特許第6568071号(P6568071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6568071上気道の分析のためのシステム及び当該システムの作動方法、患者インタフェース装置、並びに、呼吸圧サポートシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568071
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】上気道の分析のためのシステム及び当該システムの作動方法、患者インタフェース装置、並びに、呼吸圧サポートシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20190819BHJP
   A61M 16/06 20060101ALI20190819BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   A61B5/08
   A61B5/08ZDM
   A61M16/06 A
   A61M16/00 328A
   A61M16/00 305A
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-536182(P2016-536182)
(86)(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公表番号】特表2017-507676(P2017-507676A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2015050838
(87)【国際公開番号】WO2015110374
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2017年11月10日
(31)【優先権主張番号】14152609.5
(32)【優先日】2014年1月27日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】アーツ ロナルドゥス マリア
(72)【発明者】
【氏名】カーレルト ホアキム
(72)【発明者】
【氏名】ファン ブルッゲン ミッシェル ポール バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】ウウェルチェス オッケ
【審査官】 北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−248011(JP,A)
【文献】 特開2013−138706(JP,A)
【文献】 特開2012−170528(JP,A)
【文献】 特表2012−517303(JP,A)
【文献】 特開2012−194029(JP,A)
【文献】 B. Louis et al.,Airway Area by Acoustic Reflection: The Two-Microphone Method,Journal of Biomechanical Engineering,1993年 8月,vol.115, no.3,p.278-285
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 − 5/22
A61M 11/00 −19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上気道の分析のためのシステムであって、
ユーザの気道と連絡するための通路と、
前記通路に対して第1の位置に配置された第1の音響センサと、
前記通路に対して第2の位置に配置された第2の音響センサと、
上気道閉塞の存在に依存して変化するパラメータを前記第1の音響センサの信号と第2の音響センサの信号との関係から導出するプロセッサと、
を有し、
前記プロセッサは、前記パラメータを導出するために、前記システムの外部にあるノイズ源から受ける周囲ノイズ、及び前記ユーザによって生成されるノイズのみを有する音信号を処理する、及び
前記プロセッサはさらに、前記パラメータを導出するために、前記第1の音響センサにおける音響信号と、前記第2の音響センサにおける音響信号との間の音響伝達関数を導出し、前記音響伝達関数から前記パラメータを音響インピーダンス形式で導出する、
システム。
【請求項2】
