特許第6568100号(P6568100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6568100触覚応答を有する熱成形可能なポリマー厚膜透明導体および容量性スイッチ回路におけるその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568100
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】触覚応答を有する熱成形可能なポリマー厚膜透明導体および容量性スイッチ回路におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20190819BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20190819BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20190819BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20190819BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   H01B5/14 A
   H01B5/14 B
   H01B1/20 A
   C08K3/22
   C08L75/04
   C08L71/00
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-559295(P2016-559295)
(86)(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公表番号】特表2017-520879(P2017-520879A)
(43)【公表日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】US2015021483
(87)【国際公開番号】WO2015148263
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2018年3月6日
(31)【優先権主張番号】61/971,063
(32)【優先日】2014年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ ロバート ドーフマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ディー.ボウルトス
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/043619(WO,A1)
【文献】 特開2009−176728(JP,A)
【文献】 特表2005−524945(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/122438(WO,A2)
【文献】 特開昭63−291328(JP,A)
【文献】 特開2009−064692(JP,A)
【文献】 特開2009−009859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/00−1/24
5/00−5/16
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触覚応答を有する透明導体を含む電気回路であって、
前記透明導体が、触覚応答機能を有するポリマー厚膜導電性組成物から形成され、
前記ポリマー厚膜導電性組成物が、
(a)インジウムスズ酸化物粉末、アンチモンスズ酸化物粉末およびそれらの混合物からなる群から選択される導電性酸化物粉末10〜70重量%と、
(b)第1の有機溶剤に溶解された10〜50重量%の熱可塑性ウレタン樹脂を含む、第1の有機媒体10〜50重量%(前記熱可塑性ウレタン樹脂の重量パーセントが前記第1の有機媒体の全重量に基づく)と、
(c)第2の有機溶剤に溶解された10〜50重量%の熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂を含む第2の有機媒体10〜50重量%(前記熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂の重量パーセントが前記第2の有機媒体の全重量に基づく)と、
(d)第3の有機溶剤中に少なくとも1の電気活性ポリマーを含む第3の有機媒体10〜50重量%と、を含み、
前記導電性酸化物粉末、前記第1の有機媒体、前記第2の有機媒体および前記第3の有機媒体の重量パーセントが前記ポリマー厚膜導電性組成物の全重量に基づいており、
前記ポリマー厚膜導電性組成物が乾燥されて前記透明導体を形成する、電気回路。
