特許第6568324号(P6568324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許65683247H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン化合物の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568324
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン化合物の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20190819BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20190819BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20190819BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20190819BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20190819BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190819BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20190819BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20190819BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   C07D487/04 140
   A61K31/519
   A61P11/00
   A61P29/00
   A61P37/08
   A61P35/00
   A61P37/06
   A61P11/06
   A61P43/00 111
【請求項の数】15
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2018-543332(P2018-543332)
(86)(22)【出願日】2017年2月7日
(65)【公表番号】特表2019-505547(P2019-505547A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】US2017016778
(87)【国際公開番号】WO2017142740
(87)【国際公開日】20170824
【審査請求日】2018年8月23日
(31)【優先権主張番号】62/295,739
(32)【優先日】2016年2月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/375,040
(32)【優先日】2016年8月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515230154
【氏名又は名称】ゾエティス・サービシーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】スタク,ティモシー・リー
(72)【発明者】
【氏名】ビレン,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ウエストリック,バレリー・スー
(72)【発明者】
【氏名】グナワーデーナ,バジーシャ・ワーナジス・リヤナ
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−500253(JP,A)
【文献】 特表2013−514356(JP,A)
【文献】 特表2013−508266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1
【化1】
の化合物またはその獣医学的に許容される塩の調製方法であって、
a)化合物である、trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸を、水または水性有機溶媒中で、7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン類似体、さらに塩基と、反応温度60℃〜105℃で反応させ、スルホン酸塩を調製すること;
b)有機溶媒中で前記スルホン酸塩をスルホニルクロリド中間体に変換すること;及び
c)前記スルホニルクロリド中間体をメチルアミン冷水溶液と反応させることにより、前記スルホニルクロリド中間体を式1の化合物に変換することを含む、前記方法。
【請求項2】
工程(a)において、前記7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン類似体は、4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンであり、前記反応は、水または5%N−メチルピロリドンまたはスルホランである水性有機溶媒中で行われ、前記塩基は炭酸カリウムであり、前記反応温度は12時間、98℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)において、前記スルホン酸塩から前記スルホニルクロリド中間体への変換は、前記スルホン酸塩を塩化オキサリル、塩化チオニル、または塩化ホスホリルと、有機溶媒中で反応させることにより調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有機溶媒がアセトニトリルまたはテトラヒドロフランを含み、前記反応温度が0℃〜20℃の範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有機溶媒が、ジメチルアセトアミド、ジイソプロピルホルムアミド、またはジメチルホルムアミドをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が、テトラヒドロフラン及びジイソプロピルホルムアミドを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記メチルアミン水溶液が40%であり、−10℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記スルホニルクロリド中間体を前記メチルアミン冷溶液に添加した後に、前記反応物に水を添加することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応物をゆっくりと加熱還流させた後、前記溶媒を温度65℃〜75℃で留去し、得られた固体を35℃まで冷却した後、前記固体を濾過し、水で洗浄し、濾過し、乾燥させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式1
【化2】
の化合物またはその獣医学的に許容される塩の調製方法であって、
a)前記化合物である、trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸を4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン及び炭酸カリウムと、水中にて98℃で12時間反応させ、前記反応物を30℃まで冷却し、前記固体を濾過により単離し、前記固体を水とメタノール(1:1)、次いでメタノールで洗浄するか、または前記固体をメタノールのみで洗浄し、前記スルホネート固体を乾燥させる工程;
b)THF:DIPF(95:5)の有機溶媒に前記スルホネート固体を添加し、前記反応物を10℃まで冷却し、前記反応温度を10℃に維持したまま塩化オキサリルまたは塩化ホスホリルを添加して前記スルホニルクロリドを調製することにより、前記スルホネートを前記スルホニルクロリドに変換する工程;
c)−10℃に冷却した40%メチルアミン水溶液に工程(b)の前記反応物を添加することにより、前記スルホニルクロリド固体を式1の化合物に変換する工程;
d)14容量の水を添加し、前記スラリーをゆっくりと加熱還流させ、65℃〜75℃10容量の溶媒を留去した後、前記反応物を35℃までゆっくりと冷却する工程;
e)前記固体を濾過により単離し、室温にて前記固体を水で洗浄した後、前記固体を乾燥させる工程を含む、前記方法。
【請求項11】
化合物である、中間体C
【化3】
を調製する方法であって、
a)4−ブロモベンジルブロミドと亜硫酸ナトリウム塩とを水または10%〜30%のアセトニトリルを含む水性溶媒中、80℃で反応させ、固体である、中間体Aを濾過により単離する工程;
b)前記固体である、中間体Aを10%〜25%のメチルアミン水溶液及びCuBr触媒中で、少なくとも50℃の温度で16時間反応させた後、前記反応物を65℃に冷却し、残留銅を除去し、水を加えて濃HClでpHを3.2に調整し、前記反応物を15℃に冷却し、固体である、中間体Bを濾過により単離する工程;
c)前記固体である、中間体Bを、25%のメタノールを含有する水性有機溶媒中で、パラジウム触媒及び水素と50℃〜80℃14時間〜18時間反応させる工程;及び
d)前の反応で得た容量を濃縮し、アルコールを添加して、45℃に加熱した後、前記反応物を4時間かけて0℃に冷却し、前記固体である、中間体Cを濾過により単離し、アルコールで洗浄する工程を含む、前記方法。
【請求項12】
工程(a)において前記アセトニトリルが15%であり、工程(b)において、前記メチルアミン水溶液が17%であり、前記CuBr触媒が2mol%であり、少なくとも50℃の温度とは90℃であり、かつ、前記残留銅がクエン酸溶液の添加によって除去される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)において、前記パラジウム触媒がPd(0)触媒であり、かつ、前記水素が70℃16時間の水素ガスである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
工程(d)において前記アルコールがエタノールである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
(4−(メチルアミノ)フェニル)メタンスルホン酸;
trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸;
trans−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸カリウム塩;
trans−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸ナトリウム塩;及び
((trans)−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)−メタンスルホニルクロリド
