特許第6568068号(P6568068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6568068一方向強化材、一方向強化材の製造方法、及びそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568068
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】一方向強化材、一方向強化材の製造方法、及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/24 20060101AFI20190819BHJP
   B29C 70/20 20060101ALI20190819BHJP
   D04H 3/04 20120101ALI20190819BHJP
   B29B 11/16 20060101ALI20190819BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20190819BHJP
【FI】
   B29C39/24
   B29C70/20
   D04H3/04
   B29B11/16
   B29K105:08
【請求項の数】18
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2016-533029(P2016-533029)
(86)(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公表番号】特表2016-539029(P2016-539029A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2014075301
(87)【国際公開番号】WO2015075190
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2017年11月20日
(31)【優先権主張番号】13193998.5
(32)【優先日】2013年11月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518147286
【氏名又は名称】アールストローム − ムンクショー オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルグストレーム、ライネル
(72)【発明者】
【氏名】コソネン、ウーラ
(72)【発明者】
【氏名】ハーカナ、ラミ
(72)【発明者】
【氏名】ホイッカネン、マイヤ
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−022396(JP,A)
【文献】 特開2005−219228(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/099825(WO,A1)
【文献】 特開2003−082117(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/133437(WO,A1)
【文献】 特開2017−007342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/00−39/44
B29C 70/00−70/88
B29B 11/16
B29B 15/08−15/14
C08J 5/04− 5/10
C08J 5/24
D04H 1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉型成形法による繊維強化複合体の製造のための一方向強化材であって、前記一方向強化材(2、4、34)は、前記一方向強化材の長手方向に配置され、熱可塑性及び/又は熱硬化性バインダーにより互いに接着された連続した一方向ロービングを含み、前記一方向強化材(34)は、2つの長手方向縁部、上面、及び下面、並びに前記一方向強化材の前記上面及び前記下面のうちの少なくとも1つの上に配置され前記一方向ロービングの前記方向に対し横方向に延びた連続部材を有する、一方向強化材であって、
前記連続部材は、前記強化材(2、4、34)の前記上面及び前記下面のうちの少なくとも1つの上に前記一方向ロービングに対し横方向に配置された、樹脂のための流路を形成するための、細い分離した流路形成手段(6、40)であり、前記細い分離した流路形成手段(6、40)は、前記一方向強化材(2、4、34)の前記長手方向縁部の1つから反対側の前記長手方向縁部に延びる横方向の流路(10)を、両側面に形成する、したがって前記一方向強化材(2、4、34)の積層体を浸潤する際に前記一方向強化材(2、4、34)への樹脂の注入を促進するための手段であり、
前記細い分離した流路形成手段(6、40)は、前記細い分離した流路形成手段(6、40)上を横方向に延びる追加の糸(42、46)により前記一方向ロービング上に固定され、各々の前記追加の糸(42、46)は、前記細い分離した流路形成手段(6、40)を上に配置されて有する前記一方向強化材のそうした1つの表面上に連続して留まり、前記追加の糸(42、46)は、少なくとも前記一方向ロービングに接着により結合していることを特徴とする一方向強化材。
【請求項2】
前記追加の糸(42、46)は、前記一方向ロービングに熱可塑性及び/又は熱硬化性バインダーにより接着されていることを特徴とする、請求項1に記載の一方向強化材。
【請求項3】
前記細い分離した流路形成手段(6、40)は単繊維であることを特徴とする、請求項1に記載の一方向強化材。
【請求項4】
前記追加の糸(42、46)は、前記追加の糸(42、46)を前記一方向ロービング上に固定するための熱可塑性及び/又は熱硬化性バインダーを備えていることを特徴とする、請求項1、2、又は3に記載の一方向強化材。
【請求項5】
前記追加の糸(42、46)は、互いの横方向の距離を5mm〜70mmに配置されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の一方向強化材。
【請求項6】
前記追加の糸(42、46)は、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエーテル繊維、天然繊維、改善された天然繊維、金属繊維、アラミド繊維、若しくは炭素繊維、若しくは前記一方向ロービングと同じ材料、又はそれらの任意の組合せであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の一方向強化材。
【請求項7】
前記細い分離した流路形成手段(6)は、配置された前記1つの表面上で平行で、前記一方向強化材(2、4、34)上に2mm〜50mmの間隔で配置されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の一方向強化材。
【請求項8】
前記一方向ロービングは、人工繊維若しくは天然繊維、すなわちガラス、炭素、アラミド、玄武岩、ケナフ、サイザル、亜麻、麻、黄麻、及び亜麻布のような繊維、又はこれらの任意の組合せのいずれかであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の一方向強化材。
【請求項9】
前記熱可塑性及び/又は熱硬化性バインダーは、乾燥粉末、分散液、若しくは溶液、又は低粘性にするために加熱された形態であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の一方向強化材。
【請求項10】
前記一方向強化材は、厚さ方向、すなわち前記一方向強化材のZ方向に樹脂流動を促進するための手段(128、138)を更に含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の一方向強化材。
【請求項11】
閉型成形法により、繊維強化複合体の製造のための一方向強化材を生産する方法であって、
a)連続したロービングを、2つの長手方向縁部、上面及び下面を有する少なくとも1枚のシート(20、122’、122”)内に一方向に並べて配置する工程と、
b)細い分離した流路形成手段(6、40)を、前記少なくとも1枚のシート(20、122’、122”)の前記上面及び前記下面のうちの少なくとも1つの上の前記連続した一方向ロービング上に、前記一方向ロービングの前記方向に対し横方向に配置する(26で)工程と、
c)追加の糸(42、46)を、前記細い分離した流路形成手段(6、40)の上及び横方向に、並びに前記ロービング上に、各々の前記追加の糸を上に配置した前記細い分離した流路形成手段(6、40)を有する前記少なくとも1枚のシート(20、122’、122”)の1つの面上に延びて配置する工程と、
d)工程a)の後に、前記少なくとも1枚のシート(20、122’、122”)の上に熱可塑性及び/又は熱硬化性バインダーを塗る(24)工程と、
e)2つの長手方向縁部、上面及び下面を有するように一方向強化材(34)を形成するために、前記ロービングを一体に接着するための前記バインダーの反応を促進する工程と、
f)前記細い分離した流路形成手段(6、40)を、工程e)又は工程e)の後の別個の工程のいずれかで、前記連続した一方向ロービング上に接着する(28)工程と、
g)前記追加の糸(42、46)を、工程f)で前記一方向ロービング上に、又は工程f)の後の別個の工程で、前記一方向ロービング上及び前記細い分離した流路形成手段(6、40)上に、前記細い分離した流路形成手段(6、40)と一体に接着する工程と、を特徴とする、方法。
【請求項12】
工程a)で、
(1)少なくとも2枚のシート(122’、122”)内に連続したロービングを一方向に配置することと、
(2)前記シート(122’、122”)間に垂直の間隙を残すことにより、前記シート(122’、122”)を垂直方向に離して保つことと、を特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細い分離した流路形成手段(6、40)はバインダーを含む外側の層を備えること、又は前記細い分離した流路形成手段(6、40)は2成分の形成手段であること、並びに前記細い分離した流路形成手段(6、40)及び前記追加の糸(42、46)の両方は前記連続した一方向ロービング上に前記バインダーの反応を促進することにより工程e)で接着されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記細い分離した流路形成手段(6、40)を、工程e)の後に配置すること、並びに前記細い分離した流路形成手段(6、40)及び前記追加の糸(42、46)を前記ロービングに前記バインダーの反応を再度促進することにより接着することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記細い分離した流路形成手段(6、40)を、工程e)の後に配置すること、並びに前記細い分離した流路形成手段(6、40)及び前記追加の糸(42、46)を前記ロービングに、追加のバインダーを用いること及び反応を促進することにより接着することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
バインダーの前記反応促進は、前記バインダーを融解すること、溶媒を噴霧すること、及び前記バインダーから溶媒を蒸発させることのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
風力タービンブレードのスパーキャップを製造する方法であって、請求項1から10のいずれか一項に記載の一方向強化材を用いることを特徴とする方法。
【請求項18】
一軸若しくは多軸のプリフォーム又は強化材製品を製造する方法であって、請求項1から10のいずれか一項に記載の一方向強化材を用いることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向強化材、一方向強化材の製造方法、及びそれらの使用に関する。本発明の一方向強化材は、強化材が一般的に必要とされるすべての利用分野、及び特に閉型成形法(Closed Mold Method)が用いられる利用分野などで使われることがある。閉型成形法は、特に高い品質及び強度が最終製品に要求される利用分野で金型内への樹脂配給のための、真空注入技術又はレジン・トランスファー・モールディング(RTM)又はライトRTM(Light RTM)技術の使用を一般的に意味する。本発明の一方向強化材は、風力タービンブレード用のスパーキャップ積層体、自動車部品、ボート、様々な強度部材など、すなわち、長手形状が必要とされるようなすべての構造体の製造に、特に適用できる。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガラス、炭素、及びアラミド繊維、並びに亜麻、麻、黄麻、ケナフ、玄武岩、及び他の天然繊維などの様々な繊維を用いて、例えば、ボート、自動車、及び風力タービンの部品の製造のために、複合体及び積層体製品を製造する時、例えば、製造は、一方向若しくは多軸配向を有することがある、織物又は編物構造体のような適切な繊維強化材の生産から始まる。構造体は、次に、中間体又は最終製品の製造に用いられる成形型内に置かれる。成形型は、当然、最終製品の形状をしていて、つまり、形状は時にはかなり複雑であることがあり、成形型内に置かれる時に強化材はほぼ合った形が必要となる。通常、いくつかの層、最大数十層の強化材が、成形型内に1つずつ上に積み重ねられ、繊維強化複合体品を形成するために、硬膜剤を混合したエポキシ又は不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステルなどの熱硬化性樹脂が成形型内に注入される。樹脂は、PA(ポリアミド)又はCBT(環式ポリブチレンテレフタレート)又は類似物などの熱可塑性樹脂であることもある。最終製品が高い機械的な負荷に耐えなくてはならない場合、負荷に対して効率的に配向されることがあるので、縫製により横方向に組み合わされることもある、一方向強化材が、製造においてより好ましい選択である、ということが実践により明らかになっている。そのような一方向強化材は、一般的に強化繊維と呼ばれる、ロービング又はトウから作製される。
【0003】
一方向強化材は、通常、強化ロービングの単一層から形成される。強化材の構成体は、狙いの面積重量及びロービングのテックス数に依存する。例えば、高い面積重量が望まれる場合は、厚いロービング(例えば、Eガラスの2400tex)が用いられ、低い面積重量の強化材が望まれる場合は、細いロービング(例えば、Eガラスの600tex)が製造で用いられる。
【0004】
積層構成体にかかる負荷に応じて、最終製品で各層のロービングが平行又はいくつかの層は他の方向に配向されるように強化材の層を構成するか、又は、隣接する層のロービングがある角度を形成するように、最初にいくつかの層の一方向強化材の布地を製造し、その後そうして形成した布地を最終製品の生産に使うか、のいずれかにより、最終製品、すなわち、硬化積層構造体は、そのような何枚もの一方向強化材から作製されることがある。そのような布地は、内部の異なる繊維配向の数により、2軸、3軸、4軸などと呼ばれる。
【0005】
一方向強化材は、糸が一方向のみに延びているため、本来、内在的に不安定である。一方向強化材を取り扱えるようにするには、ロービングを適切な方法で互いに固定又は接着しなければならない。従来技術では、そのような目的のために、原理的に、2つの機械的な方法が知られている。
【0006】
1つの方法は、ロービングを縫製(例えば、縦編み)により、固定することである。縫製糸は、編み輪、すなわち編み目を形成し、実際の強化ロービングを強化材内の適切な位置に保っている。編み目は、例えば、既知の縦編み技術により強化繊維の1つ又は複数の層を貫く針など、様々な編み要素により形成される。
【0007】
別の機械的な方法は、軽量な横糸で長手方向の縦糸を対応する位置に固定するために製織技術を用いることである。横糸として、コーティングされていない糸とホットメルトコーティングされた糸の両方が使われてきた。加熱及び冷却の後、ホットメルトバインダーが強化材に相当な安定度を与えてきた。強化糸は横糸を横切る際によじれを形成し、応力集中及び編んだものより低い機械的特性につながるため、製織での代替案も、もはや好ましいとは考えられていない。ホットメルトバインダー糸は、使われた時に、マトリックス硬化で局所的な乱れを生じさせることが分かってきており、もはや業界で好まれていない。一般的に、横糸は、ホットメルト糸かそうでないかに関わらず、圧縮されると平坦になる多繊維糸である。
【0008】