【請求項2】
封入剤層をさらに含む、請求項1に記載の電気回路であって、
前記封入剤層が、
(i)前記ポリマー厚膜導電性組成物の第1および第2の有機媒体中に存在するのと同じポリマーを、同じ比または異なった比で含む、乾燥された封入剤層(前記封入剤層が堆積および乾燥される前に、前記ポリマー厚膜導電性組成物が乾燥される)、および
(ii)1または複数の紫外線硬化性ポリマーを含む紫外線硬化された封入剤層(前記封入剤層が堆積および紫外線硬化される前に、前記ポリマー厚膜導電性組成物が乾燥される)、からなる群から選択される、電気回路。
【請求項3】
熱成形可能な銀導体をさらに含む、請求項1に記載の電気回路であって、
前記透明導体が、前記熱成形可能な銀導体上に形成されているか、または、前記ポリマー厚膜導電性組成物を乾燥させて前記透明導体を形成した後、前記熱成形可能な銀導体が前記透明導体の上に形成される、電気回路。
【請求項4】
熱成形可能な銀導体をさらに含む、請求項2に記載の電気回路であって、
前記透明導体が、前記熱成形可能な銀導体上に形成されており、
前記封入剤層が前記透明導体上に堆積されるか、または、前記ポリマー厚膜導電性組成物を乾燥させて前記透明導体を形成した後、前記封入剤層が前記熱成形可能な銀導体上に堆積される前に、前記熱成形可能な銀導体が前記透明導体の上に形成される、電気回路。
【請求項5】
前記ポリマー厚膜導電性組成物が
(e)第4の有機溶剤1〜20重量%をさらに含み、
前記第4の有機溶剤がジアセトンアルコールであり、
前記重量パーセントが、前記ポリマー厚膜導電性組成物の全重量に基づいている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気回路。
【請求項6】
前記電気回路が熱成形される、請求項5に記載の電気回路。
【請求項7】
前記電気回路が、熱成形された後に、射出成形法に供せられる、請求項6に記載の電気回路。
【請求項8】
触覚応答を有する透明導体を含む電気回路であって、
前記透明導体が、触覚応答機能を有するポリマー厚膜導電性組成物から形成され、
前記ポリマー厚膜導電性組成物が、
(a)インジウムスズ酸化物粉末、アンチモンスズ酸化物粉末およびそれらの混合物からなる群から選択される導電性酸化物粉末10〜70重量%と、
(b)第1の有機溶剤に溶解された10〜50重量%の熱可塑性ウレタン樹脂を含む第1の有機媒体10〜50重量%(前記熱可塑性ウレタン樹脂の重量パーセントが前記第1の有機媒体の全重量に基づく)と、
(c)第2の有機溶剤中に少なくとも1の電気活性ポリマーを含む第2の有機媒体10〜50重量%と、を含み、
前記導電性酸化物粉末、前記第1の有機媒体および前記第2の有機媒体の重量パーセントが、前記ポリマー厚膜導電性組成物の全重量に基づいており、
前記ポリマー厚膜導電性組成物が乾燥されて前記透明導体を形成する、電気回路。
【請求項9】
封入剤層をさらに含む、請求項8に記載の電気回路であって、
前記封入剤層が、
(i)前記ポリマー厚膜導電性組成物の前記第1の有機媒体中に存在するのと同じポリマーを含む乾燥された封入剤層(前記封入剤層が堆積および乾燥される前に、前記ポリマー厚膜導電性組成物が乾燥される)、および
(ii)1または複数の紫外線硬化性ポリマーを含む紫外線硬化された封入剤層(前記封入剤層が堆積および紫外線硬化される前に、前記ポリマー厚膜導電性組成物が乾燥される)、からなる群から選択される、電気回路。
【請求項10】
熱成形可能な銀導体をさらに含む、請求項8に記載の電気回路であって、
前記透明導体が、前記熱成形可能な銀導体上に形成されているか、または、前記ポリマー厚膜導電性組成物を乾燥させて前記透明導体を形成した後、前記熱成形可能な銀導体が前記透明導体の上に形成される、電気回路。
【請求項11】
熱成形可能な銀導体をさらに含む、請求項9に記載の電気回路であって、
前記透明導体が、前記熱成形可能な銀導体上に形成されており、
前記封入剤層が前記透明導体上に堆積されるか、または、前記ポリマー厚膜導電性組成物を乾燥させて前記透明導体を形成した後、前記封入剤層が前記熱成形可能な銀導体上に堆積される前に、前記熱成形可能な銀導体が前記透明導体の上に形成される、電気回路。
【請求項12】
前記ポリマー厚膜導電性組成物が、
(d)第3の有機溶剤1〜20重量%、をさらに含み、
前記第3の有機溶剤がジアセトンアルコールであり、
前記重量パーセントが前記ポリマー厚膜導電性組成物の全重量に基づいている、請求項8〜11のいずれか一項に記載の電気回路。
【請求項13】
前記電気回路が熱成形されている、請求項12に記載の電気回路。
【請求項14】
