特許第6568251号(P6568251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568251
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】液状組成物及び被覆方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20190819BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20190819BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20190819BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20190819BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20190819BHJP
【FI】
   C08G18/00 L
   C09D175/04
   C09D7/40
   C09D7/61
   C08G101:00
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-36184(P2018-36184)
(22)【出願日】2018年3月1日
(65)【公開番号】特開2019-31652(P2019-31652A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2018年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-39690(P2017-39690)
(32)【優先日】2017年3月2日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-158347(P2017-158347)
(32)【優先日】2017年8月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】天野 良太郎
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−196476(JP,A)
【文献】 特開2007−197489(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/128213(WO,A1)
【文献】 米国特許第04097400(US,A)
【文献】 特開2016−108430(JP,A)
【文献】 特開2011−157528(JP,A)
【文献】 特開2015−168794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物と混合することによりフォームを形成する液状組成物であって、
ポリオール化合物、発泡剤、触媒、整泡剤、及びリン化合物を含有し、
上記リン化合物として、粉状リン化合物と液状リン化合物を含み、
上記粉状リン化合物が、密度1.8g/cm以下のホスフィン酸塩化合物を含み、
上記液状リン化合物が、有機リン酸エステル化合物を含み、
粘度が500mPa・s以下であることを特徴とする液状組成物。
【請求項2】
上記粉状リン化合物の含有量が、上記ポリオール化合物の固形分100重量部に対し、1〜300重量部であることを特徴とする請求項1記載の液状組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の液状組成物と、ポリイソシアネート化合物とを混合して、基材に塗付し、当該基材をフォームで被覆することを特徴とする被覆方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な液状組成物に関する。本発明の液状組成物は、ポリイソシアネート化合物と混合することによりフォームを形成することができるものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築物等においては、壁面、天井面、床面等にフォームを設けることにより、屋内と屋外との間で生じる熱の出入りを抑制している。このようなフォームは、低熱伝導性の材料であり、その代表例として、例えば、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、スチレンフォーム等の有機フォームが用いられている。このうち、ウレタンフォームは、約0.025W/(m・K)程度の優れた低熱伝導性を有すること、また、比較的低コストで施工することができること等の特徴を有することから頻繁に用いられている。但し、ウレタンフォーム等の有機フォームは、有機系物質が主成分であるため、炎や高熱への耐性、すなわち耐熱性において、高度な性能が得られ難い傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016−531966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1(特表2016−531966号公報)等においては、ポリオール系化合物、及び固体状難燃剤等を含む組成物によって、低熱伝導性のフォームに耐熱性等を付与する試みがなされている。この固体状難燃剤については、トリフェニルホスフェート等のリン系難燃剤、デカブロモジフェニルオキシド等のハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物系難燃剤等が記載されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載のような組成物では、貯蔵期間が長くなると、固体状難燃剤の沈降や凝集が生じるおそれがある。