特許第6568009号(P6568009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568009
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   G01N27/409 100
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-84804(P2016-84804)
(22)【出願日】2016年4月20日
(65)【公開番号】特開2017-194355(P2017-194355A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2018年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大場 健弘
(72)【発明者】
【氏名】永田 省吾
(72)【発明者】
【氏名】三原 俊哉
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−121118(JP,A)
【文献】 特開平03−134144(JP,A)
【文献】 実開昭58−165830(JP,U)
【文献】 特開2005−283161(JP,A)
【文献】 特開2014−038083(JP,A)
【文献】 特開2002−323470(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0170794(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00,27/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象ガスの検出結果を示す検出信号の外部への出力、または外部からの電流または電圧の入力を行う電極端子部を備えるセンサ素子と、
前記センサ素子の前記電極端子部に電気的に接続される金属端子と、
前記金属端子に電気的に接続されて、前記検出信号を外部に出力するための信号経路を形成する信号線と、
を備えるガスセンサであって、
前記金属端子は、前記電極端子部に接触する先端側端子部材と、前記信号線と接続する後端側端子部材と、を備えて構成され、
前記先端側端子部材は、メス型連結部を備えており、
前記後端側端子部材は、前記メス型連結部と連結するオス型連結部を備えており、
前記先端側端子部材および前記後端側端子部材は、前記オス型連結部と前記メス型連結部とが連結された状態で、前記電極端子部と前記信号線とを電気的に接続するように構成されており、
前記先端側端子部材は、前記後端側端子部材に比べて、耐熱性に優れるとともに0.2%耐力が大きい材料で形成され、
前記センサ素子は、板状であり、
前記先端側端子部材は、
軸線方向に延びる長尺板状の本体部と、
前記本体部の先端側において、前記本体部の板面に垂直な方向に折り曲げられた折曲部と、
前記折曲部を介して本体部に連結された素子接触部と、
を備えており、
前記素子接触部は、前記折曲部の弾性変形によって前記センサ素子に接触する、
ガスセンサ。
【請求項2】
前記メス型連結部および前記オス型連結部のうち互いに接触する部分は、挿入方向に垂直な断面形状が円形または正多角形である、
請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記後端側端子部材は、前記オス型連結部の先端部分が先端側に向かうに従い縮径する形状である、
請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記先端側端子部材は、前記メス型連結部の後端部分が後端側に向かうに従い拡径する形状である、
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電極端子部を備えるセンサ素子と、センサ素子の電極端子部に電気的に接続される金属端子と、金属端子に電気的に接続されて、検出信号を外部に出力するための信号経路を形成する信号線と、を備えるガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象ガスに含まれる特定成分(検出対象ガス)を検出するガスセンサが知られている。ガスセンサは、例えば、電極端子部を備えるセンサ素子と、センサ素子の電極端子部に電気的に接続される金属端子と、金属端子に電気的に接続されて、検出信号を外部に出力するための信号経路を形成する信号線と、を備えて構成される。電極端子部は、検出対象ガスの検出結果を示す検出信号の外部への出力、または外部からの電流または電圧の入力を行うために備えられている。
【0003】
このようなガスセンサに備えられる金属端子は、単一部材で構成されるものに限られず、2個の部材が連結されて構成されるものが提案されている。具体的には、センサ素子に接続される雄型のコネクタ端子と、信号線(リード線)に接続される雌型のコネクタ端子と、が連結されて構成される金属端子が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−323470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のガスセンサにおいては、金属端子を構成する2つの部材(雄型のコネクタ端子、雌型のコネクタ端子)が同一材料で形成されているため、ガスセンサの用途によっては、耐熱性の実現と、電気的接続状態の維持と、を同時に成立できない可能性がある。
【0006】
例えば、測定対象ガスが高温となる用途にガスセンサを用いる場合には、ガスセンサのセンサ素子が高温の測定対象ガスに晒されることになり、金属端子のうちセンサ素子に当接する先端部分も高温に晒されるため、金属端子の先端部分は耐熱性が要求される。また、金属端子のうちセンサ素子(特に、電極端子部)に当接する先端部分は、電極端子部との電気的接続状態を良好に維持するために、弾性変形領域が大きいことが要求される。
【0007】
他方、金属端子のうち後端部分は、信号線(リード線)との電気的接続状態を維持するために、変形しがたい特性を有することが要求される。
しかし、上記従来のガスセンサは、金属端子におけるこれらの点が考慮されたものではないため、金属端子の先端部分の耐熱性の実現と、金属端子とセンサ素子(電極端子部)との電気的接続状態の維持と、金属端子と信号線(リード線)との電気的接続状態の維持と、を同時に成立させることが難しいという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、金属端子の先端部分の耐熱性の実現と、金属端子とセンサ素子(電極端子部)との電気的接続状態の維持と、金属端子とリード線との電気的接続状態の維持と、を同時に成立できるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの局面におけるガスセンサは、センサ素子と、金属端子と、信号線と、を備えており、金属端子は、先端側端子部材と、後端側端子部材と、を備えて構成されている。
【0010】