上気道閉塞の前記存在を検出するための前記パラメータを解釈するための検出器を更に有する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記検出器が、前記上気道閉塞の位置を検出する、あるいは、前記上気道閉塞の位置及び程度を検出する、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記通路が、チューブを有し、前記第1及び第2の音響センサが、前記チューブに沿った第1及び第2の位置に配置され、前記チューブが、前記ユーザの口及び/又は鼻で終端する第1の端部を持つ、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記音響伝達関数を導出するための処理の前に、前記第1及び第2の音響センサの信号をフーリエ変換するためのフーリエ変換処理構成を有する、あるいは、前記音響伝達関数を導出するための処理の前に、前記第1及び第2の音響センサの信号をフーリエ変換するためのフーリエ変換処理構成と、前記音響伝達関数を導出するための処理の前に、前記フーリエ変換された信号を平均化するための平均化構成と、を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記音響インピーダンスが、周波数領域における複素インピーダンスとして得られ、前記プロセッサが、オプションで、時間領域インパルス応答を得て、これにより気道直径を導出する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記通路が、チューブを有し、オプションで、前記チューブがフレキシブルである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
患者の鼻及び/又は口に気体を輸送するためのマスクと、
前記マスクに接続又は組み込まれた前記上気道の分析のための請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシステムと、
を有する、患者インタフェース装置。
【請求項9】
加圧空気源と、
空気圧を制御するための圧力制御ユニットと、
請求項8記載の患者インタフェース装置と、
を有する呼吸圧サポートシステムにおいて、
前記呼吸圧サポートシステムは、前記加圧空気を前記第1及び第2の音響センサを通過して前記ユーザに供給し、及び
前記呼吸圧サポートシステムは、前記空気圧を上気道閉塞の存在の検出に依存して、制御する、呼吸圧サポートシステム。
【請求項10】
上気道の分析のためのシステムの作動方法であって、前記システムは、
ユーザの気道と連絡するための通路に対して、第1の位置に第1の音響センサ及び第2の位置に第2の音響センサを備え、
前記方法は、
前記第1及び第2の音響センサが、前記分析するためのシステムの外部にあるノイズ源から受ける周囲ノイズ、及び前記ユーザによって生成されるノイズのみを有する音を検出するステップと、
前記システムが、前記第1及び第2の音響センサの信号の間の関係からパラメータを導出するステップと、
を有し、
前記方法はさらに、
前記システムが、前記第1の音響センサにおける音響信号と、前記第2の音響センサにおける音響信号との間の音響伝達関数を導出し、前記音響伝達関数から上気道閉塞の存在に依存して変化する前記パラメータを音響インピーダンス形式で導出するステップ
を有する、方法。
【請求項11】
前記第1及び第2の音響センサが、ユーザの口及び/又は鼻で終端する第1の端部を持つチューブに沿った第1及び第2の位置に配されている、請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上気道の分析に関する。特に、本発明は、適切に制御される陽性気道圧(PAP:positive airway pressure)治療を可能にするため、又は、選択される適切な代替療法を可能にするための、上気道の分析に関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA:Obstructive Sleep Apnea)は、特に、成人男性人口において、高い発生率を有する病気である。OSAは、陽性気道圧(PAP)の適用によって、極めて効率的に治療される。これは、患者が夜間にマスクを着用することを含み、睡眠中、患者に加圧空気を輸送する。
【0003】
最適な圧力滴定のため、自動PAP(APAP)システムは、中枢性イベントと閉塞性イベントとを区別する必要がある。中枢性睡眠時無呼吸(CSA:central sleep apnoea)イベントは、患者が呼吸する努力をしない場合に発生する。一方、閉塞性イベントは、上気道の物理的阻害が存在する場合に発生する。中枢性イベントと閉塞性イベントとの両方が、睡眠中、繰り返し生じ、1つのイベントは、少なくとも10秒から1分又はそれよりもやや多くまで継続する。患者は、本質的に、OSA、CSA、又は、その両方の組み合わせに苦しむ。なお、後者は、混合型睡眠時無呼吸と称される。
【0004】
