(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一及び第二の電極と、前記第一及び第二の電極の間に有機電荷移動層とを含み、前記電荷移動層は式(I)の錯体を含む前記p−ドーパントを含む、電気化学装置である、請求項3に記載した装置。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、第一列遷移金属から、及び/又は周期表の第8〜11族の金属、特に白金族金属(Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt)、銀(Ag)、及び金(Au)から選択される金属原子を含む錯体に関する。
【0038】
したがって、一実施形態によれば、金属原子Mは、好ましくはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Pt、Rh、Ir、及びZnの金属から選択してもよい。好ましくは、金属Mは、Co、Rh、Ir、Ni、Cu、Ru、及びPtから選択される。
【0039】
一実施形態によれば、Mは、Fe、Co、Ni、及びCuから選択される。
【0040】
一実施形態によれば、本発明の錯体は、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、及びイリジウム(Ir)から選択される金属原子を含む。最も好ましくは、Mはコバルト(Co)である。
【0041】
明細書の目的において用語「含む」は、「その他のものと一緒に、含む」を意味することを意図する。それは、「のみから成る」を意味することを意図しない。
【0042】
本発明の錯体は酸化還元対を形成することがあるため、金属原子Mは、本発明の錯体中で異なる酸化数において存在してもよい。例えば、金属原子は、+II及び/又は+IIIの酸化状態において存在してもよい。例えば、Mがコバルトである場合、これらの酸化数を適用できる。
【0043】
錯体は、一つ以上の配位子、好ましくは二つ以上の配位子を含む。一実施形態によれば、錯体は、少なくとも一つのN含有複素環、及び/又は少なくとも一つのN含有複素環を含む環系を含む。上記の複素環及び/又は環系は、置換されていてもよく又は非置換であってもよい。好ましくは、複素環は、少なくとも一つの窒素原子を含み、好ましくは少なくとも一つの二重結合を含む、5又は6員複素環である。
【0044】
好ましい実施形態によれば、本発明の錯体は、式(I)として上記に定義したように、式M(La)
n(Xb)
mの構造を含む。
【0045】
nは1〜6の整数とすることができるため、式(I)の錯体は少なくとも1つ、しかし場合により6つまでの配位子Laを含む。したがって、本発明の錯体の配位数は、好ましくは4又は6であり、これは、好ましくは金属(M)に付いた配位子(適する又はしかるべき金属を有する)の、4つ又は6つのドナー原子があることを意味する。換言すれば、配位子(La)
n(L1、…、Ln)、及び(Xb)
m(適用できる場合)は、合わせて4つ、より好ましくは6つの、配位共有結合によって金属Mに結合したドナー原子を提供する。
【0046】
配位数が6である場合の、式(I)の錯体の異なる実施形態を以下に示す。配位数が4である場合も類似して、同様である。
【0047】
nが1であり、かつL1が一座配位子である場合、mは5であり、
(II)M L1 X1 X2 X3 X4 X5である。ここで、X1〜X5は同じであってもよく、異なってもよい。
【0048】
nが1であり、かつL1が二座配位子である(mが4である)場合、
(III)M L1 X1 X2 X3 X4である。ここで、X1〜X4は同じであってもよく、異なってもよい。
【0049】
nが1であり、かつL1が三座配位子である(mが3である)場合、
(IV)M L1 X1 X2 X3である。ここで、X1〜X3は同じであってもよく、異なってもよい。
【0050】
nが2であり、かつL1及びL2がいずれも一座配位子である(mが4である)場合、
(V)M L1 L2 X1 X2 X3 X4である。ここで、L1及びL2は同じであってもよく、異なってもよく、X1〜X4の任意の一つは同じであってもよく、異なってもよい。
【0051】
nが2であり、かつL1及びL2がいずれも二座配位子である(mが2である)場合、
(VI)M L1 L2 X1 X2である。ここで、L1及びL2は同じであってもよく、異なってもよく、X1及びX2は同じであってもよく、異なってもよい。
【0052】
nが2であり、かつL1及びL2がそれぞれ一座及び二座配位子である(mが3である)場合、
(VII)M L1 L2 X1 X2 X3である。ここで、L1及びL2は異なっており、X1〜X3の任意の一つは同じであってもよく、異なってもよい。
【0053】
nが2であり、かつL1及びL2がそれぞれ一座及び三座配位子である(mが2である)場合、
(VIII)M L1 L2 X1 X2である。ここで、L1及びL2は異なっており、X1及びX2の任意の一つは同じであってもよく、異なってもよい。
【0054】
nが2であり、L1が二座配位子であり、かつL2が三座配位子である(mが1である)場合、
(IX)M L1 L2 X1である。ここで、L1及びL2は異なる。
【0055】
nが2であり、かつL1及びL2がいずれも三座配位子である(mが0である)場合、
(X)M L1 L2である。ここで、L1及びL2は同じであってもよく、異なってもよい。
【0056】
nが3であり、かつL1、L2、及びL3が全て一座配位子である(mが3である)場合、
(XI)M L1 L2 L3 X1 X2 X3である。ここで、L1〜L3の任意の一つは同じであってもよく、異なってもよく、X1〜X3の任意の一つは同じでもよく、異なってもよい。
【0057】
nが3であり、かつL1、L2、及びL3が全て二座配位子である(mは0である)場合、
(XII)M L1 L2 L3である。ここで、L1、L2、及びL3の任意の一つは、それぞれ、独立して、任意の他のL1、L2、L3と同じであってもよく、異なってもよい。例えば、L1〜L3は全て同じであってもよい。
【0058】
nが3であり、L1が二座配位子であり、かつL2及びL3がいずれも一座配位子である(mが2である)場合、
(XIII)M L1 L2 L3 X1 X2である。ここで、L1は、L2及びL3とは異なっており、L2及びL3は同じであってもよく、異なってもよく、X1及びX2は同じであってもよく、異なってもよい。
【0059】
nが3であり、L1及びL2がいずれも二座配位子であり、かつL3が一座配位子である場合、
(XIIIa)M L1 L2 L3 X1である。
【0060】
nが3であり、L1が三座配位子であり、かつL2及びL3がいずれも一座配位子である(mが1である)場合、
(XIV)M L1 L2 L3 X1である。ここで、L1はL2とは異なっており、L3及びL2は同じであってもよく、異なってもよい。
【0061】
nが3であり、L1が三座配位子であり、L2が二座配位子であり、かつL3が一座配位子である(mが0である)場合、
(XV)M L1 L2 L3である。ここで、L1、L2、及びL3は全て異なる。
【0062】
nが4であり、L1が二座配位子であり、L2〜L4が一座配位子である(mが1である)場合、
(XVI)M L1 L2 L3 L4 X1である。ここで、L1は、L2〜L4とは異なっており、L2〜L4の任意の一つは同じであってもよく、異なってもよい。
【0063】
nが4であり、L1が三座配位子であり、L2〜L4が一座配位子である(mが0である)場合、
(XVII)M L1 L2 L3 L4である。ここで、L1はL2〜L4とは異なっており、L2〜L4の任意の一つは同じであってもよく、異なってもよい。
【0064】
nが4であり、かつL1〜L4が全て一座配位子である(mが2である)場合、
(XVIII)M L1 L2 L3 L4 X1 X2である。ここで、L1〜L4の任意の一つは同じであってもよく、異なってもよく、X1及びX2は同じであってもよく、異なってもよい。
【0065】
nが4であり、L1及びL2が二座配位子であり、かつL3及びL4が一座配位子である場合、
(XVIIIa)M L1 L2 L3 L4である。ここで、L1及びL2は同じであってもよく、異なってもよく、独立して、L3及びL4は同じであってもよく、異なってもよい。
【0066】
nが5であり、L1が二座配位子であり、かつL2〜L5が全て一座配位子である(mが0である)場合、
(XIX)M L1 L2 L3 L4 L5である。ここで、L1はL2〜L5とは異なるが、L2〜L5は同じであってもよく、異なってもよい。
【0067】
nが5(又は6)であり、それぞれmが1(又は0)である他の場合においては、それぞれL1〜L5(又はL1〜L6)は、全て、同じであってもよく異なってもよい一座配位子である。
【0068】
上記から、本発明の錯体は、ホモレプティック(mが0であり、同一の配位子Laを含む)であってもよく、又はヘテロレプティック(少なくとも2つの異なる配位子を含む)であってもよいことは明らかである。
【0069】
一実施形態によれば、本発明の錯体は、上記の式(II)〜(XIX)の錯体から選択される。
【0070】
好ましくは、nは1、2、又は3であり、より好ましくは2、又は3である。nが2である場合、L1及びL2は、好ましくは同一である。nが3である場合、L1〜L3は、好ましくは同一である。
【0071】
本発明の錯体の一実施形態によれば、nが2(M L1 L2)又は3(M L1、L2、L3)であり、かついずれの場合においてもmが0である。
【0072】
一実施形態によれば、本発明の錯体は、少なくとも2つ、又は少なくとも3つの、同一の構造(それぞれL1=L2、又はL1=L2=L3)の、配位子Laを含む。
【0073】
一実施形態によれば、本発明の錯体は全体として中性であり、又は全体として正若しくは負の電荷を帯びている。本明細書中に詳述した本発明の配位子から分かるように、錯体全体の電荷は中性に調整することができ、又は適切な負に荷電した配位子を選択することにより、所望のように、酸化若しくは還元された状態で負に荷電するようにさえ調整することができる。本明細書の目的において、本発明の電気化学装置の他の構成要素に依存して、電荷を調整するために、錯体の上記電荷を調整することができることは、有利であると考えられる。特に、電気化学装置の他の構成要素を用いて静電相互作用を回避するように、錯体の電荷を中性又は負に荷電するように調整することができる。
【0074】
本明細書において、以下、本発明の錯体における少なくとも一つの配位子であって、上記配位子は、5員複素環及び/又は6員複素環を含む置換又は非置換の環又は環系を含んでいる、配位子の好ましい実施形態を与える。これらの実施形態は、式(I)の錯体の配位子La(L1、…、Ln)にもまた適用する。
【0075】
5又は6員のN含有複素環は、独立して、非置換又は置換複素環として提供される。この複素環は、他の環若しくは環系に融合していてもよく、及び/又は複素環の炭素の、若しくは複素環の炭素上の2つの置換基が環を形成して、結果として環の1つが上記の5又は6員複素環であるスピロ化合物になってもよい。更に、5又は6員複素環は、他の環又は環系に、例えば、ピリジン環又は一つ以上のピリジン環を含む多環系に、共有結合によって結合してもよい。
【0076】
好ましくは、上記の置換又は非置換の、5又は6員のN含有複素環は少なくとも一つの二重結合を含む。一実施形態によれば、5又は6員複素環は少なくとも2つの二重結合を含む。一実施形態によれば、5又は6員複素環は好ましくは芳香族である。
【0077】
好ましい実施形態によれば、本発明の錯体は少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つ、さらにより好ましくは少なくとも3つの、同じであってもよく異なってもよい二座配位子Laを含む。
【0078】
他の、更により好ましい実施形態によれば、本発明の錯体は少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの、同じであってもよく異なってもよい三座配位子Laを含む。
【0079】
一実施形態によれば、少なくとも一つの上記のn個の配位子La(L1、…、Ln)は、ピリジン環(6員N含有複素環)、又は5及び/若しくは6員であってよい更なる複素環に共有単結合によって結合した、若しくは融合したピリジン環を含む環系を含んでおり、ここで、上記のピリジン環、又はピリジン環及び上記の更なる複素環を含む環系は、独立して、更に置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
【0080】
一実施形態によれば、上記の更なる5又は6員複素環は、N、O、P、及びSの群から選択される少なくとも一つのヘテロ原子、好ましくは少なくとも1つのNを含む。
【0081】