センサ素子は、電極端子部を備える。電極端子部は、検出対象ガスの検出結果を示す検出信号の外部への出力、または外部からの電流または電圧の入力を行うために備えられている。金属端子は、センサ素子の電極端子部に電気的に接続される。信号線は、金属端子に電気的に接続されて、検出信号を外部に出力するための信号経路を形成する。
【0011】
先端側端子部材は、電極端子部に接触するとともに、メス型連結部を備える。後端側端子部材は、信号線と接続するとともに、メス型連結部と連結するオス型連結部を備える。先端側端子部材および後端側端子部材は、メス型連結部とオス型連結部とが連結された状態で、電極端子部と信号線とを電気的に接続するように構成されている。
【0012】
先端側端子部材は、後端側端子部材に比べて、耐熱性に優れるとともに0.2%耐力が大きい材料で形成される。
このように、先端側端子部材と後端側端子部材とが特性が異なる材料で構成された金属端子は、金属端子のうちセンサ素子と接触する部位の特性と、信号線と接続される部位の特性と、がそれぞれ異なるものとなる。
【0013】
先端側端子部材は、後端側端子部材に比べて、耐熱性に優れるとともに「0.2%耐力」が大きい材料で形成されるため、高温のセンサ素子と接触する部位に適した耐熱性を有するとともに、後端側端子部材45に比べ弾性変形領域が大きい(塑性変形しがたい)ことでセンサ素子との接触状態が良好となり電気的接触状態を維持しやすくなる。ここで、メス型連結部の方がオス型連結部に比べ剛性を低く設計しやすい為、メス型連結部とオス型連結部の材料を異ならせるだけではなく、さらに、先端側端子部材の方をメス型連結部とする事で、センサ素子との接触状態が良好となり電気的接触状態を維持しやすくなる。
【0014】
後端側端子部材は、先端側端子部材に比べて「0.2%耐力」が同等または小さい材料、つまり塑性変形しやすい材料で形成されるため、信号線との接続部分を変形させて信号線と接続する加工作業(例えば加締め固定)を実施した場合に、その接続部分でのスプリングバックが生じ難くなる。このような後端側端子部材は、接続部分と信号線との接続状態が強固となるため、信号線との電気的接続状態を維持しやすくなる。
【0015】
よって、このような金属端子を備えるガスセンサは、金属端子の先端部分の耐熱性の実現と、金属端子とセンサ素子(電極端子部)との電気的接続状態の維持と、金属端子とリード線との電気的接続状態の維持と、を同時に成立できる。
【0016】
なお、「耐熱性に優れる材料」とは、高温でのクリープ耐性が高く、また、高温で応力緩和が起き難い材料を意味している。「0.2%耐力」は、JISZ2241に従い求められる。また、「弾性変形」は、外力の印加が停止されると外力が印加される前形状(元の形状)に戻る変形を意味している。
【0017】
上述のガスセンサにおいては、メス型連結部およびオス型連結部のうち互いに接触する部分は、挿入方向に垂直な断面形状が円形または正多角形であってもよい。
このような構成の金属端子は、先端側端子部材と後端側端子部材とを連結する際に、メス型連結部およびオス型連結部が断面形状に応じて互いの相対位置が調整されるため、先端側端子部材と後端側端子部材との相対的な位置関係(換言すれば、メス型連結部とオス型連結部との相対的な位置関係)を厳密に設定することなく、容易に連結できる。
【0018】
例えば、断面形状が円形の場合には、メス型連結部およびオス型連結部において、連結方向(挿入方向)を中心軸とする回転方向の相対位置が変化しても、断面形状が円形であることから、互いに接触する部分の形状が連結に適した状態を維持できる。これにより、先端側端子部材と後端側端子部材との相対的な位置関係を厳密に設定することなく、容易に連結できるため、連結作業の煩雑さを軽減できる。
【0019】
また、例えば、断面形状が正多角形の場合には、メス型連結部およびオス型連結部において、連結方向(挿入方向)を中心軸とする回転方向の相対位置にズレが生じていたとしても、連結作業時には、互いに接触する部分の表面形状に沿って移動することで回転方向の相対位置が調整されるため、連結作業の煩雑さを軽減できる。
【0020】
なお、メス型連結部およびオス型連結部のうち互いに接触する部分の断面形状について、円形とは、切れ目の無い連続した円形のみならず、切れ目を有する円形も含む概念である。また、正多角形とは、切れ目のない連続した正多角形のみならず、切れ目を有する正多角形も含む概念である。
【0021】
上述のガスセンサにおいては、後端側端子部材は、オス型連結部の先端部分が先端側に向かうに従い縮径する形状であってもよい。
このような後端側端子部材は、先端側端子部材との連結作業にあたり、少なくともオス型連結部の先端側頂点がメス型連結部に挿入できる状態であれば、メス型連結部の中心軸とオス型連結部の中心軸とにズレが生じている状態でも、オス型連結部の先端部分がメス型連結部の内壁面に沿って移動することで、連結作業が可能となる。
【0022】
よって、このような後端側端子部材を備えるガスセンサにおいては、先端側端子部材と後端側端子部材との連結作業が容易となる。
上述のガスセンサにおいては、先端側端子部材は、メス型連結部の後端部分が後端側に向かうに従い拡径する形状であってもよい。
【0023】
このような先端側端子部材は、後端側端子部材との連結作業にあたり、少なくともオス型連結部の先端側頂点がメス型連結部の後端部分に挿入できる状態であれば、メス型連結部の中心軸とオス型連結部の中心軸とにズレが生じている状態でも、オス型連結部がメス型連結部の後端部分の内部に沿って移動することで、連結作業が可能となる。
【0024】
よって、このような先端側端子部材を備えるガスセンサにおいては、先端側端子部材と後端側端子部材との連結作業が容易となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のガスセンサにおいては、金属端子の先端部分の耐熱性の実現と、金属端子とセンサ素子(電極端子部)との電気的接続状態の維持と、金属端子とリード線との電気的接続状態の維持と、を同時に成立できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態のガスセンサの全体構成を表す断面図である。
図2】検出素子の概略構造を表す斜視図である。
図3】先端側端子部材および後端側端子部材を備える金属端子の構造を表す説明図である。
図4】後端側の斜め上方から見たときの先端絶縁セパレータの斜視図である。
図5】後端側から見たときの先端側セパレータの外観図である。
図6】先端側の斜め下方から見たときの後端側セパレータの斜視図である。
図7】先端側から見たときの後端側セパレータの外観図である。
図8】金属端子が内部に配置されると共に、先端側セパレータおよび後端側セパレータが組み合わされた状態の絶縁セパレータの外観を表す説明図である。
図9】第2先端側端子部材および第2後端側端子部材を備える第2金属端子の構造を表す説明図である。
図10】先端側から見たときの第2後端側セパレータの外観図である。
図11】第2ガスセンサの全体構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