特許文献1は、一方向に互いに平行に配置された強化繊維糸が、補助の横糸及び補助の縦糸を束にすることにより所定の編成に保たれる、一方向強化繊維織布を説明している。各々の補助の横糸は、布地の片側表面上を強化繊維糸に対し横方向に延びている。補助の横糸は、布地の両面上に交互に配置される。補助の縦糸は、強化繊維糸と平行に延びていて、各々の補助の縦糸が各々の補助の横糸の周りをまわって補助の横糸を布地に対して拘束するように、布地をジグザグ状に貫いている。換言すれば、補助の横糸を交錯する時、補助の縦糸は布地を片側表面から反対側に通過し、そうして強化繊維糸を一方向強化繊維糸の束に分ける。換言すれば、この特許文献1は、製織機を用いて一方向強化繊維糸を機械的に束ねることを教示しているが、製織機は生産で問題を引き起こす比較的複雑な機械である。例えば、製織は、布地の層が絶えず互いの位置を変えるため、個別のロービング間の磨耗を発生させて、ロービング内の長繊維の破断を起こしやすくなり、この両方が、製品の品質を低下させ工程の停止時間の恐れを増加させる。更に、強化ロービング、トウ、又は糸を束ねることは、今度は不均一に起こる樹脂の収縮による内部応力を増加させる、強化ロービング間の樹脂の多い領域につながる。
【0009】
様々な熱可塑性バインダーによる一方向ロービングを接着するための化学的方法も、市場に導入されてきた。ロービングが化学的に互いに固定される時、接着で強化材は比較的堅くなり、成形型の形状が複雑であればあるほど、強化材を成形型内に配置する、すなわち、成形型の輪郭に強化材を合わせるのが、難しくなるということが、実践により明らかになっている。しかし、接着剤、例えば粉末形状の、通常は熱可塑性バインダー、及びその使用量の両方を慎重に選択することにより、強化材の成形特性(主に柔軟性)は、許容できるレベルになることがある。前述した取り扱い時の剛性に加え、化学的に接着された強化材に伴う他の問題は、樹脂浸透性及び成形型内の強化材積層体の浸潤速度に見られてきた。
【0010】
樹脂浸透性及び強化材内のロービングの接着に関係する問題は、真空注入工程の圧縮力において重要視される、ロービングが注入成形段階で局所的に互いにあまりに堅くなるという、及び、第1に空いた空洞からのガスの流動が、第2に成形型内の強化材層内及び層間の空いた空洞を満たす樹脂の流動が、何か具体策が取られなければ非常に遅いという、事実に起因している。通常、成形型内に樹脂を供給する際に圧力差を利用して速度を上げる、成形工程の実用的な遂行のために樹脂浸透性の良さは不可欠である。閉型成形法において、成形型内の強化材層全体に樹脂を行き渡らせるために、真空注入技術又はレジン・トランスファー・モールディング(RTM)又はライトRTM技術のいずれかを、それらの数多くの変形、及びプラスチックスクリムなどの流動促進材料と共に適用することが一般的なやり方である。しかし、時には真空及び/又は注入圧力増加のような様々な対策にも関わらず、強化材内に、積層体の強度特性を大幅に低下させる小さな気泡が残りがちになる。前述の観点から、強化材の積層体からのガスの除去及び強化材の樹脂に対する浸透性を共に改善する新しい方法を検討する必要がある。
【0011】
強化材の浸透性を改善する1つの方法は、強化材に、樹脂のための流路、強化材内を樹脂が素早く流れるのを可能にする流路を設けることである。強化材内又は強化材の積層体内の強化材の間に樹脂流路を配置するための数多くの方法が、従来技術に見つかることもある。しかし、注入段階で加えられる真空は、ロービングを近隣の領域又は強化材から移動又は引き出したり、流路/空洞を充填するためにロービングの位置を移動したりさえもする傾向があるため、そのような流路の使用は非常に効果的でないことが、分かってきている。
【0012】
特許文献2は、一方向強化材スレッド及び横方向補剛スレッドを含む強化材構造体を開示している。補剛スレッドは、強化材スレッドの層上に離間して配置されている。補剛スレッドは、補剛スレッドを融解又は軟化させることにより補剛スレッドが強化材スレッドに固着して強化材に必要な横方向安定度を与えるような、熱可塑性材料であることがある。注入された樹脂の充分な毛管排出を確実にするために、長手方向強化材スレッドの層は、長手方向の排出スレッドを有しており、これらはしたがって互いに及び強化材スレッドに対して平行になっている。排出スレッドは、強化材スレッドの層に離間して配置されている。排出スレッドは、射出された樹脂を排出するために、例えば、綿繊維又はセルロース繊維などの充分な毛管作用のある繊維で覆われたガラス繊維で形成されることがある。排出スレッドのための別の選択肢は、単繊維が各々の上に巻かれた強化材スレッドである。したがって、樹脂のための螺旋状の流路が形成される。ゆえに、強化材内の流路は、強化材の長手方向に形成されることは明らかである。
【0013】
特許文献3は、実質的に平行で同軸状に整列した複数のトウ群により形成された複合材料の布地内への流路の形成を説明しており、前述のトウ群は各々1つ又はそれ以上のトウを有しており、前述のトウ群の一部は2つ又はそれ以上のトウを含んでいる。トウ群内のトウ間の間隔を隣接したトウ群間の間隔未満に配置することにより、布地内への樹脂の流動を確実にするよう設計されている。したがって、隣接したトウ群間の間隔が必要な流路を形成するはずである。そのような流路は、特にトウの方向、すなわち製品の長手方向に、樹脂が布地を貫通して流れるようにさせるはずである。
【0014】
前述の特許文献2、3の両方に関して、長手方向の樹脂の流動は、実際には、製造される製品が長ければ長いほどより複雑になり、最終製品の樹脂との含浸に少なくとも時間がかかることを意味する。実際には、50メートル又はそれ以上の長さの風力タービンブレードのスパーキャップを長さ方向の浸透により含浸させることを考えるのは不可能である。しかし、最終製品の長さが増加すると、ある時点で、長手方向の含浸は実用限界、すなわちいわゆる浸潤距離に達し、その先は他の方法を真剣に検討する必要がある、ということを理解しなければならない。別の問題として、注入段階で真空が加わる際に近くの領域からのロービングで流路が充満したり、積層構造体が強化ロービング内の局所的よじれによりしわがよって機械的強度が低下することが、実用的な実験で明らかになっている。前述の問題を解決する1つの方法は、例えば2メートル間隔でブレードの全長に渡り、樹脂注入を配置する可能性だが、これは複雑で時間がかかる方法であり、ゆえに非常に高価になる。
【0015】
特許文献4は、一般的な射出成形技術により複合材料積層品を生産するために有益な織物補強材を説明している。補強材、すなわち積層構造体は、製作される物品の形状に対応した形状の成形型内に織物強化材を有する積層を配置し、成形型が閉じられた後に樹脂を成形型内に注入することにより、製作される。織物強化材は、一方向スライバーを含む、織った又は織られていないものが元になっていることがある。強化材層の横方向安定度は、製織、編み、又は縫製により、又は横方向の結合スレッド又は糸を用いることにより、達成される。織物強化材の積層体の少なくとも1つの層は、注入の間、樹脂の流動を促進するために、ダクト、すなわち樹脂のための流路が内部の少なくとも一方向に延びている構造を有している。ダクトは、材料の長手方向及び/又は横方向に配置されていることがある。前述した特許文献4にある主な思想は、成形型を閉じること及び真空による圧縮により耐えるように、強化糸の一部を変えることにより、繊維の良好な樹脂流動特性を確保することである。これは、一般的に、強化糸の一部に撚りを加えることにより、又は炭素繊維トウの周りにポリエステル多繊維糸を対にすることにより、成される。しかし、この概念の欠点は、通常の強化糸の中に、積層負荷条件の下で強化材内の残りの糸とかなり異なった挙動をする、多くの数の比較的大きな糸が配置されていることである。これは、主に、負荷の下での糸の弾性特性に影響する、非常に高いことが多い撚り(260TPM)によるものである。また、高い撚りは、これらの糸内部の樹脂浸透を妨げる又は遅くする。これは、糸の一部への負荷のかかり方が異なるような不均質の積層構造体をもたらす。これにより、最終的に、静的及び厳密に言えば動的負荷条件の下での早期積層破壊の恐れが増加する。
【0016】
強化材積層体内への樹脂含浸を改善する1つの良く知られた方法は、成形型内に、積層体の上面及び下面領域全体に素早く樹脂を広げるための、プラスチックスクリム又は他の流動促進材料を、積層体の下部及び上部の両方に配置することである。含浸及び硬化の後、スクリムは積層体から大きな労働力をかけて除去される。スクリムの目的は、もちろん、強化材積層体内への樹脂のZ方向含浸ができるだけ早く始まるように、成形型の全体領域に樹脂を素早く導入することである。しかし、積層体が厚くなるほど、積層体に樹脂が含浸するのはより遅くなる。例えば、風力タービンブレードでは、スパーキャップの横断面はほぼ正方形であり、樹脂が積層体の中心に到達するのは難しい。
【0017】
一方向強化材、特に縫製した形態のものを用いる際には時により、横方向安定度又は樹脂流動特性を改善するために、補助の糸がいくつか横方向に加えられてきたこともまた知られている。一般的に糸は、ホットメルト又は他の熱可塑性材料でコーティングされており、糸はガラス繊維又はポリエステル(例えば、ガラス長繊維を撚った束で、各々の束は一般的に60本又はそれ以上の長繊維を有し、各々の長繊維は10μm〜15μmの直径を有している)であり、コーティングされた形態でテックス数は一般的に100tex〜200texである。糸の熱可塑性コーティングは、製織後、融解して、糸及びロービングの両方と接続する間隙容積内に流れ、それによって縦ロービングと横糸を一体に接着する。熱可塑性コーティングは、普通、PA(ポリアミド)又はEVA(エチレンビニルアセテート)型の材料で形成され、その融解温度は、ろう状物質により又は何か他の適切な手段により下げられる。ゆえに、バインダーの相対量は強化糸のごく付近では局所的に非常に多く、積層体内に局所的な弱い領域を発生させるため、熱可塑性コーティングは一般的に注入樹脂と対立する。接着剤のついたガラス又はポリエステル長繊維は、それに対し横方向のロービング上に残り、強化材に注入前又は類似の横方向取り扱い安定度を与える。繊維は熱可塑性材料でコーティングされているため、樹脂は実際の繊維表面には到達しないであろう。
【0018】
一方向強化材内にこのような補助の糸を用いることは、不必要に重量を増加させて、本来望ましくない影響である局所的な繊維の変形を引き起こし得るであろう。更に、横方向の強化繊維、すなわち90度、60度、又は45度方向に向いた繊維も、一方向構成体に軸方向負荷がかかっている間にこれらの繊維、通常ガラス繊維が折れると、微細な亀裂を生じ、そこから、最終製品の安定度を破壊するより深刻な疲労亀裂が始まることがある。後者の問題の理由は、ガラス繊維糸の破断点伸びは、横方向のマトリックスのそれより著しく低いという事実である。そしてなお更に、多繊維ガラス繊維糸又はロービングは、真空圧縮の圧力に晒されると変形し、元の丸い横断面でなくなり横断面は楕円又は平坦にさえなる(図1bに示すように)。多繊維糸の形状は、結果として、個々の長繊維が側方に動いて実際には楕円又は平坦な横断面の編成になる。熱可塑性材料でコーティングされた糸は、コーティングが加熱圧縮段階の間に融解してきて交差点のある平坦な形状になるため、同様の挙動を示す。
【0019】
第1に、従来技術の撚ったスレッド又は糸、すなわち横方向の流路を形成するために使用される多繊維は、約0.35mm〜0.45mmの直径(圧縮をかける前)を有している。実施した試験では、積層体は、前述した寸法の横方向スレッドを強化材の間に有する1200g/mの強化材層2枚の積層体を成形型内に配置し、積層体を真空に晒して樹脂注入を実行し、及び積層体を硬化させて形成された。注入段階で真空をかけることで強化材層が圧縮される間に、多繊維スレッドの横断面は楕円形又は平坦に変わることが、分かった。この強化材の浸潤距離を、横方向に配置した糸を有していない強化材のものと比較すると、まったく変化若しくは改善していなかった又は変化は実際上影響がないものだった、ということが分かった。理由は、後により詳細に説明されるであろう。
【0020】
ホットメルト横糸を有する強化材は、約20年前から市場に出ているが、それらは強度試験に、静的でも動的試験でも、通ることに成功してきていない。加えて、そのような強化材のプラスチック成形性は、劣る。実際には、そのような強化材を風力タービンブレードのスパーキャップ積層体の生産に用いることは、この種の強化材を曲げることができない二重の凹形状をスパーキャップが有しているため、不可能である。
【0021】
第2に、熱可塑性コーティングをした横方向ガラス繊維糸を有する強化材が検討されてきた。そのような強化材では、コーティングされた糸の直径は、0.30mm〜0.35mmのオーダー、圧縮されコーティングが融解又は除去された時の、芯糸の直径、実際はZ方向の厚さは、0.04mm〜0.06mmのオーダーだった。コーティングされていない糸、例えば縫製糸と比較した時これらの熱可塑性コーティングされた糸の持つ違いは、糸を強化材のロービングに接着する間、すなわちコーティングが軟化/融解する間、糸は接触点でその形状を変え(圧縮により糸のZ方向厚さが減少する)、局所的な流動の制限が形成される。換言すれば、コーティングされた糸が圧縮されていない時点では、その直径は元のレベルのままであるが、圧縮の時点では、直径/厚さは、芯糸の直径より小さく減少する、すなわち糸の芯は圧縮により平坦になる。コーティングされた糸を用いるのに伴う別の問題は、糸は堅く、比較的厚いことであり、それにより、ロービングの方向を直線方向から局所的に鋭く偏らせる、すなわちロービングを曲げて、すでに前述した問題並びに後にこの段落で述べる問題を持つよじれを形成することである。コーティングされた糸のまた更なる問題は、コーティングポリマー自体であり、それが樹脂と適合していないので、積層体を汚染し、それにより強化材内に弱い箇所を生じさせる。ここで、積層体は、安定度を与えるために各々が横方向のコーティングされたガラス繊維糸により接着された強化材層から形成された。強化材積層体の浸潤距離はほぼ許容できることが分かった。しかし、そのように直径又は厚さが約0.35mm〜約0.04mmで変化する横方向のガラス繊維糸を有する、積層体を疲労試験にかけた時、引張−引張疲労試験の開始のすぐ後に積層体の微小亀裂が観察された。積層体及び特に微小亀裂を詳細に検査すると、微小亀裂は、強化材のロービング及びコーティングされた横方向糸の交差点で発見されたことが分かった。明らかな疑惑は、微小亀裂の原因が、スレッドの局所的な大きな直径によりロービング内に曲がり又はよじれを生じていることであった。加えて、ホットメルト糸、すなわち芯糸は、加熱されると圧縮され、それにより局所的な平坦な領域が生じ、流路の横断面を低減させて、注入段階での樹脂の流動を妨げる。
【0022】
しかし、一方向強化材の形状を保つ又は横方向に歪ませない、すなわち熱可塑性バインダーによる形状を保つためのロービングの接着が、おそらく、将来、特に疲労特性を最適化する必要がある場合に、強化材が作製されるであろう方法であると思われる。ゆえに、強化材の樹脂への浸透性を改善するための新しい方法が検討されてきた。
【0023】
特許文献6は、主な構成成分が熱可塑性樹脂の樹脂材料を強化繊維基板の少なくとも1つの表面上に2重量%〜15%重量含み、強化繊維基板の強化繊維の体積比Vpfが40%〜60%の範囲内である、一方向に互いに平行に強化繊維糸を配置した、少なくとも1つの強化繊維糸群により形成された強化繊維基板、前述の強化繊維基板を生産する方法、及びそれから作製される複合材料を説明している。
【0024】
特許文献7は、縦及び横方向の両方の強化スレッド、並びに強化スレッド間に一方向又は両方向に織った接着糸を有する織った強化材を説明している。
【0025】
特許文献8は、少なくとも1枚の互いに結合スレッドにより支持された平行スレッドのシートからなる形式の、前述の平行スレッドに関係して薄く、結合は公知の縫合/編み技術により生産される、積層複合体を生産するために用いることができる、織物強化材を説明している。この強化材では、結合スレッドは、そのホットメルト接着剤特性が材料が生産された後に開発された、熱融解性スレッドである。
【0026】
特許文献9は、比較的大きな複合材料繊維の層に被着された強化布地を有する強化織物を説明している。布地は、機械的に強い繊維及び接着剤に適合した繊維を有している。複合材料繊維は、異なる材料の芯の周りにロービングを有していることがある。第2の強化材布地は、平行なロービングを有していることがある。
【0027】
特許文献10は、長手方向の糸と緩く編まれ、熱結合特性が製織後に現れる熱融解性の糸から構成された、結合する横糸により一体に結合された、長手方向の糸のウェブにより構成された形式の、積層された製品の製造のための織物強化材を説明している。ここで、製織は、横糸が間隔を空けた対に再度分けるように生産され、結合する横糸は長手方向の糸に比較して非常に細い
【0028】
