(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568215
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】高速流体輸送継手用複合シール及びこの種の継手
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20190819BHJP
F16L 27/12 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
F16J15/10 L
F16L27/12 K
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-524415(P2017-524415)
(86)(22)【出願日】2014年11月5日
(65)【公表番号】特表2018-501440(P2018-501440A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】FR2014052823
(87)【国際公開番号】WO2016071583
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2017年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】596090720
【氏名又は名称】ハチンソン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グルーリエ、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】フェイルー、ジャン − リュック
【審査官】
谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/037967(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/077677(WO,A1)
【文献】
特開2001−082650(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0175765(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F16L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の本体と剛性補強材(35)とを有する複合環状シール(30)であって、前記シールが、雌型管状スリーブ(10)と雄型管状エンドピース(20)とを備える流体搬送用迅速継手(1)において使用可能であって、前記エンドピース(20)が、前記スリーブの内側凹部(13)と前記エンドピースの円筒状外側表面(22)との間に全体的に静的な密閉を生じさせるように、前記スリーブの径方向内側に取り付けられ、
−前記エンドピースの前記外側表面に対して密接させるように構成された径方向可撓性最内周囲部(31aa)を有する径方向内面(31a)を有する、径方向内側にあって、軸線方向に延在する内翼(31)と、
−前記凹部に押圧されるように構成された可撓性径方向外面(36a)を有する、径方向外側にあって、軸線方向に延在する外翼(36)と、
−前記内翼を前記外翼に接続しているコア(33)と
を備える複合環状シール(30)であって、
前記最内周囲部(31aa)が、凸状であって、軸線方向断面において丸みを帯びた形状を有し、
前記外翼(36)が、加圧流体によって前記凹部(13)に押圧されることに適しており、前記コア(33)から離間して径方向内側に移動する状態で軸線方向に延在する円周可撓性シールリップ(38)によって形成された自由端部を備え、
前記外翼(36)の前記外面(36a)が、前記凹部(13)に押圧されることに適しており、軸線方向断面において、切断されたトーラスの円形状が与えられるように円弧形状を有する少なくとも1つの円周可撓性ボスを備えることを特徴とする、シール(30)。
【請求項2】
前記最内円周部(31aa)が、軸線方向断面において、切断されたトーラスの円形状が与えられるように円弧形状を有することを特徴とする、請求項1に記載のシール(30)。
【請求項3】
前記最内円周部(31aa)が、前記エンドピース(20)に対して当接させた状態での前記内翼(31)の内径(D0)が35mm〜100mmである場合に、0.5mm〜3.0mmの半径(R1)を有することを特徴とする、請求項2に記載のシール(30)。
【請求項4】
