【実施例】
【0031】
例
キナルジンヒドロキサム酸の調製
【0032】
新鮮なヒドロキシルアミンを最初に調製することによりキナルジンヒドロキサム酸を製造した。ヒドロキシルアミンヒドロクロリド(12.0 g, 173 mmol)及び水酸化カリウム(11.4 g, 173 mmol)をメタノール(200 mL)中で0℃にて混合することにより新鮮なヒドロキシルアミンを調製した。溶液を20分間撹拌し、ろ過して、塩化カリウムを除去し、保管した。その間、キナルジン酸(20.0 g, 116 mmol)及びN−メチルモルホリン(14.0 mL, 127 mmol)をジクロロメタン(300 mL)中で撹拌しながら混合した。この溶液を0℃に冷却し、その時点で、エチルクロロホルメート(12.1 mL, 127 mmol)を添加した。この反応物を20分間撹拌し、その後、ろ過した。ヒドロキシルアミン溶液をろ液に0℃にて添加した。この反応混合物を室温に温め、そして1.5時間撹拌した。体積を真空下に約200 mLに低減し、そして水 (1 L)を添加して、白色固形分の沈殿を誘導した。固形分をろ過により回収し、熱ジクロロメタン(800 mL)で研和し、キナルジンヒドロキサム酸(12.7 g, 58.2%)を白色粉末として生じた。M.p. 146〜148℃。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)、[M + H
+]で計算、C
10H
9N
2O
2, 189.1; 実測189.1; [M + Na
+]で計算、C
10H
8N
2NaO
2, 211.0; 実測211.1。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 11.51 (s, 1 H), 9.18 (s, 1H), 8.53 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 8.09 - 8.04 (m, 3H), 7.84 (m, 1H), 7.69 (m, 1H)。
13C NMR (100 MHz, DMSO-d
6) δ 161.7, 150.3, 146.0, 137.6, 130.4, 129.2, 128.6, 128.0, 127.9, 118.7。元素分析 (C
10H
8N
2O
2)(H
2O)で計算(実測)、C: 58.25 (58.25), H: 4.89 (4.94), N: 13.59 (13.65)。 UV-vis (MeOH), λ
max, nm (log ε) 207 (4.4), 238 (4.5), 300(br) (3.5)。
【0033】
Ln
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]の調製
【0034】
幾つかのメタラクラウン錯体を本明細書中に開示される方法により調製した。
【0035】
DyZn
16(quinHA)
16(OTf)
3 (すなわち、(OTf)
3、5個の水分子及び3個のDMF分子を含むDy
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8])を、キナルジンヒドロキサム酸(200 mg, 1.06 mmol)、亜鉛トリフラート(385 mg, 1.06 mmol)及びジスプロシウムトリフラート(81 mg, 0.13mmol)を15 mLのジメチルホルムアミド中で溶解することにより調製した。トリエチルアミン(296 μL, 2.12 mmol)を添加した。溶液は即座に黄色に変色し、そして室温で一晩撹拌した。溶液を、その後、緩慢な蒸発のために保管し、それは2週間以内に黄色の板状結晶を生じた。結晶をろ過により回収し、そして空気乾燥して、DyZn
16(quinHA)
16(OTf)
3 (29 mg, 8.4%)を生じた。
ESI-MS, [M]
3+で計算、C
160H
96DyN
32O
32Zn
16, 1395.8; 実測1395.7。元素分析、(C
163H
96DyF
9N
32O
41S
3Zn
16)(H
2O)
5(C
3H
7NO)
3で計算(実測) C: 41.79 (41.81), H: 2.59 (2.81), N: 9.92 (10.23)。
【0036】
同様のプロセスを使用して、YZn
16(quinHA)
16(OTf)
3 (すなわち、(OTf)
3、5個の水分子及び3個のDMF分子を含むY
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]) (96 mg, 28%)を形成したが、イットリウムトリフラート(70 mg, 0.13mmol)を用いた。ESI-MS, [M]
