特許第6567983号(P6567983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6567983自転車用制御装置および自転車の変速システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6567983
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】自転車用制御装置および自転車の変速システム
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20190819BHJP
   B62M 25/08 20060101ALI20190819BHJP
   B62M 6/55 20100101ALI20190819BHJP
【FI】
   B62M6/45
   B62M25/08
   B62M6/55
【請求項の数】30
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-16390(P2016-16390)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2017-132437(P2017-132437A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴士
【審査官】 杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−227669(JP,A)
【文献】 特開平11−180376(JP,A)
【文献】 特開平09−150779(JP,A)
【文献】 特開2015−063222(JP,A)
【文献】 特開2003−095182(JP,A)
【文献】 特開平11−348868(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3199830(JP,U)
【文献】 特開2001−251707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/45
B62M 6/55
B62M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの変速ステージを有し、クランクの回転に対する車輪の回転の比率を変更可能な第1の変速機と、
前記クランクに入力される人力駆動力をアシストするモータと、
前記変速ステージのいずれにおいても、前記クランクの回転に対する前記車輪の回転の比率を変更せずに、前記モータからの回転力を前記クランクから前記車輪までの動力伝達経路に伝達可能な第2の変速機と、を備える自転車に搭載可能な自転車用制御装置であって、
前記第1の変速機の状態または前記第1の変速機への変速指示と、前記自転車の状態とに基づいて前記第2の変速機を制御する制御部を備え、
前記自転車の状態は、前記クランクまたは前記モータの回転数と、前記人力駆動力に基づくトルクとの少なくとも1つを含み、
前記制御部は、前記第1の変速機が動作することによって前記回転数が予め定める第1の回転数を超える場合には、前記第2の変速機の変速比が大きくなるように前記第2の変速機を制御する、自転車用制御装置。
【請求項2】
少なくとも2つの変速ステージを有し、クランクの回転に対する車輪の回転の比率を変更可能な第1の変速機と、
前記クランクに入力される人力駆動力をアシストするモータと、
前記変速ステージのいずれにおいても、前記クランクの回転に対する前記車輪の回転の比率を変更せずに、前記モータからの回転力を前記クランクから前記車輪までの動力伝達経路に伝達可能な第2の変速機と、を備える自転車に搭載可能な自転車用制御装置であって、
前記第2の変速機と、前記第1の変速機とを前記自転車の状態に基づいて制御する制御部を備え、
前記自転車の状態は、前記クランクまたは前記モータの回転数と、前記人力駆動力に基づくトルクとの少なくとも1つを含み、
前記制御部は、前記第1の変速機が動作することによって前記回転数が予め定める第1の回転数を超える場合には、前記第2の変速機の変速比が大きくなるように前記第2の変速機を制御する、自転車用制御装置。
【請求項3】
少なくとも2つの変速ステージを有し、クランクの回転に対する車輪の回転の比率を変更可能な第1の変速機と、
前記クランクに入力される人力駆動力をアシストするモータと、
前記変速ステージのいずれにおいても、前記クランクの回転に対する前記車輪の回転の比率を変更せずに、前記モータからの回転力を前記クランクから前記車輪までの動力伝達経路に伝達可能な第2の変速機と、を備える自転車に搭載可能な自転車用制御装置であって、
前記第1の変速機の状態または前記第1の変速機への変速指示と、前記自転車の状態とに基づいて前記第2の変速機を制御する制御部を備え、
前記自転車の状態は、前記クランクまたは前記モータの回転数と、前記人力駆動力に基づくトルクとの少なくとも1つを含み、
前記制御部は、前記第1の変速機が動作することによって前記回転数が予め定める第2の回転数未満になる場合には、前記第2の変速機の変速比が小さくなるように前記第2の変速機を制御する、自転車用制御装置。
【請求項4】
少なくとも2つの変速ステージを有し、クランクの回転に対する車輪の回転の比率を変更可能な第1の変速機と、
前記クランクに入力される人力駆動力をアシストするモータと、
前記変速ステージのいずれにおいても、前記クランクの回転に対する前記車輪の回転の比率を変更せずに、前記モータからの回転力を前記クランクから前記車輪までの動力伝達経路に伝達可能な第2の変速機と、を備える自転車に搭載可能な自転車用制御装置であって、
前記第2の変速機と、前記第1の変速機とを前記自転車の状態に基づいて制御する制御部を備え、
前記自転車の状態は、前記クランクまたは前記モータの回転数と、前記人力駆動力に基づくトルクとの少なくとも1つを含み、
前記制御部は、前記第1の変速機が動作することによって前記回転数が予め定める第2の回転数未満になる場合には、前記第2の変速機の変速比が小さくなるように前記第2の変速機を制御する、自転車用制御装置。
【請求項5】
少なくとも2つの変速ステージを有し、クランクの回転に対する車輪の回転の比率を変更可能な第1の変速機と、
前記クランクに入力される人力駆動力をアシストするモータと、
前記変速ステージのいずれにおいても、前記クランクの回転に対する前記車輪の回転の比率を変更せずに、前記モータからの回転力を前記クランクから前記車輪までの動力伝達経路に伝達可能な第2の変速機と、を備える自転車に搭載可能な自転車用制御装置であって、
前記第1の変速機の状態または前記第1の変速機への変速指示と、前記自転車の状態とに基づいて前記第2の変速機を制御する制御部を備え、
前記自転車の状態は、前記クランクまたは前記モータの回転数と、前記人力駆動力に基づくトルクとの少なくとも1つを含み、
前記制御部は、前記第1の変速機が動作することによって前記トルクが予め定める第1のトルク未満になる場合には、前記第2の変速機の変速比が大きくなるように前記第2の変速機を制御する、自転車用制御装置。
【請求項6】
少なくとも2つの変速ステージを有し、クランクの回転に対する車輪の回転の比率を変更可能な第1の変速機と、
前記クランクに入力される人力駆動力をアシストするモータと、
前記変速ステージのいずれにおいても、前記クランクの回転に対する前記車輪の回転の比率を変更せずに、前記モータからの回転力を前記クランクから前記車輪までの動力伝達経路に伝達可能な第2の変速機と、を備える自転車に搭載可能な自転車用制御装置であって、
前記第2の変速機と、前記第1の変速機とを前記自転車の状態に基づいて制御する制御部を備え、
前記自転車の状態は、前記クランクまたは前記モータの回転数と、前記人力駆動力に基づくトルクとの少なくとも1つを含み、
前記制御部は、前記第1の変速機が動作することによって前記トルクが予め定める第1のトルク未満になる場合には、前記第2の変速機の変速比が大きくなるように前記第2の変速機を制御する、自転車用制御装置。
【請求項7】
少なくとも2つの変速ステージを有し、クランクの回転に対する車輪の回転の比率を変更可能な第1の変速機と、
前記クランクに入力される人力駆動力をアシストするモータと、
前記変速ステージのいずれにおいても、前記クランクの回転に対する前記車輪の回転の比率を変更せずに、前記モータからの回転力を前記クランクから前記車輪までの動力伝達経路に伝達可能な第2の変速機と、を備える自転車に搭載可能な自転車用制御装置であって、
前記第1の変速機の状態または前記第1の変速機への変速指示と、前記自転車の状態とに基づいて前記第2の変速機を制御する制御部を備え、
前記自転車の状態は、前記クランクまたは前記モータの回転数と、前記人力駆動力に基づくトルクとの少なくとも1つを含み、
前記制御部は、前記第1の変速機が動作することによって前記トルクが予め定める第2のトルクを超える場合には、前記第2の変速機の変速比が小さくなるように前記第2の変速機を制御する、自転車用制御装置。
【請求項8】
少なくとも2つの変速ステージを有し、クランクの回転に対する車輪の回転の比率を変更可能な第1の変速機と、
前記クランクに入力される人力駆動力をアシストするモータと、
前記変速ステージのいずれにおいても、前記クランクの回転に対する前記車輪の回転の比率を変更せずに、前記モータからの回転力を前記クランクから前記車輪までの動力伝達経路に伝達可能な第2の変速機と、を備える自転車に搭載可能な自転車用制御装置であって、
前記第2の変速機と、前記第1の変速機とを前記自転車の状態に基づいて制御する制御部を備え、
前記自転車の状態は、前記クランクまたは前記モータの回転数と、前記人力駆動力に基づくトルクとの少なくとも1つを含み、
前記制御部は、前記第1の変速機が動作することによって前記トルクが予め定める第2のトルクを超える場合には、前記第2の変速機の変速比が小さくなるように前記第2の変速機を制御する、自転車用制御装置。
【請求項9】
少なくとも2つの変速ステージを有し、クランクの回転に対する車輪の回転の比率を変更可能な第1の変速機と、
前記クランクに入力される人力駆動力をアシストするモータと、
前記変速ステージのいずれにおいても、前記クランクの回転に対する前記車輪の回転の比率を変更せずに、前記モータからの回転力を前記クランクから前記車輪までの動力伝達経路に伝達可能な第2の変速機と、を備える自転車に搭載可能な自転車用制御装置であって、
前記第2の変速機と、前記第1の変速機とを前記自転車の状態に基づいて制御する制御部を備え、
前記自転車の状態は、前記クランクまたは前記モータの回転数と、前記人力駆動力に基づくトルクとの少なくとも1つを含み、
前記制御部は、前記クランクの回転数が所定の範囲に維持されるように前記第1の変速機を制御する、自転車用制御装置。
【請求項10】
少なくとも2つの変速ステージを有し、クランクの回転に対する車輪の回転の比率を変更可能な第1の変速機と、
前記クランクに入力される人力駆動力をアシストするモータと、
前記変速ステージのいずれにおいても、前記クランクの回転に対する前記車輪の回転の比率を変更せずに、前記モータからの回転力を前記クランクから前記車輪までの動力伝達経路に伝達可能な第2の変速機と、を備える自転車に搭載可能な自転車用制御装置であって、