前記内翼(31)が、前記内翼(31)を径方向内側に予め押圧する戻り手段(32)を備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシール(30)。
【請求項5】
前記戻り手段(32)が、その中心が前記最内円周部(31aa)に対して軸線方向に距離(L1)によってずらされた状態で、前記内翼(31)の径方向外面(31b)に取り付けられる環状金属製径方向圧縮スプリングを備えることを特徴とする、請求項4に記載のシール(30)。
【請求項6】
前記シールリップ(38)が、前記エンドピース(20)に対して把持された状態での前記内翼(31)の内径(D0)が35mm〜100mmである場合に、軸線方向(X)に0.8mm〜3.0mmで突出した長さ(L2)を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシール(30)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの円周可撓性ボスは、軸線方向に分離された複数の円周可撓性ボス(37a,37b)であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシール(30)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの円周可撓性ボスは、軸線方向に離間した、円状のエラストマーの第1及び第2のボス(37a,37b)であって、前記第2のボス(37b)は、前記第1のボス(37a)より前記外翼(36)の前記自由端部に軸線方向に近く、前記円周可撓性シールリップ(38)まで延在することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシール(30)。
【請求項9】
非使用時に、前記シールが、略U形状の軸線方向断面を有し、前記コア(33)が、径方向に延在し、軸線方向断面において「L」を形成して前記外翼(36)内を延在する前記補強材(35)によって補強され、前記補強材が、金属又は硬質プラスチックから作られ、角度をもって連続的に前記シールの前記本体を補強し、前記シールの前記本体が、前記最内円周部と前記外翼の前記外面とを備えることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシール(30)。
【請求項10】
前記最内円周部(31aa)が、傾斜(31ab)を介して、前記コア(33)に向かって軸線方向に延在し、前記傾斜(31ab)が、前記内翼(31)を前記コアに接続し、前記傾斜の端部において径方向内側に延在する周方向保護リップ(31f)を備えることができるヒンジ(34)を形成している接続部へ径方向内側に延在することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のシール(30)。
【請求項11】
前記ヒンジ(34)が、前記エンドピース(20)に対して把持された状態での前記内翼(31)の内径(D0)が35mm〜100mmである場合に、0.5mm〜1.0mmの厚さを有することを特徴とする、請求項10に記載のシール(30)。
【請求項12】
剛性雄型管状エンドピース(20)を可撓性雌型ホースに連結するために使用可能な流体搬送用迅速継手(1)であって、前記流体搬送用迅速継手(1)が、
−プラスチック材料又はプラスチック母材複合材料を射出することによって成形された雌型管状スリーブ(10)と、
−前記スリーブの内側に径方向及び軸線方向に取り付けられ、円筒状外側表面(22)を有する前記エンドピースと、
−前記スリーブと前記エンドピースとの間の全体的に静的な密閉性を生じさせるように、前記スリーブの内側凹部(13)に収容され、前記エンドピースの前記外側表面に対して把持されることに適している補強材(35)を有する環状シール(30)と
を備え、
前記シールが、請求項1〜11のいずれか一項で定義されていることを特徴とする、継手(1)。
【請求項13】
前記スリーブ(10)及び前記エンドピース(20)は、流体輸送の間において、永続的な相対回転による移動が不可能であって、前記輸送の間において、動作の際の相対並進及び/又は交互回転による移動のみが可能であることを特徴とする、請求項12に記載の継手(1)。
【請求項14】
前記凹部(13)が
第1直径を有する、前記スリーブ(10)の第1円筒状内面(14)と、
前記第1直径より小さい第2直径を有する、前記スリーブの第2円筒状内面(15)と、
前記第1円筒状内面を前記第2円筒状内面に径方向に接続する環状肩部(16)と、
