(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記微粒子原料金属を、バインダーと混合することが、前記微粒子原料金属及び前記バインダーを前記溶媒中で湿式ボールミリングすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
前記脱バインダーした顆粒を焼結することが、前記脱バインダーした顆粒が、前記脱バインダーした顆粒同士の間の接触点で一緒に融合するが、前記脱バインダーした顆粒が平均で少なくとも20%の非融合表面積を保つまで行われる、請求項1に記載の方法。
前記少なくとも部分的に焼結することが、前記顆粒が互いに接続され、少なくとも部分的に焼結された顆粒の脆弱体を形成するように行われ、前記分離が、前記脆弱体を砕いて、前記実質的に球状の金属粉末を回収することにより達成される、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
これらの代表的実施形態は、当業者による本発明の実施を可能にするよう十分詳細に記載されてはいるが、他の実施形態も実現され得ること、並びに本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明に対する種々の変更をなし得ることは理解されるべきである。したがって、本発明の実施形態についての以下のより詳細な記載は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定することを意図するものではないが、限定ではなく例示のみを目的として、本発明の特徴及び特性を記載し、本発明の操作の最良の形態を説明し、かつ当業者による本発明の実施を十分に可能にするために、提示される。したがって、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲のみによって規定されるものとする。
【0014】
定義
本発明の記載及び特許請求において、以下の用語を使用する。本明細書で使用するとき、「空隙体積」は、グリーン体、予備焼結集合(pre-sintered mass)又は部分的に焼結された脆弱体における、固体顆粒同士の間の空間の体積を指す。したがって、空隙体積の百分率は、固体顆粒が占めていない集合全体又は部分的に焼結された脆弱体の体積のパーセントである。空隙体積は、例えば空気、真空、又は他の流体が占めていてもよい。
【0015】
本明細書で使用するとき、「顆粒」は、微粒子原料金属粒子の凝集物を指す。顆粒は、バインダー中の原料金属粒子を含んでもよい。脱バインダーした顆粒は、バインダーの一部又は全てが脱バインダー工程で除去された後、原料金属粒子を含んでもよい。金属顆粒の部分的に又は完全に焼結された脆弱体内では、それぞれの顆粒は、焼結温度で一緒に融合した原料金属粒子を含んでもよく、バインダーは全て除去されている。
【0016】
本明細書で使用するとき、「焼結」は、一般に、圧密された金属粉末を加熱して、金属粉末粒子を一緒に融合させるプロセスを指す。通常、「焼結」は、十分な温度に加熱し、十分な長さの時間保持して、標準的な商業仕様により、完全に又はほぼ完全に高密度化することを意味する。しかし、「部分的な焼結」は、部分的な高密度化を達成する加熱を指し、完全に焼結された製品よりも低い密度の部分的に焼結された製品を生じる。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態において、粒子又は顆粒の特性に関して、平均が与えられ得る。別様で記述されない限り、このような特性の全ての平均値は、粉末、予備焼結集合、部分、又は部分的に焼結された脆弱体における個別の粒子に基づく数平均である。例えば、「平均粒径」は、数平均粒径を指し、「平均顆粒サイズ」は、顆粒の数平均サイズを指す。
【0018】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈で明確に別様が規定されない限り、複数への言及を含む。したがって、例えば「粒子」への言及は、1つ以上のかかる材料への言及を含み、「焼結」への言及は、1つ以上のかかる工程を指す。
【0019】
特定の性質又は状況に関して本明細書で使用する場合、「実質的に」とは、ばらつきが、特定の性質又は状況から測定され得る程に外れるようなものではなく、十分わずかなものであることを意味する。許容され得るばらつきの正確な程度は、場合によっては具体的な文脈に依存し得る。
【0020】
本明細書で使用する場合、複数の項目、構造要素、構成要素、及び/又は材料は、便宜上、共通の一覧で示され得る。しかし、これらの一覧は、あたかも一覧の各要素が、別個の独自の要素として個々に認識されるように解釈されるべきである。したがって、かかる一覧の個々の要素は、別途記載のない限り、共通の群のなかでのこれらの提示のみに基づき、同じ一覧の任意の他の要素の事実上の均等物として解釈されるべきでない。
【0021】
濃度、量、及び他の数値データは、範囲の形式で本明細書で提示され得る。かかる範囲の形式は単に、便宜上及び簡潔性のために用いられることを理解されたく、かつ、範囲の限定として明示的に列挙される数値を含むだけでなく、あたかも各数値及び部分範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含されている個々の数値又は部分範囲全ても含むと柔軟に解釈されるべきである。例えば、約1〜約4.5の数的範囲は、1〜約4.5の明示的に列挙された限界だけでなく、2、3、4等の個々の数字、及び1〜3、2〜4等の副範囲も含むと解釈されるべきである。同じ原理は、「約4.5未満」等の1つの数的値のみを列挙する範囲に適用され、これは、上で列挙される値及び範囲の全てを含むと解釈されるべきである。更に、記載されている範囲の幅又は特性に関係なく、かかる解釈を適用するべきである。
【0022】
任意の方法又はプロセスの請求項で列挙した任意の工程は、任意の順序で実行してよく、特許請求の範囲に提示される順序に限定されるべきでない。ミーンズ・プラス・ファンクション(means-plus-function)又はステップ・プラス・ファンクション(step-plus-function)の限定は、特定の請求項の限定に対し、以下の条件の全て:a)「〜のための手段(means for)」又は「〜のための工程(step for)」が明示的に列挙され、かつb)対応する機能が明示的に列挙される場合にのみ、用いられるであろう。ミーンズ・プラス・ファンクションを支える構造、材料又は動作は、本明細書における記載で明示的に列挙される。したがって、本発明の範囲は、単に本明細書で与えられる記載及び実施例ではなく、添付の特許請求の範囲及びこれらの法的均等物によってのみ決定されるべきである。
