特許第6568327号(P6568327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6568327-不飽和ニトリルの製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568327
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】不飽和ニトリルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 253/24 20060101AFI20190819BHJP
   C07C 255/08 20060101ALI20190819BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190819BHJP
【FI】
   C07C253/24
   C07C255/08
   !C07B61/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-554426(P2018-554426)
(86)(22)【出願日】2018年6月8日
(86)【国際出願番号】JP2018022011
(87)【国際公開番号】WO2018225854
(87)【国際公開日】20181213
【審査請求日】2018年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-114545(P2017-114545)
(32)【優先日】2017年6月9日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田村 翔
(72)【発明者】
【氏名】永田 大
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/051090(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/035881(WO,A1)
【文献】 特表2003−507180(JP,A)
【文献】 特開2002−193906(JP,A)
【文献】 特開平11−349545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 253/00
C07C 255/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒が流動可能に収納された内部空間と、前記内部空間に炭化水素を含む原料ガスを供給する供給口と、前記内部空間から反応生成ガスを排出する排出口とを有する流動床反応器を用い、前記内部空間内で、触媒の存在下、前記炭化水素を気相接触アンモ酸化反応に供することにより対応する不飽和ニトリルを製造する反応工程を有し、
該反応工程において、前記内部空間のうち単位体積当たりの前記触媒の存在量が150kg/m以上である空間を濃厚層と定義し、150kg/m未満である空間を希薄層と定義したとき、前記希薄層のガス滞留時間が5〜50secである、不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項2】
前記反応工程において、前記希薄層のガス空塔速度が、1m/s未満である、請求項1に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項3】
前記反応工程において、前記排出口から排出された前記反応生成ガス中の酸素濃度が、0.1vol%以上である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項4】
前記反応工程において、前記排出口から排出された前記反応生成ガス中の酸素濃度が、0.1vol%以上かつ5.0vol%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項5】
前記反応工程において、
前記排出口から排出された前記反応生成ガス中の酸素濃度が2.0vol.%未満の場合には、
(前記ガス滞留時間)≦7.5×(前記酸素濃度)+30、
の関係を満たし、
前記排出口から排出された前記反応生成ガス中の前記酸素濃度が2.0vol.%以上の場合には、
(前記ガス滞留時間)≦−3×(前記酸素濃度)+50、
の関係を満たす、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項6】