3+で計算、C
160H
96N
32O
32YZn
16, 1371.1; 実測1371.2。
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) δ 8.36 (d, J = 4.7 Hz, 8 H), 8.34 (d, J = 4.7 Hz, 8 H), 8.22 (d, J = 8.5 Hz, 8 H), 8.09 (d, J = 8.5 Hz, 8 H), 7.73 (d, J = 7.6 Hz, 8 H), 7.52 (d, J = 8.5 Hz, 8 H), 7.49 (d, J = 8.0 Hz, 8 H), 7.25 (m, 16 H), 7.19 (d, J = 8.5 Hz, 8 H), 7.09 (m, 8 H), 6.95 (m, 8 H)。
元素分析, (C
163H
96F
9N
32O
41S
3YZn
16)(H
2O)
5(C
3H
7NO)
3で計算(実測) C: 42.42 (42.48), H: 2.63 (2.90), N: 10.07 (10.40)。
【0037】
同様のプロセスを使用して、YbZn
16(quinHA)
16(OTf)
3 (すなわち、(OTf)
3、5個の水分子及び3個のDMF分子を含むYb
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]) (96 mg, 28%)を形成したが、イットリウムトリフラート(81 mg, 0.13mmol)を使用した。
ESI-MS, [M]
3+で計算、C
160H
96N
32O
32YbZn
16, 1399.3; 実測1399.4。元素分析、 (C
163H
96F
9N
32O
41S
3YbZn
16)(H
2O)
5(C
3H
7NO)
3で計算(実測) C: 41.70 (41.73), H: 2.58 (2.74), N: 9.89 (9.98)。
【0038】
同様のプロセスを使用して、NdZn
16(quinHA)
16(OTf)
3 (すなわち、(OTf)
3、5個の水分子及び3個のDMF分子を含むNd
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]) (58 mg, 34%)を形成したが、ネオジムトリフラート(77 mg, 0.13mmol)を使用した。
ESI-MS, [M]
3+で計算、C
160H
96N
32NdO
32Zn
16, 1389.7; 実測1389.2。元素分析、 (C
163H
96F
9N
32NdO
41S
3Zn
16)(H
2O)
5(C
3H
7NO)
3で計算(実測) C: 41.94 (41.76), H: 2.60 (2.76), N: 9.95 (10.08)。
【0039】
同様のプロセスを使用して、GdZn
16(quinHA)
16(OTf)
3 (すなわち、(OTf)
3、4個の水分子及び4個のDMF分子を含むGd
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]) (67 mg, 39%)を形成したが、ガドリニウムトリフラート(79 mg, 0.13mmol)を使用した。
ESI-MS, [M]
3+で計算、C
160H
96GdN
32O
32Zn
16, 1394.0; 実測 1393.2。元素分析(C
163H
96F
9GdN
32O
41S
3Zn
16)(H
2O)
4(C
3H
7NO)
4で計算(実測) C: 42.09 (41.84), H: 2.66 (3.03), N: 10.10 (10.26)。
【0040】
同様のプロセスを使用して、TbZn
16(quinHA)
16(OTf)
3 (すなわち、(OTf)
3、5個の水分子及び3個のDMF分子を含むTb
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]) (39 mg, 23%)を形成したが、テルビウムトリフラート (79 mg, 0.13mmol)を使用した。
ESI-MS, [M]
3+で計算 C
160H
96N
32O
32TbZn
16, 1394.5; 実測1394.1。元素分析、 (C
163H
96F
9N
32O
41S
3TbZn
16)(H
2O)
5(C
3H
7NO)
3で計算(実測) C: 41.82 (41.50), H: 2.59 (2.71), N: 9.92 (9.90)。
【0041】