からなる群から選択される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン化合物、特にN−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}−メタンスルホンアミド、その中間体、及びその獣医学的に許容される塩の改善された調製方法について記載する。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは、タンパク質における特定の残基のリン酸化を触媒する酵素のファミリーであり、チロシンキナーゼとセリン/スレオニンキナーゼに大別される。成長因子またはサイトカインの突然変異、過剰発現、または不適切な調節、調節解除、もしくは脱調節、ならびに過剰産生または過少産生に起因する不適切なキナーゼ活性は、がん、アレルギー、喘息及びその他の呼吸器疾患、自己免疫疾患、ならびに炎症性疾患を含むが、これらに限定されない多数の疾患に関与している。キナーゼ活性が不適切であると、上述の疾患及び関連疾患に関与する細胞増殖、細胞分化、生存、アポトーシス、有糸分裂誘発、細胞周期制御、及び細胞運動性に関わる種々の生物学的細胞応答を誘発する。
【0003】
このようにプロテインキナーゼは、治療介入の標的として重要な酵素クラスであることが明らかになってきた。特に、細胞内プロテインチロシンキナーゼのJAKファミリー(JAK−1、JAK−2、JAK−3、及びTyk−2)は、サイトカインシグナル伝達において中心的な役割を果たす(Kisseleva et al,Gene,2002,285,1;Yamaoka et al.Genome Biology 2004,5,253))。サイトカインはそれらの受容体に結合すると、JAKを活性化させ、次いでサイトカイン受容体をリン酸化し、それによってシグナル伝達分子、特に最終的に遺伝子発現に至るシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)ファミリーのメンバーに対するドッキング部位を形成する。多数のサイトカインがJAKファミリーを活性化することが知られている。
【0004】
JAK阻害剤の調製方法は、以前に米国特許第6,610,847号で記載されている。米国特許第US8,133,899号には、特定のJAK阻害剤、N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}−メタンスルホンアミドの調製方法が記載された。式1の化合物を調製するこの現行の合成方法は、7回の単離を含む少なくとも10段階の合成工程から構成される。本明細書に記載の改善された合成経路は、わずか6段階の合成工程と4回の単離で構成される。このように、JAK阻害剤、N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}−メタンスルホンアミドを調製する代替方法、特に処理時間及びコストを低減できるものが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式1:
【化1】
の7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン化合物、N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}−メタンスルホンアミド、またはその獣医学的に許容される塩、及びその中間体の改善された製造方法を提供する。
【0006】
本発明の一態様は、(4−(メチルアミノ)フェニル)−メタンスルホン酸である中間体B
【化2】
を調製する方法であって、
中間体a1
【化3】
(式中、Xは臭素またはヨウ素であり、YはCl、Br、I、O−トシル、O−メシル、またはO−トリフレート(または亜硫酸塩による求核置換を受けやすい任意の官能基))を亜硫酸塩(MSO、ここでMはNa、K、またはCaである)と、水または水性有機溶媒中で約50℃から還流温度で反応させ、合成された亜硫酸塩である中間体a2
【化4】
を得る工程を含む方法である。
【0007】
好ましくは、中間体a1の変数X及びYは、いずれもBr(すなわち、4−ブロモベンジルブロミド)であり、中間体a2のMはNaまたはKである。一態様では、亜硫酸塩は亜硫酸ナトリウムである。別の態様では、亜硫酸塩は亜硫酸カリウムである。上記に定める反応において、4−ブロモベンジルブロミドの存在下で亜硫酸ナトリウムを使用すると、中間体A、(4−ブロモフェニル)メタン−スルホン酸ナトリウム(すなわち、中間体a2)(以下に示す通り、XはBrであり、MはNaである)を得る。この亜硫酸塩変換のための水性有機溶媒は、約1%〜約50%の有機溶媒である。有機溶媒の好ましい量は、約10%〜約30%である。有機溶媒のより好ましい量は、約15%である。好ましい有機溶媒はアセトニトリルである。本発明の別の態様では、有機溶媒はまた、アセトン、水混和性アルコール、及び水混和性エーテルから選択することができる。反応温度は約50℃から還流温度である。好ましい反応温度は、約80℃で約4時間、その後、反応物を約10℃に冷却する。得られるスルホン酸ナトリウ固体、中間体A
【化5】
を濾過により単離する。続いて中間体Aを少なくとも約50℃の温度のメチルアミン水溶液中で触媒の銅または銅塩と反応させる。反応物を冷却し、水を添加する。酸を加えてpHを約3.2に調整する。得られたスラリーをさらに冷却し、得られた固体、中間体Bを単離する。少なくとも約50℃の反応温度とは好ましくは約90℃であり、反応時間は約16時間である。銅触媒は、Cu(0)塩またはCu(1)塩であり得る。好ましい銅触媒はCu(1)塩である。より好ましい銅触媒はCuBrである。触媒充填量は、約0.25mol%を超える任意の量であり得る。好ましい銅触媒の充填量は約2mol%である。メチルアミン水溶液のメチルアミン濃度は約5%〜約40%である。反応にとって好ましいメチルアミンの量は、約10%〜約25%のメチルアミンである。反応にとって、より好ましいメチルアミンの量は、約17%のメチルアミンである。この反応物を約90℃から約65℃に冷却する。クエン酸溶液を反応物に添加し、約20分間撹拌して銅残渣を除去する。水を加え、濃塩酸水溶液でpHを約3.2に調整する。得られたスラリーを約15℃に冷却し、得られた固体、中間体Bを濾過により単離し、水で洗浄する。
【0008】
本発明の別の態様は、(4−(メチルアミノ)フェニル)−メタンスルホン酸である中間体B
【化6】
を調製する方法であって、
4−ブロモベンジルブロミドと亜硫酸ナトリウムとを水または約15%のアセトニトリルを含む水性有機溶媒中、温度約80℃で約4時間反応させた後、反応物を約10℃に冷却する工程を含む。得られたスルホン酸ナトリウム固体、中間体Aを濾過により単離し、約17%のメチルアミンを含む水性有機溶媒中で、2mol%CuBr触媒と温度約90℃で約16時間反応させる。反応物を約65℃に冷却する。クエン酸溶液を添加し、反応物を約20分間撹拌して銅残渣を除去した後、水を添加する。濃HCl水溶液でpHを約3.2に調整する。得られたスラリーを約15℃に冷却し、得られた固体、中間体Bを濾過により単離し、水で洗浄する。
【0009】
本発明の別の態様は、トランス型アキラル幾何異性体、trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸、中間体C
【化7】
の、高温での中間体Bの接触水素化による調製である。中間体Bを触媒の存在下、温度約40℃〜約100℃で約12時間〜約20時間、水性有機溶媒中で水素と反応させる。好ましい反応温度は、約14時間〜約18時間、約50℃〜約80℃である。より好ましい反応温度は、約16時間、約70℃である。水素化は、加圧された水素ガスまたは他の水素移動条件下で、例えば水素源としてギ酸またはギ酸塩を使用して達成することができる。好ましい水素源は、約20psi〜約70psiの圧力下にある水素ガスである。好ましい圧力は約30psiである。触媒は、反応性金属触媒、例えば、パラジウム(例えば、Pd(0);またはPd(II);水酸化パラジウム(Pd(OH)))、ルテニウム(Rh)、白金(Pt及びPtO))などである。好ましい触媒はパラジウムである。好ましいパラジウム触媒は炭素担持Pd(0)である。Pd(0)の好ましい担持量は、炭素に対して約10%である。水性有機溶媒は、水とメタノールである。メタノールの好ましい量は約25%である。この反応により、トランス(70%)及びシス(30%)両方のアキラル幾何異性体、(4−(メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸溶液を得る。トランス/シスのスラリーを精製してトランス異性体を得るために、反応物の容量を濃縮し、アルコールを水性スラリーに添加する。好ましいアルコールは、メタノール、エタノール、またはイソプロパノールである。より好ましいアルコールはエタノールである。エタノール水溶液は、水が約10%〜約20%である。好ましくは、エタノール水溶液は、水が約16%〜約17%である。スラリーを約45℃に加熱した後、約4時間かけて約0℃に冷却する。固体(中間体C)を濾過により単離し、アルコール、好ましくはエタノールで洗浄する。
【0010】
本発明の別の態様は、以下の工程を含む、中間体Cを調製する方法である:
a)4−ブロモベンジルブロミドと亜硫酸ナトリウム塩とを水または約10%〜約30%のアセトニトリルを含む水性溶媒中、約80℃で反応させ、固体、中間体Aを濾過により単離する;
b)固体、中間体Aをメチルアミンが約10%〜約25%であるメチルアミン水溶液及びCuBr触媒中で、少なくとも約50℃の温度で約16時間反応させた後、反応物を約65℃に冷却し、クエン酸を添加して残留銅を除去し、水を加えて濃HClでpHを3.2に調整し、反応物を約15℃に冷却し、固体、中間体Bを濾過により単離する;
c)固体、中間体Bを、約25%のメタノールを含有する水性有機溶媒中で、パラジウム触媒及び水素と約50℃〜約80℃で約14時間〜約18時間反応させる;
d)前の反応で得た容量を濃縮し、アルコールを添加して、約45℃に加熱した後、反応物を約4時間かけて約0℃に冷却し、固体、中間体Cを濾過により単離し、アルコールで洗浄する。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、以下の工程を含む、中間体Cを調製する方法である:
a)4−ブロモベンジルブロミドと亜硫酸ナトリウム塩とを約15%のアセトニトリルを含む水性有機溶媒中、約80℃で約4時間反応させ、次いで反応物を約10℃に冷却した後、固体、中間体Aを濾過により単離する;
b)固体、中間体Aをメチルアミンが約17%であるメチルアミン水溶液及び約2mol%であるCuBr触媒と約90℃で約16時間反応させた後、反応物を約65℃に冷却し、クエン酸を添加して残留銅を除去する;
c)水を加えて濃塩酸水溶液でpHを約3.2に調整し、反応物を約15℃に冷却し、固体、中間体Bを濾過により単離する;
d)固体、中間体Bを、約25%のメタノールを含有する水性有機溶媒中で、約20psi〜約70psiの水素ガス及びPd(0)触媒と温度約70℃で約16時間反応させる;
e)反応物の容量を濃縮し、エタノールを添加する;
f)反応物を約45℃に加熱した後、約4時間かけて約0℃に冷却する;
g)固体、中間体(C)を濾過により単離し、固体をエタノールで洗浄する。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、以下の工程を含む、化合物、中間体Cを調製する方法である:
a)中間体Bを水性有機溶媒中で、約30psiの水素ガス、及び炭素に約10%担持されているPd(0)触媒と約70℃で約16時間反応させる(この場合の水性有機溶媒は約25%のメタノール水溶液である);
b)反応物の容量を濃縮し、エタノールを添加する;
c)反応物を約45℃に加熱した後、約4時間かけて約0℃に冷却する;
d)固体、中間体Cを濾過により単離し、固体をエタノールで洗浄する。
【0013】
本発明の別の態様は、trans−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸カリウム塩、中間体E
