(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロセッサは、複数のそれぞれの温度値用の前記フィルタのパラメータ値を決定し、該パラメータ値に曲線を適合させて、前記フィルタの別々のパラメータ値をそれぞれ定義する等式を決定し、温度値用のフィルタを、該温度値を前記等式に適用することによって構成する請求項1のプロセスフィールド装置。
前記複数のそれぞれの温度値用の前記フィルタは、前記統計的値の周波数応答が目標周波数応答に一致するようにそれぞれ構成される請求項2のプロセスフィールド装置。
前記目標周波数応答は、前記センサと同じレンジで、かつ選択された温度で動作するモデルセンサに関係付けられた周波数応答からなる請求項3のプロセスフィールド装置。
前記目標周波数応答は、前記センサとは異なるレンジで、かつ選択された温度で動作するモデルセンサに関係づけられた周波数応答からなる請求項3のプロセスフィールド装置。
前記フィルタ構成モジュールは、複数のそれぞれの温度値用のフィルタのパラメータ値を決定し、該パラメータ値に曲線を適合させて、前記フィルタの別々のパラメータ値をそれぞれ定義する等式を決定し、温度値用のフィルタを、該温度値を前記等式に適用することによって構成する請求項7の感知システム。
前記フィルタは、それぞれが前記フィルタの別々のパラメータを定義するそれぞれの等式に、前記センサの温度を示す温度値を適用することによって構成された温度依存フィルタからなる請求項13の制御システム。
前記フィルタの別々のパラメータ値を定義するそれぞれの等式は、異なる温度で決定されたフィルタのパラメータ値に曲線を適合させることによって決定される請求項14の制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、異常状態防止システム35に結合された要素によって実行される、統計的データの収集や処理、およびある場合での異常状態検出の一手法を説明するための、プロセスプラントの一部50を示す。異常状態防止システムは、統計的収集および処理ブロックを含むことができる形態およびデータ収集アプリケーション38、視聴つまりインタフェースアプリケーション40、および命令エンジン開発実行アプリケーション42を含む。状態防止システム35は、さらに、種々のプロセスパラメータから生成される統計的データを蓄える統計プロセス監視データベース43を格納する。
【0011】
図1に図示されたプロセスプラントの一部50は、入出力(I/O)カードつまりデバイス68および70を介して一つ以上のフィールド装置64,66に接続された一つ以上のプロセス制御装置60を有する分散プロセス制御システム54を含む。その入出力(I/O)カードは、どんな所望の通信または制御プロトコルに適合する、どんな所望タイプの入出力装置であってもよい。フィールド装置64は、ハート(HART)フィールド装置として例示され、フィールド装置66の例示は、フィールドバス(Fieldbus)フィールド装置であるが、これらのフィールド装置は、他のどのような通信プロトコルでも用いることができ、例えば、イーサネット(登録商標)、光ファイバおよび無線HART(登録商標)などの有線または無線通信構造により通信することができる。さらに、フィールド装置64と66は、例えば、センサ、バルブ、送信機、位置決め装置のような、どのようなタイプの装置であってもよく、どのような所望のオープンまたは専用的な、または他の通信、あるいはプログラミングプロトコルに適合させてもよく、I/O装置68と70は、フィールド装置64と66によって用いられる所望のプロトコルと互換性がある。
【0012】
いずれにしても、構造エンジニア、プロセス制御オペレータ、保全要員、プラントマネージャ、管理者などのプラント要員によってアクセス可能な一つ以上のユーザインタフェースまたはコンピュータ72と74(これらは、どのようなタイプのパソコン、ワークステーションなどでもよい)が、どのようなものでもよい所望のハードワイヤードあるいはワイヤレス通信構造を使用して、また、所望の、あるいは、例えばイーサネット(登録商標)のような適当な通信プロトコルを用いて実行される通信ラインまたはバスを経由してプロセス制御装置60に結合される。さらに、データベース78は、通信バス76に結合されて、構造情報およびオンラインプロセス変数データ、パラメータデータ、状態データ、およびプロセスプラント10内のプロセス制御装置60およびフィールド装置64と66に関連する他のデータを収集して蓄えるデータヒストリアンとして動作する。したがって、データベース78は、プロセス形態モジュールを含む現在の形態を蓄える形態データベースとして動作し、また、プロセス制御装置60およびフィールド装置64と66内にダウンロードされて格納されるプロセス制御システム54のための制御形態情報を蓄える。同様に、データベース78は、プロセスプラント内のフィールド装置64と66によって収集および/または生成される統計的データ、あるいはフィールド装置64と66によって収集されるプロセス変数から決定される統計的データを含む履歴の異常状態防止データを蓄える。