前記第1円筒状内面から径方向に延在し、前記シールが軸線方向に並置されている、前記シール(30)の環状ストップ(17)と
によって画成され、
前記シールが、前記肩部及び前記ストップに押し込まれ、且つ、前記肩部と略等しい径方向シール向高さ(H)を有する状態で、前記スリーブの前記第1円筒状内面に対して支持されて取り付けられていることを特徴とする、請求項12又は13に記載の継手(1)。
【請求項15】
前記ストップ(17)が、前記第1円筒状内面(14)の下に取り付けられた軸線方向固着部(18)と、前記軸線方向固着部を前記肩部(16)に向かって延在し、前記径方向シール高さ(H)に略等しい径方向ストップ高さを有する径方向ストップ部(19)とを含むスペーサを備えることを特徴とする、請求項14に記載の継手(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速流体輸送継手に使用可能な、補強材を含む環状シール、及びそのようなシールを組み込んだその高速継手に関する。本発明は特に、乗用型、特定用途型、重量トラック型、建設型(例えば土木)又は農業型の、内燃機関によって移動する車両を含む自動車の分野における高速継手、及び同様の燃焼機関を使用する固定装置(例えば発電装置、コンプレッサ、ポンプ)の分野における高速継手に適用される。これら2つの適用群に対し、本発明に係る装置は特に、クリーンアップ回路、冷却回路、又は、有利には給気回路を備えていてもよい。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車用の流体輸送回路において、フレキシブルホースを係止用剛性雄型エンドピースに固く接続するために、高分子コネクタ又はスリーブ本体を備える、全体的に静的な継手を使用することが知られている。この雄型エンドピースはスリーブの一端に挿入され、スリーブの他端はホースによって把持される。本説明及び既知の手法では、「全体的に静的な継手」とは、静的な又は略静的な継手のことをいう。つまりそのスリーブ及びエンドピースは、動的な回転シャフト継手とは異なり、永続的且つ相対的な回転によって移動することができず、互いに対して略固定される。
【0003】
そのような、全体的に静的な種類である既知の高速継手1’の代表例を示す
図1に示すように、スリーブ10’は、典型的には、径方向肩部16’によって形成された環状凹部13’と、静的環状シール30’を受容する、スリーブ10’の円筒状内面14’とを有する。この静的環状シール30’は一般的にリップシール型であり、射出成形されたエラストマーから作られ、スリーブ10’の内面14’と、肩部16’と、周囲突出部21をもつ雄型エンドピース20との間に把持されて取り付けられる。雄型エンドピース20がスリーブ10’内に径方向及び軸線方向に挿入され、矢印Aの方向にシール30’と当接すると、このシール30’は、肩部16と、スリーブ10’の内面に固着されたスペーサ17’との間に更に軸線方向に挿入される。
【0004】
このエラストマーシール30’の大きな欠点の一つは、その単一材料構造にあり、これは自然劣化の一因として、シール30’が経時的にその特性の大部分を失い、エンドピース20及びスリーブ10’に対するシール30’の把持効果を徐々に減少させる原因となる。結果、望ましくない滲出や漏出が起こる虞が生じる。
【0005】
この既知のエラストマーシール30’の別の欠点は、エンドピース20を軸線方向に取り付ける際に、作業者による径方向の圧縮を必要とするために、取り付け力が大きくなってしまうことである。
【0006】
静的又は動的な使用のための環状シールは、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されるようなゴム製シール本体及び(例えば金属製の)剛性補強材から構成される複合型のものも存在し、両者はそれぞれ、L形状の補強材により補強され、内翼がスプリングによって予め押圧された、U形状の軸線方向断面をもつシールを有する。
【0007】
特に、特許文献1に記載のシールは、
−内側エンドピースにシール性を設けるための周端部が内面に設けられており、この内側シール端部から実質的に横切るように取り付けられた径方向圧縮スプリングが外面に設けられている内側シール翼と、
−補強材を組み込む径方向コアと、
−ボスが外面に設けられ、補強材を組み込む外側シール翼と
を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0,317,903号明細書