一実施形態によれば、上記の配位子Laが5員複素環を含む場合、上記の5員N含有複素環は、2つ以上の(好ましくは最高4つの)ヘテロ原子を含む。好ましくは、少なくとも第一のヘテロ原子は窒素であり、少なくとも第二のヘテロ原子、又は更なるヘテロ原子は、独立して、N、O、P、及びSから選択される。好ましくは、上記の第二のヘテロ原子はNであり、適用できる場合、更なるヘテロ原子(第三、第四、等)は、独立して、N、O、P、及びSから選択され、好ましくは、それらはNである。
【0082】
一実施形態によれば、任意の配位子La(L1、…、Ln)は、独立して、置換及び非置換のピリジン又はポリピリジン、置換及び非置換ピラゾール、置換及び非置換ピラジン、置換及び非置換トリアゾール、置換及び非置換ピリダジン、置換及び非置換イミダゾールから選択され、ここで、置換基は、独立して、1〜40の炭素及び0〜20のヘテロ原子を含む炭化水素、ハロゲン(―F、―Cl、―Br、―I)、―NO
2、―NH
2、及び―OHから選択される。
【0083】
一実施形態によれば、上記のn個の配位子La(L1、…、Ln)の任意の一つは、独立して、以下の式(1)〜(63)の化合物から選択される。
【0092】
ここで、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8の任意の一つは、適用できる場合/存在する場合、独立して、H、並びに1〜40の炭素及び0〜20のヘテロ原子を含む炭化水素から選択することができ;R’及びR”は、独立して、置換基―CH
2R
1、―CHR
1R
2、及び―CR
1R
2R
3から選択される。
【0093】
本明細書の目的において、一般に置換基(例えばR
1〜R
8)のリスト又は範囲の後にあり、かつ、化学名の用語(例えば炭化水素、ハロゲン、アリール、アルキル、等)による置換基の定義が後に続く、表現「適用できる場合」及び「存在する場合」は、この定義が唯一適用するのは、リスト又は範囲に与えられた置換基が、言及された特定の構造式上に実際に存在する範囲内及び限度内であることを意味することを意図する。言及された式上に存在しない置換基のリストは無視することができる(例えば、化合物(1)は、置換基R
6、R
7、及びR
8を欠いており、これは、上記に与えられた定義が、存在する置換基(化合物(1)の置換基R
1〜R
5)にのみ適用することを意味する)。
【0094】
一実施形態によれば、上記の置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8の一つ以上は、適用できる場合、独立して、以下の式(A―1)〜(G―2)の置換基から選択される。
【0105】
ここで、
破線は、(A―1)〜(G―2)の置換基を式(1)〜(63)の化合物上に接続している結合を表しており;置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、存在する場合、独立して、H、並びに1〜30の炭素及び0〜15のヘテロ原子を含む炭化水素から選択される。
【0106】
一実施形態によれば、少なくとも一つの上記の配位子La(L1、…、Ln)は、独立して、以下の式(1―2)〜(3―2)の化合物から選択される。
【0108】
ここで、
置換基R
1、R
3、R
5、R
6、R
8の少なくとも一つの置換基は、本明細書中に定義するように、置換基(A―1)〜(G―2)から選択される。換言すれば、配位子(1―2)に関して、R
1、R
3、R
5基の1つ、2つ、又は3つは、上記の置換基(A―1)〜(G―2)から独立して選択される。
【0109】
一実施形態によれば、少なくとも一つの上記の配位子La(L1、…、Ln)は、独立して、以下の式(1―3)〜(3―3)の化合物から選択される。
【0111】
ここで、上記の配位子は、適用できる場合、本明細書中にあるような置換基(A―1)〜(G―2)から独立して選択された、少なくとも一つの置換基R
1、R
5、及び/又はR
8を含む。
【0112】
一実施形態によれば、上記の配位子Laの任意の一つ又は少なくとも一つは、独立して、以下の式(1―5)〜(3―5)の化合物から選択される。
【0114】
ここで、R
1は、本明細書中に開示した置換基(A―1)〜(G―2)から選択される。
【0115】
本発明によれば、驚くべきことに、本発明の錯体の金属原子に結合している環における第二のヘテロ原子の存在は、酸化還元対としての本発明の錯体の特性及び適合性に好影響を及ぼすために適切であることが分かった。
【0116】
従って、少なくとも2つの環ヘテロ原子を有する環を含む配位子(例えばLa)が特に好ましい。この実施形態(「実施形態A」)によれば、本発明の錯体は、(10)〜(42)、(50)〜(63)から選択される一つ以上の配位子を含み、より好ましくは(B―1)〜(B―27)、(C―1)〜(C―27)、(D―1)〜(D―3)、(F―1)〜(F―10)、(G―1)、及び(G―2)から選択される少なくとも一つの置換基を含む化合物の範囲内において、錯体は配位子(1)、(2)、(3)、(4)、(1―2)、(2―2)、(3―2)、(1―3)、(2―3)、(3―3)、(1―4)、(2―4)、(3―4)を含む。
【0117】
他の実施形態(「実施形態A’」)によれば、正確に2つの環ヘテロ原子を有する環を含む配位子(例えばLa)が特に好ましい。
【0118】
一実施形態(「実施形態B」)によれば、少なくとも2つの隣接する環ヘテロ原子を含む配位子(例えばLa)が特に好ましい。したがって、本発明の錯体は、(13)、(15)、(16)、(17)、(18)、(23)〜(34)、(40)〜(42)、(50)〜(54)、(60)〜(63)から選択される一つ以上の配位子を含み、より好ましくは(B―1)、(B―4)、(B―6)、(B―8)、(B―13)、(B―24)、(B―25)、(B―27)、(C―1)〜(C―8)、(C9)〜(C―16)、(C―18)〜(C―27)、(D―1)〜(D―3)、(F―1)〜(F―3)、(F―4)、(F―6)、(G―1)、(G―2)から選択される少なくとも一つの置換基を含む化合物の範囲内において、錯体は配位子(1)、(2)、(3)、(4)、(1―2)、(2―2)、(3―2)、(1―3)、(2―3)、(3―3)、(1―4)、(2―4)、(3―4)を含む。
【0119】
一実施形態(「実施形態C」)によれば、5員複素環を含む配位子(例えばLa)が特に好ましい。したがって、本発明の錯体は、(6)〜(34)(43)〜(63)から、及びより好ましくは(A―1)〜(A―6)、(B―1)〜(B―18)、(C―1)〜(C―8)、(D―1)〜(D―3)、(E―1)〜(E―3)、(F―1)〜(F―10)、(G―1)及び(G―2)から選択される少なくとも一つの置換基を含む化合物の範囲内において、配位子(1)、(2)、(3)、(4)、(1―2)、(2―2)、(3―2)、(1―3)、(2―3)、(3―3)、(1―4)、(2―4)、(3―4)を含む錯体から選択される、一つ以上の配位子を含む。
【0120】
一実施形態(「実施形態D」)によれば、いかなる更なる環にも融合していない5員複素環を含む配位子(例えばLa)が特に好ましい。したがって、本発明の錯体は、(6)〜(34)から、及びより好ましくは(A―1)〜(A―6)、(B―1)〜(B―18)、(C―1)〜(C―8)、(D―1)〜(D―3)から選択した少なくとも一つの置換基を含む化合物の範囲内において、配位子(1)、(2)、(3)、(4)、(1―2)、(2―2)、(3―2)、(1―3)、(2―3)、(3―3)、(1―4)、(2―4)、(3―4)を含む錯体から選択される、一つ以上の配位子を含む。
【0121】
一実施形態(「実施形態E」)によれば、芳香族性を有する(芳香族である)5又は6員複素環を含む配位子(例えばLa)が特に好ましい。したがって、本発明の錯体は、(1)〜(5)、(6)、(7)、(10)〜(12)、(15)、(16)、(19)、(21)、(23)〜(28)、(31)〜(34)、(35)〜(36)、(39)、(42)、(43)〜(48)、(50)〜(53)、(55)〜(56)、(58)〜(60)、及び(62)から、及びより好ましくは、(A―1)〜(G―2)から選択した少なくとも一つの置換基を含む化合物の範囲内において、配位子(1)、(2)、(3)、(4)、(1―2)、(2―2)、(3―2)、(1―3)、(2―3)、(3―3)、(1―4)、(2―4)、(3―4)を含む錯体から選択される、一つ以上の配位子を含む。
【0122】
一実施形態(「実施形態F」)によれば、本発明は、少なくとも一つのピリジン環、及び少なくとも一つの置換基を含む、一つ以上の二座又は三座配位子(例えばLa)を含む錯体であって、ここで、上記の置換基は、上記のピリジン環に炭素―窒素結合により結合している、錯体を提供する。好ましくは、本発明は、式(1)、(2)、(3)、(4)、(1―2)、(2―2)、(3―2)、(1―3)、(2―3)、(3―3)、(1―4)、(2―4)、及び/又は(3―4)の一つ以上の配位子を含む錯体であって、ここで、上記の配位子は、(A―3)、(B―8)〜(B―10)、(B―23)、(B―24)、(C―4)〜(C―6)、(C―9)〜(C―16)、(C―23)、(C―26)、(D―2)、(E―3)、(F―3)、(F―4)、(F―7)、(G―1)から選択される一つ以上の置換基を含んでいる、錯体を提供する。
【0123】
一実施形態(「実施形態G」)によれば、本発明の錯体は、少なくとも一つのピリジン環、並びに置換基(A―1)〜(A―6)、(B―1)〜(B―27)、(C―1)〜(C―27)、(D―1)〜(D―3)、(E―1)〜(E―3)、(F―1)〜(F―19)、及び(G―1)〜(G―2)から選択される少なくとも一つの置換基を含む、一つ以上の二座又は三座配位子(例えばLa)を含む。
【0124】
上記の実施形態A〜Gは、より特に好ましい実施形態を提供するために、可能な限り、互いに組み合わせてもよい。例えば、好ましい実施形態によれば、錯体は、実施形態A〜Gの二つ以上の定義に合う化合物から選択される配位子(切断集合、重複、又は共通部分∩)を含む。例えば、本発明の錯体は、5員複素環を含む配位子から選択され、この配位子は同時に芳香族性を有する配位子を含む(実施形態C及びEの重複)。
【0125】
更に特に好ましい実施形態は、実施形態AとB、AとC、AとD、AとE、AとFの重複である。更に好ましい実施形態は、実施形態BとC、BとE、BとF、BとG、BとFの重複によって提供される。更に好ましい実施形態は、実施形態CとD、CとE、CとF、CとGの重複である。更に好ましい実施形態は、実施形態DとE、DとF、DとGの重複である。更に好ましい実施形態は、実施形態EとF、EとGの重複である。更に好ましい実施形態は、実施形態FとGの重複である。
【0126】
更に好ましい実施形態は、実施形態A〜Gから選択される3つの実施形態の重複によって提供される。そのような特に好ましい実施形態は、以下の実施形態、AとBとC、AとBとD、AとBとE、AとBとF、AとBとG、AとCとD、AとCとE、AとCとF、AとCとG、AとDとE、AとDとF、AとDとG、AとEとF、AとEとF、BとCとD、BとCとE、BとCとF、BとCとG、BとDとE、BとDとF、BとDとG、BとEとF、BとEとG、BとFとG、CとDとE、CとDとF、CとDとG、CとEとF、CとEとG、CとFとG、DとEとF、DとFとGの重複によって提供される。
【0127】
例えば、実施形態AとBとCの重複(上記で(原文中)下線が引かれている)は、少なくとも2つの(A)、隣接する(B)、ヘテロ原子を含む5員環(C)を有する配位子を含む本発明の錯体に関する。これらの配位子は、化合物(13)、(15)〜(18)、(23)〜(34)、(50)〜(54)、(60)〜(63)、及び好ましくは置換基(B―1)、(B―4)、(B―6)、(B―8)、(B―13)、(C―1)〜(C―8)、(D―1)〜(D3)、(F―1)、(F―3)、(F―4)、(F―6)、(G―1)、(G―2)から選択される少なくとも一つの置換基を含む化合物の範囲内において、式(1)〜(5)、(1―2)、(2―2)、(3―2)、(1―3)、(2―3)、(3―3)、(1―4)、(2―4)、(3―4)の化合物によって表されるものである。
【0128】
更に好ましい実施形態は、実施形態A〜Gから選択される4つの実施形態の重複によって提供される。そのような特に好ましい実施形態は、以下の実施形態AとBとCとD、AとBとCとE、AとBとCとF、AとBとCとG、AとBとDとE、AとBとDとF、AとBとDとG、AとCとDとE、AとCとDとF、AとCとDとG、AとCとEとF、AとCとEとG、AとDとEとF、AとDとEとG、AとEとFとG、BとCとDとE、BとCとDとF、BとCとDとG、BとCとEとF、BとCとEとG、BとCとFとG、BとDとEとF、BとDとEとG、BとEとFとG、CとDとEとF、CとDとEとG、CとDとFとG、DとEとFとGの重複によって提供される。
【0129】