【0023】
実質的に球状の金属粉末の形成
粉末冶金は、従来の融解及び展伸冶金技術に対する低コストの代案である。しかし、粉末冶金も課題を提示する。いくつかの原料金属では、原料として使用される粉末の製造コストが非常に高いことがあり、粉末冶金アプローチの利点及び競争力を最小化する。特に、チタン金属は、粉末冶金のための良好な候補であるが、チタン金属粉末は、製造が非常に高価であり得る。
【0024】
典型的には、チタン金属及びチタン合金粉末は、いくつかの異なるアプローチのうちの1つによって作製され得る。最も一般的なアプローチのうちの1つは、水素化及び脱水素化法である。水素化チタン粉末は、チタン金属を水素化することにより作製できる。工業では、水素化チタンは、スポンジチタン(titanium sponge)を、比較的高い温度(約700℃)で、水素(H
2)フロー雰囲気下で水素化することにより作製される。水素化スポンジチタンを、様々なサイズの粉末に砕いた後、脱水素化して、チタン金属粉末を製造することができる。このチタン金属粉末は、通常HDH粉末として知られている。HDH粉末は、通常、不規則形状粒子から構成される。また、HDH粉末は、スクラップされたTi部品又はTi合金の機械加工の切削屑を含むチタン金属合金スクラップを水素化することにより作製される。
【0025】
一般に使用される1つのチタン合金は、Ti−6Al−4Vである。商業的に製造されるTi−6Al−4V合金粉末は、通常、アトマイズ技術を使用して作製される。例えば、プラズマ回転電極プロセス(PREP:plasma rotating electrode process)は、電極を使用して、Ti−6Al−4V合金を融解させた後、融解金属の液滴を急速凝固させることを含む。PREPは、一般に、均一な合金組成、球形状、及び低酸素量の高品質の粉末を生じる。しかし、PREP粉末は、極めて高価であり、1キログラム当たり$150〜$500の範囲である。したがって、PREP Ti−6Al−4V粉末から構成要素を作製することは、低コストの代案ではない。
【0026】
近年、新しく現れた製造技術により、特定の粒径及び粒径分布を有する球状チタン粉末に対する強く新しい需要が生じている。この新しい製造技術は、一般に付加製造又は3D印刷と呼ばれる。金属粉末を使用する3D印刷に関して、チタンは製品を作製するための一般的な材料である。例えば、チタン合金は、生物医学的インプラント及び人工装具を作製するために使用される。3D印刷を使用して、特定の患者用にカスタム設計された生物医学的インプラントを形成できる。航空機用の複雑な構成要素の作製は、チタンでの3D印刷の別の代表的用途である。3D印刷を使用して構成要素を製造する利点としては、高価なモデル又は金型を作製する必要がないことによるコスト節約、従来の方法を使用して作製することが難しい複雑な幾何学的形状を有する構成要素を組み立てることができること、大量に必要ではない特定の用途に最適化された部品をカスタマイズできることが、とりわけ挙げられる。
【0027】
しかし、チタン部品の3D印刷用のチタン粉末は、一般に、幾分厳密な要件を受ける。いくつかの3D印刷用途は、球形粒子を必要とする。特定の粒径及び狭い粒径分布も、必要とされることがある。更に、粉末の酸素含有量は、ASTM規格の要件又はエンドユーザの要求を満たし得る。
【0028】
また、球状の微細なチタン粉末は、チタン部品の射出成形のために有用でもある。金属粉末射出成形(MIM:Metal powder injection molding)は、複雑な幾何学的形状を有する小さな部品を大量に作製するための低コストの製造技術である。
【0029】
規定の粒径を有する球状のチタン粉末の製造は、難しく、高価であることがある。したがって、球状のチタン粉末を製造する低コストの方法は、工業において非常に有用であろう。本開示は、チタン及びチタン合金粉末のコストを削減する可能性を有する新しい方法であって、粉末冶金、例えば付加製造、金属粉末射出成形、熱間等方圧加圧、及び表面コーティングのために使用できる方法を記載している。これらの球状粉末は、航空宇宙、生物医学、化学、輸送、油田、消費者スポーツ、電子、及び他の産業用のチタン構成要素の製造で有用であり得る。
【0030】
上記の記載を念頭に、
図1は、本発明の実施形態に従う実質的に球状の金属粉末を製造する方法100を示す。方法は、一次微粒子を含み、平均出発粒径を有する微粒子原料金属を準備することを含む(110)。微粒子原料金属を、ポリマーバインダーと混合及び/又はボールミリングして、スラリーを形成する(120)。ボールミリングの目的は、原料金属粒子のサイズを減少させることである。ボールミリングは、水及び/又は有機溶媒を含む液体中で行ってもよい。溶媒及びポリマーバインダーの1つの機能は、ミリング中に、粉末が空気に曝露されることを保護すること、及び微粒子を結合させて、顆粒を形成することである。スラリーを造粒して、実質的に球状の顆粒を形成し、ここでそれぞれの顆粒は、微粒子原料金属の凝集物を含む(130)。顆粒を脱バインダー温度で脱バインダーし、顆粒のバインダーを除去して、脱バインダーした顆粒を形成してもよい(140)。脱バインダーした顆粒を、焼結温度で部分的に又は完全に焼結して、それぞれの顆粒内の粒子が一緒に融合し、部分的に焼結された顆粒の集合を形成するようにしてもよい(150)。大抵の場合、顆粒同士の間の結合を最小化しながら顆粒が焼結することを可能にするように焼結プロセスが制御され、顆粒が互いに接続されず、顆粒の緩い集合を形成することを可能にするが、いくつかの場合には、顆粒は互いに接触点で結合し、結合した顆粒の脆弱体を形成してもよい。部分的に又は完全に焼結された顆粒は、脆弱体を砕くことにより分離され、実質的に球状の金属粉末を形成してもよい(160)。脱バインダー及び焼結は、別々に行ってもよく、又は同じ炉で2つの別個の段階として行ってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、微粒子原料金属は、水素化チタン粉末であってもよい。水素化チタン粉末は、水素ガスをスポンジチタン又はTiスクラップ金属と反応させることによって形成され得る。水素化されたスポンジチタンは、ミリング又は他の手段によって、粉末に粉砕できる。また、微粒子原料金属は、合金化成分を含んでもよい。例えば、水素化チタン粉末は、アルミニウム及びバナジウム粉末、又は工業で「母合金」粉末として知られているAl−V合金粉末と、Ti−6Al−4Vを生じるのに正確な量でブレンドされてもよい。Tiについての他の合金化元素としては、Fe、Nb、Zr、Mo等が挙げられ、他の合金化成分をブレンドすることにより形成できる。
