(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1ペイン(1)が破壊された場合に、破片が前記誘導型センサ(21)の検出領域(25)よりも小さくなるように、前記ペイン(1)が強化されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の警報ペイン装置(10,10´)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、多くのペイン、特には絶縁性ガラスペインが、良好な導電性を有する透明被覆を既に有しているという知見に基づいている。これらの透明導電性被覆は、例えば赤外線の反射又はLow−E特性などの、様々な目的を有する。本発明に係る警報ペイン装置は、センサを備えたペインの一体性を、接触することなく監視するセンサユニットを有しており、ペインが破損すると、警報信号を出力する。無接触監視によって、透明導電性被覆の複雑な接触が排除される。このような接触は、慣習的に、はんだ付けされており、かつ、はんだ接合部における接触抵抗が経年劣化プロセスによって変化するので、経年劣化に非常に敏感である。このことは、誘導型の監視では問題とならない。なぜならば、透明導電性被覆の直接的な電気的接触が排除されるからである。既に存在する透明導電性被覆が使用されるので、例えば、導体ループを印刷するための別個の製造工程が、排除される。透明導電性被覆は、光学的にはほとんど見えず、結果として非常に審美的である。透明導電性被覆は、また、例えば、反射防止特性を有することもでき、ペインを通した視認性がさらに向上される。このすべては、本件発明者にとって意外で驚くべきものであった。
【0010】
本発明に係る警報ペイン装置は、外側表面(I)及び内側表面(II)を有する少なくとも1つの第1ペインを有している。第1ペインは、通常、例えば、建物、ディスプレイケース又は乗物などの内部空間から、外部空間を分離するために機能する。この場合には、外側表面(I)は外側に対面することができ、すなわち、外向きであり、そして内側表面(II)は内側に対面することができ、すなわち、内向きである。
【0011】
内部空間を盗難又は損傷から保護するために警報ペイン装置が使用される場合には、外側表面(I)は、いわゆる「露出面」であると考えられ、進入は、通常はこの露出面から起こる。この場合に、誘導型センサ及びセンサユニットを有する内側表面(II)は、第1ペインを破壊して取り外すまではアクセスできないであろうから、改ざんから保護されるであろう。
【0012】
例えば、列車又は航空機などの乗物において破壊を監視するための警報ペイン装置の場合には、内側表面(II)は潜在的な攻撃、例えば、危険時における緊急ハンマーによる破壊にさらされることもある。この場合には、センサユニットが故意に改ざんされることはないであろう。
【0013】
もちろん、第1ペインの外側表面(I)もまた、追加的な被覆、例えば、追加的な透明導電性被覆を有していることができる。本発明に係る警報ペイン装置の有利な実施形態では、センサの感度は、第1ペインの内側表面(II)上の透明導電性被覆の一体性のみが監視されるように、又は、それに加えて、第1ペインの外側表面(I)上のもう一方の透明導電性被覆の一体性もまた監視されるように、選択されうる。
【0014】
本発明に係る警報ペイン装置の有利な実施形態では、透明導電性被覆が、第1ペインが破壊された場合に、透明導電性被覆が損傷するように、第1ペインに結合されている。このために、透明導電性被覆は、好ましくは第1ペインの内側表面(II)上に直接的に、特に好ましくは薄膜積層体として堆積される。これに特に適した方法は、カソードスパッタリング((マグネトロン)スパッタリング)、化学蒸着(CVD)及び/又は熱蒸着である。これは、第1ペインの破壊の確実な検出を可能にするために、特に有利である。
【0015】
本発明に係る警報ペイン装置の有利な実施形態では、誘導型センサが、多数の導体ループを含んでいる測定コイルを少なくとも一つ有している。本発明の有利な実施態様では、誘導型センサは、正確に一つの測定コイルを有している。この(特には正確に1つである)測定コイルは、好ましくは、フェライトコアの周囲に配置される。
【0016】
本発明に係る警報ペイン装置の有利な実施形態では、測定コアが、透明導電性被覆から電気的に絶縁されている。
【0017】
本発明に係る警報ペイン装置の有利な実施形態では、誘導型センサの活性表面と透明導電性被覆との間の距離dが、0.1mm〜20mm、好ましくは0.2mm〜10mm、特には0.5mm〜5mmである。
【0018】