【0013】
プロセス制御装置60、I/O装置68と70およびフィールド装置64と66は、典型的には、時々、過酷なプラント環境内に配置され、分散される一方、ワークステーション72と74およびデータベース78は、制御室、保全室、またはオペレータや保全要員などによって容易にアクセス可能な、他の過酷度がより低い環境内に位置させられるのが普通である。
【0014】
一般的に言えば、プロセス制御装置60は、一つ以上の制御装置アプリケーションを格納して実行し、いくつもの異なった、独立に実行される制御モジュールまたはブロックを用いて制御策を実行する。制御モジュールの各々は、一般的に機能ブロックと呼ばれるもので作られ、そこでは、各々の機能ブロックは、全体の制御ルーチンの一部つまりサブルーチンであって、他の機能ブロックと連携して動作し(リンクと呼ばれる通信を経由して)、プロセスプラント内でプロセス制御ループを実施する。周知であるように、オブジェクト指向プログラミングプロトコルにおけるオブジェクトである機能ブロックは、一般的に、送信機、センサまたは他のプロセスパラメータ測定装置に結合される入力機能、PID、ファジー論理などの制御を実行する制御ルーチンと結合されるような制御機能、あるいはプロセスプラント内である物理的機能を実行するための弁などの装置の動作を制御する出力機能、の一つを実行する。もちろん、モデル予測制御装置(MPCs)や最適化器などのような、ハイブリッドや他のタイプの複合機能ブロックも存在する。フィールドバスプロトコルおよびデルタ(DeltaV「登録商標」)システムプロトコルは、オブジェクト指向プログラミングプロトコル内で設計されて実施される制御モジュールおよび機能ブロックを使用するが、この制御モジュールは、例えば、逐次的機能ブロックやラダーロジックなどを含む、どんな所望の制御プログラミングスキームを用いて設計されてもよく、機能ブロックまたは他の特別なプログラミング手法を用いて設計されたものに限定されない。
【0015】
図1に図示されているように、メンテナンスワークステーション74は、プロセッサ74A、メモリ74Bおよびディスプレイ装置74Cを含む。メモリ74Bは、異常状態防止アプリケーション38と40と42を格納し、プロセッサ74Aは、それらのアプリケーションを実行して、ディスプレイ74C(または、プリンタなどあらゆるその他のディスプレイ装置)を介してユーザに情報を提供できるようにする。
【0016】
さらに、
図1に示されているように、フィールド装置64と66のいくつか(すべての場合もある)は、データ収集および処理ブロック80と82を含む。一方、ブロック80と82は、
図1では、進歩した診断ブロック(ADBs)として記載されおり、これらのブロックは、フィールドバス装置内で統計的データを収集し処理するためにフィールドバス装置に付加することができるファンデーションフィールドバス機能ブロックとして知られている。こここで、ブロック80と82は、装置データを収集して、このデータに対する一つ以上の統計的測度またはパラメータを算出もしくは決定するプロセス装置内に位置された、どのようなタイプのブロックつまりモジュールであってもよく、これらを含んでもよく、これらのブロックがフィールドバス装置内に位置されるかどうか、フィールドバスプロトコルに適合するかどうかは問題でない。
図1のブロック80と82は、装置64の一つと装置66の一つの中に位置するものとして図示されているが、これら、あるいは同様のブロックは、どのような数のフィールド装置64と66内に位置させることができ、プラント内に位置されて複数のセンサもしくは送信機および制御装置60と通信する中間装置内またはワークステーション72または74内の制御装置60、I/O装置68,70などの他の装置内に位置させることができる。さらに、ブロック80と82は、どのようなサブセットの装置64と66内にあってもよい。
【0017】
一般的に言えば、ブロック80と82またはこれらブロックのサブ要素は、プロセス変数データなどのデータを収集して、データを統計的処理もしくは解析する。例えば、ブロック80は、4つの統計的処理監視装置(SPM)ブロックすなわちユニットSPM1〜SPMを含み、それらは、プロセス変数または他のデータを収集し、収集されたデータに一つ以上の統計的計算を施して、例えば、収集されたデータの平均、中央値、標準偏差、二乗平均平方根(RMS)、変化速度、範囲、最小値、最大値などを決定し、および/または収集されたデータにおけるドリフト、バイアス、スパイクなどを検出する。生成された特定の統計データも、それが生成される方法も、決定的なものではない。したがって、上記した特定のタイプに加えて、またはこれらに代えて、異なるタイプの統計データが生成されてもよい。さらに、これらのデータを生成するために、周知の手法を含む種々の手法が用いられてもよい。ここでは、少なくとも一つのプロセス変数または他のプロセスパラメータで統計的プロセス監視を実行する機能を表現するために、統計的プロセス監視(SPM)ブロックという用語が用いられている。しかし、それは、その装置内またはデータを収集する装置外で、どのような所望のソフトウェア、ファームウェアまたはハードウェアによって実行されてもよい。