【特許文献2】米国特許第4,579,352号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この複合シールの大きな欠点の一つは、内翼に有するこのシール端部にある。これは(つまり回転継手のシャフトに押圧された状態での)シールの動的な適用に適しているものの、このシール端部は、長期では、流体の輸送中にシール不良及び望ましくない滲出を引き起こす可能性があるという事実があるため、この点で、静的な適用には適さない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的の一つは、前述した欠点の全てを解決するような、(特にエラストマーである)可撓性のある本体と剛性補強材とを有する複合環状シールであって、雌型管状スリーブと、スリーブの径方向内側に取り付けられた雄型管状エンドピースとを備える高速流体輸送継手において使用可能で、スリーブの内側凹部とエンドピースの円筒状外側表面との間に全体的に静的な密閉を提供し、
−エンドピースの外側表面に対して密に当接させるように設計された(例えばエラストマーの)径方向最内可撓性周囲部を有する径方向内面を有する径方向内側軸翼と、
−凹部に固く押圧されるように設計された(例えばエラストマーの)可撓性径方向外面を有する径方向外側軸翼と、
−内翼を外翼に接続するコアと
を備える複合環状シールを提案することである。
【0011】
そのために、本発明に係るシールは、最内周囲部が凹状であり、軸線方向断面において丸みを帯びた形状を有する。
【0012】
ここで、出願人は、この凸状で丸みを帯びた最内部が、その動作の際に、回転シャフトに当接する先行技術の上述した端部によって画成される最内部と比較して、輸送流体に対するシール性及び全体的に静的な継手におけるシールの滲出耐性を大きく向上させる(つまり、スリーブとエンドピースとの間の永続的な相対回転がない)ことを確認した。従って、本発明に係るそのような全体的に静的な密閉は、このシール性を最適化し、継手内、例えば、互いに相対的に移動不可か、又は、(例えば交互の)並進運動により、若しくは、スリーブとエンドピースとの間において(例えば数度の)小さな振幅の、交互の回転運動により、少なくとも移動可能なスリーブ及びエンドピースを有するスナップオン継手内における滲出を最小化するのに適している。
【0013】
また、この凸状で丸みを帯びた最内部は、周方向に連続である。
【0014】
有利には、最内円周部は、軸線方向断面において、円弧形状による切頂されたトーラスの円周形状(つまり、完全に円形ではない、断面によって切頂された閉じたトーラス)を有してもよい。
【0015】
更に有利には、この部位は、35mm〜100mmのエンドピースに対して当接させた状態において、内翼の内径に対して0.5mm〜3.0mmの半径を有してもよい(つまり、35mm〜100mmのエンドピースの外径に対して)。
【0016】
本発明の別の特徴によれば、内翼に、内翼を径方向内側に予め押圧する戻り手段が設けられていてもよい。
【0017】
有利には、この戻り手段が、その中心が最内円周部に対してずれている状態で、内翼の径方向外面に取り付けられる環状金属製径方向圧縮スプリングを備えてもよい。
【0018】
ここで、本発明に係る複合シールは、エンドピース上のシールの内翼の把持力を、エラストマーの経年劣化に依存させないようにすることで、単一材料静的シールの上述した欠点を解決する。これは、それを提供するのはこの戻り手段であり、自動車用の流体回路の通常の作動条件が、この金属製(単なるスチール又はステンレススチールの)スプリング型の戻り手段を変化させる性質をもたないからである。
【0019】
本発明の別の特徴によれば、外翼は、加圧流体によって凹部に対して押圧されるのに適しており、コアから離間して径方向内側に(つまり斜めに)移動しつつ軸線方向に延在する(例えばエラストマーの)円周可撓性シールリップによって形成される自由端部を備えてもよい。
【0020】
有利には、シールリップは、35mm〜100mmのエンドピースに対して把持された状態で、内翼の内径に対して軸線方向に0.8mm〜3.0mm突出した長さを有してもよい(つまり、35mm〜100mmのエンドピースの外径に対して)。
【0021】
ここで、このシールリップは、周方向おいて連続又は不連続に斜めに延在していてもよく、その結果、流体の圧力による長時間に亘るスリーブの凹部のシール性を向上させ、このリップをこの凹部に対して押圧した状態を維持する。
【0022】
また、スリーブの凹部におけるシールの外翼のシール性は、アセンブリの圧縮によって付与され、補強材及びシールリップによって長時間保持される。
【0023】