第1ペインは強化ガラスから作られている。第1ペインの有利な実施形態では、第1ペインは強化されており、そのようにして、第1ペインが破壊された場合に、破片が誘導型センサの検出領域よりも小さくなるようにされている。もし破片が検出領域よりも小さいならば、例えば、破片の面積が検出領域よりも小さいために、又は破片の最大直径が検出領域よりも小さいために破片が検出領域よりも小さいならば、少なくとも1つの破断線がセンサの検出領域内にあることが保証され、第1ペインの破壊を確実に検出することが可能になる。
【0019】
本発明に係る警報ペイン装置の有利な実施形態では、センサユニットは、第1ペインの内側、すなわち、第1ペインの内側表面(II)によって規定される側に配置される。これは、露出面からの、すなわち外側表面(I)によって規定される第1ペインの側からの損傷及び改ざんの試みからセンサユニットを保護するのに特に有利である。
【0020】
誘導型センサは、例えば、電磁(AC)場を有している発振器によって作り出される共振回路の原理に従って機能する。誘導型センサの活性表面から、電磁AC場が発生する。通常は、測定コイルの端面のうちの一面が活性表面である。活性表面に近接している透明導電性被覆において、渦電流が誘導され、エネルギーが発振器から吸収される。復調器を介して、電圧の高さの変化、従って装置全体のインダクタンスの変化を、発振器の出力において測定することができる。下流の比較器によって、電圧の高さの変化を記録することができ、かつ、電力増幅器を介して、さらなる信号処理へと送ることができる。
【0021】
本発明に係る警報ペイン装置の有利な実施形態では、センサユニットは、センサ電子システムを有しており、好ましくは少なくとも以下の構成要素を有している:交流電圧を測定コイルに印加する、発振器;測定されたAC電圧信号に基づいて、それに比例するインダクタンス測定信号を出力する、復調器;このインダクタンス測定信号と比較値又はしきい値とを比較する、比較器;及び、場合により、通常信号電圧レベルに調整された出力信号を出力する、電力増幅器。
【0022】
本発明に係る警報ペイン装置の有利な実施形態では、センサユニットは、送信機ユニット、好ましくは周波数が100kHz〜100GHzの範囲の無線信号を有する無線送信機ユニットを有している。無線送信機ユニットは、特に好ましくは、ブルートゥース(商標)(Bluetooth(商標))送信機又はWLAN送信機である。あるいは、送信機ユニットは、赤外線送信機であってもよい。送信機ユニットは、受信機と通信する役割を果たし、特に、センサユニットがペインの破壊を検出したときに警報信号を送信する役割を果たす。送信機ユニットを統合することで、警報信号送信用の外部リード線をセンサにをつける必要がなくなり、従って非常に簡便で経済的で、場所に依存しない設置が可能になるという特別な利点を有する。また、センサユニットの改ざんの可能性がなくなり、そのことによって、セキュリティが向上する。これは、慣例的に外側に対して密封されている絶縁性グレージングユニットにおいてセンサユニットを使用し又は後付けするために、特に有利である。もちろん、センサユニットの機能状態、バッテリ若しくは蓄電池の充電状態、又は、温度若しくは圧力などの他のセンサによって提供される他のパラメータなどの、他のデータを、送信機ユニットを介して送信することもできる。
【0023】
本発明に係る警報ペイン装置の別の有利な実施形態では、送信機ユニットと通信する受信機は、送信機ユニット及びセンサと同一の第1ペインの面、すなわち第1ペインの内側面に配置されることとなる。センサユニット、送信機ユニット及び受信機が損傷及び改ざんから保護され、かつ第1ペインが破壊された後にのみアクセス可能となるはずであるので、これは、盗難又は損傷から内部を保護するための警報ペイン装置を使用する場合に特に有利である。例えば、列車又は航空機などの乗物において破壊を監視するための警報ペイン装置の場合には、受信機は、透明導電性被覆を有する第1ペイン又はその近傍が送信機の信号に対して十分に透過性であるかぎり、第1ペインのいずれの側に配置されてもよい。
【0024】
本発明に係る警報ペイン装置の有利な実施形態では、センサユニットは、エネルギー供給源、好ましくはバッテリ、蓄電器、スーパーキャパシタ、熱電発電器及び/又は太陽電池を有している。センサユニットは、有利には外部電源へのリード線を含まず、エネルギー自給型である。あるいは、エネルギー供給は、例えば、インダクティブ(電磁誘導)充電デバイスを介した連続的又は不連続的な充電によって行われてよく又は補完されてよい。このことは、センサユニットが外部リード線を必要とせず、従って非常に簡便で経済的で、かつ場所に依存しない設置が可能になるという特別な利点となる。さらに、センサユニットの改ざんの可能性がなくなり、そのことによって、セキュリティが向上する。これは、慣例的に外側に対して密封されている絶縁性グレージングユニットにおいて、センサユニットを使用し又は後付けするために特に有利である。
