【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、少なくとも40%のハードブロック含量と少なくとも80℃のガラス転移温度を有するポリイソシアネート重付加反応生成物の靱性を、該生成物のガラス転移温度を大幅に低下させることなく改良することができる、ということを本発明者らは見出した。
【0009】
本発明によれば、ダイマー脂肪酸及び/又はダイマー脂肪アルコールから誘導されるポリオールから選ばれる化合物を、ポリイソシアネート重付加反応生成物を製造するプロセスにおける耐衝撃改良剤として使用することが開示される。
【0010】
ポリイソシアネート重付加反応生成物は、40%超のハードブロック含量を有するのが好ましい。
幾つかの実施態様によれば、耐衝撃改良剤は、ダイマー脂肪酸から誘導されるポリエステルポリオールから選ばれる。
【0011】
幾つかの実施態様によれば、本発明のダイマー脂肪酸は、脂肪酸がC10〜C30の(さらに好ましくはC12〜C25の、特にC14〜C22の)脂肪酸から選ばれるという場合のダイマー脂肪酸から選ばれる。
【0012】
幾つかの実施態様によれば、ダイマー脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミトレイン酸、及び/又はエライジン酸の二量化生成物を含む。
本発明によれば、少なくとも80℃のガラス転移温度を有するポリイソシアネート重付加反応生成物の靱性の改良方法が開示される。前記方法は、少なくとも、(a)イソシアネート、(b)イソシアネート反応性化合物、(c)必要に応じた触媒化合物、ならびに(d)必要に応じた発泡剤及び/又は他の助剤化合物を少なくとも100のイソシアネートインデックスにて反応させることを含み、イソシアネート反応性化合物(b)が、本発明の第1の態様に従ったダイマー脂肪酸及び/又はダイマー脂肪アルコールから誘導されるポリオールから選ばれる化合物を、成分(a)〜(d)の合計重量を基準として1〜20重量部含み、ポリイソシアネート重付加反応生成物のハードブロック含量が少なくとも40%であることを特徴とする。
【0013】
幾つかの実施態様によれば、イソシアネート反応性化合物(b)は、ダイマー脂肪酸及び/又はダイマー脂肪アルコールから誘導されるポリオールから選ばれる化合物の2.5〜最大7重量部〔成分(a)〜(d)の合計重量を基準とした算出にて〕を構成するのが好ましい。
【0014】
幾つかの実施態様によれば、イソシアネート反応性化合物(b)が、好ましくは32〜6000の平均分子量と好ましくは1〜8の平均公称官能価を有するポリアミン及び/又はポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールを含み、ポリイソシアネート重付加反応生成物がポリウレタン結合及び/又はポリウレア結合を有する。
【0015】
幾つかの実施態様によれば、イソシアネート(a)は、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、アリール脂肪族ポリイソシアネート、および好ましくは芳香族ポリイソシアネートから選ばれるポリイソシアネート(たとえば、2,4-異性体、2,6-異性体、およびこれらの混合物の形のトルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートとそれらの変性体、ならびにジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と2より大きいイソシアネート官能価を有するそれらのオリゴマーとの混合物)から選ばれる。
【0016】
幾つかの実施態様によれば、助剤化合物(d)は、非イソシアネート反応性溶媒、界面活性剤、オルトギ酸アルキル(特にオルトギ酸トリイソプロピル)等のスカベンジャー、抗微生物剤、難燃剤、煙抑制剤、紫外線安定剤、着色剤、可塑剤、内部離型剤、レオロジー改質剤、湿潤剤、分散剤、およびフィラーから選ぶことができる。
【0017】
幾つかの実施態様によれば、ポリイソシアネート重付加反応生成物の靱性の改良方法は、流し込み成形法、圧縮成形法、樹脂トランスファー成形法(減圧を使用する場合とそうでない場合)、樹脂注入法、プリプレグ法、または射出法、押出法、もしくは引抜成形法に従って行われるハンドレイアップ法から選ばれる成形法を含む。
【0018】