前記第1の変速機の動作にともなう前記クランクの回転数、前記モータの回転数、または、前記人力駆動力に基づくトルクの少なくとも1つの変化に応じて前記第2の変速機を制御する制御部を備える、自転車用制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第1の変速機が動作することによって前記回転数が予め定める第1の回転数を超える場合には、前記第2の変速機の変速比が大きくなるように前記第2の変速機を制御する、請求項3〜10のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記第1の変速機の状態または前記第1の変速機への変速指示と、前記回転数とに基づいて、前記第1の変速機が動作することによって前記回転数が前記第1の回転数を超える値に変化するか否かを予測する、請求項11に記載の自転車用制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記第1の変速機が動作しないで、前記回転数が前記第1の回転数を超えた場合、前記第2の変速機の変速比が大きくなるように前記第2の変速機を制御する、請求項11または12に記載の自転車用制御装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記第1の変速機が動作することによって前記回転数が予め定める第2の回転数未満になる場合には、前記第2の変速機の変速比が小さくなるように前記第2の変速機を制御する、請求項1、2、5〜13のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記第1の変速機の状態または前記第1の変速機への変速指示と、前記回転数とに基づいて、前記第1の変速機が動作することによって前記回転数が前記第2の回転数未満の値に変化するか否かを予測する、請求項14に記載の自転車用制御装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記第1の変速機が動作しないで、前記回転数が前記第2の回転数未満になる場合、前記第2の変速機の変速比が小さくなるように前記第2の変速機を制御する、請求項14または15に記載の自転車用制御装置。
【請求項17】
前記第1の回転数は、前記第2の回転数よりも大きい、請求項11を直接的または間接的に引用する請求項14〜16のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記第1の変速機が動作することによって前記トルクが予め定める第1のトルク未満になる場合には、前記第2の変速機の変速比が大きくなるように前記第2の変速機を制御する、請求項1〜4、7〜17のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項19】
前記制御部は、前記第1の変速機の状態または前記第1の変速機への変速指示と、前記トルクとに基づいて、前記第1の変速機が動作することによって前記トルクが前記第1のトルク未満の値に変化するか否かを予測する、請求項18に記載の自転車用制御装置。
【請求項20】
前記制御部は、前記第1の変速機が動作することによって前記トルクが予め定める第2のトルクを超える場合には、前記第2の変速機の変速比が小さくなるように前記第2の変速機を制御する、請求項1〜6、9〜19のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項21】
前記制御部は、前記第1の変速機の状態または前記第1の変速機への変速指示と、前記トルクとに基づいて、前記第1の変速機が動作することによって前記トルクが前記第2のトルクを超える値に変化するか否かを予測する、請求項20に記載の自転車用制御装置。
【請求項22】
前記制御部は、前記クランクの回転数が所定の範囲に維持されるように前記第1の変速機を制御する、請求項2、4、6、8、9のいずれか一項、または、請求項2、4、6、8、9のいずれか一項を直接的または間接的に引用する請求項11〜21のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項23】
前記制御部は、前記第2の変速機および前記第1の変速機を所定の順番で動作させる、または前記第2の変速機および前記第1の変速機を同時に動作させる、請求項22に記載の自転車用制御装置。
【請求項24】
前記所定の範囲の上限値は、前記第1の回転数よりも大きく、前記所定の範囲の下限値は、前記第2の回転数よりも小さい、請求項17を直接的または間接的に引用する請求項22または23に記載の自転車用制御装置。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか一項に記載の自転車用制御装置と、
前記第1の変速機と、
前記第2の変速機とを備える、自転車の変速システム。
【請求項26】
少なくとも前記第2の変速機が設けられ、クランク軸を回転可能な状態で支持するハウジングをさらに備える、請求項25に記載の自転車の変速システム。
【請求項27】
請求項1〜24のいずれか一項に記載の自転車用制御装置と、
自転車のクランクの回転に対する車輪の回転の比率を変更可能な第1の変速機と、
少なくとも2つの変速ステージを有し、前記変速ステージのいずれにおいても、前記クランクの回転に対する前記車輪の回転の比率を変更せずに、モータからの回転力を前記クランクから前記車輪までの動力伝達経路に伝達可能な第2の変速機と、
を備える、自転車の変速システム。
【請求項28】
前記第2の変速機は、前記動力伝達経路において、前記第1の変速機よりも上流側に前記モータからの回転力を伝達する、請求項27に記載の自転車の変速システム。
【請求項29】
前記第1の変速機は、前記クランクのまわりに配置されるフロント変速機および後輪の車軸のまわりに配置されるリア変速機の少なくとも一方を含む、請求項28に記載の自転車の変速システム。
【請求項30】
前記第1の変速機は、前記クランクのまわりに配置されるフロント変速機を含み、
前記第2の変速機は、前記動力伝達経路において、前記フロント変速機よりも下流側に前記モータからの回転力を伝達する、請求項27に記載の自転車の変速システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用制御装置および自転車の変速システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人力駆動力をアシストするモータを備える自転車の変速システムが知られている。自転車の変速システムは、モータの他に、モータの回転を減速して出力する減速機、および、減速機およびクランク軸のそれぞれから回転が伝達される合力部材等をさらに含む。特許文献1は、従来の自転車の変速システムの一例を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2623419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の自転車の変速システムでは、モータの回転速度は、クランクの回転速度に比例する。モータは、回転速度に応じて出力トルクが変動する特性を有するので、クランクの回転速度によっては、モータの出力トルクが不足してアシスト力が小さくなってしまったり、モータの駆動効率が低くなってしまったりするおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、クランクの回転速度の変化に伴ってアシスト力が低下してしまうことを抑制することができる自転車用制御装置および自転車の変速システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕本発明に従う自転車用制御装置の一形態は、少なくとも2つの変速ステージを有し、クランクの回転に対する車輪の回転の比率を変更可能な第1の変速機と、前記クランクに入力される人力駆動力をアシストするモータと、前記変速ステージのいずれにおいても、前記クランクの回転に対する前記車輪の回転の比率を変更せずに、前記モータからの回転力を前記クランクから前記車輪までの動力伝達経路に伝達可能な第2の変速機と、を備える自転車に搭載可能な自転車用制御装置であって、前記第1の変速機の状態または前記第1の変速機への変速指示と、前記自転車の状態とに基づいて前記第2の変速機を制御する制御部を備える。
【0007】
〔2〕本発明に従う自転車用制御装置の一形態は、少なくとも2つの変速ステージを有し、クランクの回転に対する車輪の回転の比率を変更可能な第1の変速機と、前記クランクに入力される人力駆動力をアシストするモータと、前記変速ステージのいずれにおいても、前記クランクの回転に対する前記車輪の回転の比率を変更せずに、前記モータからの回転力を前記クランクから前記車輪までの動力伝達経路に伝達可能な第2の変速機と、を備える自転車に搭載可能な自転車用制御装置であって、前記第2の変速機と、前記第1の変速機とを前記自転車の状態に基づいて制御する制御部を備える。
【0008】
〔3〕前記自転車用制御装置の一例によれば、前記自転車の状態は、前記クランクまたは前記モータの回転数と、前記人力駆動力に基づくトルクとの少なくとも1つを含む。
〔4〕前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記第1の変速機が動作することによって前記回転数が予め定める第1の回転数を超える場合には、前記第2の変速機の変速比が大きくなるように前記第2の変速機を制御する。
【0009】
〔5〕前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記第1の変速機の状態または前記第1の変速機への変速指示と、前記回転数とに基づいて、前記第1の変速機が動作することによって前記回転数が前記第1の回転数を超える値に変化するか否かを予測する。
【0010】
〔6〕前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記第1の変速機が動作しないで、前記回転数が前記第1の回転数を超えた場合、前記第2の変速機の変速比が大きくなるように前記第2の変速機を制御する。
【0011】
〔7〕前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記第1の変速機が動作することによって前記回転数が予め定める第2の回転数未満になる場合には、前記第2の変速機の変速比が小さくなるように前記第2の変速機を制御する。
【0012】
〔8〕前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記第1の変速機の状態または前記第1の変速機への変速指示と、前記回転数とに基づいて、前記第1の変速機が動作することによって前記回転数が前記第2の回転数未満の値に変化するか否かを予測する。
【0013】
〔9〕前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記第1の変速機が動作しないで、前記回転数が前記第2の回転数未満になる場合、前記第2の変速機の変速比が小さくなるように前記第2の変速機を制御する。
【0014】
〔10〕前記自転車用制御装置の一例によれば、前記第1の回転数は、前記第2の回転数よりも大きい。
〔11〕前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記第1の変速機が動作することによって前記トルクが予め定める第1のトルク未満になる場合には、前記第2の変速機の変速比が大きくなるように前記第2の変速機を制御する。
【0015】
〔12〕前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記第1の変速機の状態または前記第1の変速機への変速指示と、前記トルクとに基づいて、前記第1の変速機が動作することによって前記トルクが前記第1のトルク未満の値に変化するか否かを予測する。
【0016】
〔13〕前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記第1の変速機が動作することによって前記トルクが予め定める第2のトルクを超える場合には、前記第2の変速機の変速比が小さくなるように前記第2の変速機を制御する。
【0017】
〔14〕前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記第1の変速機の状態または前記第1の変速機への変速指示と、前記トルクとに基づいて、前記第1の変速機が動作することによって前記トルクが前記第2のトルクを超える値に変化するか否かを予測する。
