの幅よりも大きな軸方向長さを有する鋼管部22と、鋼管部22の内部に隙間なく充填され固化した高強度モルタル等からなる充填部23とにより構成される柱状体24によって形成されている。このように構成される柱状体24は、鋼管部22によって充填部23が拘束されるため、軸直角方向のせん断耐力が大きく且つ破壊までの塑性変形が大きな特性を備える。柱状体24は、平鋼板16に形成された貫通孔16aに挿入された状態で、鋼管部22の長手方向の中央部が平鋼板16に溶接されることによって平鋼板16に一体化される。これにより、平鋼板16の両主面から均等に突出し、継手鋼管13に係合する一対の突起17が形成される。
【0043】
本実施形態では、柱状体24は円形断面の鋼管部22によって円柱状に形成され、平鋼板16の貫通孔16aも円形断面に形成されている。他の実施形態では、柱状体24が四角形断面の角形鋼管によって角柱状に形成されてもよい。この場合、平鋼板16に形成される貫通孔16aも四角形断面とされる。或いは、柱状体24は、丸鋼や四角鋼等の中実の鋼材、又は比較的肉厚の筒状の鋼材を所定長さに切断することで形成されてもよい。
【0044】
平鋼板16には、鉛直方向に沿って所定の間隔を空けて貫通孔16aが複数形成され、貫通孔16aの数に対応する複数の柱状体24が平鋼板16に接合されている。これにより、平鋼板16の両主面には、複数の突起17によって鉛直方向について(鉛直方向に沿って)凹凸形状が形成されている。柱状体24は、鋼管2の建て込み時及び杭打ち時には継手鋼管13に係合する被ガイド部として機能し、継手鋼管13の内部に充填材19が充填された後には充填材19と第2継手部材12との鉛直方向のずれを防止するずれ防止部として機能する。
【0045】
図6は、本実施形態に係る鋼管継手10と、継手鋼管13の突条21が設けられていない部分と同じ厚さを有するスリット付鋼管を用いたP−P型の従来継手とにおける、荷重と相対ずれ変位との関係を示すグラフである。
図6に示されるように、本実施形態に係る鋼管継手10は、従来継手に比べて降伏荷重が大きく、且つ降伏後にも支持荷重(ずれ抵抗力)が増大し、終局荷重が降伏荷重よりも大きくなっている。
【0046】
このように本実施形態に係る鋼管継手10は、互いに隣接する第1鋼管2
−1及び第2鋼管2
−2が鉛直方向にずれようとするせん断力に対して鋼管継手10が高い抵抗力を発揮する。
【0047】
具体的には、本実施形態に係る鋼管継手10では
図4に示されるように、継手鋼管13の内面が鉛直方向に沿って凹凸をなし、平鋼板16の継手鋼管13の内部に配置される部分の両主面に鉛直方向に沿って凹凸形状を形成する複数の突起17が設けられ、継手鋼管13の内面と平鋼板16及び突起17の外面との間に充填材19が充填されている。そのため、第1鋼管2
−1に接合された継手鋼管13と第2鋼管2
−2に接合された平鋼板16とのせん断耐力が高くなる。
【0048】
特に、
図3に示されるように、継手鋼管13の開口13aが第2鋼管2
−2に対向する位置に形成されたことにより、せん断力を受けた継手鋼管13が開口13aを広げるように開こうとした時に第2鋼管2
−2によって開きを阻止される。これにより、継手鋼管13と充填材19との縁切れが生じず、せん断ずれが防止されることでせん断耐力が向上する。
【0049】
また、
図5に示されるように、継手鋼管13の内面には、周方向に延在する複数の突条21が形成されている。つまり、継手鋼管13と充填材19とがずれようとする向きと交差(本実施形態では直交)する方向に延在するように突条21が形成されている。そのため、継手鋼管13と充填材19との縁切れが効果的に抑制され、鋼管継手10のせん断耐力が効果的に向上する。
【0050】
図4に示されるように、突起17が、平鋼板16に形成された貫通孔16aに挿入され、平鋼板16に接合された柱状体24を含んでいる。そのため、断面が大きく且つ平鋼板16の主面からの突出量が大きな突起17を比較的簡単に形成することができる。そして、突起17の断面積及び突出量の増大によって継手延在方向における突起17の投影面積が大きくなること、即ち充填材19にせん断力を伝える支圧面が大きくなることにより、充填材19の破壊が抑制され、鋼管継手10のせん断耐力が向上する。
【0051】