前記電気回路が、熱成形された後に、射出成形法に供せられる、請求項13に記載の電気回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎基材の熱成形が行なわれる適用において使用されてもよい触覚応答を有するポリマー厚膜透明導電性組成物に関する。ポリカーボネート基材がしばしば使用され、全くバリア層を使用せずに導体が使用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
以前から導電性ポリマー厚膜(PTF)回路が電気素子として使用されている。それらはこれらの種類の用途において多年にわたって使用されてきたが、熱成形法においてPTF銀導体を使用することは一般的ではない。これは、過酷な熱成形プロセスの後に高導電性銀組成物が必要とされる回路において特に重要である。さらに、熱成形のために使用される典型的な基材はポリカーボネートであり、非常にしばしば導体はこの基材に適合しない。本発明の目的の1つは、これらの問題を軽減することと、触覚応答を有する印刷された透明導体をポリカーボネートなどの好ましい基材上で使用することができるかまたはそれを銀の下または上で印刷することができる容量性回路積層体の一部として使用することができる導電性熱成形可能構造物を製造することである。本発明の別の基本目的は、触覚応答を透明導体に導入することである。触覚技術、またはハプティックスは、力、振動、または動きをユーザーに加えることによって触覚を利用する触覚フィードバック技術である。触覚装置は、境界面上にユーザーによって加えられた力を測定する触覚センサーを組み込んでもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、
(a)インジウムスズ酸化物粉末、アンチモンスズ酸化物粉末およびそれらの混合物からなる群から選択される導電性酸化物粉末10〜70重量%と、
(b)第1の有機溶剤に溶解された10〜50重量%の熱可塑性ウレタン樹脂を含む第1の有機媒体10〜50重量%(熱可塑性ウレタン樹脂の重量パーセントが第1の有機媒体の全重量に基づいている)と、
(c)第2の有機溶剤に溶解された10〜50重量%の熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂を含む第2の有機媒体10〜50重量%(熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂の重量パーセントが第2の有機媒体の全重量に基づいている)と、
(d)第3の有機溶剤中に少なくとも1つの電気活性ポリマーを含む第3の有機媒体10〜50重量%とを含む触覚応答機能を有する第1のポリマー厚膜透明導電性組成物に関し、
導電性充填剤、第1の有機媒体、第2の有機媒体および第3の有機媒体の重量パーセントは、ポリマー厚膜導電性組成物の全重量に基づいている。
【0004】
実施形態において、触覚応答を有するポリマー厚膜透明導電性組成物は、
(e)第4の有機溶剤1〜20重量%をさらに含み、第4の有機溶剤はジアセトンアルコールであり、重量パーセントはポリマー厚膜導電性組成物の全重量に基づいている。
【0005】
また、本発明は、
(a)インジウムスズ酸化物粉末、アンチモンスズ酸化物粉末およびそれらの混合物からなる群から選択される導電性酸化物粉末10〜70重量%と、
(b)第1の有機溶剤に溶解された10〜50重量%の熱可塑性ウレタン樹脂を含む第1の有機媒体10〜50重量%(熱可塑性ウレタン樹脂の重量パーセントが第1の有機媒体の全重量に基づいている)と、
(c)第2の有機溶剤中に少なくとも1つの電気活性ポリマーを含む第2の有機媒体10〜50重量%とを含む触覚応答を有する第2のポリマー厚膜透明導電性組成物に関し、
導電性充填剤、第1の有機媒体および第2の有機媒体の重量パーセントは、ポリマー厚膜導電性組成物の全重量に基づいている。
【0006】
実施形態において、触覚応答機能を有するポリマー厚膜透明導電性組成物は、
(d)第3の有機溶剤1〜20重量%をさらに含み、第3の有機溶剤がジアセトンアルコールであり、重量パーセントは、ポリマー厚膜導電性組成物の全重量に基づいている。
【0007】
一実施形態において、導電性酸化物粉末粒子は、フレークの形態である。
【0008】
本発明はさらに、熱成形可能な導電性組成物を使用して容量性スイッチのための導電性電気回路を形成することに関し、特に、構造物全体の熱成形においての使用に関する。一実施形態において封入層は、乾燥されたPTF透明導体組成物の上に堆積される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、電気回路、特に、容量性スイッチ回路を熱成形するのに使用するためのポリマー厚膜透明導電性組成物に関する。導体の層を基材上に印刷し、乾燥させて機能回路を製造し、次に、回路全体を、回路をその所望の三次元特性に変形する圧力および熱、すなわち、熱成形に供する。
【0010】