【0018】
〔15〕前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記クランクの回転数が所定の範囲に維持されるように前記第1の変速機を制御する。
〔16〕前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記第2の変速機および前記第1の変速機を所定の順番で動作させる、または前記第2の変速機および前記第1の変速機を同時に動作させる。
【0019】
〔17〕前記自転車用制御装置の一例によれば、前記所定の範囲の上限値は、前記第1の回転数よりも大きく、前記所定の範囲の下限値は、前記第2の回転数よりも小さい。
〔18〕本発明に従う自転車の変速システムの一形態は、〔1〕〜〔17〕のいずれか一項に記載の自転車用制御装置と、前記第1の変速機と、前記第2の変速機とを備える。
【0020】
〔19〕前記自転車の変速システムの一例によれば、少なくとも前記第2の変速機が設けられ、クランク軸を回転可能な状態で支持するハウジングをさらに備える。
〔20〕本発明に従う自転車の変速システムの一形態は、自転車のクランクの回転に対する車輪の回転の比率を変更可能な第1の変速機と、少なくとも2つの変速ステージを有し、前記変速ステージのいずれにおいても、前記クランクの回転に対する前記車輪の回転の比率を変更せずに、モータからの回転力を前記クランクから前記車輪までの動力伝達経路に伝達可能な第2の変速機と、を備える。
【0021】
〔21〕前記自転車の変速システムの一例によれば、前記第2の変速機は、前記動力伝達経路において、前記第1の変速機よりも上流側に前記モータからの回転力を伝達する。
〔22〕前記自転車の変速システムの一例によれば、前記第1の変速機は、前記クランクのまわりに配置されるフロント変速機および後輪の車軸のまわりに配置されるリア変速機の少なくとも一方を含む。
【0022】
〔23〕前記自転車の変速システムの一例によれば、前記第1の変速機は、前記クランクのまわりに配置されるフロント変速機を含み、前記第2の変速機は、前記動力伝達経路において、前記フロント変速機よりも下流側に前記モータからの回転力を伝達する。
【0023】
〔24〕前記自転車の変速システムの一例によれば、〔1〕〜〔17〕のいずれか一項に記載の自転車用制御装置をさらに含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明の自転車用制御装置および自転車の変速システムは、クランクの回転速度の変化に伴ってアシスト力が低下してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1の実施の形態の自転車用変速システムを備える自転車の側面図。
図2】第1の実施の形態の変速システムのブロック図。
図3】第1の実施の形態の自転車の動力伝達経路の模式図。
図4】第1の実施の形態のドライブユニットの断面図。
図5】第1の実施の形態の第1の変速処理のフローチャート。
図6】クランク回転数とトルクの関係を示すグラフ。
図7】第1の変速処理の実行態様の一例を示すタイミングチャート。
図8】第1の実施の形態の第2の変速処理のフローチャート。
図9】第2の実施の形態の第3の変速処理のフローチャート。
図10】第2の実施の形態の第4の変速処理のフローチャート。
図11】第3の実施の形態の第5の変速処理のフローチャート。
図12】第1の変形例の自転車の動力伝達経路の模式図。
図13】第2の変形例の自転車の動力伝達経路の模式図。
図14】第3の変形例のドライブユニットの断面図。
図15】第4の変形例のドライブユニットの模式図。
図16】第4の変形例の第2の変速機の模式図。
図17】第5の変形例のドライブユニットの模式図。
図18】第5の変形例の第2の変速機の第1の状態を示す模式図。
図19】第5の変形例の第2の変速機の第2の状態を示す模式図。
図20】第6の変形例の第2の変速機の第1の状態を示す模式図。
図21】第6の変形例の第2の変速機の第2の状態を示す模式図。
図22】第6の変形例の変形例の第2の変速機を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施形態)
図1図8を参照して、第1の実施形態の自転車の変速システムについて説明する。
図1に示されるように、自転車の変速システム(以下、「変速システム50」)が搭載される自転車10は、前輪12、後輪14、車体16、駆動機構18、および、バッテリユニット20を備えている。後輪14は、車輪である。車体16は、フレーム22、フレーム22に接続されるフロントフォーク24、および、フロントフォーク24にステム26を介して着脱可能に接続されるハンドルバー26Aを備えている。フロントフォーク24は、フレーム22に支持されて、前輪12の車軸12Aに接続される。
【0027】
駆動機構18は、クランクアセンブリ28、一対のペダル30、リアスプロケット34、および、チェーン36を含む。
クランクアセンブリ28は、クランク38およびフロントスプロケット40を備えている。クランク38は、フレーム22に回転可能に支持されるクランク軸42、および、一対のクランクアーム44を備えている。一対のクランクアーム44は、クランク軸42に取り付けられている。一対のペダル30は、ペダル本体31およびペダル軸32を有する。ペダル軸32は、クランクアーム44のそれぞれに連結される。ペダル本体31は、ペダル軸32に対する回転が可能な状態でペダル軸32のそれぞれに支持される。
【0028】
フロントスプロケット40は、クランク軸42に連結されている。フロントスプロケット40は、クランク軸42と同軸に設けられる。フロントスプロケット40は、クランク軸42と相対回転しないように連結されてもよいし、クランク軸42が前転するときには、フロントスプロケット40も前転するように第1のクラッチ62(図4参照)を介して連結されてもよい。
【0029】
リアスプロケット34は、後輪14の車軸14Aまわりに回転可能に後輪14に取り付けられている。リアスプロケット34は、第2のクラッチ(図示略)を介して後輪14に連結される。第2のクラッチは、ワンウェイクラッチである。チェーン36は、フロントスプロケット40とリアスプロケット34とに巻き掛けられている。ペダル30に加えられる人力駆動力によってクランク軸42が回転するとき、フロントスプロケット40、チェーン36、および、リアスプロケット34によって、後輪14が回転する。
【0030】
バッテリユニット20は、バッテリ46、および、バッテリ46をフレーム22に着脱可能に取り付けるためのバッテリホルダ48を備えている。バッテリ46は、1または複数のバッテリセルを含む。バッテリ46は、充電池によって構成される。バッテリ46は、モータ56に電気的に接続されて、モータ56に電力を供給する。
【0031】
図2に示されるとおり、変速システム50は、第1の変速機52、第2の変速機54、および、モータ56、を備える。一例では、変速システム50は、操作部58および自転車用制御装置(以下、「制御装置110」)をさらに含む。モータ56、第2の変速機54、および、制御装置110はドライブユニット60を構成する。制御装置110は、モータ56、第1の変速機52、および、第2の変速機54を備える自転車10に搭載可能である。
【0032】
図3に示されるとおり、第1の変速機52は、クランク38から後輪14までの動力伝達経路RTに設けられる。第1の変速機52は、後輪14のハブと一体化されている内装変速機を含む。第1の変速機52は、クランク38の回転に対する後輪14の回転の比率を変更可能である。図2に示す第1の変速機52は、変速機構52Aおよびアクチュエータ52Bを含む。変速機構52Aは、例えば遊星歯車機構を含む。第1の変速機52は、少なくとも2つの変速ステージを有する。アクチュエータ52Bの動作によって変速機構52Aの歯車の連結態様が切り替えられ、第1の変速機52の変速ステージが変化する。これによって、自転車の変速比r1が変更される。自転車の変速比r1は、図1に示すクランク38の回転数に対する後輪14の回転数の比率と対応する。
【0033】
図3に示すとおり、第2の変速機54は、クランク38から後輪14までの動力伝達経路RTにおいて、第1の変速機52よりも上流側にモータ56からの回転力を伝達する。第2の変速機54は、第1の変速機52の変速ステージのいずれにおいても、クランク38の回転に対する後輪14の回転の比率を変更せずに、モータ56からの回転力をクランク38から後輪14までの動力伝達経路RTに伝達可能である。第2の変速機54およびモータ56は、図4に示すドライブユニット60のハウジング72に設けられる。ドライブユニット60の機能は、クランク軸42に入力される人力駆動力をアシストすることである。ドライブユニット60は、自転車10のフレーム22(図1参照)に取り付けられ、フレーム22に対して着脱可能である。ドライブユニット60とフレーム22とを結合する手段は、例えばボルトである。
【0034】
図2に示す操作部58は、ハンドルバー26A(図1参照)に取り付けられる。操作部58は、第1の変速機52を動作させるための信号を制御装置110に送信する。操作部58は、運転者の操作によって、自転車の変速比r1を大きくするシフトアップ信号および自転車の変速比r1を小さくするシフトダウン信号を制御装置110に送信する。
【0035】
図4に示されるとおり、ドライブユニット60は、第1の遊星歯車機構64、モータ56、および、合力部材70を含む。モータ56は、第1のモータ66、および、第2のモータ68を含む。第1のモータ66の一例は、電気モータである。第2のモータ68の一例は電気モータである。一例では、ドライブユニット60は、クランク軸42、ハウジング72、第1の減速機構74、第2の減速機構76、第1のワンウェイクラッチ78、および、第2のワンウェイクラッチ80をさらに含む。
【0036】
少なくとも第1のモータ66は、クランク38に入力される人力駆動力をアシストする。第2のモータ68は、第1の遊星歯車機構64の第1の伝達体90および第2の遊星歯車機構74Aの第2の伝達体96の回転を制御することによって、第1のモータ66から第1の遊星歯車機構64に入力される回転数に対する第2の遊星歯車機構74Aから出力される回転数の比率を変更する。第1の遊星歯車機構64に入力される回転数に対する第2の遊星歯車機構74Aから出力される回転数の比率は、第2の変速機54の変速比r2である。第2の変速機54は、第1の遊星歯車機構64、第2の遊星歯車機構74A、および第2のモータ68を含んで構成される。
【0037】
クランク軸42は、ドライブユニット60に対する回転が可能な状態でドライブユニット60によって支持される。クランク軸42の両端部は、ハウジング72から突出する。ハウジング72は、クランク軸42を回転可能な状態で支持する。第1のモータ66、第2の変速機54、第1のワンウェイクラッチ78、第2のワンウェイクラッチ80、第1の減速機構74、および、制御装置110は、ハウジング72に設けられている。
【0038】
合力部材70には、後述する第1の出力体88の回転が伝達され、人力駆動力による回転が第1の遊星歯車機構64を介さないで与えられる。合力部材70は、中空軸82およびギア84を含む。中空軸82は、ハウジング72に対する回転が可能な状態でハウジング72に支持される。合力部材70は、クランク軸42の軸心まわりに設けられ、クランク軸42の軸心まわりに回転可能である。中空軸82の一方の端部82Aは、ハウジング72から突出する。クランク軸42は、両端部が中空軸82およびハウジング72から突出するように中空軸82内に挿入される。クランク軸42は、中空軸82を介してハウジング72に支持される。ギア84は、中空軸82に対する回転が不能な状態で中空軸82に取り付けられ、中空軸82と同軸に設けられている。別の例では、ギア84は、中空軸82を加工することによって中空軸82と一体に形成されていてもよい。
