特許第6568091号(P6568091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6568091射出成形金型、射出成形金型を備える射出成形機工具、それらの使用方法および得られる物体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568091
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】射出成形金型、射出成形金型を備える射出成形機工具、それらの使用方法および得られる物体
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/73 20060101AFI20190819BHJP
   B29C 33/04 20060101ALI20190819BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   B29C45/73
   B29C33/04
   B22D17/22 B
【請求項の数】21
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-551024(P2016-551024)
(86)(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公表番号】特表2016-536180(P2016-536180A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2014073707
(87)【国際公開番号】WO2015063327
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2017年10月25日
(31)【優先権主張番号】13191336.0
(32)【優先日】2013年11月4日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】14162238.1
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519150946
【氏名又は名称】プラスティック アンバウンド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フランクソン, オロフ
(72)【発明者】
【氏名】アクセルソン, ロベルト
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−246013(JP,A)
【文献】 特開昭59−232808(JP,A)
【文献】 特開2010−36588(JP,A)
【文献】 特表平11−507300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/73
B22D 17/22
B29C 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形金型(1)であって、
− 1つまたは複数の金型キャビティ(8a、8b、8c、8d)の第1の金型キャビティ半片(8a’、8b’、8c’)を含む第1のインジェクタ金型プレート面(4)、および射出成形工具(54)に取り付けられる反対側の第2のインジェクタ金型プレート面(5)を有するインジェクタ金型プレート(2)と、
− 前記1つまたは複数の金型キャビティ(8a、8b、8c、8d)の第2の金型キャビティ半片(8a’’、8b’’、8c’’、8d’’)を含む第1のエジェクタ金型プレート面(6)、および前記射出成形工具(54)に取り付けられる反対側の第2のエジェクタ金型プレート面(7)を有するエジェクタ金型プレート(3)であり、
− 前記第1のインジェクタ金型プレート面(4)は前記第1のエジェクタ金型プレート面(6)の方へ向いており、プラスチック材料の射出中に前記インジェクタ金型プレート(2)と前記エジェクタ金型プレート(3)とが密接しているとき、前記1つまたは複数の金型キャビティ(8a、8b、8c、8d)の範囲を定めるエジェクタ金型プレート(3)と、
− 前記射出成形金型(1)の少なくとも焼戻し媒体入口(23;25)を前記射出成形金型(1)の焼戻し媒体出口(24;26)に接続する少なくとも1つの焼戻し媒体チャネル(11;14)と
を備え、
− 前記少なくとも1つの焼戻し媒体チャネル(11;14)が、前記第2のインジェクタ金型プレート面(5)および前記第2のエジェクタ金型プレート面(7)の領域を横断することにより、前記1つまたは複数の金型キャビティ(8a、8b、8c、8d)の1つまたは複数の上方で伸びる流路を画定しており、前記少なくとも1つの焼戻し媒体チャネル(11;14)が、前記第2のインジェクタ金型プレート面および前記第2のエジェクタ金型プレート面の各金型プレート面(5;7)内に自由開口部(30;33)を画定している射出成形金型(1)において、
前記インジェクタ金型プレートまたは前記エジェクタ金型プレートの各々が、1つまたはいくつかの焼戻し媒体チャネルを有し、この各々は、チャネル壁に沿って画定されている急カーブの単一連続シケインであり、かつこの全長に沿って縦方向開口部を有し、前記射出成形金型が前記射出成形工具(54)に取り付けられると、前記開口部は閉じられることを特徴とする射出成形金型(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの焼戻し媒体チャネル(11;14)が、前記焼戻し媒体入口から前記焼戻し媒体出口まで延在している連続シケインであり、該連続シケインが、中間チャネル壁により分離されている一連の急な流路カーブから成り、好ましくは前記中間チャネル壁の少なくともいくつかは平行であり、実質的に180°のカーブを得ることを特徴とする、請求項1に記載の射出成形金型(1)。
【請求項3】
前記開いた少なくとも1つの焼戻し媒体チャネル(11;14)を構成する前記連続シケインが、各金型プレート(2;3)の全体に亘って前記焼戻し媒体の循環のための流路を画定し、該少なくとも1つの焼戻し媒体チャネル(11;14)が、
− 前記各インジェクタ金型プレート(2)またはエジェクタ金型プレート(3)の幅、および/または
− 前記各インジェクタ金型プレート(2)またはエジェクタ金型プレート(3)の高さ、および/または
− 前記各インジェクタ金型プレート(2)またはエジェクタ金型プレート(3)の縁部から縁部までのまたは角部から角部までの任意のライン
より長い流路を画定することを特徴とする、請求項1または2に記載の射出成形金型(1)。
【請求項4】
− 前記インジェクタ金型プレート(2)の前記第2のインジェクタ金型プレート面(5)が、前記少なくとも1つの第1の焼戻し媒体チャネル(11)を取り巻く第1の周辺領域(9)を有する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の射出成形金型(1)。
【請求項5】
前記第1の周辺領域(9)は、第1のシール(10)が設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の射出成形金型(1)。
【請求項6】
前記エジェクタ金型プレート(3)の前記第2のエジェクタ金型プレート面(7)が、前記少なくとも1つの第2の焼戻し媒体チャネル(14)を取り巻く第2の周辺領域(12)を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の射出成形金型(1)。
【請求項7】
前記第2の周辺領域(12)は、第2のシール(13)が設けられていることを特徴とする、請求項6に記載の射出成形金型(1)。
【請求項8】
前記射出成形金型が射出成形機械内に取り付けられると、前記インジェクタ金型プレート(2)の前記少なくとも1つの第1の開いた焼戻し媒体チャネル(11)が、第1の封止プレート(17)により閉じられ、前記エジェクタ金型プレート(3)の前記少なくとも1つの開いた第2の焼戻し媒体チャネル(14)が、第2の封止プレート(19)により閉じられることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の射出成形金型(1)。
【請求項9】
前記エジェクタ金型プレート(3)が、エジェクタピン(88)用の複数の横断通路(15)を有し、前記エジェクタピン(88)用の前記横断通路(15)が、通路シール(16)を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の射出成形金型(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの焼戻し媒体チャネル(11;14)が、中実のインジェクタ金型プレートまたは中実のエジェクタ金型プレートを機械加工することにより得られることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の射出成形金型(1)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの焼戻し媒体チャネル(11;14)が、キャビティと焼戻し媒体チャネルとの間の金型プレート(2;3)の物品の厚さが20mm未満、任意選択的に15mm未満であるように、中実の金型プレート(2;3)を機械加工することにより得られることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の射出成形金型(1)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの焼戻し媒体チャネル(11;14)が、
− 6.0〜30mmのチャネル脚部カーブ半径
− 3〜10の複数のチャネル脚部
− 約200mmの長さを有するチャネル脚部
− 600〜800mmの全長
− 20〜60mmの深さ
− 3.0〜5.0mmの幅を有するチャネル脚部
− 3.5〜5.0mmのチャネル脚部厚さ
− 3.0〜5.5mmの、前記チャネルと前記1つまたは複数の金型キャビティとの間の金属物品の厚さ
のうちの1つまたは複数の特徴を含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の射出成形金型(1)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの焼戻し媒体チャネル(11;14)が、
− 約140mmの長さを有するチャネル脚部
− 5つのチャネル脚部
− 700mmの全長
− 20〜40mmの深さ
− 4.2mmの幅を有するチャネル脚部
− 3.8mmのチャネル脚部厚さ
− 4.0mmの、チャネルと成形キャビティとの間の金属品の厚さ
のうちの1つまたは複数の特徴を含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の射出成形金型(1)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの焼戻し媒体チャネル(11;14)が、キャビティと焼戻し媒体チャネルとの間の前記金型プレート(2;3)の物品の厚さが各金型プレートの全厚の95%以下、任意選択的に未満であるように、前記金型プレート、または従来の真っ直ぐな冷却孔を既に有する金型半片を機械加工することにより得られることを特徴とする、請求項1から10、12または13のいずれか一項に記載の射出成形金型(1)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の前記射出成形金型(1)、並びに、