同様のプロセスを使用して、EuZn
16(quinHA)
16(OTf)
3 (すなわち、(OTf)
3、7個の水分子及び1個のDMF分子を含むEu
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]) (69 mg, 40%)を形成したが、ユーロピウムトリフラート(78 mg, 0.13mmol)を使用した。
ESI-MS, [M]
3+で計算、 C
160H
96EuN
32O
32Zn
16, 1392.2; 実測1391.8。元素分析、(C
163H
96EuF
9N
32O
41S
3Zn
16)(H
2O)
7(C
3H
7NO)で計算(実測) C: 41.34 (41.00), H: 2.45 (2.90), N: 9.58 (9.80)。
【0042】
同様のプロセスを使用して、ErZn
16(quinHA)
16(OTf)
3 (すなわち、(OTf)
3、5個の水分子及び3個のDMF分子を含むEr
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]) (35 mg, 20%)を形成したが、エルビウムトリフラート(80 mg, 0.13mmol)を使用した。
ESI-MS, [M]
3+で計算、 C
160H
96ErN
32O
32Zn
16, 1397.3; 実測1397.1。元素分析、 (C
163H
96ErF
9N
32O
41S
3Zn
16)(H
2O)
5(C
3H
7NO)
3で計算(実測) C: 41.15 (41.49), H: 2.71 (2.86), N: 9.76 (10.16)。
【0043】
光物理的測定
【0044】
ルミネッセンスデータを2.4mm内径の石英キャピラリー又は石英スプラジル(Suprasil)セル中に入れたサンプルに対して収集した。発光及び励起スペクトルを、Horiba-Jobin-Yvon Fluorolog 3 分光蛍光光度計で、可視光電子増倍管(PMT) (220-800 nm, R928P; Hamamatsu)、77 Kに冷却された NIR 固相InGaAs ディテクタ (800-1600 nm, DSS-IGA020L; Jobin-Yvon)又はNIR PMT (950-1450 nm, H10330-45; 950-1650 nm, H10330-75; Hamamatsu)のいずれかを装備したもので測定した。すべてのスペクトルは機器関数に関して補正した。
【0045】
ルミネッセンス寿命をNd:YAGレーザ(YG 980; Quantel)により提供される355nmでの励起下に決定し、その間、シグナルは上記のPMT (H10330-75)によりNIRで検知された。ディテクタからの出力信号は、その後、500MHzバンドパスデジタルオシロスコープ (TDS 754C; Tektronix)にフィードされ、その後、Origin 8(登録商標)で処理するためにPCに移送された。ルミネッセンス寿命は少なくとも3回の独立した測定の平均である。
【0046】
NIRの量子収率は積分球(GMP SA)を用いた絶対法によりFluorolog 3 分光蛍光光度計において決定された。各サンプルを若干異なる実験条件下に数回測定した。量子収率決定の見積実験誤差は10%である。
【0047】
光物理的特性
【0048】
配位子quinHAはキノリン部分の内部でのπ*←π遷移によるUV領域の幾つかの吸収バンドを示す。
図2に示されるとおり、長波長吸収カットオフは340nmに位置される。メタラクラウンフレームワークLn(III)[12-MC-4]2[24-MC-8]の脱プロトン化及び生成時に、広い吸収は見かけの最大値を380 nm (ε≒5.5・10
4 M
-1 cm
-1)及びカットオフを470 nmに有して近可視領域で現れる。
図2において、結果はGd(III)、Nd(III)、Yb(III)及びEr(III)について示している。これらの結果は、Zn(II)が金属から配位子への電荷移動(MLCT)又は配位子から金属への電荷移動(LMCT)のいずれにも参加せず、そして吸収スペクトルがランタニド(III)イオンの選択とは独立している限り、このバンドはquinHA配位子の配位子ベース電荷移動に起因するものと考えられることを示す。
【0049】
図3に示されるとおり、室温にて290nmでのUV励起時に、quinHAは任意の検知可能な発光を示さなかった。77Kにて、強い緑色発光が510nmで中心となり、325〜460nm範囲に弱いバンドを有した。そのバンドは100μsの遅れを強化したときに消失し、それにより、それは短寿命蛍光に指定されうる一方、緑色発光はりん光である。0−0遷移時に決定されるquinHAの三重項のエネルギーは、それゆえ、21 000 cm