【0025】
本発明に係る警報ペイン装置は、単一ペインとして、又は複層グレージングの一部として、例えば、絶縁性グレージング、二重絶縁性グレージング、三重絶縁性グレージング、耐火グレージング若しくは安全グレージングの一部として複合ペインとともに使用することができる。
【0026】
本発明に係る警報ペイン装置の有利な実施形態では、第1ペインは、少なくとも1つのスペーサを介して、好ましくはペインの縁を完全に囲む周囲スペーサを介して、少なくとも1つの他のペインに結合している。スペーサは、第1ペインと他のペインとの間に配置されており、好ましくは、スペーサとペインとの間の接着結合によって固定されている。スペーサは、好ましくは、少なくとも2つの平行なペイン接触壁、気密絶縁性層を有する1つの外壁、及び、グレージング内壁を有している、少なくとも1つの中空の本体を有している。
【0027】
本体としては、従来技術により知られている全ての中空体形状を、その材料組成に関係なく、使用することができる。例として、ここでは重合体の又は金属性の本体が挙げられる。
【0028】
重合体の本体としては、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、特に好ましくは、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルスチレンアクリルエステル(ASA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン−ポリカーボネート(ABS/PC)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、PET/PC、PBT/PC、及び/又は、それらの共重合体若しくは混合物が挙げられる。重合体の本体はまた、場合により、他の成分を含んでよく、例えばガラス繊維を含んでよい。使用される重合体の材料は、概して、気体透過性であり、この透過性が望ましくない場合には、さらなる措置が講じられる必要がある。
【0029】
金属性の本体は、好ましくは、アルミニウム又はステンレス鋼から作られており、好ましくは気体透過性を有していない。
【0030】
有利な実施形態では、本体の壁は気体透過性である。このような透過性が望ましくない本体の領域は、例えば、気密絶縁性層で密封することができる。特には、重合体の本体は、このような気密絶縁性層と組み合わせて使用される。
【0031】
本体は、乾燥剤、好ましくはシリカゲル、CaCl
2、Na
2SO
4、活性炭、ケイ酸塩、ベントナイト、ゼオライト及び/又はそれらの混合物、特に好ましくは分子ふるいを有している中空室を、好ましくは有している。このようにして、乾燥剤による空気湿分の吸収が可能となり、従って、ペイン及び特には誘導型センサの曇りが防止される。
【0032】
第1ペイン、別のペイン及びスペーサの間の外側中間空間が、好ましくは、少なくとも1つの封止用化合物によってペインの外側の空間に対して密封される。封止用化合物としては、好ましくは、有機ポリスルフィド、シリコーン、RTV(室温加硫)シリコーンゴム、HTV(高温加硫)シリコーンゴム、過酸化物加硫シリコーンゴム及び/若しくは付加加硫シリコーンゴム、ポリウレタン、ブチルゴム並びに/又はポリアクリレートが挙げられる。任意の実施形態では、耐老化性を高めるための添加剤、例えばUV安定剤などを含めることもできる。
【0033】
本発明に係る警報ペイン装置の有利な実施形態では、第1ペインが、スペーサを介して第2ペインに結合され、二重グレージングを有する絶縁性ガラスペインを形成する。
【0034】
特に有利な実施形態では、第1ペインが、その内側面(II)を介して第2ペインに結合される。
【0035】
別の特に有利な実施形態では、センサユニットが、第1ペインと第2ペインとの間の中間空間に配置される。このことは、センサ及びセンサユニットが、湿分及びダストなどの外部の影響から保護されるという点で特に有利であるが、特には、改ざん及び損傷から特に良好に保護されるという特別な利点も有する。
【0036】
第1ペインと第2ペインとを含む装置では、測定コイルが、有利には、ペインの間の中央に正確に配置されるのではなく、透明導電性被覆を有しており監視の対象である第1ペインの近くに、有利には配置される。無論、この構成では、両方のペインが、透明導電性被覆を有していることもできる。透明導電性被覆は、共通の測定コイルによって(例えば、コイルの両端を介して)、又は2個の測定コイルによって、監視することができる。