前記第2のインジェクタ金型プレート面(5)に封止が確保できる第1の封止プレート(17)、および/または前記第2のエジェクタ金型プレート面(7)に封止が確保できる第2の封止プレート(19)
を備えることを特徴とする、射出成形工具(54)。
【請求項16】
前記第1の封止プレート(17)が、射出成形機械の固定盤(43)であり、かつ/または前記第2の封止プレート(19)が、前記射出成形機械の可動盤(44)であることを特徴とする、請求項15に記載の射出成形工具(54)。
【請求項17】
第1の断熱プレート(18)が、前記第2のインジェクタ金型プレート面(5)に対向している前記第1の封止プレート(17)上に配設されており、かつ/または第2の断熱プレート(20)が、前記第2のエジェクタ金型プレート面(7)に対向している前記第2の封止プレート(19)上に配設されていることを特徴とする、請求項15または16に記載の射出成形工具(54)。
【請求項18】
請求項1から14のいずれか一項に記載の射出成形金型(1)または請求項15から17のいずれか一項に記載の射出成形工具(54)を備える射出成形機械類であって、
− 焼戻し媒体の少なくとも1つの供給源と、
− 前記射出成形金型(1)の前記少なくとも1つの焼戻し媒体チャネル(11;14)を通る温度調節システムを介して、前記少なくとも1つの供給源からの前記焼戻し媒体の循環を制御するためのバルブシステムを備えた循環装置と
を備えることを特徴とする、射出成形機械類。
【請求項19】
請求項18に記載の射出成形機械類を改造する方法であって、請求項1から14のいずれか一項に記載の前記射出成形金型(1)を挿入することおよび前記射出成形金型(1)を前記循環装置および前記焼戻し媒体の供給源に接続することによる、射出成形機械類を改造する方法。
【請求項20】
(a)射出成形機械に請求項1から14のいずれか一項に記載の射出成形金型を装着するステップと、
(b)プラスチック材料の処理範囲内の第1の温度を有する前記プラスチック材料の供給を行うステップと、
(c)少なくとも前記1つまたは複数の金型キャビティを前記プラスチック材料の前記処理範囲内の第2の温度まで加熱し、第3の温度を有する焼戻し媒体を前記焼戻し媒体チャネルを通して循環させることにより、前記射出成形金型を前記第2の温度で閉じた状態に維持するステップと、
(d)前記第1の温度を有する前記プラスチック材料を閉じられ加熱された射出成形金型内に射出して、前記1つまたは複数の成形キャビティを満たすステップと、
(e)第5の温度を有する前記焼戻し媒体を同じ焼戻し媒体チャネルに通して循環させることにより、前記射出成形金型の内部にある成形されたプラスチック部品(単数または複数)の少なくとも部分的な凝固まで、満たされ閉じられた射出成形金型の少なくとも前記1つまたは複数の金型キャビティを、前記第1の温度より低い第4の温度まで冷却するステップと、
(f)前記インジェクタ金型プレートを前記エジェクタ金型プレートと分けることにより、前記射出成形金型を開くステップと、
(g)エジェクタ組立体のエジェクタピンの作動により、前記少なくとも部分的に凝固され成形されたプラスチック部品(単数または複数)を放出するステップと、
(h)所望の数の前記プラスチック部品が製造されるまで、前記ステップ(c)〜(g)の前記サイクルを繰り返すことと
を含む方法における、記射出成形金型の使用。
【請求項21】
ステップ(d)において、融解プラスチック材料の前記射出が、200kg/m未満、好ましくは100kg/m未満、好ましくは80kg/cm未満、より好ましくは60kg/cm未満の射出圧力で、さらにより好ましくは20〜50kg/cmの射出圧力で行われることを特徴とする、請求項20に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形金型であって、
− 1つまたは複数の金型キャビティの第1の金型キャビティ半片を含む第1のインジェクタ金型プレート面、および射出成形工具に取り付けられる反対側の第2のインジェクタ金型プレート面を有するインジェクタ金型プレートと、
− 1つまたは複数の金型キャビティの第2の金型キャビティ半片を含む第1のエジェクタ金型プレート面、および射出成形工具に取り付けられる反対側の第2のエジェクタ金型プレート面を有するエジェクタ金型プレートと、
− 第1のインジェクタ金型プレート面は第1のエジェクタ金型プレート面の方へ向いており、プラスチック材料の射出中にインジェクタ金型プレートとエジェクタ金型プレートとが密接している時、1つまたは複数の金型キャビティの範囲を定め、
− 射出成形金型の少なくとも焼戻し媒体入口を射出成形金型の焼戻し媒体出口に接続する少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルと
を備える、射出成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2013/126723号パンフレットは、射出成形機械用の従来の冷却システムに関する検討を含む。該冷却システムは、金型を通して冷却液を循環させることにより、成形品の冷却を加速し、それにより機械が所定の時間内により多くのサイクルを完了することを可能にし、それにより生産率が高まり、したがって製造される成形品の総量が増大する。とりわけ、複雑な穴パターンのコストのかかる設計、3次元で長い穴部をドリルで開けること、手作業で穴部を塞ぐこと、様々な方向の多数の設定のため、かつ高硬度金型材料は機械加工し難いため、これらの冷却システムは射出成形金型の複雑性およびコストを増すことが強調されている。射出成形サイクル中、冷却液の漏れが起こってはならない。そのため、金型の外部に冷却液が漏れないように、冷却チャネルは、従来、支持プレートにドリルで穴を開けることにより作製され、したがって冷却チャネルは真っ直ぐで埋め込まれており、任意選択的にいくつかの平面において、限られた数の十字の冷却チャネルのみが、射出成形金型用のベースプレートまたは支持プレートの厚さの範囲内で可能である。さらに、射出成形金型の全ての金型キャビティまでの距離が実質的に均一であるように、前記距離を近似することは不可能である。
【0003】
したがって、ベースプレートまたは支持プレートを貫通して冷却チャネルをドリルで開けることは難しく、時間がかかり、費用がかかる。さらに、冷却チャネルは、直線にドリルで穴を開けることができるだけであり、重大なホットスポットに冷却/加熱媒体が届かないままであることが多く、したがって緩和されることが不可能であるという結果になる。冷却チャネルをドリルで開けることにおけるこれらの実際的限界は、結果的に成形品の質に影響をもたらす、射出成形金型の内部でのむらのある冷却をもたらす。
【0004】
国際公開第2003/011550号パンフレットは、支持プレートに機械加工されている複数の冷却ラインを有し、流路の細さを用いずに薄壁部品を射出成形することを容易にし、溶融熱可塑性材料が流路の終端部に到達しかつキャビティを完全に満たす前にこの材料を冷却する、種々の金型組立体を開示している。この既知の射出成形金型は、低熱質量を有する金型キャビティの表面層と表面層の裏側の表面上に配置されている断熱層との両方で構築されている一体型外殻構造を有し、マイクロチャネルまたはマイクロホールを備える。熱可塑性材料の射出中のキャビティ表面の加熱が誘導加熱により起こり、金型ベースに設置されている冷却ラインを通してまたは断熱層に構築されているマイクロチャネルを通して冷却液を循環させることにより、成形品の後続の冷却が得られる。冷却液の漏れのリスクを最小限にするために、マイクロホールおよびマイクロチャネルは、任意の他の従来の射出成形金型の場合と同様に内部孔であり、限られた量の冷却液のみが循環され得る。冷却ラインまたはマイクロチャネルを通して高温の流体を循環させることにより、ドリルで開けられた孔により加熱もまた起こり得るということが、手段に関するいかなる技術的教示および指示もなく提案されている。
【0005】
要約すれば、冷却チャネルを使用する、上記従来の射出成形システムでは、そのような冷却チャネルは、最低限の冷却液が限られた速度で通過して可能性のある漏れを低減することができる一体孔である。したがって、そのような場合には、能動冷却を適用しない従来の射出成形法と比較して、従来の冷却法が速い製造を可能にするが、該冷却プロセスは、依然として、例えば薄い部品を含む複雑な部品を射出成形するために、かつ生産率を改善するために、より効率的にされ、コストを最小限にし、高品質をもたらす必要がある。
【0006】
国際公開第9731733号パンフレットは、射出成形工具用のキャビティおよび芯材インサートを作製する鋳造プロセスに関する。これらのインサートは、インサートの後面上の冷却液を冷却室内に移動させるかまたは引き込む流体サーキュレータシステムを使用して鋳造される。冷却液は、室を通る冷却液を急速に引き寄せるために陰圧をかけられる。冷却液は、室内に設けられている支柱の周囲で攪拌され、インサートに強度をもたらす。
【0007】
国際公開第9731733号パンフレットの冷却室の代替的実施形態が、インサートの前側から軸方向に延在している複数の合同壁部を備える支持手段を有する。支持壁部は室内に対称に配置されているので、プラスチック材料がキャビティ領域内に射出された時にプラスチック材料が高射出圧力下にある場合、より多くの支持が存在する。成形装置の動作中、耐外圧手段(outside pressure bearing means)が、芯材インサートおよびキャビティインサートにかけられる高圧の大きな荷重を吸収するかまたはこれに耐えるように作用する。インサート上にかけられる応力または圧力を低減して溶解物を1つまたは複数の金型キャビティの中に分配させるために、成形圧力の殆どが前記耐圧手段により吸収されるように、耐圧手段は、芯材インサートとキャビティインサートとの組み合わされた深さより若干長いかまたは高い高さを有する。そのため、国際公開第9731733号パンフレットでは、金型を加熱することなく、高圧用途のための射出成形金型を製造する。さらに、これらの射出成形金型は、鋳造中に成形キャビティが形成される2ステッププロセスにおいてプラスチック部品のモデル上で鋳造される。しかし、そのような成形されたキャビティは、鋳造金属材料が硬化中に実質的に縮むので、めったに正確なサイズに成形されない。詳細には、国際公開第9731733号パンフレットにおいて提案されている銅は、アルミニウムおよびグレースチールと比較して高い収縮度を有する。
【0008】
支持壁部は、全てが横断開口部を介して相互流体接続状態にあるチャネルの、流動室を画定している。冷却液が開いた室を通して引き寄せられるので、これが支柱および/または壁部の周囲を通過する際に流体の流動は妨げられ、かつ水が最短の道が見つかればどこでもこれが流動することを可能にし、したがって水の流路は制御され得ない。陰圧がかけられた場合、流路は任意であるので、流路は、冷却液入口から冷却液出口まで可能な限り真っ直ぐである。