-1 (476 nm)と評価されうる。
【0050】
Gd(III)の基底状態と励起状態との間のエネルギーギャップは非常に高く、それゆえ、300〜400nm 励起で対応するメタラクラウン錯体中のGd(III)イオンを増感させることは不可能である。この特徴はエネルギー移動の非存在下でのメタラクラウン錯体のLn(III)イオンへのエネルギーレベルを決定するために使用されうるものと考えられる。Gd(III)メタラクラウン錯体は室温にて340nmでの配位子ベース電荷移動へのUV励起に暴露され、それにより、580〜590 nmに最大値を有する弱くて広いバンド発光をもたらした(
図3)。77Kへ温度を低下させることで、バンドを若干鋭くし、最大値を545〜555nmにシフトした(
図3)。
図3に示されるとおり、510nmへのさらなる青色シフトは100μsの時間遅れを課したときに観測された。Gd(III)メタラクラウン錯体のスペクトルから決定される三重項状態の位置は実験誤差範囲内でquinHAで同一で、20 920 cm
-1 (478 nm)であった。最も低く励起された一重項及びリガンドベースの電荷移動(CT)状態の位置は、それぞれquinHA及びGd
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]の吸収スペクトル及び発光(蛍光)スペクトルの交点から決定され、29 850 cm
-1 (335 nm)及び21 560 cm
-1 (565 nm)に位置することが発見された。Yb(III), Nd(III)及びEr(III)ランタニドイオンのエネルギーレベルに関するquinHAの配位子エネルギーレベル(一重項、三重項及びCT)及び可能なエネルギー移行パスの提案模式図を
図4に示す。
【0051】
ルミネッセンススペクトルを、420nm又は370nmでの励起を用いて固体状態及び溶液(CH
3OH/CD
3OD)中のLn(III)メタラクラウン錯体(Ln(III) = Yb、Nd、Er)に関して記録した。すべての試験されたメタラクラウン錯体はそれぞれYb3+, Nd3+及びEr3+化合物に関して
2F
5/2→
2F
7/2 (
図5)、
4F
3/2→
4I
J (J = 9/2, 11/2, 13/2) (
図6)及び
4I
13/2→
4I
15/2 (
図7)遷移から生じるNIR範囲に特徴的な発光を示す。希釈されたメタノール溶液(0.1 mg/mL)の励起スペクトルは対応する吸収スぺクトルによく適合するが(
図2を参照されたい)、濃度を増加させ(1 mg/mL)、そして固体状態サンプルでは、より長い波長へのバンドの拡張が観測された。定量的な光物理的パラメータを表1に要約する。
【表1】
【0052】
Nd(III)及びEr(III)メタラクラウン錯体の固体状態及び重水素メタノール(すなわち、CD
3OD, メタノール-d
4)中での量子収率はC−H含有有機配位子を有するランタニド化合物の中で現在まで報告された最も高いものであると考えられる。Yb(III)メタラクラウン錯体の量子収率は最も高い公開されている値に近かった。
【0053】
Yb(III)メタラクラウンを用いたNIR落射蛍光顕微鏡観察
【0054】
生物学的条件下に光学画像形成剤として維持しそして操作することができるランタニド (III)メタラクラウン錯体の能力を示すために、HeLa (ヒト上皮性卵巣癌)細胞に対する2つの落射蛍光顕微鏡観察を行い、そして下記に記載した。Yb(III)メタラクラウンの調製及びNIR落射蛍光顕微鏡観察の記載は両方の実験で適用可能である。
【0055】
Yb(III)メタラクラウン溶液又はビーズの調製
【0056】
Yb
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]を上記のとおりに調製し、適当な濃度でDMSO中に溶解させ、そしてそのまま使用し、又は、ビーズ中に取り込むためにビーズとともにインキュベートした。
【0057】
NIR落射蛍光顕微鏡観察
【0058】