前記炭化水素が、プロパン及び/又はプロピレンである、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和ニトリルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アルカン及び/又はアルケンを金属複合酸化物触媒の存在下、気相接触アンモ酸化反応させる際には、流動床反応器が広く用いられてきている。工業規模で用いる流動床反応器においては、長期連続で生産運転を行うため、反応収率に影響を及ぼす触媒の活性低下、触媒流出による触媒充填量の減少や触媒粒径分布等の変化が生じる。そのため、不飽和ニトリルの反応収率向上を目的として、触媒の開発及び反応器内部装置の改良等が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、金属酸化物触媒の劣化を抑制し、高収率で長期に亘って安定的にアクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリルを製造する方法を提供することを目的として、炭素数が2〜8個のアルカン及び/又は炭素数が2〜8個のアルケンを、アンモニア及び金属複合酸化物触媒の存在下、流動床反応器を使用して気相接触酸化させる反応において、流動床反応器内の触媒の流動密度が50kg/m以下の領域の温度を、触媒流動密度が300kg/m以上の領域の温度より低くする炭化水素の気相接触酸化反応方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−193906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流動床反応器内部を触媒濃厚層と触媒希薄層に便宜的に分けた場合、触媒濃厚層は、主に反応を目的とした領域であるので原料ガス濃度、酸素濃度、供給方法、温度等が触媒に対して劣化要因にならないように種々の検討がされている。特許文献1は、触媒濃厚層ではなく触媒希薄層の温度に着目し、金属酸化物触媒の劣化を抑制し、高収率で長期に亘って安定的にアクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリルを製造しようとするものであるが、不飽和ニトリルの収率低下は触媒の劣化に起因するものに限られない。本発明者らの検討によれば、流動床反応器の濃厚層(触媒濃厚層)において生成した不飽和ニトリルの一部が、希薄層(触媒希薄層)において触媒とさらに反応して分解することが分かってきた。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、流動床反応器内において生成した不飽和ニトリルが分解することを抑制することにより、不飽和ニトリルを収率よく得ることのできる不飽和ニトリルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
触媒が流動可能に収納された内部空間と、前記内部空間に炭化水素を含む原料ガスを供給する供給口と、前記内部空間から反応生成ガスを排出する排出口とを有する流動床反応器を用い、前記内部空間内で、触媒の存在下、前記炭化水素を気相接触アンモ酸化反応に供することにより対応する不飽和ニトリルを製造する反応工程を有し、
該反応工程において、前記内部空間のうち単位体積当たりの前記触媒の存在量が150kg/m以上である空間を濃厚層と定義し、150kg/m未満である空間を希薄層と定義したとき、
前記希薄層のガス滞留時間が5〜50secである、
不飽和ニトリルの製造方法。〔2〕
前記反応工程において、前記希薄層のガス空塔速度が、1m/s未満である、
〔1〕に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
〔3〕
前記反応工程において、前記排出口から排出された前記反応生成ガス中の酸素濃度が、0.1vol%以上である、
〔1〕又は〔2〕のいずれか1項に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
〔4〕
前記反応工程において、前記排出口から排出された前記反応生成ガス中の酸素濃度が、0.1vol%以上かつ5.0vol%以下である、
〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
〔5〕
前記反応工程において、
前記排出口から排出された前記反応生成ガス中の酸素濃度が2.0vol.%未満の場合には、
(前記ガス滞留時間)≦7.5×(前記酸素濃度)+30、
の関係を満たし、
前記排出口から排出された前記反応生成ガス中の前記酸素濃度が2.0vol.%以上の場合には、
(前記ガス滞留時間)≦−3×(前記酸素濃度)+50、
の関係を満たす、
〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
〔6〕
前記炭化水素が、プロパン及び/又はプロピレンである、
〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、流動床反応器内において生成した不飽和ニトリルが分解することを抑制することにより、不飽和ニトリルを収率よく得ることのできる不飽和ニトリルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の不飽和ニトリルの製造方法において用い得る流動床反応器の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0011】
〔不飽和ニトリルの製造方法〕
本実施形態の不飽和ニトリルの製造方法は、触媒が流動可能に収納された内部空間と、前記内部空間に炭化水素を含む原料ガスを供給する原料供給口と、前記内部空間から反応生成ガスを排出する排出口とを有する流動床反応器を用い、前記内部空間内で、触媒の存在下、前記炭化水素を気相接触アンモ酸化反応に供することにより対応する不飽和ニトリルを製造する反応工程を有し、該反応工程において、前記内部空間のうち単位体積当たりの前記触媒の存在量が150kg/m以上である空間を濃厚層と定義し、150kg/m未満である空間を希薄層と定義したとき、前記希薄層のガス滞留時間が5〜50secである。
【0012】
図1に、本実施形態の不飽和ニトリルの製造方法において用い得る流動床反応器の概略断面図を示す。
【0013】
触媒2は、触媒自体の自重及び嵩、並びに、原料ガスA及び酸素含有ガスBの供給量(矢印F方向の流量)等のバランスの中で、内部空間3内で流動している。内部空間3内の触媒2の単位空間あたりの存在量(分布)は、分散管8より上部の領域においては、内部空間3の下から上(矢印F方向)に行くにつれて減少する。
【0014】
触媒2の平均粒径は35〜75μmが好ましい。また、触媒2のかさ密度は0.85〜1.2g/ccが好ましい。
【0015】
内部空間3には、反応生成ガスから触媒2を分離回収するサイクロン7のほか、必要に応じて、主に内部空間3の濃厚層の反応熱を除去し反応温度を制御するための冷却コイル(不図示)や、内部空間3内のガス空塔速度を調整するための部材(不図示)を有していてもよい。内部空間3内のガス空塔速度は、内部空間3の断面積(矢印F方向と直行する方向の面積)によって変化する。例えば、断面積が一様でない内部空間3を想定したときに、断面積が広い箇所はガス空塔速度が遅くなり、断面積が狭い箇所はガス空塔速度が早くなる。上記ガス空塔速度を調整するための部材とは、内部空間3の各所のガス空塔速度を調整する観点から、内部空間3に配置されるものであり、ガス空塔速度を調整するための部材が配置された箇所のガスが流通可能な断面積は、ガス空塔速度を調整するための部材が占める分狭くなるので、ガス空塔速度を調整するための部材が設置されていないところと比較してガス空塔速度が早くなる。また、ガス空塔速度を調整するための部材を設置する方法に代えて、内部空間3の断面積が所望の箇所において変化するよう直径が一様でない流動床反応器1を用いてもよい。
【0016】
サイクロン7には、入口7aから触媒2を同伴させた反応生成ガスが入る。サイクロン7に入った触媒2は、サイクロン7の円錐部分で螺旋を描くように内部空間3の下方に落下し、反応生成ガスはサイクロン7の上部から上方に延びる管より排出口6へと導かれていく。サイクロン7の円錐部分の下方には、さらに内部空間3の下方に向けて管が伸びており、この管の中を通って触媒2は内部空間3の下方に導かれる。
【0017】
〔反応工程〕
反応工程は、触媒の存在下、炭化水素を気相接触アンモ酸化反応に供することにより対応する不飽和ニトリルを製造する工程である。気相接触アンモ酸化反応は、主に濃厚層3bで起こる。
【0018】
炭化水素としては、特に限定されず、例えば、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン等のアルカン;エチレン、プロピレン、n−ブチレン、イソブチレン等のアルケンが挙げられる。これらの中では、生成するニトリル化合物の化学品中間原料としての価値の観点から、プロパン、イソブタン、プロピレン、イソブチレンが好ましく、プロパン及び/又はプロピレンがより好ましい。
【0019】
また、原料ガスAには、炭化水素以外の原料が含まれていてもよい。このような原料としては、アンモニア、酸素、空気などが挙げられる。なお、上記のとおり、酸素、空気等を原料ガスAとは別に酸素含有ガスBとして供給することもできる。
【0020】
また、触媒としては、気相接触アンモ酸化反応に通常用いられる固体触媒であれば特に限定されないが、例えば、シリカ等に担持された金属酸化物触媒が挙げられる。
【0021】
触媒の組成は、気相接触アンモ酸化反応に対して活性があれば特に限定されないが、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、少なくとも元素としてモリブデンを含む酸化物触媒(以下、単に「酸化物触媒」ともいう。)であると好ましい。より具体的には、下記式(1)で表される組成を有する触媒が挙げられる。
MoVNb・・・(1)