ここで、エンドピースをスリーブ内に軸線方向に挿入する際、作業者は、戻り手段が設けられたシールの内翼の把持のみを感知し、従ってエラストマーの単一材料シールよりも小さな取り付け力を感知する。
【0024】
本発明の別の特徴によれば、外翼の外面は、凹部に押圧されるのに適しており、軸線方向断面において、円弧形状による切頂されたトーラスの円周形状を有する、少なくとも1つの(例えばエラストマーの)円周可撓性ボス又はビード、好ましくは軸線方向に間隔をあけた複数のボスを備えてもよい。
【0025】
ここで、その、又は各エラストマーボスは、周方向において連続又は不連続であってよく、凹部の壁に対して圧力を加える流体の圧力を介してリップによって確保される第1外側の耐密性に加えて、第2径方向外側の耐密性をシールに付与する。
【0026】
一般に、非使用時に、シールは略U形状の軸線方向断面を有してもよく、コアは径方向に延在し、軸線方向断面において「L」を形成して外翼内を延在する補強材によって補強され、補強材は金属又は硬質プラスチック(例えばプラスチックエラストマーといった熱可塑性材料)から作られ、角度をもって連続的にシールのエラストマー本体を補強する。このエラストマーシール本体は、例えばゴムや熱可塑性エラストマーから作られていてもよく、特に凸状で丸みを帯びた最内部と外翼の外面とを備える。
【0027】
本発明の別の特徴によれば、最内円周部が、傾斜を介して、コアに向かって軸線方向に延在し、傾斜は、内翼をコアに接続することができるヒンジを形成する接続部へ径方向内側に延在し、傾斜の端部において径方向内側に延在する周方向保護リップが設けられる。
【0028】
有利には、ヒンジが、35mm〜100mmのエンドピースに対して把持された状態で、内翼の内径に対して0.5mm〜1.0mmの厚さを有してもよい(つまり、35mm〜100mmのエンドピースの外径)。
【0029】
ここで、ヒンジは既知のU形状シールのヒンジと比較して小さい高さを任意に有してもよく、これによって凹部とエンドピースとの間の中心位置合わせにおけるより著しい欠点を吸収することが可能となる。
【0030】
本発明に係る高速流体輸送継手は、剛性雄型管状エンドピースを可撓性雌型ホースに連結するのに使用してよく、継手は
−好ましくはプラスチック材料又はプラスチック母材複合材料を射出することで成形した雌型管状スリーブと、
−スリーブの径方向及び軸線方向内側に取り付けられ、円筒状外側表面を有するエンドピースと、
−スリーブの内側凹部に収容され、エンドピースの外側表面に対して把持されるのに適しており、スリーブとエンドピースとの間の全体的に静的な密閉性を設けるための補強材を含む環状シールとを備え、このシールは、上で定義した通りである。
【0031】
上で説明したように、本発明に係るそのような継手のスリーブ及びエンドピースは、流体輸送の間において、永続的な相対回転による移動が不可能であり、輸送の間において、動作の際の相対並進運動、又は、引き続く数度の交互回転運動による移動のみが可能である。
【0032】
本発明の別の特徴によれば、スリーブの凹部が
第1直径を有する、スリーブの第1円筒状内面と、
第1直径よりも小さい第2直径を有する、スリーブの第2円筒状内面と、
第1面を第2面に径方向に接続する環状肩部と、
第1面から径方向に延在し、シールが軸線方向に並置される、シールの環状ストップと
によって画成され、
シールが、肩部及びストップに押し込まれた状態且つ肩部と略等しい径方向シール高さを有した状態で、スリーブの第1面に対して取り付けられ保持されている。
【0033】
有利には、ストップは、第1面の下に取り付けられた軸線方向固着部と、軸線部を肩部に向けて延ばし、シールの径方向高さに略等しい径方向ストップ高さを有する径方向ストップ部とを含むスペーサを備えてもよい。
【0034】
本発明のその他の特徴、利点及び詳細は、以下に説明する、例示として非限定に与えられる本発明の一実施例を読むことによって明らかとなるであろう。この説明は附属の図面を参照してなされる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】既知のエラストマーシールを備える、従来技術に係る高速継手の一部を模式的に表した片側軸線方向断面図である。
【
図2】補強材を含むエラストマー複合シールを備える、本発明の一例に係る高速継手の一部を模式的に表した片側軸線方向断面図である。
【
図3】
図2に見られる複合シールを拡大した片側軸線方向断面図である。
【
図4】
図2及び