既知のPAPシステムが、エアフローの完全な停止を検出した場合、エアフローにおける降下が、閉塞性又は中枢性睡眠時無呼吸イベントによって発生したかどうかを検証するために、圧力パルスを送る。圧力パルス(典型的には、2秒の持続時間、2ミリバールの圧力増加)がエアフローの増加につながる場合、無呼吸は、中枢性睡眠時無呼吸イベントなどの気道確保無呼吸(CA:clear airway apnoea)であろう。圧力パルスがエアフローを増大させない場合、システムは、当該無呼吸が閉塞性無呼吸(OA:obstructive apnoea)であることを知る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、呼吸低下イベント(呼吸の中断よりもむしろ浅い呼吸イベント)の場合、一般的には、40%よりも低いエアフローの減少が存在する。PAPシステムは、中枢性呼吸低下イベントと閉塞性呼吸低下イベントとを区別できない。両ケースにおいて、圧力パルスは、エアフローの増加につながる。これは、気道が、なお、少なくとも部分的に開いているためである。中枢性呼吸低下の場合、フローの減少は、神経筋呼吸ドライブの減少によって引き起こされる。一方、閉塞性呼吸低下の場合、フローの減少は、気道の狭窄によって引き起こされ、これは、上気道抵抗の増加につながる。
【0006】
閉塞性呼吸低下の場合、CPAP圧力の増加が、気道開存性を達成するために有用である。中枢性呼吸低下の場合、圧力の増加は、エアフローを増加させない。反対に、不要な圧力は、不快さにつながることがあり、当該システムを使用する患者の順守を低下させる。
【0007】
既存のPAPシステムは、呼吸ドライブも気道抵抗も測定することができない。しかしながら、(上気道及び肺を含む)呼吸器系全体の抵抗は、強制振動技術(FOT:Forced Oscillation Technology)を用いることによって測定可能である。FOTは、気道において圧力を低周波数の正弦波励起(一般的には、1ミリバール)で変調する。使用される周波数は、20Hzよりも小さい。周波数領域における上記分析は、肺、咽頭、及び、上気道の全体的な抵抗のみを決定することができるが、上気道におけるセグメントを突き止めるため、時間領域における空間情報を供給しない。これは、抵抗の変化を引き起こす。
【0008】
このため、現行のPAPシステムは、呼吸低下が、上気道狭窄によって引き起こされたのか、呼吸ドライブの減少によって引き起こされたのかを決定できないという第1の問題がある。
【0009】
幾らかの患者は、その閉塞性のため、PAP治療にあまり適応しない。結果として、ますます多くの患者が代替療法を探す。これは、特に、軽度から中程度のOSAを患う患者の場合である。
【0010】
OSAの病態生理学は、しばしば、解剖学的機能障害及び神経筋機能障害の相互作用から生じるため、複雑である。PAP療法のパワーは、上気道の全ての折り畳みレベルを治療することであり、このため、病態生理学の理由に関わらず、全てのOSA患者のために機能する。多くの代替療法がより高い患者許容性を持つが、それらは、上気道の特定のレベルしか治療しない。これは、これらの代替療法の適応性をOSA亜母集団に制限する。
【0011】
PAPの代替療法が同時に上気道の全てのレベルを治療できないことは、最適な臨床転帰を保証するために、患者選択が、これらの代替療法のキーとなることをもたらす。これは、PAP代替療法の対象である患者がOSA病因をより深く学習する必要がある。
【0012】
上気道を評価するための音響技術が、当該技術分野において知られている。例えば、フード研究所の「the pharyngometer of Eccovision, and the Rhinometry system」などである。
【0013】
米国特許第8424527号は、付与された気道圧の下で気道狭窄を研究するため、音響トランスデューサがPAPマスクに組み込まれたシステムを開示している。単一のセンサが、マイクロフォン及び音源として機能する。米国特許出願公開第2013/0046181号明細書は、気道狭窄の像を取得するために音響パルスを用いる、患者が首周りに着用する襟を開示している。これらの例は、上気道特性を解決するため、音響の実行可能性を実証している。これらの例は、スピーカ/トランスデューサによって供給されたアクティブ音源の散乱音を分析するという共通点を持つ。
【0014】
従って、適切な非PAP療法の選択を可能とするために使用されるような、気道の分析及び診断システムが、測定手法において目立つという第2の問題がある。これは、主に、それらが、通常の睡眠中に適さないためである。例えば、ユーザの邪魔をする音を鳴らすことは望ましくなく、システムは、ユーザに対して目立つことを最小限にする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、特許請求の範囲によって規定されている。
【0016】