【0009】
国際公開第9731733号パンフレットは、冷却室を金型キャビティを加熱するために同様に使用することを提案しておらず、したがって、熱エネルギーを管理するためにいかなる種類の断熱も必要ない。
【0010】
したがって、依然として、射出成形技術の範囲内で、射出成形金型用の焼戻し装置のより安い、より簡単な製造を獲得し、かつ成形サイクル中にプラスチック材料と射出成形金型との間の熱交換を最適化して、短いサイクル時間、したがって生産性の向上、および高品質の成形プラスチック製品を得る必要がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明による第1の態様では、導入部で言及されている種類の射出成形金型が提供され、それにより、改善された均一の熱放散および金型キャビティ内のプラスチック材料と焼戻し媒体との間の熱交換が可能になる。
【0012】
本発明による第2の態様では、高品質のプラスチック部品を射出成形することおよび従来の射出成形機械より高速での寸法精度のために、導入部で言及されている種類の射出成形金型が提供される。
【0013】
本発明による第3の態様では、金型の熱応力が低減される、導入部で言及されている種類の射出成形金型が提供される。
【0014】
本発明による第4の態様では、重大なホットスポットが効率的に焼き戻される、導入部で言及されている種類の射出成形金型が提供される。
【0015】
本発明による第5の態様では、特定の射出成形機械設計または射出成形機械設定での使用に関して制限されない、導入部で言及されている種類の射出成形金型が提供される。
【0016】
本発明による第6の態様では、射出成形金型を焼き戻すための手段の設計および動作が簡単で、かつ機器および設備を特に作製する必要なく、簡単に、速く、安く製造され得る、射出成形金型が提供される。
【0017】
本発明による第7の態様では、同じ外部焼戻しシステムおよび焼戻し装置を使用しながら、本発明の様々な射出成形金型を装着され得る、導入部で言及されている種類の射出成形機械が提供される。
【0018】
本発明による第8の態様では、焼戻し媒体と射出された材料との間の熱交換特性を有する、導入部で言及されている種類の射出成形機械が提供される。
【0019】
本発明による第9の態様では、射出成形サイクル中に射出成形金型が交互に冷却され加熱され得る、導入部で言及されている種類の射出成形機械類が提供される。
【0020】
本発明に従ってこれらのかつ他の態様がこれにより解決される新規性および独自性は、少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルが第2のインジェクタ金型プレート面および/または第2のエジェクタ金型プレート面の少なくとも1つの領域を横断することにより、1つまたは複数の金型キャビティの1つまたは複数の上方で伸びる流路を画定していることを射出成形金型が含むことにあり、少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルは、この少なくとも長さに沿って前記各第2の金型プレート面に自由開口部を画定しており、この自由開口部は、射出成形金型が射出成形機械に/内に取り付けられると閉じられる。
【0021】
本発明の文脈において、用語「インジェクタ金型プレート」は、成形材料の射出が起こる金型半片であり、したがって「インジェクタ金型プレート」は、「インジェクタ金型半片」であり、これらの用語は交換可能であると理解されるものとする。
【0022】
本発明の文脈の中で、用語「エジェクタ金型プレート」は、十分な凝固後に成形品の放出が起こる金型半片であり、したがって「エジェクタ金型プレート」は「エジェクタ金型半片」であり、これらの用語は交換可能であると理解されるべきである。
【0023】
「エジェクタ金型プレート」は「金型コア」と呼ばれることが多く、「インジェクタ金型プレート」は「金型キャビティ」と呼ばれる。従来の用語が本発明の範囲をコアおよびキャビティの装置に限定していると見なされないために、本願を通じてより一般的な用語が使用されている。したがって、当然のことながら、機器設計者が所定の射出成形プロセスにおける所定の射出成形金型に適当と感じる通りに、キャビティおよび/またはコアはインジェクタ金型プレートおよびエジェクタ金型プレートの両方に存在し得る。
【0024】
インジェクタ金型半片およびエジェクタ金型半片は、射出成形金型が閉じられると、したがって第1の金型プレート面が強制的に接触すると、共に「1つまたは複数の金型キャビティ」の範囲を定める。
【0025】
用語「焼戻し媒体」は、少なくとも射出成形金型材料と熱エネルギーを交換する、例えばプラスチック材料の射出の前にかつ/または間に射出成形金型を加熱する、のに適した時間の間、選択された温度を保持するなど、熱エネルギーを運ぶのに適した気体または液体から選択される流体に用いられる。
【0026】
射出成形金型の少なくとも1つの焼戻し媒体チャネル内を循環している焼戻し媒体は、鉱油などの油とすることができることが好ましいが、水などの液体または気体である他の流体焼戻し媒体もまた、本発明により検討される。適切な焼戻し媒体は、少なくとも金型キャビティへかつ少なくとも成形品からそれぞれ熱エネルギーを搬送するのに十分な熱容量を有するように、最終成形品の物理的特性および機械的特性を犠牲にすることなく成形品を高速で製造するように選択される。当業者には当然のことながら、所定の射出成形作業のための最適なプロセスパラメータを確立するために、試行錯誤が必要である可能性がある。焼戻し媒体は、加熱および冷却に関して、例えば加熱用の油および冷却用の水など、同一であるかまたは異なる可能性がある。焼戻し媒体は、インジェクタ金型プレートおよびエジェクタ金型プレートに関して別個の回路内を循環してもよく、さらにはこれらのプレートに関して異なっていてもよい。インジェクタ金型プレートおよびエジェクタ金型プレートの両方が焼き戻されるか否か、どの順番で、どの速度で、焼戻し媒体チャネルの種類が選択されること等は、所定の作業によって決まる。
【0027】
熱可塑性材料は、本発明による射出成形金型内で成形されることに特に適している。しかし、熱硬化性プラスチックが除外されない。
【0028】
本発明による少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルは、各第2の金型プレート面(すなわちプレート後面)に縦方向自由開口部と、各第1の金型プレート面(すなわちプレート前面)の1つまたは複数のキャビティに向かって各金型プレートの内部に深さとを有する。このようにして、これが適当である場合、焼戻し媒体が金型キャビティに接近する、例えば金型キャビティの任意の湾曲に等しく接近する、ことを可能にする焼戻し媒体チャネルを設けることが可能である。自由開口部は、例として、簡単で、速く、安いフライス加工により作製されることが可能であり、焼戻し媒体チャネルの深さは、流路に沿って同じまたは異なるようにすることができる。例えば、選択された位置でまたは全ての位置で少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルと反対側の金型キャビティとの間の距離がおおよそ同じであるように、深さを有する少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルを作製することが適当である可能性がある。このようにして、金型キャビティ表面の全ての位置で、良好な熱交換が得られ得る。少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルが第2の金型プレート面の開いた溝部として作製されるので、かつ従来の射出成形金型のように、インジェクタ金型プレートまたはエジェクタ金型プレートではなく別の支持プレートの短縁部から閉じた孔として作製されないので、少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルは、いかなる無作為の方法においても、各プレート面を横断することができ、先行技術の射出成形金型のように真っ直ぐなチャネルから構成され得るだけではない。インジェクタ金型プレートおよびエジェクタ金型プレートの両方に焼戻し媒体チャネルを作製することにより、焼戻しは両金型半片から行われることが可能であり、それにより、所望に応じて成形サイクル時間および成形サイクル率に影響を及ぼし得る。
【0029】
射出成形金型を作製する技術は、これまで、射出成形金型の構造的完全性を守り、射出成形金型の開閉時に力がかけられた際のまたはプラスチック材料の射出中の変形に対して金型を脆弱にしないことを目的としてきた。この目的は、不可欠なものより硬い材料を金型半片から除去しないことによりかなえられるので、熟練した従来の射出成形金型半片メーカは、金型キャビティのフライス加工中ではなく、成形材料を除去することにより損害を被る。したがって、通常、冷却チャネルは、射出成形機械の冷却プレートまたは支持プレートにドリルで穴を開けることにより作製され、これら冷却プレートまたは支持プレートは、金型半片を冷却するために金型半片に直接または間接的に取り付けられる。また、往復エジェクタピンに因り、エジェクタ金型プレートの前での追加の冷却プレートの挿入が不可能であるため、従来の冷却は射出成形プレートから作製されることに限定されている。
【0030】
適当な実施形態では、少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルは、この全長に沿って自由開口部を有していてもよい。このようにして、目でまたは顕微鏡を使用して大規模なまたは微小のひび、亀裂、および傷を検出するために金型プレートが射出成形機械から取り外された場合、開口部全体が直ちに検査されることが可能である。
【0031】
本発明によれば、射出成形金型が射出成形機械に装着された場合、自由開口部は、焼戻し媒体の循環用の閉じた効率的な流路を作り出すために、最初は閉じており、この流路は、場合によっては、射出成形金型用の従来の冷却チャネルにおいて可能であるより大きな断面積が与えられることが可能である。そのため、非常に大量の焼戻し媒体が、この新規の少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルを通過することができ、それにより、熱放散および冷却が極めて速く、効率的になる。
【0032】
好適な実施形態では、少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルは、焼戻し媒体入口から焼戻し媒体出口まで延在している連続シケインであり、この連続シケインは、反対流動方向に焼戻し媒体を方向付ける中間チャネル壁により分離されている一連の急な流路カーブから成る。そのような明確に画定された流路は、焼戻し媒体チャネル内での焼戻し媒体の滞留時間の制御を困難にすると考えられ、かつ金型キャビティと焼戻しチャネルとの間の薄壁を脆弱にして、キャビティまたは湯道の内部の焼戻し媒体との接触またはクランプ締め力または射出圧力に由来する孔食およびひびに因り断裂させる可能性がある腐食および侵食を誘発すると考えられる乱流および攪拌などの、望ましくない影響を最小限にする。流路を180度曲げているカーブなどの急カーブの連続シケインとして焼戻し媒体チャネルを設けることにより、焼戻しチャネルのいかなる領域、およびしたがって金型金属材料も他の領域に比べて危機的なより高い圧力および熱交換に晒されることなく、入口から出口まで制御された方法で焼戻し媒体を方向付けるのに役立つ。本発明の好適な射出圧力は100kg/mより低い射出圧力であり、これは、射出成形金型の加熱を活用しない最も通常の用途の高圧の約15%である。