【0018】
別の例では、
図1で送信機82に結合して図示されているブロック82は、プロセス変数または送信機内の他のデータを収集し、収集されたデータに対して一つ以上の統計的計算を実行して、例えば、収集されたデータの平均、中央値、標準偏差などを決定する4つのSPMブロックつまりユニットSPM1~SPM4を含む。ブロック80と82は、それぞれが4つのSPMブロックを含むように図示されているが、ブロック80と82は、その中に、データを収集してそのデータに関連する統計的測度を決定するために、どのような数のSPMブロックを有してもよい。ここで議論されたSPMブロックは、既知のファンデーションフィールドバスSPMブロックでよいが、統計的プロセス監視(SPM)ブロックという用語は、ここでは、プロセス変数データなどのデータを収集し、そして、このデータに、ある統計的処理を施して、平均、標準偏差などの統計的測度を決定するあらゆるタイプのブロックまたは要素を意味するために用いられている。その結果として、この用語は、この機能を実行するソフトウェアまたはファームウェアまたは他の要素をカバーするものであり、これらの要素は、機能ブロックまたは他のタイプのブロック、プログラム、ルーチンまたは要素の形態であり、ファンデーションフィールドバスプロトコル、または、例えば、プロファイバス(PROFIBUS)、ワールドフィップ(WORLDFIP)、デバイスネット(Device−Net)、エーエスインタフェース(AS−Interface)、ハート(HART)、キャン(CAN)プロトコルなどの他のプロトコルに適合してもよいし、適合しなくてもよい。
【0019】
フィールド装置内のSPMブロックのパラメータは、バスまたは通信ネットワーク76および制御装置60を通してワークステーション74のような外部クライアントで利用できるように作成される。さらに、または代替的に、ブロック80と82内のSPMブロックによって収集あるいは生成されるパラメータや他の情報は、例えば、通信サーバ89を介してワークステーション74で利用できるよう作成される。この接続は、無線接続、ハードワイヤード接続、断続(intermittent)接続(一つ以上の携帯装置を用いるもの)、あるいはどのような所望または適当な通信プロトコルを用いる、どのような他の所望の通信接続でもよい。もちろん、ここで記述された通信接続のどれでも、普通または調和したフォーマットで異なるタイプの装置から受け取ったデータを統合させるために通信サーバを用いることができる。
【0020】
現在のSPMベースの設備では、中央値/平均、および標準偏差のような種々のSPMパラメータに対して閾値を定めることによって警報が設定される。様々な感知範囲で動作するように設定されるフィールド装置では、それらの警報制限値のための様々な閾値が用いられなければならないことが知られている。一般的に、プロセス変数の値における、より小さい変化を検出するために用いられるレンジで動作するセンサは、より大きなレンジで動作するセンサよりも、小さい警告制限値を有しなければならない。
【0021】
本発明者等は、SPMをフル活用するために、送信機温度、レンジ、および製造バラツキの影響、並びにインパルスライン温度の影響が最小化されるべきであることを、さらに見つけ出した。これは、複数の異なる動作条件の下で、より多くの反復可能性のある測定、および、より良好なSPM警報を提供する。
【0022】
図2は、3つの別々の送信機に対する生の差圧センサ信号の一例を示している。
図3は、
図2の差圧センサ信号のそれぞれの標準偏差を示している。
図3に示されているように、送信機3と送信機1,2の間での標準偏差の変動は、送信機3が、送信機1,2でのピーク304よりも極端に低い標準偏差ピークを有する立ち上がり不安定点300の期間で重大である。このように、
図3は、同じレンジかつ同じ温度で動作する送信機間で、標準偏差に変動があることを示している。
【0023】
標準偏差の値は、また、導管またはタンク内のプロセス変動の周波数によっても影響される。より高い周波数では、センサは、プロセス変数の変化を感知するほど十分に素早く応答することができず、その結果、より高い周波数でのプロセス信号の標準偏差は低下する傾向にある。言い換えれば、標準偏差は、コンスタントでない周波数応答を有する。さらに、標準偏差は、センサの温度とともに変化する。一般に、センサは、それらが、より冷たくて、全周波数に亘って、より低い温度でより低い標準偏差をもたらすとき、よりゆっくりと応答する。