本発明によれば、上気道の分析のためのシステムであって、ユーザの気道と連絡するための通路と、前記通路に対して第1の位置に配置された第1の音響センサと、前記通路に対して第2の位置に配置された第2の音響センサと、上気道閉塞の存在に依存して変化するパラメータを前記2つのセンサ信号間の関係から導出するプロセッサと、を有し、前記プロセッサは、前記システムの外部にあるノイズ源から受ける周囲ノイズのみを有する音信号と、前記ユーザによって生成されるノイズとを処理する、システムが提供される。
【0017】
上記システムは、気道狭窄を検出することができ、これは、診断情報として使用されることができる。また、上記システムは、閉塞の位置を検出するように構成されてもよく、さらに、オプションで、気道狭窄の程度も検出するように構成されてもよい。このようにして、狭くなっている気道のレベルを突き止めることが可能になる。また、オプションで、どのようにして狭窄が生じているのかをモニタすることも可能となる。気道特性は、センサによって取得される信号における変化として現れる。少なくとも2つのセンサを用いることによって、センサを通過していく任意の音に基づき、上気道の動的特性及び呼吸エアフローにおけるダイナミクスが解決され得る。これは、特定の音源の必要性を回避し、結果、分析システムの外部の音源が使用される。これらの外部音を検出するために音響センサが使用される。当該外部音は、ユーザによって生成されたノイズ、周囲音、又は、患者治療システムの一部(ポンプなど)によって生成されたノイズを有していてもよい。上記システムは、スタンドアロン型診断装置の一部であってもよく、あるいは、PAPシステム又はフローメータ又はスパイロメータなどの治療装置内に組み込まれていてもよい。
【0018】
上記通路は、エアフローが存在するチャンバであってもよい。或る例では、第1及び第2のセンサが、ユーザの口及び/又は鼻において終端している第1の端部を持つチューブの形式の上記通路に沿った第1及び第2の位置に配置され得る。第2の例では、第1及び第2のセンサが、ユーザに気体のフローを輸送するための患者インタフェースの内側にある患者の口及び/又は鼻を受けるためのキャビティの内側に配置され得る(例えば、これらは、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を治療するためのPAP療法において用いられる)。
【0019】
音響センサは、それぞれ、音響波から生じるフロー又は圧力を検出可能な任意のセンサであってもよい。例えば、当該センサは、マイクロフォンを有していてもよいが、端お圧力センサ又はフローセンサが使用されてもよい。
【0020】
或る例では、プロセッサは、センサ信号から音響伝達関数を導出するとともに、音響伝達関数から音響インピーダンスの形式でパラメータを導出するように構成される。
【0021】
このシステムは、気道狭窄を検出するため、専用のアクティブな可聴音源を必要とする代わりに、圧力治療装置によって生成される呼吸又は音から生じるノイズを用いることができる。このため、通路に沿って伝播する音は、システムの外部のノイズ源のみから受ける周囲ノイズと、ユーザによって生成されるノイズと、を有していてもよい。閉塞は、気道の断面の変化、又は、感知される閉塞を生じさせる気道セグメントのフロー抵抗の他の変化として現れ得る。
【0022】
上記システムは、ユーザの頭の直接的近傍においてノイズ源を配置する必要を回避することによって、より目立たなくさせることができる。代わりに、3つ以上のセンサが、存在している周囲ノイズを測定するために使用される。これから、気道の入力音響インピーダンスが連続的に導出される。これにより、例えば、(部分的な)崩壊が夜間に発生するかどうかを決定できる。
【0023】
しかしながら、上記システムは、分析のための所望の周波数スペクトルを供給するための音源とともに使用され得る。周囲音に加えて音源を使用することは、音源の強度が減少され得る一方、所望の範囲の周波数に亘って最小の信号強度を保証することを意味する。これのオプションは、専用の音源を使用しない動作のモードに加えて、装置の動作の追加的なモードとして供給され得る。
【0024】
上記システムは、音響伝達関数を導出する処理の前に、第1及び第2のマイクロフォンの出力を処理するためのフーリエ変換処理構成を使用することができる。また、音響伝達関数を導出するための処理の前に、フーリエ変換された信号を平均化するために、平均化構成が、使用され得る。好ましくは、音響インピーダンスは、周波数領域における複素インピーダンスとして取得される。この複素関数の形状は、例えば、トレーニングデータベースの使用に基づいて、気道閉塞を決定するために解釈され得る。
【0025】
また、プロセッサは、時間領域インパルス応答を取得するとともに、距離の関数として気道直径を導出するように構成されてもよい。
【0026】