【0039】
第1のクラッチ62は、クランク軸42の外周と合力部材70の内周との間に設けられている。第1のクラッチ62はワンウェイクラッチである。第1のクラッチ62は、クランク軸42が前方に回転する場合にクランク軸42から合力部材70に回転を伝達し、クランク軸42が後方に回転する場合にクランク軸42から合力部材70に回転を伝達しないようにクランク軸42および合力部材70と連結される。
【0040】
フロントスプロケット40は、ハウジング72の外部においてハウジング72の側方に配置される。フロントスプロケット40は、ボルトBによってドライブユニット60に取り付けられる。ボルトBは、合力部材70との間にフロントスプロケット40が固定されるように合力部材70にねじ込まれる。
【0041】
図1に示されるクランク軸42を前方に回転させる人力駆動力がペダル30に入力された場合、クランク軸42が自転車10のフレームに対して前方に回転する。この場合、クランク軸42の回転が第1のクラッチ62および合力部材70を介してフロントスプロケット40に伝達され、フロントスプロケット40の回転がチェーン36を介してリアスプロケット34に伝達される。クランク軸42を後方に回転させる人力駆動力がペダル30に入力された場合、クランク軸42がフレーム22に対して後方に回転する。この場合、第1のクラッチ62の作用によってクランク軸42の回転が合力部材70およびフロントスプロケット40に伝達されない。
【0042】
図4に示されるとおり、第1の遊星歯車機構64は、第1の入力体86、第1の出力体88、および、第1の伝達体90を含む。
第1の入力体86は、第1のモータ66の出力軸66Bと連結されるサンギア86Aを含む。サンギア86Aは、出力軸66Bの外周に設けられ、出力軸66Bと一体に回転可能である。サンギア86Aと出力軸66Bとの間には、第1のワンウェイクラッチ78が設けられている。第1のワンウェイクラッチ78は、クランク軸42を前転させるときの人力駆動力が伝達されて第2のモータ68が回転することを阻止する。なお、クランク軸42の前転は、自転車10が前進するときのクランク軸42の回転方向である。第1のワンウェイクラッチ78は、例えばローラクラッチである。第1のワンウェイクラッチ78は、出力軸66Bが第1の方向に回転する場合に、第1の入力体86の回転速度と出力軸66Bの回転速度とが等しいときに、出力軸66Bの回転を第1の入力体86に伝達し、第1の入力体86の回転速度が出力軸66Bの回転速度よりも高いときに、出力軸66Bの回転を第1の入力体86に伝達しないように出力軸66Bおよび第1の入力体86と連結される。第1のワンウェイクラッチ78は、クランク軸42を前転させるときの人力駆動力によって第2のモータ68が回転することを阻止する。
【0043】
第1の出力体88は、第1の入力体86と噛み合うプラネタリギア88A、および、プラネタリギア88Aを回転可能に支持するキャリア88Bを含む。第1の遊星歯車機構64は、複数のプラネタリギア88Aを備えることが好ましい。
【0044】
第1の伝達体90は、第1の入力体86の回転を第1の出力体88に伝達するために設けられている。第1の伝達体90は、第1の出力体88と噛み合うリングギア90Aを含む。リングギア90Aは、サンギア86Aまわりにサンギア86Aと同軸に配置される。第1の伝達体90は、第2のワンウェイクラッチ80を介してハウジング72に支持される。第2のワンウェイクラッチ80は、例えばローラクラッチである。第2のワンウェイクラッチ80は、第1の伝達体90の所定の方向への回転を阻止する。すなわち、第1の伝達体90は、ハウジング72に対して第1の方向に回転可能であり、ハウジング72に対して第2の方向に回転不能である。
【0045】
複数のプラネタリギア88Aは、サンギア86Aとリングギア90Aとの間に配置される。複数のプラネタリギア88Aは、サンギア86Aおよびリングギア90Aと噛み合う。キャリア88Bは、複数のプラネタリギア88Aのそれぞれを軸方向に貫通するプラネタリピン88Cを介して複数のプラネタリギア88Aを回転可能に支持する。別の例では、プラネタリピン88Cは、複数のプラネタリギア88Aと一体に回転し、キャリア88Bに回転可能に支持されていてもよい。
【0046】
第1の減速機構74は、第1の出力体88の回転を減速して合力部材70に伝達する。第1の減速機構74は、第2の遊星歯車機構74Aを含む。第2の遊星歯車機構74Aは、第1の遊星歯車機構64と同軸に設けられている。第2の遊星歯車機構74Aは、第1の遊星歯車機構64の軸方向において第1の遊星歯車機構64と隣り合う位置に配置される。
【0047】
第2の遊星歯車機構74Aは、第2の入力体92、第2の出力体94、および、第2の伝達体96を含む。
第2の入力体92には、第1の出力体88の回転が入力される。第2の入力体92は、第1の出力体88と連結されるサンギア92Aを含む。サンギア92Aは、第1の出力体88の外周部に設けられ、第1の出力体88と一体に回転する。第2の入力体92のサンギア92Aの歯数は、第1の入力体86のサンギア86Aの歯数と等しいことが好ましい。
【0048】
第2の出力体94は、第2の入力体92と噛み合うプラネタリギア94A、および、プラネタリギア94Aを回転可能に支持するキャリア94Bを含む。第2の遊星歯車機構74Aは、複数のプラネタリギア94Aを備えることが好ましい。キャリア94Bは、複数のプラネタリギア94Aのそれぞれを軸方向に貫通するプラネタリピン94Cを介して複数のプラネタリギア94Aを回転可能に支持する。別の例では、プラネタリピン94Cは、複数のプラネタリギア94Aと一体に回転し、キャリア94Bに回転可能に支持されていてもよい。
【0049】
第2の出力体94のプラネタリギア94Aの歯数は、第1の出力体88のプラネタリギア88Aの歯数と等しいことが好ましい。第2の出力体94のキャリア94Bには、外周部にギア94Dが設けられている。ギア94Dは、第2の出力体94と同軸に設けられている。ギア94Dは、合力部材70の外周部に設けられているギア84に噛み合う。これによって、第2の出力体94は、合力部材70に回転を伝達することができる。ギア94Dとギア84とは、減速機構を構成する。第2の出力体94の回転は、減速して合力部材70に伝達されるのが好ましい。ギア94Dとギア84との間に、他のギアを介して、第2の出力体94から合力部材70に回転を伝達してもよく、環状の部材によって第2の出力体94から合力部材70に回転を伝達する構成としてもよい。環状の部材は、例えば第2の出力体94と合力部材70とに巻き掛けられるベルトである。ギア94Dとギア84との間に、他のギアを介して、または、環状の部材によって第2の出力体94から合力部材70に回転を伝達したりして、第2の出力体94の回転方向と合力部材70の回転方向とが同じ方向になる場合には、第1のモータ66および第2のモータ68の駆動方向と、第1のワンウェイクラッチ78および第2のワンウェイクラッチ80の向きとを反対にすればよい。第1のモータ66のトルクおよびクランク軸42に加えられたトルクは、合力部材70において合力される。第1のモータ66の回転は、第1の遊星歯車機構64において変速された後、合力部材70に伝達される。クランク軸42に加えられた回転は、変速されずに合力部材70に伝達される。
【0050】
第2の伝達体96は、第2の入力体92の回転を第2の出力体94に伝達するために設けられている。第2の伝達体96は、第2の出力体94と噛み合うリングギア96Aを含む。第2の伝達体96のリングギア96Aの歯数は、第1の伝達体90のリングギア90Aの歯数と等しいことが好ましい。第1の伝達体90および第2の伝達体96は、同期して回転できるように一体化されている。このため、第2の伝達体96は、ハウジング72に対して第1の方向に回転可能であり、ハウジング72に対して第2の方向に回転不能である。第1の伝達体90および第2の伝達体96は、一体に形成されていてもよく、別体で形成されて、連結することによって一体化されてもよい。
【0051】
第1のモータ66は、ハウジング72に支持される。第1のモータ66は、第1の入力体86を回転可能である。第1のモータ66は、本体66Aと出力軸66Bとを含む。本体66Aは、ロータおよびステータを含む(いずれも図示略)。出力軸66Bは、第1のモータ66のロータの回転を第1の入力体86に伝達する。第1のモータ66は、第1の遊星歯車機構64と同軸に設けられている。第1のモータ66は、第1の遊星歯車機構64の軸方向において第1の遊星歯車機構64を挟んで第1の減速機構74と反対側に配置される。
【0052】
第2のモータ68は、第1の伝達体90を回転可能である。第2のモータ68は、ハウジング72に支持される。第2のモータ68は、本体68Aと出力軸68Bとを含む。本体68Aは、ロータおよびステータを含む(いずれも図示略)。第2のモータ68は、第1のモータ66の径方向の外側に配置される。第2のモータ68の回転軸線は、第1のモータ66の回転軸線と平行に設けられている。第2のモータ68の出力軸68Bには、ギア68Cが設けられている。第2のモータ68の回転は、第2の減速機構76を介して第1の伝達体90に伝達される。ギア68Cは、クランク軸42を前転させるときの人力駆動力が伝達されて第2のモータ68が回転することを阻止するために、ワンウェイクラッチを介して出力軸68Bに連結されてもよい。
【0053】
第2の減速機構76は、第2のモータ68の回転を減速して第1の伝達体90に伝達する。第2の減速機構76は、第2のモータ68の出力軸68Bに設けられるギア68Cと、外周部にギア98Aを備える支持体98と、第1の伝達体90の外周部に設けられるギア90Bとを含む。ギア98Aは、支持体98と同軸に設けられ、支持体98と一体に回転する。支持体98は、軸であり、回転可能にハウジング72に支持されている。支持体98は、ハウジング72に固定され、ギア98Aを回転可能に支持してもよい。ギア98Aは、ギア68Cと噛み合う。ギア98Aは、ギア90Bに噛み合う。ギア90Bは、第1の伝達体90と同軸に設けられている。ギア98Aの歯数は、ギア68Cの歯数よりも多い。ギア90Bの歯数は、ギア98Aの歯数よりも多い。第2の減速機構76は、ギア98Aを省略して、ギア68Cとギア90Bとを噛み合わせてもよい。この場合、第2のモータ68の駆動方向を反対にすればよい。第2の減速機構76に含まれるギアの数は限定されない。
【0054】
図2に示されるとおり、ドライブユニット60は、トルクセンサ100、および、回転速度センサ102をさらに含む。トルクセンサ100は、例えば、歪ゲージ、半導体歪センサ、または、磁歪センサである。トルクセンサ100は、合力部材70の中空軸82に取り付けられる。磁歪センサの場合は、磁歪素子が中空軸82に取り付けられる。トルクセンサ100は、合力部材70にかかるトルクを検出する。
【0055】
クランク軸42の回転が合力部材70に伝達され、第1のモータ66および第2のモータ68の回転が合力部材70に伝達されない場合、トルクセンサ100は、クランク軸42に入力された人力駆動力を反映した信号を制御装置110に出力する。クランク軸42の回転、第1のモータ66の回転、および、第2のモータ68の回転が合力部材70に伝達される場合、トルクセンサ100は、クランク軸42に入力された人力駆動力と、第1の遊星歯車機構64および第1の減速機構74を介して伝達される第1のモータ66のトルクおよび第2のモータ68のトルクとが合成されたトルクを反映した信号を制御装置110に出力する。
【0056】