尚、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0028】
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
第1実施形態として、内燃機関の排気管に対して先端部分を排気管内に突出させる形態で装着し、排気ガス中の酸素を検出する酸素センサ(以下、ガスセンサ1ともいう)を例に挙げて説明する。なお、ガスセンサ1は、例えば、自動車またはオートバイ等の車両の排気管に備えられる。
【0029】
まず、本実施形態のガスセンサ1の構成について、図1を用いて説明する。
図1では、図面下方向がガスセンサの先端側であり、図面上方向がガスセンサの後端側である。
【0030】
ガスセンサ1は、排気管(図示せず)に固定される筒状の主体金具3と、主体金具3に貫挿されるとともに軸線方向(ガスセンサ1の長手方向:図中上下方向)に延びる板状の検出素子5と、主体金具3の先端側(図中下方)に配置されて検出素子5の先端側を覆う素子プロテクタ9と、溶接部11aにより主体金具3の後端側(図中上方)に取り付けられるとともに検出素子5の外周を覆う外筒11と、外筒11の内部に配置されて検出素子5の後端側を収容する絶縁セパレータ12と、外筒11の後端側を閉塞する閉塞部材15と、複数(本実施形態では、4個)の金属端子41と、複数(本実施形態では、4本)のリード線37と、を備えている。
【0031】
検出素子5は、測定対象物(排気ガスなど)に向けられる先端側に、保護層5aに覆われた検出部19が形成され、後端側の外表面のうち表裏の位置関係となる第1板面21および第2板面23に、電極端子部(第1〜第4電極端子部)31、32、34、35が形成されている。
【0032】
検出素子5は、先端側の検出部19が排気管に固定される主体金具3の先端より突出すると共に、後端側の電極端子部31、32、34、35が主体金具3の後端より突出した状態で、主体金具3の内部に固定される。
【0033】
電極端子部31、32、34、35には、それぞれ金属端子41が接続されている。つまり、複数の金属端子41は、絶縁セパレータ12の内部にて、検出素子5と絶縁セパレータ12との間に配置されることで、検出素子5の電極端子部31、32、34、35にそれぞれ電気的に接続される。金属端子41は、先端側端子部材43と、後端側端子部材45と、を備えて構成されている。
【0034】
複数の金属端子41は、それぞれ、外部からガスセンサ1の内部に配設される複数のリード線37(詳しくはリード線37中の芯線37a)に電気的に接続されている。
なお、金属端子41の詳細な構成は、後述する。
【0035】
金属端子41およびリード線37は、リード線37が接続される外部機器(図示省略)と検出素子5(詳細には、電極端子部31、32、34、35)との間に流れる電流の電流経路を形成する。複数のリード線37は、チューブ部材38により束ねられている。なお、図1では、複数のうち2本のリード線37のみを示している。
【0036】
図2は、検出素子5の概略構造を表す斜視図である。なお、図2では、軸線方向における中間部分を省略して検出素子5を表している。
検出素子5は、図2に示す様に、軸線方向(図2における左右方向)に延びる板状の素子部51と、同じく軸線方向に延びる板状のヒータ53と、が積層された直方体形状であり、その軸線方向に垂直の断面は矩形状である。図2では、保護層5aを点線で表している。
【0037】
なお、ガスセンサ1に備えられる検出素子5は従来公知のものであるため、その内部構造等の詳細な説明は省略するが、その概略構成は以下のようである。
まず、素子部51は、例えば、固体電解質基板の両側に多孔質電極を形成した酸素濃淡電池素子と、中空の基準ガス室を形成するためのスペーサと、を備えて構成されている。このうち、固体電解質基板は、例えば、イットリアを安定化剤として固溶させたジルコニアから形成され、多孔質電極は、例えば、Ptを主体に形成される。また、基準ガス室を形成するスペーサは、アルミナを主体に構成されており、中空の基準ガス室の内側には、酸素濃淡電池素子の一方の多孔質電極が露出するように配置されている。スペーサは、基準ガス室が少なくとも素子部51の先端側に位置するように形成されると共に、外部から基準ガス室に基準ガス(大気など)を導入するためのガス用経路を備えている。素子部51のうち多孔質電極および基準ガス室が形成される部分が検出部19に相当する。
【0038】
一方、ヒータ53は、アルミナを主体とする絶縁基板の間に、Ptを主体とする発熱抵抗体パターンが挟み込まれて形成されている。そして、素子部51とヒータ53とは、セラミック層(例えば、ジルコニア系セラミックやアルミナ系セラミック)を介して互いに接合される。
【0039】
また、検出素子5は、先端側のうち少なくとも測定対象物(本実施形態では排ガス)に晒される電極の表面上には、被毒防止用の多孔質のセラミックスで形成された保護層5a(図2では図示省略)が備えられる。なお、本実施形態の検出素子5は、図1に示すように、排ガスに晒される多孔質電極の表面を含む先端側全面が、保護層5aで覆われるように構成されている。
【0040】
このような検出素子5では、図2に示すように、第1板面21の後端側(図2における右側)に2個の電極端子部31、32が形成され、第2板面23の後端側に2個の電極端子部34、35が形成されている。電極端子部31、32は、素子部51に形成されるものであり、酸素濃淡電池素子における一対の多孔質電極にそれぞれ電気的に接続されている。電極端子部34、35は、ヒータ53に形成されるものであり、ヒータの厚さ方向に横切るビア導体(図示せず)を介して発熱抵抗体パターンの両端に各々接続されている。
【0041】
図1に戻り、主体金具3は、その外表面に自身を排気管に固定するためのネジ部3aを備えるとともに、その軸中心に貫通孔3bを有する筒状の部材である。なお、貫通孔3bには、径方向内側に突出する棚部3cが形成されている。主体金具3は、金属材料(例えば、ステンレスなど)で形成されている。
【0042】
主体金具3の貫通孔3bの内部には、検出素子5の径方向周囲を取り囲む状態で配置された環状の絶縁性材料(例えばアルミナなど)を用いて形成されたホルダ61(セラミックホルダ61)と、同様な環状の粉末充填層63(滑石リング63)と、同様な環状の絶縁性材料(例えばアルミナなど)を用いて形成されたスリーブ67(セラミックスリーブ67)とが、この順に先端側から後端側にかけて積層されている。
【0043】
セラミックスリーブ67と主体金具3の後端部3dとの間には、加締パッキン69が配置されている。なお、主体金具3の後端部3dは、加締パッキン69を介してセラミックスリーブ67を先端側に押し付けるように、加締められている。
【0044】
主体金具3の外周のうちネジ部3aの後端側には、環状のガスケット64が配置されている。ガスケット64は、ガスセンサ1とセンサ取付位置(排気管)との間の隙間からのガス抜けを抑制するものである。
【0045】