【0032】
他の実施形態では、微粒子原料金属は、元素金属であってもよい。微粒子原料金属は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、トリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、ニッケル、銅、コバルト、及び鉄からなる群から選択されてもよい。また、微粒子原料は、これらの金属同士の合金、又はこれらの金属と他の金属若しくは非金属との合金であってもよい。いくつかの場合には、微粒子原料は、上記の金属の水素化物、上記の金属の酸化物、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0033】
別の任意の態様では、微粒子原料は、回収されたチタンスクラップ材料であってもよい。チタン構成要素、チタン合金を使用する構造及び装置の製造中、多くの場合、Tiの加工屑が生じる。また、スクラップ金属は、単純に金属片が廃棄されるために生じる。このようなスクラップチタン及び他のチタン合金(例えばTi−6Al−4V)は、本発明に従う球状のTi粉末を作製するための原料金属として使用できる。スクラップTiは、加工工程のために、選別、洗浄、調製されてもよい。
【0034】
一実施形態では、(合金を含む)スクラップTiは、雰囲気炉内で、水素雰囲気下で水素化されてもよい。水素化プロセス中、材料を400〜900℃の範囲の温度に加熱してもよい。Ti材料は、加熱温度及び冷却中に、対応するTi−H相図又は(Ti合金−H)相図に従い水素化される。Tiを水素化するための任意の適切な機器及びプロセスを使用してもよい。
【0035】
追加の例として、微粒子原料は二酸化チタンであってもよい。TiO
2が球状のTi金属又はTi合金粉末を作製するための原料として使用される場合、TiO
2は還元され、TiH
2又はTi金属を形成してもよい。他の還元プロセスが適切であり得るが、1つの代表的技術では、特許出願(2014年8月19日に出願された国際特許出願第PCT/US14/51621号、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるプロセスを使用できる。具体的には、下記のユニット工程を含んでもよい:TiO
2粉末を得ることができる。商業用TiO
2粉末としては、TiO
2顔料が挙げられ、このTiO
2顔料は、おおよそ0.1〜0.3マイクロメートルの典型的なサイズを有する。又は、0.5〜20マイクロメートルのサイズ範囲のTiO
2粉末も使用できる。TiO
2粉末は、Mg又はMgH
2を使用して、水素雰囲気中で還元され、TiH
2を形成できる。還元されたTiH
2の浸出を使用して、MgOを除去してもよい。
【0036】
追加の例として、微粒子原料は、チタンスラグ(Tiスラグ)若しくは高級チタンスラグ(UGS:upgraded Ti slag)、又は合成ルチルであってもよい。Tiスラグは、典型的には、80〜85%のTiO
2を含有するのに対し、UGS及び合成ルチルは、典型的には、90〜97%のTiO
2を含有する。便宜上、Tiスラグ、UGS、及び合成ルチルを全て、加工TiO
2リッチ鉱物(PTRM:processed TiO
2-rich mineral)と呼ぶ。PTRMを、湿式製錬法及び熱化学法を使用して加工し、特定の粒径を有する純粋なTiO
2粉末を製造してもよい。TiO
2粉末は、実質的に不純物を含まない。他の精製プロセスが適切であり得るが、1組の特定の技術を使用してもよい。下記のユニット工程を含んでもよい。最初に、PTRM原料粉末を得る。PTRM原料を、NaOH濃度が50〜600g/Lの範囲のアルカリ溶液で予備浸出(pre-leach)させて、材料中のSiを除去してもよい。その後、予備浸出させた材料を、ロースト加工する。ローストは、予備浸出させたPTRM原料を固体NaOHと混合し、混合物を温度制御静的炉又は回転炉に1〜4時間入れて、チタン酸ナトリウム及び他の金属酸ナトリウムに完全に相変化させることによって行われる。ローストされた製品を水中で洗浄して、残りのNaOH、水溶性金属酸ナトリウムを除去し、また、チタン酸ナトリウムと結合したアルカリを解放(release)する。その後、主にチタン酸(H
2TiO
3)から構成される泥状材料を、希釈HCl溶液中で浸出させて、Ti、及び他の遷移金属種、例えばFeを溶解させる。浸出液を濾過して、不溶性粒子を除去し、純粋な溶液を得る。
【0037】
浸出後、加水分解し、すなわちTi種をメタ−チタン酸(TiO(OH)
2)、若しくはピロタン酸(pyrotannic acid)(H
2Ti
2O
5)、又は様々な含水量を有する他の同様の化合物の形態で、選択的に沈殿させる。沈殿プロセスは、望ましい粒径及び粒径分布をもたらすために制御される。加水分解に影響し得る因子としては、温度、時間、初期溶液の遊離HCl及びTiO
2濃度、並びに、撹拌速度が挙げられる。
【0038】
加水分解後、メタ−チタン酸又はピロタン酸の固体粒子を水ですすぎ、その後、600℃で仮焼(calcination)して、アナターゼTiO
2粒子を製造し、又は900℃で仮焼して、ルチルTiO
2粒子を製造する。いくつかの例では、TiO
2の粒径は、0.2〜100マイクロメートルの範囲であってもよい。更なる例では、TiO
2の粒径は、5〜20マイクロメートルに制御されてもよい。TiO
2粉末は、上記のように、Mg又はMgH
2を使用して還元できる。
【0039】
微粒子原料金属の出発粒径は、一般に、実質的に球状の金属粉末の最終粒径よりも小さくてもよい。いくつかの場合には、平均出発粒径は、約10マイクロメートル未満であってもよい。例えば、平均出発粒径は、約1マイクロメートル〜約10マイクロメートルであってもよい。あるいは、平均出発粒径は、約0.01マイクロメートル〜約1マイクロメートルであってもよい。微粒子原料金属は、多くの場合、不規則形状粒子を有し得るので、出発粒径は、粒子の最長寸法の長さであってもよい。