特許文献11は、多軸繊維状強化材を有する複合材料シートの製造を説明しており、これは、少なくとも50重量%が強化長繊維及び最初に混合される有機物質の長繊維からなる共配合糸の強化スレッドの一方向ラップを形成することと、巻かれるようにする凝集力をラップに与えることと、このラップを移動方向に対し横方向に移動中に支持体上に巻き付けることと、移動方向に変位する強化糸/有機物質の集合体を加熱することと、加熱作用により、適切な場合は圧力を加えて、整えることと、次に、複合材料バンドを形成するように冷却することと、バンドを1つ又はそれ以上の複合材料シートの形に集めることと、を伴う。本発明はまた、方法を実施するための装置及び得られる製品に関する。
【0029】
最適な一方向強化材の更なる開発のための開始点としては、強度及び特に疲労特性を犠牲にすることなく、取り扱い安定度及び樹脂浸透性に関係する問題を考慮してきた強化材である。この強化材から製造される積層体のための最大の強度及び疲労特性を確保するために、横方向の材料安定度を与えるための強化材の横方向に伸張する糸/繊維は一切あってはならない。しかし、引き続きの作業段階の間に材料を取り扱うことは非常に難しい。重いことが多い強化材が成形型内に置かれるが、例えば、風力タービンブレードの生産段階の間には、多くは数層、時には50層から60層も上に重ねられ、強化材は、数メートル、多くは50m〜70m、時にはそれ以上の長さを有する。ブレードの生産で成形型内に強化材を積み重ねる作業者が各々の強化材の横方向の正確な位置を調整できるように、横方向安定度が必要とされる。これは、充分な横方向の引張強度なしでは不可能である。強化材の一端部から反対側端部に長手方向に連続して流路が伸びている場合、特許文献5が示すように、通路が壊れやすい線を形成し、それに沿って強化材が2つ又はそれ以上の部分、すなわち長手方向の筋に容易に引き裂かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2233625(A1)号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1491323(A1)号明細書
【特許文献3】欧州特許第1667838(B1)号明細書
【特許文献4】米国特許第5,484,642(A)号明細書
【特許文献5】欧州特許第1667838(B1)号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1419875(A1)号明細書
【特許文献7】仏国特許出願公開第1394271号明細書
【特許文献8】仏国特許出願公開第2594858(A1)号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第1072711(A1)号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第0193478(A1)号明細書
【特許文献11】国際公開第02/070806号
【0031】
実践により、現在の一方向強化材は、例えば以下のような、いくつかの問題の領域を有していることが明らかになっている。
a)一方向強化材は、基本的に、粉末接着形状で、一般的に、特に横方向に、非常に限られた樹脂の浸透性を有しており、ゆえに、長さのある対象物の生産は非常に挑戦的である。
b)従来技術の示す樹脂のための長手方向の流路により浸透性が改善された場合、強化材は横方向安定度を失う。
c)樹脂のための流路を確保することを狙って、一方向強化材の間及び一方向強化材に対し横方向に配置された、横方向の太い撚った多繊維は、ロービングを互いに離しすぎてしまい微小亀裂の恐れが大きくなり、減圧で多繊維が圧縮されてより効果のない直径、すなわちZ方向厚さとなる。
d)平坦になった横方向の糸は、樹脂がこれらの流路内を流れるのを妨げる。
e)一方向ロービングの長繊維間の気泡又は乾燥領域が、強化材積層体内に残りやすく、真空注入でも除去することができず、最終製品の強度をより更に著しく低下させることがある。
f)熱可塑性コーティング及びホットメルト接着剤は、注入に用いられる樹脂と少なくとも局所的に対立する。
【0032】
前述した問題は、本出願人の同時係属の特許出願に説明されている。説明した問題の少なくともいくつかは、空気が強化材から排出され、樹脂が製品に効率的に含浸又は浸潤する、両方のために、一方向ロービングの方向に対し横方向の自由な流域を配置するように、一方向強化ロービングと接続する樹脂のための流路を形成するための横方向に向いた細い分離した手段を用いることにより、解決する。
【0033】
同時係属の特許出願の一方向強化材は、例えば風力タービンブレードのスパーキャップ積層体など、繊維強化複合体の、レジン・トランスファー・モールディングプロセス及び真空注入成形プロセスの1つによる、製造のために用いられる。一方向強化材は、強化材の長手方向に配置され、熱可塑性及び/又は熱硬化性バインダーにより互いに接着された、連続した一方向ロービングを含み、強化材は、上面及び下面を有し、並びに、強化材積層体を浸潤する際に強化材を樹脂で一方向ロービングの方向に対し横方向に含浸するのを促進するための手段を備えており、含浸促進手段は、一方向ロービングに対して横方向に配置された樹脂のための流路を形成するための細い分離した手段であり、細い分離した流路形成手段は、両側面に、一方向強化材の長手方向の一縁部から長手方向の反対側縁部に延びる横方向の流路を形成する。強化材の長手方向の縁部により、この説明で、ウェブ状の製品の縁部は、機械方向、すなわち、一方向ロービングの方向に延びていることが理解される。
【0034】
同時係属の特許出願は、レジン・トランスファー・モールディングプロセス又は真空注入成形プロセスによる繊維強化複合体の製造のための一方向強化材を生産する方法も説明している。方法は、一方向ウェブを形成するために1つの層内に連続したロービングを一方向に並べて配置する工程と、ウェブに熱可塑性及び/又は熱硬化性バインダーを加える工程と、一方向強化材を形成するようにロービングを一体に接着するためにバインダーの反応を促進する工程と、細い分離した流路形成手段を一方向ロービングの方向に対し横方向に、連続した一方向ロービング上に配置する工程と、を含む。
【0035】
しかし、実施した試験により、強化材の製造からの位置を成形型内の強化材の最終の位置まで維持するように、一方向強化材上の細い分離した流路形成手段を配置すること、及び特に取り付けることは、非常に挑戦的な仕事であることが、明らかになっている。細い分離した流路形成手段が、一方向強化材の表面から分離した場合、それらは非常に容易に側方に移動して局所的な樹脂の流動を担う元の場所にはいない。これは、樹脂流動特性全体の深刻な擾乱につながることがある。細い分離した流路形成手段がすべて破断し、局所的領域に注入機能性をなくし製品の最終品質の深刻な問題につながることも、起こりうる。
【0036】
この種の強化材を用いる一般的な方法は、強化材層1枚1枚を大きなロールから巻き解いて、最大60層を有し、長さ60m及び幅1mであることもある、成形型内に配置するようにすることである。層は、正しい位置に配置されるように注意深く側方に位置を移動される。したがって、層の間に相当な磨耗があり、細い分離した流路形成手段の良好な接着が重要である。
【0037】
換言すれば、細い分離した流路形成手段を一方向強化材上に固定することは、強化材を巻き、巻き解き、切断し、成形型内に配置する時に、様々な方向の磨耗に晒されるので、細い分離した流路形成手段が強化材の表面から剥がれる恐れは高い。流路形成手段が表面から剥がれて、側方に移動し、破断し、又はその両方が起こる場合、強化材積層体の含浸が妨げられて、含浸が不完全で気泡が強化材積層体内に残る恐れが高く、製品品質が低下する。
【0038】
実施した試験が明らかにした別の問題は、単繊維ポリマー及び/又はポリマーバインダーが受けることがある、「結晶化」と呼ばれる現象に関連する。これは、高分子構造が、次第にそれ自体を、接着を弱める、より組織化された構造に配列していくことを意味する。高分子構造の変化速度は、異なるポリマーの間で相当に、すなわち数分から数か月まで変わる。
【0039】
細い分離した流路形成手段の良好な接着が全体概念のために不可欠である。
【0040】
以下の説明は、本発明を述べている明細書及び請求項に度々使われる特定の用語を理解するのを助けるために提示される。説明は、便宜上提示され、本発明を限定することを意図しない。
【0041】
面積重量−乾燥した強化材布地の単プライの単位面積当たり重量(質量)。
【0042】
バインダー −粉末、フィルム、又は液体などの様々な形態の高分子材料。バインダーは、剛性、融点、高分子構造、Tgなどのような化学的又は物理的特性に異なる特性を有する、1つ又はいくつかの個別のバインダーから製造されていることがある。バインダーは、ウェブ及び最終的には強化材を形成するように繊維構造体を一体に固着するために用いられる。好適なバインダーは、いくつかの例を挙げると、熱可塑性エポキシ、ポリエステル共重合体、ビスフェノール不飽和ポリエステル、又はこれらの混合物などである。
【0043】
分離した手段 −ウェブ、網、又はスクリム、すなわち「二次元」手段と明確に区別するための、スレッド状の「一次元」手段。
【0044】
布地 −しばしばスレッド又は糸と呼ばれる自然又は人が造った人工繊維の網状組織からなる柔軟性の織った材料。布地は、例えば製織、編み、かぎ針編み、ノッチング、穿刺、又は繊維を押し固める(フェルト)ことにより形成される。
【0045】
積層体 −適切な樹脂及び硬膜剤混合物を用いて、1又はそれ以上の層の強化材を含浸させ、化学反応又は温度を下げることで硬化させることにより構成することができる材料。積層体は、例えばガラス、炭素、アラミドなどの微細な繊維により強化されたマトリックスでできた繊維強化構造体である。マトリックスは、熱硬化性プラスチック(最も多くはエポキシ、ポリエステル、又はビニルエステル)又は熱可塑性樹脂であることがある。ガラス繊維強化材の一般的な最終用途としては、ボート、自動車部品、風力タービンブレードなどが挙げられる。
【0046】
マトリックス −複合材料を形成するために強化材を一体に結合する材料。複合材料は、いくつかの例を挙げると、熱硬化性エポキシ、ビニルエステル、又は不飽和ポリエステル樹脂、及びフェノールホルムアルデヒド樹脂又は熱可塑性樹脂(「ポリマー」を参照)などのような特別に配合したポリマーを用いる。
【0047】
単繊維 −ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどの合成材料で一般的にできた単一の連続的な長繊維で構成された糸。
【0048】
多軸強化材 −強化ロービングの2つ又はそれ以上の層で形成された強化材で、1つの層内のロービングは一方向であるが、隣接した層のロービングは特定の角度、通常45度、60度、又は90度を形成する。
【0049】
多繊維 −ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどの合成材料で一般的にできた多数の連続的な長繊維で構成された糸又はスレッド。特に、本発明に関連して、多繊維は、撚り合わされている又は撚り合わされていないことがあり、互いに接着されてはいないが、強固に撚り合わされていない限り圧縮に晒されると側方に移動する、長繊維の束を意味する。
【0050】
ポリマー −一般的に、例えば、ホモポリマー、例えばブロック、グラフト、ランダム、及び交互共重合体などのコポリマー、ターポリマーなど、及びこれらの配合物及び変形物が挙げられる。更に、特に限定されない限り、「ポリマー」という用語は、材料のすべての可能な幾何学的構成を含む。これらの構成としては、例えば、アイソタクチック、シンジオタクチック、及び不規則対称が挙げられる。
【0051】
強化材ウェブ −繊維が適切な手段により互いに固定された、強化繊維を含むウェブ。多くは連続ウェブとして製造される。例えば、製織、編み、編組、及び縫製の織物工程技術による、又は適切なバインダーを用いた接着によるなど、一方向又は多軸又は不規則配向の強化材を製造するいくつかの方法がある。
【0052】
強化糸 −複合材料の製造でマトリックスと共に用いられる糸。糸は、撚って又は撚らないで一体に集められた繊維の束である。繊維は、通常、ガラス(すべての変異型を含む)、炭素(すべての変異型とともに)、又はアラミドのような人工繊維であり、連続長繊維及び非連続繊維の両方として用いられることがある。また、いくつか例を挙げると、サイザル、亜麻、黄麻、ココ、ケナフ、麻、又は玄武岩などの広範な天然繊維も使われてきている。
【0053】
レジン・トランスファー・モールディング(RTM) −多くは乾燥した強化材のプリフォームを収容している閉じた成形金型内に、一般的には低粘度及び低圧又は高圧で樹脂を注入する、すなわち樹脂をプリフォームに注入して繊維強化複合部材を製造するための、2つの成形型表面を有する工程。
【0054】
ロービング −連続的な繊維又は長繊維、特にガラス繊維の長くて細い、撚られていない束。この利用分野においては、トウと同義語で、繊維の選択には、ガラス繊維だけでなく炭素、玄武岩、及びアラミド繊維、より一般的には人工連続繊維を含む。
【0055】
ロービング群又はトウ群 −詰めて離間配置された1つ又はそれ以上のトウ又はロービング。
【0056】
縫製糸 −テクスチャ化ポリエステルでできた24本又は48本の個別の長繊維で形成された糸。一方向強化材の製造で通常用いられる縫製糸は、一般的に線密度76dtex又は110dtexを有している。個別の長繊維の直径は、一般的に5μm〜10μmである。
【0057】
テックス数 −糸の線密度のための計量のSI単位で、1000m当たりのグラムでの質量として定義される。テックスはカナダ及び欧州大陸で使われる傾向が強く、デニールは米国及び英国でより一般的である。単位記号は「tex」である。人工合成繊維に関連して最も一般的に使われる単位は、実際にはデシテックス、略してdtexであり、10,000m当たりのグラムでの質量である。
【0058】
織物 −1つ又はそれ以上の層を有し、層は一方向又は多方向スレッドで形成される、シート、ウェブ、布地、及びマットを含む、様々な種類の物品に対する一般的な定義。
【0059】
熱可塑性樹脂 −熱に晒されると融解、軟化し、室温に冷却されると一般的に軟化していない状態に戻るポリマー。熱可塑性材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ある種のポリエステル、ポリアミド、ポリフルオロカーボン、ポリオレフィン、ある種のポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、カプロラクタム、エチレンのコポリマー、及び少なくとも1つのビニルモノマー(例えば、ポリエチレンアセテート)、セルロースエステル、及びアクリル樹脂が挙げられる。
【0060】
熱硬化性樹脂 −不可逆に硬化するポリマー材料。硬化は、熱(一般的に摂氏200度より上)、化学物質への接触(例えば、二液エポキシ)、又は電子ビーム処理などの照射により行われる。
【0061】
スレッド −単一の長繊維、糸が撚り合わさった束。
【0062】
トウ −複合材料産業において、トウは、連続長繊維の撚っていない束であり、人工繊維、特に炭素繊維(グラファイトとも呼ばれる)を呼ぶ。トウは、含む繊維の数により表記され、例えば12Kのトウは約12,000本の繊維を含む。ここではロービングの同義語。
【0063】
横方向取り扱い安定度 −一方向強化材が変形する又はばらばらに裂けるのを妨ぐ抵抗力。強化材を成形型内の別の強化材の上に配置して、強化材を長手方向に対し横方向に移動する際に必要とされる。
【0064】
一方向(UD)強化材 −すべてのロービング又はトウが同じ方向、ここでの場合、長手方向に延びている強化材。横方向の一方向強化材もある。これらのロービングは、ロービングを一体に保持するため及びロービングが束の編成に引き裂かれるのを防ぐために、縫製及び一般的にいくつかの追加の軽いチョップトストランド又は連続多繊維糸の層を用いて、又は横糸が安定性を与える製織により、結合された従来技術の一方向強化材に多くある。横糸は、ホットメルトコーティングされていることもある。ロービング又はトウを一体に結合する別の方法は、バインダー、例えば熱可塑性又は熱硬化性バインダーの使用である。その場合も、前述した追加の安定させる層が用いられることがある。
【0065】
真空注入 −最終製品を成形する、片面成形型を用いる工程。下面側は、堅い成形型であり、上面側は柔軟性の膜又は真空バッグである。成形型のキャビティに真空/吸引が加わると、キャビティから空気が逃げて、その後、強化材を完全に浸潤し積層構造体内のすべての空気の細泡を脱離させるように、吸引される(又は供給側において弱い超過気圧により加えて促進される−ライトRTMの特徴)ことにより樹脂が注入される。
【0066】
浸潤距離 −流動の前端の位置、又は実際には、樹脂が強化材積層体に入った場所から現在の位置までを測った距離。
【0067】
糸 −織物、縫合、かぎ針編み、編み、製織、縫製、刺繍、及びロープの生産に用いるのに適した、長い連続した長さの、多くは撚られた、多繊維。糸は、連続した又は非連続の天然又は合成繊維でできていることがある。
【0068】