ここで、式中、a、b、c、d、e及びnは、Mo1原子当たりのそれぞれの原子の原子比を示し、0.01≦a≦1、0.01≦b≦1、0.01≦c≦1、0≦d<1、0≦e<1の範囲にあり、nは原子価のバランスを満たす値である。
【0022】
Mo1原子当たり、Vの原子比aは0.1以上0.4未満、Nbの原子比bは0.01以上0.2未満がそれぞれ好ましい。また、Mo1原子当たりのX成分の原子比cは、0.01以上0.6未満が好ましく、0.1以上0.4未満がより好ましい。
【0023】
Xで示される元素としては、例えば、Sb、Te、Sr、Cr、Ta、Rh、Pd、Pt、Agからなる群より選択される1種以上の元素が挙げられる。これらの元素を含む化合物としては、例えば、硝酸塩、カルボン酸塩、カルボン酸アンモニウム塩、ペルオキソカルボン酸塩、ペルオキソカルボン酸アンモニウム塩、ハロゲン化アンモニウム塩、ハロゲン化物、アセチルアセトナート、アルコキシドが挙げられる。これらの中では、好ましくは硝酸塩及びカルボン酸塩に代表される水性原料が使用される。
【0024】
Xで示される元素としては、Te及びSbが好適に挙げられる。一般的に、不飽和ニトリルの工業的製造方法においては、400℃以上での長期使用に耐えうる特性が必要であり、Xで示される元素としてはSbを用いることが特に好ましい。一方、不飽和酸の工業的製造方法においては、400℃以下での反応も可能なため、長期運転時のTeの逃散の影響が小さく、Teも好適に使用可能である。
【0025】
Tで示される元素のMo1原子当たりの原子比であるdは、0以上1未満が好ましく、0.001以上0.1未満がより好ましく、0.002以上0.08未満が更に好ましい。Tで示される元素としては、Ti、Zr、Hf、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Au、Zn、B、Al、Ga、In、Ge、Sn及びBiからなる群より選択される1種以上の元素が好ましく、Ti、W及びMnがより好ましい。
【0026】
Zで示される元素のMo1原子当たりの原子比であるeは、0以上1未満が好ましく、0.0001以上0.5未満がより好ましい。Zで示される元素としては、希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群より選択される1種以上の元素が挙げられ、Ba、Sc、Y、La、Ce、Pr及びYbが好ましく、Ceが特に好ましい。アンモ酸化反応における不飽和ニトリルの収率向上の観点で、酸化物触媒はZで示される元素を含有するのが好ましく、触媒粒子内で均一に分散されていることが一層好ましい。
【0027】
触媒中のMoの原料となるMoを含有する化合物(以下、「Mo含有化合物」という。他の元素についても同様。)としては、例えば、酸化モリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸が挙げられ、それらの中でも、ヘプタモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24・4HO]を好適に用いることができる。
【0028】
触媒中のVの原料となるV含有化合物としては、例えば、五酸化バナジウム、メタバナジウム酸アンモニウム及び硫酸バナジルが挙げられ、中でも、メタバナジウム酸アンモニウム[NHVO]を好適に用いることができる。
【0029】
触媒中のNbの原料となるNb含有化合物としては、例えば、ニオブ酸、ニオブの無機酸塩及びニオブの有機酸塩が挙げられ、中でも、ニオブ酸を好適に用いることができる。
【0030】
Xで示される元素としてTeを使用する場合、触媒中のTeの原料としてテルル酸[HTeO]を好適に用いることができ、Sbを使用する場合、触媒中のSbの原料としてアンチモン酸化物、特に三酸化アンチモン[Sb]を好適に用いることができる。
【0031】
酸化物触媒がシリカに担持されている場合、シリカの原料としてシリカゾル、粉体シリカ等を添加することができる。粉体シリカは、高熱法で製造されたものが好ましく、予め水に分散させて使用することでスラリー中への添加及び混合が容易となる。分散方法としては特に制限はなく、一般的なホモジナイザー、ホモミキサー、超音波振動器等を単独又は組み合わせて分散させることができる。
【0032】
酸化物触媒は、これらの原料を水溶液、または水分散液として、定法にしたがって乾燥し、焼成することで得ることができる。
【0033】
本実施形態においては、気相接触アンモ酸化反応中の内部空間3を単位体積当たりの触媒の存在量が150kg/m以上である濃厚層3bと、該濃厚層と前記排出口との間に位置し、かつ単位体積当たりの触媒の存在量が150kg/m未満である希薄層3aに分けて定義する。
【0034】