【0040】
いくつかの例では、出発粒径は30マイクロメートルよりも大きくてもよく、+325メッシュよりも大きくてもよい。これらの比較的粗い粉末を、ミリングによってサイズを減少させて、サイズが30マイクロメートル未満の球状の顆粒を作製することができる。サイズが30マイクロメートルよりも大きい、又は50マイクロメートルよりも大きい球状の顆粒を作製するためには、ボールミリングが必要でなくてもよい。更なる例では、出発粒径は1〜10マイクロメートル又は5マイクロメートル未満であってもよく、これは、ミリング又は粒径減少のための他の技術により達成され得る。
【0041】
なお更なる例では、微粒子原料金属をボールミリングして粒径を減少させ、バインダー及び溶媒と混合してスラリーを形成してもよい。いくつかの実施形態では、微粒子原料金属をバインダーと混合することは、微粒子原料金属及びポリマーバインダーを、有機溶媒、水、又はこれらの混合物中で湿式ミリングすることを含んでもよい。湿式ミリングは、粒径の減少を可能にし得ると共に、粒子表面がミリング中に空気に曝露されることを保護することを可能にし得る。バインダーはポリマーバインダー、例えばパラフィンワックス、PVA、PEG、PVB、PVP、PMMA、微結晶ワックス、及び他の同様のポリマー材料、又はこれらの混合物であってもよい。スラリーは、他の成分、例えば可塑剤、凝集防止剤、界面活性剤、又はこれらの混合物を含んでもよい。
【0042】
バインダーは、スラリー中に、微粒子原料金属よりも少ない体積量で存在してもよい。いくつかの実施形態では、スラリー中のバインダー対微粒子原料金属の比率は、1:10〜1:2であってもよい。他の実施形態では、バインダー対微粒子原料金属の比率は、1:5〜1:1であってもよい。
【0043】
スラリーを造粒して、それぞれの顆粒は微粒子原料金属の凝集物を含む、実質的に球状の顆粒を形成してもよい。いくつかの場合には、造粒は、スラリーを噴霧乾燥させることにより行ってもよい。噴霧乾燥は、材料加工、食品加工、医薬及び他の工業で、スラリーを乾燥させて、造粒された粉末を作製するために使用される技術である。また、造粒は、他の技術、例えば限定するものではないが、回転乾燥技術、振動ペレット化技術、及び凍結乾燥並びに他の造粒技術によって達成されてもよい。
【0044】
造粒後の顆粒の平均顆粒サイズは、原料金属粒子がどの程度高密度にそれぞれの顆粒内に充填されているかに応じて、典型的には、予想される顆粒の平均最終粒径よりも約20%〜約50%大きい範囲であってもよい。サイズは異なってもよいが、顆粒は多くの場合、レーザー付加製造用途及び粉末射出成形プロセス用では、約20マイクロメートル〜約40マイクロメートルであってもよく、又はEBを使用する付加製造では、50〜100マイクロメートルであってもよく、又は熱間等方圧加圧技術を使用する製造用では、100マイクロメートルより大きくてもよい。いくつかの実施形態では、顆粒はサイズによって選別されてもよい。このとき、顆粒をふるいに掛け、望ましい最終粒径に応じて、異なるサイズカット(size cut)に分類してもよい。顆粒は実質的に球状であってもよい。
【0045】
図2は、本発明の実施形態に従う、バインダー230中の微粒子原料金属220の実質的に球状の顆粒210を含むグリーン体集合200を示す。
【0046】
いくつかの場合には、顆粒を、より大きな凝集体集合に圧密してもよく、又はグリーン体集合としてシートに広げ、分布させてもよい。集合は、一般に、薄いシートとして形成されてもよい。集合は、任意の望ましい形状であってもよいが、典型的には、顆粒の約1〜10層(例えば約20μm〜約2mm)の厚さを有する薄いシートを使用してもよい。一実施形態では、グリーン体は、複数の実質的に球状の顆粒を含んでもよく、この顆粒は、接触点で互いに接触しながら、顆粒同士の間で少なくとも20〜40%の空隙体積を保つように圧密されており、それぞれの顆粒は、複数の金属粉末粒子及びポリマーバインダーを含む。
【0047】
別の例では、焼結中に顆粒がCaO粉末によって分離されるように、噴霧乾燥した顆粒がCaO粉末と混合されていてもよい。混合物中のCaOの体積分率は、典型的には、30%よりも高い。また、顆粒対CaOの質量比は、典型的には、10:1〜1:50の範囲であってもよい。混合物を金型プレス(die-press)し、又は冷間等方圧加圧して、顆粒内の大きな空隙を除去してもよい。CaO粒子は、圧力伝達媒体として機能して、グリーン(非焼結)顆粒をより高い相対密度に圧密できる。これは、焼結中の顆粒の高密度化に役立つであろう。CaOを使用し、顆粒と混合することの別の効果は、焼結中に、顆粒を分離して維持することであり、これにより、球状の顆粒同士の間の結合が最小化され、焼結後にミリング及び/又は破砕する必要がなくなる。
【0048】
次の工程として、顆粒を脱バインダーして焼結してもよい。脱バインダーは、熱的脱バインダー及び溶媒脱バインダーを含むいくつかの方法で実施され得る。脱バインダー及び焼結は、特にTi粉末では、同じ炉で実施してもよく、ポリマーバインダーが除去された後に、粉末が空気に曝露されることを回避してもよい。しかし、脱バインダー及び焼結は、2つの別個の工程で行ってもよく、これは、いくつかの場合には利点を有し得る。熱的脱バインダー法を使用する場合、脱バインダー温度は、典型的には50〜400℃である。バインダーの一部又は全ては、脱バインダー工程中に除去され得る。したがって、脱バインダーは、顆粒を脱バインダー温度で、望ましい量のバインダーを除去するのに十分な時間量保持することにより行われてもよい。いくつかの場合には、脱バインダー温度は、約50℃〜約400℃であってもよい。いくつかの実施形態では、脱バインダー温度は、約150℃〜約350℃であってもよい。また、脱バインダー時間は、具体的なバインダーに応じて異なってもよい。いくつかの場合には、脱バインダー時間は、約1時間〜約100時間であってもよい。また、脱バインダーは、所定量のバインダーが除去されるまで進行してもよい。例えば、脱バインダーは、バインダーの少なくとも90%が除去されるまで、大抵の場合、バインダーの実質的に全てが除去されるまで、進行してもよい。当業者は、異なるポリマーバインダーが、異なる脱バインダー温度、複数の脱バインダー温度段階、及び時間を必要とし得ることを認識するであろう。