【化8】
を調製する方法であって、
中間体Cを7H−ピロロ{2,3−d}ピリミジン類似体、中間体D1
【化9】
(式中、WはCl、F、Br、I、O−トリフラート、O−メシル、またはO−トシルである)、さらに塩基と、水または約1%〜約50%の有機溶媒を含有する水性有機溶媒中で、温度約60℃〜約105℃で反応させることにより調製する。好ましいピリミジン類似体は、中間体D、4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(すなわち、WがClである中間体D1)である。有機溶媒の好ましい量は、約1%〜約20%である。有機溶媒のより好ましい量は、約5%である。有機溶媒としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエトキシ)エタンなど)、及び極性非プロトン性溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、スルホランなど)が挙げられる。反応にとって好ましい溶媒は極性非プロトン性溶媒である。より好ましい有機溶媒はNMPまたはスルホランである。好ましい水性有機溶媒は、約5%のNMPまたはスルホラン水溶液である。好ましい水性有機溶媒は、約5%のNMPである。反応は水中で行うのが好ましい。塩基は、炭酸塩(例えば、カリウム、ナトリウム、リチウム、セシウムなど)、水酸化物(例えば、リチウム、カリウム、ナトリウム、セシウムなど)、及びトリアルキルアミン、1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エンなどである有機塩基からなる塩基の群から選択される。好ましい塩基は炭酸塩である。より好ましい塩基は、炭酸カリウムである。この反応工程の好ましい温度は約12時間、約98℃である。反応物を約30℃に冷却すると得られる沈殿固体が中間体Eであり、これを濾過により単離する。固体を水とアルコールの混合物(1:1)、次いでアルコールで洗浄するか、またはアルコールのみで洗浄し、減圧乾燥する。好ましいアルコールはメタノールである。
【0014】
本発明の別の態様は、中間体Cを中間体Dと、水中で、炭酸カリウムの存在下、約98℃で約12時間反応させ、反応物を約30℃に冷却し、固体を濾過により単離し、固体を水:メタノール(1:1)、次いでメタノールで洗浄するか、またはメタノールのみで洗浄し、固体を乾燥させることにより、中間体Eを調製する方法である。
【0015】
本発明の別の態様は、中間体E、((trans)−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)−メタンスルホン酸カリウム塩から、スルホニルクロリド、中間体F、((trans)−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)−メタンスルホニルクロリドへの変換を、
【化10】
この変換を生じさせることが知られている試薬と中間体Eを反応させることにより調製する方法である。反応物の温度は約−20℃〜約30℃の範囲である。好ましい温度は約−10℃〜約20℃の範囲である。この反応にとってより好ましい温度は約10℃である。この変換を生じさせることが知られている一般的な試薬として、塩化オキサリル、塩化チオニル、塩化ホスホリル、五塩化リン、ホスゲン、トリホスゲンなどが挙げられる。好ましい試薬は、塩化オキサリル、塩化チオニル、または塩化ホスホリルである。スルホン酸塩からスルホニルクロリドへの変換は、塩化物試薬と相溶性のある有機溶媒、例えば、塩化メチレン、アセトニトリル(ACN)、ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジイソプロピルホルムアミド(DIPF)、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチル−テトラヒドロフラン、ジメトキシメタン、ジオキサンなど、及びそれらの混合物中で実施することができる。この反応にとって好ましい溶媒はACNまたはTHFである。好ましい溶媒はACNである。別の好ましい溶媒はTHFである。溶媒混合物は、85:15〜99:1の範囲であり得る。溶媒混合物として、例えば、ACN:DMA(98:2)、ACN:DIPF(97:3)、THF:NMP(95:5)、THF:DIPF(95:5)、THF/DIPF(98:2)、THF:DMA(90:10)、ACN:DMF(85:15)などが挙げられる。この場合、約5%のDIPFが反応の触媒としてTHFに添加される。スルホネートと有機溶媒を混合し、約10℃に冷却する。塩化オキサリル、塩化チオニル、または塩化ホスホリルを、温度を約10℃に維持して、約1時間〜約24時間(好ましくは約3時間〜約10時間、より好ましくは約1時間〜約3時間)撹拌しながら溶媒混合物に添加し、中間体Fを調製する。中間体Fは単離しないが、単離してもよい。
【0016】
本発明の別の態様は、スルホニルクロリド(中間体F)をスルホンアミド(式1の化合物)へ変換する方法である。既に約10℃であるスルホニルクロリドのスラリー(中間体F)を約−10℃のメチルアミン冷水溶液に徐々に添加する。メチルアミン溶液は、メチルアミンが約40%である。添加後、混合物に約10〜15容量(1容量≒1mL/グラム)、好ましくは11〜14容量、より好ましくは約14容量の水を加え、懸濁液を徐々に加熱還流する。約8〜12容量、好ましくは約10容量の溶媒を、約65℃〜約75℃で留去する(すなわち、10g規模の反応の場合、約100mL)。スラリーを約35℃まで冷却して、固体を濾過し、室温にて水で洗浄し、乾燥させる。得られた固体の収率は約92%である。別法として、冷メチルアミンの添加後に、約8容量の水を混合物に加え、ゆっくりと還流させて、約5容量の溶媒を約65℃〜約75℃で留去し、次いで蒸留しながら約6容量の水を添加し、合計約10容量の溶媒が除去されるまで蒸留を継続してもよい。上記のようにスラリーを約35℃まで冷却し、濾過し、洗浄して、固体を乾燥させる。
【0017】
本発明の別の態様は、式1の化合物、N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}−メタンスルホンアミド、
【化11】
またはその獣医学的に許容される塩の調製方法であって、
a)化合物、trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸を、水または水性有機溶媒中で、7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン類似体、さらに塩基と、反応温度約60℃〜約105℃で反応させ、スルホン酸塩を調製すること;
b)有機溶媒中でスルホン酸塩をスルホニルクロリド中間体に変換すること;
c)スルホニルクロリド中間体をメチルアミン冷水溶液と反応させることにより、スルホニルクロリド中間体を式1の化合物に変換することを含む方法である。
【0018】
工程(a)において、7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン類似体は、4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンであり、反応は、水または5%N−メチルピロリドンまたはスルホランである水性有機溶媒中で行われ、塩基は炭酸カリウムであり、反応温度は約12時間、約98℃である。工程(b)において、スルホン酸塩からスルホニルクロリドへの変換は、スルホン酸塩を塩化オキサリル、塩化チオニル、または塩化ホスホリルと、アセトニトリルまたはテトラヒドロフランを含む有機溶媒中で、反応温度約10℃で反応させることにより調製される。さらに有機溶媒は、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジイソプロピルホルムアミド、またはN,N−ジメチルホルムアミドをさらに含む。好ましい溶媒には、テトラヒドロフラン及びN,N−ジイソプロピルホルムアミドを含む。工程(c)において、メチルアミン冷水溶液は約40%であり、約−10℃である。好ましい反応では、スルホニルクロリド中間体をメチルアミン冷溶液に添加した後に反応物に水を添加する。次いで、反応物をゆっくりと加熱還流させ、溶媒を温度約65℃〜約75℃で留去し、得られた固体を約35℃まで冷却した後、固体を濾過し、室温にて水で洗浄し、濾過し、乾燥させる。得られた固体は、式1の化合物となる。
【0019】
本発明のさらに別の態様は、以下の工程を含む、式1の化合物、N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}−メタンスルホンアミドの調製方法である:
a)化合物、trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸(中間体C)を4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(中間体D)及び塩基と、水または約5%NMPまたはスルホランを含む水性有機溶媒中で、温度約60℃〜約105℃で反応させ、反応物を約30℃まで冷却し、固体を濾過により単離し、固体を水とメタノール(1:1)、次いでメタノールで洗浄するか、または固体をメタノールのみで洗浄し、スルホネート固体(中間体E)を乾燥させる;
b)アセトニトリルまたはアセトニトリル/DMA(98:2)またはTHF:DIPF(90:10〜98:2)またはTHF:DMF(97:3〜99:1)の有機溶媒にスルホネート固体を添加し、反応物を約10℃まで冷却し、反応温度を約10℃に維持したまま塩化オキサリル、塩化チオニル、または塩化ホスホリルを添加してスルホニルクロリド中間体Fを調製することにより、スルホネート(中間体E)をスルホニルクロリド(中間体F)に変換する;
c)冷却した(約−10℃)40%メチルアミン水溶液に工程(b)の反応物を添加することにより、中間体Fを式1の化合物に変換する;
d)水(約14容量)を添加し、スラリーをゆっくりと加熱還流させ、約65℃〜約75℃で約10容量の溶媒を留去する。次いで、反応混合物を再び約35℃まで徐々に冷却する;
e)固体を濾過により単離し、室温にて固体を水で洗浄し、濾過して固体を乾燥させる。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、以下の工程を含む、式1の化合物、N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}−メタンスルホンアミドの調製方法である:
a)化合物、trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸(中間体C)を4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(中間体D)及び炭酸カリウムと、水中にて温度約98℃で約12時間反応させ、反応物を約30℃まで冷却し、固体を濾過により単離し、固体を水とメタノール(1:1)、次いでメタノールで洗浄するか、または固体をメタノールのみで洗浄し、スルホネート固体(中間体E)を乾燥させる;
b)THF:DIPF(95:5)の有機溶媒にスルホネート固体を添加し、反応物を約10℃まで冷却し、反応温度を約10℃に維持したまま塩化オキサリルまたは塩化ホスホリルを添加してスルホニルクロリド、中間体Fを調製することにより、スルホネート(中間体E)をスルホニルクロリド(中間体F)に変換する;
