特定の組成物を有する、高Ni−超過「NMC」カソード材料に関する。「NMC」とは、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムを意味する。高Ni−超過NMC粉末は、好ましくは、充電式リチウムイオン電池におけるカソード活性材料として使用することが可能である。本発明のカソード材料を含有する電池は、高い可逆容量、高温保存時の向上した熱安定性、及び高い充電電圧にてサイクルさせた場合の良好な長期サイクル安定性などの、優れた性能を示す。
発明が解決しようとする課題[発明の詳細な説明]から抜粋
NMCの大規模製造は、調製が容易でありかつ高品質のカソード材料を生成する、ということを要求する。カソード材料におけるNi−超過が増大するので(これは、容量の観点から所望される)、製造がより困難となる。一例として、NCA(LiNi
0.8 Co
0.15 Al
0.05 O
2 である)のような非常に高いNi−過剰カソード材料を空気中で調製することができない、又はリチウム源としてLi
2 CO
3 を使用して調製することができない。リチウム前駆体としてLi
2 CO
3 が使用される場合、分解のためにカーボネートが必要とされ、かつCO
2 が気相へと放出される。しかし、非常に高いNi−超過カソード材料のCO
2 均衡分圧は、非常に小さい。従って、たとえ純酸素においてであっても、CO
2 の気相輸送は反応速度論を制限し、かつCo
3 の分解が非常にゆっくりと発生する。なお、非常に高いNi−超過カソードは、低い熱力学的安定性を有する。完全に反応し、かつ完全にリチウム化した非常に高いNi−超過カソードは、正常な空気にて加熱された場合に、更に分解する。空気のCO
2 均衡分圧は十分に高く、これにより、CO
2 が結晶構造からリチウムを抽出してLi
2 CO
3 を形成する。従って、非常に高いNi−超過カソードの製造の間、CO
2 の遊離ガス、典型的には酸素が必要とされる。これは、より高い製造コストの原因となる。更に、リチウム源としてLi
2 CO
3 の使用が不可能である故に、より安価なLi
2 CO
3 の代わりに、製造コストを更に増大させるLi
2 O、LiOH・H
2 O又はLiOH同様のリチウム前駆体が適用されることが必要である。なお、遷移金属前駆体(例えば、混合遷移金属水酸化物)は、カーボネートを有さないことが必要である。
最終的に、水酸化リチウム(LiOH・H
2 O又はLiOH)を使用した場合、水酸化リチウムの低い融点が、考慮される項目である。Li
2 CO
3 が溶融する前に反応する傾向にあるのに対して、水酸化リチウムは反応する前に溶融する傾向がある。これは、生成物の不均質性、溶融したLiOHを伴うセラミックサガーの浸透などと同様の、量産プロセス中の多くの不必要な影響の原因となる。なお、高Ni−超過NMCの製造中、厳格に実容量を限定するLi部位内へとNiイオンが移動する傾向にあり、よって適切な化学量論を有することが困難である。本問題はまた、挿入機構の可逆性にも影響を及ぼし、容量減退をもたらす。NCA同様の非常に高いNi−超過カソード材料の増大した容量は、かなりの製造コストに達する、ということが要約できる。
非常に高いNi−超過カソードの別の問題は、可溶性塩基の含有量である。「可溶性塩基」の概念は、例えば、国際公開第2012−107313号に明瞭に記載されている(Li
2 CO
3 及びLiOH同様の表面不純物を意味する可溶性塩基)。Ni−超過カソード材料におけるLiの低い熱力学的安定性故に、残留するカーボネートが非常にゆっくりと分解する、又は空気中に存在するCO
2 が容易に吸着して、カソードの表面上にLi
2 CO
3 を形成する。更に、水分又は湿気の存在下において、Liはバルクから容易に抽出され、LiOHの形成をもたらす。従って、好ましくない「可溶性塩基」は、NCA同様の非常に高いNi−超過カソードの表面上で、容易に発生する。