例えば、実施形態AとBとCとGとの重複(上記で(原文中)下線が引かれている)は、少なくとも一つのピリジン環(G)と、少なくとも2つの(A)、隣接する(B)、ヘテロ原子を含む5員環(C)を有する置換基とを含む、二座又は三座配位子(La)を含む本発明の錯体を指す。この実施形態の好ましい配位子は、置換基(B―1)、(B―4)、(B―6)、(B―8)、(B―13)、(C―1)〜(C―8)、(D―1)〜(D―3)、(F―1)、(F―3)、(F―4)、(F―6)、(G―1)、(G―2)から選択される少なくとも一つの置換基を含む化合物の範囲内において、式(1)〜(5)、(1―2)、(2―2)、(3―2)、(1―3)、(2―3)、(3―3)、(1―4)、(2―4)、(3―4)の化合物によって表されるものである。
【0130】
この実施形態、及び上記の好ましい、組合せた又は特定の実施形態において、実施形態Aを、実施形態A’と置き換えて、結果として正確に2つの環ヘテロ原子を有する環が存在することとなる、対応する重複となってもよい。
【0131】
ヘテロ原子は上記に定義したようなものであるが、好ましい環―ヘテロ原子は窒素である点に、更に注意されたい。一実施形態によれば、正確に2つ又は2つ以上の環―ヘテロ原子がある場合、上記のヘテロ原子は、好ましくは窒素原子である。
【0132】
上記で特定した好ましい実施形態から分かるように、式(1)〜(5)の任意の一つの化合物を含む、置換及び非置換配位子が好ましい。更により好ましいものは、Laが式(1)、(2)、及び(3)の、置換及び非置換配位子から選択される実施形態である。
【0133】
一実施形態によれば、少なくとも一つ、少なくとも2つ、二座配位子の場合には3つの配位子Laは、独立して、
図6、7、8、9、10、11、12、及び/又は13に示す化合物から選択される。したがって、1つ、2つ以上の配位子Laは、独立して、配位子H―1〜H―31、J―1〜J―26、K―1〜K―33、L―1〜L―4、M―1〜M―15、N―1〜N―20、P―1〜P16、Q―1〜Q―63の任意の一つから選択してもよい。
【0134】
一実施形態によれば、化合物H―1〜H―31、J―1〜J―26、K―1〜K―33、L1〜L4、Q―1〜Q―26、Q―43〜Q―51、において、H以外の、R
1〜R
8及び/又はR
1〜R
7、並びにR
1〜R
8及びR
1〜R
7の好ましい実施形態について、任意の1つの、1つ以上の、又は全ての利用できる水素を、独立して、上記に定義したようなH以外の置換基によって置き換えてもよい。図に示した他の例示的な配位子(M―1〜M―15、N―1〜N―20、P―1〜P―16、Q―27〜Q―42、及びQ―52〜Q―63)において、利用できる水素を置き換えた置換基がすでに存在しており、したがって、これらの後者の例示的な配位子は、そのような水素を置き換えた置換基を含む配位子/化合物の、特定の例を形成していることに留意されたい。
【0135】
更に、
図5〜12に示すいくつかの配位子において、窒素原子上の、本明細書中に定義したR’及びR”に対応する、メチル置換基が存在する(例えば、H―2、H―4、H―6、H―8、等)。これらのN―メチル置換基は、一実施形態によれば、本明細書においてR’とR”について定義したような他の置換基と置き換えてもよい。R’とR”は、特にC1―C5のアルキル置換基から選択してもよい。
【0136】
一実施形態によれば、化合物H―1〜H―31、J―1〜J―26、K―1〜K―33、L1〜L4、Q―1〜Q―26、Q―43〜Q―51において、H以外の、R
1〜R
8及び/又はR
1〜R
7、並びにR
1〜R
8及びR
1〜R
7の好ましい実施形態について、任意の一つの、一つ以上の、又は全ての利用できる水素を、独立して、本明細書において定義したような、―F、―Cl、―Br、―I(ハロゲン)、―NO
2、―CN、―OH、―CF
3、置換又は非置換の、C1〜C30のアルキル、C2〜C30のアルケニル、C2〜C30アルキニル、及びC5〜C30のアリールによって置き換えてもよい。
【0137】
特に、化合物H―1〜H―31、J―1〜J―26、K―1〜K―33、L1〜L4、Q―1〜Q―26、Q―43〜Q―51から選択される任意の配位子Laにおいて、任意の一つの、一つ以上の、又は全ての利用できる水素は、独立して、ハロゲン、―CN、C1〜C6のアルキル、C2〜C6のアルケニル、C2〜C6のアルキニル、及びC6〜C10のアリールによって置き換えてもよく、ここで、上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、及びアリールにおいて、1つの、いくつかの又は全ての利用できる水素は、ハロゲン、―CN、及び―CF
3によって置き換えてもよい。
【0138】
より好ましくは、化合物H―1〜H―31、J―1〜J―26、K―1〜K―33、L1〜L4、Q―1〜Q―26、Q―43〜Q―51から選択される任意の配位子Laにおいて、任意の一つの、一つ以上の、又は全ての利用できる水素は、独立して、ハロゲン、―CN、C1〜C4のアルキルによって置き換えてもよく、ここで、上記のアルキルにおいて、1つの、いくつかの、又は全ての利用できる水素は、ハロゲン、―CN、及び―CF
3によって置き換えてもよい。
【0139】
一実施形態によれば、本発明の錯体は、式(1)、(2)、(3)、(1―2)、(2―2)、(3―2)、(1―3)、(2―3)、(3―3)、(1―4)、(2―4)、(3―4)の任意の一つの化合物から選択される少なくとも一つの配位子(La)を含み、上記の化合物は、1つの、又は適用できる場合2つ若しくは3つの式B―8の置換基、上記に規定したような、しかし好ましくはH、ハロゲン、―CN、―CF
3、及びC1〜C4のアルキル、C2〜C4のアルケニル、及びC2〜C4のアルキニルから選択された他の置換基で置換されており、ここで、上記のアルキル、アルケニル、及びアルキニルにおいて、1つの、いくつかの、又は全ての利用できる水素は、ハロゲンによって置き換えてもよい。
【0140】
好ましい実施形態によれば、上記のLaの任意の一つは、独立して、以下の式(2)、(3)、(64)、(65)、(66)、及び(67)の化合物の任意の一つから選択される。
【0142】
ここで、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11の任意の一つは、適用できる場合、独立して、Hから、並びに1〜20の炭素及び0〜15のヘテロ原子を含む炭化水素、ハロゲン(―F、―Cl、―Br、―I)、―NO
2、―NH
2、及び―OHから選択される。
【0143】
更に例示的な配位子Laは、同時係属欧州特許出願の、2011年2月25日に出願された欧州特許出願第11156029.8号明細書、2011年4月8日に出願された欧州特許出願第11161739.5号明細書の
図5〜12に開示されている。これらの出願において開示されている配位子(H―1〜H―31、J―1〜J―26、K―1〜K―33、L〜1〜L―4、M―1〜M―15、N―1〜N―20、P―1〜P16、Q―1〜Q―63)、及び同時係属出願のページ28〜30に開示されているようなこれらの可能性のある置換基は、引用によりその全体が完全に本明細書中に含まれる。
【0144】
一実施形態によれば、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11の、並びにR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6の任意の一つは、それぞれの置換基が化合物(1)〜(67)上、及びそれらの置換基上に存在する限りにおいて、独立して、H、ハロゲン、―NO
2、―OH、―NH
2から、並びに1〜30の炭素及び0〜15のヘテロ原子を含む炭化水素(R
1〜R
11の場合)から、又は1〜20の炭素及び0〜15のヘテロ原子を含む炭化水素(R
1〜R
6の場合)から選択してもよい。
【0145】
他の実施形態によれば、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11の、並びにR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6の任意の一つは、それぞれの置換基が化合物(1)〜(67)上、及びそれらの置換基上に存在する限りにおいて、独立して、H、ハロゲン、―NO
2、―OH、―NH
2から、並びに1〜20の炭素及び0〜15のヘテロ原子を含む炭化水素から選択してもよい。
【0146】
ヘテロ原子は、独立して、好ましくはSi、N、P、As、O、S、Se、ハロゲン(特にF、Cl、Br、及びI)、B、Beから、より好ましくはSi、N、P、O、S、及びハロゲンから、最も好ましくはN、O、S、及びハロゲンから選択される。
【0147】
一実施形態によれば、上記の置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11の、並びにR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、及びR
9の任意の一つは、独立して、(R
1〜R
11に適用可能な)式(A―1)〜(G―2)の置換基、H、ハロゲン(―F、―Cl、―Br、―I)、―NO
2、―CN、―OH、―CF
3、置換又は非置換のC1〜C20のアルキル、C2〜C20のアルケニル、C2〜C20アルキニル、及びC4〜C20のアリールから選択してもよく、ここで、上記の置換又は非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアリールにおいて、任意の炭化水素基(好ましくは、及び適用できる場合、非隣接炭化水素基)は、―O―、―S―、―S(=O)―、―S(=O)
2―、―Si―、―Ge―、―NR
A―、―N=、―BR
A―、―PR
A―、―P(=O)R
A―、―P(=O)OR
A―、―C(=O)―、―C(=S)―、―C(=O)O―、―OC(=O)―、―C(=NR
A)―、―C=NR
A―、―NR
AC(=O)―、―C(=O)NR
A―、―NR
AC(=S)―、及び―C(=S)NR
A―からなる群から選択された任意のものによって置き換えてもよく、
ここで、上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、及びアリールが置換されている場合、この置換基は、独立して、ハロゲン、―F、―Cl、―Br、―I、―NO
2、―CN、―OH、―CF
3、置換又は非置換の、C1〜C15のアルキル、C2〜C15のアルケニル、C2〜C15のアルキニル、C2〜C15のアルキニル、C4〜C18のアリールから選択してもよく、ここで、上記の置換基の任意の炭化水素基は、―O―、―S―、―S(=O)―、―S(=O)
2―、―Si―、―Ge―、―NR
B―、―N=、―BR
B―、―PR
B―、―P(=O)R
B―、―P(=O)OR
B―、―C(=O)―、―C(=S)―、―C(=O)O―、―OC(=O)―、―C(=NR
B)―、―C=NR
B―、―NR
BC(=O)―、―C(=O)NR
B―、―NR
BC(=S)―、及び―C(=S)NR
B―からなる群から選択された任意のものによって置き換えてもよく、
ここで、上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、又はアリール置換基が更に置換されている場合、上記の置換基の置換基は、存在する場合、ハロゲン、―F、―Cl、―Br、―I、―NO
2、―CN、―OH、―CF
3、置換又は非置換の、C1〜C8アルキル、C2〜C8のアルケニル、C2〜C8のアルキニル、C5〜C8のアリールから選択してもよく、ここで、上記の置換基の任意の炭化水素基は、―O―、―S―、―S(=O)―、―S(=O)
2―、―Si―、―Ge―、―N=、―C(=O)―、―C(=S)―、―C(=O)O―、―OC(=O)―からなる群から選択された任意のものによって置き換えてもよい。上記の更なる置換基の更なる置換基は、好ましくは、ハロゲン、―CN、及びC1〜C4のアルキル、C2〜C4のアルケニル、及びC2〜C4のアルキニルから選択され、ここで、上記のアルキル、アルケニル、又はアルキニルの任意の利用できる水素は、ハロゲンによって置換してもよい。
【0148】
R
Aは、上記に定義したように、Hから、及び置換又は非置換の、C1〜C15のアルキル、C2〜C15のアルケニル、C2〜C15のアルキニル、C2〜C15のアルキニル、C4〜C18のアリールから選択してもよい(交換基を含む)。好ましくは、R
Aは、H、C1〜C10のアルキル、C2〜C10のアルケニル、C2〜C10のアルキニル、C4〜C10のアリール、―CNから選択され、ここで、上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、及び/又はアリールは、―CN、(部分的に又は完全にハロゲン化された)C1〜C4のアルキル、及びハロゲンによって更に置換されていてもよい。より好ましくは、R
Aは、H、―CN、―CN又はハロゲンによって更に置換されていてもよい、C1〜C5のアルキル、C2〜C5のアルケニル、C2〜C5のアルキニル、C4〜C6のアリールから選択される。
【0149】
R