【0037】
第1ペイン又は第2ペインは、別のスペーサを介して別の第3のペインに結合されてよく、このようにして、三重グレージングを有する絶縁性グレージングペインが形成される。
【0038】
本発明に係る警報ペイン装置の有利な実施形態では、第1ペインは、フラットガラス、フロートガラス、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス又はホウケイ酸ガラスから作られる。
【0039】
第1ペインは強化されており、好ましくは、DIN 12150−1:建物におけるガラス − 加熱強化ソーダ石灰単一ペイン安全ガラス − パート1( Glass in Building − Thermally Toughened Soda Lime Single−Pane Safety Glass − Part 1): 定義及び説明、に従って強化されており、特に好ましくは、100N/mm
2を超える表面圧縮応力で、特には100N/mm
2〜150N/mm
2の表面圧縮応力で強化されている。強化されることによって、第1ペインは、損傷を受けたときに破砕し、好ましくは1cm
2未満のサイズを有する縁が尖がっていない破片へと破砕する。
【0040】
第2、第3又はさらなるペインは、好ましくはガラスを含んでおり、特に好ましくは、フラットガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス又は透明プラスチック、好ましくは硬質透明プラスチック、特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル及び/又はそれらの混合物を含んでいる。適切なガラスは、例えば欧州特許第0847965号明細書から公知である。第2、第3の又はさらなるペインは、特には、上述の材料から作られることができる。
【0041】
第1、第2、第3又はさらなるペインの厚さは、広範囲で変化することができ、従って、個別的な場合の要件に理想的に適合させることができる。好ましくは、1.0mm〜50mm、好ましくは3mm〜16mmの標準の厚さを有するペインが、使用される。ペインのサイズは広範囲で変化することが可能であり、本発明に係る使用のサイズによって支配される。
【0042】
本発明の有利な実施形態では、第1ペインは誘電特性を有しており、かつ比誘電率値は6〜8、特には約7である。
【0043】
ペインは任意の三次元形状を有していることができる。好ましくは、三次元形状は、例えばカソードスパッタリングによって被覆されることができるように、影の領域(シャドーゾーン)を有していない。好ましくは、ペインは1つ又は複数の空間的方向において平面であるか、又はわずかに若しくは大きく湾曲している。ペインは無色であることも又は着色されていることもできる。
【0044】
本発明に係る警報ペイン装置の好ましい実施形態では、第1ペインは、その外側表面(I)及び少なくとも1層の中間層を介して、好ましくはその外側表面(I)及び少なくとも1層の熱可塑性中間層を介して、第2ペインに面結合されて、複合ペインを形成する。次いで、この第2ペインを、別の中間層を介して、追加的な第3のペインに面結合することができる。第2及び/又は第3のペインは、好ましくはプラスチックを含んでいる。第2及び/又は第3のペインは、特には、プラスチックから作られていてもよい。このような複合ペインは、外部からの侵入に対して特に突破抵抗性であり、それによって、高い安全ランクが得られる。複合ペインのペインは、少なくとも1つの中間層によって、互いに結合される。中間層としては、好ましくは、熱可塑性プラスチック、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はそれらの複数の層が挙げられ、好ましくは厚さが0.3mm〜0.9mmである。
【0045】
本発明に係る警報ペイン装置の有利な実施形態では、透明導電性被覆は、第1ペインの透視領域の少なくとも70%、好ましくは80%〜100%、特に好ましくは98%〜100%に配置される。透視領域は、フレーム、スペーサ又は他の取り付け部品によって視覚が妨げられない、第1ペインの領域である。
【0046】
本発明に係る警報ペイン装置の別の有利な実施形態では、透明導電性被覆は、第1ペインの内側表面の面積の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは80%〜100%、特には95%〜100%に配置される。