素子プロテクタ9は、主体金具3の先端側の外周に、検出素子5の突出部分を覆うように溶接部9dによって取り付けられた筒状の部材である。素子プロテクタ9は、耐熱性材料(例えばSUS310Sなど)を用いて形成されている。素子プロテクタ9は、外部プロテクタ9aおよび内部プロテクタ9bを備える二重構造である。外部プロテクタ9aおよび内部プロテクタ9bは、それぞれ、側壁または先端において、ガスの通過が可能な複数の孔部9cが形成されている。
【0046】
絶縁セパレータ12は、先端側セパレータ13と、後端側セパレータ14と、に分割可能に構成されている。
先端側セパレータ13は、絶縁性材料(例えばアルミナなど)を用いて形成された筒状の部材であり、外筒11の内部に配置された筒状の保持金具73によって、外筒11の内部に保持されている。先端側セパレータ13の内部には、軸線方向に貫通する端子配置孔13bが形成されている。端子配置孔13bには、検出素子5の後端部(電極端子部31、32、34、35)が収容されるとともに、電極端子部31、32、34、35に電気的に接続される複数の金属端子41の先端部(詳細には、先端側端子部材43)が収容されている。先端側セパレータ13は、その外表面に外向きに突出する環状の鍔部13cが設けられている。先端側セパレータ13は、鍔部13cが保持金具73に当接することで、外筒11の内部における軸線方向の設置位置を規定できる。
【0047】
後端側セパレータ14は、絶縁性材料(例えばアルミナなど)を用いて形成された筒状の部材であり、外筒11の内部のうち閉塞部材15の先端側に配置されている。後端側セパレータ14の内部には、軸線方向に貫通する端子配置孔14bが複数箇所に形成されている。後端側セパレータ14は、複数の端子配置孔14bのそれぞれに金属端子41の後端部(後端側端子部材45)を収容している。
【0048】
なお、絶縁セパレータ12(先端側セパレータ13および後端側セパレータ14)の詳細な構成は、後述する。
閉塞部材15は、可撓性材料(例えばフッ素樹脂)を用いて形成されたグロメットである。閉塞部材15は、外筒11の後端側開口部に配置されて、外筒11が外側から内側向きに加締められることで、外筒11に固定されている。閉塞部材15は、複数のリード線37を挿通するための複数の貫通孔(図示省略)を備えている。
【0049】
複数のリード線37は、それぞれ異なる金属端子41の後端側に(加締めによって)接続されるとともに、閉塞部材15を貫いて形成された貫通孔に貫挿されて、外部に延設されている。
【0050】
[1−2.金属端子]
次に、金属端子41について説明する。
上述したように、金属端子41は、先端側端子部材43と、後端側端子部材45と、を備えて構成されている。つまり、金属端子41は、単一部材で形成される構成ではなく、先端側端子部材43および後端側端子部材45を備えて構成される。
【0051】
図3は、先端側端子部材43および後端側端子部材45を備える金属端子41の構造を表す説明図である。
先端側端子部材43は、高温に繰り返し晒されても弾性(バネ弾性)を保持可能な金属材料で構成されており、例えば、Niを主体とする合金材料(NCF718など)を用いて構成されている。先端側端子部材43は、長尺薄板状の金属材料を折曲加工して形成されており、本体部43aと、メス型連結部43bと、延設部43cと、折曲部43dと、素子接触部43eと、を備える。
【0052】
本体部43aは、軸線方向に延びる長尺板状に形成されている。
メス型連結部43bは、本体部43aの後端側において、筒型形状に形成されると共に、軸線方向に垂直な断面形状が円形に形成されている。メス型連結部43bは、切欠部43fを備えており、弾性変形により筒型形状の内径寸法が変更可能に構成されている。このため、メス型連結部43bの断面形状は、厳密には、切れ目を有する円形である。また、メス型連結部43bは、後端側に拡径部43gを備えている。拡径部43gは、後端側に向かうに従い拡径する形状に形成されている。
【0053】
延設部43cは、本体部43aの側方部分から延設されており、その延設方向は本体部43aの板面に垂直な方向である。延設部43cは、本体部43aの2カ所から延設されている。延設部43cを備えることで、本体部43aの強度を向上できる。
【0054】
折曲部43dは、本体部43aの先端側において、本体部43aの板面に垂直な方向に折り曲げられて形成されており、本体部43aと素子接触部43eとを繋ぐ連結部分である。
【0055】
素子接触部43eは、折曲部43dを介して本体部43aに連結されており、折曲部43dの弾性変形により、本体部43aとの隙間寸法が変更可能に形成されている。
このように構成された先端側端子部材43は、素子接触部43eが検出素子5(詳細には、電極端子部31、32、34、35)と接触するにあたり、折曲部43dの弾性変形により素子接触部43eと検出素子5との接触状態を維持できる。
【0056】
次に、後端側端子部材45は、先端側端子部材43の材料よりも「0.2%耐力」が小さい金属材料で構成されており、例えば、ステンレス合金(SUS304)を用いて構成されている。後端側端子部材45は、長尺薄板状の金属材料を折曲加工して形成されており、信号線接続部45aと、オス型連結部45bと、を備える。
【0057】
信号線接続部45aは、曲げ加工により変形することで、リード線37(図1参照)の芯線37aを包囲可能な筒型形状となるように構成されている。信号線接続部45aは、リード線37の芯線37aを包囲した状態で径方向内向きに加締め加工されることで、リード線37の芯線37aと接続されるとともに電気的に接続される。
【0058】
オス型連結部45bは、信号線接続部45aの先端側において、筒型形状に形成されると共に、軸線方向に垂直な断面形状が円形に形成されている。オス型連結部45bの外径寸法は、メス型連結部43bの内部に配置可能な寸法に設定されている。また、オス型連結部45bは、先端側に縮径部45cを備えている。縮径部45cは、先端側に向かうに従い縮径する形状に形成されている。
【0059】
このように構成された後端側端子部材45は、信号線接続部45aがリード線37の芯線37aに電気的に接続されることで、リード線37を介して外部機器と電気的に接続される。
【0060】
金属端子41は、図3の右側領域に示すように、先端側端子部材43および後端側端子部材45が連結されて構成されている。詳細には、オス型連結部45bおよびメス型連結部43bが互いに連結されることで、先端側端子部材43および後端側端子部材45を備える金属端子41が形成される。
【0061】
このような構成の金属端子41は、先端側端子部材43の素子接触部43eが検出素子5(詳細には、電極端子部31、32、34、35)と電気的に接続されるとともに、後端側端子部材45の信号線接続部45aがリード線37を介して外部機器と電気的に接続されるように構成されている。
【0062】
先端側端子部材43は、Niを主体とする合金材料で形成されており、後端側端子部材45は、ステンレス合金で形成されている。Niを主体とする合金材料は、ステンレス合金に比べて、耐熱性に優れるとともに「0.2%耐力」が大きい特性を有する。つまり、先端側端子部材43は、後端側端子部材45に比べて、耐熱性に優れるとともに弾性変形領域が大きい材料で形成されている。
【0063】