【0024】
図4は、温度ごとの差圧センサの標準偏差の周波数応答を示している。
図4において、周波数は、水平軸400に沿って示され、差圧の標準偏差は、縦軸402に沿って示されている。周波数応答曲線404、406、408、410および412はそれぞれ、185°F、130°F、75°F、20°Fおよび−40°Fでの差圧センサの標準偏差周波数応答を表している。
図4は、また、大きさ1のサイン波の標準偏差を表す理想標準偏差414を示している。理想標準偏差は、全ての周波数および温度に対して0.71の値を有する。
【0025】
センサによって生成される標準偏差の周波数応答は、0ヘルツで有意な値を有するので、好ましくない。このために、標準偏差の周波数応答が直接的に用いられたとすると、プロセスにおける段階的な変化は、標準偏差がこのような段階的変化に強く応答するので、警報をトリガすることになる。この技術では、これを回避するため、標準偏差の周波数応答が0ヘルツで0になるように、標準偏差を計算する前にセンサ信号に対してハイパスフィルタを適用する。
【0026】
図5は、複数の異なる温度での、濾波されたセンサ信号の標準偏差のグラフを示している。
図5において、周波数は、水平軸500に沿って示され、ハイパスフィルタで濾波された値の標準偏差は、縦軸502に沿って示されている。
図5において、グラフ504、506、508、510、および512は、それぞれ華氏185°、130°、75°、20°、および−40°で動作するセンサに対する、濾波された信号の標準偏差の周波数応答を表している。
図5から分かるように、ハイパスフィルタを適用した後でも、標準偏差の周波数応答は、センサの温度に依存して大きく変化する。その結果、センサの温度が変化することがあるか、または、同様のセンサが異なる動作温度下のプロセスプラント内で用いられる環境では、標準偏差に対して警報を設定することが困難である。
【0027】
図6および7は、差圧センサの動作レンジの変化による差圧センサ信号の標準偏差の周波数応答の変化を示している。
図6において、周波数は、水平軸600に沿って示され、標準偏差は、縦軸602に沿って示されている。グラフ604、606および608はそれぞれ、レンジ0、レンジ1およびレンジ2で動作するセンサに対する標準偏差の周波数応答を示している。
図6に見られるように、差圧センサは、異なるレンジで動作したとき、極端に異なる標準偏差周波数応答を有する。
図7は、標準偏差が決定される前にハイパス差フィルタによって信号が濾波されたときの、
図6の周波数応答のグラフを示している。
図7において、周波数は、水平軸700に沿って示され、標準偏差の値は、縦軸702に沿って示されている。グラフ704、706および708はそれぞれ、レンジ0、レンジ1およびレンジ2で動作するセンサによって生成された、濾波された信号の標準偏差の周波数応答を示している。
図7に見られるように、濾波された信号の標準偏差周波数応答もまた、異なるレンジで動作する複数の差圧センサに対して極端に異なる。
【0028】
ここで説明される実施形態は、温度、センサレンジ、および製造バラツキによる変動を除去するために、標準偏差周波数応答を正規化するように設計された動的ハイパスフィルタを提供する。標準偏差周波数応答を正規化することによって、ここで説明される実施形態は、複数の異なる温度、複数の異なるレンジで動作するセンサおよび複数の異なる方法で製造されたセンサに対して共通の標準偏差警報閾値を設定することを可能にする。
【0029】
図8は、本発明の一実施形態に従う、
図1の装置64およびワークステーション74の回路図を示している。装置64は、センサモジュール232および回路モジュール234を含むように示されている。センサモジュール232は、センサ246、アナログ電子回路およびセンサプロセッサ電子回路を含む。装置回路モジュール234は、出力電子回路を含む。センサモジュール232内のアナログ電子回路は、調整回路252、変換回路254および白金抵抗温度計(PRT)256を含む。センサプロセッサ電子回路は、センサマイクロプロセッサ258、メモリ260およびクロック262を含む。出力電子回路は、出力マイクロプロセッサ264、メモリ266および通信回路268を含む。ワークステーション74は、マイクロプロセッサ270、入力部272、出力部274、メモリ276、周辺機器278および通信インタフェース280を含む。電源222は、ワークステーション74に電力を供給するとともに、ワークステーション74を通して装置64に電力を供給する。
【0030】