EMCCD Evolve 512測光用カメラ(Roper Scientific)を装備したAxioオブザーバZ1倒立型蛍光顕微鏡(Zeiss, Le Pecq, France)を用いてNIR落射蛍光顕微鏡観察を行った。EMCCD Evolve 512測光用カメラは取得ソフトウエアAxiovision (Zeiss)を駆動するコンピュータに結合された。倒立型顕微鏡はZeiss対物レンズ(浸漬Plan Apochromat 63x (開口数 (NA)=1.4)、Plan Neofluar 40x (NA = 0.75), Plan Apochromat 20x (NA = 0.8)) を備えていた。Zeiss HXP-120光源(ハロゲン化金属)を励起装置として使用し、そして以下のとおりにUV キューブフィルタユニットと組み合わせた:励起のために377 nmバンドパス50 nm フィルタ及びNIR範囲でのYb(III)発光のためのロングパス805 nm フィルタ。
【0059】
NIR落射蛍光顕微鏡観察−実験1
【0060】
HeLa細胞をATCC (Molsheim, France)から得て、そして5%CO
2加湿雰囲気中で37℃にて成長させた。3〜4日毎に、5x10
5 細胞を25 cm
2 プラスチックフラスコ中に播いた。細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン及び1% L-グルタミンを補充し、1%の100x非必須アミノ酸溶液を備えた最小必須培地(MEM)中で培養した。試験一日前に、7x10
3 個の細胞を8ウエルLab Tek Chamberカバーグラス(Nunc, Dutsher S.A., Brumath, France)中に播いた。
【0061】
幾らかの細胞を、その後、2% FBS及び1%のジメチルスルホキシド(DMSO)が補充されたOpti-MEM(登録商標)培地(Invitrogen Corporation)中に希釈された1μMのYb
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]とともにインキュベートした。37℃で24時間後に、細胞を冷たいホスフェートバッファー塩類溶液(PBS)で2回濯ぎ、そして細胞培地を変更し、そしてフェノールレッドを含まないOpti-MEM(登録商標)培地により置き換えた。対照物では、他のHeLa細胞を同様に処理したが、Yb
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]を添加しなかった。これらの細胞を本明細書中で未処理細胞と呼ぶ。
【0062】
NIR落射蛍光顕微鏡を用いて、Yb
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]とともに24時間インキュベートした後の処理済み細胞及び未処理細胞を観察した。明視野への暴露時及び励起(λ
ex = 377 nm 、50 nm バンドパスフィルタ)への暴露時の処理細胞及び未処理細胞の画像を得た。
図8Aは明視野画像であり、
図8Bは励起への500msの暴露後に得られるNIR範囲(ロングパス805 nm フィルタ)の処理済み細胞の発光信号画像である。
図8Cは
図8A及び8Bを合成したものである。Yb
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]とともにインキュベートされたHeLa細胞の励起時に、NIR範囲の発光は明瞭に検知された。これは未処理細胞と対照的であった。
図8Dは明視野画像であり、そして
図8Eは励起への500msの暴露後に得られるNIR範囲(ロングパス805 nm フィルタ)の未処理細胞の発光信号画像である。
図8Fは
図8D及び8Eを合成したものである。
図8E及び8Fの両方に示されるとおり、未処理HeLa細胞のNIR範囲の発光は検知されなかった。
【0063】
NIR落射蛍光顕微鏡観察−実験2
【0064】
10% 熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)、1%の100x 非必須アミノ酸溶液、1%のL-グルタミン(GlutaMAX)及び1%のストレプトマイシン/ペニシリン抗生剤を補充したダルベッコ・フォークト変法イーグル最小必須培地(Dulbecco's modified Eagle's medium) (DMEM)中で、ATCC (Molsheim, France)から得たHeLa細胞株を培養した。細胞を8ウエルLab Tek Chamberカバーガラス(Nunc, Dutsher S.A., Brumath, France)に3×10
4 細胞/ウエルの密度で捲き、そして37℃で5%加湿CO
2 雰囲気中で培養した。24時間後に、細胞培地を取り出し、そして細胞を氷冷Opti-MEM(登録商標)で2回洗浄した。ある量の細胞を、37℃で5% CO
2 雰囲気中で2%のFBSが補充されたOpti-MEM(登録商標)中でYb