このような場合、吹付け施工等によるフォーム形成時の前段階として、組成物を十分に撹拌しなければならず、ハンドリング性に難があり、施工作業が煩雑となってしまう。また、固体状難燃剤の分散不良や、ポリイソシアネート化合物との混和不良等に起因し、均質なフォームが形成されず、耐熱性等において十分な性能が得られ難くなるおそれもある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、本発明の主たる目的は、ポリイソシアネート化合物と混合することによりフォームを形成する液状組成物について、その貯蔵安定性、施工作業性等を改善すること、そして低熱伝導性、耐熱性等において優れた性能を有する均質なフォームを形成させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意検討した結果、ポリイソシアネート化合物と混合することによりフォームを形成する液状組成物について、特定の化合物を含み、特定の粘度を有するものが有益であることに想到し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.ポリイソシアネート化合物と混合することによりフォームを形成する液状組成物であって、
ポリオール化合物、発泡剤、触媒、整泡剤、及びリン化合物を含有し、
上記リン化合物として、粉状リン化合物と液状リン化合物を含み、
上記粉状リン化合物が、密度1.8g/cm以下のホスフィン酸塩化合物を含み、
上記液状リン化合物が、有機リン酸エステル化合物を含み、
粘度が500mPa・s以下であることを特徴とする液状組成物。
2.上記粉状リン化合物の含有量が、上記ポリオール化合物の固形分100重量部に対し、1〜300重量部であることを特徴とする1.記載の液状組成物。
3.1.または2.記載の液状組成物と、ポリイソシアネート化合物とを混合して、基材に塗付し、当該基材をフォームで被覆することを特徴とする被覆方法。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリイソシアネート化合物と混合することによりフォームを形成する液状組成物について、その貯蔵安定性、施工作業性等を改善することができる。さらに、低熱伝導性、耐熱性等において優れた性能を有する均質なフォームが形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の液状組成物は、ポリイソシアネート化合物と混合することによって、フォームを形成するものであり、必須成分として、ポリオール化合物、発泡剤、触媒、整泡剤、及びリン化合物を含有する。
【0012】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリペンタジエンポリオール、ひまし油系ポリオール等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0013】
このうち、ポリエステルポリオールとしては、例えば、芳香族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、芳香族/脂肪族ポリエステルポリオール等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。具体的に、芳香族ポリエステルポリオールとしては、例えば、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸等の芳香族多塩基酸と多価アルコールとを反応させて得られる縮合ポリエステルポリオール、ポリエチレンテレフタレート等のフタル酸系ポリエステル成形物を分解して得られるフタル酸系ポリエステルポリオール等が挙げられる。脂肪族ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族多塩基酸と多価アルコールとを反応させて得られる縮合ポリエステルポリオール等が挙げられる。芳香族/脂肪族ポリエステルポリオールとしては、例えば、芳香族多塩基酸及び脂肪族多塩基酸と多価アルコールとを反応させて得られる縮合ポリエステルポリオール等が挙げられる。
本発明では、ポリオール化合物としてポリエステルポリオールを含むことが望ましく、耐熱性等の点から芳香族ポリエステルポリオール、付着性等の点から脂肪族ポリエステルポリオール、あるいは、耐熱性、付着性等の点から芳香族/脂肪族ポリエステルポリオール等を単独またはブレンドして使用することができる。本発明では特に、芳香族/脂肪族ポリエステルポリオールを含むことが好ましい。
【0014】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、芳香族ポリエーテルポリオール、リン含有ポリエーテルポリオール、グリセリン系ポリエーテルポリオール、アミノ基含有ポリエーテルポリオール等が挙げられる。具体的に、芳香族ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ビスフェノールAを開始剤としてアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等)を付加することで得られるビスフェノールA型ポリエーテルポリオール、芳香族アミン(例えば、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、トリエタノールアミン、マンニッヒ縮合物等)を開始剤としてアルキレンオキサイドを付加することで得られる芳香族アミン系ポリエーテルポリオール等が挙げられる。リン含有ポリエーテルポリオールとしては、例えば、リン酸エステル構造を有するジオールであるジアルキル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネート等が挙げられる。グリセリン系ポリエーテルポリオールとしては、グリセリンを開始剤としてアルキレンオキサイドを付加することで得られるポリエーテルポリオール等が挙げられる。アミノ基含有ポリエーテルポリオールとしては、例えば、低分子量アミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミン等)を開始剤としてアルキレンオキサイドを付加したもの等が挙げられる。