また、柱状体24が、鋼管部22と、鋼管部22の内部に充填され固化した充填部23とを含む構成とされている。そのため、断面が大きな柱状体24を容易且つ安価に形成することができる。仮に、柱状体24が中空に形成され、継手鋼管13への充填材19の充填時に柱状体24の中空部に充填材19が充填される場合には、柱状体24が水平に延在することから、柱状態の内部にエアが溜まり易い。これに対し、本実施形態では、鋼管部22の内部に予め充填部23が充填されるため、上記仮の構成に比べ、柱状体24が中実に、即ち内部にエア溜まりによる充填漏れが生じない状態に形成され、柱状体24のせん断強度が安定する。
【0052】
図3に示されるように、鋼管継手10は、第2鋼管2
−2の外周面に接合され、継手鋼管13の開口13aを挟んで開口13aから離間した位置を継手鋼管13の長手方向に延在する一対の開き防止鋼14を更に有し、継手鋼管13の開口13aの幅が平鋼板16の厚さよりも大きく、一対の開き防止鋼14の間において継手鋼管13の外面と第2鋼管2
−2との間に充填材19が充填されている。そのため、施工誤差のために継手鋼管13が第2鋼管2
−2の外面から離間していても、継手鋼管13が開口13aを広げるように開こうとした時に、継手鋼管13の外面と第2鋼管2
−2との間に充填された充填材19によって継手鋼管13の開きが阻止される。これにより、継手鋼管13と充填材19との縁切れによるせん断ずれが確実に防止され、鋼管継手10のせん断耐力がより確実に向上する。
【0053】
そして、
図1及び
図2に示されるように、平面視において閉環状に連続するように配置された複数の鋼管2が、上記構成の鋼管継手10により、基礎部2A及び柱部2Bの両方において互いに接合されている。そのため、複数の鋼管2の互いに隣接するもの同士が、基礎部2A及び柱部2Bの両方に亘って高いせん断力もって接合され、橋脚1全体としての地震耐力が大幅に向上する。なお、図示例では、鋼管2の基礎部2A及び柱部2Bの全長(高さ方向の全体)に亘って上記構成の鋼管継手10が設けられているが、鋼管継手10は、基礎部2Aの一部及び柱部2Bの全長に亘って設けられてもよく、基礎部2Aの一部及び柱部2Bの一部(大部分であることが好ましい)に設けられてもよい。更に、このような鋼管井筒構造で橋脚1が構成されることにより、基礎フーチングの省略が可能になる上、橋脚1の平面寸法が小さくなる。従って、工事用ヤードの確保が難しい都市部等での工事の実施が容易になる。また、互いに隣接する一対の鋼管2を鋼管継手10により互いに係合させながら複数の鋼管2を平面視において閉環状に連続するように配置することによって基礎部2A及び柱部2Bが構築されるため、橋脚1の資材コスト及び施工コストが低減する。
【0054】
また、複数の鋼管2のうちの少なくとも一部の内部に、基礎部2Aと柱部2Bとに亘るように中詰コンクリート8が充填されている。そのため、鋼管2における曲げモーメントが比較的大きくなる部分の曲げ耐力が中詰コンクリート8によって増強される。これにより、鋼管2の肉厚を薄くして資材コストを低減することが可能である。
【0055】
図7は、第1実施形態の一変形例に係る鋼管井筒構造の橋脚1における、
図2に相当する断面図である。この変形例の橋脚1では、本体部1Aを構成する6本の鋼管2が平面視において橋軸方向に2列、橋軸直角方向に3列に配置され、長方形の閉環状に連続するように配置されている。橋軸直角方向の中央に配置される鋼管2は、想像線で示される長方形の長辺の中央に位置する。6本の鋼管2は、長方形の外周に沿って配置された6つの鋼管継手10によって閉環状に連結されると共に、長方形の内部、即ち橋軸直角方向の中央に配置される2本の鋼管2の間に配置された鋼管継手10によって閉断面を仕切るように連結されている。
【0056】
つまり、橋軸直角方向の中央に配置される2本の鋼管2には、第1継手部材11又は第2継手部材12が3箇所に接合されている。従って、橋脚1の本体部1Aは、長方形の頂点に配置される第1形状の鋼管2と、長方形の一方の長辺上に配置される第2形状の鋼管2と、長方形の他方の長辺上に配置される第3形状の鋼管2とを含む3種類の鋼管2により構成される。
【0057】
他の変形例では、橋軸直角方向の中央に配置される2本の鋼管2の間に鋼管継手10が配置されず、6本の鋼管2が長方形の外周に沿って配置された6つの鋼管継手10のみによって閉環状に連結されていてもよい。
【0058】
図8は、第1実施形態の他の変形例に係る鋼管井筒構造の橋脚1における、