回転速度センサ102は、クランク38の回転速度を検出するケイデンスセンサを含む。ケイデンスセンサは、たとえばクランク軸42に設けられる磁石を検出する。ケイデンスセンサは、リードスイッチまたはホール素子などの磁気検出センサを含む。ケイデンスセンサは、クランク軸42の回転速度に応じた信号を制御装置110に出力する。ケイデンスセンサは、クランクアーム44に設けられる磁石を検出する構成としてもよい。この場合、ケイデンスセンサは、クランクアーム44の回転速度に応じた信号を制御装置110に出力する。回転速度センサは、自転車10のフロントホイールまたはリアホイールの回転速度を検出するスピードセンサをさらに含んでいてもよい。制御装置110は、回転速度センサの検出結果に基づいて、クランクの回転数CAを算出する。
【0057】
制御装置110は、制御部112を備える。制御装置110は、記憶部114をさらに備えることが好ましい。記憶部114には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。制御部112は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。
【0058】
制御部112は、第1のモータ66および第2のモータ68を制御する。制御部112は、人力駆動力と、クランクの回転数CAとに応じて、第1のモータ66および第2のモータ68の回転を制御する。制御部112は、第1のモータ66を回転させることによって、第1の入力体86を第1の方向に回転させる。第1の入力体86が第1の方向に回転するとき、合力部材70には自転車10が前進する方向への回転が伝達される。第1の伝達体90がハウジング72に対して回転しないとき、第1の入力体86の回転は減速されて第1の出力体88から第2の入力体92へ出力される。すなわち、第1の遊星歯車機構64の変速比rXは「1」よりも小さい。
【0059】
制御装置110は、第2のモータ68を回転させることによって、第1の伝達体90を第1の方向に回転させる。第1の伝達体90の第1の方向への回転速度が上昇するほど、第1の遊星歯車機構64の変速比rXは上昇する。第1の伝達体90の第1の方向への回転速度が第1の入力体86と等しくなるとき、第1の遊星歯車機構64の変速比rXは「1」となる。すなわち、制御装置110は、第2のモータ68の回転速度を制御することによって、変速比rXを連続的に変更することができる。第2のモータ68の制御によって、変速比rXは「1」よりも小さい値から「1」まで変更することができる。制御装置110は、第2のモータ68の回転速度を複数段階に制御して、変速比rXを複数段階に変更してもよい。
【0060】
第2のモータ68と第1の減速機構74の変速比rYとの関係について説明する。
第2の伝達体96がハウジング72に対して回転しないとき、第2の入力体92の回転は減速されて第1の出力体88から出力される。すなわち、第2の遊星歯車機構74Aの変速比rYは「1」よりも小さい。なお、変速比rYは、第2の入力体92の回転数に対する第2の出力体94の回転数である。
【0061】
制御装置110は、第2のモータ68を回転させることによって、第2の伝達体96を第1の方向に回転させる。第2の伝達体96の第1の方向への回転速度が上昇するほど、第2の遊星歯車機構74Aの変速比rYは上昇する。第2の伝達体96の第1の方向への回転速度が第2の入力体92と等しくなるとき、第2の遊星歯車機構74Aの変速比rYは「1」となる。すなわち、制御装置110は、第2のモータ68の回転速度を制御することによって、変速比rYを連続的に変更することができる。第2のモータ68の制御によって、変速比rYは「1」よりも小さい値から「1」まで変更することができる。
【0062】
第1の伝達体90および第2の伝達体96は、一体に回転する。このため、第1の遊星歯車機構64の変速比rXと第1の減速機構74の変速比rYとは相関する。第1の遊星歯車機構64の変速比rXが大きくなるほど、第1の減速機構74の変速比rYは大きくなる。第2の変速機54の変速比r2は、変速比rXと変速比rYの乗算と等しい。
【0063】
制御部112は、クランクの回転数CAに基づいて第1の変速機52の変速ステージが変速される自動変速モードと、操作部58の操作のみに基づいて第1の変速機52の変速ステージが変更される手動変速モードとを切り替えることができる。制御部112は、例えば運転者による操作部58(図1参照)の操作によって、自動変速モードと手動変速モードとを切り替える。自動変速モードでは、クランクの回転数CAを所定の範囲に維持するように変速することが好ましい。
【0064】
自動変速モードにおいて、制御部112は、第1の変速機52を自転車10の状態に基づいて制御する。自転車10の状態は、クランクの回転数CAを含む。制御部112は、クランクの回転数CAが上限値CAA以下から下限値CAB以上までの所定の範囲に維持されるように第1の変速機52を制御する。また、制御部112は、クランクの回転数CAと予め定める第1の回転数CAXとに基づいて第2の変速機54の変速ステージを制御し、クランクの回転数CAと予め定める第2の回転数CAYとに基づいて第2の変速機54の変速ステージを制御する。上限値CAAは、第1の回転数CAXよりも大きい。下限値CABは、第2の回転数CAYよりも小さい。第1の回転数CAXは、第2の回転数CAYよりも大きい。
【0065】
自動変速モードおよび手動変速モードにおいて、制御部112は、第1の変速機52への変速指示と、自転車10の状態とに基づいて第2の変速機54を制御する。自動変速モードにおいて、制御部112は、第1の変速機52の状態と、自転車10の状態とに基づいて第2の変速機54を制御する。第1の変速機52の状態は、自転車の変速比r1を含む。
【0066】
図5を参照して、自動変速モードにおいて実行される第1の変速処理について説明する。本処理は、自動変速モードが設定されている間、所定周期ごとに繰り返し実行される。
制御部112は、ステップS11においてクランクの回転数CAが下限値CAB以上から下限値CAB未満になったか否かを判定する。制御部112は、クランクの回転数CAが下限値CAB以上から下限値CAB未満になったとき、ステップS12に移る。ステップS12では、制御部112は、自転車の変速比r1が最小の変速比r1に設定されているか否か判定し、最小の変速比r1に設定されてないと判断したとき、ステップS13の判定処理に移る。ここでは、第2の変速機54の変速比r2は、2段階に変更可能であるとする。
【0067】
制御部112は、ステップS13において、第1の変速機52の変速比r1が小さくなるように第1の変速機52を制御したとき、クランクの回転数CAが第1の回転数CAXを超えるか否かを判定する。制御部112は、第1の変速機52の状態と、クランクの回転数CAとに基づいて、第1の変速機52が動作することによってクランクの回転数CAが第1の回転数CAXを超える値に変化するか否かを予測する。クランクの回転数CAが予め定める第1の回転数CAXを超える値に変化するか否かの判定は、現在のクランクの回転数CAと、現在の自転車の変速比r1および変速後の自転車の変速比r1とに基づいて行われる。各変速ステージにおける自転車の変速比r1は予め定められており、記憶部114に記憶されているので、変速後のクランクの回転数CAを予測することができる。図6は、クランクの回転数CAと、人力駆動力に基づくトルクとの相関関係を示すグラフである。一般的にクランクの回転数CAが大きくなると、人力駆動力に基づくトルクは小さくなることが知られている。
【0068】
第1の変速機52が動作することによってクランクの回転数CAが予め定める第1の回転数CAXを超える場合には、制御部112は、第2の変速機54および第1の変速機52を所定の順番で動作させる。制御部112は、第1の変速機52が動作することによってクランクの回転数CAが予め定める第1の回転数CAXを超える場合には、まずステップS14において第2の変速機54の変速比r2が大きくなるように第2の変速機54を制御する。ステップS14において第2の変速機54の変速比r2が、2段階のうちの高い方の変速比r2に設定されている場合、その変速比r2は維持される。次に、制御部112は、ステップS15において自転車の変速比r1が小さくなるように第1の変速機52を制御する。ステップS15において、制御部112は、第1の変速機52の変速ステージを1段階だけ変更する。ステップS15の処理が終了すると、本処理を終了する。ステップS12において、制御部112は、自転車の変速比r1が最小の変速比r1に設定されていると判断したとき、本処理を終了する。
【0069】
制御部112は、ステップS13において、第1の変速機52が動作することによってクランクの回転数CAが予め定める第1の回転数CAXを超えないと判断した場合には、ステップS15に移る。
【0070】
制御部112は、ステップS11においてクランクの回転数CAが下限値CAB以上から下限値CAB未満になっていないと判定したとき、ステップS16に移る。制御部112は、ステップS16においてクランクの回転数CAが上限値CAA以下から上限値CAAを超えた値になったか否かを判定する。制御部112は、クランクの回転数CAが上限値CAA以下から上限値CAAを超えた値になったと判定すると、ステップS17に移る。ステップS17では、制御部112は、自転車の変速比r1が最大の変速比r1に設定されているか否か判定し、最大の変速比r1に設定されてないと判断したとき、ステップS18の判定処理に移る。
【0071】
制御部112は、ステップS18において、第1の変速機52の変速比r1が大きくなるように第1の変速機52を制御したとき、クランクの回転数CAが第2の回転数CAY未満になるか否かを判定する。制御部112は、第1の変速機52の状態と、クランクの回転数CAとに基づいて、第1の変速機52が動作することによってクランクの回転数CAが第2の回転数CAY未満の値に変化するか否かを予測する。クランクの回転数CAが予め定める第2の回転数CAY未満の値に変化するか否かの判定は、現在のクランクの回転数CAと、現在の自転車の変速比r1および変速後の自転車の変速比r1とに基づいて行われる。
【0072】
第1の変速機52が動作することによってクランクの回転数CAが予め定める第2の回転数CAY未満になる場合には、制御部112は、第2の変速機54および第1の変速機52を所定の順番で動作させる。制御部112は、第1の変速機52が動作することによってクランクの回転数CAが予め定める第2の回転数CAY未満になる場合には、まずステップS19において第2の変速機54の変速比r2が小さくなるように第2の変速機54を制御する。ステップS19において第2の変速機54の変速比r2が、2段階のうちの低い方の変速比r2に設定されている場合、その変速比r2は維持される。次に、制御部112は、ステップS20において自転車の変速比r1が大きくなるように第1の変速機52を制御する。ステップS20において、制御部112は、第1の変速機52の変速ステージを1段階だけ変更する。ステップS19の処理が終了すると、本処理を終了する。ステップS17において、制御部112は、自転車の変速比r1が最大の変速比r1に設定されていると判断したとき、本処理を終了する。
【0073】
制御部112は、ステップS18において、第1の変速機52が動作することによってクランクの回転数CAが予め定める第2の回転数CAY未満にならないと判断した場合には、ステップS20に移る。
【0074】
制御部112は、ステップS16においてクランクの回転数CAが上限値CAA以下から上限値CAAよりも大きくなっていないと判定したとき、第1の変速機52および第2の変速機54を変速させずに本処理を終了する。制御部112は、クランクの回転数CAが上限値CAA以下かつ下限値CAB以上の所定の範囲に維持されているとき、自転車10の状態に基づいて第1の変速機52および第2の変速機54を変速させる制御を行わない。
【0075】
図7を参照して、制御部112によって実行される第1の変速処理の実行態様の一例について説明する。