c)冷却した(約−10℃)40%メチルアミン水溶液に工程(b)の反応物を添加することにより、スルホニルクロリド固体、中間体Fを式1の化合物に変換する;
d)約14容量の水を添加し、スラリーをゆっくりと加熱還流させ、約65℃〜約75℃で約10容量の溶媒を留去した後、反応物を約35℃まで冷却する;
e)固体を濾過により単離し、室温にて固体を水で洗浄し、濾過して固体を乾燥させる。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、化合物、(trans−4−(メチル(7−トシル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)−シクロヘキシル)メタン−スルホン酸カリウム塩(中間体H)
【化12】
の調製方法であり、以下の工程を含む:
a)trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸(中間体C)及び4−クロロ−7−トシル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(SigmaAldrich)を、アセトニトリル水溶液中、約75℃で塩基と反応させる;
b)約80℃に加温し、約70%の有機溶媒を蒸留により除去する;
c)n−ブタノールを添加し、下側の水層を廃棄する;
d)残った有機物を加熱し、n−ブタノールを添加する;
e)冷却して結晶化固体、中間体Hを得る。
【0022】
本発明のさらに別の態様は、以下の工程を含む、中間体Hの調製方法である:
a)trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸(中間体C)及び4−クロロ−7−トシル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(SigmaAldrich)を、約40%のアセトニトリル水溶液中、約75℃で約4時間炭酸カリウムと反応させる;
b)約80℃に加温し、約70%の有機溶媒を蒸留により除去する;
c)n−ブタノールを添加し、下側の水層を廃棄する;
d)残った有機物を約65℃に加熱し、n−ブタノールを添加する;
e)反応物を約3時間かけて約15℃に冷却し、結晶化固体、中間体Hを得る。
【0023】
本発明のさらに別の態様は、以下の工程を含む、式1の化合物、N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}−メタンスルホンアミドの調製方法である:
a)(trans−4−(メチル(7−トシル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)−シクロヘキシル)メタンスルホン酸カリウム塩(中間体H)を塩化チオニルと、THF及びDMFを含む有機溶媒中で反応させ、約35℃で約4時間加熱する;
b)反応物を約0℃まで冷却し、温度を約15℃未満に維持しながら水を徐々に添加する;
c)温度を約15℃未満に維持しながら反応物を20%メチルアミン水溶液に添加する;
d)反応物を約35℃に加温し、相分離させ、下側の水層を廃棄する;
e)KOH水溶液を添加し、約4時間加熱還流する;
f)水を加え、内部温度が約70℃になるまで溶液を蒸留する;
g)スラリーを約10℃まで冷却する;
h)濾過により固体(式1の化合物)を単離する。
【0024】
本発明の別の態様は、以下の工程を含む、式1の化合物のマレイン酸塩を調製する方法である:
a)N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}−メタンスルホンアミドをマレイン酸と水中で反応させる;
b)反応物を約60℃に加熱する;
c)溶液を約55℃に冷却し、先に調製した式1の化合物のマレイン酸塩を種晶として添加する;
d)毎時約1℃の速度で約37℃まで、次いで毎時約3℃の速度で約5℃まで冷却する;
e)固体を濾過により単離する。
【0025】
本発明の別の態様は、(4−(メチルアミノ)フェニル)メタンスルホン酸;trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸;trans−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸カリウム塩;trans−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸ナトリウム塩;((trans)−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)−メタンスルホニルクロリド;(trans−4−(メチル(7−トシル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)−シクロヘキシル)メタン−スルホン酸カリウム塩;及び(trans−4−(メチル(7−トシル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)−シクロヘキシル)メタン−スルホン酸ナトリウム塩から選択される化合物である。
【0026】
さらに別の態様は、化合物(4−(メチルアミノ)フェニル)メタンスルホン酸である。さらに別の態様は、化合物trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)−メタンスルホン酸である。さらに別の態様は、化合物trans−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸カリウム塩である。さらに別の態様は、化合物trans−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸ナトリウム塩である。さらに別の態様は、化合物((trans)−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)−メタンスルホニルクロリドである。さらに別の態様は、化合物(trans−4−(メチル(7−トシル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)−シクロヘキシル)メタン−スルホン酸カリウム塩である。さらに別の態様は、化合物(trans−4−(メチル(7−トシル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)−シクロヘキシル)メタン−スルホン酸ナトリウム塩である。
【0027】
本発明の別の態様は、獣医学的に許容される担体及び本明細書に記載の方法から調製される式1の化合物を含む動物薬組成物である。
【0028】
本発明のさらに別の態様は、哺乳動物における、アレルギー反応、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、掻痒症、喘息、ならびに慢性喘息、難治性喘息、遅発性喘息、気道過敏性気管支炎、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、塵喘息、再発気道閉塞、及び慢性閉塞性肺疾患から選択されるその他の閉塞性気道疾患、関節リウマチ、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、水疱性類天疱瘡、及び脱毛症から選択される自己免疫疾患、乳癌、骨癌、前立腺癌、膀胱癌、メラノーマ、肥満細胞癌、扁平上皮細胞癌、リンパ腫、及び白血病から選択されるがん、炎症性腸疾患、好酸性胃腸炎、肥満細胞症、角膜結膜炎、ならびに乾性角結膜炎から選択される障害または病態を抑制または治療するために、本明細書に記載の方法から調製される式1の化合物を使用する方法またはその使用である。
【0029】
本発明のさらに別の態様は、哺乳動物における、アレルギー反応、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、掻痒症、喘息、ならびに慢性喘息、難治性喘息、遅発性喘息、気道過敏性気管支炎、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、塵喘息、再発気道閉塞、及び慢性閉塞性肺疾患から選択されるその他の閉塞性気道疾患から選択される障害または病態を抑制または治療するために、本明細書に記載の方法から調製される式1の化合物を使用する方法またはその使用である。好ましいその使用方法または使用には、アレルギー反応、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、及び掻痒症から選択される障害または病態の抑制または治療が含まれる。
【0030】
本発明のさらに別の態様は、本明細書に記載の方法から調製される式1の化合物を、それを必要とする哺乳動物に投与するための医薬品の調製に使用することである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】結晶形態B(A)の例示的なPXRDパターンを示す。
図2】結晶形態B(参照標準)を重畳している形態B(A)の例示的なPXRDパターンを示す。
図3】結晶形態Cの例示的なPXRDパターンを示す。
図4】N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]−シクロヘキシル}メタンスルホンアミドマレイン酸塩の結晶形態B(A)の比較PXRD。
【発明を実施するための形態】
【0032】
式1の化合物、N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}−メタンスルホンアミド、その中間体、及びそれらの獣医学的に許容される塩に関して、以下の用語は、以下に定義される意味を有する。
【0033】
定義
本明細書で使用される場合、「約」とは、指定値の実験誤差以内(例えば、平均の95%信頼区間内)または指定値の10%以内のいずれか大きい方である変数の指定値及び変数の全値を指す。
【0034】
疾患を「抑制する」、「治療する」、または疾患の「治療」には、(1)疾患を予防すること、すなわち、疾患に罹患するまたは素因を有する可能性があるが、疾患の症状/徴候がまだ生じていないか、または発症していない哺乳動物に疾患の臨床症状または徴候を発症させないようにすること;(2)疾患を阻害すること、すなわち、疾患またはその臨床症状/徴候の発症を停止または低減すること;または(3)疾患を緩和すること、すなわち、疾患またはその臨床症状/徴候の退縮を引き起こすことを含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、「哺乳動物」とはヒト及び非ヒト動物を指す。動物(複数可)には、家畜と「コンパニオンアニマル」の両方が含まれる。語句「コンパニオンアニマル(単数複数を問わない)」とは、ペットとして飼われている動物を指す。コンパニオンアニマルの例としては、ネコ、イヌ、及びウマが挙げられる。用語「家畜」とは、食品または繊維などの製品を作るため、または労働のために農業環境で飼育または育てられた動物を指す。いくつかの実施形態では、家畜はヒトが消費するのに適したものである。家畜の例としては、ウシ、ヤギ、ウマ、ブタ、子羊を含むヒツジ、及びウサギ、ならびにニワトリ、アヒル、及びシチメンチョウなどの鳥類が挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「パーセント」(%)とは、個々のパーセント値を指す。水性有機溶媒のような液体中の%(体積/体積%またはv/v%)を指す場合、%は溶液の全体積中の溶媒の体積%である(例えば、5%NMP=5mLのNMPと95mLの水)。液体中の固体の%(重量/体積%またはw/v%)を指す場合、%値は、溶液の全体積中の固体の重量と解釈され、100mL溶液中の溶質のグラム数を指す。固体を指す場合、(重量%またはw/w%)とは、固体組成物の総重量(質量)に対する1つの成分の重量(質量)を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」とは、疾患の治療のため哺乳動物に投与したときに、そのような治療が疾患に対して有効となるのに十分な化合物の量を指す。「治療有効量」は、化合物、疾患及びその重症度、ならびに治療される哺乳動物の年齢、体重などに応じて決定されることになる。本発明の場合、治療有効量は、約0.4mg/kg〜約0.6mg/kgである。