Z方向 −層又は層の積層体の平面に垂直の方向、すなわち厚さ方向。
【0069】
本発明の目的は、前述した問題の少なくとも1つの解決策を提供することである。
【0070】
本発明のもう一つの目的は、強化長繊維配向の横方向に樹脂の優れた浸透性を有する、新しい一方向強化材を開発することである。
【0071】
本発明の更なる目的は、真空/脱気の間に強化材積層体から空気を排出させ、続いて、強化長繊維配向の横方向に樹脂を積層体に浸潤させる、優れた能力を有する、新しい一方向強化材を開発することである。
【0072】
本発明のまた更なる目的は、細い分離した流路形成手段が、強化材の取り扱いの間に表面から離脱しないように、強化材の表面に固定される、新しい一方向強化材を開発することである。
【0073】
本発明のなお更なる目的は、Z方向、すなわち強化材の平面に垂直な方向、すなわち厚さ方向に、樹脂の優れた浸透性を有する、新しい一方向強化材を開発することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0074】
閉型成形法、例えばレジン・トランスファー・モールディングプロセス又は真空注入成形プロセスによる繊維強化複合体の製造のための一方向強化材により、前述した問題の少なくとも1つは解決され、本発明の目的の少なくとも1つは達成される。一方向強化材は、強化材の長手方向に配置され、熱可塑性及び/又は熱硬化性バインダーにより互いに接着された連続した一方向ロービングを含む。強化材は、2つの長手方向縁部、上面、及び下面、並びに強化材の上面及び下面の少なくとも1つの上に配置された連続部材を有する。連続部材は、一方向ロービングの方向に対し横方向に延びている。連続部材は、強化材の上面及び下面の少なくとも1つの上に一方向ロービングに対し横方向に配置された、樹脂のための流路を形成するための、細い分離した手段である。細い分離した流路形成手段は、強化材の長手方向縁部の1つから反対側の長手方向縁部に延びる横方向の流路を、両側面に形成する、したがって強化材積層体を浸潤する際に強化材への樹脂の注入を促進するための手段である。細い分離した流路形成手段は、細い分離した流路形成手段上を横方向に延びる追加の糸により一方向ロービング上に固定される。各々の追加の糸は、細い分離した流路形成手段を上に配置されて有する強化材のそうした1つの表面上に連続して留まる。追加の糸は、少なくとも一方向ロービングに接着により結合している。
【0075】
以下の工程を含む、閉型成形法、例えばレジン・トランスファー・モールディングプロセス又は真空注入成形プロセスによる繊維強化複合体の製造のための一方向強化材を生産する方法により、従来技術の問題の少なくとも1つは解決され、目的の少なくとも1つは達成される。
a)連続ロービングを、2つの長手方向縁部、上面及び下面を有する少なくとも1枚のシート内に一方向に並べて配置する工程。
b)細い分離した流路形成手段を、少なくとも1枚のシートの上面及び下面の少なくとも1つの上の連続一方向ロービング上に、一方向ロービングの方向に対し横方向に配置する工程。
c)追加の糸を、細い分離した流路形成手段の上及び横方向に、並びにロービング上に、配置する工程であって、各々の追加の糸は、上に配置した細い分離した流路形成手段を有する少なくとも1枚のシートの1つの面上に延びる工程。
d)工程a)の後に、少なくとも1枚のシートの上に熱可塑性及び/又は熱硬化性バインダーを塗布する工程。
e)工程d)の後に、2つの長手方向縁部、上面及び下面を有する一方向強化材を形成するために、ロービングを一体に接着するためのバインダーの反応を促進する工程。
f)細い分離した流路形成手段を、工程e)又は工程e)の後の別個の工程のいずれかで、連続一方向ロービング上に接着する工程。
g)追加の糸を、工程f)でロービング上に、又は工程f)の後の別個の工程でロービング上及び細い分離した流路形成手段上に、細い分離した流路形成手段と一体に接着する工程。
【0076】
本発明の一方向強化材及びその製造方法の他の特徴は、付随する特許請求の範囲で開示される。
【0077】
本発明により、以下の長所の少なくともいくつかが達成されることがある。
・編み目及び横方向の結合糸は、バインダーシステムにより置き換えられて、編み目により生じる有害なよじれは避けられる。
・強化繊維が真っ直ぐなままに留まるため、強化材の強度特性は向上する。
・生産速度は、縫製機械により制限されない。
・一方向強化材の樹脂に対する浸透性は、良好な樹脂の流動を促進するようなレベルに向上する。
・製品の浸潤と同時に、実際に、一方向長繊維間の気泡又は乾燥領域が含浸後に製品内に残らないように、残っている空気が製品から排出される。
・横方向に樹脂が進む距離は、実施した実験では、編んだ一方向強化材と比較して少なくとも2.5倍、及び編んでいない一方向強化材と比較するとそれ以上に、相当に増加する。
・含浸のために必要な時間は、実施した実験では、従来技術の強化材で必要な時間の少なくとも6分の1にと、相当に短縮される。
・編んだ構造体の欠点は最小化される。
・最終製品は、優れた強度及び疲労特性を有する。
・マトリックスとの化学的擾乱に関係する欠点は最小化される。
・充分な横方向安定度を達成するために特定の横方向強化繊維又は結合糸を用いる必要がない。
・粉末接着された一方向強化材は、強化材積層体が凹形の成形型内に配置された時でさえも柔軟性が低減しているので、成形型内に平らに配置することができる。この特性は、折り目の形成、又は強化材ロービングの局所的領域が積層体内部に小さな湾曲曲がりを形成する恐れを大幅に低減する。
・粉末接着による形成により、局所的折り目及びよじれが防止されるので、この強化材は炭素繊維ベースの積層体に特に適している。理由は、局所的折り目及びよじれは炭素繊維積層体の圧縮強度特性を劇的に低減させるだろうということである。
・細い分離した流路形成手段が、細い分離した流路形成手段の横方向に延びる糸により強化材の面上に固定され、強化材及び強化材でできた最終製品の両方の高品質が確保される。
【0078】
本発明の一方向強化材及びその生産の方法が、以下の付属する図を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1a】細い分離した流路形成手段の挙動、この場合は、2つの強化材又はロービング層の間で圧縮された単繊維と多繊維糸と、の間の比較の概略を示す。
図1b】細い分離した流路形成手段の挙動、この場合は、2つの強化材又はロービング層の間で圧縮された単繊維と多繊維糸と、の間の比較の概略を示す。
図2】一方向強化材の従来技術の生産工程の概略を示す。
図3】従来技術の編んだ一方向強化材を3つの異なる粉末接着した一方向強化材と、樹脂の流動の観点で比較している。
図4】本発明の第1の好ましい実施形態による、一方向強化材の生産工程の概略を示す。
図5】本発明の第1の好ましい実施形態による、一方向強化材を示す。
図6】本発明の第2及び第3の好ましい実施形態による、一方向強化材の生産工程の概略の部分側面図を示す。
図7】本発明の第2の好ましい実施形態による、一方向強化材の生産工程の概略の部分平面図を示す。
図8a図7の分離したZ方向樹脂流動促進手段を一方向シートを渡して導入する様子をより詳細に示す。
図8b図7の分離したZ方向樹脂流動促進手段を一方向シートを渡して導入する様子をより詳細に示す。
図9】本発明の第3の好ましい実施形態による、一方向強化材の生産工程の概略の部分平面図を示す。
図10a】本発明の第2又は第3の好ましい実施形態による、一方向強化材の生産工程の4つの異なる段階を、より詳細だが概略の端面図により示す。
図10b】本発明の第2又は第3の好ましい実施形態による、一方向強化材の生産工程の4つの異なる段階を、より詳細だが概略の端面図により示す。
図10c】本発明の第2又は第3の好ましい実施形態による、一方向強化材の生産工程の4つの異なる段階を、より詳細だが概略の端面図により示す。
図10d】本発明の第2又は第3の好ましい実施形態による、一方向強化材の生産工程の4つの異なる段階を、より詳細だが概略の端面図により示す。
図11a】分離したZ方向樹脂流動促進手段を渡すための、及び分離したZ方向樹脂流動促進手段によりロービングをグループ化するための、様々な可能な配置を端面図により(及び図10aと比較できるように)示す。
図11b】分離したZ方向樹脂流動促進手段を渡すための、及び分離したZ方向樹脂流動促進手段によりロービングをグループ化するための、様々な可能な配置を端面図により(及び図10aと比較できるように)示す。
図11c】分離したZ方向樹脂流動促進手段を渡すための、及び分離したZ方向樹脂流動促進手段によりロービングをグループ化するための、様々な可能な配置を端面図により(及び図10aと比較できるように)示す。
図11d】分離したZ方向樹脂流動促進手段を渡すための、及び分離したZ方向樹脂流動促進手段によりロービングをグループ化するための、様々な可能な配置を端面図により(及び図10aと比較できるように)示す。
図11e】分離したZ方向樹脂流動促進手段を渡すための、及び分離したZ方向樹脂流動促進手段によりロービングをグループ化するための、様々な可能な配置を端面図により(及び図10aと比較できるように)示す。
図11f】分離したZ方向樹脂流動促進手段を渡すための、及び分離したZ方向樹脂流動促進手段によりロービングをグループ化するための、様々な可能な配置を端面図により(及び図10aと比較できるように)示す。
図12】本発明の第2又は第3の好ましい実施形態による、一方向強化材を示す。
【発明を実施するための形態】
【0080】
これまで、強化材に関連して、樹脂のための横方向流路の配置に関する4つの異なる事実を説明してきた。第1に、バインダーが融解する、標準的な熱可塑性ホットメルトをコーティングした糸を用いることは、熱可塑性材料のマトリックス材料との不適合性のため望ましくない。第2に、スレッドが、成形型内で真空による圧縮に晒された後に0.3mm〜0.4mmのZ方向厚さを有する場合、厚すぎて、最終製品に動的負荷で微小亀裂を生じる恐れが高い。第3に、コーティングしていない多繊維スレッドは、圧縮下で平坦又は楕円になり、樹脂流動特性を破壊する。第4に、例えば風力タービンブレードのスパーキャップなどの相当長い強化対象物の製造は、直角、すなわち一方向強化材ロービングの方向に対し横方向に、強化材積層体の樹脂流動及び含浸を整えるための効率的方法なしには、実際には不可能である。
【0081】
前述の事実のため、より小さい直径の、樹脂のための流路を形成するための横方向の細い分離した手段の使用が試験され、最終積層体を、強化材に対し横方向安定度を与えるのが主な役割である横方向多繊維を用いて形成された従来技術の積層体と比較した。ここで、「流路を形成するための細い分離した手段」又は「細い分離した流路形成手段」という表現は、単繊維を含むがこれに限定されないことを理解されたい。多繊維及び他の連続した手段も、以下に説明する範囲内の全体直径を有し、強化ロービングと織った構造を形成せず、及び以下の必要条件を満たす限り、強化体層間の樹脂のための流路を創出するために考慮することができるであろう。換言すれば、多繊維又は他の連続した手段又はこれらの処置及び構造体は、単一の必須条件を満たさなければならない。この説明において、樹脂の流路を創出するための横方向手段に関連して用いられる際の「連続した」という言葉は、広く理解されるべきであり、換言すれば、「連続した」という言葉は、最も好ましくはウェブの幅全体に渡り延びている流路形成手段、又は流路が連続した形でウェブの一縁部から反対側の縁部まで延びるように配置される限り、更に短い長さの流路形成手段も含む。多繊維又は他の連続した手段は、単繊維のように働かなくてはならない、すなわち多繊維が通常なる、すなわち単一の長繊維が圧縮下で側方に移動できることにより、多繊維の横断面が丸くなく平坦又はリボン状になる、ようには圧縮されないことがある。このような必要条件は、実際には、多繊維がロービング上及び積層体内部で単繊維状の構造に変更されるような、一方向ウェブの生産の生産工程で、多繊維の個別の単一長繊維が一体に融解する、又はバインダーが単一長繊維を一体に接着するようなやり方で、多繊維がバインダーを有していなければならないことを実際には意味する。浸潤距離及び疲労試験の両方の比較を含む大規模な試験の後、横方向に配置した細い分離した流路形成手段の直径又はZ方向厚さの最適な範囲は、100μm〜200μm、好ましくは130μm〜170μmであることが分かった。しかし、特に重い強化材の場合には、最大300μmまでの直径が用いられてもよい。直径に関連する前述の説明並びに本明細書で後に述べる直径に関する様々な説明について、単繊維又は細い流路形成手段が幾分か圧縮される場合は、直径は、圧縮下での、換言すれば、真空工程又はRTM成形型閉じ圧力による、単繊維又は細い流路形成手段のZ方向寸法を意味すると考えるべきであることを理解される必要がある。試験で、樹脂は非常に速く空洞内に流れ込み、真空段階の間及び注入開始前に閉じ込められていたところからすべての残留する空気を押し出したことが明らかになった。厚さ130μmの細い横方向の分離した流路形成手段を有する強化材層積層体の浸潤距離を、ロービングの長手方向に対して90度又は+/−45度の横方向糸を有する従来技術の積層体のものと比較すると、細い横方向流路形成手段を有する一方向強化材層積層体の浸潤距離は、2倍であった。厚さ130μmの横方向の細い分離した流路形成手段を有する粉末接着一方向ロービングでできた強化材層積層体の浸潤距離を、横方向糸又は細い分離した流路形成手段のない粉末接着一方向ロービングで形成された積層体のものと比較すると、ある時間経過後、細い横方向の分離した流路形成手段を有する一方向強化材層積層体の浸潤距離は、約16倍であった。また、そうして形成された積層体が硬化された時、その疲労特性を試験して、ロービングの長手方向に対して90度又は+/−45度の横方向糸を有する従来技術の積層体のものと比較すると、細い横方向の分離した流路形成手段を有する一方向強化材層でできた積層体の疲労特性は、従来技術の積層体のものより明らかに良いことが観察された。疲労特性が向上した唯一の理由は、粉末接着一方向強化材内の強化一方向ロービング内に存在するよじれがより少ないことと、強化材積層体からの空気の除去がより良いので真空注入段階で細泡がより少なくなることである。ゆえに、浸潤速度、強度、及び疲労を含むすべての工程及び製品特性が明らかに向上した。
【0082】
実施した試験の1つは、スレッド、すなわち多繊維が流路を創出するのに用いることができるかどうかを試験するためであった。初期の実験において、細い分離した流路形成手段、すなわちZ方向厚さ又は直径130μmを有する単繊維を配置することで、最終積層体の疲労特性が低下しないことが分かったため、実験は、最初に、圧縮下でのZ方向寸法が初期の実験の細い分離した流路形成手段のものと大体同じであることを確保するために、どのような多繊維糸が必要かを見つけることを目指した。
【0083】
図1a及び図1bは、細い分離した流路形成手段の挙動、この場合は、2つの強化材又はロービング層の間の真空注入工程の圧縮下での単繊維と多繊維糸との間の横断面の比較の概略を示す。図1aは、一方向ロービングに対して直角に配置された単繊維6を間に有する、熱可塑性及び/又は熱硬化性粉末により互いに接着されたロービングの束でできた重なる強化材2及び4の横断面を示す。図1bは、ロービングに対して直角に配置された多繊維糸8を間に有する、熱可塑性及び/又は熱硬化性粉末により互いに層として接着されたロービングの束でできた同じ強化材2及び4を示す。図1aは、空いた流路10が単繊維6の両側面で強化材2及び4との間に形成されるように、単繊維が強化材2及び4のロービングを押し離す又は離して保つことを示す。図1bは、図1aと同じやり方で押し離される強化材2及び4のロービング、すなわち横方向単繊維又は多繊維を有する2つの強化材の厚さが同じであることを示す。しかし、ロービングを押し離す又は離して保つために必要な多繊維糸8は全く異なる寸法及び断面積のものであると見えることがある。これは、実際には、多繊維糸8の両側面に純粋な流路12はないように、圧縮下で楕円又は平坦に変形している。
【0084】
理由は、多繊維糸は、各長繊維が一般的に5μm〜10μmの直径を有する、数十本又は数百本の個別の長繊維でできていることである。多繊維糸が圧縮圧力に晒される時、すなわち真空注入段階に、成形型内で、多繊維糸の長繊維は、多繊維糸のZ方向寸法が、撚られていたとしても多繊維の見かけの元の直径の一部になるように側方に移動させられる。乾燥箇所がないように、樹脂が撚られた糸の長繊維の間にも浸透できることが重要であるため、撚りは、一般的にとても少なく、メートル当たり20〜40ターンのオーダーである。実施した試験によると、多繊維、すなわち0.5bar(注入圧縮の0.95barに比べて小さい)の圧縮下で130μmの厚さを有するポリエステル糸は、1120dtexのデシテックス数を有するが、圧縮あり及び圧縮なしで130μmの同様の直径を有する単繊維は、ずっと小さなデシテックス数167を有することが分かった。ガラス繊維糸は、同じ条件で、単繊維のものと比較して約18倍のデシテックス数を有することがある。ゆえに、多繊維は、平坦に圧縮された時、圧縮前の最初に多繊維の側方に形成される、細泡内の空いた隙間を充填することは明らかである。これにより、樹脂がこれらの細泡又は通路を通って流れるのを妨ぐ。