図2に相当する断面図である。この変形例の橋脚1では、本体部1Aを構成する8本の鋼管2が平面視において橋軸方向に3列、橋軸直角方向に3列の正方形の閉環状に連続するように配置されている。従って、橋脚1の本体部1Aは、長方形の頂点に配置される第1の形状を呈する鋼管2と、正方形の辺上に配置される第2の形状を呈する鋼管2との2種類の鋼管2により構成される。
【0059】
他の変形例では、正方形の重心にも鋼管2が配置され、図示されないこの鋼管2が正方形を4つの正方形に仕切るように橋軸方向及び橋軸直角方向に隣接する4本の鋼管2(正方形の辺上に配置された4本の鋼管2)に鋼管継手10により接続されてもよい。
【0060】
更に他の変形例では、橋軸方向の2辺の上に配置された2本の鋼管2又は橋軸直角方向の2辺の上に配置される2本の鋼管2が外側にずれた位置に配置され、長円形(正確には、対向する一対の辺が長い六角形)をなすように連続して配置されてもよく、4辺の上に配置された4本の鋼管2が外側にずれた位置に配置され、円形(正確には、八角形)をなすように連続して配置されてもよい。
【0061】
図9は、第1実施形態の他の変形例に係る鋼管継手10における、
図3に相当する断面図である。この変形例の鋼管継手10では、第2継手部材12を構成する突起17がスタッド25により形成されている。図示例では、平鋼板16の継手鋼管13の内部に配置される部分の両主面に、4本のスタッド25が溶接により接合されている。スタッド25は円柱状を呈しており、鉛直方向に所定の間隔を空けて設けられる。スタッド25は、鉛直方向に一列に配置されてもよく、平鋼板16の突出方向にずらして配置されてもよい。このようにスタッド25が設けられることにより、平鋼板16の両主面に凹凸形状が形成される。他の変形例では、柱状体24と共にスタッド25が設けられてもよい。
【0062】
このように突起17が、平鋼板16の主面に接合されたスタッド25を含むことにより、平鋼板16の主面からの突出量が大きな突起17を比較的簡単に形成することができる。そして、平鋼板16からの突起17の突出量が大きくなることにより、充填材19にせん断力を伝える支圧面が大きくなるため、充填材19の破壊が抑制され、鋼管継手10のせん断耐力が向上する。
【0063】
≪第2実施形態≫
次に、
図10〜
図12を参照して第2実施形態に係るハーフプレキャストコンクリート構造の橋脚31について説明する。なお、第1実施形態と形態又は機能が同一又は同様の要素には同一又は下一桁が共通する符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0064】
図10は、第2実施形態に係るハーフプレキャストコンクリート構造の橋脚31の正面図である。
図10に示されるように、橋脚31は、地盤Gに構築される基礎32と、基礎32の上に構築される橋脚本体33と有している。基礎32は少なくともフーチング32aを有している。基礎32が図示しない基礎杭とフーチング32aとを有していてもよい。橋脚本体33は、フーチング32aの上に構築される柱部33Aと、柱部33Aの上端に橋軸直角方向に延出するように一体に構築された梁部33Bとを有している。柱部33Aは、鉛直方向に積み重ねるように構築される複数の柱部分34により構成される。梁部33Bの上には、橋の上部構造3が載置される。他の実施形態では、橋脚本体33が梁部33Bを有しておらず、柱部33Aの上に橋の上部構造3が載置されてもよい。
【0065】
図11は、
図10中のXI−XI断面図である。
図10及び
図11に示されるように、橋脚31の柱部33Aは、最下段及び最上段を除いた少なくとも中間部分において中空(閉環状)の断面形状を有している。中空断面部に配置される柱部分34は、平面視において外形輪郭に沿って周方向に並べられ、中空断面形状を有するプレキャストコンクリートからなる複数のハーフプレキャスト部材36と、複数のハーフプレキャスト部材36の内部に充填される現場打ちコンクリートからなる内部コンクリート部38と、周方向に互いに隣接する一対のハーフプレキャスト部材36の間に設けられる継手40とを有している。
【0066】
本実施形態では、コ字状を呈する中空断面形状の2つのハーフプレキャスト部材36が、開口部を向き合わせて対向配置され、それぞれの一端部同士の間に配置された2つの継手40によって互いに連結されて閉断面(中空断面)形状を形成している。以下、