【0033】
中間チャネル壁の少なくともいくつかが平行であることが好ましい。
【0034】
前述の通り、1つまたは複数の金型キャビティは、第1のインジェクタ金型プレート面と第1のエジェクタ金型プレート面とが射出成形金型の近接した位置において互いに接触すると、インジェクタ金型プレートとエジェクタ金型プレートとにより範囲を定められ得ることが有利である。1つまたは複数の金型キャビティを焼き戻すことに言及した通り、少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルは、接触している金型プレートの一方または両方にあるキャビティ部および/または半片により画定されている前記1つまたは複数の金型キャビティの上方で伸びる流路を画定することが有利である。
【0035】
高度に効率的な射出成形金型は、インジェクタプレートまたはエジェクタプレートの各々が1つまたはいくつかの焼戻しチャネルを有することを含み、この各々は、チャネル壁により画定されている急カーブの単一連続シケインでありかつこの全長に沿って縦方向開口部を有し、この開口部は、前記プレートが射出成形工具に取り付けられると、最初に閉じられる。焼戻しプロセスは、インジェクタ金型プレートおよびエジェクタ金型プレートの両方に焼戻しチャネルおよび金型キャビティ部の両方が設けられている場合、該焼戻しプロセスの最適条件で達成されることが可能であり、この場合、焼戻しが両第2の面から同時に等しく行われ得る。1つまたは複数の金型キャビティのコアおよびキャビティは、インジェクタ金型プレートおよびエジェクタ金型プレートの一方または両方に存在していてもよい。焼戻しは、射出成形金型が開いているか閉じているかどうかに関わらず行われることが可能であり、一方または両方の金型プレートは焼戻し媒体チャネルを有し得る。
【0036】
好適な実施形態では、インジェクタプレートは1つの単一連続第1の焼戻しチャネルを有し、エジェクタプレートは1つの単一連続第2の焼戻しチャネルを有しており、第1の焼戻し媒体および第2の焼戻し媒体の最終的な誘導および滞留時間をもたらし、この第1の焼戻し媒体と第2の焼戻し媒体とは同一であるかまたは異なっており、かつチャネルの底部と金型キャビティ全てとの間の壁を通る最適な熱移動をもたらす。
【0037】
1つの単一連続第1の焼戻しチャネルおよび1つの単一連続第2の焼戻しチャネルは、どちらも急カーブの、好ましくは約180°のカーブの、シケインであってもよい。
【0038】
あるいは、インジェクタプレートまたはエジェクタプレートの一方だけが、この全長に沿って開口部を有する、急カーブの単一連続シケインである1つの焼戻しチャネルを有する。
【0039】
少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルが金型プレートに作製されるため、熱交換、冷却、および加熱が、成形される特定のプラスチック部品に最適に適合され、最適であることが常に確実にされ得る。これは、従来の射出成形金型の標準的な冷却を用いる場合には当てはまらず、射出成形金型に固定されている別個のプレートにある同じ、ドリルで開けられた冷却孔は、様々な金型半片および様々な金型キャビティを冷却するのに使用される。
【0040】
適当な実施形態では、少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルが、金型プレートを横断する焼戻し媒体の循環用の流路を画定しているシケイン、好ましくは連続シケインであり、この少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルは、
− 各インジェクタ金型プレートまたはエジェクタ金型プレートの幅、および/または
− 各インジェクタ金型プレートまたはエジェクタ金型プレートの高さ、および/または
− 各インジェクタ金型プレートまたはエジェクタ金型プレートの縁部から縁部までのまたは角部から角部までの任意のライン
より長い流路を画定している。
【0041】
シケインは、従来の冷却チャネルのドリルで開けられた孔の流路の異なった真っ直ぐな伸びと比較して、反対方向の焼戻し媒体チャネルの一連の急カーブ(脚部)である。シケインは、平面全体に亘って、真っ直ぐな孔より長い流路をもたらし、射出成形機械用の従来の冷却システムにおいて使用されるような、追加ベースプレートまたは支持プレートにある冷却チャネルとしてのただ真っ直ぐな孔で可能であるより、各金型プレートのより大きな領域を横断している。焼戻し媒体量と金型キャビティ内の射出されたプラスチック材料と金型半片との間の熱交換のための時間は追加の長さに因り延長され、より長い滞留時間をもたらし、それにより前記熱交換を向上させる。また、流路の幅、したがってシケイン幅は、真っ直ぐな、ドリルで開けられた孔で可能であるより広く作製されることが可能であり、少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルの長さに沿って異なる幅を有して作製され得る。射出されたプラスチック材料は、実質的にこれだけで金型キャビティのいかなる角部内にも流動するので、同金型プレートを使用して様々な複雑なプラスチック部品を成形することが可能である。サイクル時間は若干長くなると考えられるが、一度に1つの部品を速く作製する従来の高圧非焼戻し式射出成形金型と比較して、製造されるプラスチック部品の総数は実質的により多い。
【0042】
焼戻し媒体は、任意選択的にバルブシステムの1つまたは複数のバルブを開閉することに応答して、少なくとも1つの焼戻しチャネルを通して、すなわちシケインの脚部またはカーブ、例えば180°のカーブ、を通して、循環され得る。
【0043】
焼戻し媒体チャネルは、必要に応じて配置されている、例えば金型プレートの縁部で終端している、入口と出口とを有していてもよい。金型プレートは、例えば、開いた焼戻し媒体チャネルのない周辺領域を有し、残りの機械類に対する封止および固定用のかつ焼戻し媒体入口および/または出口を収容するためのリムをもたらしてもよい。
【0044】
特定の実施形態では、インジェクタ金型プレートの第2のインジェクタ金型プレート面は、少なくとも1つの第1の焼戻し媒体チャネルを取り巻いておりかつ第1のシールを設けられている第1の周辺領域を有することが可能であり、かつ/または第2のエジェクタ金型プレート面は、少なくとも1つの第2の焼戻し媒体チャネルを取り巻いておりかつ第2のシールを設けられている第2の周辺領域を有することが可能である。これらの第1のシールおよび/または第2のシールは、金型プレートと金型プレートにクランプ締めされているプレート(インジェクタ金型プレートまたはエジェクタ金型プレート)との間の漏れを防止するのに役立ち、関連する焼戻し媒体チャネルの自由開口部を閉じて、焼戻し媒体用の流路を作り出す。
【0045】
インジェクタ金型プレートの少なくとも1つの第1の開いた焼戻し媒体チャネルは第1の封止プレートにより閉じられ、エジェクタ金型プレートの少なくとも1つの開いた第2の焼戻し媒体チャネルは第2の封止プレートにより閉じられ、第1のシールおよび第2のシールはそれぞれ、焼戻し媒体が焼戻し媒体チャネルの経路の脚部に沿って循環し、したがって入口から出口まで反対方向に後続のチャネル脚部に沿って交互に流動する場合に、接続を流体密封にするのに役立つ。そのため、焼戻し流体が封止プレートの下を通過することができないように、チャネル壁は焼戻しチャネルの底部から各封止プレートまで延在している。焼戻し媒体は、焼戻し媒体チャネルの湾曲を辿らなければならない。
【0046】
成形され冷却された部品を放出するために、エジェクタ金型プレートは、エジェクタピン用の複数の横断通路を有する。エジェクタピン用の横断通路は、成形品の放出が起こった場合を含めて、焼戻し媒体が1つまたは複数の金型キャビティ内に侵入しないようにする通路シールを有していてもよい。通路シールは、往復エジェクタピンのアクセスおよび軸方向移動を可能にするために収縮することまたは圧縮されることができ、完全に膨らむまで膨張しかつエジェクタピンが横断開口部から完全に後退する不運な出来事において横断通路の全直径を封止することができる種類のものであってもよい。エジェクタピンがいつでも多かれ少なかれ横断通路内に延在して、封止に寄与することができる。したがって、プラスチック材料、例えば熱可塑性物質、のショットを射出している間、エジェクタピンの自由端は、成形品の表面付近の後退した位置に入れ子にされている。通路シールと共に、エジェクタピンの直径は、この対応する横断開口部を封止して塞ぐ。エジェクタピンが前進して冷却され成形されたプラスチック部品を放出する場合およびエジェクタピンが後退して新しい射出成形サイクルに備える場合のどちらの場合にも、通路シールは往復エジェクタピンを取り巻いている。
【0047】
金型キャビティと焼戻し媒体チャネルとの間のインジェクタ金型プレートまたはエジェクタ金型プレートの物品の厚さが薄い場合、例えば金型キャビティ表面の殆どで、またはさらには焼戻し媒体チャネルおよび焼戻し媒体チャネル壁に最も近接した金型キャビティ表面全体の殆どで、実質的に同じであるように、熱放散率が制御し易い。焼戻し媒体チャネル壁が金型キャビティ壁と実質的に同じ厚さを有する場合、金型キャビティは、2つの側から同様に加熱されかつ/または冷却されることが可能であり、金型キャビティ壁と同じ速さで2度加熱されかつ/または冷却されることが可能である。焼戻し媒体チャネルを収容しているプレートが均一にかつプレート表面全体に亘って実質的に同程度まで焼き戻されることが可能であるので、金型キャビティの加熱および/または冷却は非常に均質であり、制御されている。
【0048】
少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルは、1つまたは複数の金型キャビティの実際の位置に配慮しながら、中実インジェクタ金型プレートまたは中実エジェクタ金型プレートを各第2の金型プレート面から機械加工することにより簡単に得られる。例えば、1つまたは複数の焼戻し媒体チャネルを作り出すために、粗削りフライス加工が、金型プレートの1つのフライス盤設定での迅速で安い動作において用いられることが可能である。焼戻し媒体チャネルの設計は、プラスチック部品の特定の金型キャビティに合わせられることが可能である。プラスチック部品は、より厚い厚さの部分を備えて作製されるべきであり、これには、プラスチック部品の残部に比べて、異なる焼戻し度が必要であり、各部分の上方での少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルの深さの機械加工中の適正な選択により、等しい熱交換が得られる。いくつかの金型プレートでは、1つまたは複数の金型キャビティおよび少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルが、機械加工用の同じ設備を使用して作製され得る。