【0085】
150TPM(TPM=メートル当たりターン)又はそれ以上のオーダーの高い撚りの糸は、真空の圧縮効果に抵抗するのに効果的なことがあるであろう。それでもそれらは、遅く不完全な樹脂浸透特性のために、及び隣接する実質的に撚ってないロービング糸と比較して繊維が引張負荷の下で好ましくない弾性応答をするコイル形状でもあるために、複合材料の最終用途に好まれない。更に撚った糸は、特性として堅く強化一方向ロービングのよじれにつながる。撚った糸が用いられる時、樹脂が撚った糸の長繊維の間に浸透できることが重要であるため、撚りは一般的に比較的低く、すなわち、20TPM〜40TPMのオーダーである。これは、樹脂流動の観点から、樹脂流動に利用可能な通路の断面積が実際にはわずかであるように、各長繊維は側方に移動して、多繊維の側面の空洞の断面を減少させることを意味する。
【0086】
図2は、一方向強化材の従来技術の生産工程の概略を示す。一方向強化材の製造は、以下のように進む。第1に、一方向ロービング(好ましくは、ガラス、炭素、アラミド若しくは玄武岩、若しくは亜麻、黄麻、麻、サイザル、ココ、ケナフ、石綿、又は他の天然繊維、しかし必ずしもこれらではない)の均一なウェブ20が、ロービングを束22から引き出し、おさを用いて、目標とする面積重量により、例えば並べて又は制御された距離に、配置して、形成される。「ロービング」という言葉はここで、一方向強化材の製造に用いられるそのようなトウ、ロービング、繊維などすべてを表すのに使われる。そうしてロービングが、好ましくは1層のロービングに、しかし強化材の面積重量及び用いられるロービングのテックス数によりいくつかの層のロービングであることもあるが、並べて配置される。
【0087】
ウェブ20は、次にバインダー塗布工程24に方向付けられる。バインダーは、いくつかの方法で塗布されることがある。例示のシステムにおいては、バインダーは、粉末形態の熱可塑性バインダーであり、バインダー粉末をウェブの全表面上、すなわちウェブ20の上面だけでなく個別のロービングの全周に延展するように、装置24によりウェブ上に付加される。目的は、粉末バインダー材料の薄いが均一な層によりロービングを効率的に囲むことである。装置24の動作は、例えば、場合により空気を循環することで補助して、ウェブ及び最初はウェブ上にある粉末を振動させることに基づいている。バインダー延展装置24を用いることにより、単なる拡散方法の場合にそうなるであろうように粉末バインダーがロービングの上面又はウェブの上面のみに留まることを防ぐ。例えば、いくつか他の弛んだロービング又は長繊維が垂れ下がるのを防ぐために、バインダーは、ロービングの下面、すなわちウェブの下面上にも必要である。粉末は、更に、側方又は横方向安定度を与えるために、ロービングの間にも必要である。
【0088】
粉末バインダーをロービングに伝えて塗布するために利用できる方法が多くあることもまた理解されるべきである。
【0089】
一方向強化材の場合、強化材に、実際にすべての横方向安定度を与えているのはバインダーであるため、バインダーの量は非常に慎重に考慮しなければならない。しかし、すでに先に説明したように、それはここで最適化の問題である。バインダーを塗布すればするほど、強化材の横方向安定度はより良くなる。しかし、同時に、バインダーを塗布すればするほど、強化材はより堅くなり、強化材を成形型の輪郭に従わせることは難しくなる。ゆえに、バインダーの量は、充分な横方向安定度を与えるようにだけ、できる限り少なく保つべきである。加えて、バインダーの量は、マトリックスとの適合性の問題を避けるために、最小に保つべきである。したがって、細い横方向の分離した流路形成手段を有する一方向強化材は、面積重量1000g/m〜1200g/mを有する強化材当たり5g/m〜30g/m、好ましくは約8g/m〜15g/mのバインダーを用いている。当然、面積重量がより小さくなれば、バインダーの量もより少なくなり、その逆も同じである。
【0090】
しかし、乾燥粉末以外のバインダー、いくつか例を挙げると液体及び加熱又は他の手段により低粘性に変えたポリマーなども用いられることがあることを理解されるべきである。バインダーは、それゆえ一般的にポリマーバインダーと呼ばれることがある。液体バインダーは、水ベースの分散液又は溶媒ベースの溶液又は系であることがある。ゆえに、バインダーの使用には、加熱及び/又は溶媒の噴霧及び/又は溶媒の蒸発のような異なる作業を要するため、バインダーを利用することは、一般的な用語で反応促進又はバインダーの反応を促進することと呼ばれることがある。バインダーは、いくつか選択肢を挙げると、噴霧、押出し(ホットメルトノズル)、遠心噴霧などにより塗布されることがある。ポリマー型は、熱可塑性又は熱硬化性のまま又は両方の混合物であることがある。
【0091】
ウェブ20の全体上に粉末又は液体バインダーが噴霧又は散布された後、ウェブは、装置26に運ばれて、ウェブの搬送方向に対し横方向に、ウェブ上に細い分離した流路形成手段が導入又は配置される。細い分離した流路形成手段は、100μm〜300μm、好ましくは100μm〜200μm、及びより好ましくは130μm〜170μmの間、の直径を有する。この段階で、細い分離した流路形成手段が幾分圧縮されるものであったとしても、注入段階で圧縮された時に細い分離した流路形成手段のZ方向寸法が100μm〜300μm、好ましくは100μm〜200μm、より好ましくは130μm〜170μmの間のオーダーであるように、細い分離した流路形成手段は選択される必要があることを理解されなければならない。直径は、注入される樹脂−硬化剤混合物の粘度が室温で200mPa・s〜350mPa・sのレベルである場合に理想的なものである。粘度がこれと明らかに異なる場合、隣接する細い分離した流路形成手段の間の距離又はその直径/Z方向厚さを調整する必要があることがある。ここで、この利用分野において、細い分離した流路形成手段の方向は、一方向ウェブのロービングに対して直角な方向から±45度、すなわち−45度から+45度の間にあることがある、すなわち細い分離した流路形成手段の方向は、ウェブの一方向ロービングの方向から少なくとも±45度偏位するため、この特定の場合及び他のすべての場合の両方で、「横方向の」という言葉は、広く理解されなければならない。細い分離した流路形成手段は、良く知られた多軸生産機械の糸可動台システムを用いて、すなわちウェブの上方を横方向に往復して一回にある数の細い分離した流路形成手段をウェブ上に配置する道具により、「26」にあるウェブ20上に配置されることがある。配置は、例えば、細い分離した流路形成手段を供給する構成を有するサーボニリア動作マニピュレーターにより促進されることがある。
【0092】
細い分離した流路形成手段を配置する別の可能な方法は、「26」で、ウェブに実質的に直角でウェブを囲む平面内に回転する輪を配置し、輪がウェブの周囲に細い分離した流路形成手段を巻くようにすることである。回転する輪を用いることにより、細い分離した流路形成手段は、ウェブの上面及び下面の両面上に同時に配置される。細い分離した流路形成手段は、ウェブ上に真っ直ぐで平行な編成に有利に配置され、すなわち細い分離した流路形成手段は、ウェブの一縁部から反対側の縁部に直線的及び均一に延び、換言すれば、細い分離した流路形成手段は、例えば一般的に編みパターンに見られる輪を形成しない。本質的に真っ直ぐな、すなわち一方向強化ロービングに交差する又は横方向の、細い分離した流路形成手段の直線状及び平坦な編成は、強化材の両縁部間の最短の樹脂流動時間を確保する。細い分離した流路形成手段の実際の位置に関わらず、それらは一定の間隔、すなわち互いに、約2mm〜50mm、好ましくは5mm〜25mm、より好ましくは約10mm〜20mmの横方向距離で、強化材の一面又は両面上に配置される。正確な距離は、樹脂粘度及びウェブのグラム重量に応じて最適化されなければならない。
【0093】
しかし、前述の説明は、強化材の最も簡単な製造方法を示していることを理解されなければならない。基本的に、同じ方法を、内部にいくつかの一方向の層を有している強化材の製造に適用してもよい。そのような場合、細い分離した流路形成手段は、強化材の上面及び/若しくは下面上、又は層の間に配置されてもよい。実際の強化材繊維に対し横方向に延びる細い分離した流路形成手段を有する一方向、2軸、3軸、及び4軸強化材を含む、バインダーで接着された多軸強化材を製造することも可能である。細い分離した流路形成手段は、元の強化材から配置されていてもよく、又は多軸強化材を製造する時に強化材の間に挿入されてもよい。
【0094】
別の一方向強化材では、細い分離した流路形成手段は、一方向強化材内のロービングの任意の2つの層の間に、すなわち強化材の少なくとも上面及び/又は下面上のみでなくロービング層の間にも配置される。換言すれば、強化材が4つのロービング層を含む場合、細い分離した流路形成手段は、各ロービング層の間又は第2及び第3の層の間、すなわち強化材の中央に配置されてもよい。実際には、これは、ウェブを形成するための一方向ロービングを配置すること及び細い分離した流路形成手段を配置することは、第1に、一方向ロービングの1つの層又は複数の層が配置され、その後に、細い分離した流路形成手段の組、そしてその後に次の一方向ロービングの層などのような順序で実行されなければならないことを意味する。所望の強化材及び細い分離した流路形成手段の層化の後にのみ、層及び細い分離した流路形成手段は粉末又は液体バインダーにより一体に接着される。
【0095】
次に、細い分離した流路形成手段を表面上に有するウェブが、熱可塑性及び/又は熱硬化性バインダーを融解するために用いられる、反応促進装置28(例えば、それ自体知られている、二重ベルトラミネーター)に運ばれる。他の適した装置により、細い分離した流路形成手段を各強化材内に組み込むために、ロービングを一体に接着及びロービング上に細い分離した流路形成手段を接着の両方をするように、バインダーの反応を促進するために、いくつか作業の例を挙げると、バインダー上に溶媒を噴霧又はバインダーから溶媒を蒸発させることは可能である。その後、ウェブ20は、強化材の厚さを調整する圧縮段階30に運ばれる。圧縮段階30は、例えば、融解したバインダーによりロービングの接着を向上する及び所望の厚さを有する一方向強化材34を形成するために、ウェブを圧縮するための2つのロール間の少なくとも1つのつかみ部内で実行される。「30」での圧縮の後、一方向強化材34は、顧客への納入のためにロール32に巻かれる。時により、強化材は、最終納入の前にスリッター・ワインダーにより所望の幅に切断される。
【0096】
ここで、前述のバインダーの反応を促進する工程、より具体的には、バインダーを加熱し細い分離した流路形成手段を配置することは、逆の順序、すなわち最初にバインダーを融解する加熱工程、そしてその後に細い分離した流路形成手段を配置する工程、でも実行してもよいことを理解されるべきである。後者の選択肢では、細い分離した流路形成手段の種類は、融解工程の温度には耐えることができないが、融解したバインダーがまだ融解している又は最小限粘着性がある状態(だが加熱工程内の高い温度ではない)の間に強化材の表面上に導入され、バインダーが細い分離した流路形成手段を接着できるような、材料のものでもよい。事実、マトリックス材料を素早く凝固させるために加熱及び圧縮工程の後に冷却手段を配置することがしばしば一般的なやり方であることも理解されるべきである。
【0097】
一方向ウェブのロービングに細い分離した流路形成手段を接着することに関して、もういくつかの選択肢がある。別の方法は、芯材料の上に融解する構成成分を有する2成分の細い分離した流路形成手段、又は薄いバインダー層によりコーティングされた細い分離した流路形成手段を用いることである。いずれか1つの細い分離した流路形成手段がロービング上又はロービング層の間に配置された後、第1の選択肢は、形成手段の融解する部分が融解し、細い分離した流路形成手段がロービングに接着され、芯は融解せずに元の直径を維持するように、細い分離した流路形成手段を加熱することである。ここで、反応促進、すなわち細い分離した流路形成手段を加熱することを、一方向ロービングを一体に接着する工程又は別個の(後の)工程で実行してもよい。ゆえに、後の選択肢では、細い分離した流路形成手段は、ロービングが互いに接着された後に、ロービング上に配置される。第2の選択肢は、バインダー溶液がロービング上に延展できるように溶媒を細い分離した流路形成手段に噴霧し、その後細い分離した流路形成手段がロービングに接着されるというものである。必要ならば、溶媒の蒸発及び細い分離した流路形成手段の接着を加速するために、強化材を加熱してもよい。
【0098】
ロービングに細い分離した流路形成手段を接着する更に別の方法は、ロービングが互いに接着された後でロービング上に細い分離した流路形成手段を配置すること、及び、配置した後で、ロービングが互いに接着されているように同じバインダーで細い分離した流路形成手段がロービングに接着されるよう、再度バインダーの反応を促進する(例えば、加熱したロールにより)ことである。
【0099】
ロービングに細い分離した流路形成手段を接着する、また更に別の方法は、ロービングが互いに接着された後でロービング上に細い分離した流路形成手段を配置すること、及び、ロービング上に細い分離した流路形成手段を配置する前又は後に、ロービング上に(及び場合により細い分離した流路形成手段上にも)追加のバインダーを塗布すること、及び、追加のバインダーで細い分離した流路形成手段がロービングに接着されるように、バインダーの反応を促進することである。
【0100】
細い分離した流路形成手段をロービング上に配置しロービングに接着することを構成するための、前述の様々な選択肢は、細い分離した流路形成手段を有する一方向強化材を製造するためのいくつかの魅力的な代替案を提供する。
【0101】
好ましい代替案は、1つのシーケンスで接着した一方向強化材を製造すること、及び別個のシーケンスで細い分離した流路形成手段を接着した一方向強化材に備えることである。換言すれば、第1のシーケンスは、一方向ウェブを形成するために連続するロービングを1つの層内に一方向に並べて配置する工程と、ウェブ上に熱可塑性及び/又は熱硬化性バインダーを塗布する工程と、一方向強化材を形成するようロービングを一体に接着するためにバインダーの反応を促進する工程と、を含み、その後、接着された一方向強化材は巻かれて、直接又は所定の時間格納された後又は顧客に運搬された後のいずれかに、第2のシーケンスに運ばれる。
【0102】
第2のシーケンスは、接着された一方向強化材を巻き解くことと、細い分離した流路形成手段を連続した一方向ロービング上に一方向ロービングの方向に対し横方向に配置することと、細い分離した流路形成手段をロービングに接着することと、場合により、細い分離した流路形成手段を備えた接着された一方向強化材を更なる用途のために巻くこと、を含む。この種の製造工程の長所は、第1のシーケンスは、本来、第2のシーケンスよりずっと速い速度で行われることがあるという事実に基づく。ゆえに、シーケンスを分離することにより、両方のシーケンスを、各々の最適な速度で、第1のシーケンスの速度を落とさせずに、行うことが可能である。この種の2つのシーケンスへの生産の分割は、第2のシーケンスを、強化材の最終ユーザーを前提に、例えば風力タービンのブレードの製造者により、行うこともまた可能にする。細い分離した流路形成手段の利用は、つかみ部にも新しい必要条件を課すことがある。細い分離した流路形成手段の種類が、材料又は構造的理由のいずれかで圧縮されやすい場合、つかみ部の圧力は、考慮され、すなわち、細い分離した流路形成手段がつかみ部で断面形状を失うべきでない、又は少なくとも形状が樹脂流動の観点であまり変化しないでもよいようでなければならない。選択肢は、当然、つかみ部をまったく用いないこと、表面が柔らかなロールを用いること、又はつかみ部の圧力を下げることである。
【0103】
細い分離した流路形成手段を有する一方向強化材の積層体は、注入する樹脂が強化ロービングを横切る方向の流路10を通って流れ、次に個別の強化ロービング又は長繊維の間に浸透し、速い樹脂流動及び良好な含浸を確保するように、注入段階で機能する。注入の間、進行する樹脂は、強化材構造体内のチャンバ又は空洞に沿って残留する気泡を流路に、そして最終的に製品の外に押し出す。RTM又はライトRTMなどで堅い上側成形型が用いられる場合(めったに用いられないが)、樹脂の進行及び空気の除去の両方は、流路の第1の端部で樹脂の供給を加圧することにより、及び/又は流路の反対側の端部に真空を配置することにより、加えて促進されてもよい。
【0104】