【0049】
図3は、原料金属粒子320を含む、バインダー含有量が低下した脱バインダーした顆粒310を含む脱バインダーした集合300を示し、バインダー含有量は、いくつかの場合には、完全に除去されている。脱バインダーした顆粒は、ほぼ球形状を保ち、脱バインダーした顆粒同士の間の空隙を有する。脱バインダーした集合は、典型的には、脆弱であってもよく、少なくとも部分的に焼結するまで、低い機械的強度を呈する。
【0050】
脱バインダーした顆粒を、焼結温度で部分的に又は完全に焼結して、それぞれの顆粒内の粒子が一緒に融合し、焼結された顆粒を形成するようにしてもよい。脱バインダー及び焼結は、同じ炉で2つの別個の工程として行ってもよい。特にTiでは、焼結炉と別個の炉で脱バインダーすることは、脱バインダー炉から焼結炉に移すときに、酸素含有量を増加させ得る。したがって、脱バインダー及び焼結の両方を同じ炉で行うことは、空気との接触の回避を可能にし得る。空気との接触は、酸化又は酸素との接触を引き起こし得る。しかし、脱バインダー及び焼結は、2つの別個の炉で2つの別個の工程として行ってもよい。2つの別個の炉での脱バインダー及び焼結は、高温の焼結炉を長時間拘束しないという実用的な利点を有する。材料中の酸素の増加は、その後の脱酸素プロセスで対処してもよい。焼結は、制御された不活性ガス雰囲気中で行われてもよく、この不活性ガス雰囲気は、真空、アルゴン、水素、窒素(TiN粉末の場合)、又はこれらの混合物であってもよい。使用できる1つの焼結方法は、米国特許出願第61/479,177号に記載されている。焼結条件を選択して、それぞれの顆粒内の金属粉末の焼結を促進しながら、顆粒間の結合を最小化してもよい。部分的な焼結は、約700℃〜約1400℃、いくつかの場合には900℃〜約1000℃の焼結温度で行ってもよい。適切な焼結温度は、CP−Ti及びTi−6Al−4V合金で同様である。また、部分的な焼結は、約1秒間〜約100時間、多くの場合、24時間未満の焼結時間で行ってもよい。いくつかの実施形態では、焼結時間は、約30分〜約1時間であってもよい。圧力条件は一般に、大気圧であるか、又は加圧下で保持される。他の実施形態では、焼結は、焼結された顆粒が所定の高密度化レベルに達するまで進行してもよい。具体的な一実施形態では、部分的な焼結は、部分的に焼結された顆粒が約60%〜約80%の高密度化レベル、多くの場合、少なくとも65%に達するまで行われる。
【0051】
更なる実施形態では、部分的な焼結は、脱バインダーした顆粒が、脆弱性及び/又は分離性を保ちながら完全に焼結するまで進行してもよい。例えば、焼結された顆粒は、顆粒同士の間の接触点で一緒に融合してもよいが、顆粒は、個別の顆粒を回収することを可能にするのに十分な非融合表面積を保つ。典型的には、少なくとも約30%の非融合表面積が、焼結された脆弱体を粉砕し、個別の顆粒を回収することを可能にするであろう。いくつかの場合には、非融合顆粒表面積は、実質的に100%であってもよく、これにより、焼結された顆粒は接続されず、独立した顆粒の緩い集まりであるようになっていてもよい。したがって、脱バインダーした顆粒の焼結は、それぞれの焼結された顆粒が、実質的に互いに結合しない状態まで行われてもよい。
【0052】
図4は、本発明の更なる実施形態に従う実質的に球状の金属顆粒410の部分的に焼結された脆弱体400を示す。図に示されるように、原料金属粒子は、一緒に融合しており、これにより、顆粒が、実質的に焼結された球状の金属粒子であるようになっている。これは、焼結工程の前に存在していた別個の原料金属粒子の凝集体とは反対である。焼結された金属顆粒は、接触点420で一緒に結合されるが、十分な量の非融合表面積が保たれており、これにより、凝集体を粉々にして、実質的に球状の粒子を形成できるようになっている。したがって、実質的に球状であることは、脆弱体の粉砕時に、界面の接触点に沿った多少平坦な又は不規則な表面を許容する。
【0053】
焼結後、顆粒が互いに結合している場合、脆弱体にボールミリング又は他の粉砕技術を行い、焼結された顆粒粒子同士の間の接触を破断してもよい。また、他の方法を使用して、脆弱体を砕いてもよい。これにより、実質的に球状の金属粉末が形成される。実質的に球状の粉末は、球状又はほぼ球状の粒子を含んでもよい。球状又はほぼ球状は、3D印刷に適し、低いアスペクト比の寸法を有し、ギザギザ又は不規則な形状を回避する粒子を含む。いくつかの実施形態では、実質的に球状の金属粉末は、約1.5未満の平均粒子アスペクト比を有してもよい。更なる実施形態では、平均粒子アスペクト比は、約1.1未満であってもよい。本明細書で使用するとき、「アスペクト比」は、粒子の最長寸法を粒子の最短寸法で除した値を指す。
【0054】
実質的に球状の金属粉末は、約10〜約500マイクロメートルの平均最終粒径を有してもよい。特定の実施形態では、平均最終粒径は約10〜約40マイクロメートルであってもよく、更なる実施形態では、平均最終粒径は約10〜約30マイクロメートルであってもよく、更なる実施形態では、平均最終粒径は約30〜約80マイクロメートルであってもよく、更なる実施形態では、平均最終粒径は約70〜300マイクロメートルであってもよい。付加製造では、典型的な粒径は、10〜100マイクロメートルの範囲である。粉末射出成形では、典型的な粒径は、10〜45マイクロメートルの範囲である。粉末を熱間等方圧加圧の原料として使用するためには、典型的な粒径範囲は、70〜300マイクロメートルである。スプレーコーティング用途では、典型的な粒径は、10〜30マイクロメートルの範囲である。同様に、多孔質チタン用途では、典型的な粒径は、100〜500マイクロメートルの範囲である。また、実質的に球状の金属粉末は、粒径分布も有する。最終粉末をふるいに掛け、異なるサイズカットにしてもよい。また、球状の金属粉末が狭い粒径分布を有し得るように、脱バインダー前に、顆粒をふるいに掛け、異なるサイズカットにしてもよい。例えば、一実施形態では、実質的に球状の金属粉末の粒子の80%超が、平均最終粒径の20%内の粒径を有する。
【0055】