本実施形態では、センサ246は、例えば、静圧、差圧、温度、およびバルブ位置のようなプロセス変数を感知する。簡単化のために一つだけのセンサが示されているが、装置64は、複数の異なったセンサを有する場合がある。センサ246からのアナログ出力は、調整回路252に送信されて、増幅および調整(例えば濾波)される。変換回路254は、センサ246によって生成されたアナログ信号をデジタル信号に変換して、マイクロプロセッサ258によって使用可能にする。
図8に示されているように、変換回路は、電圧−デジタル(V/D)および容量−デジタル(C/D)変換器の両方を含む。PRT256は、センサ246の近くの温度を示す温度信号を変換回路254に提供し、これによって、センサ信号は、温度変化に対して補償されることが可能となる。マイクロプロセッサ258は、変換回路254から、PRT256からのデジタル化された温度信号を含むデジタル化かつ調整されたセンサ信号を受け取る。マイクロプロセッサ258は、メモリ260内に格納された補正定数を用いて、センサ特有の誤差および非直線性に対してセンサ信号を補償し、そして直線化する。クロック262は、マイクロプロセッサ258にクロック信号を提供する。デジタル化され、補償かつ訂正されたセンサ信号は、それからマイクロプロセッサ264に伝送される。
【0031】
マイクロプロセッサ264は、センサ信号を解析してプロセス状態を決定する。特に、メモリ266(不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)である場合がある)は、感知されたプロセス変数の大きさに基づいて、質量流量のようなプロセス状態の特定値を決定するために用いられるアルゴリズム係数が格納されたルックアップテーブルを含む。さらに、プロセス流体を搬送する管のタイプや内径、およびプロセス流体の粘性や密度のようなハードウェアパラメータおよび流体パラメータが、制御ループ218を通してメモリ266内にアップロードされる。他の実施形態では、ハードウェアパラメータおよび流体パラメータに関連するデータが、ユーザインタフェース(
図8には示されていない)を通して送信機264へ直接的に入力される。さらに、種々のプロセス流体パラメータがルックアップテーブルに格納される。このプロセス流体パラメータは、他の流体パラメータおよび感知されたプロセス変数に基づいて選択されるように、プロセス変数の関数であってもよい。
【0032】
マイクロプロセッサ264は、ハードウェアパラメータ、プロセス流体パラメータ、感知されたプロセス変数およびアルゴリズム係数を用いて、実行時計算を実行する。実行時計算は、プロセス状態式を評価し、プロセス状態または質量流量のような流体の状態を決定する。計算されたプロセス状態を表しているプロセス状態信号およびセンサ信号は、通信回路268を用いる制御ループ218を通してワークステーション74に伝送される。通信回路268は、電圧調整器268A、変調器回路268B、ループ電流制御装置268Cおよび4−20mAハート(HART「登録商標」)受信機または送受信機268Dのようなプロトコル受信機を含み、送信機回路モジュール234がワークステーション74の通信インタフェースを用いて通信することを可能にする。
【0033】
NVRAM266はまた、統計的プロセス監視(SPM)のための命令を格納する。これらの命令は、プロセス状態を生成するために用いられる命令と並列的に実行される。SPM命令は、一つ以上のセンサ信号の平均/中央値、標準偏差のような統計値をセンサ信号から計算する。特に、そして以下に詳細に示されるように、SPM命令は、マイクロプロセッサ264に、ハイパスフィルタを動的に構成するステップを実行させて、SPMによって作り出された統計値に所望の周波数応答を与える。いくつかの実施形態では、構成されるハイパスフィルタは、センサの温度変化、センサのレンジ設定によるセンサ周波数応答の変動、およびセンサの製造バラツキを補償する。
【0034】
いくつかの実施形態では、NVRAM266はまた、警報閾値を保持し、マイクロプロセッサ264は、統計値が閾値を横切ったときを決定することができ、これが起こったとき、マイクロプロセッサは、通信回路268を用いてタイムスタンプとともにワークステーション74へ警報を伝達することができる。
【0035】
それに代えて、またはそれに追加して、マイクロプロセッサ264によって生成された統計値は、通信回路268を通してワークステーション74に送られる。ワークステーション74は、メモリ276に統計値を格納することができ、また、出力モニタ274上に履歴統計値を表示することができる。ワークステーション74のマイクロプロセッサ270は、統計値をメモリ276内に格納された閾値と比較することができ、統計値が閾値を横切ったときに警報を出すことができる。閾値は、与えられた閾値を上方向に、または下方向に横切られることがあることが留意されるべきである。
【0036】