Bは、上記に定義したように、Hから、及び置換又は非置換の、C1〜C8のアルキル、C2〜C8のアルケニル、C2〜C8のアルキニル、C5〜C8のアリールから選択してもよい(交換基を含む)。好ましくは、R
Bは、H、H、C1〜C5のアルキル、C2〜C5のアルケニル、C2〜C5のアルキニル、C4〜C6のアリール、―CNから選択され、ここで、上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、及び/又はアリールは、―CN、(部分的に又は完全にハロゲン化された)C1〜C4のアルキル、及びハロゲンによって更に置換されていてもよい。より好ましくは、R
Bは、H、―CN、―CN又はハロゲンによって更に置換されていてもよい、C1〜C4のアルキル、C2〜C4のアルケニル、C2〜C4のアルキニル、C4〜C6のアリールから選択される。
【0150】
一実施形態によれば、R
A、R
B、及びR
Cの任意の一つは、独立して、本明細書において定義したような、R
A好ましくはR
Bについて定義したような、上記の置換基R
A好ましくはR
Bの好ましい実施形態を含む置換基から選択される。
【0151】
本明細書の目的において、本明細書において特定される任意のアルキル、アルケニル、又はアルキニルは、直鎖状、分岐状、及び/又は環状であってもよい。この場合、示されるように、アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、3以上(例えば最高30)の炭素を有する。4つ又は5つの炭素を有する任意のアリールは、芳香族置換基環を提供するための、適切な数の環ヘテロ原子を有する。したがって、用語「アリール」は、ヘテロアリールを含む。一実施形態によれば、アリールは、ヘテロアリールから、及びいかなるヘテロ原子も有しないアリールから、選択される。
【0152】
好ましい一実施形態において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、及びR
11の任意の一つは、化合物(1)〜(67)上に存在する限りにおいて、例えば、独立して、式(A―1)〜(G―2)の置換基、H、ハロゲン、―NO
2から、並びに1〜20の炭素及び0〜10のヘテロ原子を含む炭化水素から;好ましくはH、及び0〜10のヘテロ原子を含むC1〜C10の炭化水素から;より好ましくは、H、及び0〜5つのヘテロ原子を含むC1〜C5の炭化水素から選択してもよい。
【0153】
好ましい実施形態によれば、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、及びR
9の任意の一つは、上記の置換基(A―1)〜(G―2)上、又は配位子上、例えば配位子Xb上に存在する限りにおいて、例えば、独立して、H、ハロゲン、―NO
2から、並びに1〜15の炭素及び0〜10のヘテロ原子を含む炭化水素から;好ましくはH、及び0〜10のヘテロ原子を含むC1〜C10炭化水素から;より好ましくはH、及び0〜5つのヘテロ原子を含むC1〜C5炭化水素から選択してもよい。
【0154】
一実施形態によれば、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R’、及びR”の任意の一つは、適用できる場合、独立して、式(A―1)〜(G―2)の置換基(R
1〜R
11に適用できるもののみ)、Hから、並びにC1〜C10のアルキル、C2〜C10のアルケニル、C2〜C10のアルキニル、及びC5〜C12のアリール(好ましくはC6〜C12のアリール)から選択され、ここで、上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、及びアリールにおいて、1つの、いくつかの、又は全ての利用できる水素は、ハロゲンによって、及び/又は―CNによって置き換えてもよく、ここで、上記のR
1〜R
12及びR
1〜R
6の任意の一つは、更に、ハロゲン、―C≡N(―CN)、―NO
2から選択してもよい。上記のアリールは、C1〜C4のアルキル、ハロゲン、及び―CNによって、更に置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
【0155】
一実施形態によれば、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R’、及びR”の任意の一つは、存在する場合、独立して、式(A―1)〜(G―2)の置換基(R
1〜R
11の場合)、Hから、並びにC1〜C6のアルキル、C2〜C6のアルケニル、C2〜C6のアルキニル、及びC6〜C10のアリールから選択され、ここで、上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、及びアリールにおいて、1つの、いくつかの、又は全ての利用できる水素は、ハロゲン、及び/又は―CNによって置き換えてもよく、ここで、上記のR
1〜R
11及びR
1〜R
6の任意の一つは、更に、ハロゲンから、及び―C≡N(―CN)から選択してもよい。上記のアリールは、C1〜C4のアルキル、ハロゲン、及び―CNによって、更に置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
【0156】
一実施形態によれば、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R’、及びR”の任意の一つは、存在する限りにおいて、独立して、式(A―1)〜(G―2)の置換基(R
1〜R
11の場合)、Hから、及びC1〜C6、好ましくはC1〜C4、より好ましくはC1〜C3のアルキルから選択され、上記のアルキルは、ハロゲンによって任意に部分的に又は完全に置換されており、ここで、上記のR
1〜R
12及びR
1〜R
6の任意の一つは、更に、ハロゲンから、及び―C≡Nから選択してもよい。
【0157】
一実施形態によれば、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9の任意の一つは、存在する限りにおいて、独立して、式(A―1)〜(G―2)の置換基(R
1〜R
11に適用するもののみ)、H、ハロゲン、―CNから、及びC1〜C6、好ましくはC1〜C4、及び最も好ましくはC1〜C3のアルキルから選択され、上記のアルキルはハロゲンによって置換されていてもよい。
【0158】
一実施形態によれば、R’及びR”は、独立して、Hから、及びC1〜C6の、直鎖状、分岐状、又は環状のアルキルから選択され、上記のアルキルは、任意に、部分的に又は完全にハロゲンによって置換されていてもよい。
【0159】
一実施形態によれば、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11は、存在する限りにおいて、独立して、式(A―1)〜(G―2)の置換基、H、ハロゲン、―CNから、並びにC1〜C6のアルキル及びアルケニルから選択され、ここで、上記のアルキル及びアルケニルの任意の利用できる水素は、ハロゲン及び/又は―CNによって置き換えてもよく、置き換えなくてもよい。好ましくは、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11は、存在する限りにおいて、独立して、H、ハロゲン、―CNから、及びC1〜C4のアルキルから選択され、上記のアルキルは、任意に、完全に又は部分的にハロゲン化されている。好ましくは、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11は、存在する限りにおいて、独立して、H、ハロゲン、―CN、―CF
3、及びC1〜C3のアルキルから選択される。
【0160】
一実施形態によれば、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9は、存在する限りにおいて、独立して、H、ハロゲン、―CNから、並びにC1〜C6のアルキル及びアルケニルから選択され、ここで、上記のアルキル及びアルケニルの任意の利用できる水素は、ハロゲン及び/又は―CNによって置き換えてもよく、置き換えなくてもよい。好ましくは、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9は、存在する限りにおいて、独立して、H、ハロゲン、―CNから、及びC1〜C4のアルキルから選択され、上記のアルキルは、任意に、完全に又は部分的にハロゲン化されている。好ましくは、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9は、存在する限りにおいて、独立して、H、ハロゲン、―CN、―CF
3、及びC1〜C4のアルキルから選択される。R
7〜R
9は、好ましくはハロゲン及び/又はCNから選択されるものではない。
【0161】
H以外の、置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9は、金属錯体の酸化電位を調整するために適切である。理論に拘束されないが、そのような置換基は、特にDSCにおいて、より高いV
OC値を有する電気化学装置を得て、酸化還元対の酸化電位を色素の特性に合わせる助けになることができると考えられる。
【0162】
例えば、酸化還元活性化合物は、一つ以上の共配位子及び/又はスペクテイター配位子、例えば式(I)の錯体に従う一つ以上の配位子Xbを含んでもよい。スペクテイター配位子Xbは、独立して、例えば、H
2O、Cl
−、Br
−、I
−、CN、NCO、NCS、NCSe、NH
3、NR
7R
8R
9、及びPR
7R
8R
9から選択してもよく、ここで、R
7、R
8、及びR
9は、独立して、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、及びアリールから選択される。一実施形態によれば、上記のアルキル、アルケニル、及びアリールは、独立して、本明細書に定義した、置換又は非置換のC1〜C20のアルキル、C2〜C20のアルケニル、C2〜C20のアルキニル、及びC4〜C20のアリール、並びに本明細書中に記載のR
1〜R
11及び/又はR
1〜R
6について定義されるようなアルキル、アルケニル、アルキニル、及びアリールの好ましい実施形態から選択される。更に、R
7、R
8、及びR
9の2つ又は3つ全ては、環状又は多環状配位子を提供するように、互いに結合していてもよい。
【0163】
一実施形態によれば、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R’、及びR”の任意の一つは、適用できる場合、独立して、式(A―1)〜(G―2)の置換基(R
1〜R
11に適用できるもののみ)、Hから、並びにC1〜C10のアルキル、C2〜C10のアルケニル、C2〜C10のアルキニル、及びC5〜C12のアリール(好ましくはC6〜C12のアリール)から選択され、ここで、上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、及びアリールにおいて、1つの、いくつかの、又は全ての利用できる水素は、ハロゲンによって、及び/又は―CNによって置き換えてもよく、ここで、上記のR
1〜R
12及びR
1〜R
6の任意の一つは、更に、ハロゲン、―C≡N(―CN)、―NO
2から選択してもよい。上記のアリールは、C1〜C4のアルキル、ハロゲン、及び―CNによって、更に置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
【0164】
一実施形態によれば、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R’、及びR”の任意の一つは、適用できる場合、独立して、Hから、並びにC1〜C10のアルキル、C2〜C10のアルケニル、C2〜C10のアルキニル、及びC5〜C12のアリール(好ましくはC6〜C12のアリール)から選択され、ここで、上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、及びアリールにおいて、1つの、いくつかの、又は全ての利用できる水素は、ハロゲンによって、及び/又は―CNによって置き換えてもよく、ここで、上記のR
1〜R
8及びR
1〜R
6の任意の一つは、更に、ハロゲンから、及び―C≡N(―CN)から選択してもよい。
【0165】
好ましい実施形態によれば、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、及びR
9の任意の一つは、上記の置換基(A―1)〜(G―2)上に、又は配位子上に、例えば配位子Xb上に存在する限りにおいて、独立して、例えば、H、ハロゲン、―NO
2から、並びに1〜15の炭素及び0〜10のヘテロ原子を含む炭化水素から;好ましくはHから、及び0〜10のヘテロ原子を含むC1〜C10炭化水素から;より好ましくはH、及び0〜5つのヘテロ原子を含むC1〜C5炭化水素から選択してもよい。
【0166】