実質的に球状の金属粉末は、使用される原料金属に応じて、様々な金属であってもよい。いくつかの実施形態では、実質的に球状の金属粉末は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、トリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、ニッケル、更にはアルミニウム及び鉄、これらの合金、並びに上記の金属と1つ若しくは他の金属若しくは非金属との合金、又はこれらの組み合わせ、例えばTi及びTi合金、例えばCP−Ti及びTi−6Al−4V、ニッケル系高温合金、ステンレス鋼、Nb及びNb系合金であってもよい。現在の市販のCP−Ti粉末と比較して、本発明に従う粉末は、より一貫した球形状、及びより狭い粒径分布を有してもよく、これにより、粉末は3D印刷又は射出成形用途に更に適する。Ti−6Al−4V粉末に関して、本粉末は、大幅に低いコストで、PREP Ti−6Al−4V粉末の品質に匹敵し、又はほぼ匹敵する。
【0056】
焼結された顆粒の酸素含有量に応じて、脱酸素工程を行い、酸素含有量を許容可能なレベルに低下させてもよい。非常に多くの場合、チタン粉末及び製品の酸素含有量は、0.2%未満であってもよい。酸素含有量は、Ti合金製品をTi粉末から作製するプロセス中に増加し得るので、Ti又はTi合金粉末の酸素含有量は、いくらかの酸素の取り込みに適応するために、0.2%よりも大幅に低くてもよい。いくつかの場合には、Ti粉末の酸素含有量は、0.15%未満であってもよい。例えば、極低含有量の格子間元素を要求するいくつかの商業用合金の仕様を満たすために、すなわち、いわゆるTi−6Al−4V合金のELIグレードを満たすために、Ti粉末の酸素含有量は、0.13%未満でなければならない。したがって、いくつかの場合には、本技術を使用して製造される球状の粉末は、低い酸素含有量、例えば0.3重量%未満の酸素含有量を有してもよい。
【0057】
脱酸素技術を焼結された粉末に適用することができ、又は脱酸素プロセスを顆粒焼結プロセスと組み合わせることができる。脱酸素工程は、酸素含有量が0.2重量%より高く、40重量%(TiO
2の概算のO%である)より低い粉末に適用してもよく、又は、更なる例では、酸素含有量が0.2〜14.3重量%の粉末に適用してもよい。脱酸素プロセスは、粉末の酸素含有量を、おおよそ0.1%まで容易に低下させることができる。
【0058】
他の脱酸素技術を使用してもよいが、脱酸素のための1つの代表的技術は、カルシウム熱的法(calciothermic method)を使用することにより達成されてもよい。具体的には、カルシウム(Ca)又は水素化カルシウム(CaH
2)を、脱酸素される粉末と、除去される酸素の量に応じた特定の比率に従って混合する。例えば、Ca又はCaH
2の一方又は両方を、粉末と混合してもよい。Caと脱酸素される粉末との間の比率は、粉末の酸素含有量に依存する。Caと粉末中の酸素との間のモル比は、一般に、1:1〜5:1の範囲であってもよい。混合物を、塩、例えばハロゲン化カルシウム塩、ハロゲン化カルシウム−ハロゲン化アルカリ共晶塩、ハロゲン化カルシウム−ハロゲン化カルシウム共晶塩又はこれらの組み合わせと更にブレンドしてもよく、これは、Caと酸素との間の反応を促進するフラックス又は媒体として作用するであろう。一例では、Ca又はCaH
2の融点未満の融点を有する共晶塩混合物を使用してもよい。これは、脱酸素プロセスを、Ca又はCaH
2の融点未満で実施することを可能にし得る。選択される共晶塩は、低い融点を有するので、より低い温度での反応を可能にし、促進する。ハロゲン化カルシウムを有する塩は、一般に、共晶塩の一部であり得る。一例では、CaClの融点は、おおよそ780℃であるのに対し、CaCl−15%KClの共晶点は、おおよそ700℃である。適切なハロゲン化Ca及び共晶塩の非限定例は、以下に与えられる。
a)CaCl
2、CaBr
2、CaI
2を含むハロゲン化カルシウム塩、
b)CaCl
2−LiCl、CaCl
2−KCl、CaCl
2−MgF
2、CaCl
2−LiF、CaCl
2−KF、CaCl
2−NaF、CaCl
2−NaBr、CaCl
2−LiBr、CaCl
2−KBr、CaCl
2−NaI、CaCl
2−LiI、CaCl
2−KI、CaBr
2−LiCl、CaBr
2−KCl、CaBr
2−MgF
2、CaBr
2−LiF、CaBr
2−KF、CaBr
2−NaF、CaBr
2−NaBr、CaBr
2−LiBr、CaBr
2−KBr、CaBr
2−NaI、CaBr
2−LiI、CaBr
2−KI、CaI
2−LiCl、CaI
2−KCl、CaI
2−MgF
2、CaI
2−LiF、CaI
2−KF、CaI
2−NaBr、CaI
2−LiBr、CaI
2−KBr、CaI
2−NaI、CaI
2−LiI、CaI
2−KIを含むハロゲン化カルシウム−ハロゲン化アルカリ共晶塩、
c)CaCl
2−CaBr
2、CaCl
2−CaI
2、CaCl
2−CaF
2、CaBr
2−CaI
2、CaBr
2−CaF
2、CaI
2−CaF
2を含むハロゲン化カルシウム−ハロゲン化カルシウム共晶塩、
d)a)、b)又はc)で記述した3以上の塩から形成される共晶塩であって、1つのカルシウム塩を少なくとも含有する共晶塩。
【0059】
その後、塩及び粉末の混合物全体をボートに充填し、反応器チャンバ内に置き、400〜1200℃、最も多くの場合、500〜900℃の高温に加熱し、1分〜120時間の間、不活性又は還元雰囲気中に保持し、最後に炉を室温に冷却する。上記の脱酸素プロセスの後に生じる混合物はCaOを含有し、CaOは、酸、例えばHClを含有する水溶液中に浸出し得るが、他の浸出剤が適切であってもよい。最終的な脱酸素製品は、酸素含有量が0.3%未満、より多くの場合、0.2%未満の球状のTi又はTi合金粉末であってもよい。
【0060】
図5は、Ca塩混合物510中の脱バインダーした顆粒310を示す。図に示されるように、Ca塩混合物は、顆粒同士の間の空間を占めることができ、これにより、顆粒が焼結プロセス中に分離したままであるようになっている。顆粒は焼結され、球状のチタン粉末粒子になる。Ca塩混合物は、酸素を顆粒から除去し、CaOを形成する。焼結後、CaO及び他の材料を浸出により除去し、緩い球状のチタン粉末を残してもよい。部分的に焼結されたチタン球の脆弱体を粉々にすることを含む上記の例とは異なり、本例では、球状のチタン粉末は、追加の加工がなくても、使用準備が整っている。
【0061】