強化材積層体の樹脂の横方向の浸透性及び強化材層積層体間からの空気の除去の両方を改善するために強化材層2及び4の間に用いられる細い流路形成手段は、図1aに概略を示すように、両側面上及び強化一方向ロービングの間に小さな流路10を創出する。細い分離した流路形成手段は、好ましくは、例えば丸、正方形、若しくは楕円の断面又はX形若しくは中空の断面を有することがある、ポリアミド(PA)、ポリアミド共重合体又はポリエステル共重合体(PET共重合体)単繊維から形成される。細い分離した流路形成手段は、また、2成分又は多成分のものでもよい。換言すれば、細い分離した流路形成手段は、適したポリマー材料から、例えば押出成形により製造されるので、細い分離した流路形成手段の断面を、実際には、樹脂流動特性を最適化するために自由に選択してもよい。細い分離した流路形成手段に、非補強材(単繊維ポリマー)の量を最小限に維持しながら、流路10のための最大限の幾何学的断面を創出する、又は、細い分離した流路形成手段の所定の体積で、重なり合う2つの層内の強化ロービング間の距離を最大化するような、断面を持たせることは有益である。
【0105】
樹脂のための流路を創出するための手段は、通常、100μm〜300μm、好ましくは100μm〜200μm、より好ましくは130μmと170μmとの間のオーダーの直径を有する単一の長繊維である。しかし、流路を創出する手段は、いくつか他の選択肢を有する。流路を創出する手段は、例えば互いの上に配置された時にZ方向寸法を有する所望の間隙が強化材の間に残るように互いに連通して配置された3本の長繊維を有する、いくつかの単繊維の束、すなわち多繊維又は他の連続した手段で形成してもよい。しかし、多繊維及び他の連続した手段又はこれらの処置及び構造体は、単一の必須条件を満たさなければならない。多繊維又は他の連続した手段は、単繊維のように働かなくてはならない、すなわち単繊維が通常なる、すなわち単一の長繊維が圧縮下で側方に移動できることにより、多繊維の横断面が丸くなく平坦又はリボン状になる、ようには圧縮されないことがある。このような必要条件は、実際には、多繊維又は他の連続した手段がロービング上及び積層体内部で単繊維状の構造に変更されるような、一方向ウェブの生産の生産工程で、多繊維の個別の単一長繊維が一体に融解する、又はバインダーが単一長繊維を一体に接着するような形で、多繊維がバインダーを有していなければならないことを実際には意味する。
【0106】
そのような接着された細い分離した流路形成手段を用いる時、形成手段の直径又は実際にはZ方向寸法は、100μm〜300μm、好ましくは100μm〜200μm、より好ましくは130μm〜170μmのオーダーである。形成手段の実際のZ方向寸法は、実際の強化繊維の浸透性及び繊維の直径による。
【0107】
細い分離した流路形成手段の形状及び寸法、並びに強化材層上の配置、すなわち互いの横方向距離に関して、(とりわけ)これらすべての特徴を、強化材積層体の樹脂との適切な含浸及び浸潤の観点で慎重に考慮しなければならない。細い分離した流路形成手段の両側面に形成される樹脂の流路は、樹脂がロービング内に含浸するのに時間をかけ、樹脂が強化材積層体の反対側に向けて導入される強化材積層体の側面から直接流れないように、開き過ぎているべきではない。当然、隣接する細い分離した流路形成手段間の距離がより短いほど、細い分離した流路形成手段の両側面の横方向流路は、より開いている、すなわち断面はより大きいことがあり、逆もまた同様である。考慮に入れなければならないもう1つの事は、強化材層の厚さ又はグラム重量である。強化材層が厚いほど、層を樹脂で適切に浸潤するのにより時間がかかる。個別の強化繊維が充分含浸され、繊維間に乾燥領域又は細泡が残っていないことを確実にするために強化材の浸透性を調整することは可能である。しかし、横方向の細い分離した流路形成手段の直径又は詳細な断面又は他の構造に関わらず、細い分離した流路形成手段は、実質的な横方向安定度を強化材に何も与えず、一方向強化材の場合には、安定度は、適切な熱可塑性及び/又は熱硬化性バインダーの使用によってのみ確保される。そのようなバインダーは、マトリックス材料と調和し、すなわち適合し、及び接着された強化材に充分な柔軟性を提供しなければならない。後者の必要条件は、実際には、一方では、凝固したバインダーはある程度弾力的でなければならず、他方では、用いられるバインダーの量は、充分な横方向安定度と強化材の充分な柔軟性との間で調和をとらなければならないことを意味する。実施した実験により、用いられた樹脂マトリックスにより、ビスフェノール不飽和ポリエステル、ポリエステル共重合体、及びビスフェノールAベースのエポキシ樹脂が、バインダー材料の好ましい代替品であることが明らかになった。しかし、所望の形で機能する他の粉末又は液体バインダーもまた用いてもよい。ロービング及び細い分離した流路形成手段を一体に接着するために用いるバインダーの乾燥量は、要求される処理特性により、15g/m〜30g/mのオーダーである。
【0108】
細い分離した流路形成手段を有する一方向強化材の更なる変異で、細い分離した流路形成手段のためのポリマー材料の理想的特性は、硬化を抑制しないか、そうでなければマトリックスを形成する樹脂の化学的、熱的、又は機械的特性に悪い影響を与えないことである。実施した実験では、ポリアミド(PA)、ポリエステル(PET),フェノキシ,ポリアミド共重合体、又はPET共重合体の細い分離した流路形成手段が用いられた。しかし、所望の形で機能する他の材料もまた用いてもよい。
【0109】
細い分離した流路形成手段のためのポリマー材料の別の好ましい任意の特性は、材料が、少なくとも部分的に樹脂に対し可溶性であるようなものである。しかし、溶解度は、細い分離した流路形成手段が「消失する」又は「圧潰する」前に、強化材が樹脂で含浸される時間があるように、弱いかゆっくりであるべきである。しかし、少なくとも部分的に可溶性の細い分離した流路形成手段の長所は、細い分離した流路形成手段により形成される通路が消滅/消失し、製品が、非可溶性の非常に細い分離した流路形成手段を用いる時より一層均質になることである。前述の変異形の例として、ポリマー材料の外側の層が異なる特性を備えた、単繊維又はいくつかの単繊維の接着された束を含む、2成分の細い分離した流路形成手段の構造が挙げられてもよく、外側の層は、マトリックス材料に対して可溶性である。外側の層の溶解度は、樹脂が強化材積層体に浸透した後で樹脂に溶解するのに好ましく選ばれる。この細い分離した流路形成手段の長所は、細い分離した流路形成手段自体の芯の部分は、120μmの直径を有し、外側の層は10μmの厚さであることである。それによって、2成分の細い分離した流路形成手段の直径は、含浸の間は140μm、外側の層の溶解の後は120μmであり、最終製品のロービングは互いにより近づく。これは、細い分離した流路形成手段とロービングとの間の交差点において、早期の積層体破壊の恐れを実質上ゼロに、なお更に最小化する。
【0110】
従来技術で、例えば、一方向強化材ロービングを互いに結合するために、横方向のホットメルトコーティングされたガラス繊維糸を用いる時、ガラス繊維糸の横方向長繊維が積層体の横方向負荷の下で破断し、結果として小さな微小亀裂を生じることがあることが、すでに分かっている。微小亀裂は、積層構造体内の目に見える損傷につながるより大きな亀裂の反応開始剤として働き、最終的に部品全体の損傷に発展することがあるため、積層体の静的及び動的特性に有害反応を有することがある。当然、同じ恐れが、細い分離した流路形成手段にも当てはまる。
【0111】
ゆえに、細い分離した流路形成手段の破断点伸びは、少なくともマトリックスのものと同じであるべきである。例えば、エポキシマトリックスの破断点伸びは約6%であり、それゆえ細い分離した流路形成手段の破断点伸びは、6%より大きく、好ましくは約10%、より好ましくは約20%であるべきである。正確な値は、主に用いられる樹脂の種類による。マトリックス及び細い分離した流路形成手段の材料特性を決定及び比較する別の方法は、それらの弾性係数を評価することである。換言すれば、すべての利用分野で適切に及び確実に働くためには、細い分離した流路形成手段の弾性係数は、マトリックス材料のものより小さく、好ましくは明らかに小さくあるべきである。エポキシ、ポリエステル、又はビニルエステルのようなマトリックス材料の弾性係数は約3GPaであるので、細い分離した流路形成手段の弾性係数は、好ましくは2GPaのオーダー又はより小さくあるべきである。
【0112】
前述した風力タービンブレードのスパーキャップの製造でのバインダーで接着された一方向強化材の利用分野は、この種の強化材が適用される無数の利用分野の1つに過ぎない。横方向の細い分離した流路形成手段を有する一方向強化材は、可能な最良の機械特性、特に疲労特性及び静的特性も、有する一方向配向された強化材の必要性があるところに最良の用途がある。しかし、細い分離した流路形成手段を有するバインダーで接着された一方向強化材は、繊維強化マトリックスが用いられる任意の利用分野で用いてもよいことを理解されるべきである。
【0113】
図3は、従来技術の編んだ強化材及び粉末接着一方向強化材の樹脂流動特性を2つの異なる設定の細い横方向の分離した流路形成手段を有する一方向強化材のものと比較した実例である。実験は、4つの異なる強化材を用意して実施された。すべての強化材の製造には、同じ一方向ロービング(1200g/m)が用いられた。第1の参照強化材としては、一方向ロービング上に、10mm間隔、並びに一方向ロービングの方向に対して+45度及び−45度の角度で配置した多繊維Eガラス糸(200tex、長繊維400本、各16μm)を有する編んだ強化材であった。第2の参照強化材としては、粉末(10g/m)で接着された面積重量1200g/mを有する一方向強化材であった。第1の強化材では、100μmの直径を有する単繊維(PET共重合体−ポリエチレンテレフタレート共重合体)の形の細い分離した流路形成手段が、粉末(10g/m)で接着され1200g/mの面積重量を有する一方向ロービングに対して直角に配置された。細い分離した流路形成手段、すなわち単繊維は、20mm間隔で配置された。第2の強化材では、第1の強化材と同じ一方向材料が用いられ、唯一の違いは、単繊維の直径は今度は130μmであることであった。
【0114】
実験のために、4つの等しい寸法の強化材シートが各強化材から切り取られた。各実験では、4つの同様なシートが、プラスチックフィルムが強化材の上面上に配置されるように、ガラスシート上の試験成形型内に積層された。この束は通常の封止塊により気密に作製された。その後、成形型は、−0.95barの真空に晒され、300mPa・sの粘度を有するエポキシ樹脂が23℃の室温で強化ロービングに対し横方向に成形型内に注入された。樹脂が進んだ浸潤距離を時間の関数として記録することにより、グラフが描かれた。
【0115】
図3は、樹脂が流れた距離(浸潤距離)を時間の関数として示す。最下方のプロットは、流路を有さない粉末接着強化材の樹脂流動の先頭位置を示す。樹脂が1cm進むのに約30分かかる。流動の先頭位置、すなわち浸潤距離は、位置は時間の平方根に反比例するという、良く知られたダルシーの法則に、一般的に従う。ゆえに、無限に近接するが決して到達しないことがある、所定の最大限の値がある。浸透性の差は、粘度及び温度のような他のパラメーターが一定に保たれる場合、流動の先頭の実際の距離を決定する。最下方(従来技術)のプロットは25分〜35分でほとんど水平なので、含浸時間を相当に増加しても含浸/浸潤距離は増加しないであろうことが予測されるということは理解する価値がある。次の2つのプロットは、従来技術の編んだ強化材、及び20mm間隔に直径100μmの横方向単繊維を有する粉末接着された強化材の樹脂流動を表す。25分で樹脂は両方の強化材内を約9cm進んでいて、浸潤時間を増加することで10cmを超える最終の浸潤距離が予測されることがあるように、含浸が継続するように見える。一番上のプロットは、20mm間隔に直径130μmの横方向単繊維を有する粉末接着された強化材の樹脂流動速度を表す。25分で樹脂は強化材内を約16cm進んでいて、浸潤時間を増加することで最終の浸潤距離が容易に20cmを超えていくであろう実質的に一定の速度で、含浸が継続するように見える。
【0116】
実施した実験に基づき、細い分離した流路形成手段、この例では単繊維の直径を増加することにより、浸潤速度及び/又は浸潤距離は増加させることができるであろうということが明らかである。当然、そのような場合、ロービングが充分に真っ直ぐなままに留まること、すなわち細い分離した流路形成手段がロービングを押し離し過ぎて微小亀裂の恐れを生じないことを確実にしなければならない。細い分離した流路形成手段の直径の実用的上限は、強化材のグラム重量により、170μm〜300μmの範囲のどこかである。浸潤速度及び/又は浸潤距離を増加する別の明らかな方法は、細い分離した流路形成手段を互いにより近づけることであり、それにより間隔は15mm又は10mm又は5mmまでもに低減することができるであろう。最良の組合せは、パラメーターの各組に対して個別に評価しなければならない。
【0117】
前述の実験は、細い分離した流路形成手段の使用により形成された横方向流路の新しい設計がもたらす莫大な長所を明らかに示す。そしてすでに前述したように、それは生産速度を著しく増加する「高速」注入の問題だけではなく、乾燥又は半含浸領域のない細泡のない積層体を確実にする、強化材積層体からの非常に効率的なガス除去の問題でもあり、同じ目的のために用いられる従来技術の積層体より優れた強度及び疲労特性の問題、低い圧縮強度の局所的領域の恐れを低減する平坦でうねりのない積層体断面の問題である。
【0118】
細い横方向の分離した流路形成手段を有する一方向強化材は、ISO標準527−4及び527−5に従ったロービングの方向(0度)及びロービングに対し横方向(90度)の両方の引張弾性率及び引張強度の観点でも、従来技術の強化材と比較された。従来技術の強化材は、1200g/mの編んだ一方向強化材で、細い横方向の分離した流路形成手段を有する一方向強化材は、横方向単繊維を有する1171g/mの粉末接着された一方向強化材であった。両方の強化材は、積層体マトリックスとしてエポキシ樹脂を有していた。以下の表は、比較結果を説明しており、長手方向でほぼ20%、横方向で10%を上回る、引張強度の改善量を示している。引張弾性率は、長手方向でほぼ15%改善し、横方向で6%低減した、横方向の引張弾性率のわずかな低減の理由は、従来技術の強化材内に横方向に配置された100g/mのガラス繊維の存在である。
【0119】
【表1】
【0120】
しかし、すでに本明細書で先に示されたように、一方向強化材上への細い分離した流路形成手段の締結は、不十分、すなわち強化材のすべての可能性がある利用分野に充分信頼できるものでないことがある。
【0121】
細い分離した流路形成手段の一方向強化材上への締結を確実にするために、強化材は、一方向強化材上の細い分離した流路形成手段に対し横方向に延びる追加の糸を、細い分離した流路形成手段の後に、一方向強化材上に糸を配置及び結合するように備える。換言すれば、追加の糸は、細い分離した流路形成手段上に位置する、又は細い分離した流路形成手段は、追加の糸と一方向強化材との間に留まる。細い分離した流路形成手段のように、追加の糸も、強化材の少なくとも1つの表面上に配置されてもよく、それにより糸は、当然、細い分離した流路形成手段と同じ強化材の表面上に配置される。ゆえに、追加の糸は各々、上に配置された細い分離した流路形成手段を有する強化材の1つの表面上に延びる、すなわち追加の糸は強化材内を貫かず強化材の1つの表面上に連続的に留まる。
【0122】
図4は、本発明の第1の好ましい実施形態による、一方向強化材の製造方法を説明する。一方向強化材の製造は、大部分、図2に関連して説明したのと同じであるので、細い分離した流路形成手段の横方向及び上に糸を配置することにより必要とされる違いのみを以下に説明する。換言すれば、26でウェブの両面上の一方向ロービング上に、本発明の本実施形態での、細い分離した流路形成手段を配置することと、バインダー反応促進28との間で、糸42及び46は、ウェブの両面上に配置された糸巻軸架内に定置されたボビンから巻き解かれ、細い分離した流路形成手段及びウェブ20を形成する一方向ロービングの上方を導かれ、糸は全体のライン速度と同じ速度を有している。糸42及び46は、本発明の本実施形態では、糸42は一方向強化材の上面上に、糸46は一方向強化材の下面上に、留まるよう、糸の糸巻軸架又はバインダー反応促進28の取り入れ口領域の近くに定置された糸巻軸架から供給される。糸は、隣接する糸の間の横方向距離を制御するために、1つ(44)はウェブ20の上面のための、もう1つ(48)はウェブ20の下面のための、2つの別個のおさ44及び48を通って供給される。ウェブの両面上の隣接する糸42/46の間の間隔又は距離は、好ましくは5mm〜50mm、より好ましくは10mm〜35mmである。糸を一方向ロービングの方向に対してある角度で配置することがあるのは当然可能であるが、糸の方向は好ましくはウェブ20の一方向ロービングの方向である。糸42及び46の唯一の役割は、ウェブ上の細い分離した流路形成手段の位置を固定することであるから、糸の方向は、方向が細い分離した流路形成手段に対し横方向である限り、極めて自由に選択してもよい。