一実施形態によれば、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6の任意の一つは、独立して、H、ハロゲン、C1〜C6の直鎖状アルキル、C3〜C6の分岐状又は環状のアルキル、及び―C≡Nから選択され、ここで、上記の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキルの任意の一つは、完全に又は部分的にハロゲン化されてもよく、特に―CF
3であってもよい。
【0167】
本発明の錯体の他の配位子、特に式(I)の錯体の配位子Xb(X1、…、Xm)は、例えば、H
2O、Cl
−、Br
−、I
−、CN
−、NCO
−、NCS
−、NCSe
−、NH
3、CO、PR3(Rは、独立して、置換及び非置換のC6〜C18、好ましくはC6〜C12のアリール及び/又はアロキシル(例えばフェニル又はフェノキシル)から選択される);置換及び非置換の、C1〜C18の、好ましくはC1〜10の、より好ましくはC1〜C4の、アルキル及び/又はアルコキシル;イミダゾール、置換イミダゾール;ピリジン、置換ピリジン;ピラゾール、置換ピラゾール;トリアゾール;ピラジン;から選択してもよい。好ましくは、配位子Xb(X1、…、Xm)は、H
2O、Cl
−、Br
−、I
−、CN
−、NCO
−、NCS
−、NCSe
−、NH
3、CO、及びPR3(Rは上記のように、好ましくは、独立して、フェニル、フェノキシル、アルキル、及びアルコキシルから選択される)から選択される。
【0168】
本発明の錯体は、配位子の電荷に依存して、荷電していてもよく、荷電してなくてもよい。好ましくは、錯体はカチオン性である。この場合、錯体は、好ましくは適切なアニオン種と共に提供される。アニオンは、錯体が加えられることになる特定の装置又は材料に依存して、選択してもよい。アニオンは、例えばOLEDの用途において、例えば他の層への錯体の移動を制限するよう選択してもよい。したがって、本発明は、本発明の錯体及びアニオン種を含む塩を提供する。
【0169】
アニオン種は、有機又は無機のアニオンとすることができる。
【0170】
一実施形態によれば、アニオンは、ハロゲン(特にCl
−、Br
−、I
−)、CN
−、NCO
−、NCS
−、NCSe
−、ClO
4−(パークロレート)、PF
6(ヘキサフルオロホスフェート)、BF
4(テトラフルオロボレート)、B(CN)
4(テトラシアノボレート)、CF
3SO
3(トリフルオロメタンスルホネート、トリフレート)、(CF
3SO
2)
2N(ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド、TFSI)、B(C
6H
3(m―CF
3)
2)
4(テトラキス[3,5―ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、BARF)、B(C
6F
5)
4(テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)、B(Ph)
4(テトラフェニルボレート)、Al(OC(CF
3)
3)
4、及びCB
11H
12(カルボランアニオン)からなる群から選択される。
【0171】
本発明は、本発明の錯体及び/又はこの錯体を含む塩を含む、有機電荷輸送材料を提供する。
【0172】
本発明の文脈において、一般に本発明の錯体を含む材料の引用は、好ましい実施形態として、この錯体を含む塩を含む材料を含む。
【0173】
「有機電荷輸送材料」は、有機電子及び/又は正孔輸送材料と呼ぶことがある。用語「有機」は省略してもよいが、一般に、電荷輸送材料は有機化合物を含む。「有機電荷輸送材料」は、前述の単一分子、オリゴマー、ポリマー化合物、及び混合物に基づく、有機半導体及び/又は導体である。有機電荷輸送材料において、電荷は、電子運動及び/又は電荷ホッピングによって、及び、無いかほんの僅かな程度の荷電分子の拡散によって、実質的に輸送される。したがって、この材料は、電子及び/又は正孔伝導材料でもよい。U.Bach他の「高い光子―電子変換効率を有する固体色素増感メソ多孔質TiO
2太陽電池」、Nature、第395巻、1998年10月8日、583〜585は、色素増感太陽電池におけるアモルファス有機正孔輸送材料2,2’,7,7’―テトラキス(N,N―ジ―p―メトキシフェニル―アミン)9,9’―スピロフルオレン(OMeTAD)を開示している。国際公開第2007/107961号において、室温で液体の電荷輸送材料、及びそれらの色素増感太陽電池における用途が開示されている(例えば、トリス(p−メトキシエトキシフェニル)アミン(TMEPA))。これらの及びその他の材料を、例えば、本発明のために用いてもよい。また、欧州特許第1160888号明細書A1は、「有機電気伝導剤」を開示している。したがって、「有機電荷輸送材料」は、一般にドーパントの有無に影響される特性、例えば伝導率を有する。典型的な有機半導体中の電流キャリアは、正孔及びπ―結合の電子である。有機分子がπ―共役系を有する場合、電子はπ―電子雲の重なりによって、特にホッピング、トンネル効果、及び関連した機構によって、移動することができる。多環式芳香族炭化水素、及びフタロシアニンの塩の結晶は、この種の有機半導体の例である。本発明の文脈において、イオン液体及び液体電解質であって、その中を分子の拡散によって電荷が輸送されるものは、有機電荷輸送材料とはみなさない。
【0174】
本発明の文脈において、本発明の錯体(又はこの錯体を含む塩)は、有機電荷輸送材料の伝導率を調整するため、特に増加させるため、及び有機電荷輸送材料をドープするために用いる。錯体(又は塩)を、他の種類の導体又は半導体におけるドーパントとして用いてもよい。
【0175】
錯体、又はこの錯体を含む塩を、有機電荷輸送材料の、イオン化ポテンシャル及び/又はフェルミ準位を調整するために用いてもよい。
【0176】
したがって、本発明は、本発明の錯体を含む有機電荷輸送材料を提供する。錯体は、有機電荷輸送材料の質量に対して、0.001〜10%、好ましくは0.01〜8%、より好ましくは0.1%〜5%、及び最も好ましくは0.5〜4%、例えば1〜3%、又は1〜2.5%の質量パーセントで加えてもよい。好ましくは、質量パーセントは、いかなる溶媒も含まず、直接に有機電荷輸送材料を指す。
【0177】
本発明の錯体を含む有機電荷材料は、本発明のドープされた有機電荷輸送材料を形成する。
【0178】
本発明の錯体は、p―ドーパントとして、及びn―ドーパントとして用いてもよい。n―ドーパントを得るために、p―ドーパントについて使用するものと同じ全体的な構造を有する同じ錯体を用いることができる。唯一の違いは、D+/D酸化還元対におけるD+錯体を使用する代わりに、D/D−酸化還元対におけるD−を使用しなければならないということである。そのような錯体は、錯体Dをアルカリ金属(例えばカリウム又はリチウム)と共に振盪することによって調製することができる。例えば、錯体2(
図1)は、n―ドーパントとして一般に用いられる。錯体2は、D+[Co(L)3)
3+]とみなすことができる。同一構造であるがD−として荷電した錯体、例えば[Co(L)3)
+]は、E(D/D−)<E(ドープされる材料の還元)である場合、n―ドーパントとして使用することができる。それに加えて、Co
3+、d6電子系はp―ドーピングのために使用し、Co
+、d8電子系はn−ドーピングのために使用することができる。調製される錯体は、複数の電子ドナーであることができる。例えば[Fe(bpy)
3Na]、又は[Fe(bpy)
3]は、それぞれ4つ及び3つの電子を与えると予測される。ビス―三座配位子の錯体は、2つ又は3つの電子を与える。調製方法は、(1)Mahon、Carol;Reynolds、Warren Lind、「ナトリウムトリス(2、2´―ビピリジン)フェラート(−I)の調整」、Inorganic Chemistry(1967)、6(10)、1927〜8、(2)Herzog、Siegfried;Weber Albert、「ビピリジン及びビピリジンのような配位子を有する、いくつかの中性の鉄錯体のアルカリ金属の付加」、Zeitschrift fuer Chemie(1968)、8(2)、66、に開示されている。国際公開第2005/036667号は、電気化学的方法を開示している。
【0179】
有機半導体におけるドーパントの使用を説明している、米国特許出願公開第2005/0061232号明細書、及び米国特許出願公開第2010/0140566号明細書を引用する。
【0180】
本発明は、本発明の錯体を含む電気化学装置を提供する。特に、この錯体は、そのような装置における酸化還元対として及び/若しくはドーパントとして、又は本明細書において特定される他の使用に従って使用する。好ましくは、本発明は、本発明の錯体を含む有機電荷輸送材料を含む電気化学装置を提供する。
【0181】
一実施形態によれば、本発明は、電気化学装置、好ましくは本発明の錯体を含む光電気化学装置を提供する。
【0182】
一実施形態によれば、本発明の電気化学装置は、光電池、電池、再充電可能電池(例えばリチウムイオン電池)、発光デバイス、エレクトロクロミック装置、光エレクトロクロミック装置、電気化学センサー、バイオセンサー、電気化学ディスプレイ、及び電気化学キャパシタ(例えば二重層キャパシタ及び/又はスーパーコンデンサ)から選択される。
【0183】
一実施形態によれば、装置は、電池(例えばリチウムイオン電池)である。本発明の錯体を、例えば、そのような装置の酸化還元対として用いてもよい。また、本発明の錯体を用いて、具体的には酸化還元対として用いて、再充電可能電池における過充電及び/又は過放電を防止してもよい。Wang他、「リチウムイオン電池のための、過充電防止分子シャトルの新規なストラテジー」、Electrochem.Commun.(10)(2008)、651〜654は、酸化還元シャトル添加剤の、電解質中への、又は電解質と電極との間のセパレータに埋め込む使用、並びに装置の過充電及び/又は過放電を防止するためのそれらの使用を開示している。例えば、本発明の錯体を、同じ方法で、電解質への、又はセパレータへの添加剤として用いてもよい。Wangら(2008)の開示によれば、酸化還元対の酸化電位は、好ましくは、カソード材料(「p型シャトル」)の酸化還元電位より高いか、又はアノード材料(「n型シャトル」)の材料より低いかのいずれかである。これらの装置において、酸化還元対は、電池の電位に制限を課すことによって電池の劣化を妨げる内部短絡を生ずる。本発明の錯体は、再充電可能電池における、特にリチウムイオン電池における、n型又はp型シャトル(上記を参照:D+/D、D/D−)のどちらにも用いてもよい。リチウムイオン電池の過充電及び過放電防止に関する更なる背景は、S.−I.Nishimura他、Nat.Mater.、7(2008)707〜711.C.Buhrmester、J.Electrochem.Soc.153(2)A288〜A294(2006)によって開示されている。
【0184】
一実施形態によれば、本発明の装置は、光電気化学装置である。光電気化学装置は、例えば、本発明の錯体を含む、色素増感太陽電池(DSC)、特に固体DSC(ssDSC)、エレクトロクロミック装置、光エレクトロクロミック装置、及び有機発光ダイオード(OLED)から選択してもよい。
【0185】
一実施形態によれば、本発明の装置は、OLEDである。国際公開第2005/036667号は、有機半導体をドープするためのルテニウム錯体を含むOLEDが開示されている。本発明の錯体を同じ態様において使用してもよい。特に、本発明の錯体を、有機電荷輸送材料の、例えば有機半導体の、電荷移動度及び/又は電荷密度を増加させるために用いてもよい。本発明の錯体に、負に荷電した配位子(例えばLa及びXb)を使用して、国際公開第2005/036667号に開示されているような蒸発プロセスによって適用してもよい中性の錯体を得てもよい。ドープされた層は、マトリックス(例えば電荷輸送材料)及びドーパントの混合蒸発によって製造してもよい。
【0186】
米国特許出願公開第2006/0250076号明細書は、ドープした電荷キャリア輸送層を含むOLEDを開示している。したがって、本発明の錯体はOLEDにおいて、特に電荷キャリア輸送層における、及び/又は有機電荷輸送材料を含む層におけるドーパントとして、用いてもよい。
【0187】
また、より好ましくは、本発明は、色素増感太陽電池(DSC)、最も好ましくは固体色素増感太陽電池(ssDSC)を提供する。一実施形態によれば、本発明は、本発明に従ってドープされた有機電荷輸送材料を含む層を含む、太陽電池を提供する。
【0188】
本発明の電気化学装置、特にDSCは、好ましくは再生装置である。
【0189】
電気化学装置は、一般に、2つの電極、及びこれらの電極の間に一つ以上の層を含む。本発明の電気化学装置は、好ましくは、有機電荷輸送材料及び本発明の錯体を含む層を含む。
【0190】
図において、
図14は、色素増感太陽電池を模式的に示す。
【0191】