図3のシールにおける外翼の自由端部の詳細な図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本説明では、「前方に」又は「前方」は、雄型エンドピースの対称軸線X、及び雄型エンドピースの挿入方向側に向けて回転されるスリーブに沿った相対位置を指し、「背後」又は「後方」は、この方向とは反対側(例えばホース側)に向けて回転される、軸線Xに沿った相対位置を指定する。
【0037】
図2に示す本発明に係る高速継手1が、プラスチック又はプラスチック母材複合材料に基づく管状スリーブ10を本質的に備える。フレキシブルホース(不図示)を把持し、剛性雄型エンドピース20を、スリーブ10を介して取り付けられた(不図示の、例えばピン型の)係止部材によって係止する管状スリーブ10は、エンドピース20の周囲突出部21と協働する(係止部材は、既知には、エンドピース20を完全に挿入した後に、突出部21に対する係止位置で、把持ヘッドによって連結され、塞がれたスリーブ10の前方に形成された2つの開口部にスナッピングによって横方向に可逆的に押し通される、少なくとも2つの弾性係止翼を含むことができる)。
【0038】
より具体的には、有利にはPBT(ポリブチレンテレフタレート)やポリアミド(例えばPA6、PA6.6、PA4.6)といった1つ又は複数種類の熱可塑性ポリマーから射出成形されたスリーブ10は、この例では、係止部材が横切る前方部11と、本発明に係るシール30を受容する内側環状凹部13を備える後方部12とを有する。
【0039】
この例のスリーブ10の後方部12は、シール30が取り付けられる、直径D1を含む第1円筒状内面14と、D1よりも小さな直径D2を有し、環状径方向肩部16によって第1面14に接続される第2円筒状内面15とを本質的に有する。肩部16は、シール30の軸線方向ストップを形成し且つ第1面14に固着する環状スペーサ17に連なる、凹部13を画成する。
図2に見られるように、スペーサ17は、第1面14の環状リブ14aと協働する、軸線部18の径方向環状溝孔を介して、第1面14に固着する軸線部18を有し、シール30を肩部16に対して軸線方向に押し込む径方向部19によって直角に延在する。
図3には、シール30が、スペーサ17の径方向高さ及び肩部16の径方向高さと略等しい径方向シール高さHを有していることが示される。
【0040】
図3に示すように、本発明に係る複合シール30は、片側軸線方向断面でU形状の幾何形状を有し、
−好ましくはエラストマー材料から作られる径方向内側の軸線方向環状翼31であって、そのエラストマー径方向内面31aが、翼31を径方向内側に予め押圧する戻り手段32(この手段32は、例えば、内側翼31の径方向外面31bの空洞部31ba内に取り付けられる環状金属製の径方向圧縮スプリングから構成される)によって、エンドピース20の径方向外側円筒状表面22に対して把持されるのに適している径方向内側の軸線方向環状翼31と、
−好ましくはエラストマー材料のベースを有し且つ内側翼31のヒンジ34を形成する接続部から直角に延在し、片側軸線方向断面でL形状を有する硬質プラスチック製又は金属製の環状補強材35の径方向環状部35aによって補強される径方向環状コア33と、
−好ましくはこの同じエラストマー材料のベースをもつ径方向外側の軸線方向環状翼36であって、そのエラストマー径方向外面36aが、スリーブ10の第1面14に対して把持されるようになっており、また、径方向部35aを直角に延在させる補強材35の軸線方向環状部35bによって補強され、それによってコア33及び翼36がエラストマー/硬質プラスチック又は金属複合材を形成する径方向外側の軸線方向環状翼36と
を備える。
【0041】
図5に示すように、内側翼31の内面31aは、戻り手段32を空洞部31baに押し込む径方向外側に湾曲した自由端部31cの近傍に、本発明では軸線方向断面で丸みを帯びた凸形状を有する径方向最内エラストマー円周部31aaを有する。この例では、部位31aaは、軸線方向断面において円弧形状を有し、これによって、エンドピース20の外側表面22の外径D0が約45mmなのに対して、例えば1.0mmに等しい半径R1をもつ、全体的に切頂されたトーラス形状となる(このトーラスは、円曲部31aaが内側翼31の内面31aに限定されており、円のように閉じることはないため、軸線方向断面において部分的に切頂されている)。
【0042】
上述したように、エンドピース20に当接する本発明に係る円曲部31aaは、特許文献1のような周端部内に画成される最内部と比較して、輸送流体(例えば空気)に対するシール性及び全体的に静的な継手1におけるシール30の滲出耐性を大きく向上させる。
【0043】
図5に示すように、円曲部31aaが延在する方向は、