ポリマー厚膜で熱成形された回路において一般に使用される基材は、ポリカーボネート(PC)、PVC等である。PCは、比較的高い温度において熱成形され得るので、一般的に好ましい。しかしながら、PCは、その上に堆積される層において使用される溶剤に非常に影響されやすい。
【0011】
ポリマー厚膜(PTF)導電性組成物は、(i)インジウムスズ酸化物(ITO)粉末、アンチモンスズ酸化物(ATO)粉末およびそれらの混合物からなる群から選択される導電性酸化物粉末、(ii)第1の有機溶剤に溶解された第1のポリマー樹脂を含む第1の有機媒体、(iii)第2の有機溶剤に溶解された第2のポリマー樹脂を含有する第2の有機媒体、および(iv)第3の有機溶剤中に1つまたは複数の電気活性ポリマーを含む第3の有機媒体からなる。
【0012】
PTF透明導電性組成物が上に印刷される下地基材のひび割れまたは歪みを生じない実施形態において、PTF導電性組成物は、第4の溶剤、ジアセトンアルコールをさらに含む。
【0013】
さらに、粉末および印刷助剤を添加して組成物を改良してもよい。
【0014】
透明という用語の使用は、相対的な使用である。ここにおいて、透明は、印刷された/乾燥された導体を通る少なくとも30%の光の透過率を意味することが意図される。
【0015】
本発明の電気導電性組成物の各成分を以下に詳細に検討する。
【0016】
A.透明導電性粉末
当該厚膜組成物中の導体は、ITO粉末、ATO粉末、またはそれらの混合物である。粉末粒子の様々な粒径および形状が考えられる。実施形態において、導電性粉末粒子は、球状粒子、フレーク、棒状体、円錐体、板状体、およびそれらの混合物など、任意の形状を包含してもよい。一実施形態において、ITOはフレークの形態である。
【0017】
実施形態において、ITOおよびATO粉末の粒度分布は0.3〜50ミクロンであり、さらなる実施形態において、0.5〜15ミクロンである。
【0018】
実施形態において、導電性酸化物粉末粒子の表面積/重量比は、1.0〜100m2/gの範囲である。
【0019】
ITOは、スズがドープされた酸化インジウム、Sn:In23、すなわち、典型的に90重量%のIn23および10重量%のSnO2を有するIn23およびSnO2の固溶体である。ATOは、アンチモンがドープされた酸化スズ、Sb:SnO2、すなわち、典型的に10重量%のSb23および90重量%のSnO2を有するSb23およびSnO2の固溶体である。
【0020】
さらに、少量の他の金属を透明導体組成物に添加して導体の電気的性質を改良してもよいことは公知である。このような金属のいくつかの例には、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、白金、パラジウム、モリブデン、タングステン、タンタル、スズ、インジウム、ランタン、ガドリニウム、ホウ素、ルテニウム、コバルト、チタン、イットリウム、ユウロピウム、ガリウム、硫黄、亜鉛、シリコン、マグネシウム、バリウム、セリウム、ストロンチウム、鉛、アンチモン、導電性炭素、およびそれらの組合せの他、厚膜組成物の技術分野において一般的なその他の金属が含まれる。付加的な金属は全組成物の約1.0重量パーセントまで占めてもよい。しかしながら、これらの金属が加えられる時に透明度が損なわれる場合がある。
【0021】
一実施形態において、導電性酸化物粉末は、PTF導電性組成物の全重量に基づいて20〜70重量%で存在している。別の実施形態において、それは30〜60重量%で存在しており、さらに別の実施形態において、それは、またPTF導電性組成物の全重量に基づいて35〜55重量%で存在している。
【0022】
B.有機媒体
触覚応答を有する第1のポリマー厚膜透明導電性組成物
第1の有機媒体は、第1の有機溶剤中に溶解された熱可塑性ウレタン樹脂からなる。ウレタン樹脂は、下地基材に対する十分な接着性を達成しなければならない。それは、熱成形後に回路の性能に適合しなければならず、それに悪影響を与えてはならない。
【0023】
一実施形態において熱可塑性ウレタン樹脂は第1の有機媒体の全重量の10〜50重量%である。別の実施形態において熱可塑性ウレタン樹脂は第1の有機媒体の全重量の15〜45重量%であり、さらに別の実施形態において熱可塑性ウレタン樹脂は第1の有機媒体の全重量の15〜25重量%である。一実施形態において熱可塑性ウレタン樹脂はウレタンホモポリマーである。別の実施形態において熱可塑性ウレタン樹脂はポリエステル系コポリマーである。
【0024】