【0123】
ウェブ20が最終的にバインダー反応促進28(例えば二重ベルトラミネーター)に供給される間に、追加の糸42、46は、固定、すなわちバインダー反応促進(例えば上側ベルトと下側ベルトとの間のラミネーター機械内で)の熱により融解する熱可塑性バインダーにより長手方向ロービングに対して接着結合される。ゆえに、細い分離した流路形成手段は、強化材表面全面に渡って軽く固定されるが、それに加えて、実際の強化繊維を構成するロービングと実際に強化繊維としても働く追加の糸との間に挟まれてもいる。
【0124】
追加の糸は、本発明の任意の実施形態では、ウェブのロービング上に24で塗布される熱可塑性又は熱硬化性粉末バインダーにより位置を保たれており、そのようなバインダーの主な目的はロービングを一体に接着することである。本発明の別の選択肢は、24で塗布される粉末バインダー及び細い分離した流路形成手段の2成分機能、すなわち融解性のものである細い分離した流路形成手段の外側の層、の両方を用いることである。そして、本発明の更に別の任意の実施形態では、ウェブ20への糸42の接着は、糸自体の上に設けられた追加のバインダーの利用により、更に強められてもよい。好ましくは、バインダーは、24でのと同じバインダー粉末延展であり、強化材34を形成するためにロービングを一体に接着するのに用いられる。換言すれば、追加の糸は、接着特性を向上し細い分離した流路形成手段及び一方向ロービングに対する良好な接着を確保するための追加のバインダーをコーティングするために粉末アプリケータチャンバを通って導かれてもよい。しかし、また、24で塗布される粉末バインダー及び注入段階で加えられるマトリックス樹脂と適合するものである限り、他の液体又は粉末のバインダーを塗布してもよい。
【0125】
この段階で、しかし、細い分離した流路形成手段の固定に関して図2に関連して前述したすべての選択肢及び変異型が、ここでも利用できるということを理解されるべきである。換言すれば、先に説明したすべての固定の選択肢は、追加の糸を一方向ロービング上に固定するためにも用いてもよい。
【0126】
また、一方向ロービングを互いに、細い分離した流路形成手段を一方向ロービング上に、並びに追加の糸を細い分離した流路形成手段上及び一方向ロービング上に、接着することは、利用分野により、同じバインダー反応促進の工程、2つの別個の工程(一方向ロービング及び形成手段を1つの工程で、若しくは形成手段及び追加の糸を1つの工程で)、又は3つの別個の工程でのいずれで実行されてもよいことを理解されるべきである。
【0127】
追加の糸は、好ましくは、しかし必須ではなく、連続した若しくは不連続なガラス繊維、若しくはポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、アラミド、若しくは炭素繊維、天然繊維、若しくは改善された(再生された)天然繊維、金属繊維、又は前述の繊維の任意の組合せでできている。更に、追加の糸は、一方向強化材のロービングと同じ材料の繊維でできていてもよい。追加の糸は、また、単繊維の糸、又は更により一般的に、任意の連続した若しくは不連続な繊維、強化材の横方向の樹脂流動を促進するために配置された細い分離した流路形成手段に沿った樹脂流動を妨げない若しくは低減させないものであるという条件で用いてもよい、単繊維若しくは多繊維のテクスチャ化された糸若しくはテクスチャー化されていない糸であってもよい。
【0128】
ガラス繊維糸が追加の糸として用いられる場合、原則として、任意のガラス繊維又はロービング(好ましくは、しかし必須ではなく、22tex糸から始まり最大272tex糸まで)がこの機能に用いられることがある。しかし、実施した試験は、一般的な種類のEC9 68 Z40(Eガラス、連続、繊維直径9μm、68tex、Z方向にメートル当たり40ターン巻き)のダイレクトサイズ糸が、1200g/mの面積重量を有する一方向強化材に最適に適していることを示した。これは、様々な糸ガイド内の磨耗を許容する優れた粘着性を有し、その上、表面の平滑度を妨げないのに充分薄く、全体のコストは最小に保たれる。他の種類は、他の面積重量に対して最適であることがある。糸の曲げ剛性が、一方向強化材のロービングのものと同じであり、それにより細い分離した流路形成手段の両側面の流路の形状及び寸法が最適であるということは、必須ではないが、更なる有益な本発明の特徴である。追加のガラス糸は、好ましくは、しかし必須ではなく、細い分離した流路形成手段を備えるようなすべての表面上に供給される。
【0129】
新しい方法は、細い分離した流路形成手段を一方向強化材上に接着する従来技術の方法に比較し、磨耗強さで優っている。方法は、また簡単でコスト効果があるものでもある。
【0130】
図5は、本発明の第1の好ましい実施形態による、一方向強化材30の概略を示す。一方向強化材は、ウェブ20を形成するために熱可塑性又は熱硬化性バインダーで接着された、一方向の長手方向ロービングで形成される。ウェブ20の、少なくとも1つの面、好ましくは両方の面、すなわち上面及び下面上に、一方向ロービングに対し横方向に延びて樹脂流路を両側面に形成する、細い分離した流路形成手段40が配置される。本発明では、長手方向糸42及び46が、形成手段40が糸42、46及びロービングの間に置かれるように、ウェブ20の少なくとも1つの面、好ましくは上面及び下面の両方の上の、細い分離した流路形成手段40の上に配置されてきた。
【0131】
ここまで、本説明は、横方向の空気の排出及び樹脂流動、特に一方向ロービングに対し横方向、すなわちウェブの平面内の、急速で信頼性のある空気の排出及び樹脂流動を確実にするための方法及び手段を説明してきた。しかし、Z方向、すなわちウェブ又は強化材の平面に直角な方向の空気の排出及び樹脂流動の両方が、横方向のそれとほとんど同じように重要である。
【0132】
以下の説明及び関連する図6図12は、Z方向の樹脂流動を促進するための分離した手段を用いることにより、強化材のZ方向の空気の排出及び樹脂流動を改善する方法を説明している。実際には、分離したZ方向樹脂流動促進手段は、ウェブ又は強化材の上面及び下面の間を往復して樹脂のための流路を両側面に形成することにより、ウェブの長手方向縁部間を往復して横方向に延びているので、分離したZ方向樹脂流動促進手段は、Z方向にだけでなく、横方向にも樹脂流動を助ける。分離したZ方向樹脂流動促進手段は、この説明の意味では連続していて、すなわち横方向及びZ方向両方に樹脂の流路を創出するための横方向手段に関連して使われる時の「連続した」という言葉は、広く理解されるべきである。「連続した」という言葉は、最も好ましくはウェブの幅全体に渡り延びている流路形成手段、又は流路自体が連続した形でウェブの1つの長手方向縁部から反対側の長手方向縁部まで延びるように配置される限り、更に短い長さの流路形成手段も含む。すでにこの段階で、図6図12で説明される実施形態は、主に強化材の製造の第1の部分、すなわちウェブ120の製造を説明していると理解されるべきである。そうして準備されたウェブは、バインダー反応促進の1つ又はそれ以上の工程の前に、場合により、ウェブ上に横方向の細い分離した流路形成手段、並びに横方向の細い分離した流路形成手段上及びウェブを形成する一方向ロービング上に追加の糸、を付加することにより処理される、その後に生産工程にある。ゆえに、図1図5に関連して前述した強化材の製造の後の段階に関するすべての変異型は、図6図12で説明される実施形態の適切又は所望のところに適用してもよい。また、バインダーの種類、量又は塗布に関連する問題も、前述の図6図12の実施形態に対する説明から採用してもよい。
【0133】
図6は、本発明の第2及び第3の好ましい実施形態による、一方向強化材の生産工程の概略の部分側面図を示す。ここで、ウェブ120は、一方向ロービングの2枚のシート、すなわち下シート122’及び上シート122でできている。2枚のシートのための一方向ロービングは、いくつものロービングの束から取り出される。シートは、互いに垂直方向に分離して保持される、すなわちシートは間に垂直の間隙を取っておかれる。
【0134】
これらの実施形態の1つの選択肢では、そのようにして形成されたシートは、粉末バインダー導入箱124、又は同様な粉末延展装置を通り、おさ126のような、糸の密度、すなわちシート122’及び122のロービング同士の近さ、を制御する装置に運ばれる。粉末に加えて、ロービング(及び分離したZ方向樹脂流動促進手段)の接着は、接着剤をノズルから噴霧することにより、又はロールから接着剤フィルム、ネット、織布、若しくは布地を用いることにより、適した(液体又は固体)バインダーを塗布することにより確保してもよい。シート122’及び122、と言うよりシートを形成するロービングがおさ126により編成された後で、分離したZ方向樹脂流動促進手段128が、シート122’と122との間の間隙に導入される。Z方向樹脂流動促進手段128は、供給手段130により、一方向ロービングの方向に対し横方向に延びるように配置される。そのような供給手段は、例えば、シートに対し横方向に動く、空気圧式の手段又はロッドでもよい。2枚のシート122’及び122は、互いの配置を、すなわちシート122’は下側のシートでありシート122は上側のシートであるように、維持し、分離したZ方向樹脂流動促進手段128の導入は、シート122’と122との間の連続して開いた垂直の間隙内で連続した形で行われる。これは、シートが綜絖の使用により位置を変えるように作製され、横方向の糸の導入は、特定のシートがその時に上側シートか下側シートかにより特定のシートの上方又は下方で交互に行われる、製織技術と比較した時に明らかな違いである。
【0135】
これらの実施形態の別の選択肢では、シート、と言うよりシートを形成するロービングが、糸の密度、すなわちシートのロービング同士の近さを制御する、おさにより編成された後で、分離したZ方向樹脂流動促進手段がシートの間の間隙内に導入される。Z方向樹脂流動促進手段は、ロッドにより、一方向ロービングの方向に対し横方向に延びるように配置される。2枚のシートは、互いの配置を、すなわち1枚のシートは下側のシートであり他方のシート122は上側のシートであるように、維持し、分離したZ方向樹脂流動促進手段の導入は、シートの間の連続して開いた垂直の間隙内で連続した形で行われる。これは、シートが綜絖の使用により位置を変えるように作製され、横方向の糸の導入は、特定のシートがその時に上側シートか下側シートかにより特定のシートの上方又は下方で交互に行われる、製織技術と比較した時に明らかな違いである。
【0136】
その後、そのように形成されたシート及び分離したZ方向樹脂流動促進手段は、粉末バインダー導入箱124又は同様の粉末延展若しくは接着剤塗布装置を通って運ばれる。粉末に加えて、ロービング(及び分離したZ方向樹脂流動促進手段)の接着は、バインダーをノズルから噴霧することにより、又はロールからバインダーフィルム、バインダーネット、布地、若しくは織布を用いることにより、適した(液体又は固体)熱可塑性若しくは熱硬化性バインダーを塗布することにより確保してもよい。
【0137】
次に、前述の選択肢のいずれが用いられるかに関わらず、シート−分離したZ方向樹脂流動促進手段−シートの束は、後に説明されるように2枚のシートを1つのウェブ120に圧縮する、2つのロール132と134との間のつかみ部に運ばれる。分離したZ方向樹脂流動促進手段を含むウェブ120が準備された後、以下の3つの段落で説明するように進めるためにいくつかの任意の方法がある。
【0138】
第1の選択肢では、ウェブは、直接(図5に関連して説明した細い横方向の分離した流路形成手段を導入しないで)、図4に示す、熱可塑性及び/又は熱硬化性バインダーを融解するために用いられる反応促進装置28(例えば、それ自体知られている、二重ベルトラミネーター)に運ばれる。他の適した装置により、ロービング及び分離したZ方向樹脂流動促進手段の両方を一体に接着するように、バインダーの反応を促進するために、いくつか作業の例を挙げると、バインダー上に溶媒を噴霧又はバインダーから溶媒を蒸発させることは可能である。その後、ウェブ120は、図4にも示すように強化材の厚さを調整する圧縮段階30に運ばれる。圧縮段階は、例えば、融解したバインダーによりロービングの接着を向上する及び所望の厚さを有する一方向強化材を形成するために、ウェブを圧縮するための2つのロール間の少なくとも1つのつかみ部内で実行される。圧縮の後、一方向強化材は、顧客への納入のために巻かれる。時により、強化材は、最終納入の前にスリッター・ワインダーにより所望の幅に切断される。
【0139】
図6に示す第2の選択肢では、ウェブ120は、加えて、図10dに示すように、細い横方向の分離した流路形成手段40が、ウェブ120の少なくとも1つの面(上面又は下面)上、好ましくは両面上に導入される、装置26に運ばれる。その後、ウェブは、図4により示すように、熱可塑性及び/又は熱硬化性バインダーを融解するために用いられる反応促進装置28(例えば、それ自体知られている、二重ベルトラミネーター)に運ばれる。他の適した装置により、ロービング、分離したZ方向樹脂流動促進手段、及び細い横方向の分離した流路形成手段を共に一体に接着するように、バインダーの反応を促進するために、いくつか作業の例を挙げると、バインダー上に溶媒を噴霧又はバインダーから溶媒を蒸発させることは可能である。その後、ウェブ120は、図4にも示すように強化材の厚さを調整する圧縮段階30に運ばれる。圧縮段階は、例えば、融解したバインダーによりロービングの接着を向上する及び所望の厚さを有し様々な構成要素間の良好な接着を確保する一方向強化材を形成するために、ウェブを圧縮するための2つのロール間の少なくとも1つのつかみ部内で実行される。圧縮の後、一方向強化材は、顧客への納入のために巻かれる。時により、強化材は、最終納入の前にスリッター・ワインダーにより所望の幅に切断される。
【0140】
第3の選択肢では、ウェブは、ウェブの少なくとも1つの面(上面又は下面)上、好ましくは両面上に細い横方向の分離した流路形成手段を導入する装置26、及び図10dに示すように細い横方向の分離した流路形成手段40の上面上に追加の糸42を導入する手段に運ばれる。その後、ウェブは、図4により示すように、熱可塑性及び/又は熱硬化性バインダーを融解するために用いられる反応促進装置28(例えば、それ自体知られている、二重ベルトラミネーター)に運ばれる。他の適した装置により、ロービング、分離したZ方向樹脂流動促進手段、細い横方向の分離した流路形成手段、及び追加の糸を共に一体に接着するように、バインダーの反応を促進するために、いくつか作業の例を挙げると、バインダー上に溶媒を噴霧する又はバインダーから溶媒を蒸発させる又はロールからバインダーネット、布地、若しくは織布を巻き解くことは可能である。その後、ウェブ120は、図4にも示すように強化材の厚さを調整する圧縮段階30に運ばれる。圧縮段階は、例えば、融解したバインダーによりロービングの接着を向上する及び所望の厚さを有する一方向強化材を形成するために、ウェブを圧縮するための2つのロール間の少なくとも1つのつかみ部内で実行される。圧縮の後、一方向強化材は、顧客への納入のために巻かれる。時により、強化材は、最終納入の前にスリッター・ワインダーにより所望の幅に切断される。
【0141】
図7は、本発明の第2の好ましい実施形態による、一方向強化材の生産工程の概略の部分平面図を示す。ここで、下側のシート122’上への分離したZ方向樹脂流動促進手段128の配置が示される(上側のシートは取り除かれている)。分離したZ方向樹脂流動促進手段128は、シート122’の移動方向Aに対し横方向に往復する供給手段、ここではロッド130により供給される。この変異型でのロッド130は、ウェブ120の幅全体に分離したZ方向樹脂流動促進手段128を供給する。
【0142】