時刻t11は、クランクの回転数CAが下限値CAB以上から下限値CAB未満になった時刻を示す。図7の実線は、時刻t11において制御部112が第1の変速機52の変速比r1が小さくなるように第1の変速機52を制御したときにクランクの回転数CAが第1の回転数CAXを超えると予測した場合を示す。この場合、制御部112は、第2の変速機54の変速比r2が大きくなるように第2の変速機54を制御し、かつ、第1の変速機52の変速比r1が小さくなるように第1の変速機52を制御する。
【0076】
図7の二点鎖線は、時刻t11において制御部112が第1の変速機52の変速比r1が小さくなるように第1の変速機52を制御したときにクランクの回転数CAが第1の回転数CAXを超えないと予測した場合を示す。この場合、制御部112は、第2の変速機54の変速比r2を変更せず、かつ、第1の変速機52の変速比r1が小さくなるように第1の変速機52を制御する。
【0077】
時刻t21は、クランクの回転数CAが上限値CAA以下から上限値CAAを超えた時刻を示す。図7の実線は、時刻t21において制御部112が第1の変速機52の変速比r1が大きくなるように第1の変速機52を制御したときにクランクの回転数CAが第2の回転数CAY未満になると予測した場合を示す。この場合、制御部112は、第2の変速機54の変速比r2が小さくなるように第2の変速機54を制御し、かつ、第1の変速機52の変速比r1が大きくなるように第1の変速機52を制御する。
【0078】
図7の二点鎖線は、時刻t21において制御部112が第1の変速機52の変速比r1が小さくなるように第1の変速機52を制御したときにクランクの回転数CAが第1の回転数CAX未満にならないと予測した場合を示す。この場合、制御部112は、第2の変速機54の変速比r2を変更せず、かつ、第1の変速機52の変速比r1が大きくなるように第1の変速機52を制御する。
【0079】
図8を参照して、自動変速モードおよび手動変速モードにおいて実行される第2の変速処理について説明する。本処理は、変速システム50に電源が供給されている限り、所定周期ごとに繰り返し実行される。
【0080】
制御部112は、ステップS21において操作部58からシフトダウン信号が入力されたか否かを判定する。制御部112は、シフトダウン信号が入力されたとき、第1の変速処理のステップS12〜ステップS15と同様の処理を実行して本処理を終了する。本処理においては、制御部112は、第1の変速機52への変速指示と、クランクの回転数CAとに基づいて、第1の変速機52が動作することによってクランクの回転数CAが第1の回転数CAXを超える値に変化するか否かを予測する。
【0081】
制御部112は、ステップS21においてシフトダウン信号が入力されていないとき、ステップS22においてシフトアップ信号が入力されたか否かを判定する。制御部112は、シフトアップ信号が入力されたとき、第1の変速処理のステップS17〜ステップS20と同様の処理を実行して本処理を終了する。本処理においては、制御部112は、第1の変速機52への変速指示と、クランクの回転数CAとに基づいて、第1の変速機52が動作することによってクランクの回転数CAが第2の回転数CAY未満の値に変化するか否かを予測する。制御部112は、ステップS21においてシフトアップ信号が入力されていないとき、第1の変速機52および第2の変速機54を動作させずに本処理を終了する。
【0082】
本実施の形態の変速システム50の作用および効果について説明する。
(1)変速システム50の第2の変速機54は、第1の変速機52の変速ステージのいずれにおいても、クランク38の回転に対する後輪14の回転の比率を変更せずに、モータ56からの回転力をクランク38から後輪14までの動力伝達経路に伝達可能である。この構成によれば、第1のモータ66の回転速度を所定の範囲内に維持しやすくすることができるので、クランクの回転数CAの変化に伴ってアシスト力が低下してしまうことを抑制することができる。
【0083】
(2)制御部112は、第1の変速機52の状態または第1の変速機52への変速指示と、クランクの回転数CAとに基づいて第2の変速機54を制御する。このため、第1の変速機52の変速ステージの変更にともなってクランクの回転数CAが変化し、アシスト力が低下してしまうことを抑制することができる。
【0084】
(3)制御部112は、第1の変速機52が動作することによってクランクの回転数CAが予め定める第1の回転数CAXを超える場合には、第2の変速機54の変速比r2が大きくなるように第2の変速機54を制御する。すなわち、クランクの回転数CAが第2の変速機54の変速比r2に適していない状態になることが予測されるとき、予め第2の変速機54の変速比r2を第1の変速機52の動作後のクランクの回転数CAに適した変速比r2に変更することができる。
【0085】
(4)制御部112は、第1の変速機52が動作することによってクランクの回転数CAが予め定める第2の回転数CAY未満になる場合には、第2の変速機54の変速比r2が小さくなるように第2の変速機54を制御する。すなわち、クランクの回転数CAが第2の変速機54の変速比r2に適していない状態になることが予測されるとき、予め第2の変速機54の変速比r2を第1の変速機52の動作後のクランクの回転数CAに適した変速比r2に変更することができる。
【0086】
(5)制御部112は、自動変速モードにおいてクランクの回転数CAが上限値CAA以下から下限値CAB以上までの所定の範囲に維持されるように第1の変速機52を制御する。このため、走行中においてクランクの回転数CAの変動が抑制されるため、運転者の負荷を低減できる。
【0087】
(6)制御部112は、第2のモータ68の回転数を制御することによって、第2の変速機54の変速比r2を複数段階に変更することができる。このため、クランクの回転数CAに好適な第2の変速機54の変速比r2を実現することができる。
【0088】
(第2の実施形態)
図2図6図9、および、図10を参照して、第2の実施形態の変速システム50について説明する。第1の実施の形態と共通する構成については、第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0089】
図2に示す制御部112は、自動変速モードにおいて、自転車10の状態に基づいて第2の変速機54の変速比r2を変更する第3の変速処理を実行する。自転車10の状態は、人力駆動力に基づくトルクTを含む。第3の変速処理は、第1の変速処理においてステップS11をステップS41に置き換え、ステップS13をステップS42に置き換え、ステップS16をステップS43に置き換え、ステップS18をステップS44に置き換えている。その他のステップについては第1の変速処理と共通するので、共通する処理の説明については省略する場合がある。
【0090】
図9を参照して、制御部112によって実行される第3の変速処理について説明する。本処理は、自動変速モードが実行されている限り、所定周期ごとに繰り返し実行される。
制御部112は、ステップS41において人力駆動力に基づくトルクTが上限値TA以下から上限値TAよりも大きくなったか否かを判定する。制御部112は、トルクTが上限値TA以下から上限値TAよりも大きくなったと判定すると、ステップS12に移る。ステップS12において、制御部112は、自転車の変速比r1が最小の変速比r1に設定されてないと判断すると、ステップS42の判定処理に移る。
【0091】
制御部112は、ステップS42において、第1の変速機52の変速比r1が小さくなるように第1の変速機52を制御したとき、トルクTが第1のトルクTX未満になるか否かを判定する。制御部112は、第1の変速機52の状態と、トルクTとに基づいて、第1の変速機52が動作することによってトルクTが第1のトルクTX未満の値に変化するか否かを予測する。トルクTが第1のトルクTX未満の値に変化するか否かの判定は、例えば、図6に示すトルクTおよびクランクの回転数CAの相関関係に関する情報(例えば、図6の関係線LA)と、各変速ステージにおける自転車の変速比r1とに基づいて行われる。現在のトルクTに基づいて、現在のクランクの回転数CAを推定し、クランクの回転数CAの推定値と、現在の自転車の変速比r1および変速後の自転車の変速比r1とから、変速後のクランクの回転数CAの推定値を求め、変速後のクランクの回転数CAの推定値と、トルクTおよびクランクの回転数CAの相関関係に関する情報とから、変速後のトルクTを推定することができる。トルクTおよびクランクの回転数CAの相関関係に関する情報は、記憶部114に記憶されており、たとえば数式として記憶されていてもよい。制御部112は、トルクセンサ100によってトルクTを測定することで、回転速度センサ102が無くても、クランクの回転数CAを推定することができる。
【0092】
制御部112は、第1の変速機52が動作することによってトルクTが予め定める第1のトルクTX未満になる場合には、ステップS14において第2の変速機54の変速比r2が大きくなるように第2の変速機54を制御する。トルクTは、クランクが1回転する間でも変動するため、制御部112は、たとえばクランクの1回転の平均トルク、またはクランクの複数回転の平均トルクを演算して、その平均トルクを現在のトルクとして用いる。制御部112は、第1の変速機52が動作することによってトルクTが第1のトルクTX未満にならない場合には、ステップS15の処理に移る。
【0093】
制御部112は、ステップS41においてトルクTが上限値TA以下から上限値TAよりも大きくなっていないと判定すると、ステップS43においてトルクTが下限値TB以上から下限値TB未満になったか否かを判定する。制御部112は、トルクTが下限値TB以上から下限値TB未満の値になったと判定すると、ステップS44の判定処理に移る。
【0094】
制御部112は、ステップS44において、第1の変速機52の変速比r1が大きくなるように第1の変速機52を制御したとき、トルクTが第2のトルクTYよりも大きくなるか否かを判定する。制御部112は、第1の変速機52の状態と、トルクTとに基づいて、第1の変速機52が動作することによってトルクTが第2のトルクTYを超える値に変化するか否かを予測する。トルクTが第2のトルクTYよりも大きな値に変化するか否かの判定は、ステップS42の処理と同様に行われる。
【0095】
制御部112は、第1の変速機52が動作することによってトルクTが予め定める第2のトルクTYを超える場合には、ステップS19において第2の変速機54の変速比r2が小さくなるように第2の変速機54を制御する。制御部112は、ステップS44において、第1の変速機52が動作することによってトルクTが第2のトルクTYよりも大きくならない場合には、ステップS20に移る。
【0096】
制御部112は、ステップS43においてトルクTが下限値TB以上から下限値TB未満になっていないと判定すると、第1の変速機52および第2の変速機54を変速させずに本処理を終了する。制御部112は、トルクTが上限値TA以下かつ下限値TB以上の所定の範囲に維持されているとき、自転車10の状態に基づいて第1の変速機52および第2の変速機54を変速させる制御を行わない。
【0097】
図10を参照して、自動変速モードおよび手動変速モードにおいて実行される第4の変速処理について説明する。本処理は、変速システム50に電源が供給されている限り、所定周期ごとに繰り返し実行される。第4の変速処理は、第3の変速処理においてステップS41をステップS21に置き換え、ステップS43をステップS22に置き換えており、その他のステップについては第3の変速処理と共通するので、共通する処理の説明については省略する場合がある。
【0098】
制御部112は、ステップS21において操作部58からシフトダウン信号が入力されたか否かを判定する。制御部112は、シフトダウン信号が入力されると、第3の変速処理のステップS42に移る。本処理においては、制御部112は、第1の変速機52への変速指示と、トルクTとに基づいて、第1の変速機52が動作することによってトルクTが第1のトルクTX未満の値に変化するか否かを予測する。