ワークステーション74は、一般的には、工業プロセスの近くに設置されるポータブルコンピュータのようなパソコンであって、工業プロセスのプロセス変数およびプロセス状態を監視し、かつ調整する。ワークステーション74は、オペレータがプロセス制御入力をメモリ276に入力するのを可能にする、キーボード、マウスまたは他のユーザインタフェースのような入力部を含む。ワークステーション74は、また、ワークステーション74からデータが抽出されるのを可能にする、モニタのような出力部を含む。プリンタまたは他の一般的に用いられる装置のような周辺機器278がまた、マイクロプロセッサ264にデータを入力し、またマイクロプロセッサ264からデータを抽出するためにワークステーション74に接続されてもよい。ワークステーション74は、マイクロプロセッサ264からデータを送信し、また受信する通信インタフェース280を含む。ワークステーション74は、モジュール234の能力およびセンサ246によって発生されたセンサ信号の完全な評価および分析を提供するように構成される。
【0037】
図9は、標準偏差を計算し、かつ標準偏差を正規化するハイパスフィルタを動的に構成して用いるため、マイクロプロセッサ264によって実行されるソフトウェア要素のブロック図である。
図9において、
図8のマイクロプロセッサ258によって提供されるデジタルセンサ値のシリーズまたはシーケンスを表すセンサ測定値900は、マイクロプロセッサ264によって受け取られ、ハイパスフィルタ902に与えられて、濾波されたセンサ値904が生成される。濾波されたセンサ値904は、標準偏差計算906に与えられて、SPM標準偏差908が生成される。
【0038】
図10は、ハイパスフィルタ902を動的に構成して、標準偏差908の周波数応答を目標つまり所望の周波数応答に一致させる方法の流れ図である。ステップ1000では、センサ周波数応答測定部910が、複数の温度でセンサ周波数応答を決定する。これを行うため、センサ周波数応答測定部910は、まず、センサ温度制御部912を用いてセンサ温度を設定する。種々の実施形態では、センサ温度制御部912は、センサの温度を調整することができる。一つの実施形態によれば、センサ温度制御部912は、5つの異なる温度、185°F、130°F、75°F,20°F、および−40°Fにセンサを設定することができる。センサ周波数応答測定部910は、複数の温度のうちの一つをセンサに設定するように、センサ温度制御部912に指示する。それから、周波数応答測定部910は、例えば、流体の圧力またはレベルのような、センサによって測定される流体の特徴の中に、正弦波変化を生じさせる変換部914を活性化する。特に、センサ周波数応答測定部910は、変換部914に、特定周波数の正弦波変化を発生させる。変換部914によって与えられる入力信号に応答して生成されるセンサ信号は、それから、濾波されることなしにハイパスフィルタをバイパスする測定値900として提供される。濾波されていないセンサ値は、濾波されていないセンサ測定値の標準偏差を計算する標準偏差計算部906に供給される。それから、濾波されていないセンサ測定値の標準偏差は、センサ周波数応答測定部910に与えられる。周波数応答測定部910は、変換器914によって導入された正弦波変化の周波数に対する標準偏差値を、センサ周波数応答916の一部として格納する。
【0039】
それから、周波数応答測定部910は、流体変化の周波数を変えるように変換部914に指示し、その結果のセンサ測定値は、再び標準偏差に変換される。この新たな標準偏差は、周波数応答測定部910によって格納される。このように、周波数応答測定部910は、複数の周波数に対する標準偏差を決定することができ、これにより、与えられた温度でセンサに対する標準偏差の周波数応答を決定することができる。選択された温度で完全な周波数応答が決定されると、周波数応答測定部910は、センサの温度を新たな温度値に変えるようにセンサ温度制御部912に指示する。新たな温度値で、周波数応答測定部910は、新たな温度で標準偏差の周波数応答を得るため、種々の異なる周波数で流体を変化させるように変換部914に再び指示する。各温度に対してこれらのステップを繰り返すことにより、周波数応答測定部910は、選択された各温度に対するセンサの周波数応答を含むセンサ周波数応答916を生成する。
【0040】
ステップ1002では、マイクロプロセッサ264によって目標周波数応答が検索または計算される。一つの実施形態によれば、目標周波数応答は、選択された温度およびフィールド装置内のセンサと同じレンジで動作する一つのモデルセンサによって生成され、そしてハイパス差フィルタによって濾波されたセンサ信号の標準偏差周波数応答である。このような目標周波数応答の一例が