少し拡大した図8a及び図8bは、分離したZ方向樹脂流動促進手段をシートの間に導入しシートに横方向に延ばす方法をより詳細に示す。ロッド130の端部領域の分離したZ方向樹脂流動促進手段のための供給開口部がシート122’のいずれか1つの縁部を通過した時、シート122’の移動方向A(左から右に)に関連して、分離したZ方向樹脂流動促進手段128のすぐ背後の油圧、空気圧、電気的、又は単なる機械的(例えばカム及びレバー装置)構成により、シート122’の外側の縁部領域に配置されたピン136が、シート122’のレベルの上方の動作位置内に自動的に持ち上げられ又は上昇して、分離したZ方向樹脂流動促進手段128にピン136を廻らせ、ピンがロール132/134(図6)の所まで分離したZ方向樹脂流動促進手段128を所定位置に保ち、ロールの所でピン136が低い動作不能位置に引き込まれるようにする。換言すれば、ピンは、シートと共にロール132/134まで移動する。流れ方向Aのシートの速度に関連してロッドの横方向速度を調整することにより、シート間の分離したZ方向樹脂流動促進手段の密度は制御される。前述した分離したZ方向樹脂流動促進手段のための供給構成により、隣接する分離したZ方向樹脂流動促進手段間の距離は、ウェブの1つの長手方向縁部から他の長手方向縁部に移動する時、実質的にゼロから最大距離まで変わる。最大距離では大きすぎると考えられる時、当然、ロッドの速度を増加させる(及びピン構成の上昇頻度を調和させる)ことは可能である。これは、最大距離に関する問題は補正するが、反対側縁部での距離はまだ実質的にゼロ、すなわち不必要に小さい。この問題は、シートの縁部より更に外側に分離したZ方向樹脂流動促進手段を運ぶための供給手段、例えばロッドを配置すること、及び第1のピンのしばらく後に持ち上げられる別のピンを配置することにより補正される。それにより分離したZ方向樹脂流動促進手段は両方のピンを廻らされ、分離したZ方向樹脂流動促進手段は図7のほぼ三角形のパターンから代わって台形パターンでシート上に現れる。これでロッドの横方向速度(及びピンの上昇頻度)を調整することにより、パターンの形状は、所望の、すなわち三角形のパターンとほぼ矩形のパターンとの間の形状に調整されてもよい。
【0143】
図9は、本発明の第3の好ましい実施形態による、一方向強化材の生産工程の概略の部分平面図を示す。ここで、下側のシート122’上への分離したZ方向樹脂流動促進手段138の配置が示される(上側のシートは取り除かれている)。分離したZ方向樹脂流動促進手段138は、シート122’の移動方向Aに対し横方向に往復するロッド134により供給される。この変異型でのロッド134は、ウェブ120の幅の一部に分離したZ方向樹脂流動促進手段138を供給する。ここで、例えば、5つの分離したZ方向樹脂流動促進手段が下側シート122’上に同時に供給され、各分離したZ方向樹脂流動促進手段138はウェブ120の幅の5分の1をカバーする。図9で、5つの異なる分離したZ方向樹脂流動促進手段の間の違いを分かりやすくするために、2つの分離したZ方向樹脂流動促進手段は太い線で、3つは細い線で示してある。ここで、分離したZ方向樹脂流動促進手段をわずかに重なり合うように配置して、ウェブの1つの縁部から反対側の縁部に連続した樹脂流路を確保することは有益である。正確には、図9に示す分離したZ方向樹脂流動促進手段のパターンは、図示したパターンを創出できるためには両ロッドは反対方向に移動しなければならないため、「太い」分離したZ方向樹脂流動促進手段は独自の供給手段又はロッドにより供給され、「細い」分離したZ方向樹脂流動促進手段は別の独自のロッドにより供給されることが必要である。
【0144】
図10a〜図10dは、本発明の第2又は第3の好ましい実施形態による、一方向強化材の生産工程の4つの異なる段階を、より詳細だが概略の端面図により示す。
【0145】
図10aは、ロービングがおさによりシートに編成された後の2枚のシート122’及び122”、並びにその間に導入された分離したZ方向樹脂流動促進手段128の概略を示す。ロービングは、おさの後で、互いに横方向又は水平方向に離れている、換言すれば、隣接するロービング間に隙間が残っていることは注目すべきである。これは、上側のシートのロービングはおさの1つおき毎の上側開口部を通り、上側開口部の残りは空いたままにし、下側のシートのロービングはおさの1つおき毎の下側開口部を通り、下側開口部の残りは空いたままに配置することにより達成されている。しかし、上側及び下側開口部内のロービングは、互いに上方にはないようになっている。換言すれば、上側のシートのロービング群は、下側のシートの隙間の上方にあり、上側のシートの隙間は、下側のシートのロービング群の上方にある。図10bは、ロール132/134(図6に示す)により近い、シート及び分離したZ方向樹脂流動促進手段を概略的に示しており、上側のシート122”のロービングは下側のシート122’のロービングの間に位置し始めていて、分離したZ方向樹脂流動促進手段128は2枚のシートのロービングの間、すなわちウェブの上面及び下面の間を進み始めている。
【0146】
図10cは、ロール132/134(図6に示す)の後のウェブ120の概略を示しており、2枚のシートがウェブとして一体化して、分離したZ方向樹脂流動促進手段128がウェブ120の上面と下面との間を往復してウェブのロービングの間に延びている。
【0147】
図10dは、前述の第3の選択肢による、細い横方向の分離した流路形成手段40がウェブ120の少なくとも1つの表面(上面又は下面)上、好ましくは両面上に導入され、追加の糸42が細い横方向の分離した流路形成手段40の上に配置された、換言すれば、図4の装置26及び追加の糸42/46を導入するおさ44/48の後の、ウェブ120及び分離したZ方向樹脂流動促進手段128の概略を示す。その後、ウェブ120は、図4により示すように、熱可塑性及び/又は熱硬化性バインダーを融解するために用いられる反応促進装置28(例えば、それ自体知られている、二重ベルトラミネーター)に運ばれる。他の適した装置により、ロービング、分離したZ方向樹脂流動促進手段、細い横方向の分離した流路形成手段、及び追加の糸を共に一体に接着するように、バインダーの反応を促進するために、いくつか作業の例を挙げると、バインダー上に溶媒を噴霧又はバインダーから溶媒を蒸発させることは可能である。その後、ウェブ120は、図4にも示すように強化材の厚さを調整する圧縮段階30に運ばれる。圧縮段階は、例えば、融解したバインダーによりロービングの接着を向上する及び所望の厚さを有する一方向強化材を形成するために、ウェブを圧縮するための2つのロール間の少なくとも1つのつかみ部内で実行される。圧縮の後、一方向強化材は、顧客への納入のために巻かれる。時により、強化材は、最終納入の前にスリッター・ワインダーにより所望の幅に切断される。
【0148】
図11a〜図11fは、分離したZ方向樹脂流動促進手段を渡すための、並びに第1のおさ及び次に分離したZ方向樹脂流動促進手段によりロービングをグループ化するための、様々な可能な配置を端面図により(及び図10aと比較できるように)示す。ロービングを配置する基本原則は図10aに関連して説明される。同じ基本原則を、図11a〜図11fで説明するものを含むがこれに限定されない、すべての他の任意のロービングの配置に適用してもよい。図11aは、上側のシートは、互いに離れて配置された、すなわち間に隙間がある単一のロービングを含んでもよく、下側のシートは、互いに離れて配置された、すなわち間に隙間があるロービング群(ここでは2つのロービング)を含むことを示す。上側のシートのロービング群は、下側のシートの隙間の上方にあり、上側のシートの隙間は、下側のシートのロービング群の上方にある。図11bは、両方のシートは、互いに離れて配置されたいくつかの(ここでは2つ)のロービングの群を含んでもよいことを示す。図11cは、1つ又は両方のシート内のロービング群は、強化材の幅に沿って変化してもよいことを示す。図11dは、ロービング群は、並んで、すなわち水平方向にいるだけでなく、互いの上、すなわち垂直方向に現れてもよいことを示す。また、図11dでも示したように、ロービングの各群は、横方向/水平方向にも1つ以上のロービングを含んでもよい。そして最後に、図11eは、ウェブ又は強化材は、2枚より多いシートでできていてもよく、単一のシートのための前述の選択肢はすべて、この代替案にも利用できることを示す。ゆえに、図6を参照して、図11eの配置の結果として得られるウェブは、3枚のシートが、それらの束から、例えば粉末バインダー導入箱を経由して、おさに導入され、所望の形にシートのロービングを編成するようにして、製造される。おさの後、シート間の各空洞は、図6図7、及び図8に関連してより詳細に説明した方法で、分離したZ方向樹脂流動促進手段を空洞に導入するための供給手段を備える。図11fは、図11eのように、3枚のシート及び2つの分離したZ方向樹脂流動促進手段を用いた代替案を示す。しかし、この代替案では、シート−分離したZ方向樹脂流動促進手段−の束がロールに入り圧縮された時、その結果得られるウェブはある意味では2層になっているようにして、シート内のロービングの密度は2倍になる。換言すれば、下側のシート内の各隙間は、上から来るロービングで充填される。それにより、分離したZ方向樹脂流動促進手段は、この代替案では、ウェブの上面と下面との間を進むのではなく、ウェブの1つの表面と水平中心線との間を進む。しかし、1つの分離したZ方向樹脂流動促進手段が1つの表面から中心線に、もう1つが中心線から他の表面に延びるため、分離したZ方向樹脂流動促進手段はウェブの表面間を進むと考えてもよい。3つより多いシートがウェブ及び強化材を形成している場合に、同様の取り組みを利用してもよい。
【0149】
図12は、本発明の第2又は第3の好ましい実施形態による、一方向強化材の一部分を示す。強化材又はウェブ120は一方向ロービング102及びロービング102間を所定の方法で延びる分離したZ方向樹脂流動促進手段128で形成される。拡大した図で、分離したZ方向樹脂流動促進手段128が両側面に空いた空洞100を形成する様子が示されている。空洞100は、Z方向樹脂流動路と呼んでもよく、これにより、積層した強化材製品を製造しようとする時、レジン・トランスファー・モールディング(RTM)プロセス及び真空注入プロセスの1つを用いる際に空気が強化材層の間から効率的に排出されて強化材の束に樹脂が素早く浸透する。
【0150】
図12で示すウェブは、以下のように用いられてもよい。すなわち、強化材を形成するために反応促進装置及び圧縮段階により直接処理されてもよく、又は強化材を形成するための反応促進装置及び圧縮段階による処理の前に、細い横方向の分離した流路形成手段を、ウェブの上面及び下面の少なくとも1つの上に配置してもよく、又は強化材を形成するための反応促進装置及び圧縮段階による処理の前に、細い横方向の分離した流路形成手段に対し横方向に延びる糸を細い横方向の分離した流路形成手段上に加えてもよい。
【0151】
換言すれば、前述の観点では、強化材内にZ方向流路を配置する前述の方法は、単独、すなわち図10cに示すようにウェブ又は強化材を形成するためにロービングの2枚のシートのみと共に、又は図10dに示す細い横方向の分離した流路形成手段40と共に(しかし追加の糸42なしに)、又は細い横方向の分離した流路形成手段40及び追加の糸42の両方と共に、のいずれかで用いられてもよいことを理解されるべきである。
【0152】
分離したZ方向樹脂流動促進手段は、好ましくは細い分離した流路形成手段と同じ材料、すなわちポリアミド(PA)、ポリアミド共重合体若しくはポリエステル共重合体(PET共重合体)単繊維で形成される、又はそれらは2成分繊維、アクリル繊維、若しくはポリオレフィン繊維であってもよい。分離したZ方向樹脂流動促進手段は、例えば、丸、正方形、若しくは楕円の断面、又はX型若しくは中空の断面を有していてもよい。分離したZ方向樹脂流動促進手段は、また、2成分又は多成分のものでもよい。換言すれば、分離したZ方向樹脂流動促進手段は、適したポリマー材料から、例えば押出成形により製造されるので、分離したZ方向樹脂流動促進手段の断面を、実際には、樹脂流動特性を最適化するために自由に選択してもよい。分離したZ方向樹脂流動促進手段に、非補強材(単繊維ポリマー)の量を最小限に維持しながら、Z方向流路のための最大限の幾何学的断面を創出する、及び同時に、分離したZ方向樹脂流動促進手段の所定の体積で、重なり合う2つの層内の強化ロービング間の距離を最大化するような断面を持たせることは有益である。
【0153】
分離したZ方向樹脂流動促進手段は、通常、100μm〜300μm、好ましくは100μm〜200μm、より好ましくは130μm〜170μmのオーダーの直径を有する単一の長繊維である。しかし、分離したZ方向樹脂流動促進手段は、いくつか他の選択肢を有する。分離したZ方向樹脂流動促進手段は、いくつかの単繊維の束、すなわち、例えば、分離したZ方向樹脂流動促進手段がロービングの間に延びている時、隣接するロービングとの間の分離したZ方向樹脂流動促進手段の両側面に所望の間隙が残っているように、互いに連通して配置された3つの長繊維を有する、多繊維又は他の連続した手段で形成されていてもよい。しかし、多繊維及び他の連続した手段又はこれらの処置及び構造体は、単一の必須条件を満たさなければならない。多繊維又は他の連続した手段は、単繊維のように働かなくてはならない、すなわち圧縮下でも実質的に丸い断面を維持しなければならない。換言すれば、多繊維又は他の連続した手段は、多繊維が通常なる、すなわち単一の長繊維が圧縮下で側方に移動できることにより、多繊維の横断面が丸くなく平坦又はリボン状になる、ようには圧縮されないことがある。このような必要条件は、実際には、多繊維又は他の連続した手段がロービング上及び積層体内部で単繊維状の構造に変化されるような、一方向ウェブの生産の生産工程で、多繊維の個別の単一長繊維が一体に融解する、又はバインダーが単一長繊維を一体に接着するような形で、多繊維がバインダーを有していなければならないことを実際には意味する。
【0154】
そのような接着された分離したZ方向樹脂流動促進手段を用いる時、促進手段の直径又は実際には厚さは、100μm〜300μm、好ましくは100μm〜200μm、より好ましくは130μm〜170μmのオーダーである。形成手段の実際の直径又は厚さは、実際の強化繊維の浸透性及び繊維の直径による。分離したZ方向樹脂流動促進手段の直径又は厚さに関係する前述の説明に関して、単繊維又は他の分離したZ方向樹脂流動促進手段が幾分圧縮される場合、直径又は厚さは、工程により誘発された圧縮下での単繊維又は分離したZ方向樹脂流動促進手段の寸法と考えるべきであるということを理解されなければならない。真空注入プロセスでは、真空バッグ内の圧力は、一般的に−980mbar〜−500mbarで、大気の条件により、強化材上に500mbar〜980mbarのレベルの圧縮を誘発する。RTMプロセスにより成形型閉じ圧力により強化材上に誘発される圧縮レベルは、一般的に100mbar〜2000mbarである。圧縮レベルは、プロセスパラメーター及び成形型構成の違いの大きさのために正確に確定することは難しいが、概ねライトRTMではより小さく、鋼成形型RTMではより大きい。
【0155】
本発明の強化材は、真空注入、ライトRTM、又はRTM法を含むがこれに限定されない、すべての種類の注入方法で用いてもよい。樹脂含浸が決定的な、又はさもなければ、サンドイッチ状材料、難燃材、充填剤、色素などのような積層体構造体内に密に配置された繊維若しくは他の材料により抑制される、樹脂の粘度が非常に高いことがある、他の積層体の場合は、本発明の強化材により改善されることがある。
【0156】
本発明の強化材は、プリフォーム又は最終製品、すなわち、例えば風力タービンブレードのスパーキャップのような積層体の両方の製造に用いてもよい。プリフォームは、1つの強化材のみから製造されてもよい。強化材は、また、プリフォームを形成するために強化材を一体に接着するために、第1の強化材の細い分離した流路形成手段が第1の強化材の下方又は上方に位置する第2の強化材に面するようにして、必要な場合適切なバインダーを用いることにより(時により強化材の加熱及びロービングの接着のために先に塗布されたバインダーだけで充分である)、強化材を互いの上に配置することにより少なくとも2つの強化材でできていてもよい。一方向強化材は、すべての強化材のロービングが平行で一軸強化材製品又はプリフォームになる、又は第1の強化材のロービングが第2の強化材のロービングに対して角度をもって配置され多軸強化材製品又はプリフォームが形成される、のいずれかのように、互いの上に配置されてもよい。強化材をプリフォームにすること、すなわちプリフォームの製造は、強化材の製造者、最終製品の製造者、又はその間の誰かにより実行されてもよい。
【0157】
同様な方法で、積層体が、本発明の強化材又は前述のプリフォームから製造されてもよい。積層体の製造方法では、少なくとも2つの強化材又はプリフォームが、第1の強化材の細い分離した流路形成手段が第1の強化材の上方に位置する第2の強化材に面するように、成形型内に互いの上に配置され、強化材にカバーが配置され、成形型が閉じられ、成形型から空気を排出して樹脂を強化材に含浸させるために圧力差が加えられる。
【0158】
別の選択肢は、細い分離した流路形成手段が成形型の底及びカバーの両方に面するように、成形型内に1つの一方向強化材のみを用いることである。
【0159】
本発明は、前述した例に限定されることなく、本発明の思想の範囲内で多くの他の異なる実施形態で実施できることは明らかである。前述した各実施形態の特徴は、可能である限り他の実施形態に関連して用いられてもよいことも明らかである。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10a
図10b
図10c
図10d
図11a
図11b
図11c
図11d
図11e
図11f
図12