【0049】
キャビティと焼戻し媒体チャネルとの間のインジェクタ金型プレートまたはエジェクタ金型プレートの物品の厚さは変化する可能性があるが、冷却が始まるまで金型プレートの加熱がプラスチック材料を流体にかつ粘性に保つことに因り射出圧力が低く保たれることが可能であるので、薄いことが好ましい。
【0050】
例えば、前段で提案されている通り、中実金型プレートを機械加工することにより少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルが得られる場合、キャビティと焼戻し媒体チャネルとの間の金型プレートの物品の厚さは、20mm未満またはさらには15mm未満であってもよい。このように、熱交換が急速に起こることが可能であり、その結果、高品質を犠牲にすることなく生産率が可能な限り高く保たれることが可能である。詳細には、薄い部品は、金型キャビティに近接する焼戻し媒体を持ってくることにより、非常に均一に冷却されることが可能であり、それにより、可能性のあるホットスポットの数を最小限にすることが可能である。
【0051】
本発明の発明者らは、少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルが
− 6.0〜30mmの間のチャネル脚部カーブ半径
− 3〜10の間の複数のチャネル脚部
− 約200mmの長さを有するチャネル脚部
− 600〜800mmの間の全長
− 20〜60mmの間の深さ
− 3.0〜5.0mmの間の幅を有するチャネル脚部
− 3.5〜5.0mmの間のチャネル脚部厚さ
− 3.0〜5.5mmの、チャネルと1つまたは複数の金型キャビティとの間の金属品の厚さ
のうちの1つまたは複数の特徴を含む場合に射出成形金型の最適な性能が達成されることを確認するために、試験を行った。
【0052】
少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルを機械加工することの容易さに関して、
− 約140mmの長さを有するチャネル脚部
− 5つのチャネル脚部
− 700mmの全長
− 20〜40mmの間の深さ
− 4.2mmの幅を有するチャネル脚部
− 3.8mmのチャネル脚部厚さ
− 4.0mmの、チャネルと成形キャビティとの間の金属品の厚さ
のうちの1つまたは複数の特徴を含む焼戻し媒体チャネルを有する射出成形金型により、満足な結果が達成され得ることがさらに確認されている。
【0053】
あるいは、少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルが、従来の真っ直ぐな冷却孔を既に有する金型プレートまたは金型半片を機械加工することにより得られる場合、前記厚さは各金型プレートの全厚の約95%未満または95%である可能性があり、任意選択的により少ない可能性がある。金型プレートまたは金型半片の全厚のたった約5%が除去されるが、任意選択的に加熱ラインとしても使用される既存の従来の冷却ラインの複合作用の可能性は、新しい表面の焼戻し媒体チャネルと共に、金型部分のより速い焼戻しを可能にすることにより、生産速度を加速する。
【0054】
また、本発明は、
− 前段で定義されている射出成形金型
− 第2のインジェクタ金型プレート面に封止固定可能な第1の封止プレート、および/または
− 第2のエジェクタ金型プレート面に封止固定可能な第2の封止プレート
を備える、射出成形工具に関する。
【0055】
封止プレートが各第2の金型プレート面にクランプ締めされている場合、少なくとも1つの閉じた焼戻し媒体チャネルは、射出成形サイクルの最後での放出、ならびに/またはプラスチック材料の射出中の高温焼戻し媒体の循環および金型キャビティの任意の角部および穴部内へのプラスチック材料の流入、ならびに後続の射出成形サイクルのための金型プレートの準備を可能にするために、必要に応じて、射出されたプラスチック材料の凝固用の冷たい焼戻し媒体の循環を含む、焼戻し媒体の誘導された循環のための流路を画定するように形成される。
【0056】
金型キャビティをプラスチック材料の工程温度まで加熱することにより、非常に低い射出圧力の使用が可能になり、したがって金型プレートの強度および剛性に対する要求が劇的に低くなり、それにより、本明細書に記載されている焼戻しチャネル構想の全面的な使用を広げる。
【0057】
本発明による射出成形工具では、第1の封止プレートは射出成形機械の固定盤とすることができ、かつ/または第2の封止プレートは射出成形機械の可動盤とすることができる。
【0058】
本発明による射出成形工具の代替的実施形態では、第1の封止プレートは、固定盤とインジェクタ金型プレートとの間に挿入されている追加の第1のクランプ締めプレートを含み得る。第2の封止プレートは、可動盤とエジェクタ金型プレートとの間に挿入されている追加の第2のクランプ締めプレートを含み得る。クランプ締めプレートは、各固定盤および可動盤に向かって配置されている。
【0059】
また、第1の断熱プレートが、第2のインジェクタ金型プレート面に対向している第1の封止プレート上に配設されていてもよく、かつ/または第2の断熱プレートが、第2のエジェクタ金型プレート面に対向している第2の封止プレート上に配設されることが可能である。断熱プレートは、熱エネルギー流の方向の制御を保つことおよび熱エネルギーの意図されていない方向転換および散逸を回避することに役立つ。したがって、断熱プレートは、加熱された焼戻し媒体からの熱が金型プレートの方へ方向付けられ続けることを助ける。
【0060】
本発明は、前段で定義されている射出成形金型を備える射出成形機械類にさらに関する。
【0061】
射出成形機械類は、
− 焼戻し媒体の少なくとも1つの源と、
− 射出成形金型の少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルを通して、温度調節システム経由で、少なくとも1つの焼戻し媒体源からの焼戻し媒体の循環を制御するバルブシステムを備えた循環装置と
を備える。
【0062】
また、本発明は、前段で定義されている射出成形金型を挿入することおよび前記射出成形金型を循環装置および焼戻し媒体源に接続することにより、前段で定義されている射出成形機械類を改造する方法に関する。
【0063】
本発明の射出成形金型を用いて修正されている射出成形機械類により、オペレータが、相当な労力なしに射出成形金型を新しい目的または必要に適合させることが可能になる。射出成形金型の焼戻し媒体チャネルが焼戻し媒体を空にされ、インジェクタ金型プレートおよびエジェクタ金型プレートが、これらが固定されているプレートから分離され、新しい金型半片がこれらのプレートに取り付けられ、焼戻し媒体の循環が再確立される。
【0064】
前述の射出成形金型を使用して得られる射出成形された物体もまた、特許請求されている。
【0065】
本発明による特定の適当な実施形態では、前段で定義されている射出成形金型のインジェクタプレートまたはエジェクタプレートの同焼戻し媒体チャネルはそれぞれ、射出成形サイクル中に加熱媒体および冷却媒体を順番に循環させるために使用される。したがって、冷却媒体および加熱媒体用に異なるチャネルが設けられていない。
【0066】
本発明において定義されている射出成形金型を焼き戻す本発明の方法は、例えば、2014年11月4日に出願された、「A method for injection molding plastic parts by means of an injection molding machine」という名称の、欧州特許出願公開第13191336.0号明細書および後続の国際出願第PCT/EP2014/073688号明細書の同時係属出願に開示されている、プラスチック部品(単数または複数)を射出成形する方法において利用されることが可能であり、この方法は、
(a)射出成形機械に、本発明による射出成形金型を装着するステップと、
(b)プラスチック材料の処理範囲(processing window)内の第1の温度を有するプラスチック材料の供給を行うステップと、
(c)少なくとも1つまたは複数の金型キャビティをプラスチック材料の処理範囲内の第2の温度まで加熱し、第3の温度を有する焼戻し媒体を少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルを通して循環させることにより、射出成形金型を前記第2の温度で閉じた状態に維持するステップと、
(d)第1の温度を有するプラスチック材料を、閉じられ加熱された射出成形金型内に射出して、1つまたは複数の成形キャビティを満たすステップと、
(e)第5の温度を有する焼戻し媒体を少なくとも1つの焼戻し媒体チャネルを通して循環させることにより、射出成形金型の内部にある成形されたプラスチック部品(単数または複数)の少なくとも部分的な凝固まで、満たされ閉じられた射出成形金型の少なくとも1つまたは複数の金型キャビティを、第1の温度より低い第4の温度まで冷却するステップと、
(f)インジェクタ金型プレートをエジェクタ金型プレートから分けることにより、射出成形金型を開くステップと、
(g)エジェクタ組立体のエジェクタピンの作動により、少なくとも部分的に凝固され成形されたプラスチック部品(単数または複数)を放出するステップと、
(h)所望の数のプラスチック部品が製造されるまで、ステップ(c)〜(g)のサイクルを繰り返すステップと
を含む。
【0067】
融解したプラスチック材料の射出は、200kg/m未満、好ましくは100kg/m未満、好ましくは80kg/cm未満、より好適には60kg/cm未満の射出圧力で、さらにより好適には20〜50kg/cmの間の射出圧力で行われる。プラスチック材料を射出しながら可動金型盤と固定射出成形盤とを共に保つ任意のクランプ締め力が、本発明のプレート、シール等の全積重ねを、熱流体的に高度に封止された関係で共にクランプ締めされた状態に容易に保つ。このようにして、第2のプレート面と対向する接触プレートとの間の焼戻し媒体の漏れのリスクは、どのプレートが対向するプレートであるかに関わらず、さらに低減される。
【0068】
従来の射出成形法は、約15〜30倍高い、したがってより費用がかかる600〜700kg/cmの射出圧力を必要とし、より多くのエネルギーを必要とし、射出成形金型および射出成形機械部品のより早い磨耗の開始を引き起こす。
【0069】
本願の文脈においては、用語「処理範囲」または「プラスチック材料の処理範囲」は交換可能に用いられることが可能であり、プラスチック材料のガラス転移の開始から分解の開始まで及ぶ温度間隔として理解されるべきである。「処理範囲」または「プラスチック材料の処理範囲」は、プラスチック材料の融解温度およびガラス転移温度間隔を含む。「処理範囲」または「プラスチック材料の処理範囲」はプラスチック材料によって異なり、プラスチック材料の供給業者および小売業者は、前記「範囲」の情報を有するデータシートを提供する。
【0070】