幾つかの実施態様によれば、ポリイソシアネート重付加反応生成物が、ポリイソシアヌレート(PIR)含有生成物から選ばれ、改良方法が、化合物(a)〜(d)を、150〜最大15000の範囲の、好ましくは少なくとも300の、最も好ましくは少なくとも500のイソシアネートインデックスにて反応させるというプロセスを含み、触媒が少なくとも1種の三量化触媒を含む。
【0019】
幾つかの実施態様によれば、ポリイソシアネート重付加反応生成物がポリイソシアヌレート(PIR)含有生成物から選ばれ、三量化触媒が、金属有機塩から、好ましくはアルカリ金属有機塩またはアルカリ土類金属有機塩から、さらに好ましくは金属カルボキシレート、金属アルコキシド、またはこれらの混合物から選ばれ、カルボキシレート/アルコキシド基は1〜12個の炭素原子を有するのが好ましく、たとえば酢酸カリウム、ヘキサン酸カリウム、エチルヘキサン酸カリウム、オクタン酸カリウム、乳酸カリウム、ナトリウムエトキシド、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0020】
幾つかの実施態様によれば、ポリイソシアネート重付加反応生成物がポリイソシアヌレート(PIR)含有生成物から選ばれ、三量化触媒が、ハロゲン化リチウム(好ましくはLiCl)とエポキシ樹脂とを含有する組成物から選ばれる。
【0021】
幾つかの実施態様によれば、ポリイソシアネート重付加反応生成物がポリイソシアヌレート(PIR)含有生成物であり、改良方法が、成分(a)〜(d)を反応させる工程の後に、硬化ポリイソシアヌレート含有生成物を形成させるべく高温にて硬化工程を施す工程をさらに含み、このとき硬化は50℃〜350℃の温度で行うのが好ましく、125℃〜250℃の温度で行うのが最も好ましい。
【0022】
幾つかの実施態様によれば、ポリイソシアネート重付加反応生成物が、約100のイソシアネートインデックスで(好ましくは90〜110の範囲のイソシアネートインデックスで)製造されるポリウレタン(PUR)含有生成物もしくはポリウレア含有生成物であり、ここでイソシアネート反応性化合物の量及び/又は種類は、ハードブロック含量が40重量%超(好ましくは50重量%超)となるように選定される。
【0023】
幾つかの実施態様によれば、ポリイソシアネート重付加反応生成物がポリウレタン(PUR)含有生成物であり、触媒化合物(c)が、0.1〜2重量%(全イソシアネート反応性成分を基準として)の量にて使用される(PUR)触媒であって、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、ビス(N,N-ジメチルアミノエチル)エーテル、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)-エタノール、N,N,N'-トリメチル-N'-ヒドロキシエチルビスアミノエチル-エーテル、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N,N-ジイソプロパノールアミン、N,N'-ジエチルピペラジン、および1-(ビス(3-ジメチル-アミノプロピル)アミノ-2-プロパノール等のアミン触媒、及び/又は、オクタン酸第一錫、ジブチル錫ジラウレート、およびこれら触媒の混合物等の有機金属化合物から選ばれるのが好ましい。
【0024】
幾つかの実施態様によれば、本発明の方法に従って製造されるポリイソシアヌレート(PIR)含有生成物が開示され、該生成物は、50%超(好ましくは60%超)のハードブロック含量、150℃超のガラス転移温度、および200J/m
2超(好ましくは300J/m
2)の靱性値G
1Cを有する。
【0025】
さらに、本発明の方法に従って製造されるポリウレタン(PUR)及び/又はポリウレア含有生成物が開示され、該生成物は、40%超のハードブロック含量、80℃超のガラス転移温度、および200J/m
2超(好ましくは300J/m
2、最も好ましくは400J/m
2超)の靱性値G
1Cを有する。
【0026】
独立クレームと従属クレームは、本発明の特定の特徴と好ましい特徴を説明している。従属クレームからの特徴は、必要に応じて、独立クレームまたは他の従属クレームの特徴と組み合わせることができる。
【0027】
本発明の上記の特性、特徴、および利点、ならびに他の特性、特徴、および利点は、本発明の原理を例として説明している実験例と併せて考察すれば、下記の詳細な説明から明らかとなろう。
【0028】
用語の意味
本発明の文脈において、以下の用語は下記のような意味を有する。
1)少なくとも、ポリイソシアネート組成物と、イソシアネートに対して反応性である硬化剤化合物(たとえばポリオール)もしくは他の任意の適切な硬化剤とを含んでなる組成物を、本明細書では「硬化性組成物」と呼ぶ。この組成物は、硬化の前の液体組成物を表わす。