上記の例は、脱バインダーした顆粒と組み合わせた脱酸素剤を示すが、顆粒を脱酸素剤と混合する前に、顆粒を必ずしも脱バインダーしなくてもよい。いくつかの場合には、脱酸素剤を脱バインダー前の顆粒と混合してもよい。脱バインダー、脱酸素、及び焼結の工程を、全て一緒に行ってもよい。このような例では、脱酸素剤は、圧力伝達媒体として作用して、焼結中に顆粒を更に圧密できる。また、脱酸素剤は、焼結中に顆粒を互いに分離でき、これにより、焼結中に顆粒が互いに結合しないようになっている。他の場合では、脱酸素剤を使用して、酸素を焼結された顆粒から除去する前に、顆粒を脱バインダーし、焼結してもよい。
【0062】
脱酸素工程を、使用する原料(TiH
2、若しくはTiスクラップ、又はTiO
2、若しくは加工TiO
2リッチ鉱物、又は他のTiの形態)にかかわらず、Ti粉末に適用してもよく、原料(金属水素化物、スクラップ、酸化物)又は粉末の形態(球状、不規則、顆粒状、又はその他)にかかわらず、任意の他の金属に適用してもよい。換言すれば、脱酸素工程を、本発明の全ての実施形態に、別個の工程として、又はプロセスの一体部分として組み込んでもよい。
【0063】
したがって、本プロセスにより形成される球状の金属顆粒は、プラズマ形成及び多くの他のプロセスにより呈されるものとは性質の異なる、独特の特徴を呈し得る。したがって、一態様では、実質的に球状の金属顆粒の回収は、本発明の方法により形成され得る。金属顆粒は完全に焼結されてもよく(すなわち、99%よりも高い相対密度)、又は1%〜35%、いくつかの場合には5%〜30%の相対密度を有する多孔質であってもよい。部分的に焼結された顆粒は、完全に焼結された顆粒製品を得るために必要とされるよりも低い温度及び/又はより短い焼結時間の使用により得ることができる。例えば、チタン材料では、約700℃〜約900℃の焼結温度により、部分的な焼結となり得る。プラズマ加工粉末は、偶発的な凝固空隙を除いて、完全に緻密である。プラズマ加工粉末は、凝固した微細構造の特徴の微細構造を有するのに対し、本プロセスの顆粒の微細構造は、このような凝固の特徴を有しない。凝固の特徴は、デンドライト構造、柱状構造、又は超微細構造を含むことがあり、これは、急速凝固により生じるであろう。したがって、本発明により形成される球状の顆粒は、焼結微細構造の微細構造特徴を有し、これは、比較的粗く、平衡に近い相組成であり、多くの場合、サテライト粒子が実質的により少ない。例えば、焼結されたTi−6Al−4Vの微細構造は、アルファ及びベータ相を有する層状であろう。また、焼結されたTi合金の微細構造は、デンドライトも有しないであろう。また、焼結された顆粒の表面形態は、プラズマ加工粉末の表面形態よりも粗いであろう。
【0064】
前述の詳細な説明は、特定の代表的実施形態を参照して本発明について記載している。しかし、添付の特許請求の範囲に説明されている本発明の範囲を逸脱することなく、種々の修正及び変更を行うことができることが理解されるであろう。詳細な説明及び添付図面は、制限するものではなく、単に例示的なものとしてみなされるものとし、かかる全ての修正又は変更は、たとえあったとしても、本明細書で記載及び説明される本発明の範囲内に収まることが意図されている。
【0065】
上記の実施形態及び方法を要約するために、
図6は、実質的に球状のチタン又はチタン合金粉末を製造するための上記の工程のうちのいくつかを含む方法600のフローチャートを示す。最初に、Tiスラグ及び/又は高級Tiスラグを、原料として準備する(610)。Tiスラグ及び/又は高級Tiスラグを、予備浸出、ロースト、浸出、加水分解、及び仮焼によって加工する(620)。これにより、二酸化Tiが製造される(630)。このとき、追加の二酸化Tiを購入し、又は他の方法で入手して、スラグから製造された二酸化Tiに添加してもよい(635)。その後、二酸化TiをMg還元及び浸出によって加工する(640)。これにより、Ti金属、水素化Ti、又はTi合金若しくはTi合金の水素化物が形成される(650)。このとき、Ti金属、水素化物、又はTi合金若しくはTi合金の水素化物を添加してもよい。これらの材料は、スクラップ金属として得ることができる(655)。その後、Ti(又は合金)金属又は水素化物を、ミリングし、バインダー及び溶媒と混合し、噴霧乾燥して造粒し、脱バインダーしてバインダーを除去することによって加工する(660)。脱バインダーした顆粒を焼結し、Caを使用して脱酸素し、浸出させてCaOを除去する(670)。プロセスの最終製品は、Ti(又は合金)の球状の粉末である(680)。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
UGSからのTiH
2の調製
TiO
2粉末を調製し、Mgを使用してTiO
2を還元し、TiH
2を製造する例を、以下に記載する。平均サイズが200マイクロメートルより大きい、入手したままのUGSをボールミリングして、包まれたSiを露出させ、再浸出を容易にする。ミリングされたUGSのサイズは、容易に数マイクロメートル、例えば1〜5マイクロメートルに達し得る。次に、100グラムのミリングされたUGSを、200g/LのNaOHを含むアルカリ性溶液で、100℃で2時間、体積−質量比(volume-to-mass ratio)を2:1に制御しながら予備浸出させる。予備浸出の後、スラリーを固液分離し、おおよそ100グラムの残渣の固体を乾燥させて、ロースト加工の用意をする。その後、100グラムの予備浸出した残渣を、150グラムの商業用NaOH固体と、タンブラーによって30分間混合し、混合物をInconel反応器内に入れる。反応器を上部負荷箱形炉(top-loaded box furnace)内に置く。炉を加熱し、熱電対を使用して、混合物の温度プロファイルを追跡する。500℃で1時間維持した後、反応器を冷却して炉から取り出し、ローストされた製品を粉末に粉砕する。250グラムのローストされた粉末を、500mLの50℃の水で30分間、撹拌しながら洗浄した後、固液分離する。溶液のpH値がおおよそ12に達するまで、洗浄手順を数回繰り返す。主成分がチタン酸である泥状材料を得る。この材料を、濃度がおおよそ6mol/Lの希釈HCl溶液中で浸出させる。チタン及び他のアルカリ不溶性遷移金属種、例えばFeは、同時に溶解する。浸出液を濾過して、加水分解の前に、他の不溶性粒子を除去する。TiCl
4を含む溶液を、封止された晶析装置内に移し、溶液中に存在する第二鉄イオンを、Ti