処理範囲内の好適な温度がプラスチック材料の「処理温度」であり、これは、キャビティに入る前のプラスチック材料を使って作業するために、各製造業者が推奨する温度間隔である。射出成形の場合、射出成形機械の加熱送りネジのノズルを出る時、プラスチック材料の温度は、通常、この間隔内にある。特に、該間隔は、ガラス転移または融解の開始により設定されないが、材料の分解の開始時より低い。
【0071】
本発明は、図面を参照して、以下にさらに詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】上方からは傾いた、エジェクタ金型プレートの第1の面から見た射出成形工具のプレートおよび構成要素の斜視分解図である。
図2】第2の金型面から見たインジェクタ金型プレートの斜視図である。
図3】第1の金型面から見た同の図である。
図4】第2の金型面から見たエジェクタ金型プレートの斜視図である。
図5】第1の面から突出している例示的コア、および第1の面に平行に埋め込まれた取外し可能なコアを備えた、第1の金型面から見た同の図である。
図6図2の線VI−VIに沿って取った長手方向断面図である。
図7】上方からは傾いた、固定盤から見たクランプ締めユニット内にある射出成形工具の構成要素の斜視分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本発明は、例示的実施形態として以下に記載されている。プレートの寸法、金型キャビティならびに対応するコアの設計および数、焼戻し媒体チャネルの湾曲、長さ、深さ、入口点(単数または複数)および出口点(単数または複数)、ゲート等を含む、焼戻し媒体チャネルの設計は、添付の特許請求の範囲の範囲内で変化する可能性あり、図は本発明を限定していると見なされるべきではない。
【0074】
エジェクタ金型プレートおよびインジェクタ金型プレートは、各これらの個々の焼戻しチャネルおよびサイクルにより焼き戻されてもよく、各プレートの出口からの焼戻し媒体サイクルは、例えば焼戻し媒体源に戻り、この源は選択された温度に保たれている。あるいは、プレートの焼戻し媒体チャネルは、同じ焼戻し媒体サイクルにおいて直列にまたは平行にすることができ、その結果、両プレートは、同時に、同じ焼戻し媒体などの焼戻し媒体を使って動作する。
【0075】
図1は、上部からは傾いた、エジェクタ金型プレートの第1の面から見た例示的機器54のプレートの斜視分解図である。射出成形機工具54は、焼戻し媒体チャネル等以外のエジェクタ組立体、誘導システム、連結用ナットまたはネジ、ノズルなどの射出手段、および焼戻しシステムを伴わずに、純粋に例示目的で図1に示されている。そのような手段は従来型であり、射出成形の当業者に周知である。しかし、当然のことながら、そのような動作手段、締結手段、駆動手段等は、機器54を動作させると予測される。図示の実施形態では、インジェクタ金型プレートおよびエジェクタ金型プレートはどちらも焼戻し媒体チャネルを有するが、プレートの一方だけが焼戻し媒体チャネルを有する実施形態もまた予測される。一方のプレートは1つまたは複数の別個の焼戻し媒体チャネルを有していてもよく、詳細には大プレートの場合、全循環時間を短縮する。
【0076】
射出成形工具54の射出成形金型1はインジェクタ金型プレート2とエジェクタ金型プレート3とを含む。
【0077】
インジェクタ金型プレート2は、第1のインジェクタ金型プレート面4と反対側の第2のインジェクタ金型プレート5とを有する。エジェクタ金型プレート3は、第1のエジェクタ金型プレート面6と反対側の第2のエジェクタ金型プレート面7とを有する。第1のインジェクタ金型プレート面4は、射出成形金型が閉じた状態にある時に金型キャビティ8a、8b、8c、8dを画定しかつこれらの範囲を定めるように、第1のエジェクタ金型プレート面6の方へ向いている。後で図3および図5を参照して説明される通り、金型キャビティ8a、8b、8c、8dは、インジェクタ金型プレート2の第1のインジェクタ金型プレート面4に形成されている第1の金型キャビティ半片8a’、8b’、8c’と、エジェクタ金型プレート3の第1のエジェクタ金型プレート面6に形成されている補完的な第2の金型キャビティ半片8a’’、8b’’、8c’’、8d’’(図1では不可視)とにより構成される。
【0078】
図2により良く認められる通り、第2のインジェクタ金型プレー面5は、少なくとも1つの第1の焼戻し媒体チャネル11を取り巻く第1のシール10を備えた第1の周辺領域9を有する。
【0079】
エジェクタ金型プレート3の第2のエジェクタ金型プレート面7は、少なくとも1つの第2の焼戻し媒体チャネル14を取り巻く第2のシール13と共に、第2の周辺領域12を有する。
【0080】
エジェクタ金型プレート3は、エジェクタピン(図示せず)用の複数の横断通路15を有し、エジェクタピン(図示せず)用の横断通路15は、エジェクタピンが往復して、成形されたプラスチック部品を放出する時に第2の焼戻し媒体チャネル14からの焼戻し媒体の漏れを防止する通路シール16を有する。
【0081】
第1の封止プレート17が、例えば第1の周辺領域9経由の焼戻し媒体の漏れをさらに回避するように、インジェクタ金型プレート2の第2のインジェクタ金型プレート面5に関連して設けられており、第1のシール10を前記第2のインジェクタ金型プレート5に押し付ける。また、第1の断熱プレート18が、インジェクタ金型プレート2の第2のインジェクタ金型プレート面5に固定され、第1の封止プレート17および第1のシール10を間に挟む。
【0082】
同様の方法で、第2の封止プレート19が、例えば第2の周辺領域12経由の焼戻し媒体の漏れをさらに回避するように、エジェクタ金型プレート3の第2のエジェクタ金型プレート面7上に設けられており、第2のシール13および通路シール16を前記第2のエジェクタ金型プレート面7に押し付ける。第2の封止プレート19、第2のシール13、および通路シール16は、第2の断熱プレート20とエジェクタ金型プレート3の第2のエジェクタ金型プレート面7との間に挟まれる。
【0083】
第2の封止プレート19は、第1のセットのエジェクタピン穴部21を有し、第2の断熱プレート20は、第2のセットのインジェクタピン穴部22を有する。第1のセットのエジェクタピン穴部21と、第2のセットのインジェクタピン穴部22と、エジェクタ金型プレート3の横断通路15とは、軸方向に位置合わせされており、焼戻し媒体による冷却後に成形されたプラスチック部品を放出する必要があるエジェクタピンの円滑な往復を可能にする。
【0084】
インジェクタ金型プレート2は、第1の焼戻し媒体入口23と第1の焼戻し媒体出口24(図1では不可視)とを有し、両方とも第1の焼戻し媒体チャネル11と連通している。エジェクタ金型プレート3は、第2の焼戻し媒体入口25と第2の焼戻し媒体出口26(図1では不可視)とを有し、両方とも第2の焼戻し媒体チャネル14と連通している。前記入口23、25と出口24、26とは、本実施形態では、各プレート2、3の短い縁部に設けられており、ここから入口および出口は容易にアクセス可能である。入口および出口の位置は、別の縁部を含む、任意の他の適切な場所とすることができる。入口および出口は、プレートの中実縁部にある短い穴部であり、入口および出口はプレートに作られる必要がある、ドリルで穴を開けているものに過ぎない。入口および出口は、機器54内に取り付けられる前にこれらの長さに沿って開いている各第1の焼戻し媒体チャネル11および第2の焼戻し媒体チャネル14に通じている。
【0085】
インジェクタ金型プレート2は、閉じた射出成形金型1内へのプラスチック材料の溶解物の射出による侵入用の射出ゲート27を有する。また、第1の封止プレート17は第1の穴部28を有し、断熱プレートは、第2の穴部29を有し、この第1の穴部28と第2の穴部29とは、射出ゲート27と軸方向に位置合わせされており/位置合わせ可能であり、プラスチック材料の溶解物の遮るもののない射出を実現する。第1の(止まり)取付け穴部35a、35b、35c、35d(図1では不可視)が、この第2の金型プレート面5を介してインジェクタ金型プレート2の各角部に設けられている。第1の取付け穴部35a、35b、35c、35dは、第1の封止プレート17の角部にある第2の貫通取付け穴部36a、36b、36c、36dと、第1の断熱プレート18の角部にある第3の貫通取付け穴部37a、37b、37c、37dと位置合わせされており、これら3組の位置合わせされた取付け穴部は、ボルト、例えばネジボルト、(図7参照)などの適切な手段を使用して、インジェクタ金型プレート2と、第1の封止プレート17と、第1の断熱プレート18とを密閉して、しっかりとしかし取外し可能にクランプ締めするのに使用され、射出成形金型1を一体型密着密閉ユニットとして動作させることができるようになっている。
【0086】
同様の方法において、各角部では、エジェクタ金型プレート3が、この第2のエジェクタ金型プレート面7を介して第4の(止まり)取付け穴部38a、38b、38c、38dを有する。第4の取付け穴部38a、38b、38c、38dは、第2の封止プレート19の角部にある第5の貫通取付け穴部39a、39b、39c、39dおよび第2の断熱プレート20の角部にある第6の貫通取付け穴部40a、40b、40c、40dと位置合わせされている。
【0087】
射出ゲート27は、図5を参照してさらに説明される通り、湯道経由で、金型キャビティ半片8a’、8b’、8c’;8a’’、8b’’、8c’’、8d’’により画定されている金型キャビティ8a、8b、8c、8dと連通している。
【0088】
第1の断熱プレート18および第2の断熱プレート20は、熱エネルギーの放散を制御するのを助け、熱エネルギーが射出成形機械の固定盤または可動盤それぞれの中に入らないようにする。
【0089】
サイクル中に射出成形金型の開閉に必要とされる、同のためのバー、戻しロッド、および穴部等が、例えば、従来の射出成形金型および射出成形工具のためのものとして存在し、図7に関連して後で簡潔に検討される。
【0090】
インジェクタ金型プレート2およびエジェクタ金型プレート3の本発明の設計は、ここで、以下に詳細に記載される。
【0091】
図2では、インジェクタ金型プレート2が第2のインジェクタ金型プレート面5から見られており、第1の焼戻し媒体出口24を有する短い縁部から斜めになっている。第1の焼戻し媒体チャネル11は、流路(チャネル壁により範囲を定められているいくつかの平行な流路脚部を有するジグザグシケイン)を画定しているこの長さに沿った第1の自由開口部30を有する。シケインは、図1に示されている第1のシール10により取り巻かれる。第1の焼戻し媒体チャネル11および第1のシール10を取り巻く第1の周辺領域9は、第1の封止プレート17および第1の断熱プレート18がインジェクタ金型プレート2と組み立てられると、第1のシール10を受容してこの第1のシール10を固定位置に保ち、第1の自由開口部30を閉じ、第1の焼戻し媒体源からの高温または低温の焼戻し媒体の循環用の閉じた第1の焼戻し媒体チャネル11を作り出す、第1の凹部31を有し、前記第1の焼戻し媒体は、冷却または加熱それぞれに関して同じかまたは異なっている。第1の焼戻し媒体の第2の温度は、融解したプラスチック材料の第1の温度より約20℃高いことが好ましい。
【0092】