【0047】
本発明に係る透明導電性被覆は、電磁放射線に対して、好ましくは300〜1300nmの波長の電磁放射線に対して透過性であり、特に390nm〜780nmの可視光に対して透過性である。用語「透過性」は、特に可視光において、ペインの全透過率が、好ましくは>70%、特に>75%透過であることを意味する。特定の用途では、より低い透過率が望ましいこともあり、それに関しては「透過性」は、10%〜70%の光透過率を意味し得る。そのような用途は、例えば、主要な光線に暴露されるべきでない物体、例えば、絵画又は織物を保護するためのグレージングである。
【0048】
透明導電性被覆は、好ましくは、機能性被覆であり、特に好ましくは、太陽光防護作用を有する機能性被覆である。太陽光防護作用を有する被覆は、赤外線範囲において、従って太陽光放射の範囲において反射特性を有する。従って、日照の結果としての乗物又は建物の内部の加熱が、低減される。このような被覆は当業者に公知であり、典型的には少なくとも1種の金属、特には銀又は銀含有合金を含有している。透明導電性被覆は、一連の複数の個別的な層を有していることができ、特には少なくとも1層の金属性層、及び、例えば少なくとも1種の金属酸化物を含有している誘電体層を有していることができる。金属酸化物としては、好ましくは、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどの他、これらの1種又は複数種の組み合わせが挙げられる。誘電体材料はまた、窒化ケイ素、炭化ケイ素又は窒化アルミニウムを含んでいることもできる。
【0049】
この層構造は、一般に、磁場強化型カソードスパッタリングなどの真空法によって行われる、一連の堆積操作によって得られる。特にはチタン又はニオブを含有する非常に微細な金属層を、銀層の両面に設けることもできる。下方金属層は、接着及び結晶化層としての役割を果たす。上方金属層は、さらなる処理工程中の銀の変性を防止するための保護層及びゲッタ層として機能する。
【0050】
特に好適な透明導電性被覆としては、少なくとも1種の金属、好ましくは銀、ニッケル、クロム、ニオブ、スズ、チタン、銅、パラジウム、亜鉛、金、カドミウム、アルミニウム、ケイ素、タングステン若しくはそれらの合金、並びに/又は、少なくとも1つの金属酸化物層、好ましくは、スズでドープされた酸化インジウム(ITO)、アルミニウムでドープされた酸化亜鉛(AZO)、フッ素でドープされた酸化スズ(FTO、SnO
2:F)、アンチモンでドープされた酸化スズ(ATO、SnO
2:Sb)、並びに/又は、カーボンナノチューブ、並びに/又は、光学的に透明な導電性重合体、好ましくは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホネート、ポリ(4,4−ジオクチル−シクロペンタジチオフェン)、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン、それらの混合物及び/若しくは共重合体が挙げられる。
【0051】
透明導電性被覆の厚さは、広範囲で変化可能であり、個別的な場合の要求に適合させることができる。透明導電性被覆の厚さは、電磁放射線に対して、好ましくは300nm〜1300nmの波長の電磁放射線に対して、特には390nm〜780nmの可視光線に対して不透過性になるほどに大きくはないことが重要である。透明導電性被覆は、好ましくは10nm〜5μm、特に好ましくは30nm〜1μmの層厚を有する。
【0052】
透明導電性被覆のシート抵抗は、好ましくは0.35オーム/スクウェア〜200オーム/スクウェア、好ましくは0.5オーム/スクウェア〜200オーム/スクウェア、最も特に好ましくは0.6オーム/スクウェア〜30オーム/スクウェアであり、特には2オーム/スクウェア〜20オーム/スクウェアである。透明導電性被覆は、原則としては、特にはそれらが使用される場合に低い光透過率しか必要とされないならば、0.35オーム/スクウェアよりもさらに低いシート抵抗を有することができる。そのようなシート抵抗は、第1ペインが破壊された場合の導電性被覆の損傷を検出するのに特に適している。透明導電性被覆は、好ましくは良好な赤外線反射特性及び/又は特に低い放射率(Low−E)を有している。
【0053】
本発明に係る警報ペイン装置の有利な実施形態では、誘導型センサが、個別の構成要素として、すなわち構造ユニットの形態として実装される。誘導型センサは、特には1つの同一の(例えば、不透明な)筐体によって取り囲まれていることができ、測定コイルを、この筐体内に配置することができる。