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]の5μM 溶液とともに11時間〜12時間インキュベートした。他の細胞を、37℃で5% CO
2 雰囲気中で2%のFBSが補充されたOPTIMEM培地中でYb
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]を取り込んだビーズとともにインキュベートした。落射蛍光画像形成の前に、1% Tween 20を含む氷冷PBS又は/及び氷冷PBSで細胞を2回洗浄し、それにより、非特異的に結合したメタラクラウンを除去した。
【0065】
NIR落射蛍光顕微鏡を用いて、Yb
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]の5μM溶液中で処理した細胞を12時間後に観察した。励起波長への暴露は800msであった。明視野画像を
図9A中に示し、発光画像を
図9B中に示し、そして合成画像(9A及び9B)を
図9C中に示す。
【0066】
NIR落射蛍光顕微鏡を用いて、Yb
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]を含むビーズで処理した細胞を11時間後に観察した。励起波長への暴露は13sであった。明視野画像を
図10A中に示し、発光画像を
図10B中に示し、そして合成画像(10A及び10B)を
図10C中に示す。
【0067】
NIR落射蛍光顕微鏡を用いて、Yb
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]を含むビーズ中で処理した細胞を11時間後に観察した。励起波長への暴露は8 sであった。明視野画像を
図11A中に示し、発光画像を
図11B中に示し、そして合成画像(11A及び11B)を
図11C中に示す。
【0068】
両方のNIR落射蛍光顕微鏡観察実験において、Yb
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]とともにインキュベートした処理済み細胞のNIR範囲でのYb(III)発光は短い暴露時間を用いて明確に検知された。実験1及び2はYb
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]がHeLa生細胞に適する実験条件で使用されうることを示す。短い暴露時間でのYb
3+[12-MC-4]
2[24-MC-8]発光の観察は、これらの化合物が発光効率を損失することなく、生物学的条件で操作することができることを確認する。このため、本明細書中に開示されるメタラクラウン錯体を用いてNIR範囲で非常に敏感な検知を行うことができる。
【0069】
本明細書中に開示されるランタニドメタラクラウン錯体は、少なくとも部分的にユニークである。というのは、配位子ベースの遷移(配位子ベースの電荷移動状態を含む)のためにUV−可視波長の広範囲にわたる吸収性を示すからである。Ln(III)イオンからのNIR発光は、これらの配位子遷移の励起により増感されるものと考えられる。さらに、ランタニドメタラクラウン錯体の特異的な構造は多機能性であり、そしてLn(III)イオンと有機配位子との間で比較的に大きい距離を有することができる。
【0070】
本明細書中に提供された範囲は、記載範囲及び記載範囲内の任意の値又は副次範囲を包含することは理解されるべきである。例えば、約12時間〜約24時間は約12時間〜約24時間の明確に示された制限値だけでなく、14.25時間、16時間、21.5時間などの個々の値及び15時間〜20時間などの副次範囲をも包含するものと解釈されるべきである。さらに、値を記載するために「約」を使用するときに、これは記載値からの小さい変動(+/- 5%まで)を包含することが意図される。
【0071】
「1つの例」、「別の例」、「ある例」などの本明細書全体にわたる参照は、該例との関係で記載される特定の要素(例えば、特徴、構造及び/又は特性)は本明細書中に記載される少なくとも1つの例に含まれ、そして他の例では存在しても又はしなくてもよいことを意味する。さらに、任意の例に関して記載される要素は文脈が明らかに指示しない限り、様々な例で任意の適切な様式で組み合わされることができることは理解されるべきである。
【0072】
本明細書中に開示される例を記載しそして請求する際に、単一形「a」、「an」及び「the」は、文脈が別の指示をしない限り、複数の指示物を包含する。
【0073】
幾つかの実施例を詳細に記載してきたが、開示の実施例が変更されうることは当業者に明らかであろう。それゆえ、上記の記載は非限定的であると考えられるべきである。