【0099】
制御部112は、ステップS21においてシフトダウン信号が入力されていないとき、ステップS22においてシフトアップ信号が入力されたか否かを判定する。制御部112は、シフトアップ信号が入力されると、ステップS44に移行する。本処理においては、制御部112は、第1の変速機52の状態と、トルクTとに基づいて、第1の変速機52が動作することによってトルクTが第2のトルクTYを超える値に変化するか否かを予測する。制御部112は、ステップS21においてシフトアップ信号が入力されていないと判定すると、本処理を終了する。
【0100】
第2の実施の形態の変速システム50によれば、第1の実施の形態の(1)および(6)の効果に加えて以下の効果を得られる。
(7)制御部112は、第1の変速機52の状態または第1の変速機52への変速指示と、トルクTとに基づいて第2の変速機54を制御する。このため、第1の変速機52の変速ステージの変更にともなってトルクTが変化し、アシスト力が低下してしまうことを抑制することができる。
【0101】
(8)制御部112は、第1の変速機52が動作することによってトルクTが予め定める第1のトルクTX未満になる場合には、第2の変速機54の変速比r2が大きくなるように第2の変速機54を制御する。すなわち、トルクTが第2の変速機54の変速比r2に適していない状態になることが予測されるとき、予め第2の変速機54の変速比r2を第1の変速機52の動作後のトルクTに適した変速比r2に変更することができる。
【0102】
(9)制御部112は、第1の変速機52が動作することによってトルクTが予め定める第2のトルクTYよりも大きくなる場合には、第2の変速機54の変速比r2が小さくなるように第2の変速機54を制御する。すなわち、トルクTが第2の変速機54の変速比r2に適していない状態になることが予測されるとき、予め第2の変速機54の変速比r2を第1の変速機52の動作後のトルクTに適した変速比r2に変更することができる。
【0103】
(10)制御部112は、自動変速モードにおいてトルクTが上限値TA以下から下限値TB以上までの所定の範囲に維持されるように第1の変速機52を制御する。このため、走行中においてトルクTの変動が抑制されるため、運転者の負荷を低減できる。
【0104】
(第3の実施の形態)
図2および図11を参照して、第3の実施形態の変速システム50について説明する。第1の実施の形態と共通する構成については、第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0105】
図2に示す制御部112は、自動変速モードおよび手動変速モードにおいて、第2の変速処理に代えてまたは加えて、クランクの回転数CAに基づいて第2の変速機54の変速比r2を変更する第5の変速処理を実行する。第5の変速処理では、制御部112は、第1の変速機52が動作しないで、クランクの回転数CAが第1の回転数CAXを超えた場合、第2の変速機54の変速比r2が大きくなるように第2の変速機54を制御することができる。また制御部112は、第1の変速機52が動作しないで、クランクの回転数CAが第2の回転数CAY未満になる場合、第2の変速機54の変速比r2が小さくなるように第2の変速機54を制御することができる。
【0106】
図11を参照して、制御部112によって実行される第5の変速処理について説明する。本処理は、変速システム50に電源が供給されている限り、所定周期ごとに繰り返し実行される。
【0107】
制御部112は、ステップS31において、クランクの回転数CAが第1の回転数CAXを超えたか否かを判定する。制御部112は、クランクの回転数CAが第1の回転数CAXを超えると、ステップS32において、第2の変速機54の変速比r2が大きくなるように第2の変速機54を制御して本処理を終了する。ステップS32において、制御部112は、第2の変速機54の変速比r2が第2の変速機54によって実現可能な最大の変速比r2であると判定すると、変速比r2を維持する。
【0108】
制御部112は、ステップS31において、クランクの回転数CAが第1の回転数CAXを超えていないと判定すると、ステップS33において、クランクの回転数CAが第2の回転数CAY未満になったか否かを判定する。制御部112は、クランクの回転数CAが第2の回転数CAY未満になったと判定すると、ステップS34において第2の変速機54の変速比r2が小さくなるように第2の変速機54を制御して本処理を終了する。ステップS34において、制御部112は、第2の変速機54の変速比r2が第2の変速機54によって実現可能な最小の変速比r2であると判定すると、変速比r2を維持する。
【0109】
制御部112は、ステップS33において、クランクの回転数CAが第2の回転数CAY以上のとき、すなわち、クランクの回転数CAが第1の回転数CAX以下、かつ、第2の回転数CAY以上のとき、第2の変速機54の変速比r2を変更せずに本処理を終了する。本実施の形態の変速システム50によれば、第1の実施の形態の(1)および(2)の効果を得ることができる。
【0110】
(変形例)
上記各実施の形態に関する説明は、本発明に従う自転車の変速システムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う自転車の変速システムは、例えば以下に示される上記各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0111】
・第1〜3の実施の形態の第1の変速機52は、内装変速機に代えて、クランク38のまわりに配置されるフロントディレーラを含んでいてもよい。この場合、変速機構52Aは、フロントディレーラと、複数のフロントスプロケットとを含む。
【0112】
・第1の実施の形態の第1および第2の変速処理において、クランクの回転数CAに代えて、モータ56の回転数に基づいて、第2の変速機54を制御することもできる。モータ56の回転数は、自転車10の状態である。モータ56の回転数は、第1のモータ66の回転数を用いることが好ましい。この場合、第1および第2の変速処理のステップS13において第1の変速機52の動作によってモータ56の回転数が第1の回転数を超えるとき、ステップS14において第2の変速機54の変速比r2が大きくなるように第2の変速機54が制御される。また、第1および第2の変速処理のステップS18において第1の変速機52の動作によってモータ56の回転数が第2の回転数未満になるとき、ステップS19において第2の変速機54の変速比r2が小さくなるように制御部112が第2の変速機54を制御する。
【0113】
・第1および第2の実施の形態の第1〜第4の変速処理において、ステップS15を行った後に、ステップS14を実行することもできる。制御部112は、第1の変速機52の変速比r1が小さくなるように第1の変速機52を制御した後、第2の変速機54の変速比r2が大きくなるように第2の変速機54を制御する。また、ステップS14およびステップS15を同時に実行することもできる。すなわち、制御部112は、第2の変速機54および第1の変速機52を同時に動作させてもよい。このような処理を行う場合には、ステップS13、S42で制御部がNOであると判定すると、ステップS15の処理のみを行い、ステップS14の処理を実行しないようにすればよい。
【0114】
・第1および第2の実施の形態の第1〜第4の変速処理において、ステップS20を行った後に、ステップS19を実行することもできる。制御部112は、第1の変速機52の変速比r1が大きくなるように第1の変速機52を制御した後、第2の変速機54の変速比r2が小さくなるように第2の変速機54を制御する。また、ステップS19およびステップS20を同時に実行することもできる。すなわち、制御部112は、第2の変速機54および第1の変速機52を同時に動作させる。このような処理を行う場合には、ステップS18、S44で制御部がNOであると判定すると、ステップS20の処理のみを行い、ステップS19の処理を実行しないようにすればよい。
【0115】
・各実施の形態の変速システム50の構成は、例えば図12のように変更することもできる。図12の変速システム50の第1の変速機52は、クランク38のまわりに配置されるフロント変速機を含み、第2の変速機54は、動力伝達経路RTにおいて、フロント変速機よりも下流側にモータ56からの回転力を伝達する。この場合、第1の変速機52をドライブユニット60に設けられる変速機とすることもできる。また、モータ56および第2の変速機54を後輪14のハブに設け、第1の変速機52をフロントディレーラを含んで構成することもできる。
【0116】
・各実施の形態の第1の変速機52は、内装変速機に代えて、リアディレーラを含んでいてもよい。この場合、変速機構52Aは、リアディレーラと、複数のリアスプロケットとを含む。
【0117】
・各実施の形態の変速システム50は、クランク38から後輪14までの動力伝達経路RTに、例えば図13に示すように複数の第1の変速機52X,52Yを含んで構成されてもよい。第1の変速機52Xは、第1〜第3の実施の形態の第1の変速機52と同様の構成であり、第1の変速機52Yは、図12に示す実施の形態の第1の変速機52と同様の構成である。この場合、制御部112は、第1の変速機52Xの状態または第1の変速機52Xへの変速指示に基づいて第2の変速機54を制御することもできる。また、制御部112は、第1の変速機52Yの状態または第1の変速機52Yへの変速指示に基づいて第2の変速機54を制御することもできる。
【0118】
・各実施の形態の遊星歯車機構64,74Aは、サンローラ、プラネタリローラ、キャリア、および、リングローラを含む遊星ローラ機構に置き換えてもよい。また各実施の形態の歯車は、平歯車であってもよく、ヘリカルギアであってもよい。
【0119】
・各実施の形態のドライブユニット60の構成は、例えば図14のように変更することもできる。図14に示すドライブユニット160と図4に示すドライブユニット60とは、第1伝達体および第2伝達体の構成のみが異なり、その他の構成は同じであるので、同様の構成については同一の参照符号を付して、異なる部分についてのみ説明する。図14のドライブユニット160は、第1の伝達体90および第2の伝達体96が相対的に回転できるように個別に構成される。第2のワンウェイクラッチ80は、第1の伝達体90とハウジング72との間に設けられている。第2の伝達体96は、ハウジング72に対して相対回転不能に設けられている。このため、第1の遊星歯車機構64は、第1のモータ66から入力される回転を第2のモータ68の回転速度に応じて変速して第1の減速機構74に出力する。第1の減速機構74の第2の遊星歯車機構74Aは、第2の入力体92に入力された回転を、常に一定の減速比で減速して第2の出力体94から出力する。すなわち、第1の遊星歯車機構64の変速比rXは可変であり、第2の遊星歯車機構74Aの変速比rYは「1」よりも小さい一定の値である。
【0120】
・各実施の形態のドライブユニット60の構成は、例えば図15および図16のように変更することもできる。図15に示すドライブユニット260は、図4に示すドライブユニット60とは、第2の変速機およびモータの構成が異なるのみで、他の構成はドライブユニット60と同様である。図15のドライブユニット260は、モータ116、および、第2の変速機118を含む。モータ116は、第1のモータ66と同様の構成である。第2の変速機118は、2つの変速ステージを有する。第2の変速機118は、第1の回転体120、第2の回転体122、第3の回転体124、および、第4の回転体126を備えている。第1の回転体120は、第1の回転軸120A、および、第1の回転軸120Aまわりに回転可能に設けられる第1のギア120Bおよび第2のギア120Cを含む。
【0121】