図11の左側に配置されるハーフプレキャスト部材36を第1ハーフプレキャスト部材36
−1とし、右側に配置されるハーフプレキャスト部材36を第2ハーフプレキャスト部材36
−2として説明する。
【0067】
2つの継手40は同じ構成となっている。そのため、ここでは
図11の上側の継手40に基づいて説明する。継手40は、第1ハーフプレキャスト部材36
−1に設けられ、鉛直に延在する第1継手部材41と、第2ハーフプレキャスト部材36
−2に設けられ、鉛直に延在する第2継手部材42とを主要素として構成される。第1継手部材41及び第2継手部材42は、ハーフプレキャスト部材36の高さと同じ長さ(高さ)を有している。鉛直方向に積み重ねられる第1継手部材41同士及び第2継手部材42同士は、公知のジョイント構造を介して長手方向に互いに接続される。
【0068】
第1継手部材41は、第1ハーフプレキャスト部材36
−1の外面に沿って設けられ、第2ハーフプレキャスト部材36
−2に対向する位置に形成された開口43aを有するC字状の断面形状を呈する継手鋼管部43と、継手鋼管部43の開口43aと相反する側に接合され、第1ハーフプレキャスト部材36
−1に埋設される埋設部45とを有している。本実施形態では、埋設部45の先端は第1ハーフプレキャスト部材36
−1の中空部に位置し、内部コンクリート部38にも埋設されている。継手鋼管部43の内面には周方向に延在する複数の突条21(
図5参照)が形成されている。これにより、継手鋼管部43の内面は鉛直方向に沿って凹凸をなしている。
【0069】
継手鋼管部43と第2ハーフプレキャスト部材36
−2との間には、開口43aを挟んでそれぞれ開口43aから若干離間した位置に一対の開き防止部44が配置されている。本実施形態では、開き防止部44は平鋼により形成され、第2ハーフプレキャスト部材36
−2の第1ハーフプレキャスト部材36
−1側の端面(妻側端面)から突出するように、第2ハーフプレキャスト部材36
−2に埋設されている。他の実施形態では、開き防止部44は、四角鋼や丸鋼により形成されてもよく、継手鋼管部43の外周面に接合されてもよく、コンクリートによって第2ハーフプレキャスト部材36
−2の外面に一体形成されてもよい。
【0070】
一対の開き防止部44は、継手鋼管部43の外面に当接するように、或いは継手鋼管部43の外面との離間距離が継手鋼管部43(より詳しくは、継手鋼管部43の開口43aを形成する一対の縁部)と第2ハーフプレキャスト部材36
−2との離間距離よりも小さくなるように配置及び寸法が定められる。つまり、一対の開き防止部44は、第2ハーフプレキャスト部材36
−2の妻側端面からこれと垂直な方向に突出し、継手鋼管部43の外面に当接することで継手鋼管部43(開口43aを形成する縁部)が妻側端面に当接することを防止する。これにより、継手鋼管部43と第2ハーフプレキャスト部材36
−2との間には間隙g(
図3参照)が形成されている。
【0071】
第2継手部材42は、継手鋼管部43の内部に配置される先端及び第2ハーフプレキャスト部材36
−2に埋設される基端を有する平鋼板46と、平鋼板46の継手鋼管部43の内部に配置される部分の両主面に設けられ、両主面に鉛直方向に沿って凹凸形状を形成する複数の突起47とを有している。平鋼板46は、継手鋼管部43の開口43aの幅よりも小さな厚さとされている。本実施形態では、平鋼板46の基端は第2ハーフプレキャスト部材36
−2の中空部に位置し、内部コンクリート部38にも埋設されている。
【0072】
継手鋼管部43の内面と平鋼板46及び突起47の外面との間には、充填材49が充填され、固化している。これにより、第1継手部材41と第2継手部材42とが一体化され、第1ハーフプレキャスト部材36
−1と第2ハーフプレキャスト部材36
−2とが互いに接合される。また、継手鋼管部43と第2ハーフプレキャスト部材36
−2との間に間隙g(
図3)が形成されていることから、充填材49は継手鋼管部43の外、即ち少なくとも一対の開き防止部44の間(一対の開き防止部44と第2ハーフプレキャスト部材36
−2の外面及び継手鋼管部43の外周面とにより囲まれる部分)にも充填されている。
【0073】
第2継手部材42を構成する突起47は、継手鋼管部43の開口43aの幅よりも大きな軸方向長さを有する鋼管部22(
図4)と、鋼管部22の内部に隙間なく充填され固化した高強度モルタル等からなる充填部23(