[1−3.絶縁セパレータ]
次に、絶縁セパレータ12について説明する。
上述したように、絶縁セパレータ12は、先端側セパレータ13と、後端側セパレータ14と、に分割可能に構成されている。
【0064】
図4は、後端側の斜め上方から見たときの先端側セパレータ13の斜視図であり、図5は、後端側から見たときの先端側セパレータ13の外観図である。図6は、先端側の斜め下方から見たときの後端側セパレータ14の斜視図であり、図7は、先端側から見たときの後端側セパレータ14の外観図である。なお、図1におけるガスセンサ1の断面図のうち絶縁セパレータ12の配置領域については、図5に示すA−A折れ線における断面を表している。
【0065】
まず、先端側セパレータ13について説明する。
先端側セパレータ13は、上述のとおり、絶縁性材料(例えばアルミナなど)を用いて形成された筒状の部材である。図4および図5に示すように、先端側セパレータ13は、筒状のセパレータ本体部13aと、鍔部13cと、を備えて構成されている。
【0066】
セパレータ本体部13aの内部には、軸線方向に貫通する端子配置孔13bが形成されている。端子配置孔13bの内壁面には、内方に突設されかつ上下方向に延びる仕切部13dが2箇所に設けられている。1つの仕切部13dは、2つの端子配置領域13eの間に形成されており、隣接する2つの端子配置領域13eに配置された2つの金属端子41(詳細には、先端側端子部材43)どうしが接触(電気的に短絡)するのを抑制している。2つの仕切部13dは、端子配置孔13bの内壁面において、互いに対向する位置に形成されている。
【0067】
つまり、先端側セパレータ13は、端子配置孔13bの内部に4つの端子配置領域13eが備えられており、4個の金属端子41(先端側端子部材43)を互いに電気的に絶縁された状態で配置できるように構成されている。
【0068】
また、端子配置孔13bは、4つの端子配置領域13eのそれぞれに金属端子41(先端側端子部材43)が配置された状態で、2つの仕切部13dの間の領域に検出素子5の後端部を収容可能な大きさに形成されている。
【0069】
つまり、先端側セパレータ13は、端子配置孔13bの内部に4つの金属端子41(先端側端子部材43)と検出素子5の後端部とを収容するとともに、4つの金属端子41(先端側端子部材43)をそれぞれ検出素子5の電極端子部31、32、34、35に電気的に接続している。
【0070】
鍔部13cは、セパレータ本体部13aの外表面において外向きに突出するとともに、セパレータ本体部13aの外表面に沿って環状に形成されている。
また、先端側セパレータ13は、セパレータ本体部13aの後端部において、2つの凹部13fを備えている。
【0071】
次に、後端側セパレータ14について説明する。
後端側セパレータ14は、上述のとおり、絶縁性材料(例えばアルミナなど)を用いて形成された筒状の部材である。図6および図7に示すように、後端側セパレータ14は、筒状のセパレータ本体部14aと、突出部14cと、を備えて構成されている。
【0072】
セパレータ本体部14aの内部には、軸線方向に貫通する複数(本実施形態では、4個)の端子配置孔14bが形成されている。複数の端子配置孔14bは、それぞれ、線方向に垂直な断面形状が円形に形成されるとともに、金属端子41の後端部(後端側端子部材45)を収容可能な大きさに形成されている。後端側セパレータ14は、1つの端子配置孔14bに1つの金属端子41を配置する構成を採ることで、複数の金属端子41(詳細には、後端側端子部材45)どうしが接触(電気的に短絡)するのを抑制している。
【0073】
また、セパレータ本体部14aの内部には、軸線方向に貫通する通気孔14dが形成されている。後端側セパレータ14は、通気孔14dを備えることで、先端側セパレータ13と後端側セパレータ14との間に存在する湿気などを通気孔14dを介して外部に放出できる。なお、閉塞部材15は、通気孔14dに連通するとともに外部に通じる通気孔(図1では、図示省略)を備えている。
【0074】
突出部14cは、セパレータ本体部14aの先端側から先端方向に突出するように形成されている。突出部14cは、セパレータ本体部14aの先端側の2カ所に形成されている。セパレータ本体部14aのうち2つの突出部14cのそれぞれの形成位置は、先端側セパレータ13(セパレータ本体部13a)における2つの凹部13fの形成位置に応じて規定される。
【0075】
図8は、金属端子41が内部に配置されると共に、先端側セパレータ13および後端側セパレータ14が組み合わされた状態の絶縁セパレータ12の外観を表す説明図である。
絶縁セパレータ12は、先端側セパレータ13の2つの凹部13fに後端側セパレータ14の2つの突出部14cが係合するように、先端側セパレータ13と後端側セパレータ14とが組み合わされて構成されている。
【0076】
絶縁セパレータ12の組立手順は、例えば、まず、先端側セパレータ13の端子配置孔13bに検出素子5の後端部および4個の先端側端子部材43を配置する。他方、後端側セパレータ14の4つの端子配置孔14bのそれぞれにリード線37を挿通した上で、リード線37の芯線37aを後端側端子部材45の信号線接続部45aに対して、加締め加工により接続(固定)する。この後、先端側セパレータ13の端子配置孔13bに配置された4個の先端側端子部材43と4個の後端側端子部材45とを連結した上で、後端側セパレータ14をリード線37に沿って後端側端子部材45に近づけるように移動させて、4個の後端側端子部材45をそれぞれ端子配置孔14bに収容(配置)する。このとき、先端側セパレータ13の2つの凹部13fに後端側セパレータ14の2つの突出部14cを係合させる。
【0077】
このような手順で、先端側セパレータ13と後端側セパレータ14とを組み合わせることで、絶縁セパレータ12が完成する。
絶縁セパレータ12は、先端側セパレータ13と後端側セパレータ14との間に、突出部14cによって形成される隙間空間としての通気経路12aを備えている。通気経路12aは、絶縁セパレータ12の側面から内部の金属端子41に至る側面空間領域を有すると共に、複数の金属端子41の全てに通じる内部空間領域を有している。
【0078】
[1−4.効果]
以上説明したように、本実施形態のガスセンサ1においては、金属端子41は、先端側端子部材43と、後端側端子部材45と、を備えて構成されている。
【0079】
先端側端子部材43および後端側端子部材45は、メス型連結部43bとオス型連結部45bとが連結された状態で、検出素子5の電極端子部31、32、34、35と複数のリード線37(芯線37a)とを電気的に接続するように構成されている。
【0080】
先端側端子部材43は、Niを主体とする合金材料で形成されており、後端側端子部材45は、ステンレス合金で形成されている。つまり、先端側端子部材43は、後端側端子部材45に比べて、耐熱性に優れるとともに「0.2%耐力」が大きい材料で形成されている。
【0081】
このように、先端側端子部材43と後端側端子部材45とが特性が異なる材料で構成された金属端子41は、金属端子41のうち検出素子5と接触する部位の特性と、リード線37と接続される部位の特性と、がそれぞれ異なるものとなる。