第1の焼戻し媒体は、矢印Aで指示されているように、第1の焼戻し媒体入口23経由でインジェクタ金型プレート2に供給される。次に、第1の焼戻し媒体は、矢印Cで指示されているように第1の焼戻し媒体が第1の焼戻し媒体出口24経由で存在するまで、1つまたは複数の金型キャビティ8a’、8b’、8c’の上方で、第1の焼戻しチャネル11のジグザグシケインの隣接した第1の脚部11a、第2の脚部11b、第3の脚部11c、第4の脚部11d、第5の脚部11e、第6の脚部11f、および第7の脚部11gの湾曲に沿って、矢印B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8で指示されているように流動し、後続の焼戻しサイクルに関与する前に熱交換および/または焼戻しに関連する源へ戻る。第1の焼戻し媒体は、第1の焼戻しチャネル11の金型キャビティの位置の観点から、設計に因り湾曲、長さ、および異なる深さを含んでおり、図3に認められる1つまたは複数のキャビティ8a’、8b’、8c’に近接している、インジェクタ金型プレート2の非常に広い領域をサッと通過することができる。このサッと通過することは、冷却チャネルとしてドリルで開けられた穴部などの従来の真っ直ぐな孔だけでは不可能である。第1の焼戻し媒体チャネル11内での第1の焼戻し媒体の滞留時間は、例えば速度、開始および停止の状況、または他の選択肢を制御することにより、容易に調整される。金型キャビティの内部の溶解物の上方で広い領域がサッと通過されることに因り、第1の焼戻し媒体による熱交換が速く、効率的であり、実質的に均一である。第1の焼戻し媒体のいくつかのサイクルだけでも、1つの射出成形サイクルに十分である可能性がある。このようにして、インジェクタ金型プレート2には、これ自体の固有の、用途の広い、容易に調節可能な焼戻しシステムが与えられている。
【0093】
射出成形金型1は、射出中、焼戻し媒体により加熱された状態に保たれることが好ましく、成形品(図示せず)の放出のために射出成形金型1を開き始める前にかつ少なくとも開き始めるまでに焼戻し媒体により冷却されることが好ましい。インジェクタ金型プレート2およびエジェクタ金型プレート3の各々または両方の交互の加熱および冷却が同時に起こる必要はないが、このような場合は多い可能性がある。例えば、インジェクタ金型プレート2とエジェクタ金型プレート3とが分けられて冷却された成形品の放出を開始するとすぐに、インジェクタ金型プレートの加熱が新たに開始し、次の成形サイクルに備えてインジェクタ金型プレート2を準備することができる。閉じた金型の1つまたは複数の金型キャビティを完全に満たす低粘度溶解物の進行を促し、焼戻し媒体チャネルを通って流動する焼戻し媒体に因り、溶解物の早過ぎる凝固の回避が容易に検討される。金型プレートおよび金型キャビティの本発明による手頃な迅速な熱管理は、高品質の成形プラスチック部品を得るために理論的に確立されているかまたはまさに試行錯誤を行うことにより確立されている経験的熱管理構想および/または工程により容易に適合し従うように、インジェクタ金型プレート2およびエジェクタ金型プレート3の両方の冷却および加熱を容易にする。また、本発明による熱サイクリングは、交互の冷却および加熱をサポートし、改善させ、薄い成形プラスチック部品、例えば1mm未満の壁厚を有する成形プラスチック部品、などの成形プラスチック部品を完全なものにするか、または従来の射出成形を用いてコスト効率の高い方法で作製するのは殆ど不可能であったであろう複雑な成形プラスチック部品を可能にする。
【0094】
図3は、第1の焼戻し媒体出口24が底部左角に配置されている状態の、第1のインジェクタ金型プレート面4からのインジェクタ金型プレート2を示す。
【0095】
2つの矩形陥凹部8a’、8b’が、例えば機械加工により、インジェクタ金型プレート2の第1のインジェクタ金型プレート面4に設けられており、第1の金型キャビティ半片8a’、8b’としての機能を果たす。第3の陥凹部8c’は、さらに第1の金型キャビティ半片8c’として設けられており、インジェクタ金型プレート2の側から取外し可能な別個の機器コア32を挿入して、長い横断穴部を備えた金型部分を作り出すのに役立つ。図3に示されている状態では、機器コア32は、金型キャビティ8c’のこの各部分内にまだ配置されておらず、参照番号32はコアの意図された位置を指示するのに用いられているに過ぎない。
【0096】
図4は、第2のエジェクタ金型プレート面7から見た、第2の焼戻し媒体出口26を有する短い縁部から斜めの、エジェクタ金型プレート3を示す。第2の焼戻し媒体チャネル14は、流路(図1に示されている第2のシール13により取り巻かれるジグザグシケイン)を画定している長さに沿って第2の自由開口部33を有する。第2の焼戻し媒体チャネル14を取り巻く第2の周辺領域12は、第2の封止プレート19および第2の断熱プレート20がエジェクタ金型プレート3と組み立てられると、第2のシール13を受容してこの第2のシール13を固定位置に保ち、第2の自由開口部33を閉じ、第2の焼戻し媒体源からの高温または低温の焼戻し媒体の循環用の閉じた第2の焼戻し媒体チャネル14を作り出す、第2の凹部34を有し、前記第2の焼戻し媒体は第1の焼戻し媒体と同じかまたは異なっており、前記第の焼戻し媒体は、冷却または加熱それぞれに関して同じかまたは異なっている。
【0097】
第2の焼戻し媒体チャネル14は、第1の焼戻し媒体チャネル11と同様に作製され、また、矢印C’で指示されている第2の焼戻し媒体入口25と矢印A’で指示されている第2の焼戻し媒体出口26との間の、したがって、後続の矢印(B1’、B2’、B3’、B4’、B5’、B6’、B7’、B8’)で指示されているように、シケインの第8の脚部14a、第9の脚部14b、第10の脚部14c、第11の脚部14d、第12の脚部14e、第13の脚部14f、および第14の脚部14g経由で第2の焼戻し媒体入口25からの経路に沿った、シケインの隣接した脚部を通る焼戻し媒体の流動を可能にするように設計されている。エジェクタピン用の複数の横断通路15は、シケインの第8の脚部14a、第9の脚部14b、第10の脚部14c、第11の脚部14d、第12の脚部14e、第13の脚部14f、および第14の脚部14gの間に、エジェクタ金型プレート3の物品に設けられている。各横断通路15は、エジェクタ金型プレート3の第2のエジェクタ金型プレート面7の凹部41により取り巻かれており、Oリングなどの、対応する通路シール16用の適切な形状の空間およびベッドを作り出しており、その結果、エジェクタピン(図示せず)が往復する時に熱流体の漏れが起きない。凹部41は、エジェクタ金型プレート3の第2のエジェクタ金型プレート面7から少しの距離だけエジェクタ金型プレート3の内部に延在している。
【0098】
図5は、第1のエジェクタ金型プレート面6からのエジェクタ金型プレート3を示し、異なる第2の金型キャビティ半片8a’’、8b’’、8c’’、8d’’を示す。ランナシステム42、例えば第2の焼戻し媒体チャネル14および/または誘導加熱だけを使用することにより加熱されるランナシステム、が、図2に示されている射出ゲート27において金型キャビティ8a、8b、8c、8dをノズル(図示せず)と接続して、溶解物、例えば高温熱可塑性材料、を、射出成形金型1に迅速に分配する。射出成形金型1は、欧州特許出願公開第13191336.0号明細書および後続の国際出願第PCT/EP2014/073688号明細書に記載されている出願人の方法による、加熱された段階にあることが好ましい。第2の金型キャビティ半片8a’’および8b’’は、第1の金型キャビティ半片8a’および8b’の形の対向するキャビティしたがって母型と嵌合する突出コアしたがって父型であり、射出成形金型が閉じられると前記父型と前記母型との間の間隙により画定されている3次元形状を有する成形プラスチック部品を作り出す。
【0099】
例えば熱可塑性部品を成形するための固有の焼戻しシステムを備えた射出成形金型1を使用することの便益は、とりわけ、可視のフローティングライン(floating line)のない金型部分と、機器コアの背後の金型部分にミーティングライン(meeting line)がないことと、プラスチック部品に引張がないことと、極度に薄い壁を作製する可能性と、インモールド(射出)点をどこに置くかの自由な選択と、1つの端部だけの固定(または2つ)を備えた長く薄い機器コアを有する可能性と、吐出(gasping)/漏出機器のない中心線非対称キャビティの可能性と、射出成形金型に偏心射出ゲートまたは調節可能な射出ゲートを有する可能性と、従来の射出成形では確実に全ての管形成部品が部分的に楕円形になるのに対して、円管形成部品は円形になり、箱型プラスチック金型部分では、これらの壁が箱の中心の方へ内側に縮み曲が(shrik−bending)らず、すなわち全方向に等しい収縮率すなわち等方性収縮(isotropic shrinking)とである。
【0100】
本発明による、したがって焼戻しチャネルの新規の設計、焼戻しシステム、および焼戻し方法を備えた、射出成形金型1が、欧州特許出願公開第13191336.0号明細書および後続の国際出願第PCT/EP2014/073688号明細書の方法に使用された場合、コストが通常これらのちょうど約50%になり得るという直接便益を伴って、従来の射出成形金型および射出成形工具よりずっと小さい射出成形工具、詳細には射出成形金型を作製することが可能である。さらに、従来の射出成形のようにプラスチック原料が無駄にならず、したがって、使用されるプラスチック材料が20%少ないと見積もられる。
【0101】
従来の射出成形金型と比較すると、本発明による射出成形金型はより小さく、より軽く、低電力および最小限の締力を必要とし、したがって動作中、射出成形金型の作製が、通常、70%安くなる。迅速かつ高圧が強いられる射出も必要ない。
【0102】
第1の焼戻し媒体と第2の焼戻し媒体とは、熱交換器を通して循環されていることにより、所定の温度に熱的に調節されている同じ媒体とすることができる。循環における焼戻し媒体量は、したがって、いくつかの実施形態では、実質的に一定である。
【0103】
図6は、図2の線VI−VIに沿って取った断面図である。第1の焼戻し媒体チャネル11は、7つの実質的に平行な脚部11a、11b、11c、11d、11e、11f、11gを有する。第1の脚部11aは、第1の焼戻し媒体用の第1の焼戻し媒体入口23と連通しており、後続の第2の脚部11b、第3の脚部11c、第4の脚部11d、第5の脚部11e、第6の脚部11f、および第7の脚部11g経由で通過し、第1の焼戻し媒体出口24経由で出る。該脚部の通過中、第1の焼戻し媒体は、射出成形金型1の材料とかつ1つまたは複数のキャビティの内部のプラスチック部品のプラスチック材料と熱エネルギーを交換する。図6の断面図から明らかであるように、第2のキャビティ8b’は、第1の焼戻し媒体チャネル11の第1の脚部11a、第2の脚部11b、および第3の脚部11cを通過している焼戻し媒体により焼き戻される。第1の焼戻し媒体チャネル11の第1の脚部11a、第2の脚部11b、および第3の脚部11cは、異なる深さ、この場合には、キャビティ8a’の深さのため、第4の脚部11d、第5の脚部11e、第6の脚部11f、および第7の脚部11gより浅い深さを有し、その結果、第1の焼戻し媒体とキャビティの内部のプラスチック材料との間の熱交換中に熱エネルギーが横断しなければならない距離は、任意の可能な範囲まで互いに接近する。