非常に高いNi−超過の場合には、多くのカーボネート不純物源が存在する可能性がある。具体的には、可溶性塩基は、生産において遷移金属源として使用される混合遷移金属水酸化物から生じ得る。混合遷移金属水酸化物は、通常、遷移金属硫酸塩と水酸化ナトリウム(NaOH)などの工業グレードの塩基との共沈によって得られる。従って、水酸化物はCo
3 2− 不純物を含有することができる。リチウム源を用いて焼結する間、残留物Co
3 2− はリチウムと反応してLi
2 CO
3 を生じさせる。焼結の間にLiM’O
2 結晶子が成長するので、Li
2 CO
3 塩基がこれらの結晶子の表面上に蓄積される。従って、高いNi−超過NMCにおける高温での焼結後に、NMC 622同様のカーボネート組成物が最終生成物の表面上に残る。この塩基は水に溶解し、また従って、可溶性塩基含有量は、米国特許第7,648,693号に記載されているように、pH滴定と呼ばれる技術によって測定することができる。
それらがリチウムイオン電池における不十分なサイクル安定性の原因である故に、可溶性塩基、特に残留物Li
2 CO
3 は主要な懸念材料である。また、前駆体として使用される材料が空気に対して敏感である故に、大規模調製中に非常に高いNi−超過を維持できるかどうかは、明らかではない。従って、増大する温度にて、CO
2 を有しない酸化ガス(典型的にはO
2 )において非常に高いNi−超過カソード材料の調製を実施して、可溶性塩基含有量を減少させる。LiOH・H
2 Oはまた、Li
2 CO
3 の代わりにリチウム源としても使用され、可溶性塩基含有量を減少させる。LiOH・H
2 Oを使用して高いNi−超過NMCを調整するための典型的なプロセスは、例えば米国特許第2015/0010824号にて適用されている。低いLi
2 CO
3 不純物を伴う、リチウム源としてのLiOH・H
2 Oを、目的とする組成物にて混合遷移金属水酸化物とブレンドし、かつ大気雰囲気下にて高温で焼結する。本プロセスでは、高いNi−超過NMC最終生成物(NMC 622と同様)の塩基含有量が、更に減少する。
NMCにおけるNi−超過により高いエネルギー密度を得る、2つの主要な傾向が存在する。1つの傾向は、正常な充電電圧にて高容量を得るために、Ni−超過を非常に高い値まで増大させることである。第2の傾向は、より少ないNi−超過にて高容量を得るために、電荷容量を増大させることである。NCAは、例えば、全てのNiが3−価数である故に、約0.8の非常に高いNi−超過を有する。NC91(LiNi
0.9 Co
0.1 O
2 )では、Ni−超過はちょうど0.9である。これらのカソード材料は、たとえ比較的低い電荷容量であっても非常に高い容量を有する。一例として、−NC91は、対極としてリチウムを用いたコイン電池試験において、4.3Vにて220mAh/gほど高い容量を有する。前述のように、このようなカソード材料を適切な価格にて量産プロセスで生成することは、困難である。更に、不十分な安全性の問題が観察された。
充電した電池の安全性の問題は、一般的な懸念材料である。安全性は、熱暴走と称するプロセスに関係している。発熱反応故に、電池は昇温して電池内の反応速度が増大し、熱暴走により電池の爆発が引き起こされる。熱暴走は、ほとんどの場合、電解質の燃焼により引き起こされる。電池が完全に充電されており、かつカソードが脱リチウム化した状態にある場合、得られたLi
1−x M’O
2 における「x」の値は高い。これらの高度に脱リチウム化したカソードは、電解質と接触した場合に非常に危険である。脱リチウム化したカソードは酸化剤であり、かつ還元剤として作用する電解質と反応することができる。本反応は非常に発熱性であり、かつ熱暴走を引き起こす。究極的な場合では、電池が爆発し得る。単純な方法では、脱リチウム化したカソードから得られる酸素を使用して電解質が燃焼すると、説明することができる。一度、電池にて特定の温度に達していると、カソードが分解して電解質を燃焼させる酸素を送達する。反応後−二価の状態でNiが安定しており、かつ高いNi−超過が存在するので−ほとんどの遷移金属は二原子価である。概略的に−カソードの各モルは1モルの酸素を送達して電解質を燃焼させることができる:NiO