【0038】
「獣医学的に許容される」とは、非ヒト動物での使用に適していることを意味する。
【0039】
同じ分子式を有しているが、原子の結合の性質もしくは順序、または原子の空間配置が異なる化合物を「異性体」と呼ぶ。原子の空間配置が異なる異性体を「立体異性体」と呼ぶ。当業者であれば、式1の化合物がシス型及びトランス型のアキラルなジアステレオマーとして存在する可能性があることを理解されよう。具体的には、本発明は、N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}−メタンスルホンアミドという化学名を有する式1の化合物
【化13】
またはその獣医学的に許容される塩の調製方法を提供する。
【0040】
本発明の範囲には、式1のものを含む、本明細書に記載の中間体のすべての異性体(例えば、シス型、トランス型のアキラルなジアステレオマー)単独、ならびにその任意の混合物が包含される。
【0041】
立体異性体混合物、例えばジアステレオマーの混合物は、既知の方法で適切な分離方法によって、それぞれの対応する異性体に分離することができる。ジアステレオマー混合物は、例えば、分別結晶化、クロマトグラフィー、溶媒分配、及び同様の手順によって個々のジアステレオマーに分離することができる。この分離は、いずれか1つの出発化合物の段階で、または式1の化合物自体に行うことができる。
【0042】
投与経路
動物の障害を治療するための治療的使用において、本発明の化合物(式1)またはその動物薬組成物を経口投与、非経口投与、局所投与、直腸投与、経粘膜投与、または腸内投与することができる。非経口投与には、全身作用を生じさせるための間接注射または罹患領域への直接注射が含まれる。局所投与には、局所塗布によって容易に到達可能な皮膚または器官、例えば、目または耳の治療が含まれる。これにはまた、全身作用を生じさせる経皮送達を含む。直腸投与には坐剤の形態が含まれる。好ましい投与経路は、経口及び非経口である。
【0043】
動物薬用の塩
式1の化合物は、その天然形態で、または塩として使用することができる。安定な非毒性の酸性塩または塩基性塩の形成が望ましい場合、獣医学的に許容される塩としての化合物の投与が適している場合がある。式1の化合物の獣医学的に許容される塩として、酢酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エトグルタル酸塩(etoglutarate)、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2−ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、及びトリフルオロ酢酸塩が挙げられる。好ましい塩はマレイン酸塩である。
【0044】
組成物/製剤
本発明の動物薬組成物は、当技術分野で周知の方法、例えば従来的な混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、粉末化、乳化、カプセル化、封入、凍結乾燥処理、または噴霧乾燥によって製造することができる。本発明に従って使用される動物薬組成物は、活性化合物の製剤への加工を容易にし、製薬に使用することができる賦形剤及び補助剤を含む1種以上の獣医学的に許容される担体を使用して従来の方法で製剤化することができる。適切な製剤は、選択された投与経路に依存する。獣医学的に許容される賦形剤及び担体は一般に当業者に既知であり、よってこれは本発明に含まれる。このような賦形剤及び担体は、例えば、「Remingtons Pharmaceutical Sciences」Mack Pub.Co.,New Jersey(1991)に記載されている。本発明の製剤は、短時間作用性、高速放出性、長時間作用性、及び徐放性に設計することができる。したがって、動物製剤はまた、制御放出用または遅延放出用に製剤化することもできる。
【0045】
用量
本発明での使用に適した動物薬組成物には、意図された目的、すなわち障害または疾患の抑制または治療を達成するのに十分な量で活性成分が含有されている組成物を含む。より具体的には、治療有効量とは、疾患の症状/徴候を予防、緩和、もしくは改善するか、または治療される対象の生存を延長させるのに有効な化合物の量を意味する。動物薬組成物及びその単位剤形中の活性成分(本発明の式1の化合物)の量は、投与方法、化合物固有の効力、及び所望の濃度に応じて幅広く変更または調整することができる。治療有効量の決定は、当業者が十分に行える範囲である。一般に、活性成分の量は、組成物の0.01重量%〜99重量%の範囲となる。
【0046】
一般に、治療有効量の活性成分の用量は、約0.01mg/kg体重/日〜約100mg/kg体重/日、好ましくは約0.1mg/kg体重/日〜約10mg/kg体重/日、より好ましくは約0.3mg/kg体重/日〜約3mg/kg体重/日、さらにより好ましくは約0.3mg/kg体重/日〜約1.5mg/kg体重/日、さらにより好ましくは約0.4mg/kg体重/日〜約0.6mg/kg体重/日の範囲となる。好ましい用量レジメンは、約0.4mg/kg体重/日〜約0.6mg/kg体重/日を最大14日間経口投与し、その後、維持療法として1日1回約0.4mg/kg体重〜約0.6mg/kg体重の用量で経口投与することである。式1の化合物のマレイン酸塩の錠剤強度は、投与量中、3.6mg、5.4mg、及び16mgと規定される。このような錠剤は、1日1回または1日2回の投与で約0.4〜0.6mg/kg体重という投与量を維持するように様々な比率で投与することができる。用量は、各対象に要求される条件、及び治療される障害または疾患の重症度に応じて変更できるものと理解されるべきである。利便上、単回投与で、あるいは適切な間隔で投与される分割投与として、例えば1日あたり2回、3回、4回、またはそれ以上の分割量として望ましい量を与えてもよい。分割量自体を、例えば、複数回の大まかな間隔を空けた個別の投与にさらに分割してもよい。例えば、これは、吸入器からの複数回の吸入、または目の中への複数滴の点眼によるものなどである。
【0047】
また、望ましい血漿濃度を迅速に達成するために、初回に投与する用量が上記の上限レベルを上回ってもよいものと理解されるべきである。他方で、初回用量を最適値より小さくし、治療期間中に特定の状況に応じて1日用量を徐々に増加させてもよい。必要に応じて、1日量はまた、複数回の投与量、例えば、1日あたり2〜4回に分割することができる。
【0048】
医療及び獣医学の用途
本発明の化合物は、Janusキナーゼ−1(JAK−1)、Janusキナーゼ−2(JAK−2)、及びJanusキナーゼ−3(JAK−3)、特にJAK−1に対して有効性を有するJanusキナーゼ阻害剤(JAK−i)である。したがって、がん、喘息、アトピー性皮膚炎、自己免疫障害、掻痒の抑制、慢性呼吸器疾患、及び免疫抑制/免疫調節が望ましい他の適応症の治療薬として有用である。好ましい用途は、イヌにおけるアレルギー性皮膚炎に伴う掻痒の抑制及びアトピー性皮膚炎の抑制である。
【0049】
式1の化合物は、単独で、または哺乳動物の免疫系を調節する1種以上の追加薬剤、もしくは抗炎症剤と組み合わせて、獣医学的に許容される形態で投与することができる。これらの薬剤として、シクロスポリンA、ラパマイシン、FK−506(タクロリムス)、レフルノミド、デオキシスペルグアリン、ミコフェノール酸、アザチオプリン、ダクリズマブ、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、及び抗炎症性ステロイド(例えば、プレドニゾロンまたはデキサメタゾン)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの薬剤は、当業者に既知の標準的な獣医学的慣例に従って、同一または別々の剤形の一部として、同一または異なる投与経路によって、及び同一または異なる投与スケジュールで投与することができる。
【0050】
JAK−3を含むJAKキナーゼは、小児癌の最も一般的な形態である急性リンパ芽球性白血病をもつ小児由来の原発性白血病細胞において多量に発現し、研究によれば、ある特定の細胞でのSTAT活性化がアポトーシスを制御するシグナルと相関している(Demoulin et al.,(1996),Mol.Cell.Biol.16:4710−6;Jurlander et al.,(1997),Blood 89:4146−52;Kaneko et al.,(1997),Clin.Exp.Immun.109:185−193;and Nakamura et al.,(1996),J.Biol.Chem.271: 19483−8)。JAKキナーゼはリンパ球の分化、機能、及び生存にとって重要であることも知られている。特に、JAK−3は、リンパ球、マクロファージ、及び肥満細胞の機能に不可欠な役割を果たす。このJAKキナーゼの重要性を考慮すると、JAK経路を調節する化合物は、JAK−3のために選ばれたものを含め、リンパ球、マクロファージ、または肥満細胞の機能が関与する疾患または病態の治療に有用であり得る(Kudlacz et al.,(2004)Am.J.Transplant 4:51−57;Changelian(2003)Science 302:875−878)。
【0051】
JAK経路の標的化またはJAKキナーゼの調節が治療上、有用であると企図される病態として、関節炎、喘息、自己免疫疾患、がんまたは腫瘍、糖尿病、ある種の眼疾患、眼障害または眼病態、炎症、腸炎症、アレルギー、神経変性疾患、乾癬、移植拒絶反応、及びウイルス感染が挙げられる。JAKの阻害が有益であり得る病態について、以下でさらに詳細に考察する。
【0052】
このように、式1の化合物またはその獣医学的に許容される塩及び動物薬組成物を使用して、種々の病態または疾患を治療することができるが、それらは、
慢性もしくは難治性喘息、遅発性喘息、気道過敏性気管支炎、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、塵喘息、再発気道閉塞、及び慢性閉塞性肺疾患を含む、喘息及びその他の閉塞性気道疾患;
単臓器または単細胞型自己免疫障害に指定されるもの、例えば、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血の自己免疫性萎縮性胃炎、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性睾丸炎、自己免疫性血小板減少症、交感神経性眼炎、潰瘍性大腸炎、及び膜性糸球体症など、全身性自己免疫疾患に関与すると指定されるもの、例えば、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、及び水疱性類天疱瘡などを含む自己免疫疾患または障害、ならびに、自己免疫性脱毛症及び甲状腺炎を含むO細胞(体液性)に基づき得るまたはT細胞に基づき得る別の自己免疫疾患;