【0082】
先端側端子部材43は、後端側端子部材45に比べて、耐熱性に優れるとともに「0.2%耐力」が大きい材料で形成されるため、高温の検出素子5と接触する部位に適した耐熱性を有するとともに、弾性変形領域が大きいことで検出素子5(詳細には、電極端子部31、32、34、35)との接触状態が良好となり電気的接触状態を維持しやすくなる。
【0083】
後端側端子部材45は、先端側端子部材43に比べて「0.2%耐力」が同等または小さい材料で形成されるため、リード線37との接続部分である信号線接続部45aを加締め加工によりリード線37と接続(固定)した場合に、信号線接続部45aでのスプリングバックが生じ難くなる。このような後端側端子部材45は、信号線接続部45aとリード線37との接続状態が強固となるため、リード線37との電気的接続状態を維持しやすくなる。
【0084】
よって、このような金属端子41を備えるガスセンサ1は、金属端子41の先端部分の耐熱性の実現と、金属端子41と検出素子5(詳細には、電極端子部31、32、34、35)との電気的接続状態の維持と、金属端子41とリード線37との電気的接続状態の維持と、を同時に成立できる。
【0085】
次に、ガスセンサ1においては、メス型連結部43bおよびオス型連結部45bのうち互いに接触する部分は、挿入方向に垂直な断面形状が円形に形成されている。
このような構成の金属端子41は、先端側端子部材43と後端側端子部材45とを連結する際に、メス型連結部43bおよびオス型連結部45bが断面形状に応じて互いの相対位置が調整されるため、先端側端子部材43と後端側端子部材45との相対的な位置関係(換言すれば、メス型連結部43bとオス型連結部45bとの相対的な位置関係)を厳密に設定することなく、容易に連結できる。
【0086】
つまり、断面形状が円形である場合には、メス型連結部43bおよびオス型連結部45bにおいて、連結方向(挿入方向)を中心軸とする回転方向の相対位置が変化しても、断面形状が円形であることから、互いに接触する部分の形状が連結に適した状態を維持できる。これにより、先端側端子部材43と後端側端子部材45との相対的な位置関係を厳密に設定することなく、容易に連結できるため、連結作業の煩雑さを軽減できる。
【0087】
次に、ガスセンサ1においては、後端側端子部材45は、オス型連結部45bの先端部分が先端側に向かうに従い縮径する形状の縮径部45cとして形成されている。
このような後端側端子部材45は、先端側端子部材43との連結作業にあたり、少なくともオス型連結部45bの先端側頂点がメス型連結部43bに挿入できる状態であれば、メス型連結部43bの中心軸とオス型連結部45bの中心軸とにズレが生じている状態でも、オス型連結部45bの先端部分(縮径部45c)がメス型連結部43bの内壁面に沿って移動することで、連結作業が可能となる。
【0088】
よって、このような後端側端子部材45を備えるガスセンサ1においては、先端側端子部材43と後端側端子部材45との連結作業が容易となる。
次に、ガスセンサ1においては、先端側端子部材43は、メス型連結部43bの後端部分が後端側に向かうに従い拡径する形状の拡径部43gとして形成されている。
【0089】
このような先端側端子部材43は、後端側端子部材45との連結作業にあたり、少なくともオス型連結部45bの先端側頂点がメス型連結部43bの後端部分(拡径部43g)に挿入できる状態であれば、連結作業が可能となる。つまり、メス型連結部43bの中心軸とオス型連結部45bの中心軸とにズレが生じている状態でも、オス型連結部45bがメス型連結部43bの後端部分(拡径部43g)の内部に沿って移動することで、先端側端子部材43と後端側端子部材45との連結作業が可能となる。
【0090】
よって、このような先端側端子部材43を備えるガスセンサ1においては、先端側端子部材43と後端側端子部材45との連結作業が容易となる。
[1−5.文言の対応関係]
ここで、本実施形態における文言の対応関係について説明する。
【0091】
ガスセンサ1がガスセンサの一例に相当し、検出素子5がセンサ素子の一例に相当し、金属端子41が金属端子の一例に相当し、リード線37が信号線の一例に相当する。
先端側端子部材43が先端側端子部材の一例に相当し、後端側端子部材45が後端側端子部材の一例に相当し、メス型連結部43bがメス型連結部の一例に相当し、オス型連結部45bがオス型連結部の一例に相当する。
【0092】
[2.第2実施形態]
[2−1.全体構成]
第2実施形態として、第2金属端子141および第2絶縁セパレータ112を備えるガスセンサについて説明する。
【0093】
第2金属端子141は、メス型連結部およびオス型連結部のそれぞれの断面形状が、第1実施形態の金属端子41とは異なる形状である。
第2実施形態は、第1実施形態と比べて、金属端子および絶縁セパレータの構成が異なるため、金属端子および絶縁セパレータを中心に説明する。なお、第2実施形態に関して第1実施形態と同様な内容については、同符号を用いて説明するか、もしくは説明を省略する。
【0094】
[2−2.第2金属端子]
まず、第2金属端子141について説明する。
図9は、第2金属端子141の構造を表す説明図である。
【0095】
第2金属端子141は、第2先端側端子部材143と、第2後端側端子部材145と、を備えて構成されている。つまり、第2金属端子141は、単一部材で形成される構成ではなく、第2先端側端子部材143および第2後端側端子部材145に分割可能な構成である。
【0096】
第2先端側端子部材143は、高温に繰り返し晒されても弾性(バネ弾性)を保持可能な金属材料で構成されており、例えば、Niを主体とする合金材料(NCF718など)を用いて構成されている。第2先端側端子部材143は、長尺薄板状の金属材料を折曲加工して形成されており、本体部143aと、メス型連結部143bと、延設部143cと、折曲部143dと、素子接触部143eと、を備える。
【0097】
第2先端側端子部材143における本体部143a、延設部143c、折曲部143d、素子接触部143eは、それぞれ、第1実施形態の先端側端子部材43における本体部43a、延設部43c、折曲部43d、素子接触部43eと同様の構成であることから、説明を省略する。
【0098】
メス型連結部143bは、本体部143aの後端側において、筒型形状に形成されると共に、軸線方向に垂直な断面形状が正多角形(詳細には、正方形)に形成されている。メス型連結部143bは、切欠部143fを備えており、弾性変形により筒型形状の内径寸法が変更可能に構成されている。このため、メス型連結部143bの断面形状は、厳密には、切れ目を有する正多角形である。
【0099】
このように構成された第2先端側端子部材143は、素子接触部143eが検出素子5(詳細には、電極端子部31、32、34、35)と接触するにあたり、折曲部143dの弾性変形により素子接触部143eと検出素子5との接触状態を維持できる。
【0100】