【0015】
本発明におけるポリオール化合物の水酸基価は、特に限定されないが、50mgKOH/g以上500mgKOH/g以下であることが望ましい。
なお水酸基価は、試料1gに含まれる水酸基と等モルの水酸化カリウムのmg数によって表される値であり、JIS K 1557−1:2007 プラスチック−ポリウレタン原料ポリオール試験方法−第1部:水酸基価の求め方に基づいて測定した値である。(A)成分の水酸基価とは、全ての(A)成分の混合物で測定した値である。
【0016】
また、本発明におけるポリオール化合物では、貯蔵安定性等の点から、酸価を有するポリオール、特に、酸価を有するポリエステルポリオールを含むことが望ましい。酸価としては、特に限定されないが、10mgKOH/g以上300mgKOH/g以下(さらには20mgKOH/g以上250mgKOH/g以下)であることが望ましい。なお酸価は、試料1g中に存在する酸成分を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 5601−2−1:1999 塗料成分試験方法「酸価(滴定法)」に基づいて測定した値である。
ポリオール化合物中に含まれる酸価を有するポリオールの比率は、0.1重量%以上20重量%以下、さらには0.5重量%以上15重量%以下であることが望ましい。
【0017】
発泡剤としては、例えば、ハイドロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン、水、液化炭酸ガス等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0018】
このうち、ハイドロカーボンとしては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、へプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン等が挙げられる。ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)としては、例えば、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141B)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142B)、クロロジフルオロメタン(HCFC−22)等が挙げられる。ハイドロフルオロカーボン(HFC)としては、例えば、ジフルオロメタン(HFC32)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC4310mee)等が挙げられる。
【0019】
ハイドロフルオロオレフィン(HFO)としては、例えば、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO1225ye)等のペンタフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)等のテトラフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO1243zf)等のトリフルオロプロペン、テトラフルオロブテン(HFO1345)、ペンタフルオロブテン(HFO1354)、ヘキサフルオロブテン(HFO1336)、ヘプタフルオロブテン(HFO1327)、ヘプタフルオロペンテン(HFO1447)、オクタフルオロペンテン(HFO1438)、ノナフルオロペンテン(HFO1429)等、あるいはこれらの異性体(シス体、トランス体)等が挙げられる。ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)としては、例えば、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、ジクロロトリフルオロプロペン(HCFO1223)等、あるいはこれらの異性体(シス体、トランス体)等が挙げられる。
本発明における発泡剤としては、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン、水から選ばれる1種または2種以上が好適であり、例えばハイドロフルオロオレフィンと水、ハイドロクロロフルオロオレフィンと水、ハイドロフルオロオレフィンとハイドロクロロフルオロオレフィンと水等、発泡剤を組み合わせて使用することができる。
【0020】
発泡剤の混合量は、ポリオール化合物100重量部に対して、好ましくは10〜200重量部、より好ましくは20〜180重量部、さらに好ましくは30〜150重量部である。
【0021】
触媒としては、特に限定されないが、例えば、ヌレート化触媒、泡化触媒、樹脂化触媒等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