本発明の装置は、少なくとも一つの基材1を含む。
図14に示す装置に反して、本発明はまた、
図16により詳細に示すように、一つだけの基材1、例えば上部のみ又は下部のみの基材1を有する装置を含む。好ましくは、電流を生ずるための電磁放射にさらされることが意図された装置の側に面する基材がある。放射に面する基材は、好ましくは透明である。透明度は、本発明の目的において、それぞれの構造(例えば基材、対電極、伝導層、多孔質半導体)が、本発明の装置内で光を電気エネルギーに変換するために、少なくともいくらかの可視光、赤外線、又は紫外線を透過することを一般に意味する。好ましくは、透明は、全ての可視光を、より好ましくは、近赤外線のいくらか及び/又は紫外線光スペクトルの少なくとも一部を透過することを意味する。
【0192】
基材1は、プラスチックから、又はガラスから作ってもよい。フレキシブル装置において、基材1は、プラスチックから好ましくは作られる。一実施形態において、基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリイミド、3―アセチルセルロース、及びポリエーテルスルホンからなる群から選択されるプラスチックを含む。
【0193】
本発明の変換装置は、一般に、2つの伝導層2及び7を有しており、ここで、第一の伝導層2は装置から発生する電子を取り除くために、第二の伝導層7は新しい電子を供給するため、又は換言すれば、正孔を取り除くために要求される。これは、
図16において、記号+及び−によって説明される。伝導層2及び7は、装置の目的又は性質に応じて、多くの異なる形態で提供してもよく、様々な材料から製造してもよい。
【0194】
第二の伝導層7は、この場合、例えばITO(酸化インジウムスズ)で被覆したプラスチック又はガラスを有する基材1の一部であってもよく、ここで、透明ITOはプラスチック又はガラスに被覆されており、後者を電気伝導性にしている。
【0195】
したがって、伝導層2及び7の一方又は両方は、透明金属酸化物、例えばインジウムをドープした酸化スズ(ITO)、フッ素をドープしたスズ酸化物(FTO)、ZnO―Ga
2O
3、ZnO―A1
2O
3、酸化スズ、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、及び酸化亜鉛を含んでもよい。
【0196】
本発明の実施形態によれば、第一の伝導層2のみ又は第二の伝導層7のみが、上記に定義したような透明金属酸化物層を含む。2枚の対向した伝導層2及び7の一方又は両方を、伝導性箔、例えば金属箔、特にチタン箔又は亜鉛箔の形で提供することもできる。以下に詳述するように、これは、例えば、いくつかのフレキシブル装置において好ましい。好ましくは、第一の伝導層2は、例えば、
図16に示すように、伝導性金属箔から作る。そのような箔は、透明でなくともよい。
【0197】
本発明の装置は、一般に、電池の内側に向かって中間層6に面する対電極7、及び基材が存在する場合は電池の外側に基材1を含む。対電極は、一般に、装置の内側に向かって、電子を提供するため及び/又は正孔を満たすために適切な、触媒活性材料を含む。対電極は、したがって、例えば、Pt、Au、Ni、Cu、Ag、In、Ru、Pd、Rh、Ir、Os、C、伝導性ポリマー、及び前述のものの二つ以上の組合せから選択される材料から選択される材料を含んでもよい。伝導性ポリマーは、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリベンゼン、及びアセチレンを含むポリマーから選択してもよい。
【0198】
図14において、第二の伝導層は、対電極7の一部として、又は装置の上の基材1の一部としてみなすことができ、したがって、別々に示していない。第二の伝導層が基材1の部分であるとみなされる場合、そのような基材は、例えば、上記のように、ITO又は他の材料で被覆されたプラスチック又はガラスであることができる。
【0199】
図14において、層3は、実際に少なくとも2枚の別々の層、すなわち多孔質半導体層4、及びその上に吸収された増感層5を含む、光吸収層である。増感層は、有機金属増感性化合物、無金属有機増感性化合物、無機増感性化合物、例えば量子ドット、Sb
2S
3(例えば薄いフィルムの形態のアンチモンスルフィド)、及び前述のものの組合せからなる群の一つ以上を含んでもよい。
【0200】
増感剤は、例えば増感色素5を含んでもよい。増感層5が色素を含む場合、任意の共吸着された化合物、例えば国際公開第2004/097871号A1に開示されているものの他に、例えば、少なくとも一つの色素若しくは増感剤、又は二つ以上の異なる増感剤の組合せを一般に含む。有機金属化合物の例は、そのような装置において現在使われているような、ルテニウム色素を含む。適切なルテニウム色素は、例えば、国際公開第2006/010290号において開示されている。
【0201】
色素層は、有機増感剤を含んでもよい。例えば、装置は、ルテニウム又は他の貴金属を使用した任意の増感剤を含まなくてもよい。
【0202】
多孔質半導体層は、本技術分野(B.O’Reagan、及びM.Gratzel、Nature、1991、353、373)に記載されている方法によって、半導体ナノ粒子、特にナノ結晶粒子から製造してもよい。そのような粒子は、一般に、約0〜50nm、例えば5〜50nmの平均直径を有する。そのようなナノ粒子は、例えば、Si、TiO
2、SnO
2、ZnO、WO
3、Nb
2O
5、及びTiSrO
3の群から選択される材料から作ってもよい。ナノ結晶粒子からの多孔質層の構成は、本発明によるフレキシブル電池の実施形態を示している模式
図16において明確に見ることができる。
【0203】
本発明の装置は、放射によって除去された、色素内の電子の再生を仲介するという一般的な目的を有する層6を有する。これらの電子は対電極7によって提供され、したがって、層6は、対電極から色素への電子の輸送、又は色素から対電極への正孔の輸送を仲介する。電子及び/又は正孔の輸送は、好ましくは電気伝導性材料によって仲介される。したがって、層6は、好ましくは有機電荷輸送層である。
【0204】
本発明の好ましい実施形態によれば、この中間(又は有機電荷輸送)層6は、溶媒を実質的に含まない。この実施形態は、特にフレキシブル装置に関連する。実質的に含まないとは、本発明の目的において、層に含まれる添加溶媒が、10質量%未満、より好ましくは5質量%未満、さらにより好ましくは1%未満、及び最も全く含まないことを意味する。多くの従来の装置、及び特にポリマーから作ったフレキシブル装置に反して、中間層が溶剤を含まないという事実は、1つ又は2つの基材層1を通した溶媒の蒸発による劣化がないという、重要な利点を提供する。
【0205】
一実施形態によれば、有機電荷輸送層6は、有機電荷輸送材料、及び本発明の錯体を含む。
【0206】
一実施形態によれば、本発明の装置は、少なくとも一つの基材層1、伝導層2、光吸収層3、ドープされた有機電荷輸送材料層6、及び対電極7を含んでおり、ここで、上記の伝導層2、上記の光吸収層3、上記の有機電荷輸送層6、及び上記の対電極7は、順番に接続されている。好ましい実施形態によれば、装置は、2つの透明基材1を、それぞれ、装置の上部及び下部に含む。装置の上部は、
図14の図の上部に対応する。上部は、光の大部分が装置に入る側に対応する。中間層6は本発明の錯体を含む有機電荷輸送材料を含んでおり、色素層5と対電極7との間に提供される。
【0207】
他の実施形態によれば、本発明の装置は、フレキシブル装置である。好ましくは、この実施形態によれば、装置は、フレキシブルな基材1と、対電極7と、電荷輸送層6と、有機金属化合物色素、有機色素、又はその両者を含んでもよい色素層5と、多孔質半導体層4と、伝導層2とを含む。好ましくは、上記の層は、例えば上部から下部にこの順序で、順番に接続している。
【0208】
好ましくは、フレキシブル装置において、上記の伝導層2は、例えば、
図5において引用数字2で示すように、伝導性金属箔、例えばチタン又は亜鉛箔によって提供され、上記のフレキシブルな基材1は、ポリマー又はプラスチック箔である。透明な第二の伝導層は、対電極7の一部であり、(例えばITO―PET、又はITO―PENの形態で、)前記のようにプラスチック箔と接触している。伝導性チタン箔、及び伝導性プラスチック基材は、例えば、Seigo ItoらのChem.Comm.2006、4004〜4006、及び欧州特許第1095387号明細書において開示されている。
【0209】
一実施形態によれば、本発明のフレキシブル装置は、
図16に示すように電磁放射が主に対電極の側から電池に入る(裏面照射)反転型太陽電池であり、ここで、矢印hvは照射側に関連する。
【0210】
一実施形態によれば、本発明のフレキシブル電池は、反転型太陽電池であり、ここで、透明なプラスチック基板1は、例えば、透明な伝導性酸化物、例えばフレキシブルなプラスチック箔1上に堆積したITO(スズドープされた酸化インジウム)、及び触媒、例えば炭素又はPt(プラチナ)を、上部から下部にこの順で含む、対電極組立体7を含む。
【0211】
下端において、例えば、フレキシブルな支持体上、例えばプラスチック材料上に提供してもよいが、提供しなくともよい伝導性箔2、好ましくは金属箔、例えばTi又は亜鉛箔が提供される。
【実施例】
【0212】
《例1:異なるピリジン―ピラゾール配位子の合成》
2―(1H―ピラゾール―1―イル)ピリジン(また、1―(ピリジン―2―イル)―1H―ピラゾール、Py―Pz)(
図1の錯体1の配位子を参照)を、Elguero J.らのChemische Berichte、25 1996、129、589〜594頁に開示されているように得た。
【0213】
4―メチル―2―(1H―ピラゾール―1―イル)ピリジン(MePy―Pz)。0.95g(14.0mmol、2当量)のピラゾールを、室温で20mLのDMSO中に溶解し、1.57g(14.0mmol、2当量)のKO
tBuを加えた。この混合物を20分間40℃に加熱し、0.78g(7.0mmol、1当量)の2―フルオロ―4―ピコリン(2―フルオロ―4―メチル―ピリジン)を加え、この混合物を終夜110℃に加熱した。室温まで冷却した後、この混合物を水で希釈し、Et
2O(3x)を用いて抽出した。集めた無色の有機層を、水で洗浄し、MgSO
4を用いて乾燥させ、濃縮した。この黄色い油を、溶媒混合物としてCH
2Cl
2/EtOAc=6/1を用いたカラムクロマトグラフィーによって精製した。純粋な生成物が、収率99%(1.11g、6.9mmol)で、無色の液体として得られた。
【0214】
2―(3,5―ジメチル―1H―ピラゾール―1―イル)ピリジン(PyーPzMe
2)、及び2―(3,5―ジメチル―1H―ピラゾール―1―イル)―4―メチルピリジン(MePy―PzMe
2)を、これに基づいて合成した。
【0215】
4,4’―ジクロロ―2,2’―ビピリジン(CAS番号1762―41―0、本明細書においてCl
2Bipyとも言及する)は、商業的に入手可能である。
【0216】
《例2:[Co(Py―Pz)
3](PF
6)
2(CoIII錯体1)の合成》
225mg(1.55mmol、3.1当量)のピリジン―ピラゾール(Py―Pz)配位子(例1)を、20mLのMeOH中に溶解し、次いで、119mg(0.5mmol、1当量)の固体としてのCoCl
2・6H
2Oを加えた。この混合物を、2時間加熱して還流させた。室温まで冷却した後に、MeOH中に溶解した過剰量のKPF
6を、混合物に加えた。この混合物を、沈殿のため、3℃にて保管した。3時間後、この生成物を、焼結ガラスフリット上に集め、真空内で乾燥させた。純粋な生成物(
図1、化合物1)が、橙色結晶として得られた。収量:246mg(0.33mmol、66%)。HRMS(ESI―TOF)m/z(%):計算値C
24H
21CoN
9について247.0626;検出247.0635(100)[(M―2PF
6)
2+]。
【0217】
《例3:[Co(Py―Pz)
3](PF
6)
3(CoIII錯体2)の合成》
218mg(1.5mmol、3.0当量)のピリジン―ピラゾール配位子を、10mLの水中に溶解し、完全な溶液が生ずるまで、75℃に加熱した。次に、この無色の溶液に、119mg(0.5mmol、1当量)のCoCl
2・6H
2Oを加えた。このピンクの溶液に、H
2O
2(1mL、30%)、及びHCl(1mL、25%)を加えて、コバルトを酸化した。10分後、10mLの熱水中に溶解した460mg(2.5mmol、5当量)のKPF
6を、混合物に滴下して加えた。沈殿が生じ、この混合物を室温まで冷却した。生成物を、焼結ガラスフリットに集め、及び真空内で乾燥した。純粋な面異性体(
図1、錯体2)が、橙色固体として得られた。収量:259mg(0.28mmol、56%)。
1H NMR(400MHz、アセトン―D6):δ9.56―9.53(m、3H、ArH)、8.73―8.64(m、6H、ArH)、8.01―7.81(m、9H、ArH)、7.27―7.23(m、3H、ArH)ppm.