通路は、好ましくは、チューブを有し、当該チューブは、まっすぐであってもよく、柔軟で湾曲していてもよい。柔軟なチューブの場合、当該チューブは、コイル状であってもよく、発生する閉塞が最小化されるように曲げられてもよい。しかしながら、チューブ以外の形状が、フローストリームを誘起するために使用されてもよい。例えば、様々な位置に配置されたセンサを有するマスクの形状が、十分な情報が解決されることを可能にし得る。
【0027】
また、本発明は、患者の鼻及び/又は口に気体を輸送するためのマスクと、上気道の分析のための本発明のシステムと、を有する患者インタフェース装置を提供する。
【0028】
チューブなどの通路に沿ってセンサがマウントされる場合、通路は、マスクに接続する。
【0029】
上記分析システムは、無呼吸のタイプを診断する際に使用するための適したデータを供給することができる。あるいは、上記分析は、呼吸サポート圧力システムの一部として、リアルタイムで使用されてもよい。この場合、本発明は、加圧空気源と、空気圧を制御するための圧力制御ユニットと、本発明の患者インタフェース装置と、を有し、前記加圧空気は、前記センサを通過して前記ユーザに供給され、前記空気圧は、上気道閉塞の存在(また、好ましくは、かかる閉塞の位置及び程度)の検出に依存して、制御される、呼吸サポート圧力システムを提供する。
【0030】
また、本発明は、上気道の分析のための方法であって、ユーザの気道と連絡するための通路に対して、第1の位置に第1の音響センサを供給するステップと、前記通路に対して、第2の位置に第2の音響センサを供給するステップと、分析システムの外部にあるノイズ源から受ける周囲ノイズのみを有する音と、前記ユーザによって生成されるノイズとを検出するために前記センサを使用するステップと、前記2つのセンサ信号の間の関係からパラメータを導出するステップと、上気道閉塞の存在を検出するための前記パラメータを解釈するステップと、を有する、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の例が、添付の図面を参照して、詳述される。
図1図1は、ユーザの上気道を分析するためのシステムの一般的な構成を示している。
図2図2は、使用され得る信号処理を示している。
図3図3は、周波数に対する導出された複素インピーダンス値例を示している。
図4図4は、分析システムを組み入れたPAPシステムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施形態は、ユーザの口及び/又は鼻につながる流路に沿って少なくとも2つのセンサが供給された、上気道の分析のためのシステムを供給する。或る関係が、2つのセンサ信号から導出され、これは、上気道閉塞の存在を少なくとも検出する、また、好ましくは、かかる閉塞の位置及び/又は程度を検出するために解釈される。
【0033】
各例が、単に診断ツールとして使用されてもよいし、他の例が、PAPシステムの制御を補助するために使用されてもよい。
【0034】
第1の例が、診断目的のために説明される。
【0035】
図1は、一般的な構成を示している。
【0036】
この例は、ユーザ4の口及び/又は鼻において終端している1つの端部を備えるチューブの形式の通路2を利用する。この例は、ユーザの口につながる通路を示している。図1には図示されていないが、上記1つの端部は、口(及び/又は鼻)の周囲でシールされている。
【0037】
第1の音響センサ10aが、上記端部から距離Xaにおいて、通路に沿った第1の位置に配置されており、第2の音響センサ10bが、上記端部から距離Xbにおいて、通路に沿った第2の位置に配置されている。通路の他端は、開放しており、結果、ユーザの呼吸エアフローは、通路を通過する。
【0038】
通路2は、チューブの形式をとることができるが、他のコンポーネントに組み込まれた通路であってもよく、このため、必ずしも、別個のチューブとして形成される必要はない。基本的に、センサは、通路内にあり得る、又は、他の形状のコンポーネントによって生じさせられ得る、流路に沿って配置される。
【0039】
或る例では、センサ10a,10bは、マイクロフォンを有するが、音圧波に反応する、又は、かかる音圧波から生じるエアフローの方向及び速度における変化に反応する、他の音響センサが使用されてもよい。従って、音響センサなる用語は、音圧波の特性又は効果を検出するセンサを表すものとして理解されるべきである。
【0040】
通路の開放端は、環境音又はノイズが入ることを可能にし、これは、マイクロフォンによって検出される。
【0041】
人の気道は、開放内腔構造であり、音響信号を伝達するための導波路として考えることができる。内腔構造が、例えば、上気道のセグメントの狭窄など、その幾何学的特性を変えた場合、音響信号の伝達及び反射は、変化し、その結果、システムの音響インピーダンスにおける変化につながる。当該変化は、受信した音響信号のエネルギー密度スペクトルにおいて測定され得る。気道抵抗における変化は、このため、当該関数の変化によって表される。