ヌレート化触媒としては、イソシアヌレート化に有効な触媒であれば、特に限定されず、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドまたはその有機酸塩(有機酸として、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸、乳酸等)、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のトリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドまたはその有機酸塩、アルキルカルボン酸(例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸、乳酸等)の金属塩、アルミニウムアセチルアセトン、リチウムアセチルアセトン等のβ−ジケトンの金属キレート化合物、塩化アルミニウム、三フッ化硼素等のフリーデル・クラフツ触媒、チタンテトラブチレート、トリブチルアンチモン酸化物等の有機金属化合物、ヘキサメチルシラザン等のアミノシリル基含有化合物等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
泡化触媒としては、例えば、N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、N,N,N’,N’’−テトラメチル−N’’−(2−ヒドロキシルエチル)トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’’−テトラメチル−(2−ヒドロキシルプロピル)トリエチレンジアミン等の3級アミンまたはその有機酸塩等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
樹脂化触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン(TEDA)、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、135−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の3級アミンまたはその有機酸塩、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)、ビスマストリス(ネオデカノエート)、ビスマストリス(パルミテート)、ビスマステトラメチルヘプタンジオエート、ナフテン酸ビスマス、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジアセテート、オクチル酸スズ等の有機金属、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール、または、N−メチル−N′−(2−ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチルピペラジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,1’−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)イミノ)ビス(2−プロパノール)等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0022】
触媒の混合量(有効成分換算)はポリオール化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜40重量部、より好ましくは0.5〜30重量部である。なお触媒に活性水素含有成分が含まれる場合、触媒に含まれる活性水素含有成分も考慮してイソシアネート指数を算出する。
本発明では、触媒としてヌレート化触媒とともに泡化触媒及び/または樹脂化触媒を含むことが望ましく、特にヌレート化触媒とともに泡化触媒及び樹脂化触媒を含むことが望ましい。
【0023】
整泡剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン化合物等のシリコーン系整泡剤や、含フッ素化合物系整泡剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、例えば、ポリジメチルシロキサンとポリオキシエチレングリコールまたはポリオキシエチレン−プロピレングリコールとのグラフト共重合体等が挙げられる。整泡剤の混合量は、ポリオール化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜40重量部、より好ましくは0.5〜30重量部である。
【0024】
本発明の液状組成物では、リン化合物として、密度1.8g/cm以下の粉状リン化合物を含む。本発明では、このような粉状リン化合物を含むことにより、貯蔵安定性、ハンドリング性、施工作業性等を高めることができ、均質なフォームが形成され、耐熱性等において優れた性能を得ることが可能となる。
【0025】
粉状リン化合物の密度は、密度1.8g/cm以下であり、好ましくは密度1.0〜1.6g/cm、より好ましくは密度1.2〜1.5g/cmである。粉状リン化合物の密度が1.8g/cmを超える場合は、貯蔵時に沈降、凝集等が生じやすく、ハンドリング性、施工作業性等が不十分となり、耐熱性等の性能が不安定または不十分となるおそれがある。なお、本発明における密度は20℃における値である。また、粉状、液状等の状態は、20℃における各成分単体の状態を表すものである。
【0026】
このような効果は、液状組成物中において粉状リン化合物の分散性が優れていること、さらに形成されるフォームにおいても粉状リン化合物がフォーム全体に均一に分散されること等によって奏されるものと考えられる。
【0027】