図11に示され、そこでは、周波数が水平軸1100に沿って示され、選択された温度でモデルセンサによって発生された濾波されたセンサ信号の標準偏差が縦軸1102上に示される。一つの実施形態によれば、選択された温度は、室温である。標準偏差周波数応答が、
図11の目標周波数応答と一致するようにフィルタを構成することによって、異なる温度で得られたセンサ測定値を濾波して、複数の温度での標準偏差の周波数応答を正規化することができる。これは、温度が変化したときにフィルタを動的に変化させることによって遂行され、センサ温度にかかわらず、同じ標準偏差周波数応答が達成される。
【0041】
他の実施形態では、目標周波数応答は、選択された温度、かつ現在のセンサのレンジに関係なく選択されたレンジで動作するモデルセンサによって発生され、そしてハイパス差フィルタによって濾波された濾波済み信号の標準偏差周波数応答である。モデルセンサは、選択されたレンジで動作するので、モデルセンサのレンジは、フィールド装置におけるセンサのレンジと異なることが時々ある。選択された温度およびフィールド装置内のセンサのレンジに関係なしに選択されたレンジで動作するモデルセンサによって発生された目標周波数応答を選択することによって、標準偏差の周波数応答を正規化することができ、それにより、装置内におけるセンサの温度および動作レンジによる変化が除去される。
【0042】
さらに他の実施形態では、目標周波数応答は、一つのコンスタントな周波数応答を有するモデルセンサとハイパス差フィルタのようなモデルハイパスフィルタとの組み合わせによって構成される標準偏差周波数応答である。
図12は、全動作温度でコンスタントな周波数応答を有するモデルセンサと差ハイパスフィルタとの組み合わせによって生成される目標周波数応答1200のグラフである。
図12の目標周波数応答が用いられると、温度、動作レンジ、および周波数によるセンサ応答の変化が正常化される。
【0043】
ステップ1004では、フィルタ適合部922が、各温度で目標周波数応答およびセンサ周波数応答から構成されたハイパスフィルタに対するフィルタパラメータを構成する。このようにして、フィルタ適合部922は、各温度に対して個別のハイパスフィルタを構成する。
【0044】
フィルタ適合部922は、まず、次のようなフィルタの周波数応答を発生してフィルタを構成する。
【0046】
ここで、D(ω)は、目標標準偏差周波数応答であり、A(ω,T)は、温度Tでのセンサ周波数応答であり、H(ω,T)は、温度Tで構成されたフィルタの周波数応答である。
【0047】
上記の式1を用いて、フィルタの周波数応答が一旦決定されると、ハイパスフィルタに対するパラメータが決定されて、そのフィルタの周波数応答が達成される。一つの実施形態によれば、そのハイパスフィルタは、次の形態をとる有限インパルス応答フィルタとして構成される。
【0049】
ここで、Nは、フィルタの次数であり、b
0、b
1、b
2、・・・b
Nは、フィルタの係数である。
【0050】
FIRフィルタのクラス内には、汎用線形相(GLP:Generalized Linear Phase)フィルタとして知られている一組のフィルタがある。線形相特性は、例えば、音声信号中の歪量を低減するので、しばしばデジタルフィルタで必要とされる。4つのタイプのGLPフィルタがある。GLPタイプ4(IV)のフィルタは、DC(0ヘルツ)で厳密に0応答を有するので、診断用に、一般的によく適するが、サンプリング周波数の1/2であるナイキスト周波数で、どのような任意の応答でも与えることができる。GLPタイプ4(IV)のフィルタは、偶数のフィルタ係数に帰着する奇数次数Nを必要とする。GLPタイプ4(IV)のフィルタは、また、b
i=b
N−iを意味する係数において非対称の特性を有する。ハイパス差フィルタy
k=(x
k−x
k−1)/2は、実際は、次数N=1の非常に単純なGLPタイプ4(IV)のフィルタである。帰納的なアプローチを用いて、本発明者等は、異なる温度の各々で、次数5のGLPタイプ4(IV)のフィルタが、等式1を用いて計算された標準偏差周波数応答に適合する良好な曲線を提供することを見つけ出した。
【0051】
次数5のGLPタイプ4(IV)のフィルタは、次のように表現される。
【0053】
ここで、y
kは、フィルタx
k,x
k−1,x
k−2,x
k−3,x
k−4およびx
k−5における出力であり、それぞれ、x
k,x
k−1,x
k−2,x
k−3,x
k−4およびx
k−5におけるセンサ測定値である。また、b
0,b
1およびb
2は、ハイパスフィルタのパラメータである。等式3中に6つの乗算操作があるが、3つの独特の係数b
0,b
1およびb
2だけがあることに留意すべきである。結果的に、フィルタ適合部922は、等式1によって計算される標準偏差周波数応答が達成されるようにフィルタを構成するとき、b
0,b
1およびb
2を決定しなければならないだけである。
【0054】