2 +電解質→NiO+燃焼生成物(H
2 O、CO
2 )。
高いエネルギー密度を得るその他の傾向は、Ni−超過をより中間値で設定するが、高電荷容量を適用することである。Ni−超過に関する典型的な値は、約0.4〜約0.6の範囲で変動する。この領域を、「高Ni−超過」と称する。4.2又は4.3Vの高Ni−超過NMCにおける可逆容量は、「非常に高い」Ni−超過化合物(Ni−超過>0.6を伴う)の可逆容量未満である。非常に高いNi−超過カソード(fx.NCA)同様の、同一の充電状態(即ち、脱リチウム化したカソードにおいて残留するLi)を得るために、高Ni−超過カソード(fx.NMC622)を伴う電池は、より高い電圧へと充電される必要がある。類似の充電状態は、例えば、NCAに関しては4.2V、またNMC622を使用して4.35Vにて得ることができる。従って、「高Ni−超過」NMCの容量を向上させるために、より高い充電電圧が適用される。
高充電電圧においてでさえも、得られた脱リチウム化した高Ni−超過カソードは、前述の脱リチウム化した非常に高いNi−超過カソードよりも、より低い電圧にて安全である。Ni系カソードが酸素燃焼反応中にNiOを形成する傾向にあるのに対して、Ni−M’は脱リチウム化プロセス中により安定したM’
3 O
4 化合物を形成する傾向にある。これらの化合物はより高い最終酸素化学量論を有し、このように、より少ない酸素にて電解質を燃焼させることが可能である。Ni−超過を伴わないカソードに関する概略実施例は、LiMn
0.5 Ni
0.5 O
2 →Mn
0.5 Ni
0.5 O
2 +電解質→0.5NiMnO
3 +燃焼生成物(H
2 O、CO
2 )である。この場合、燃焼反応後に50%のみの遷移金属が二価である故に、0.5の酸素が電解質を燃焼させるのに有効である。これは、上述の非常に高いNi−超過カソードの場合とは異なり、ほぼ1モルが有効である。
原則では、依然としてより低いNi−超過カソードへと第2の傾向を継続させることができる。小さいNi−超過のみを伴うカソード材料を、依然としてより高い電圧へと充電することができる。一例として、NMC532を約4.45Vへと充電する、又はNMC442を約4.55Vへと充電して、類似の容量を得ることができる。この場合−より低いNi含有量故に、脱リチウム化したカソードの安全性が更に向上すると予測され、また製造プロセスも簡略化される。しかし、現在の電解質がこれらの非常に高い充電電圧にて良好に作用しないので、本アプローチは実行可能ではなく、また従って、不十分なサイクル安定性が観察される。
本発明は、非常に高い(>0.6)Ni−超過は有さないが、高いNi−超過(0.4〜0.6)のみを有するカソード材料に、より高い充電電圧を適用する、第2の傾向を意味する。Ni含有量及び充電電圧の両方が増大するので、良好な安全性及び安価な調製プロセスを得ることが困難である。先行技術から、このように、Liイオン電池における首尾の良い調製及び適用に関する多くの問題を、高Ni−超過材料が有していることが、知られている。従って、許容できる高Ni超過材料を作製するために、最適化されたNMC組成物及び高度の電池性能を有し、高可逆容量が良好なサイクル安定性及び安全性と共に得られる、このようなカソード材料が必要である。
課題を解決するための手段[発明の詳細な説明]から抜粋
第1の態様から考察するに、本発明は、一般式Li1+a((NiZ(Ni0.5Mn0.5)yCox)1−kAk)1−aO2(Aは微量の添加不純物であり、−0.025≦a≦0.025、0.18≦x≦0.22、0.42≦z≦0.52、1.075<z/y<1.625、x+y+z=1及びk≦0.01である)を有するリチウム遷移金属系酸化物粉末からなる、リチウムイオン電池のための正極材料を提供することがで・・・ 続きを
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