上記粉状リン化合物の平均粒径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは0.5〜30μmである。なお、ここに言う平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計により測定することができる。
【0028】
本発明において、上記粉状リン化合物としてはホスフィン酸塩化合物が好ましい。このようなホスフィン酸塩化合物の使用により、耐熱性等において一層優れた性能を得ることが可能となる。ホスフィン酸塩化合物としては、下記(式1)または下記(式2)で表わされるアルキルホスフィン酸金属塩化合物、及びこれらのポリマーから選ばれる1種以上が好適である。
(式1)
(式2)
(R、Rは、同一であるかまたは異なるものであり、線状または分枝状の炭素数1〜6のアルキルである。Rは、線状または分枝状の炭素数1〜10のアルキレン、炭素数6〜10のアリーレン、炭素数7〜20のアルキルアリーレン、または炭素数7〜20のアリールアルキレンである。Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、K、またはプロトン化窒素塩基である。mは1〜4、nは1〜4、xは1〜4である。)
【0029】
上記R、Rは、好ましくは、同一であるかまたは異なるものであり、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、またはフェニルである。上記Rは、好ましくは、メチレン、エチレン、n−プロピレン、i−プロピレン、n−ブチレン、t−ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレン、n−ドデシレン、フェニレン、ナフチレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、t−ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレン、t−ブチルナフチレン、フェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレン、またはフェニルブチレンである。上記Mは、好ましくは、Mg、Ca、Al、Sn、Ti、Zn、Fe、またはZrである。
【0030】
このようなアルキルホスフィン酸金属塩化合物は、例えば、アルキル亜スルホン酸及び/またはホスフィン酸及び/またはそれらのアルカリ金属塩を、遊離基開始剤の存在下にオレフィンと反応させて、アルキルホスフィン酸及び/またはそれらのアルカリ金属塩を得、さらに金属化合物と反応させること等によって得ることができる。具体的に、アルキルホスフィン酸金属塩化合物としては、例えば、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム、トリス(メチルエチルホスフィン酸)アルミニウム、トリス(ブチルエチルホスフィン酸)アルミニウム、トリス(ジフェニルホスフィン酸)アルミニウム、ビス(ジエチルホスフィン酸)亜鉛、ビス(メチルエチルホスフィン酸)亜鉛、ビス(ジフェニルホスフィン酸)亜鉛、ビス(ジエチルホスフィン酸)チタニル、テトラキス(ジエチルホスフィン酸)チタン、ビス(メチルエチルホスフィン酸)チタニル、テトラキス(メチルエチルホスフィン酸)チタン、ビス(ジフェニルホスフィン酸)チタニル、テトラキス(ジフェニルホスフィン酸)チタン等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
この中でも特に、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム、トリス(メチルエチルホスフィン酸)アルミニウム、トリス(ブチルエチルホスフィン酸)アルミニウム、トリス(ジフェニルホスフィン酸)アルミニウムから選ばれるトリス(アルキルホスフィン酸)アルミニウムが好適である。
【0031】
本発明において、粉状リン化合物の混合量は、ポリオール化合物の固形分100重量部に対して、好ましくは1〜300重量部、より好ましくは2〜150重量部、さらに好ましくは3〜135重量部、最も好ましくは5〜100重量部である。粉状リン化合物の混合量がこのような範囲内であれば、貯蔵安定性、ハンドリング性、施工作業性、耐熱性等の点において好適である。
【0032】
本発明の液状組成物では、リン化合物として、上記粉状リン化合物と共に、液状リン化合物を使用することができる。本発明では、リン化合物として、粉状リン化合物と液状リン化合物を含むことにより、液状組成物の粘度低減化、貯蔵安定性、施工作業性、フォーム形成性、耐熱性等において、より一層好ましい性能を得ることができる。このような効果は、粉状リン化合物と液状リン化合物との相溶性が良く、液状リン化合物の存在によって、粉状リン化合物の分散性が高まる(粉状リン化合物の少なくとも一部が溶解したような状態で分散する)こと等によって奏されるものと考えられる。
【0033】
液状リン化合物としては、例えば、有機リン酸エステル化合物等を使用することができる。有機リン酸エステル化合物としては、例えば、リン酸のハロゲン化アルキルエステル、アルキルリン酸エステル、アリールリン酸エステル、ホスホン酸エステル等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。有機リン酸エステル化合物としては、具体的に例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート等が挙げられる。
【0034】
液状リン化合物の混合量は、ポリオール化合物100重量部に対して、好ましくは10〜800重量部、より好ましくは30〜600重量部、さらに好ましくは50〜400重量部である。