3+イオンによって、第一鉄イオンに還元する。晶析装置を、温度が100℃に設定された油浴内に置く。還流冷却器を晶析装置に取り付けて、加水分解中の水及びHClの蒸発を回避する。その後、連続的に撹拌しながら、沈殿を100℃で15時間維持する。得られた沈殿物を、60℃の水で、液体が中性pHに達するまで洗浄する。沈殿物は、粒径が9〜30マイクロメートルのピロタン酸である。沈殿物を更に、600℃で2時間仮焼して、水を除去し、アナターゼを生成した後、900℃で2時間仮焼して、ルチルを生成する。
【0067】
その後、UGSから調製されるルチルを、Mgによって還元する。90グラムのルチル、81グラムのMg金属、60グラムの無水MgCl
2、及び30グラムのKClを、タンブラーによって十分に混合する。混合物を、Mo箔を敷いたステンレス鋼反応器内に入れる。反応器を、ねじによって封止された上部負荷箱形炉内に置く。炉のチャンバを真空にし、Arガスで4回パージした後、1L/分の流速でチャンバを流れるH
2ガスで再度満たす。炉を加熱して、還元を750℃で6時間行う。還元後、還元された粉末は、MgCl
2−KCl共晶塩、MgO、及びTiH
2から構成される。この粉末を、酢酸によって浸出させ、水ですすぎ、デシケータ内で室温で乾燥させる。酸素含有量がおおよそ1.34%のTiH
2中間体が得られ、これは、噴霧乾燥によって顆粒を作製するための原料として使用できる。
【0068】
(実施例2)
噴霧乾燥したTiH
2顆粒の調製
TiH
2微粒子をバインダー及び溶媒と混合し、混合物を噴霧乾燥させて、球状の顆粒を形成することにより、顆粒を調製した。
図7は、球状TiH
2顆粒のSEM写真である。顆粒は、サイズが約40マイクロメートル〜約100マイクロメートルの範囲である。
【0069】
(実施例3)
部分的に焼結された顆粒の調製
TiH
2微粒子をバインダー及び溶媒と混合し、混合物を噴霧乾燥させて、球状の顆粒を形成することにより、顆粒を調製した。顆粒を、温度範囲250〜400℃で9時間、チューブ炉のアルゴンフロー中で脱バインダーした。脱バインダー段階の後、温度を700℃に上昇させ、脱水素及び部分的な焼結のために、同じチューブ炉内で30分間保持した。
図8は、部分的に焼結された顆粒のSEM写真である。
【0070】
(実施例4)
Ti−6Al−4V球状粉末の調製
球状の顆粒の噴霧乾燥、脱バインダー、及び焼結の例を、以下に記載する。この例で使用される原料金属は、Ti−6Al−4V合金スクラップから作製された、2000グラムの−325メッシュのTi−6Al−4V水素化物である。噴霧乾燥用のスラリーは、粉末を、500mLの水、1500mLのエチルアルコール、及び30gのポリビニルアルコール溶液中で、アトライタ(Union Process lab attritor HD−1)に、回転速度300rpmでボールミリングすることによって調製した。ミリング後、水素化物の粉末の粒径は、10マイクロメートル未満に減少した。造粒は、Buchi Mini Spray Dryer B−290に、入口温度210℃で行い、Ti−6Al−4V水素化物の顆粒を形成した。スラリーを、噴霧乾燥機に供給する間、電磁撹拌器によって撹拌した。乾燥させた顆粒を、CaOと、1:1の質量比で混合した後、混合物を冷間等方圧加圧(CIP:cold isostatic press)により、圧力50MPaでプレスした。CIPを行ったパートを、同じチューブ炉のアルゴンフロー中、温度範囲250〜400℃で9時間脱バインダーし、1300℃で1分間焼結した。脱バインダー及び焼結の後、希釈塩酸(chloride acid)及び水を使用して、CaOを浸出させた。乾燥後、球状のTi−6Al−4V粒子を回収した。焼結されたままのTi−6Al−4V顆粒の形態を
図9に示す。
図9は、焼結された顆粒のSEM写真である。
【0071】
上記の焼結プロセスは、単なる一例であることが理解されるであろう。連続大気圧焼結(continuous atmospheric sintering)、圧力利用焼結(pressure assisted sintering)、プラズマ焼結、マイクロ波焼結、及びフラッシュ焼結技術を含む、様々な他の焼結プロセスを使用できる。特に、縦型炉を使用するフラッシュ焼結技術は、本発明に従う球状の粉末を作製するために、有用であり得る。
【0072】
(実施例5)
脱酸素プロセス
3.91重量%の酸素を含むTi焼結球状粉末を、CaCl
2−KCl共晶塩で脱酸素した。サイズが20〜45マイクロメートルの焼結された球状の粉末を10グラム秤量し、2グラムの6メッシュ顆粒状カルシウム、8.5グラムの無水CaCl
2粉末、及び1.5グラムの無水KCl粉末と混合し、Moるつぼ内に入れた。その後、混合物を収容したるつぼを、チューブ炉内に置いた。加熱前に、炉のチューブを評価し、標準の実験室用純アルゴンを3回流した。その後、炉を800℃まで、加熱速度10℃/分で加熱し、Arフロー雰囲気中で12時間保持した。その後、炉を室温に冷却し、開放した。その後、処理された製品をるつぼから取り出し、200mLの希釈HClで2時間浸出させた。溶液のpH値を、2〜5に制御した。その後、浸出させた製品を水で3回洗浄し、エタノールですすぎ、最後に真空で12時間乾燥させた。Ti球状粉末の酸素含有量は、初期値3.91重量%から最終濃度0.0740重量%まで、98.1%減少した。
【0073】
(実施例6)
脱酸素プロセス
0.22重量%の酸素を含むニオブ(Nb)−30重量%ハフニウム(Hf)(C103合金)粉末を、CaCl
2−LiCl共晶塩を融解塩として使用して脱酸素した。サイズが<37マイクロメートルのNb−30重量%Hf粉末を10グラム秤量し、0.5グラムの6メッシュ顆粒状カルシウム、及び7グラムのCaCl
2粉末、及び3グラムのLiCl粉末と混合し、ステンレス鋼るつぼ内に入れた。混合物を収容したるつぼを、チューブ炉内に置いた。加熱前に、炉のチューブを評価し、標準のアルゴンを3回流した。その後、炉を700℃まで、加熱速度10℃/分で加熱し、Arフロー雰囲気中で1時間保持した。その後、炉を室温に冷却し、開放した。その後、処理された製品をるつぼから取り出し、200mLの希釈HNO
3で2時間浸出させた。酸のpH値を、2〜5に制御した。その後、浸出させた製品を水で3回洗浄し、エタノールですすぎ、最後に真空で乾燥させた。Nb−30重量%Hf粉末の酸素含有量は、初期値0.22重量%から最終濃度0.055重量%まで、75%減少した。