がんまたは腫瘍、例えば、消化管/胃腸管癌、結腸癌、肝臓癌、肥満細胞腫瘍及び扁平上皮細胞癌を含む皮膚癌、乳癌及び乳腺癌、卵巣癌、前立腺癌、リンパ腫、急性骨髄性白血病及び慢性骨髄性白血病を含む白血病、腎臓癌、肺癌、筋肉癌、骨癌、膀胱癌、脳癌、口腔黒色腫及び転移性黒色腫を含む黒色腫、カポジ肉腫、多発性骨髄腫を含む骨髄腫、骨髄増殖性障害、増殖性糖尿病性網膜症、ならびに固形腫瘍を含む血管新生関連疾患;
眼の自己免疫疾患、角結膜炎、及び乾性角結膜炎(ドライアイ)を含む眼疾患、眼障害、または眼病態;
潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、セリアック病、直腸炎、好酸球性胃腸炎、及び肥満細胞症を含む、腸の炎症、アレルギー、または病態;
アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、強皮症、掻痒症、及び他の掻痒病態を含む、皮膚の疾患、病態、または障害;
ウマの蚊刺過敏症、夏癬、及びスイートイッチなどの馬アレルギー疾患を含む哺乳動物のアレルギー性皮膚炎を含むアレルギー反応などである。
【0053】
別の実施形態は、JAK−1、JAK−2、JAK−3、及び/またはTyk−2を含むJAK酵素を阻害する方法であって、JAK酵素を非治療量または治療有効量の式1の化合物と接触させることを含む方法を提供する。そのような方法は、in vivoまたはin vitroで行うことができる。in vitroでの接触には、種々の量または濃度での、選択された酵素に対する式1の化合物の有効性を決定するスクリーニングアッセイを含み得る。治療有効量の式1の化合物とのin vivoでの接触には、記載された疾患、障害、もしくは病態の治療、または接触を行う動物における臓器移植拒絶反応の予防を含み得る。JAK酵素及び/または宿主動物に対する式1の化合物の効果もまた、決定または測定することができる。JAK活性を決定する方法としては、WO1999/65908及びWO2007/012953に記載されるものが挙げられる。
【0054】
以下の反応スキームは、式1の化合物を調製するための一般合成手順を例示している。出発物質はすべて、これらのスキームに記載された手順によって、または当業者に既知の手順によって調製される。
【0055】
以下の非限定的な試薬を使用して、本明細書に記載の中間体及び式1の化合物を調製した:テトラヒドロフラン(THF);N,N−ジメチルホルムアミド(DMF);N,N−ジメチルアセトアミド(DMA);N−メチルピロリドン(NMP);1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エン(DBU)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジイソプロピルホルムアミド(DIPF)、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、水酸化カリウム(KOH)、及びアセトニトリル(ACN)。メチルアミンの40%水溶液は、業者(例えば、SigmaAldrich)から購入することができる。中間体G(4−クロロ−7−トシル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン)もSigmaAldrichから購入することができる。
【0056】
スキーム1:中間体(C)、trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)−メタンスルホン酸の調製。
【化14】
【0057】
中間体a1を出発物質として、アセトニトリル、アセトン、水混和性アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)、または水混和性エーテル(例えば、THF、ジエチルエーテル、ジオキサンなど)などの有機溶媒を0〜約50%含有する水溶液中で、Yを亜硫酸塩(例えば、Mはカリウム、ナトリウム、またはカルシウムである)で置換し、中間体a2を調製する。Yは、亜硫酸塩による求核置換を受けやすい任意の官能基であってよく、例えば、Yは、Cl、Br、I、O−トシル、O−メシル、O−トリフラートなどであり得る。XはBrであるが、Iであってもよい。好ましい出発物質は、市販されている4−ブロモベンジルブロミド(すなわち、X及びYが両方ともBrである中間体a1)である。反応は約50℃から還流温度の間で行うことができる。4−ブロモベンジルブロミドを出発物質とし、本明細書に記載の反応条件下で亜硫酸ナトリウムと反応させると、(4−ブロモフェニル)メタンスルホン酸ナトリウム、中間体Aが得られる。
【0058】
次に、約5%〜約40%のメチルアミンを含有する水溶液中で、中間体Aの臭素を求核置換して中間体Bを調製する。銅触媒は、銅(0)または任意の銅(1)塩であってよく、触媒の充填量は約0.25mol%を超える任意の量であり得る。好ましい触媒は、約2mol%の銅(1)塩CuBrである。この反応は、約50℃超の温度で行うことができる。次いで、酸を加えて亜硫酸塩をプロトン化し、中間体Bを調製する。第3工程では、パラジウムを用いて温和な条件下で中間体Bを接触水素化し、トランス特異的な中間体Cを調製する。既知の科学文献(例えば、米国特許出願公開第2009−0143302号、米国特許第US4,424,213号、及びNair,M.G.,J.Med Chem.1983,26(2),pg.135)には、主としてシス特異的な幾何類似体を生成する、反応性の高い金属触媒(例えば、Rh、Pt、及びPtO)による4−置換N−アルキルアニリンの水素化について記載されている。好ましくは、水とメタノールの溶媒中で、炭素担持Pd(0)を用いて、加圧した水素ガス(約20psi〜約70psi)により水素化を行う。最終反応により、約70:30の(トランス:シス)比でトランス幾何構造体の中間体Cが生成される。水性アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)からの結晶化により、トランス特異的生成物を99%超まで精製することができる。別法として、Pd(0)触媒、またはPd(OH)などの酸化パラジウム(Pd(II))触媒を使用し、水素源としてギ酸またはギ酸塩を用いた水素移動条件下で中間体Cを中間体Bから調製することができる。
【0059】
スキーム2:式(1)の化合物の調製
【化15】
【0060】
第1の工程で、中間体Cを7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン類似体(中間体D1)と反応させてスルホン酸塩を調製する。好ましいD1中間体は、容易に入手可能な市販化合物である4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(中間体D、すなわちD1のWはClである)であり、これをカップリング反応に使用してスルホン酸塩(中間体(E))を調製する。中間体D類似体の官能基Wは、Clである必要はないが、容易に置換可能な任意の官能基(例えば、F、Br、I、O−トリフレート、O−メシル、O−トシルなど)であり得る。好ましい溶媒は、約5%のNMPまたはスルホランを含む水であるが、反応は、水のみで、または水混和性アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)、水混和性エーテル(THF、ジメチルエーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ジオキサンなど)、及び極性非プロトン性溶媒(例えば、アセトン、アセトニトリル、DMSO、DMFなど)を含む、約0〜50%の他の水混和性有機溶媒を添加して行うことができる。この別法には塩基も必要であり、これは炭酸カリウムが優先されるが、他の炭酸塩(例えば、リチウム、ナトリウム、またはセシウム)、水酸化物(リチウム、カリウム、ナトリウム、またはセシウム)、またはトリアルキルアミン(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなど)及び1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エン(DBU)などの有機塩基であってもよい。この反応の反応温度は、少なくとも約60℃〜約105℃である。好ましい温度は約98℃である。
【0061】
第2の工程は、塩化オキサリル、塩化ホスホリル、塩化チオニル、またはこの変換を生じさせることが知られている他の任意の試薬(例えば、五塩化リン、ホスゲン、トリホスゲンなど)を使用した、スルホニルクロリド(中間体F)への変換を経由し、スルホン酸塩(中間体E)を式1のメチルスルホンアミドに変換することである。この反応に好ましい溶媒はアセトニトリルまたはTHFであるが、塩化オキサリルまたは塩化ホスホリルと相溶性のある他の溶媒、及び他の塩化物試薬が、塩化メチレン、ジクロロエタン、DMF、DMA、NMP、DIPF、THF、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサンなどと同様に機能することが示されている。これらの溶媒、例えば、THFとDMA、THFとDIPFといった混合物も企図される。この反応は、好ましくは約0℃〜約20℃の温度で行われるが、この範囲に限定されない。好ましい反応温度は約10℃である。スルホニルクロリド(中間体F)を冷メチルアミンと反応させて式1のメチルスルホンアミドを生成する。好ましくは、メチルアミンは低温(約−15℃〜約0℃)であり、40%メチルアミン水溶液であるが、気体状のメチルアミン、及び有機溶媒(THFまたはエタノールなど)に溶解したメチルアミンも機能し得る。
【0062】
トシル中間体を用いて式1の化合物を調製する代替合成法
この別法による変換を以下のスキーム3に示す。中間体Cを中間体G(市販化合物、4−クロロ−7−トシル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;すなわち、Tsはトシルである))と反応させ、カップリングされた中間体H(CAS1208319−30−5)を得る。この反応は、好ましくは、アセトニトリル/水の40/60混合物中で行われるが、2−プロパノール、THF、及びジオキサンなどの他の有機溶媒を使用してもよい。反応には塩基が必要であり、好ましくは少なくとも1.5当量の炭酸カリウムであるが、他の有機塩基(例えば、炭酸塩、トリアルキルアミン、DBUなど)を使用してもよい。この反応は、好ましくは約75℃以上で行われるが、約50℃の低温で行ってもよい。中間体Hを、n−ブタノール/水の混合物または水単独からの結晶化により単離する。
【0063】
スキーム3:トシル中間体Hの調製
【化16】
【0064】
以下の手順の工程及び実施例は、本発明の式1の中間体及び式1の化合物の調製方法を例示したものである。
【実施例】
【0065】
中間体A:(4−ブロモフェニル)メタンスルホン酸ナトリウム
4−ブロモベンジルブロミド(500g、2.00mol)及び亜硫酸ナトリウム(296g、1.15eq)を入れたフラスコに、水(1.25L)及びアセトニトリル(220mL)を添加した。スラリーを約4時間撹拌しながら約80℃に加熱した後、約10℃まで冷却した。固体を濾過により単離し、減圧乾燥させ、547gの白色固体(中間体(A))を得た。H NMR (DO, 600 MHz): 7.44 (d, 2H), 7.18 (d, 2H), 4.00 (s, 2H)。MS:M+H−Na=251。