【0042】
口又は鼻における(音圧と速度との比である)音響インピーダンスを決定するために、マイクロフォン10a及び10bにおける音響信号間の伝達関数が知られている。
チューブの音響特性は、口における音響インピーダンスが、以下の式を用いて決定され得ることを可能にする。
【0043】
ここで、ρ及びcは、それぞれ、空気の音の密度及び速度であり、kは、波数ω/cであり、ωは、STFTの特性によって規定される角周波数である。Xa及びXbは、図1に示されている距離である。
【0044】
源特性が、両マイクロフォン信号Ha及びHbに存在するとともに、伝達関数Hab=Ha/Hbのみが必要であるため、源特性は、効果的に、キャンセルされる。これは、周囲音、又は、テストされる対象のいびきの音でさえ含んでいる任意の音源が使用され得ることを意味する。このようにして、分析システムの外部のノイズ源からの周囲ノイズのみを有する音信号と、ユーザによって生成されるノイズとが、処理される。
【0045】
低レベル環境音の場合、特に、夜間では、信号対雑音比を増加させるため、より長い期間に亘って、マイクロフォン信号を平均化することが好適であろう。
【0046】
図2は、使用され得る信号処理を示している。
【0047】
まず、プロセッサ18は、フーリエ変換ユニット20a,20bを用いることによって、両マイクロフォン信号のフーリエ変換(例えば、いわゆる短時間フーリエ変換(STFT:Short-Time Fourier Transform))を行なうために使用される。平均化ユニット22a,22bによって時間平均がとられる。
【0048】
プロセッサは、モジュール24によって示されるような音響伝達関数Habを導出する。当該伝達関数は、複素数値である。次いで、当該伝達関数は、モジュール26において上記関係を用いて、音響インピーダンスを計算するために使用される。
【0049】
検出器28は、上気道閉塞の存在及び位置を検出するため、音響インピーダンスを解釈するために使用される。一般的に、検出器28のような検出器が、上気道閉塞の存在、程度、及び/又は、位置を検出するための導出パラメータを解釈するために使用され得る。一方、診断アプリケーションでは、閉塞が存在するかどうかを知るだけで十分であろう。治療アプリケーションは、閉塞の位置及び/又は程度を必要とするであろう。
【0050】
このため、音響インピーダンスは、単一の値ではなく、(この場合、周波数に対するインピーダンス値の)関数の形式でパラメータを形成する。「パラメータ」なる用語は、然るべく理解されるべきである。パラメータは、気道閉塞の存在及び位置の検出を可能にするために解釈される。
【0051】
このようにして伝達関数を導出することは、ルーチン処理であり、「スペクトル推定器」として知られている。伝達関数に加えて、コヒーレンスもルーチン的に取得され得る。これは、伝達関数の周波数の関数として、信号対雑音比に関する尺度である。これは、例えば、十分な信号対雑音比を持つ周波数のみを選択するために使用されてもよい。
【0052】
検出器28は、例えば、管理学習に基づく単純な分類器であってもよい。当該システムは、開放気道インピーダンス及び幾つかの既知の閉塞インピーダンスにより、学習され得る。この学習セットは、自裁に測定されたインピーダンスと比較される。そして、現在の値に最も近い学習セットから対応するスペクトルを選択することによって、閉塞が検出され得る。この最も近い値は、最小二乗マッピングなどの、任意の近似/マッピング方法を用いて導出され得る。
【0053】
複素インピーダンスが周波数領域において取得されるため、時間領域インパルス応答も利用可能である。気道直径は、音響パルス反射率測定を用いて距離の関数として計算され得る。各直径の変化は、各自の(時間及び振幅の両方における)反射係数を生成する。反射波と入射波との間の距離から、距離の関数として直径を再構成できるアルゴリズム(例えば、Ware-Aki方法)が存在する。
【0054】
図3では、開いている口からの3つの異なる距離で、閉塞に関する単純化された咽頭モデルのプロトタイプにより測定された、3つの複素インピーダンス曲線が示されている。このグラフは、検出され得る大きな差異を明確に示している。図3は、周波数に対する音響インピーダンスを描画している。
【0055】
例として、複数のマイクロフォンが、6cmの間隔で、19mmの内部直径を有するチューブ内にマウントされ得る。当該チューブは、治療システムのマスク又は顔キャップ上に搭載され得る。通路は、まっすぐである必要はなく、チューブとして実装される場合、マスクにフィットするように、容易に、折り畳まれ、又は、丸められてもよい。特に、必要な間隔は、1cm乃至20cmの範囲などでである。
【0056】