【0029】
2)イソシアネートインデックスまたはNCOインデックス(またはインデックス)は、配合物中に存在するNCO基とイソシアネート反応性水素原子との比であり、[NCO]×100/[活性水素]というパーセント値で表される。
【0030】
言い換えると、NCOインデックスは、配合物中に使用されているイソシアネート反応性水素の量と反応させるために理論的に必要とされるイソシアネートの量に関して、配合物中の実際に使用されるイソシアネートのパーセント値を表わす。
【0031】
留意しておかねばならないことは、ここで使用されているイソシアネートインデックスは、イソシアネート成分とイソシアネート反応性成分を含む材料を製造する実際の重合プロセスという観点から考えられている、という点である。変性ポリイソシアネート(当業界でプレポリマーと呼ばれるイソシアネート誘導体を含む)を製造するための予備段階において消費されるイソシアネート基、または予備段階(たとえば、変性ポリオールや変性ポリアミンを製造するためにイソシアネートと反応させる)において消費される活性水素は、イソシアネートインデックスの算出において考慮される。
【0032】
3)イソシアネートインデックスを算出するためにここで使用されている「イソシアネート反応性水素原子」とは、反応性組成物中に存在するヒドロキシル基とアミン基中の活性水素原子の合計を表わす。このことは、実際の重合プロセスでのイソシアネートインデックスを算出する上で、1個のヒドロキシル基が1個の反応性水素を含むと見なされ、1個の第一アミン基が1個の反応性水素を含むと見なされ、1個の水分子が2個の活性水素を含むと見なされる、ということを意味している。
【0033】
4)「平均公称ヒドロキシル官能価」(要するに「官能価」)という用語は、ここではポリオールまたはポリオール組成物の数平均官能価(1分子当たりのヒドロキシル基の数)を示すのに使用されている〔但しこの数平均官能価を、ポリオールやポリオール組成物の製造において使用される開始剤の数平均官能価(1分子当たりの活性水素原子の数)であると仮定して〕。しかしながら実際には、幾らかの末端不飽和のために、若干低いことが多い。
【0034】
5)「平均」とは、特に明記しない限り数平均を表わす。
6)「液状」とは、ASTM D445-11aに従った20℃で測定にて10Pa.s未満の粘度を有することを意味する。
【0035】
7)「三量化触媒」とは、ポリイソシアネートからのイソシアヌレート基の形成に触媒作用を及ぼす(形成を促進する)ことができる触媒を表わす。
8)「ポリイソシアネート重付加反応生成物」とは、(a)イソシアネートと(b)イソシアネートに対して反応性である化合物との、(c)触媒ならびに必要に応じた(d)助剤及び/又は他の添加剤の存在下での反応生成物を含む生成物を表わす。イソシアネートに対して反応性である化合物は、ウレア結合及び/又はウレタン結合をもたらす(ポリ)アミン及び/又はポリオール等のイソシアネート反応性水素原子を有する化合物であってよい。これとは別に、イソシアネートとイソシアネートが反応してポリイソシアヌレートを生成することがある。
【0036】
9)「ポリイソシアヌレート含有材料」とは、材料の総重量を基準として10重量%超(好ましくは少なくとも50重量%、さらに好ましくは75重量%)のポリイソシアヌレートを含んでなるポリイソシアネート組成物を表わす。
【0037】
10)「ハードブロック含量」とは、[ポリイソシアネート+500以下の分子量を有するイソシアネート反応性物質(ポリイソシアネート中に配合される500超の分子量を有するポリオールは考慮されない)の量]対[全てのポリイソシアネート+生成物を製造する際に使用される全てのイソシアネート反応性物質の量]の比の100倍を表わす。
【0038】
11)「密度」は、ISO845に従って測定される総合密度を表わす。
12)「ガラス転移温度(T
g)」とは、硬質ガラス状態からゴム弾性状態への可逆転移が起こる温度を表わす。ガラス転移温度(T
g)は、デュアルカンチレバー(a dual cantilever)にて一定の強制振幅と固定周波数を使用してASTM D4065-1に従って測定した。タンジェントデルタ(tanδ)プロフィールのピーク最大値がT
gと見なされる。
【0039】
13)「靱性」または「破壊靱性」は、サンプルが破壊する前にサンプルが吸収することができるエネルギーの尺度である。本発明の文脈では、靱性はISO13586に従って測定され、G
1C値(単位J/m
2)として表示される。