【0066】
中間体B:(4−(メチルアミノ)フェニル)メタンスルホン酸
(4−ブロモフェニル)メタンスルホン酸ナトリウム(中間体A、1.00kg、366mmol)を入れたフラスコに、臭化銅(I)(10.3g)、水(1.2L)、及び40%メチルアミン水溶液(0.85L)を添加した。フラスコを密封し、反応物を約90℃で約16時間加熱した。反応物を約65℃に冷却し、クエン酸(68g)水溶液(130mL)を添加して、約20分間撹拌して銅残渣を除去した。反応物に水(1.4L)を添加し、濃塩酸水溶液でpHを3.2に調整した。白色スラリーを約15℃に冷却した後、生成物を濾過により単離した。生成物を水(0.7L)で洗浄した後、減圧乾燥させ、630gの白色固体(中間体(B))を得た。H NMR (DO, 600 MHz): 7.42 (d, 2H), 7.31 (d, 2H), 4.07 (s, 2H), 2.93 (s, 3H)。MS:M+H=202。
【0067】
中間体C:trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸
(4−(メチルアミノ)フェニル)メタンスルホン酸(100gm、498mmol、中間体B)を入れた水素化容器に、水(375mL)、メタノール(125mL)、及び炭素担持10%パラジウム(50%湿潤品、6g)を加えた。反応物を約70℃に加熱し、水素(30psi)圧力を約16時間維持した。触媒を濾過により除去した。反応物を減圧下で容量180mLまで濃縮した。この溶液にエタノール800mLを添加した。反応物を約45℃まで加熱した後、約4時間かけて約0℃に冷却した。生成物を濾過により単離し、エタノール(100mL)で洗浄し、減圧乾燥させて、45gの白色固体(中間体(C))を得た。H NMR (DO, 600 MHz): 2.91 (s, m), 2.71 (d, 2H), 2.54 (s, 3H), 1.99 (dd, 4H), 1.70 (m, 1H), 1.28 (dq, 2H), 1.05 (dq, 2H);M+H=208
【0068】
中間体E:((trans)−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)−メタンスルホン酸カリウム塩
trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸(5.0g、24mmol、中間体C)、4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(3.5g、22.8mmol、中間体D(WがClである中間体D1))、及び炭酸カリウム(5.77g、41mmol)を入れたフラスコに水(27mL)を添加した。混合物を約98℃で約12時間加熱し、約30℃まで冷却し、濾過した。固体をメタノール(32mL)で洗浄した。これを約60℃で減圧乾燥させた後、7.46gの白色粉末(中間体(E))を得た。H NMR (DMSO−d6, 600 MHz): 11.7 (s, 1H), 8.07 (s, 1H), 7.11 (d, 1H), 6.51 (s, 1H), 4.55 (br s, 1H), 3.14 (s, 3H), 2.37 (d, 2H), 2.10 (br d, 2H), 1.71 (m, 1H), 1.64 (m, 4H), 1.09 (m, 2H)。M+H−K=324
【0069】
式1:N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミドの調製
DMF(0.5mL)またはDIPF(5mL)を加えたアセトニトリル(30mL)またはTHF(100mL)中の、((trans)−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸カリウム塩(中間体E)(10.0g、27.6mmol)のスラリーを約10℃に冷却した。これに塩化オキサリル(45mmol、3.9mL、5.7g(1.65当量))または塩化ホスホリル(49.68mmol、4.6mL、1.8当量)をゆっくりと添加し、スラリーを約10℃に維持し、少なくとも約1時間〜約3時間撹拌し、((trans)−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)−メタンスルホニルクロリド中間体(中間体F)を調製した。反応物を、冷却した(約−10℃)メチルアミン水溶液(40%、30mL、330mmol)にゆっくりと添加した。添加が完了したら、水(140mL)を加え、反応物を約2時間かけてゆっくりと約65℃〜約75℃に加温する間に、約100mlの溶媒を蒸留し、その後、約1時間かけて約35℃まで徐々に冷却し、固体を濾過により単離した。さらに固体を室温にて40mLの水で洗浄し、生成物を濾過により単離した。固体を減圧乾燥させ、8.3gの白色固体(式1の化合物)を得た。H NMR (DMSO−d6, 600 MHz): 11.6 (s, 1H), 8.09 (s, 1H), 7.13 (t, 1H), 6.54 (s, 1H), 4.68 (br s, 1H), 3.17 (s, 3H), 2.96 (d, 3H), 2.59 (d, 2H), 2.05 (br d, 2H), 1.85 (m, 1H), 1.69 (m, 4H), 1.29 (m, 2H)。M+H=338。
【0070】
別法として、トシル保護したスルホン酸ナトリウムを用いて式1の化合物を調製することができる。
【0071】
中間体H:(trans−4−(メチル(7−トシル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)−シクロヘキシル]メタンスルホン酸カリウム塩
trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸(中間体C、44.0g、212mmol)及び4−クロロ−7−トシル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(60.0g、195mmol、中間体G)を入れたフラスコに、水(120mL)、アセトニトリル(90mL)、及び炭酸カリウム(70.8g、507mmol)を添加した。溶液を約75℃で約4時間加熱した後、約80℃まで加温し、約65mLの溶媒を蒸留により除去した。反応物に、n−ブタノール(300mL)及び水(40mL)を添加した。反応物を約70℃に加温し、下側の水層を除去し、廃棄した。残った有機物を約70℃に加熱し、追加量のn−ブタノール(600mL)を添加した。溶液を約3時間かけて約15℃に冷却した。この間に結晶化した生成物を、濾過により単離し、n−ブタノール(100mL)で洗浄した。生成物を約60℃で減圧乾燥させ、94.7gの白色粉末(中間体H)を得た。H NMR (DMSO−d6, 600 MHz): 8.22 (s, 1H), 7.97 (d, 2H), 7.59 (d, 1H), 7.44 (d, 2H), 6.80 (br s, 1H), 4.7 (br s, 1H), 3.12 (s, 3H), 2.37 (s, 3H), 2.35 (d, 2H), 2.07 (m, 2H), 1.74 (m, 1H), (1.60 (m, 4H), 1.08 (m, 2H)。MS M+H−Na=479
【0072】
中間体Hからの式1の化合物の調製
フラスコに、トシル硫酸カリウム(中間体H)(70g、135mmol)、THF(490mL)、DMF(1g、13mmol)、及び塩化チオニル(29.1g、244mmol)を入れた。反応物を3時間かけて35℃に加熱した後、約0℃まで冷却した。温度を約15℃未満に維持しながら水(2mL)を徐々に添加した。メチルアミン水溶液(20%水溶液、188mL)を約−5℃に冷却した。温度が約10℃を超えないような速度で、冷却したメチルアミン溶液に反応物を添加した。反応物を約35℃に加温し、下側の水層を廃棄した。残った有機相に45%水酸化カリウム水溶液(38g、305mmol)を添加した。反応物を約4時間加熱還流した。反応物に追加の水(450mL)を加え、この溶液を内部温度が約75℃に達するまで蒸留した。得られたスラリーを約10℃に冷却し、生成物を濾過により単離した。生成物を減圧乾燥させて39gの白色固体(式1)を得た。1H NMR (DMSO−d6, 600 MHz): 11.6 (s, 1H), 8.09 (s, 1H), 7.13 (t, 1H), 6.54 (s, 1H), 4.68 (br s, 1H), 3.17 (s, 3H), 2.96 (d, 3H), 2.59 (d, 2H), 2.05 (br d, 2H), 1.85 (m, 1H), 1.69 (m, 4H), 1.29 (m, 2H)。M+H=338。
【0073】
式1の化合物塩の形成、実施例1
フラスコに、マレイン酸(9.5g、81.8mmol)、N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミド(式1の化合物;25g、74.1mmol)、及び水(250mL)を入れた。これを約60℃に加熱すると、物質は透明な溶液になった。溶液を約55℃に冷却し、先に単離した式1の化合物のマレイン酸塩(25mg、0.7mmol)を種晶として添加した。反応物を、毎時約1℃の速度で約37℃まで、次いで毎時約3℃の速度で約5℃まで冷却した。生成物を濾過により単離し、水(100mL)で洗浄した。これにより、30.9gの白色物質、N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミドマレイン酸塩を一水和物、形態B(A)として得た。1H NMR (600 MHz, DMSO−d6) 12.0 (s, 1H), 8.18 (s, 1H), 7.25 (br s, 1H), 6.90 (q, 1H), 6.64 (br s, 1H), 6.19 (s, 2H), 4.55 (br s, 1H), 3.20 (s, 3H), 2.95 (d, 2H), 2.58 (d, 3H), 2.05 (d, 2H), 1.85 (m, 1H), 1.72 (br s, 4H), 1.30 (m, 2H)。
【0074】
式1の化合物塩の形成、実施例2
フラスコに、マレイン酸(14.45g、124.5mmol)、N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミド(式1の化合物;40g、118.5mmol)、及び水(400mL)を入れた。これを約65℃に加熱すると、物質は透明な溶液になった。溶液を約50℃に冷却し、先に単離した式1の化合物のマレイン酸塩(400mg、0.8mmol)を種晶として添加した。反応物を、毎時約2℃の速度で約40℃まで、次いで毎時約5℃の速度で約5℃まで冷却した。生成物を濾過により単離し、冷水(160mL)で洗浄した後、相対湿度42%で空気乾燥させた。これにより、50.0gの白色物質、N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミドマレイン酸塩を一水和物、形態B(A)として得た。
【0075】
式1の化合物塩の形成、実施例3