図16に示されるとおり、第1のギア120Bは、モータ116の出力軸116Aに設けられるギア116Bに噛み合う。第1のギア120Bと第2のギア120Cとは、第1のワンウェイクラッチ128を介して連結されている。
【0122】
第2の回転体122は、第2の回転軸122A、および、第2の回転軸122Aに回転可能に設けられる第1のギア122Bおよび第2のギア122Cを含む。第1のギア122Bは、モータ116の出力軸116Aに設けられるギア116Bに噛み合う。第1のギア122Bと第2の回転軸122Aとは、第2のワンウェイクラッチ130を介して連結されている。第3の回転体124は、第3の回転軸124A、および、第3の回転軸124Aに回転可能に設けられる第1のギア124Bおよび第2のギア124Cを含む。第1のギア124Bおよび第2のギア124Cは、一体で回転するように連結されるか、一体に形成されている。第1のギア124Bは、第2の回転体122の第2のギア122Cに噛み合う。
【0123】
第4の回転体126は、第4の回転軸126A、および、第4の回転軸126Aに回転可能に設けられる第1のギア126Bおよび第2のギア126Cを含む。第1のギア126Bおよび第2のギア126Cは、一体で回転するように連結されるか、一体に形成されている。第1のギア126Bは、第1の回転体120の第2のギア120Cおよび第3の回転体124の第2のギア124Cにそれぞれ噛み合う。第2のギア126Cは、図15に示す合力部材70の外周に形成されるギア84に噛み合う。
【0124】
第1のワンウェイクラッチ128は、第1の回転体120の第1のギア120Bに第1の方向F1の回転が入力されたとき、第2のギア120Cを第1の方向F1に回転させる。第1のワンウェイクラッチ128は、第1の回転体120の第1のギア120Bに第2の方向F2の回転が入力されたとき、第2のギア120Cに回転を伝達しない。第2のワンウェイクラッチ130は、第2の回転体122の第1のギア122Bに第2の方向F2の回転が入力されたとき、第2のギア122Cを第2の方向F2に回転させる。第2のワンウェイクラッチ130は、第2の回転体122の第1のギア122Bに第1の方向F1の回転が入力されたとき、第2のギア122Cに回転を伝達しない。第4の回転体126には、モータ116の回転方向によって、モータ116から第1の回転体120を介した回転、および、モータ116から第2の回転体122および第3の回転体124を介した回転の一方が伝達される。モータ116の回転が第1の回転体120を介して第4の回転体126に伝達されるときの変速比、および、第2の回転体122および第3の回転体124を介して第4の回転体126に伝達されるときの変速比は異なるように設定されている。このため、制御部112は、モータ116の回転方向を切り替えることによって、第2の変速機118の変速比を切り替えることができる。
【0125】
・各実施の形態のドライブユニット60の構成は、例えば図17図19のように変更することもできる。図17に示すドライブユニット360は、図16に示すドライブユニット260とは、第2の変速機の構成が異なるのみで、他の構成はドライブユニット260と同様である。図17のドライブユニット360は、モータ116、および、第2の変速機132を含む。第2の変速機132は、遊星歯車機構134、第1のワンウェイクラッチ136、第2のワンウェイクラッチ138、切替機構140、および、回転体148を備えている。
【0126】
図18に示されるように遊星歯車機構134は、サンギア142、リングギア144、および、キャリア146を備えている。サンギア142は、モータ116の出力軸116Aに設けられ、出力軸116Aと一体で回転する。第1のワンウェイクラッチ136は、キャリア146と図17に示すハウジング72との間に配置されて、キャリア146のハウジング72に対する第1の方向F1の回転を規制する。第2のワンウェイクラッチ138は、リングギア144と図17に示すハウジング72との間に配置されて、リングギア144のハウジング72に対する第2の方向F2の回転を規制する。切替機構140は、第2のワンウェイクラッチ138によってリングギア144の第2の方向の回転を許容する状態と、規制する状態とを切り替える。
【0127】
回転体148は、回転軸148Aまわりに回転可能に設けられる第1のギア148B、第2のギア148Cおよび第3のギア148Dを含む。第1のギア148B、第2のギア148Cおよび第3のギア148Dは、一体で回転するように連結されるか、一体に形成されている。第1のギア148Bおよび第2のギア148Cの歯数は異なる。第1のギア148Bは、キャリア146の外周部に設けられるギア146Aに噛み合う。第2のギア148Cは、リングギア144の外周部に設けられるギア144Aに噛み合う。第3のギア148Dは、合力部材70の外周に形成されるギア84に噛み合う。
【0128】
モータ116を一方向に回転させることによってキャリア146に第2の方向F2の回転力が伝達されるとき、リングギア144の第2の方向F2の回転が第2のワンウェイクラッチ138および切替機構140によって規制される。このとき、キャリア146の第2の方向F2の回転がギア146A、第1のギア148Bおよび第3のギア148Dを介して合力部材70の外周部に設けられるギア84に伝達される。
【0129】
図19に示すように、モータ116を他方向回転させることによってキャリア146に第1の方向の回転力が伝達されるとき、キャリア146の第1の方向の回転が第1のワンウェイクラッチ136により規制され、リングギア144の第2の方向の回転が第2のワンウェイクラッチ138および切替機構140によって許容される。このとき、リングギア144の第2の方向の回転がギア144A、第2のギア148Cおよび第3のギア148Dを介して合力部材70の外周部に設けられるギア84に伝達されるに伝達される。
【0130】
モータ116の回転がキャリア146を介して回転体148に伝達されるときの変速比は、リングギア144を介して回転体148に伝達されるときの変速比よりも小さい。このため、制御部112は、モータ116の回転方向を切り替えることによって、第2の変速機132の変速比を切り替えることができる。
【0131】
・各実施の形態のドライブユニット60の構成は、例えば図20および図21のように変更することもできる。図20および図21に示すドライブユニット460は、図16に示すドライブユニット260とは、第2の変速機の構成が異なるのみで、他の構成はドライブユニット260と同様である。図20のドライブユニット460には、モータ116、および、第2の変速機150が設けられている。第2の変速機150は、第1の回転体152、第2の回転体154、および、移動機構156を備えている。第1の回転体152および第2の回転体154は、合力部材70のギア84に回転を伝達可能である。
【0132】
第1の回転体152は、回転軸152Aまわりに回転可能な第1のギア152Bと、第2のギア152Cとを含む。第1のギア152Bと、第2のギア152Cは、一体で回転するように連結されるか、一体に形成されている。第2のギア152Cは、合力部材70のギア84と噛み合う。第2の回転体154は、回転軸154Aまわりに回転可能な第1のギア154Bと、第2のギア154Cとを含む。第1のギア154Bと、第2のギア154Cは、一体で回転するように連結されるか、一体に形成されている。第2のギア154Cは、合力部材70のギア84と噛み合う。
【0133】
移動機構156は、モータ116をモータ116の回転軸に垂直な方向に移動させることができる。移動機構156は、図20に示すモータ116の出力軸116Aに設けられるギア116Bが、第1の回転体152の第1のギア152Bと噛み合う状態と、図21に示すギア116Bが、第2の回転体154の第1のギア154Bと噛み合う状態とを切り替える。第1の回転体152の第1のギア152Bと第2の回転体154の第1のギア154Bの歯数は異ならせる、および/または、第1の回転体152の第2のギア152Cと第2の回転体154の第2のギア154Cの歯数を異ならせることによって、動力の伝達経路に応じて変速比が異なるように構成されている。制御部112は、モータ116を移動させることによって、ギア116Bと第1のギア152Bまたは第1のギア154Bとを選択的に噛み合わせて、第2の変速機150の変速比を切り替えることができる。
【0134】
図20および図21のドライブユニット460を図22のように変更することもできる。図22に示すドライブユニット560は、図20および図21に示すドライブユニット460とは、第2の変速機の構成が異なるのみで、他の構成はドライブユニット460と同様である。図22の第2の変速機250の移動機構156は、第2の回転体154を軸方向と垂直な方向に移動させることができる。モータ116のギア116Bと第1の回転体152の第1のギア152Bとは常時噛み合っている。移動機構156は、第2の回転体154の第1のギア154Bがモータ116のギア116Bと係合する状態と、第2の回転体154の第1のギア154Bとモータ116のギア116Bとが離間する状態とを切り替える。合力部材70のギア84に噛み合う第1の回転体152の第2のギア152Cは、ワンウェイクラッチ158を介して第1のギア152Bに接続されている。第1の回転体152の第2のギア152Cと第2の回転体154の第1のギア154Bの歯数は異なる。第2の回転体154の第1のギア154Bがモータ116のギア116Bと係合する状態において、第2の回転体154から合力部材70を介して第1の回転体152に伝達される回転がモータ116から第1の回転体152に伝達される回転よりも速い。このとき、ワンウェイクラッチ158の機能によって、第1の回転体152の第2のギア152Cと第1の回転体152の第1のギア152Bとが相対回転する。このため、制御部112は、モータ116を移動させることによって、第2の変速機150の変速比を切り替えることができる。
【0135】
・各実施形態のドライブユニット60は、第1のワンウェイクラッチ78を含まない形態をとりえる。この場合、サンギア86Aを出力軸66Bの外周部に形成することもできる。また、第1のワンウェイクラッチ78を、第1の出力体88と第2の入力体92との間に設けてもよく、第2の出力体94とギア94Dとの間に設けてもよく、または、合力部材70とギア84との間に設けてもよい。第1のワンウェイクラッチ78は、クランク軸42を前転させるときの人力駆動力によって第2のモータ68が回転することを阻止することができれば、第2のモータ68の出力軸から合力部材70までの駆動経路のいずれの位置に設けられてもよい。
【0136】
・各実施形態のドライブユニット60は、クランク軸42を含まない形態を取り得る。この場合、自転車の構成要素としてのクランク軸42がドライブユニット60に設けられている。
【0137】
・各実施の形態において、合力部材は、クランク軸42によって構成されてもよい。この場合、合力部材70が省略され、第1の減速機構74の回転がクランク軸42に伝達される。
【0138】
・各実施の形態において、第1のクラッチ62を省略してもよい。
・各実施の形態において、制御装置110は、ハウジング72の外部に設けられていてもよく、自転車10のフレーム22に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0139】
10…自転車、38…クランク、42…クランク軸、50…変速システム(自転車の変速システム)、72…ハウジング、52,52A,52B…第1の変速機、54…第2の変速機、56…モータ、110…制御装置(自転車用制御装置)、112…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
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図22