【0054】
本発明の別の態様は、本発明に係る警報ペイン装置を操作する方法を含んでおり、この方法では、測定信号の測定を、連続的に又は周期的に、好ましくは0.2秒〜100秒の周期長で行い、かつセンサユニットによって出力信号として出力する。出力信号の出力は、連続的又は周期的に行ってよく、好ましくは0.2秒〜100秒の周期長で行ってよい。
【0055】
本発明の別の態様は、本発明に係る警報ペイン装置の使用を含んでおり、好ましくは絵画、織物、宝飾品などの価値のある商品の保護のために、例えば博物館若しくは宝石店などで、展示ケース、ショーケースのグレージングとしての、又は、建築用グレージング、絶縁性グレージング、二重絶縁性グレージング、三重絶縁性グレージング、耐火性グレージング、安全グレージングとしての、又は自動車、バス、列車若しくは航空機などの、陸上、水上若しくは空中の乗物におけるグレージングとしての使用を含んでいる。
【0056】
本発明の別の態様には、強化ガラスの第1ペインを有しておりかつ内側表面(II)上に透明導電性被覆を有しているグレージングに後付けすることによって警報ペイン装置を形成するために、誘導型センサを有する本発明に係るセンサユニットを使用することが含まれる。
【0057】
以下に、本発明を、図面及び実施例を参照して詳細に説明する。図面は完全に縮尺通りではない。本発明は、図面によっては決して制限されない。
【実施例】
【0058】
図1Aは、本発明に係る警報ペイン装置10の、外側表面Iの平面図における概略図を示している。
図1Bは、
図1Aの切断線A−A´に沿った断面図を示している。
【0059】
警報ペイン装置10は、内部を外部環境から分離する。警報ペイン装置10は、例えば、博物館又は宝石店などで、外部からのアクセスに対して内部の貴重品、例えば展示ケース内の貴重品を保護するのに適している。
【0060】
警報ペイン装置10は、内側表面IIに透明導電性被覆3が配置された第1ペイン1を有している。この例では、透明導電性被覆3は、第1ペイン1の縁から例えば10mmの幅を有する端部無被覆部を除いて、第1ペイン1の内側表面IIの全体に配置されている。端部無被覆部は、ペインの縁部を介して湿分が浸透してくることに対する腐食保護の役割を果たす。
【0061】
透明導電性被覆3は、例えば、赤外線反射層として機能する。これは、入射してくる太陽光からの熱放射の大きな割合が反射されることを意味する。建築用グレージングにおいて第1ペイン1を使用することで、太陽光放射による内部の加熱が減少する。透明導電性被覆3は、例えば欧州特許第0847965号明細書から公知であり、2つの銀層を含有しており、銀層それぞれが、複数の金属層と金属酸化物層との間に埋め込まれている。透明導電性被覆3は、シート抵抗が約4オーム/スクウェアである。
【0062】
第1ペイン1は、例えば、幅1m、長さ1.5m及び厚さ4mmの強化ソーダ石灰ガラスペインである。第1ペイン1は、DIN 12150−1に従って、例えば120N/mm
2の表面圧縮応力で強化されている。強化されることによって、第1ペインは、損傷時に、1cm
2未満のサイズを有する縁が尖っていない破片へと破砕される。
【0063】
図示の例では、センサユニット20は、第1ペイン1の内側面に配置されている。ここで、「内側面」とは、内側表面IIの方向に向いている領域を意味しており、そこに透明導電性被覆3が配置されている。センサユニット20は、導電性被覆3に誘導的に結合された誘導型センサ21を有している。もちろん、誘導型センサ21は、必ずしもセンサユニット20の残りの部分と同じ筐体中に組み込まれている必要はない。
【0064】
誘導型センサ21の活性表面21.3と透明導電性被覆3との間の距離dは、例えば、0.5mmである。誘導型センサ21と透明導電性被覆3は、特には、互いに電気的に絶縁されている。センサユニットは、誘導型センサ21を介して、この装置のインダクタンスを測定し、測定値と比較値とを比較する。比較値は、損傷を受けていない透明導電性被覆3を有する損傷を受けていない第1ペイン1で規定される。センサユニット20は、比較値からの誘導型センサ21の測定信号のずれ、すなわち差異を決定し、規定された許容値より大きいずれがある場合には、警報信号を出力する。警報信号は、例えば、別の中立的な出力信号とは異なる、特定のレベル及び/又はパルス持続時間の電圧又は電圧パルスであり、それによって警報状態を識別することができる。そのようなずれは、典型的には、第1ペインの破壊及びそれに付随する透明導電性被覆3の損傷の際に起こる。
【0065】
警報信号は、例えば、送信機ユニットを介して受信機に送られ、そこで音響信号に変換されるか、又は、緊急通報が送信される。