【0218】
《例4及び5:[Co(MePy―Pz)
3](PF
6)
2、及び[Co(p―MePy―Pz)
3](PF
6)
3(CoII及びCoIIIの錯体3及び4)の合成》
478mg(3.0mmol、3.0当量)のMePy―Pz配位子(例1)を、水及びMeOHの2:1の混合物(20mL/10mL)中に溶解し、70℃まで加熱した。238mg(1.0mmol、1当量)の固体としてのCoCl
2・6H
2Oを加えた。この混合物を70℃で10分間撹拌し、20mLの熱水中に溶解した0.92gのKPF
6を加えた。室温まで冷却した後に、沈殿物を、焼結ガラスフリットに集め、水及びEt
2Oを用いて洗浄し、真空内で乾燥させた。純粋な面異性体(
図1、錯体3)が、薄い橙色固体として得られた。収量:668mg(0.81mmol、81%)。HRMS(ESI―TOF)m/z(%):計算値C
27H
27CoN
9について268.0861;検出268.0860(100)[(M―2PF
6)
2+]。分析、計算値C
27H
27CoF
12N
9P
2について(826.43):C39.24、H3.23、N15.25;検出:C39.23、H3.35、N14.84%。
【0219】
380mg(2.4mmol、3.0当量)のMePy―Pz配位子を、水及びMeOHの2:1の混合物(20mL/10mL)中に溶解し、70℃まで加熱した。190mg(0.8mmol、1当量)の固体としてのCoCl
2・6H
2Oを加えた。この混合物を、70℃で10分間撹拌し、2mLのH
2O
2(30%)及び2mLのHCl(25%)を加え、この混合物を、更に70℃で30分間撹拌した。20mLの熱水中に溶解した0.92gのKPF
6を加えた。室温まで冷却した後に、沈殿物を、焼結ガラスフリットに集め、水及びEt
2Oを用いて洗浄し、真空内で乾燥させた。純粋な面異性体(
図1、錯体4)が、橙色固体として得られた。収量:287mg(0.3mmol、38%)。
1H NMR(400MHz、アセトン―D6):δ9.49―9.46(m、3H、ArH)、8.56(s、3H、ArH)、7.94(d、J=30.2Hz、3H、ArH)、7.73―7.71(m、3H、ArH)、7.68―7.60(m、3H、ArH)、7.25―7.21(m、3H、ArH)、2.73(s、9H、CH
3)ppm。HRMS(ESI―TOF)m/z(%):計算値C
27H
27CoN
9P
2F
12について826.1005;検出826.1021(35)[(M―PF
6)
+]、計算値C
27H
27CoN
9PF
6について340.5682;検出340.5704(63)[(M―2PF
6)
2+]。
【0220】
《例6及び7:[Co(Py―PzMe
2)
3](PF
6)
2、及び[Co(Py―PzMe
2)
3](PF
6)
3(CoII及びCoIIIの錯体5及び6)の合成》
520mg(3.0mmol、3.0当量)のPy―PzMe
2配位子(例1)を、水及びMeOHの2:1の混合物(20mL/10mL)中に溶解し、70℃まで加熱した。238mg(1.0mmol、1当量)の固体としてのCoCi
2・6H
2Oを加えた。この混合物を70℃で10分間撹拌し、20mLの熱水中に溶解した0.92gのKPF
6を加えた。室温まで冷却した後に、沈殿物を、焼結ガラスフリットに集め、水及びEt
2Oを用いて洗浄し、真空内で乾燥させた。純粋な生成物(ピンクの固体)(
図1、錯体5)が、稜異性体及び面異性体の混合物として得られた。収量:737mg(0.85mmol、85%)。HRMS(ESI―TOF)m/z(%):計算値C
30H
31CoN
9について289.1096;検出289.1091(100)[(M+2H―2PF
6)
2+]。分析、計算値C
30H
33CoF
12N
9P
2について(868.51):C41.49、H3.83、N14.51;検出:C40.69、H3.86、N13.56%。
【0221】
1.04g(6.0mmol、3.0当量)のPy―PzMe
2配位子を、水及びMeOHの2:1の混合物(40mL/20mL)中に溶解し、70℃まで加熱した。476mg(2.0mmol、1当量)の固体としてのCoCl
2・6H
2Oを加えた。この混合物を、70℃で10分間撹拌し、5mLのH
2O
2(30%)、及び5mLのHCl(37%)を加え、この混合物を更に70℃で3時間撹拌した。過剰量のKPF
6水溶液を加えた。室温まで冷却した後に、沈殿物を、焼結ガラスフリットに集め、水及びEt
2Oを用いて洗浄し、真空内で乾燥させた。純粋な生成物(
図1、錯体6)が、橙色固体として得られた。収量:100mg(0.1mmol、5%)。
19F NMR(188MHz、アセトン―D6):δ−72.6(d、
1J
PF=706Hz、PF
6)ppm。HRMS(ESI―TOF)m/z(%):計算値C
30H
33CoN
9P
2F
12について868.1475;検出868.1669(100)[(M―PF6)+]。
【0222】
《例8及び9:[Co(Cl
2Bipy)
3](PF
6)
2、及び[Co(Cl
2Bipy)
3](PF
6)
3(CoII及びCoIIIの錯体7及び8)の合成》
238mg(1.0mmol、1当量)のCoCl
2・6H
2Oを、15mLの水中に溶解し、50mLのアセトン中に溶解した675mg(3.0mmol、3当量)の4,4’―ジクロロ―2,2’―ビピリジン(Cl
2Bipy、例1)を加えた。この溶液はすぐに橙色に変わり、10分間50℃に加熱した。この混合物を、沈殿が生ずるまで濃縮した。次に、この混合物を再び50℃に加熱し、沈殿物を再溶解するのに過不足のないアセトンを加えた。過剰量のKPF
6飽和水溶液を加えて、錯体をそのPF
6塩として沈殿させた。この固体を、ガラスフリットに集め、水及びEt
2Oを用いて洗浄し、空気下90℃で、次いで真空内で乾燥させた。生成物(
図1、錯体7)が、淡褐色固体として得られた。収量:950mg(0.93mmol、93%)。
1H NMR(400 MHz、アセトン―D6):δ90.11(s、6H、ArH)、80.97(s、6H、ArH)、42.25(s、6H、ArH)ppm。
19F NMR(188MHz、アセトン―D6):δ−73.8(d、
1J
PF=706Hz、PF
6)ppm。分析、計算値C
30H
18Cl
6CoF
12N
6P
2について(1224.08):C35.18、H1.77、N8.21;検出:C36.58、H1.76、N8.25%。
【0223】
238mg(1.0mmol、1当量)のCoCl
2・6H
2Oを、15mLの水中に溶解し、60mLのアセトニトリル中に溶解した675mg(3.0mmol、3当量)のCl
2Bipyを加えた。この溶液はすぐに橙色に変わり、10分間50℃に加熱した。約15mLのアセトニトリルを、真空内で除去した。次に、4mLのH
2O
2(30%)、及び4mLのHCl(25%)を加えた。この混合物を、90分間50℃に加熱した。過剰量のKPF
6飽和水溶液を加えて、錯体をそのPF
6塩として沈殿させた。この固体を、ガラスフリットに集め、水及びEt
2Oを用いて洗浄し、真空内で乾燥させた。生成物(
図1、錯体8)が、薄い緑色固体として得られた。収量:1.125g(0.96mmol、96%)。
1H NMR(400MHz、アセトン―D6):δ9.30(t、
4J
HH=1.3Hz、6H、ArH)、7.97(d、
4J
HH=1.3Hz、12H、ArH)ppm。
19F NMR(188MHz、アセトン―D):δ−72.3(d、
1J
PF=708Hz、PF
6)ppm。HRMS(ESI―TOF)m/z(%):計算値C
30H
18Cl
6CoF
6N
6Pについて438.9336;検出438.9354(45)[(M―2PF
6)
2+];計算値C
30H
18Cl
6CoN
6について244.3010;検出244.3019(100)[(M―3PF
6)
3+]。分析、計算値C
30H
18C
l6CoF
18N
6P
3について(1169.05):C30.82、H1.55、N7.19;検出:C31.04、H1.35、N7.35%。
【0224】
《例10:酸化還元電位、ドーパントの選択、及び伝導率測定》
伝導率測定について、2プローブ電気伝導度測定に使用した基材は、300nmの熱的に成長したSiO
2層であって、この上に5nmのCr/30nmのAu電極を堆積し、リソグラフィによりパターン化して、チャネル長及び幅をそれぞれ20μm及び1mmとしたSiO
2層を有する、高度にドープされたSiから成った。洗浄工程として、基材はアセトン中で超音波処理し、次いで2―プロパノールを用いてすすぎ、酸素プラズマ処理によって残った有機物の痕跡量を除去した。続いて、正孔導体を、CHCl
3中の、スピロ―MeOTAD、TBP、LiTFSI、及び錯体2の溶液を、スピンコーティングによって堆積したが、ここで、濃度は光起電装置の場合と同じであった。I―V特性を、Keithley4200半導体特性評価システムで記録した。
【0225】
溶液中のスピロ―MeOTADの酸化電位は、標準水素電極(NHE)に対して0.81Vであることがわかっている(Moon、S.ら、J.Phys.Chem.C2009、113、16816〜16820)。したがって、Co
(III)錯体の基本的要求は、この値を上回って存在する酸化還元電位である。この理由のために、発明者らは、スピロ―MeOTADのp型ドーピングの適切な候補として、錯体2として表され及び
図1において表されるコバルト
(III)トリス(1―(ピリジン―2―イル)―1H―ピラゾール)を選択した。
【0226】
錯体2は、電荷移動反応について約150mVの充分な駆動力を残す、電気化学的測定によって決定された、NHEに対する0.95Vの酸化還元電位を有する。錯体2及びそのCo
(II)類似体は可視領域の吸収をほとんど有さず、このことは、増感剤との光収集の競合が回避されるため、DSCsにおける利点である。
【0227】
p型ドープの基本的機構は、増加した電荷キャリア密度と、従って半導体膜のより高い伝導率とを導く、更なる電荷キャリア(正孔)の生成である。これは、1.0%の錯体2の添加に応じて、4.4x10
−5から5.3x10
−4Scm
−1への伝導率の増加を示す、2プローブ伝導率測定から得られる結果に対応する。Snaithら、Appl.Phys.Lett.2006、89、262114は、以前に、ドープされていないスピロ―MeOTADについて2.0x10
−5Scm
−1の伝導率を報告しており、値は、LiTFSIのわずかに異なる濃度が使用されたことを考慮すると、発明者らの発見と一致する。
図2及び3に示すように、より高いドープ濃度に関して、伝導率は、ドープ率とともに指数的に増加した。与えられたドープ率は、スピンコーティングの前にスピロ―MeOTAD溶液に加えた錯体2のモルパーセントに対応しているが、必ずしもアモルファス膜内で得られるドーピング濃度になるわけではないことに留意されたい。この実験は、錯体2がスピロ―MeOTADを効果的にドープすることを示す。
【0228】
《例10:固体色素増感太陽電池の調製》
最初に、フッ素ドープした酸化スズ(FTO)で被覆したガラス基材(Tec15、Pilkington社)を、亜鉛粉末、及び2Mの塩酸を用いてエッチングして、パターン化した。洗浄の後、エタノール中に溶解した、前駆体としてのチタンジイソプロポキシドビス(アセチルアセトネート)、及びキャリアガスとして酸素を使用して(体積比1:10)、TiO
2密集層を450℃でエアゾールスプレー熱分解によって基材上に堆積した。室温まで冷却した後、基材を、70℃で30分間、0.02MのTiCl
4の水溶液中で処理して、脱イオン水ですすぎ、450℃で15分間乾燥させた。20nmの寸法の粒子で構成される、2.5m厚の多孔TiO
2層を、スクリーン印刷技術により基材上に堆積し、125℃で乾燥させ、500℃まで徐々に加熱し、この温度で15分間焼いた。TiCl
4水溶液中における上述した処理を繰り返し、基材を450℃で15分間、再び乾燥させた。増感の前に、TiO