【0035】
本発明では、特に、粉状リン化合物として上記ホスフィン酸塩化合物を用い、液状リン化合物として上記有機リン酸エステル化合物を用いることが好ましい。
【0036】
本発明の液状組成物は、上述の成分に加え、エチレン性不飽和二重結合含有化合物を含むことができる。エチレン性不飽和二重結合としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、アリル基、プロペニル基等が挙げられる。本発明では、このようなエチレン性不飽和二重結合含有化合物の使用により、上記効果を一層効率的に得ることができる。すなわち、粉状リン化合物の混合量を比較的少なめに設定しても、優れた耐熱性等を発揮することができ、粉状リン化合物の混合量低減により、貯蔵安定性、施工作業性等を一層高めることができる。
【0037】
エチレン性不飽和二重結合含有化合物としては、上述の効果等の点から、1分子中のエチレン性不飽和二重結合濃度が0.5〜20mmol/gであるものが好ましく、5〜15mmol/gであるものがより好ましい。なお、分子中のエチレン性不飽和二重結合濃度は、分子内のエチレン性不飽和二重結合のモル数で表されるものであり、分子内のエチレン性不飽和二重結合の数を分子量で除した数値の1000倍(mmol/g)で表わされるものである。
【0038】
エチレン性不飽和二重結合含有化合物の具体例としては、例えば、多価アルコール(例えば2価以上のアルコール類及びその誘導体、2価以上のフェノール類、ポリオール類等)と不飽和カルボン酸((メタ)アクリル酸等)との反応物、アミン(例えば、2価以上のアミン類、アルカノールアミン類等)と不飽和カルボン酸との反応物、チオールの不飽和カルボン酸チオエステルまたは不飽和アルキルチオエーテル、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物と不飽和カルボン酸との反応物、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0039】
このうち、多価アルコールと不飽和カルボン酸との反応物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
上記ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0041】
上記分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、アルキレンオキシド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
エチレン性不飽和二重結合含有化合物の混合量は、ポリオール化合物100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは5〜90重量部、さらに好ましくは10〜80重量部である。なおエチレン性不飽和二重結合含有化合物に複数の水酸基が含まれる場合は、ポリオール化合物とみなす。またエチレン性不飽和二重結合含有化合物に含まれる活性水素含有成分も考慮してイソシアネート指数を算出する。
【0043】
本発明の液状組成物には、上記成分の他に、例えば、難燃剤、着色剤、界面活性剤、重合禁止剤、繊維等を混合することができる。
難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、有機臭素系難燃剤、窒素系難燃剤、金属水和物系難燃剤等が挙げられ、この中でも比較的低密度である窒素系難燃剤等が好適である。
着色剤としては、例えば、顔料、染料等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等が挙げられる。このような界面活性剤は、貯蔵安定性、分散安定性を付与することができる。
重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン系重合禁止剤、ベンゾキノン系重合禁止剤、カテコール系重合禁止剤、ピペリジン系重合禁止剤等が挙げられる。このような重合禁止剤は、後述する2液型の形態において、長期貯蔵安定性を付与するとともに、ポリオール製造過程で添加した場合は、製造安定性にも寄与する。
繊維としては、例えば、有機繊維、無機繊維等が挙げられる。このような繊維は、施工作業性、フォーム形成性、寸法安定性等を付与することができる。本発明では、特定のリン化合物を用いているため、繊維を用いなくてもよいが、繊維を混合した場合は、少量の繊維で効果を発揮することができる。
本発明の液状組成物は、上述のような成分を常法により均一に混合することで得ることができる。
【0044】
本発明の液状組成物の粘度は500mPa・s以下であり、より好ましくは20〜350mPa・s、さらに好ましくは50〜250mPa・sである。なお、粘度は、温度20℃において、BH型粘度計で測定した20rpmにおける粘度(4回転目の指針値)である。本発明では、上記粉状リン化合物の使用により、液状組成物の粘度を500mPa・s以下に設定しても、十分な貯蔵安定性を確保することができ、施工時の撹拌作業等が軽減され、ハンドリング性、施工作業性等の点も有利となる。さらに、このような粘度設定により、ポリイソシアネート化合物との混和性が高まり(迅速かつ均一に混和する)、安定した施工を行うことができ、均質なフォームが形成できる。
【0045】
液状組成物の粘度が500mPa・sを超える場合は、液状組成物自体の貯蔵安定性には有利であるが、ポリイソシアネート化合物と混合した際、その均一な混和を迅速に行うことが困難となる。そのため、不十分な混和状態のまま発泡が開始してしまい、均質なフォームが得られず、付着不良等の異常が生じやすくなる。吹付け施工においては、圧力異常、詰まり等が生じるおそれもある。