図4)とにより構成される柱状体24(
図4)によって形成されている。柱状体24は、平鋼板46に鉛直方向に並ぶように形成された複数の貫通穴にそれぞれ挿入され、貫通穴に挿入された状態で、鋼管部22の長手方向の中央部が平鋼板46に溶接されることによって平鋼板46に一体化される。これにより、平鋼板46の両主面は、複数の突起47によって鉛直方向に沿って凹凸形状に形成されている。
【0074】
継手鋼管部43の内面に形成された突条21(
図5)は、継手鋼管部43の内部に充填材49が充填された後、継手鋼管部43と充填材49との鉛直方向のずれを防止するずれ防止部として機能する。柱状体24は、ハーフプレキャスト部材36の配置時には継手鋼管部43に係合する被ガイド部として機能し、継手鋼管部43の内部に充填材49が充填された後には充填材49と第2継手部材42との鉛直方向のずれを防止するずれ防止部として機能する。
【0075】
このように構成されたハーフプレキャストコンクリート構造の橋脚31は次のような作用効果を得ることができる。即ち、
図11に示されるように、継手鋼管部43の内面が鉛直方向に沿って凹凸をなし、平鋼板46の継手鋼管部43の内部に配置される部分の両主面に鉛直方向に沿って凹凸形状を形成する複数の突起47が設けられ、継手鋼管部43の内面と平鋼板46及び突起47の外面との間に充填材49が充填されている。そのため、第1ハーフプレキャスト部材36
−1に設けられた継手鋼管部43と第2ハーフプレキャスト部材36
−2に設けられた平鋼板46とのせん断耐力が高くなる。
【0076】
特に、継手鋼管部43の開口43aが第2ハーフプレキャスト部材36
−2に対向する位置に形成されたことにより、せん断力を受けた継手鋼管部43が開口43aを広げるように開こうとした時に第2ハーフプレキャスト部材36
−2によって開きを阻止される。これにより、継手鋼管部43と充填材49との縁切れが生じず、せん断ずれが防止されることでせん断耐力が向上する。また、互いに隣接する一対のハーフプレキャスト部材36を継手40により互いに接合することができ、ハーフプレキャスト部材36内に設けられる鉄筋同士を接続する必要がない上、現場打ちコンクリートのために型枠を組み立てる必要もないため、ハーフプレキャストコンクリート構造の橋脚31の施工性を改善することができる。
【0077】
突条21による作用効果や、柱状体24による作用効果、開き防止部44による作用効果は、第1実施形態の突条21、柱状体24及び開き防止鋼14と同様である。なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、柱状体24と共に、或いは柱状体24の代わりにスタッド25(
図9参照)が平鋼板46に接合されてもよい。
【0078】
図12は、第2実施形態の変形例に係るハーフプレキャストコンクリート構造の橋脚31における、
図11に相当する断面図である。この変形例の橋脚31では、柱部33Aを構成する柱部分34が、平面視において外形輪郭に沿って周方向に並べられた4つのハーフプレキャスト部材36と、4つの継手40とを有している。図示例では、4つのハーフプレキャスト部材36によって柱部分34が正方形の断面形状とされている。4つのハーフプレキャスト部材36は、それぞれ角部を形成し、橋軸方向及び橋軸直角方向に同一寸法とされたL字状の同一形状とされている。
【0079】
他の例では、4つのハーフプレキャスト部材36が角部を形成し且つ橋軸方向又は橋軸直角方向に長い扁平状の同一形状とされてもよい。或いは、4つのハーフプレキャスト部材36が円弧状や直線状、直線部と円弧部とを含む形状とされ、4つのハーフプレキャスト部材36によって柱部分34が円形や長円、楕円形等の断面形状とされてもよい。更に、柱部分34が3つや5つ以上のハーフプレキャスト部材36を有していてもよい。
【0080】
或いは、
図11や
図12に示される柱部分34において、周方向に互いに隣接する一対のハーフプレキャスト部材36の間に複数の継手40が並列に設けられてもよい。
【0081】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば幅広く変形実施することができる。また、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜組み合わせることや選択することができる。