【0066】
図2は、本発明に係るセンサユニット20の概略図を示している。センサユニット20は、誘導型センサ21を有している。誘導型センサ21は、フェライトコア21.2及び活性表面21.3を有する測定コイル21.1を含んでおり、インダクタンスを測定するための電磁場が、活性表面から発生する。測定コイル21.1は、リード線を介して、電子システムに接続されている。距離dは、誘導型センサ21の活性表面21.3と透明導電性被覆との間の距離である。
【0067】
センサユニット20は、例えば、複数の構造段階を有している:誘導型センサ21の測定コイル21.1が、発振器20.1に接続されている。発振器20.1が、復調器20.2を介して比較器20.3に接続されている。比較器20.3が、測定信号と比較値とを比較して、適宜、電力増幅器20.4を介して、警報信号を出力22上に出力する。
【0068】
透明導電性被覆3の変化が特に正確に測定され得る、検出領域25は、誘導型センサ21の設計によって規定され、かつ誘導型センサ21の活性表面21.3と透明導電性被覆3との間の距離によって規定される。
【0069】
図3Aは、損傷を受けていない第1ペイン1とともに、本発明に係る透明導電性被覆3の細部Zの拡大図を示す。透明導電性被覆3は、特に、誘電型センサ21の検出領域25において損傷を受けていない。
【0070】
図3Bは、破壊された第1ペイン1とともに、透明導電性被覆3の細部Zの拡大図を示す。例えば、第1ペイン1を通じた侵入の試みなどによる損傷によって、この第1ペインは、強化されていることに起因して、小さな破片へと破砕される。この結果として、破断線30によって、透明導電性被覆3の連続性が断たれる。各破片は、検出領域25よりも小さく、それによって、少なくとも1つの破断線30が検出領域内25に位置するようになっている。破断線30によって透明導電性被覆3の連続性が断たれることにより、誘電型センサ21の測定信号が変化し、警報信号を出力することができる。
【0071】
図4Aは、本発明に係る別の警報ペイン装置10´の、平面概略図を示す。
図4Bは、
図4Aの切断線A−A´に沿った断面図である。警報ペイン装置10´は、例えば絶縁性ガラスペインであり、それには、
図1A及び
図1Bの警報ペイン装置10が含まれる。さらに、第1ペイン1は、周囲スペーサ2を介して第2ペイン6に結合している。ここで、誘電型センサ21を含むセンサユニット20が、第1ペイン1、第2ペイン6及びスペーサ2によって形成されている中間空間に配置されている。センサユニット20は、例えば、スペーサ2の下部に接着結合され、従って、滑りに対してしっかりと固定される。センサユニット20は、例えば、蓄電器及びこの蓄電器を充電する太陽電池を含んでいる。さらに、センサユニット20は、例えば、警報ペイン装置10´の外側に配置される受信機(ここには図示しない)に、ブルートゥース(商標)(Bluetooth(商標))接続を介して警報信号を送信する送信機ユニットを含んでいる。センサユニット20はエネルギー自給式であり、エネルギー供給のためにも、又は、警報信号を送るためにも、外側に向かうリード線を必要としていない。センサユニット20は、例えば、既存の絶縁性ガラスユニットに、簡便に後付けすることができる。
【0072】
この結果は当業者には予想外で驚くべきものであった。
本発明の態様は、以下のとおりである:
〈態様1〉
− 外側表面(I)及び内側表面(II)を有する、強化ガラス製の少なくとも1つの第1ペイン(1)、
− 前記第1ペイン(1)の前記内側表面(II)上に配置されている、少なくとも1つの透明導電性被覆(3)、
− 前記透明導電性被覆(3)に誘導的に結合されている、誘導型センサ(21)を有するセンサユニット(20)、
を有しており、
前記誘導型センサ(21)の測定信号が比較値からはずれた場合に、前記センサユニット(20)が、警報信号を出力し、
前記誘導型センサ(21)が、正確に1つの測定コイル(21.1)、好ましくは、フェライトコア(21.2)を有する測定コイル(21.1)を有している、警報ペイン装置(10,10´)。
〈態様2〉
前記第1ペイン(1)が破壊された場合に前記透明導電性被覆(3)が損傷を受けることとなるように、前記透明導電性被覆(3)が、前記第1ペイン(1)に結合されており、好ましくは、前記透明導電性被覆(3)が、前記第1ペイン(1)の前記内側表面(II)上に直接堆積されており、特に好ましくは、前記透明導電性被覆(3)が、薄膜積層体として、特には、カソードスパッタリング(スパッタリング)、化学蒸着(CVD)及び/又は熱蒸発によって堆積されている、態様1に記載の警報ペイン装置(10,10´)。