【0046】
本発明の液状組成物は、ポリイソシアネート化合物と混合することによりフォームを形成するものであり、2液型材料の第1液として用いることが望ましいものである。すなわち、流通時には、本発明の液状組成物からなる第1液と、ポリイソシアネート化合物を含む第2液とを組み合わせた2液型の形態としておき、フォーム形成時に、これら第1液と第2液を混合して使用することが望ましい。
【0047】
ポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの技術分野において公知の各種ポリイソシアネート化合物が使用できる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等が挙げられる。本発明では、取扱の容易性、反応の速さ、得られるフォームの物理特性、コスト面での優位性等の点から、MDIが好ましい。MDIとしては、例えば、モノメリックMDI、ポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニルイソシアネート)等が挙げられる。
【0048】
ポリイソシアネート化合物の粘度は、好ましくは500mPa・s以下であり、より好ましくは20〜350mPa・s、さらに好ましくは50〜200mPa・sである。
【0049】
本発明の液状組成物をポリイソシアネート化合物と混合する際には、イソシアネート指数が好ましくは150以上、より好ましくは180〜800、さらに好ましくは200〜500、最も好ましくは250〜400となるように混合することが望ましい。イソシアネート指数がこのような範囲内であれば、耐熱性等の点で好適である。なお、イソシアネート指数とは、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量数を、活性水素含有成分(ポリオール化合物、及び水等)の活性水素の総当量数で除した数値の100倍で表されるものである。
【0050】
本発明の液状組成物は、フォーム形成用の組成物であり、好ましくは硬質ポリウレタンフォーム形成用、より好ましくは硬質ポリイソシアヌレートフォーム形成用の組成物である。また、本発明の液状組成物は、建築物等の現場でポリイソシアネート化合物と混合し、基材に塗付して発泡させ、基材をフォームで被覆する用途に適している。対象となる基材は、例えば、建築物等における壁面、天井面、床面等を構成する材料であり、具体的には、例えば、コンクリート、モルタル、金属板、無機ボード、合板等が挙げられる。これら基材は、フォーム形成前に、下塗材による表面処理等を施したものであってもよい。
【0051】
基材をフォームで被覆するには、例えば、吹付け工事用のスプレー発泡機等(例えば、二液先端混合型吹付け塗工機等)を使用して、上記液状組成物(第1液)とポリイソシアネート化合物(第2液)との混合物を吹付け施工すればよい。この場合、第1液、第2液は、それぞれ、好ましくは20〜60℃、より好ましくは30〜50℃程度となるように温度設定しておくことが好ましい。このように所定温度に設定された第1液と第2液は、スプレー先端にて混合され、基材に向けて吹付けられ、基材上でフォームを形成する。第1液と第2液との混合は、体積比で1:1程度とすることが望ましい。このような方法で形成されるフォームは、低熱伝導性、耐熱性等において優れた性能を発揮することができる。フォームの厚みは、特に限定されず、要求性能等に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは10mm以上、より好ましくは15〜500mm程度である。
【0052】
従来の一般的なウレタンフォーム等では、炎や高熱によってフォーム全体が燃焼、収縮し、健全部(炭化していない部分)が失われ、フォームの寸法も大きく変化するおそれがある。これに対し、本発明の液状組成物によって形成されるフォームでは、炎や高熱に晒された場合、フォームの燃焼、収縮、寸法変化等が抑制され、さらに消火後におけるフォーム内の熱分解の進行も抑制される。これにより、フォームが炎や高熱に晒されても、フォーム内に健全部が残存しやすい。このように、本発明の液状組成物によるフォームでは、従来技術によるフォームに比べ、耐熱性(特に、フォームが炎や高熱に直接的に晒された場合)等において顕著な効果を得ることができる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0054】
第1液として、表1に示す重量割合にて下記原料を均一に混合した液状組成物(第1液1〜36)を用意した。なお、表1において、触媒については有効成分の量を記載している。
・ポリオール化合物1:芳香族ポリエステルポリオール(テレフタル酸系ポリエステルポリオール、粘度1900mPa・s、酸価:0mgKOH/g、水酸基価:250mgKOH/g)
・ポリオール化合物2:芳香族ポリエステルポリオール(テレフタル酸系ポリエステルポリオール、粘度17000mPa・s、酸価:0mgKOH/g、水酸基価:250mgKOH/g)
・ポリオール化合物3:脂肪族ポリエステルポリオール(コハク酸系ポリエステルポリオール、粘度9000mPa・s、酸価:0mgKOH/g、水酸基価:100mgKOH/g)
・ポリオール化合物4:芳香族ポリエーテルポリオール(マンニッヒ変性ポリエーテルポリオール、粘度4000mPa・s、酸価:0mgKOH/g、水酸基価:350mgKOH/g)
・ポリオール化合物5:芳香族/脂肪族ポリエステルポリオール(フタル酸/アジピン酸系ポリエステルポリオール、粘度900mPa・s、酸価:0mgKOH/g、水酸基価:350mgKOH/g)