次に、第2後端側端子部材145は、第2先端側端子部材143の材料よりも弾性変形しがたい金属材料で構成されており、例えば、ステンレス合金(SUS304)を用いて構成されている。第2後端側端子部材145は、長尺薄板状の金属材料を折曲加工して形成されており、信号線接続部145aと、オス型連結部145bと、を備える。
【0101】
第2後端側端子部材145における信号線接続部145aは、第1実施形態の後端側端子部材45における信号線接続部45aと同様の構成であることから、説明を省略する。
オス型連結部145bは、信号線接続部145aの先端側において、筒型形状に形成されると共に、軸線方向に垂直な断面形状が正多角形(詳細には、正方形)に形成されている。オス型連結部145bの外径寸法は、メス型連結部143bの内部に配置可能な寸法に設定されている。また、オス型連結部145bは、先端側に縮径部145cを備えている。縮径部145cは、先端側に向かうに従い縮径する形状に形成されている。
【0102】
このように構成された第2後端側端子部材145は、信号線接続部145aがリード線37の芯線37aに電気的に接続されることで、リード線37を介して外部機器と電気的に接続される。
【0103】
第2金属端子141は、図9の右側領域に示すように、第2先端側端子部材143および第2後端側端子部材145が連結されて構成されている。詳細には、オス型連結部145bおよびメス型連結部143bが互いに連結されることで、第2先端側端子部材143および第2後端側端子部材145を備える第2金属端子141が形成される。
【0104】
このような構成の第2金属端子141は、第2先端側端子部材143の素子接触部143eが検出素子5(詳細には、電極端子部31、32、34、35)と電気的に接続されるとともに、第2後端側端子部材145の信号線接続部145aがリード線37を介して外部機器と電気的に接続されるように構成されている。
【0105】
第2先端側端子部材143は、Niを主体とする合金材料で形成されており、第2後端側端子部材145は、ステンレス合金で形成されている。Niを主体とする合金材料は、ステンレス合金に比べて、耐熱性に優れるとともに「0.2%耐力」が大きい特性を有する。つまり、第2先端側端子部材143は、第2後端側端子部材145に比べて、耐熱性に優れるとともに弾性変形領域が大きい材料で形成されている。
【0106】
[2−3.第2絶縁セパレータ]
次に、第2実施形態のガスセンサに備えられる第2絶縁セパレータ112について説明する。
【0107】
第2絶縁セパレータ112は、先端側セパレータ13と、第2後端側セパレータ114と、に分割可能に構成されている。
つまり、第2絶縁セパレータ112は、第1実施形態の絶縁セパレータ12と比べて、先端側セパレータ13は同じものを備えているが、後端側セパレータ14に代えて第2後端側セパレータ114を備えている。
【0108】
第2後端側セパレータ114は、後端側セパレータ14と比べて、外観は同様であることから、第2絶縁セパレータ112の外観は、第1実施形態の絶縁セパレータ12の外観(図8参照)と同様である。
【0109】
第2後端側セパレータ114は、絶縁性材料(例えばアルミナなど)を用いて形成された筒状の部材である。
図10は、先端側から見たときの第2後端側セパレータ114の外観図である。
【0110】
図10に示すように、第2後端側セパレータ114は、筒状のセパレータ本体部114aと、突出部114cと、を備えて構成されている。
セパレータ本体部114aの内部には、軸線方向に貫通する複数(本実施形態では、4個)の端子配置孔114bが形成されている。複数の端子配置孔114bは、それぞれ、軸線方向に垂直な断面形状が正多角形(詳細には、正方形)に形成されるとともに、第2金属端子141の後端部(第2後端側端子部材145)を収容可能な大きさに形成されている。第2後端側セパレータ114は、1つの端子配置孔114bに1つの第2金属端子141を配置する構成を採ることで、複数の第2金属端子141(詳細には、第2先端側端子部材143)どうしが接触(電気的に短絡)するのを抑制している。
【0111】
また、セパレータ本体部114aの内部には、軸線方向に貫通する通気孔114dが形成されている。第2後端側セパレータ114は、通気孔114dを備えることで、先端側セパレータ13と第2後端側セパレータ114との間に存在する湿気などを通気孔114dを介して外部に放出できる。なお、閉塞部材15は、通気孔114dに連通するとともに外部に通じる通気孔(図1では、図示省略)を備えている。
【0112】
突出部114cは、セパレータ本体部114aの先端側から先端方向に突出するように形成されている。突出部114cは、セパレータ本体部114aの先端側の2カ所に形成されている。
【0113】
つまり、第2後端側セパレータ114は、後端側セパレータ14と比べて、外観は同様であるが、端子配置孔114bの断面形状が異なる。なお、第2絶縁セパレータ112は、先端側セパレータ13と第2後端側セパレータ114との間に、突出部114cによって形成される隙間空間としての通気経路112aを備えている。
【0114】
[2−4.効果]
以上説明したように、第2実施形態のガスセンサにおいては、第2金属端子141は、第2先端側端子部材143と、第2後端側端子部材145と、を備えて構成されている。
【0115】
第2先端側端子部材143は、第1実施形態の先端側端子部材43と同一の材料で形成されており、第2後端側端子部材145は、第1実施形態の後端側端子部材45と同一の材料で形成されている。
【0116】
このため、第2先端側端子部材143は、第2後端側端子部材145に比べて、耐熱性に優れるとともに「0.2%耐力」が大きい材料で形成されるため、高温の検出素子5と接触する部位に適した耐熱性を有するとともに、弾性変形領域が大きいことで検出素子5(詳細には、電極端子部31、32、34、35)との接触状態が良好となり電気的接触状態を維持しやすくなる。
【0117】
第2後端側端子部材145は、第2先端側端子部材143に比べて「0.2%耐力」が同等または小さい材料で形成されるため、リード線37との接続部分である信号線接続部145aを加締め加工によりリード線37と接続(固定)した場合に、信号線接続部145aでのスプリングバックが生じ難くなる。このような第2後端側端子部材145は、信号線接続部145aとリード線37との接続状態が強固となるため、リード線37との電気的接続状態を維持しやすくなる。
【0118】
よって、このような第2金属端子141を備えるガスセンサは、第2金属端子141の先端部分の耐熱性の実現と、第2金属端子141と検出素子5(詳細には、電極端子部31、32、34、35)との電気的接続状態の維持と、第2金属端子141とリード線37との電気的接続状態の維持と、を同時に成立できる。
【0119】
次に、第2金属端子141においては、メス型連結部143bおよびオス型連結部145bのうち互いに接触する部分は、挿入方向に垂直な断面形状が正多角形(詳細には、正方形)に形成されている。
【0120】