ウィンドウ設計、周波数サンプリング、加重最小二乗、等リップル、レムズ交換、およびパークス・マクレランのような、公知のどのような数値デジタルフィルタ設計アルゴリズムが、フィルタに最良に適合する、等式1内で計算される値を識別するために用いられてもよい。
【0055】
ステップ1004で決定されるb
0,b
1およびb
2の値は、ステップ1006において、各温度に対するフィルタパラメータとして格納される。
【0056】
図13、14および15は、種々の温度で標準偏差に対する所望の周波数応答を達成するために必要なb
0,b
1およびb
2の値のグラフである。
図13、14および15において、正規化された温度が、−1から1まで変化する水平軸に沿って示される。ここで、正規化された温度の値は、次のように計算される。
【0058】
図13、14および15における縦軸は、パラメータの値を表している。室温において、b
0およびb
1は、0に設定され、b
2は、−0.5に設定される。これを達成するため、すべてのパラメータの値は、b
0,b
1およびb
2が、室温でこれらの値を持つように、必要とする量によってシフトされる。b
0=0,b
1=0、そしてb
2=−0.5を確実にすることによって、ここで説明された実施形態では、ハイパスフィルタは、室温で差フィルタとして確実に動作するようになる。
【0059】
ステップ1008で、パラメータ曲線適合部926は、曲線を、
図13、14および15に示されたパラメータ値に適合させる。一実施形態によれば、正規化された温度の関数である第3次曲線が、次の式に従って各パラメータ値セットに適合される。
【0061】
ここで、tは、正規化された温度であり、a
i,
0,a
i,
1,a
i,
2,およびa
i,
3は、フィルタパラメータ曲線に対する係数であり、そして、b
iは、フィルタパラメータである。
【0062】
ステップ1010では、温度曲線から係数行列が構成され、係数行列928が生成される。この係数行列の一例は、次の等式である。
【0064】
係数行列は、必須でないが、フィルタパラメータの理解および計算の助けとなる点が留意されるべきである。
【0065】
係数行列が構成された後、フィールド装置は、センサのあらゆる温度に対してステップ1002で選択された目標周波数応答に到達するように、温度依存ハイパスフィルタを動的に構成するように準備される。ステップ1012では、PRT256によって測定されたセンサの温度を表す温度値932が、フィルタ構成部930に与えられる。ステップ1014では、フィルタ構成部930は、等式4を用いて、正規化された温度を決定する。ステップ1016では、フィルタ構成部930は、係数行列928および正規化された温度を用いて、フィルタパラメータの値b
0,b
1およびb
2を計算する。特に、等式6の係数行列は、次の温度行列を乗算する。
【0067】
ここで、Tは、温度行列であり、tは、正規化された温度である。
【0068】
ステップ1018では、フィルタパラメータがハイパスフィルタ902として格納されて測定値900に適用される。その測定値900は、NVRAM266内に格納されることがあり、あるいはプロセッサ264がプロセッサ258から取るときに処理されることがある。測定値900は、一連のセンサ値からなり、それらは、一緒になってセンサ信号を表す。ハイパスフィルタ902の出力は、濾波された信号904であって、ステップ1020で、標準偏差計算部906に適用されて、目標周波数応答を有する標準偏差908を形成する。ステップ1022では、標準偏差が、警報閾値と比較されて、標準偏差が警報閾値を横切ったならば、警報が活性化される。
【0069】
上記では、標準偏差への言及がなされたが、標準偏差に代えて、例えば、最大値および最小値のような、他の統計的計量が用いられてもよい。
【0070】
以上ではセンサの温度が用いられたが、他の実施形態では、システムの異なる部分の温度がセンサの温度に代えて用いられることがある。例えば、ある実施形態では、ハイパスフィルタを構成するため、センサに接続されたインパルスラインの温度が用いられることがある。一つの特定の実施形態によれば、バルブのキャビテーションを感知するために、バルブの近くに圧力センサが位置させられる。このような実施形態では、圧力センサは、インパルスラインを通してバルブに接続される。インパルスラインの温度を測定することにより、圧力センサ信号から生成されるSPMデータに影響するインパルスライン中の温度変化を補償するように、ハイパスフィルタを構成することができる。これは、送信機またはフィールド装置上に代わるシステムレベル上の補償の一例である。
【0071】
本発明は、好ましい実施形態を参照して記述されたが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく形式および詳細を変化することができることを認識するであろう。