上記システムは、細いチューブであり、典型的には、鼻孔と同様の直径を有し、例えば、対象の頬の上で折り畳まれ、鼻カニューレに組み込まれる(鼻腔の分析のための)リノメータ(rhinometer)として使用され得る。
【0057】
当該システムは、ユーザの気道、特に、閉塞の位置についての情報を取得するためのモニタリング装置として使用され、例えば、手術、インプラント、又は、口腔機器などのCPAP代替療法に対して、患者が適合するかどうかを決定する、診断の目的のために使用され得る。このモニタリングは、睡眠学習の一部として、閉塞性睡眠時無呼吸を患う患者のために家庭において実行され得る。無呼吸又は呼吸低下イベントの各々に関し、各気道セグメントにおける気道抵抗の変化が、計算されることができ、これにより、医者は、閉塞の主な要因である気道セグメントを決定することができる。
【0058】
また、本発明は、CPAP又はAPAPシステムなどの呼吸圧サポートシステムの一部として使用され、例えば、圧力バーストが適用されるべきか否かについての正確な決定がなされるように、呼吸低下のタイプを決定するために使用される。実際、現行のPAPシステムの1つの問題は、それらが、呼吸低下が、上気道閉塞によって生じているのか、呼吸ドライブの減少によって生じているのかを決定できないことである。従って、上記測定システムは、自動PAP(APAP)システムにおける圧力滴定を改善するために使用され得る。
【0059】
既存のAPAPシステムは、少なくとも40%のフローの強い減少が検出された場合、圧力パルスのみを送る。上記モニタリングシステムは、各呼吸サイクルにおいて、気道抵抗の変化を永久的にモニタ及び計算することができ、或る呼吸サイクルから次の呼吸サイクルまで気道抵抗が変化した場合に圧力を然るべく増加又は減少させてもよい。このようにして、APAPシステムは、気道開存性における変化への応答を早めることができ、圧力パルスを用いた治療に適しているかどうかを決定することができる。
【0060】
図4は、患者に呼吸療法を供給するための典型的なシステムを示している。
【0061】
システム30は、圧力生成装置32と、エルボコネクタ34に結合された、分析システムの通路としても機能する輸送導管2と、患者インタフェース装置36と、を含む。圧力生成装置32は、呼吸気体のフローを生成するように構成されており、ベンチレータ、(持続的気道陽圧装置又はCPAP装置などの)定圧サポート装置、可変圧力装置、及び、自動滴定圧力サポート装置を含んでいてもよいが、これらに限定されない。
【0062】
輸送導管2は、エルボコネクタ34を通じて、圧力生成装置32から患者インタフェース装置36まで呼吸気体のフローを連絡する。輸送導管2、エルボコネクタ34、及び、患者インタフェース装置36は、しばしば、まとめて患者回路と称される。
【0063】
患者インタフェース装置は、シェル40及びクッション42の形式で、マスク38を含み、例示的な実施形態では、鼻及び口マスクである。しかしながら、患者の気道に呼吸気体のフローを輸送するために役立つ、鼻マスク、鼻カニューレ、又は、フルフェイスマスクなど、任意のタイプのマスクが、マスクとして使用され得る。クッション42は、シリコーン、適切な柔らかい熱可塑性エラストマ、閉じた泡沫細胞、又は、かかる材料の任意の組み合わせなどの、柔らかく、柔軟な材料でできているが、これらに限定されない。
【0064】
エルボコネクタ34に結合される、シェル40における開口は、圧力生成装置32からの呼吸気体のフローが、シェル40及びクッション42によって規定される内部空間に連絡し、次いで、患者の気道に連絡することを可能にする。
【0065】
また、患者インタフェースアセンブリ36は、例示の実施形態では、二点ヘッドギアである、ヘッドギアコンポーネント44を含む。ヘッドギアコンポーネント44は、第1及び第2のストラップ46を含み、それぞれは、患者の耳の上の患者の顔の側部上に配置されるように構成される。
【0066】
患者インタフェースアセンブリは、さらに、接触面積を増加させて、患者の顔への力を減少させるための額サポート(図示省略)を含むことができる。
【0067】
圧力生成装置32は、圧力制御装置46によって制御される。これは、輸送導管2に沿って配置される、関連付けられたセンサ10a,10bによって表される、上述のモニタリングシステムからの入力を受ける。
【0068】
マイクロフォンを利用する幾つかの例では、追加的な音源は、必要でない。例えば、気道音響インピーダンスの測定のための音響信号は、周囲からのノイズ、又は、治療装置内のファンからの内在的なノイズであってもよい。しかしながら、音源の使用は、準ランダムノイズ信号、又は、時間領域におけるパルス刺激など、より信頼性の高い結果を与えることができる。このようにして、広いスペクトル音源が供給され得る。このオプションは、専用の音源を利用しない動作のモードに加えて、より正確な結果を可能にするための上記装置の動作の追加的なモードとして供給されてもよい。