−凹領域31dを作り出す変曲点を介して、閉じた径方向端部31cに向かう方向(ここで、凹領域31dは、その原点に、軸線方向に対して例えば45°±7°の角度αを形成し、ベース30及び31cを形成する短軸線部31eで終端する)と、
−傾斜31abを介して、ヒンジ34に向かう方向(ここで、傾斜31abは、軸線方向Xに対して例えば20°±10°の角度βを形成しながら径方向内側に延在し、傾斜31abの端部及びコア33の延長上において斜め径方向内側に延在する周方向保護リップ31f(
図3参照)で終端する)とである。
【0044】
ヒンジ34は、エンドピース20の外径D0約45mmに対して、例えばおよそ0.75mmの厚さを有する。図示の例では、内側翼31は、円形部31aaから傾斜31ab及び軸線方向外面31bを介して、ヒンジ34において最小厚さに達するまで薄くなることが明示されている。
【0045】
更に、特に
図5に示されるように、円状の戻り手段32は、その中心が円曲部31aaに対してコア33側に軸線方向に距離L1だけずれている(つまり、部位31aaの径方向対称軸線X1が、戻り手段32の対称軸線X2と一致しておらず、この軸線X2が軸線X1よりもコア33に近い)。
【0046】
コア33は径方向内側部33aを備え、内側部33aは、内側部33aを狭める肩部を介して、外翼36に隣接する径方向外側部33bまで延在する、最大軸線方向厚さをもつヒンジ34に隣接する。金属(例えばDC01型のスチールから作られ、具体的には他の金属や合金等を使用することができる)から作られることが好ましい補強材35は、これら2つの部位33a及び33bに亘って径方向に連続的に延在する。
【0047】
図3に示すように、外翼36はその外面36a上に、軸線方向に離間して、凹部13内でスリーブ10の第1内面14に押圧されるのに適した第1及び第2円状のエラストマーボス37a及び37bを備え、そのそれぞれは、円弧形状による、軸線方向断面において切頂されたトーラスの円形状を有する。外翼36の自由端部38に軸線方向に最も近い第2ボス37bは、内面14及び凹部13内で肩部16に対して加圧流体によって押圧されるようになっており、コア33から軸線方向に離間して斜め径方向内側に延在するエラストマー円周端シールリップ38まで延在する。
【0048】
図4に示すように、リップ38は、
−リップ38の終端部38aまで僅かに先細った形状(つまり、リップ38の(第2ボス37bを延ばす)径方向外側端部38bと径方向内側端部38cとの間に形成された角度γが12°となり、端部38aが約0.3mmの厚さを有するように、終端部38a以降の厚さが連続的に減少している)と、
−エンドピース20の外径D0約45mmに対して、軸線方向Xに1.6mm突出し、具体的には、非使用状態のリップ38が、径方向Yに対して約65°の角度δを形成することを明示する長さL2と
を有する。
【0049】
上述したように、リップ38は、凹部13内でスリーブ10の第1面14及び肩部16にかかる流体の圧力を介して、シール30の外翼36の、スリーブ10に対するシール性を向上させ、その結果、流体の圧力による長時間に亘る凹部13のシール性を向上させる。従って、組み立てにおけるシール30の圧縮により、外翼36と凹部13との間にシール性が付与され、補強材35及びリップ38によって長時間保持される。
【0050】
ボス37a及び37bにより、リップ38によって設けられる第1の耐密性に加えて、凹部13におけるシールに第2の耐密性が付与され、具体的には、リップ38が存在することで、構成部品エラストマーの経年による残留変形を原因とする、ボス37a及び37bのシールにおけるいかなる経時的欠陥も克服される。
【0051】
図3の例において、環状補強材35は、コア33の内側33a及び外側33b部位に沿って径方向に延在し、外翼36に沿って軸線方向に延在し、具体的には補強材35は
−コア33の内側部位33aに埋め込まれており、つまり、補強材35の径方向内側環状端部35aaが、コア33の内側(翼31及び36に向けて回転)及びコア33の外側(翼31及び36の反対方向に回転)の両方におけるシール30のエラストマー材料によって軸線方向に囲まれており、
−コア33の内面を、その外側部位33b及び外翼36の内面36bにおいて、コア33の大部分に亘って連続的に画成し(つまり、補強材35は埋め込まれておらず、外面がシール30の弾性材料に覆われているだけである)、具体的には、(
図4に示す)補強材35の径方向外側環状端部35baが、減少した内面の領域にも亘ってこのエラストマー材料に囲まれ且つエラストマー材料に埋め込まれている。