第2の有機媒体は、第2の有機溶剤に溶解された熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂からなる。第1の有機媒体において使用されるのと同じ溶剤を第2の有機媒体において使用することができ、あるいは異なった溶剤を使用することができるということに留意しなければならない。溶剤は、熱成形後に回路の性能に適合しなければならず、悪影響を与えてはならない。一実施形態において熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂は第2の有機媒体の全重量の10〜50重量%である。別の実施形態において熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂は第2の有機媒体の全重量の15〜45重量%であり、さらに別の実施形態において熱可塑性樹脂は、第2の有機媒体の全重量の20〜30重量%である。
【0025】
第3の有機媒体は、回路のために触覚応答を提供する少なくとも1つの電気活性ポリマー(EAP)を含有する。EAPのタイプは、誘電体であってもイオンであってもどちらでもよい。両方の例は、文献において得られる。第3の有機溶剤は、EAPと相溶性でなければならない。一実施形態においてEAPは、第3の有機媒体の全重量の10〜50重量%である。別の実施形態においてEAPは、第3の有機媒体の全重量の15〜45重量%であり、さらに別の実施形態においてEAPは、第3の有機媒体の全重量の15〜25重量%である。
【0026】
典型的にポリマー樹脂を機械混合によって有機溶剤に添加して媒体を形成する。ポリマー厚膜導電性組成物の有機媒体に使用するために適した溶剤は当業者によって認識され、酢酸塩およびカルビトールアセテートおよびアルファ−またはベータ−テルピネオールなどのテルペンまたはそれらとケロシン、ジブチルフタレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ヘキシレングリコールおよび高沸点アルコールおよびアルコールエステルなどの他の溶剤との混合物などが含まれる。さらに、基材上に適用後の急速な硬化を促進するための揮発性液体が含有されてもよい。本発明の多くの実施形態において、グリコールエーテル、ケトン、エステルなどの溶剤および同様な沸点(180℃〜250℃の範囲)のその他の溶剤、ならびにそれらの混合物を用いてもよい。所望の粘度および揮発度要件を得るためにこれらとその他の溶剤との様々な組合せが調合される。使用される溶剤は、樹脂を可溶化しなければならない。
【0027】
触覚応答を有する第2のポリマー厚膜透明導電性組成物
第1の有機媒体は、第1の有機溶剤中に溶解された熱可塑性ウレタン樹脂からなる。ウレタン樹脂は、下地基材に対する十分な接着性を達成しなければならない。それは、熱成形後に回路の性能に適合しなければならず、それに悪影響を与えてはならない。
【0028】
一実施形態において熱可塑性ウレタン樹脂は、第1の有機媒体の全重量の10〜50重量%である。別の実施形態において熱可塑性ウレタン樹脂は第1の有機媒体の全重量の15〜45重量%であり、さらに別の実施形態において熱可塑性ウレタン樹脂は第1の有機媒体の全重量の15〜25重量%である。一実施形態において熱可塑性ウレタン樹脂はウレタンホモポリマーである。別の実施形態において熱可塑性ウレタン樹脂はポリエステル系コポリマーである。
【0029】
第2の有機媒体は、回路のために触覚応答を提供する少なくとも1つの電気活性ポリマー(EAP)を含有する。EAPのタイプは、誘電体であってもイオンであってもどちらでもよい。両方の例は、文献において得られる。第2の有機溶剤は、EAPと相溶性でなければならない。一実施形態においてEAPは、第3の有機媒体の全重量の10〜50重量%である。別の実施形態においてEAPは、第3の有機媒体の全重量の15〜45重量%であり、さらに別の実施形態においてEAPは、第3の有機媒体の全重量の15〜25重量%である。
【0030】
典型的にポリマー樹脂を機械混合によって有機溶剤に添加して媒体を形成する。ポリマー厚膜導電性組成物の有機媒体に使用するために適した溶剤は当業者によって認識され、酢酸塩およびカルビトールアセテートおよびアルファ−またはベータ−テルピネオールなどのテルペンまたはそれらとケロシン、ジブチルフタレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ヘキシレングリコールおよび高沸点アルコールおよびアルコールエステルなどの他の溶剤との混合物などが含まれる。さらに、基材上に適用後の急速な硬化を促進するための揮発性液体が含有されてもよい。本発明の多くの実施形態において、グリコールエーテル、ケトン、エステルなどの溶剤および同様な沸点(180℃〜250℃の範囲)のその他の溶剤、ならびにそれらの混合物を用いてもよい。所望の粘度および揮発度要件を得るためにこれらとその他の溶剤との様々な組合せが調合される。使用される溶剤は、樹脂を可溶化しなければならない。
【0031】
付加的な有機溶剤