【0104】
したがって、焼戻し媒体チャネル11、14の底部と金型キャビティの底部との間の距離は、従来の射出成形金型の場合よりずっと高い程度まで、インジェクタ金型プレートまたはエジェクタ金型プレートの面全体に亘って、実質的に同様に保たれ得る。
【0105】
例えば、第1の焼戻し媒体チャネル11が単に、第2のインジェクタ金型プレート面5に平行な、第1の焼戻し媒体入口23または焼戻し媒体出口24からドリルで開けられた穴部だった場合、そのような従来の穴部はキャビティ内に絶対に通じてはならないため、そのようなドリルで開けられた穴部は、キャビティが可能にするより、第1のインジェクタ金型プレート面4に近付けられることが不可能である。そのため、本発明による第1の焼戻し媒体チャネル11の深さが、下にあるキャビティの3次元形状および面積に応じて制御され選択されることが可能であり、第1の焼戻し媒体チャネル11が殆どの先行技術の場合と同様に真っ直ぐであるかまたは他の先行技術の場合と同様に乱流および攪拌に頼る必要もないが、代わりに、特定の作業および焼戻しプロセスのために特に選択されかつ適合された、うまく画定された流路に従うことができるのに対して、従来の射出成形金型のキャビティでは、熱エネルギー束がキャビティによって極度に異なる。当業者には明白であるように、これら上記利点は、エジェクタ金型プレート3にも同様に当てはまる。
【0106】
図7は、エジェクタ組立体61を備えたクランプ締めユニット60内に、前述の第1の断熱プレート18と、第1の封止プレート17と、第1のシール10と、インジェクタ金型プレート2と、エジェクタ金型プレート3と、通路シール16を備えた第2のシール13と、第2の封止プレート19と、第2の断熱プレート20とを含む、射出成形工具54を示す。
【0107】
インジェクタ金型プレート2は、固定盤43に固定される、射出成形金型1の前半分である。インジェクタ金型プレート2は、射出成形機械(図示せず)のノズルと位置合わせしている。エジェクタ金型プレート3は、可動盤44に固定されかつエジェクタ組立体61に動作可能に接続される、射出成形金型1の対向する後ろ半分である。
【0108】
インジェクタ金型プレート2、第1の封止プレート17、および第1の断熱プレート18は、インジェクタ金型プレート2の位置合わせされた各第1の取付け穴部35a、35b、35c、35dと、第1の封止プレート17の第2の取付け穴部36a、36b、36c、36dと、第1の断熱プレート18の第3の取付け穴部37a、37b、37c、37dと、固定盤43の第1の角部連結穴部45a、45b、45c、45dとを貫通する一組の第1のネジ47a、47b、47c、47dにより固定盤43に固定される。このようにして、これらのプレート2、17、18と固定盤43とが互いに十分しっかり固定されて、射出成形サイクルを受けた場合および射出成形金型1の開閉に起因する力を受けた場合の脱離を回避すること、および第1の焼戻しチャネル11の漏れのない閉鎖を確実にすることが確実になる。
【0109】
一組の中空連結スリーブ46a、46b、46c、46dが、インジェクタ金型プレート2の角部に設けられている第1のスリーブ連結穴部48a、48b、48c、48d内に取り付けられた一方の端部を有し、この一方の端部が、エジェクタ金型プレート3の角部に設けられている第1のプラグ連結穴部50a、50b、50c、50d内に挿入される雄連結プラグ49a、49b、49c、49dとの連結に役立つ。中空連結スリーブ46a、46b、46c、46dの反対側の各端部は、第1の封止プレート17にある位置合わせされた第2のスリーブ連結穴部51a、51b、51c、51dを通して、第1の断熱プレート18の位置合わせされた第3のスリーブ連結穴部52a、52b、52c、52dおよび固定盤43の第4のスリーブ連結穴部53a、53b、53c、53dをさらに通して、取り付けられる。
【0110】
中空連結スリーブ46a、46b、46c、46dは、雄連結プラグ49a、49b、49c、49dの長端部55a、55b、55c、55dと係合して、インジェクタ金型プレート2の射出ゲート57の射出成形湯口ブシング56を通してノズル(図示せず)により射出された融解プラスチック材料がその後冷える間、射出成形金型1をしっかり閉じられた状態に保つ。射出成形湯口ブシング56は、係止締付けリング58により射出ゲート内に固定された状態に保たれる。
【0111】
同様の方法では、エジェクタ金型プレート3、第2の封止プレート19、および第2の断熱プレート20は、可動盤44の第2の角部連結穴部62a、62b、62c、62dを通過する、可動プレート63の第7の取付け穴部67a、67b、67c、67d、第2の断熱プレート20の第6の取付け穴部40a、40b、40c、40d、第2の封止プレート19の第5の取付け穴部39a、39b、39c、39d、およびエジェクタ金型プレート3の第4の取付け穴部38a、38b、38c、38dをさらに通過する、一組の長い第2のネジ59a、59b、59c、59dにより可動プレート63に固定されて、これらのプレートと可動盤44とが互いに十分しっかりと固定されて、射出成形サイクルおよびしたがって射出成形金型1の開閉に起因する力を受けた場合に脱離を回避することを確実にし、かつ第2の焼戻しチャネル14の漏れのない閉鎖を確実にする。
【0112】
可動プレート63は、一方の側で第2の断熱プレート20に、他方の側でエジェクタ組立体61に固定されて、射出成形金型1に関連して前記エジェクタ組立体の動作をもたらす。
【0113】
雄連結プラグ49a、49b、49c、49dの長端部55a、55b、55c、55dは、エジェクタ金型プレート3の第1のプラグ連結穴部50a、50b、50c、50dを通過して突出し、中空連結スリーブ46a、46b、46c、46dの内側に係合する。雄連結プラグ49a、49b、49c、49dの反対側の短端部は、第2の封止プレート19の第2のプラグ連結穴部64a、64b、64c、64d、第2の断熱プレート20の位置合わせされた第3のプラグ連結穴部65a、65b、65c、65d、および可動プレート63の位置合わせされた第4のプラグ連結穴部66a、66b、66c、66d内に固定される。また、可動プレート63は、各第2の断熱プレート20、第2の封止プレート19、およびエジェクタ金型プレート3にある対応する取付け穴部と位置合わせされている第7の取付け穴部67a、67b、67c、67dを通過する長い第2のネジ59a、59b、59c、59dにより、第2の断熱プレート20、第2の封止プレート19、およびエジェクタ金型プレート3に固定される。
【0114】
クランプ締めユニット60がインジェクタ金型プレート2とエジェクタ金型プレート3とを分離する場合、可動盤44と第2の断熱プレート20との間に設けられているエジェクタ組立体61は、第1の焼戻し媒体チャネル11および/または第2の焼戻し媒体チャネル14を通して選択された温度で焼戻し媒体を循環させた後、凝固したプラスチック部品を放出するように作動される。
【0115】
エジェクタ組立体は従来型であり、以下に総称で記載されるのみである。
【0116】
可動盤44の角部において、バー68a、68b、68c、68dが、エジェクタ箱70の内部で第1のエジェクタ組立体プレート69を押し進める。エジェクタ箱70は、2つの対向する距離ブロック71a、71bと、可動プレート63の方へ向いている第2のエジェクタ組立体プレート72とを含む。第1のエジェクタ組立体プレート69を押すことにより、エジェクタピン73を成形品の方へ押し、その結果、エジェクタピン73は、凝固したプラスチック部品を、エジェクタピン73の背後に配置されている開いた金型キャビティから外へ押すことができる。エジェクタピンは、凝固したプラスチック部品の変形なくかつ目立つエジェクタピンの跡を残すことなく、凝固したプラスチック部品を放出することを左右する数および密度で設けられている。
【0117】
バー68a、68b、68c、68dは、可動盤44の第1のエジェクタバー穴部74a、74b、74c、74dを通過し、対向する距離ブロック71a、71bの貫通通路75a、75b、75c、75dを通過し、可動プレート63の角部で第4のプラグ連結穴部66a、66b、66c、66d内に入る。
【0118】
本発明による射出成形金型1により、複雑な形状および細部を有するプラスチック部品を成形することが可能になっている。焼戻しチャネルの固有の設計に因り、焼戻し、したがって射出成形サイクル中の射出成形金型の交互の加熱および冷却は、同じ射出成形金型の様々なキャビティにとって最良の可能な方法で制御され得る。このようにして、最終的なプラスチック部品の物理的特性は良好である。
【0119】
出願人の前述の同時係属の欧州特許出願公開第13191336.0号明細書および後続の国際出願第PCT/EP2014/073688号明細書に開示されている方法を用いることを含むがこれに限定されない、射出成形金型により得られるプラスチック部品は、上面仕上げおよび極めて高次元の精度を有する。
【0120】
射出成形中に本発明により可能にされる熱管理特性は、高度に改善されている。本発明は、欧州特許出願公開第13191336.0号明細書および後続の国際出願第PCT/EP2014/073688号明細書に記載されている焼戻し法で使用されることが好ましいことが強調される。それにも関わらず、本発明は任意の射出成形機械において実施され得る。従来の射出成形金型の場合より、プラスチック部品のあらゆる部分に関して熱交換が遥かに均一であるので、プラスチック部品は、プラスチック部品ユニット全体に亘って、実質的に同様の良好な物理的特性を有する。溶解物が加熱された射出成形金型に供給され得るため、詳細には射出成形金型が従来の射出成形金型より小さく作製され得るため、生産率が高く、機器および設備のコストが低い。
【0121】
本発明は、任意の簡単なまたは複雑な温度状況に適している。熱管理チャネル、したがって焼戻し媒体チャネルは、欧州特許出願公開第13191336.0号明細書および後続の国際出願第PCT/EP2014/073688号明細書の熱循環技術の別個の革新を、さらにより簡単に、より安く、かつより良くすることに寄与する。
【0122】
本発明による金型プレートの焼戻し媒体チャネルは、ある成形作業での必要に応じて、複雑にまたは簡単にされ得る。焼戻し媒体チャネルを設計することは、通常、1つまたは複数の金型キャビティの配置に基づいて行われる。したがって、焼戻し媒体チャネルの設計はそれほど時間がかからず、金型キャビティの知識に基づいて、簡単で容易に利用できる設備を使用することにより、低コストで迅速に行われることが可能である。
【0123】
当然のことながら、本発明は、従来の成形において実施されることが可能であり、本発明は、任意の特定の熱サイクリング技術に限定されない。焼戻し媒体チャネルは、冷却目的でドリルで開けられた穴部を既に設けられている既存の金型プレートにおいても作製され得る。その後、そのような再設計された金型プレートは、射出成形工具内に簡単に装着され、したがって封止プレートおよびシール、ならびに焼戻し媒体をサイクリングさせるバルブシステムに連結される。
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