N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミド(式1の化合物)及びマレイン酸(1.1当量;0.378kg/kgの式1の化合物)を入れたタンクに、50〜65℃の水(10L/kg)を加え、混合物を固体が溶解するまで55〜60℃で撹拌した。この溶液を清澄化して予熱したタンクに受け、再び55〜60℃で撹拌して透明な溶液を得た。結晶化混合物を45℃に冷却し、予め単離した形態Cの生成物を種晶として添加する。37℃に達するまで1℃/時、次いで0〜5℃まで3℃/時の冷却が得られるようにジャケットを調整した。短時間の撹拌後、生成物を濾取し、冷水(5L/kg)で洗浄した。カールフィッシャー法による水分含量が約4%になるまで、調節した低露点窒素(40℃)で生成物(形態C)を乾燥させた。
【0076】
結晶形態
N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]−シクロヘキシル}メタンスルホンアミドマレイン酸塩のいくつかの結晶形態が既知であり、これを図1図3に示す。形態Aは、米国特許第US8,987,283号に記載されており、無水物である。形態Bは一水和物である。形態A及び形態Bは水分子により化学的に異なるので、厳密な多形性という意味では多形体ではないため、より一般的な用語として形態または結晶形態を使用する。形態B(A)は、主として形態Bであるが、少量画分の無水物(形態A)を含む場合がある。実施例2の形態B(A)のPXRDを図1に示し、ピーク位置、面間隔d、及び2シータ値を表1に示す。N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]−シクロヘキシル}メタンスルホンアミドマレイン酸塩の定量化に、形態B(A)に対する参照標準物質を使用する(Apoquel)。B(A)の参照標準物質と実施例2の重畳PXRDスキャンを図2に示す。形態Cは、相対湿度に応じて化学量論的に変化する水和物形態であり、そのPXRDを図3に示し、ピーク位置、面間隔d、及び2シータ値を表2に示す。
【0077】
US8,987,283及びUS6,890,929に記載の方法に従って調製されたN−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]−シクロヘキシル}−メタンスルホンアミドマレイン酸塩(Lot X)から得た、比較形態B(A)のPXRDパターンを図4に、ピーク位置、面間隔d、及び2シータ値を表3に示す。
【0078】
X線回折図は、40kV及び40mA(15mA−LotX)、K2a波長1.5406オングストロームで稼働する固定スリット及びCu源と連動するLynxEye検出器を備えたBruker AXS[Coventry,UK]Endeavor D4を使用して得た。この回折図は、2シータ角度3〜50(40−LotX)度の領域で得た。ステップサイズは、2シータ角度0.020(0.030−LotX)度であり、ステップごとの取得時間は0.5秒であった。取得の間、試料ホルダーを20rpmで回転させた。分析対象面が水平になるようにバックグラウンドゼロのシリカウェハ上に固体を薄く広げることによって分析用の試料を作製した。データは、Bruker AXSから入手したEVAソフトウェアパッケージで分析した。
【0079】
熟練した結晶学者であれば理解しているように、本明細書の表及び図で報告する様々なピークの相対強度は、X線ビーム内での結晶の配向効果または分析する物質の純度または試料の結晶化度などのいくつかの要素に応じて変動する可能性がある。PXRDのピーク位置もまた、試料高さの変動に応じて変化する可能性があるが、ピーク位置は、実質的に表に定義されたままである。熟練した結晶学者はまた、異なる波長を用いた測定値には、ブラッグ方程式nA=2ci sinθに従って異なるシフトが生じることを理解しているであろう。そのような別の波長を使用して生成された別のPXRDパターンは、本発明の結晶物質のPXRDパターンの別の代表例であるとみなされるため、本発明の範囲内である。
【0080】
表1.N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]−シクロヘキシル}メタンスルホンアミドマレイン酸塩の結晶形態B(A)のPXRDピークデータ
【表1】
【0081】
表2.N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]−シクロヘキシル}メタンスルホンアミドマレイン酸塩の結晶形態CのPXRDピークデータ
【表2】
【0082】
表3.N−メチル−1−{trans−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]−シクロヘキシル}メタンスルホンアミドマレイン酸塩の結晶形態B(A)の比較PXRDピークデータ
【表3】
本発明の態様
態様1
式1
【化17】
の化合物またはその獣医学的に許容される塩の調製方法であって、
a)化合物である、trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸を、水または水性有機溶媒中で、7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン類似体、さらに塩基と、反応温度約60℃〜約105℃で反応させ、スルホン酸塩を調製すること;
b)有機溶媒中で前記スルホン酸塩をスルホニルクロリド中間体に変換すること;及び
c)前記スルホニルクロリド中間体をメチルアミン冷水溶液と反応させることにより、前記スルホニルクロリド中間体を式1の化合物に変換することを含む、前記方法。
態様2
工程(a)において、前記7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン類似体は、4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンであり、前記反応は、水または5%N−メチルピロリドンまたはスルホランである水性有機溶媒中で行われ、前記塩基は炭酸カリウムであり、前記反応温度は約12時間、約98℃である、態様1に記載の方法。
態様3
工程(b)において、前記スルホン酸塩から前記スルホニルクロリド中間体への変換は、前記スルホン酸塩を塩化オキサリル、塩化チオニル、または塩化ホスホリルと、有機溶媒中で反応させることにより調製される、態様1に記載の方法。
態様4
前記有機溶媒がアセトニトリルまたはテトラヒドロフランを含み、前記反応温度が約0℃〜約20℃の範囲である、態様3に記載の方法。
態様5
前記有機溶媒が、ジメチルアセトアミド、ジイソプロピルホルムアミド、またはジメチルホルムアミドをさらに含む、態様4に記載の方法。
態様6
前記有機溶媒が、テトラヒドロフラン及びジイソプロピルホルムアミドを含む、態様5に記載の方法。
態様7
前記メチルアミン水溶液が約40%であり、約−10℃である、態様1に記載の方法。
態様8
前記スルホニルクロリド中間体を前記メチルアミン冷溶液に添加した後に、前記反応物に水を添加することをさらに含む、態様7に記載の方法。
態様9
前記反応物をゆっくりと加熱還流させた後、前記溶媒を温度約65℃〜約75℃で留去し、得られた固体を約35℃まで冷却した後、前記固体を濾過し、水で洗浄し、濾過し、乾燥させる、態様8に記載の方法。
態様10
式1
【化18】
の化合物またはその獣医学的に許容される塩の調製方法であって、
a)前記化合物である、trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸を4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン及び炭酸カリウムと、水中にて約98℃で約12時間反応させ、前記反応物を約30℃まで冷却し、前記固体を濾過により単離し、前記固体を水とメタノール(1:1)、次いでメタノールで洗浄するか、または前記固体をメタノールのみで洗浄し、前記スルホネート固体を乾燥させる工程;
b)THF:DIPF(95:5)の有機溶媒に前記スルホネート固体を添加し、前記反応物を約10℃まで冷却し、前記反応温度を約10℃に維持したまま塩化オキサリルまたは塩化ホスホリルを添加して前記スルホニルクロリドを調製することにより、前記スルホネートを前記スルホニルクロリドに変換する工程;
c)約−10℃に冷却した40%メチルアミン水溶液に工程(b)の前記反応物を添加することにより、前記スルホニルクロリド固体を式1の化合物に変換する工程;
d)約14容量の水を添加し、前記スラリーをゆっくりと加熱還流させ、約65℃〜約75℃で約10容量の溶媒を留去した後、前記反応物を約35℃までゆっくりと冷却する工程;
e)前記固体を濾過により単離し、室温にて前記固体を水で洗浄した後、前記固体を乾燥させる工程を含む、前記方法。
態様11
化合物である、中間体C
【化19】
を調製する方法であって、
a)4−ブロモベンジルブロミドと亜硫酸ナトリウム塩とを水または約10%〜約30%のアセトニトリルを含む水性溶媒中、約80℃で反応させ、固体である、中間体Aを濾過により単離する工程;
b)前記固体である、中間体Aを10%〜25%のメチルアミン水溶液及びCuBr触媒中で、少なくとも約50℃の温度で約16時間反応させた後、前記反応物を約65℃に冷却し、残留銅を除去し、水を加えて濃HClでpHを3.2に調整し、前記反応物を約15℃に冷却し、固体である、中間体Bを濾過により単離する工程;
c)前記固体である、中間体Bを、約25%のメタノールを含有する水性有機溶媒中で、パラジウム触媒及び水素と約50℃〜約80℃で約14時間〜約18時間反応させる工程;及び
d)前の反応で得た容量を濃縮し、アルコールを添加して、約45℃に加熱した後、前記反応物を約4時間かけて約0℃に冷却し、前記固体である、中間体Cを濾過により単離し、アルコールで洗浄する工程を含む、前記方法。
態様12
工程(a)において前記アセトニトリルが約15%であり、工程(b)において、前記メチルアミン水溶液が約17%であり、前記CuBr触媒が約2mol%であり、少なくとも約50℃の温度とは約90℃であり、かつ、前記残留銅がクエン酸溶液の添加によって除去される、態様11に記載の方法。
態様13
工程(c)において、前記パラジウム触媒がPd(0)触媒であり、かつ、前記水素が約70℃、約16時間の水素ガスである、態様11に記載の方法。
態様14
工程(d)において前記アルコールがエタノールである、態様11に記載の方法。
態様15
(4−(メチルアミノ)フェニル)メタンスルホン酸;
trans−4−((メチルアミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸;
trans−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸カリウム塩;
trans−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)メタンスルホン酸ナトリウム塩;
((trans)−4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)−メタンスルホニルクロリド;
(trans−4−(メチル(7−トシル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)−シクロヘキシル)メタン−スルホン酸カリウム塩;及び
(trans−4−(メチル(7−トシル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)−シクロヘキシル)メタン−スルホン酸ナトリウム塩からなる群から選択される化合物。
図1
図2
図3
図4