〈態様3〉
前記誘導型センサ(21)の活性表面(21.3)と前記透明導電性被覆(3)との間の距離dが、0.1mm〜20mm、好ましくは0.2mm〜10mm、特には0.5mm〜5mmである、態様1に記載の警報ペイン装置(10,10´)。
〈態様4〉
前記第1ペイン(1)が破壊された場合に、破片が前記誘導型センサ(21)の検出領域(25)よりも小さくなるように、前記ペイン(1)が強化されている、態様1〜3のいずれか1項に記載の警報ペイン装置(10,10´)。
〈態様5〉
前記センサユニット(20)が、送信機ユニット、好ましくは無線送信機ユニット、特に好ましくは、ブルートゥース(商標)及び/若しくはWLANのための送信機ユニット、又は赤外線送信機を有している、態様1〜4のいずれか1項に記載の警報ペイン装置(10,10´)。
〈態様6〉
前記センサユニット(20)が、エネルギー供給源、好ましくはバッテリ、蓄電器、スーパーキャパシタ、熱電発電器及び/又は太陽電池を有しており、かつ好ましくは、外部電源へのリード線を有していない、態様1〜5のいずれか1項に記載の警報ペイン装置(10,10´)。
〈態様7〉
前記第1ペイン(1)が、少なくとも1つのスペーサ(2)、好ましくは前記ペイン(1)の縁部を完全に取り囲む周囲スペーサ(2)を介して、少なくとも1つの第2ペイン(6)に結合している、態様1〜6のいずれか1項に記載の警報ペイン装置(10´)。
〈態様8〉
前記センサユニット(20)が、前記第1ペイン(1)と前記第2ペイン(6)との間の中間空間内に配置されている、態様7に記載の警報ペイン装置(10´)。
〈態様9〉
前記第1ペイン(1)が、フラットガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス又はソーダ石灰ガラスを含んでおり、かつ/又は、実効比誘電率値εeffが6〜8である、態様1〜8のいずれか1項に記載の警報ペイン装置(10,10´)。
〈態様10〉
前記透明導電性被覆(3)が、少なくとも1種の金属、好ましくは銀、ニッケル、クロム、ニオブ、スズ、チタン、銅、パラジウム、亜鉛、金、カドミウム、アルミニウム、ケイ素、タングステン若しくはそれらの合金、及び/若しくは、少なくとも1種の金属酸化物層、好ましくは、スズでドープされた酸化インジウム(ITO)、アルミニウムでドープされた酸化亜鉛(AZO)、フッ素でドープされた酸化スズ(FTO、SnO2:F)、アンチモンでドープされた酸化スズ(ATO、SnO2:Sb)、及び/若しくは、カーボンナノチューブ、及び/若しくは、光学的に透明な導電性重合体、好ましくは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホネート、ポリ(4,4−ジオクチル−シクロペンタジチオフェン)、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン、それらの混合物及び/若しくはそれらの共重合体を含有しており、かつ/又は、前記透明導電性被覆(3)が、0.35オーム/スクウェア〜200オーム/スクウェアのシート抵抗、好ましくは0.6オーム/スクウェア〜30オーム/スクウェアのシート抵抗を有している、態様1〜9のいずれか1項に記載の警報ペイン装置(10,10´)。
〈態様11〉
前記透明導電性被覆(3)が、前記第1ペインの前記内側表面(II)の面積の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは80%〜100%、特には95%〜100%に配置されている、態様1〜10のいずれか1項に記載の警報ペイン装置(10,10´)。
〈態様12〉
前記誘導型センサ(21)が、個別の構成要素として実装されている、態様1〜11のいずれか1項に記載の警報ペイン装置(10,10´)。
〈態様13〉
前記測定信号の測定を、連続的又は周期的に、好ましくは0.2秒〜100秒の周期長で行い、かつ出力信号として前記センサユニット(20)から出力する、態様1〜12のいずれか1項に記載の警報ペイン装置(10,10´)の操作方法。
〈態様14〉
好ましくは価値のある商品の保護のための、例えば博物館若しくは宝石店における展示ケース、ショーケースのグレージングとしての、又は、建築用グレージング、絶縁性グレージング、二重絶縁性グレージング、三重絶縁性グレージング、耐火性グレージング、安全グレージングとしての、又は、自動車、バス、列車若しくは航空機などの、陸上、水上若しくは空中の乗物におけるグレージングとしての、態様1〜12のいずれか1項に記載の警報ペイン装置(10,10´)の使用。