・ポリオール化合物6:芳香族ポリエステルポリオール(フタル酸系ポリエステルポリオール、粘度3000mPa・s、酸価:160mgKOH/g、水酸基価:250mgKOH/g)
・発泡剤1:ハイドロクロロフルオロオレフィン
・発泡剤2:ハイドロフルオロオレフィン
・発泡剤3:水(水酸基価:6233mgKOH/g)
・触媒1:ヌレート化触媒(テトラアルキルアンモニウム有機酸塩)
・触媒2:樹脂化触媒(1,2‐ジメチルイミダゾール)
・触媒3:泡化触媒(ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル)
・粉状リン化合物1:ホスフィン酸塩化合物(トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム、平均粒径4μm、密度1.35g/cm
・粉状リン化合物2:ホスフィン酸塩化合物(トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム、平均粒径10μm、密度1.35g/cm
・粉状リン化合物3:亜リン酸アルミニウム(平均粒径10μm、密度2.10g/cm
・液状リン化合物1:有機リン酸エステル化合物(トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、密度1.29g/cm
・二重結合化合物1:エチレン性不飽和二重結合含有化合物(トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレン性不飽和二重結合濃度10mmol/g、水酸基価:0mgKOH/g)
・二重結合化合物2:エチレン性不飽和二重結合含有化合物(ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレン性不飽和二重結合濃度11mmol/g、水酸基価:0mgKOH/g)
・二重結合化合物3:エチレン性不飽和二重結合含有化合物(ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレン性不飽和二重結合濃度:10mmol/g、水酸基価:25mgKOH/g)
・整泡剤:シリコーン系整泡剤
【0055】
(1)貯蔵安定性
第1液について、製造後、20℃下にて14日間放置したときの外観変化を目視にて観察した。評価基準は以下のとおりである。結果を表1に示す。
○:異常なし
△:軽度の沈降、凝集等が発生
×:著しい沈降、凝集等が発生
なお、粘度は製造直後の第一液について、温度20℃、BH型粘度計で測定した20rpmにおける粘度(4回転目の指針値)である。
【0056】
次に、第2液として、ポリメリックMDIからなるもの(第2液1)を用意し、以下の試験を行った。
【0057】
第1液、第2液をそれぞれ40℃に加温し、これらを表2に示すイソシアネート指数となるように混合し、得られた混合液を基材(スレート板)に塗工し、発泡させて、基材の片面全体がフォームで被覆された試験体(厚み50mm)を得た。得られた試験体について下記の方法で各試験を実施した。第1液と第2液の組み合わせ、及びその結果を表2に示す。
【0058】
(2)フォーム形成性
形成されたフォームの状態を目視にて観察した。評価基準は以下のとおりである。
◎:均質なフォームが形成された。
○:ほぼ均質なフォームが形成された。
△:フォームに一部異常(不均一発泡、付着不良等)が認められた。
×:フォームに異常が認められた。
【0059】
(3)熱伝導率
試験体のフォーム部分を切り出し、熱伝導率計を用いて、熱伝導率を測定した。評価基準は以下のとおりである。
○:熱伝導率が0.03W/(m・K)以下
×:熱伝導率が0.03W/(m・K)超
【0060】
(4)耐熱性試験
ISO 5660に規定されるコーンカロリーメーターを用いて実施した。なお、加熱強度は50kW/m、加熱時間は5分、10分、20分でそれぞれ行った。評価項目及び評価基準は、以下のとおりである。
【0061】
(評価項目)
(4−1)寸法変化
A:試験後の厚み方向の寸法変化が5mm以下
B:試験後の厚み方向の寸法変化が5mm超10mm以下
C:試験後の厚み方向の寸法変化が10mm超20mm以下
X:試験後の厚み方向の寸法変化が20mm超
(4−2)総発熱量
A:総発熱量が8MJ/m以下
X:総発熱量が8MJ/m
(4−3)最大発熱速度
A:最大発熱速度が200kW/m以下
X:最大発熱速度が200kW/m
【0062】
(評価基準)
│ │加熱時間 │ 4−1 │ 4−2 │ 4−3 │
│AA │ 20分 │ A │ A │ A │
│A │ 20分 │ B │ A │ A │
│A´ │ 20分 │ C │ A │ A │
│B │ 10分 │ B │ A │ A │
│B´ │ 10分 │ C │ A │ A │
│C │ 5分 │ B │ A │ A │
│C´ │ 5分 │ C │ A │ A │
│D │ 5分 │ X │ X │ X │
耐熱性については、優AA>A>A´>B>B´>C>C´>D劣となる。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表1、2の結果から明らかなように、本発明の液状組成物(実施例1〜33)は、経時的な沈降や凝集等が認められず、貯蔵安定性に優れ、施工作業性にも優れるものであった。また、本発明の液状組成物を用いて形成したフォームは、均質なものであり、熱伝導率が低く、耐熱性試験において、寸法変化、総発熱量、最大発熱速度等を十分に抑制することができ、さらにフォーム内に健全部を残存させることができ、優れた耐熱性を示すものであった。