【0069】
信号処理は、上述のSTFTを使用することができる。時間領域反射率測定法、又は、高速フーリエ変換などの他のフーリエ変換などの、他の既知の信号処理技術が、使用されてもよい。
【0070】
上述の例では、閉塞位置の検出は、学習データを具備する(周波数に関する)複素インピーダンス関数のマッチングに基づいている。他の手法が使用されてもよい。例えば、インピーダンス関数が、関数形状を示す様々なメトリックを導出するために、更に処理されてもよく、これは、ルックアップテーブルに格納されるデータと比較されてもよい。この様々なメトリックは、気道閉塞の存在及び位置を決定するために分析される「パラメータ」を形成する。このため、インピーダンス関数と学習値との間の直接的な比較は、本質的でなく、データ評価が行なわれる前に、他のデータ処理が実行され得る。
【0071】
上記の例は、音響信号における変化を検出するために、マイクロフォンを利用する。マイクロフォンは、従来の圧力感知ダイヤフラム装置として実装され得るだけでなく、それらは、微小電気機械システム(MEMS)センサとして実装されてもよい。さらに、伝播する音波によって引き起こされる、通路内のエアフロー変化又は圧力変化に応答する、流速計や、温度の違いに基づいて粒子速度を測定する、いわゆるMicroflown(登録商標)社のセンサなどの他のタイプのセンサが使用されてもよい。
【0072】
本発明は、様々な診断アプリケーションシナリオにおいて使用され得る。例えば、
(家庭における)自然な睡眠での呼吸及び気道開存性のスクリーニング、
家庭における陽性気道圧療法(CPAP、APAP)によって治療される患者の呼吸及び気道開存性のモニタリング、
睡眠学習の間の開存性のモニタリング(睡眠ポリグラフ検査)、
集中治療ユニットにおける気道開存性のモニタリング、
外科的介入の間、及び、ウェイクアップルームにおける術後処置の間の意識不明の人における音響呼吸パターン及び気道開存性のモニタリング、
睡眠呼吸障害(SDB)を患う人における気道開存性のモニタリング、
気道抵抗における変化に基づくAPAPシステムにおける圧力滴定。
【0073】
上述のように、本発明は、狭窄及び閉塞を測定するための上気道抵抗のモニタリングのため、閉塞性睡眠時無呼吸を患う患者のスクリーニングのために、閉塞位置のより正確な局所診断、並びに、PAPシステムのためのフィードバックを供給すべく、呼吸低下イベントの間の気道抵抗のモニタリングのために使用され得る。
【0074】
上記システムは、センサ信号処理を実装するためのコントローラを利用する。コントローラのために採用され得るコンポーネントは、従来のマイクロフォン、特定用途向け集積回路(ASICs)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)を含むが、これらに限定されない。
【0075】
様々な実施形態において、プロセッサ又はコントローラは、RAM、PROM、EPROM、及び、EEPROMなどの揮発性及び不揮発性のコンピュータメモリなどの、1又は複数のストレージ媒体と関連付けられていてもよい。ストレージ媒体は、1又は複数のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行された場合に、必要な機能を実行する1又は複数のプログラムで符号化されていてもよい。様々なストレージ媒体は、プロセッサ又はコントローラの内部に固定されていてもよく、又は、記録された1又は複数のプログラムが、ここで議論される本発明の様々な態様を実施できるように、プロセッサ又はコントローラの中に読み込まれることができるように、移送可能であってもよい。
【0076】
所望の情報を解決する最小構成として、上記の例は2つのセンサを使用している。しかしながら、処理用の追加情報を収集するために、2つより多くのセンサが使用されてもよい。従って、第1及び第2のセンサのみに対する参照は、2つのセンサのみを使用するという限定として解釈されるべきでない。
【0077】
本発明を実施する際、図面、開示、及び、添付の請求項の研究から、開示の実施形態に対する他の変形が、当該技術分野における当業者によって、理解及び実施され得る。請求項中、「有する」なる用語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形は、複数であることを除外しない。特定の手段が相互に異なる従属項において言及されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが好適に用いられないということを示すものではない。請求項中の任意の参照符号は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4