他の実施形態において第1および第2のポリマー厚膜透明導電性組成物は、別の有機溶剤、ジアセトンアルコールをさらに含む。一実施形態においてジアセトンアルコールはPTF導電性組成物の全重量の1〜20重量%である。別の実施形態においてジアセトンアルコールはPTF導電性組成物の全重量の3〜12重量%であり、さらに別の実施形態においてジアセトンアルコールはPTF導電性組成物の全重量の4〜6重量%である。
【0032】
付加的な粉末
様々な粉末をPTF導体組成物に添加して接着性を改良し、レオロジーを変え、低剪断粘度を増加させ、それによって印刷適性を改良してもよい。
【0033】
PTF導体組成物の適用
「ペースト」とも称される、PTF導体は典型的に、ガスおよび湿気に対して不透質である、ポリカーボネートなどの基材上に堆積される。また、基材は、プラスチックシートとその上に堆積される任意選択の金属または誘電体層との組合せから構成される複合材料のシートであり得る。また、透明導体が、DuPont 5042または5043(DuPont Co.,Wilmington,DE)などの熱成形可能なAg導体の上に、または熱成形可能な誘電体層の上に堆積されてもよい。あるいは、熱成形可能なAg導体が、透明導体の上に形成されてもよい。
【0034】
PTF導体組成物の堆積は典型的にスクリーン印刷によって行なわれるが、スクリーン印刷、ステンシル印刷、シリンジ分注またはコーティング技術などの他の堆積技術を利用することができる。スクリーン印刷の場合、スクリーンメッシュの大きさが、堆積された厚膜の厚さを制御する。
【0035】
一般的に、厚膜組成物は、適切な電気的機能性を組成物に与える機能相を含む。機能相は、機能相のためのキャリアとして作用する有機媒体中に分散された電気的機能性粉末を含む。一般的に、組成物を焼成してポリマーと有機媒体の溶剤との両方を燃焼消失させ、電気的機能性を付与する。しかしながら、ポリマー厚膜の場合、有機媒体のポリマー部分は、乾燥後に組成物の一体部分のまま存在し、したがって、得られた導体の一体部分である。
【0036】
PTF導体組成物は、全ての溶剤を除去するために必要な時間および温度で加工される。例えば、堆積された厚膜は典型的に10〜15分間にわたって130℃の熱暴露によって乾燥される。
【0037】
回路構成
容量性スイッチ回路については使用される基礎基材は典型的に、厚さ10ミルのポリカーボネートである。導体組成物を上に記載された条件の通りに印刷し、乾燥させた。いくつかの層を印刷して乾燥させることができる。後続の工程は、ユニット全体を熱成形(190℃、750psi)する工程を包含してもよく、それは3D容量性スイッチ回路の製造において典型的である。一実施形態において、乾燥されたPTF導電性組成物、すなわち、透明導体の上に封入層が堆積され、次に、乾燥される。
【0038】
触覚応答機能を有する第1のPTF透明導電性組成物を使用して透明導体を形成する実施形態において、封入剤は、PTF導電性組成物中に含有されるのと同じ有機媒体からなり、すなわち、PTF導電性組成物の第1および第2の有機媒体中に存在するのと同じ比の同じポリマーからなる。別のこのような実施形態において、封入剤は、PTF導電性組成物中に含有されるのと同じ有機媒体からなり、すなわち、PTF導電性組成物の第1および第2の有機媒体中に存在しているのと異なった比であるが同じポリマーからなる。
【0039】
触覚応答機能を有する第2のPTF透明導電性組成物が使用される実施形態において、封入剤は、PTF導電性組成物中に含有されるのと同じ有機媒体からなり、すなわち、PTF導電性組成物の第1の有機媒体中に存在するのと同じポリマーからなる。
【0040】
別の実施形態において、封入剤層は、乾燥されたPTF導電性組成物の上に堆積され、次に紫外線硬化される。この実施形態において封入剤は、1つまたは複数の紫外線硬化性ポリマー、例えば、アクリレート系ポリマーからなる。封入剤層を形成するために適した1つのPTF紫外線硬化性組成物は、高伸長ウレタンオリゴマー、アクリレートモノマー、アクリル化アミンおよび無機粉末からなる。
【0041】
封入剤の使用によって、熱成形された回路の歩留りが改善される、すなわち破損率を減少させることが見出された。
【0042】
3次元容量性回路を製造する間、熱成形工程の後に、最終工程はしばしば、ポリカーボネートなどの樹脂を使用して射出成形によって完成回路が形成される成形工程である。このプロセスはイン・モールディングとも称され、より高い温度を必要とする。選択される樹脂に応じて、これらの温度は典型的に、10〜30秒間にわたって250℃を超える。このようにPTF組成物に使用される樹脂の選択は重要である。本PTF組成物に使用される樹脂の組合せは金型内プロセスに耐え、完全に機能回路部品を製造することが示されているのに対して、PTF組成物に典型的に使用される大抵の樹脂はそうではない。