このような構成の第2金属端子141は、第2先端側端子部材143と第2後端側端子部材145とを連結する際に、メス型連結部143bおよびオス型連結部145bが断面形状に応じて互いの相対位置が調整されるため、第2先端側端子部材143と第2後端側端子部材145との相対的な位置関係(換言すれば、メス型連結部143bとオス型連結部145bとの相対的な位置関係)を厳密に設定することなく、容易に連結できる。
【0121】
つまり、断面形状が正多角形の場合には、メス型連結部143bおよびオス型連結部145bにおいて、連結方向(挿入方向)を中心軸とする回転方向の相対位置にズレが生じていたとしても、連結作業時には、互いに接触する部分の表面形状に沿って移動することで回転方向の相対位置が調整されるため、連結作業の煩雑さを軽減できる。
【0122】
次に、第2金属端子141においては、第2後端側端子部材145は、オス型連結部145bの先端部分が先端側に向かうに従い縮径する形状の縮径部145cとして形成されている。
【0123】
このような第2後端側端子部材145は、第2先端側端子部材143との連結作業にあたり、少なくともオス型連結部145bの先端側頂点がメス型連結部143bに挿入できる状態であれば、メス型連結部143bの中心軸とオス型連結部145bの中心軸とにズレが生じている状態でも、オス型連結部145bの先端部分(縮径部145c)がメス型連結部143bの内壁面に沿って移動することで、連結作業が可能となる。
【0124】
よって、このような第2後端側端子部材145を備える第2金属端子141においては、第2先端側端子部材143と第2後端側端子部材145との連結作業が容易となる。
[2−5.文言の対応関係]
ここで、本実施形態における文言の対応関係について説明する。
【0125】
第2金属端子141が金属端子の一例に相当し、第2先端側端子部材143が先端側端子部材の一例に相当し、第2後端側端子部材145が後端側端子部材の一例に相当し、メス型連結部143bがメス型連結部の一例に相当し、オス型連結部145bがオス型連結部の一例に相当する。
【0126】
[3.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0127】
例えば、上記の実施形態では、絶縁セパレータとして、先端側セパレータと後端側セパレータに分割可能な構成の絶縁セパレータを備える形態について説明したが、単一部材で構成された絶縁セパレータを用いても良い。一例としては、図11に示す第2ガスセンサ101のように、第3絶縁セパレータ113を備える形態が挙げられる。
【0128】
なお、第2ガスセンサ101は、第1実施形態のガスセンサ1のうち絶縁セパレータ12に代えて第3絶縁セパレータ113を備えて構成されている。このため、第2ガスセンサ101のうち第1実施形態のガスセンサ1と同様の構成については、同符号を用いて説明するか、もしくは説明を省略する。
【0129】
第3絶縁セパレータ113は、絶縁性材料(例えばアルミナなど)を用いて形成された筒状の部材であり、外筒11の内部に配置された筒状の保持金具73によって、外筒11の内部に保持されている。第3絶縁セパレータ113は、筒状のセパレータ本体部113aと、鍔部113cと、を備えて構成されている。
【0130】
セパレータ本体部113aは、自身の内部に、軸線方向に貫通する端子配置孔113bが形成されている。セパレータ本体部113aは、第1実施形態の先端側セパレータ13のセパレータ本体部13aと同様の構成であるため、説明を省略する。なお、端子配置孔113bは、第1実施形態の端子配置孔13bと同様の構成である。
【0131】
鍔部113cは、第1実施形態の先端側セパレータ13の鍔部13cと比べて、セパレータ本体部13aからの突出寸法(換言すれば、軸線方向に垂直な断面における外径寸法)が大きく形成されている。つまり、第3絶縁セパレータ113の鍔部113cは、外筒11の内面と保持金具73との間に挟持できるように構成されている。これにより、第3絶縁セパレータ113は、鍔部113cが外筒11の内面と保持金具73との間で支えられることにより、外筒11の内部における配置位置が規定される。
【0132】
このような構成の第3絶縁セパレータ113は、端子配置孔113bに、検出素子5の後端部(電極端子部31、32、34、35)および複数の金属端子41(詳細には、先端側端子部材43)を収容することで、検出素子5の電極端子部31、32、34、35と複数の金属端子41とを電気的に接続している。
【0133】
このような構成の第2ガスセンサ101においては、第1実施形態のガスセンサ1と同様に、金属端子41が先端側端子部材43と後端側端子部材45とに分割可能に構成されている。
【0134】
よって、このような金属端子41を備える第2ガスセンサ101は、金属端子41の先端部分の耐熱性の実現と、金属端子41と検出素子5(詳細には、電極端子部31、32、34、35)との電気的接続状態の維持と、金属端子41とリード線37との電気的接続状態の維持と、を同時に成立できる。
【0135】
次に、上記実施形態では、金属端子として、メス型連結部およびオス型連結部のうち互いに接触する部分の断面形状(挿入方向に垂直な断面形状)が円形または正方形である金属端子について説明したが、メス型連結部およびオス型連結部の断面形状はこれらの形状に限定されるものではない。例えば、メス型連結部およびオス型連結部の断面形状は、正五角形、正六角形、正八角形、正十二角形などの正多角形としてもよい。
【0136】
また、上記実施形態では、メス型連結部およびオス型連結部を互いに組み合わせて連結し分割可能な状態としたが、さらに互いの連結部を溶接等により固定しても良い。
また、先端側端子部材の材料および後端側端子部材の材料は、上記の材料に限定されるものではない。例えば、先端側端子部材の材料がNCF750で、後端側端子部材の材料がSUS430である金属端子であってもよく、先端側端子部材の材料がSUS631で、後端側端子部材の材料がSUS430である金属端子であってもよい。
【0137】
また、本発明を適用するガスセンサは、酸素センサに限られることはなく、金属端子を備えるガスセンサであれば、NOxセンサや水素センサなど他の種類のガスを検出するガスセンサであってもよい。
【符号の説明】
【0138】
1…ガスセンサ、3…主体金具、5…検出素子、11…外筒、12…絶縁セパレータ、12a…通気経路、13…先端側セパレータ、14…後端側セパレータ、37…リード線、37a…芯線、41…金属端子、43…先端側端子部材、43b…メス型連結部、43e…素子接触部、43g…拡径部、45…後端側端子部材、45a…信号線接続部、45b…オス型連結部、45c…縮径部、101…第2ガスセンサ、112…第2絶縁セパレータ、113…第3絶縁セパレータ、114…第2後端側セパレータ、141…第2金属端子、143…第2先端側端子部材、143b…メス型連結部、143e…素子接触部、145…第2後端側端子部材、145a…信号線接続部、145b…オス型連結部、145c…縮径部。
図1
図2
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図5
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図9
図10
図11