2基材を、500℃で30分間加熱した。この基材を、約70℃に冷却した後、アセトニトリル及びtert―ブチルアルコール(体積比1:1)混合物中の、Y123増感剤(Tsaoら、ChemSusChem 2011、4、591〜594)の10
−4Mの溶液内に、1時間浸漬した。正孔輸送材料を、2000rpmで30秒間、スピンコーティングによって堆積した。スピンコーティング溶液の処方は、クロロベンゼン中に、0.15Mの(2,2’,7,7’―テトラキス(N,N―ジ―p―メトキシフェニルアミン)―9,9―スピロビフルオレン)(スピロ―MeOTAD)、0.02Mのリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)、及び0.12Mの4―tert―ブチルピリジン(TBP)であった。化学的ドーパントを使用する際は、アセトニトリル中に予め溶解し、スピンコーティングの前にスピロ―MeOTAD溶液に加えた。
【0229】
特に、1.0%、1.6%、及び2.2%の3つの異なるドープ率を、ドープしていないリファレンス(ブランク)と比較して調査した。
【0230】
最後に、200nmの銀を、装置の上に熱的に蒸着させて、バックコンタクトを形成した。25m厚のポリマースペーサー(Surlyn、DuPont)、及び微小なカバースライドを使用して、装置を封止した。
【0231】
《例12:装置の特性評価》
外部の電位バイアスを電池に適用しつつ、Keithleyモデル2400デジタルソースメーター用いて、生成された光電流を記録することによって、電流―電圧―特性を記録した。光源は、ランプの放出スペクトルをAM1.5Gの標準(100mW cm
−2)に合わせるためにSchott K113 Tempax太陽光フィルタ(Praezisions Glas及びOptik社)を備える、450Wのキセノンランプ(Oriel)であった。白色LED配列体によって供給される、約5mW/cm
2の一定の白色光バイアスの下での波長の関数として、Keithley2400ソースメーター(Keithley社)を用いて、入射する光子―電子変換効率(IPCE)スペクトルを記録した。300Wのキセノンランプ(ILC Technology)から来る励起光線は、Gemini―180ダブルモノクロメーター(Jobin Yvon社)を通して焦束し、約4Hzにチョップした。
【0232】
シミュレートされたAM1.5G太陽光照度(100mW cm
−2)の下で測定したJ―V特性を
図4に表し、得られた光起電パラメータを以下の表1にまとめる。
【0233】
【表1】
【0234】
ドープしていないリファレンスについて、発明者らは、開放電圧V
OC、短絡回路電流J
SC、及びフィルファクターFFが、それぞれ878mV、9.1mA cm
−2、及び0.29であり、2.3%の全体的なPCEηを生ずることを見いだした。この装置は、高い直列抵抗の一因となっているドープしていないスピロ―MeOTAD膜の低い伝導率、したがって高い電荷輸送抵抗に起因する可能性のある、比較的劣ったフィルファクターに問題がある。錯体2の1.0%、1.6%、及び2.2%の添加に応じて、フィルファクターは、それぞれ0.46、0.55、及び0.62に改善し、結果として4.3%、5.3%、及び5.6%の電力変換効率になった。光電流密度に関して、FK102の添加は、10.2mA cm
−2(1.0% FK102)、及び10.4mA cm
−2(1.6% FK102)へのJ
SCの増加、及びその後のより高いドープ率での、9.6mA cm
−2(2.2% FK102)への減少につながった。この減少は、スピロ―MeOTADの酸化した種が520nm(ε=4.01x10
4mol
−1cm
−1)において強く吸収し、従って光の収集に関して増感剤と競合するため、電流生成の損失につながる場合がある。
【0235】
開放電圧は、1.0%の錯体2の添加に応じて923mVへと増加し、また、ドープ率を1.6%及び2.2%に増加させた場合、驚くべきことに、それぞれ934及び940mVへと更に増加する。これは、ドーパントを加えた際に、TiO
2伝導帯に対するギャップと、したがって理論的に達成可能な最大電位差とを拡大する、スピロ―MeOTAD膜におけるフェルミ準位の低下に起因すると思われる。さらに、より高い伝導率は電荷抽出を促進し、従って増感した接合近くの正孔の蓄積を防ぐ。
【0236】
2.2%の錯体2を含む装置について、最大の太陽光強度(100mW cm
−2)において、5.6%の最大の電力変換効率を達成した。低い光強度(10mW cm
−2)では、7.2%の優れたPCEを与える1.6%のドープ率において最大に達した点に注目すると興味深い(表1)。
【0237】
発明者らは、上述した系に基づく太陽電池の電力変換効率は、一般に、装置が暗闇の下で保管された場合に、経時的に著しく増加することを見いだした。電池の製造の数日後に測定したJ―Vデータと、最初に得られた光起電パラメータとの間の比較は、この性能の向上は、主にFFの増加から生じることを明らかにしている(表1)。
【0238】
本明細書に示す系に基づく装置は、一般に、製造した1〜2週間後に測定した電力変換効率が6〜7%に到達する。1.6%の錯体2のドーパントを含む最も優れた装置について、発明者らは、シミュレートしたAM1.5G太陽光照度(100mW cm
−2)(
図5)の下で測定して、7.2%という先例のない電力変換効率を達成した。発明者らの知る限りでは、全固体色素増感太陽電池についてそのような高いPCEが得られたのはこれが初めてである。発明者らが、光起電パラメータV
OC、J
SC、及びFFの、それぞれ986mV、9.5mA cm
−2、及び0.76を導いたこの装置について、対応するJ―V特性を
図4に説明する。
【0239】
結論として、発明者らは、化学的p―型ドーピングが、固体DSCにおけるスピロ―MeOTADの電荷輸送特性を調整するための有効な手段であること、及び一般に使用される光ドーピングを置き換えることができることを示した。予備的研究は、報告したCo
(III)錯体(錯体2)がこの種の用途に必要な要求を満たしており、有望な結果を達成できることを実証している。
以下、本発明の実施形態を列記する。
[項目1]
p―ドーパントとして、及び/又はn―ドーパントとしての、式(I)の錯体の使用であって、ここで、
Mは第一列遷移金属、特にコバルト、ニッケル、及び銅から、及び、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、Au、及びAgから選択される金属であり;
nは1〜6の整数であり、n個の配位子L1、…、Lnがあるように、aは1〜n(1、…、n)の整数からなる第一の組の連続番号であり;
mは0又は1〜5の整数であり、mが0より大きい場合にm個の配位子X1、…、Xmがあるように、bは0及び1〜m(0、…、m)の整数からなる第二の組の連続番号であり;
ここで、n及びmは、金属Mに存在する配位子の適切な数に等しく;
前記La(L1、…、Ln)の少なくとも一つが、5又は6員のN含有複素環を含む、置換又は非置換の環又は環系を含んでおり、前記5又は6員複素環がそれぞれ少なくとも一つの二重結合を含むという条件の下、任意のLa(L1、…、Ln)は、独立して、一座、二座又は三座配位子から選択され;
Xbは、独立して、一座配位の共配位子である、使用。
[項目2]
電池のための、過充電及び/又は過放電防止剤としての、項目1に記載した式(I)の錯体の使用。
[項目3]
酸化還元電池における添加剤としての、項目1に記載した式(I)の錯体の使用。
[項目4]
有機電荷輸送材料の伝導率、電荷密度、及び/又は電荷移動度を増加させるための、項目1に記載した式(I)の錯体の使用。
[項目5]
項目1〜4のいずれか一項に記載した使用であって、
ここで、任意のLa(L1、…、Ln)配位子は、独立して、置換及び非置換のピリジン又はポリピリジン、置換及び非置換ピラゾール、置換及び非置換ピラジン、置換及び非置換トリアゾール、置換及び非置換ピリダジン、置換及び非置換イミダゾールから選択され;
ここで、置換基は、独立して、1〜40の炭素及び0〜20のヘテロ原子を含む炭化水素、ハロゲン(―F、―Cl、―Br、―I)、―NO2、―NH2、及び―OHから選択される、使用。
[項目6]
項目1〜5のいずれか一項に記載した使用であって、
ここで、前記n個の配位子La(L1、…、Ln)の少なくとも一つが、ピリジン環、又は5若しくは6員環であってもよい少なくとも一つの更なる複素環に共有結合により結合若しくは融合したピリジン環を含む環系を含んでおり、ここで、前記ピリジン環、又はピリジン環及び前記更なる複素環を含む環系は、独立して、更に置換されていてもよく、又は置換されていなくともよい、使用。
[項目7]
項目1〜6のいずれか一項に記載した使用であって、
ここで、前記n個の配位子La(L1、…、Ln)の任意の一つは、独立して、前述の式(1)〜(63)の化合物から選択され、
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8の任意の一つは、存在する場合、独立して、H、ハロゲン、―NO2、―OH、―NH2から、並びに1〜40の炭素及び0〜20のヘテロ原子を含む炭化水素から選択してもよく;
R’及びR”は、独立して、置換基―CH2R1、―CHR1R2、及び―CR1R2R3から選択される、使用。
[項目8]
項目1〜7のいずれか一項に記載した使用であって、
ここで、前記置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8の一つ以上は、存在する場合、独立して、前述の式(A―1)〜(G―2)の置換基から選択され、
ここで、
破線は、置換基(A―1)〜(G―2)を式(1)〜(63)の化合物に接続している結合を表しており;
置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は、存在する限りにおいて、独立して、H、ハロゲン、―NO2、―OH、―NH2から、並びに1〜30の炭素及び0〜15のヘテロ原子を含む炭化水素から選択される、使用。
[項目9]
項目7〜10のいずれか一項に記載した使用であって、ここで、置換基(A―1)〜(G―2)から選択されないR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8の任意の一つは、並びにR1、R2、R3、R4、R5、R6、R’、及びR”の任意の一つは、適用できる場合、独立して、Hから、並びにC1〜C10のアルキル、C2〜C10のアルケニル、C2〜C10のアルキニル、及びC5〜C12のアリール(好ましくはC6〜C12のアリール)から選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアリールにおいて、1つの、いくつかの、又は全ての利用できる水素は、ハロゲンによって及び/又は―CNによって置き換えてもよく、ここで、上記のR1〜R8及びR1〜R6の任意の一つは、更に、ハロゲンから、及び―C≡N(―CN)から選択してもよい、使用。
[項目10]
項目1〜9のいずれか一項に記載した使用であって、ここで、nは2(M L1 L2)又は3(M L1、L2、L3)であり、mは0である、使用。
[項目11]
項目1〜10のいずれか一項に記載した使用であって、同一構造(それぞれL1=L2、又はL1=L2=L3)の少なくとも2つ又は少なくとも3つの配位子Laを含む、使用。
[項目12]
項目1〜11のいずれか一項に記載した錯体を含む、電気化学装置及び/又は光電子装置。
[項目13]
前記錯体、及びその還元された又は酸化された対応物を酸化還元対として使用する、項目12に記載した装置。
[項目14]
項目12及び13のいずれかに記載した装置であって、
光電池、電池、再充電可能電池、発光装置、エレクトロクロミック装置、光エレクトロクロミック装置、電気化学センサー、バイオセンサー、電気化学ディスプレイ、及び電気化学キャパシタから選択された、装置。
[項目15]
第一及び第二の電極、並びに前記第一及び第二の電極の間に、有機電荷輸送層を含み、前記電荷輸送層は、項目1に記載した式(I)の金属錯体を含む、電気化学装置。