このとき、希薄層のガス滞留時間は、5〜50secであり、6〜45secであることが好ましく、7〜40secであることがより好ましい。希薄層のガス滞留時間が、5sec以上であることにより、サイクロン7に触媒が衝突することによる触媒の摩耗や、触媒が排出口から流出することをより抑制することができ、連続運転した場合の不飽和ニトリルの収率低下を抑制することができる。また、希薄層のガス滞留時間が、50sec以下であることにより、希薄層における触媒と不飽和ニトリルの接触時間が低減され、濃厚層3bで生成した不飽和ニトリルが希薄層3aで分解することを抑制でき、得られる不飽和ニトリルの収率がより向上する。
【0035】
なお、希薄層のガス滞留時間を上記範囲に調整する方法としては、原料ガス若しくは酸素含有ガスの流量を変更する方法、流動床反応器1の温度を変更する方法、流動床反応器1の圧力を変更する方法、流動床反応器1の部材等により反応器内の容積を変更する方法、又はこれらを組み合わせる方法が挙げられる。
【0036】
希薄層のガス滞留時間は、下記式により算出することができる。
希薄層のガス滞留時間(sec)=(希薄層の空間容積(m)×3600)/希薄層のガス流量(m/hr)
【0037】
また、「希薄層のガス流量」は、原料ガス及び酸素含有ガス等内部空間に供給されるガス量に希薄層での温度や圧力による膨張、収縮を考慮して決定され、下記式により算出される。
希薄層のガス流量(m/hr)=(内部空間に供給されるガス量(Nm/hr))×(希薄層温度(℃)+273.15)/273.15×1.033/(1.033+反応器内圧力(K/G))
【0038】
希薄層における単位体積当たりの触媒の存在量及び濃厚層における単位体積当たりの触媒の存在量を上記範囲内に調整する方法としては、反応器内の各所のガス空塔速度を調整する方法、触媒の嵩比重を調製する方法、又はこれらを組み合わせる方法が挙げられる。
【0039】
本実施形態における「単位体積当たりの触媒の存在量」は流動床差圧を用いて下記式により計算することができる。流動床反応器の内部空間において、高さの異なる複数の測定点の各所に設置した圧力計から高さ毎の圧力を測定し、触媒の存在量を算出することにより希薄層及び濃厚層の範囲を特定することで、希薄層の空間容積を算出することができる。地面と鉛直方向に計測した地面との距離h1(m)と、地面と鉛直方向に計測した地面との距離h2(m)(h2>h1)において、地面と水平方向に切断した流動床反応器の断面と流動層反応器によって囲われた内部空間内に存在する単位体積当たりの触媒の存在量(kg/m)は下記の式で表される。
h1〜h2間の単位体積当たりの触媒の存在量(kg/m
=(h2−h1間差圧(Pa))/(9.8(m/s)×h2−h1間距離(m))
【0040】
また、上記の式で算出された単位体積当たりの触媒の存在量の内、150kg/m未満と計測された中で測定値が最も高い点の値をD3(kg/m)、その計測点の地面と鉛直方向に計測した地面との距離をh3(m)とし、150kg/m以上と計測された中で測定値が最も低い点の値をD4(kg/m)、その地面と鉛直方向に計測した地面との距離をh4(m)としたとき、下記式で計算される地面と鉛直方向に計測した地面との距離h5(m)において、地面と水平方向に切断した流動層反応器の断面を希薄層3a、濃厚層3bの境界面とする。
h5(m)
=((150−D3)×h4+(D4−150)×h3)/(D4−D3)
【0041】
また、希薄層容積は、地面と鉛直方向に計測した地面と反応器の上端部との距離をh6(m)としたとき、希薄層空間容積(m)は、下記式で計算される。
希薄層空間容積(m
=(h6(m)−h5(m))×(希薄層の有効断面積(m))
【0042】
また、希薄層温度(℃)は、で測定された反応器内部の温度の内、最も大きい温度と最も小さい温度の加算平均値とする。
【0043】
反応工程において、希薄層3aのガス空塔速度は、1m/sec未満であることが好ましく、0.95m/sec未満であることがより好ましく、0.9m/sec未満であることがさらに好ましい。ガス空塔速度を1m/s未満に調整することにより、希薄層における触媒の存在量を低減させることができ、濃厚層3bで生成した不飽和ニトリルが希薄層3aで分解することを抑制できるため、得られる不飽和ニトリルの収率がより向上する傾向にある。なお、希薄層3aのガス空塔速度の下限値は、特に限定されないが、0.1m/sec以上であることが好ましく、0.3m/sec以上であることがより好ましく、0.4m/sec以上であることがさらに好ましい。本実施形態におけるガス空塔速度は、下記式により計算することができる。なお、「希薄層の有効断面積」とは、希薄層内のガスが通過する断面積(希薄層内にガス空塔速度を減少させる部材がある時は、その分の断面積を除いた断面積)の平均値をいう。当該平均値は、希薄層において最も大きい断面積と最も小さい断面積の加算平均値とする。また、「希薄層のガス流量」は、原料ガス及び酸素含有ガス等内部空間に供給されるガスの総量により決定される。
希薄層のガス空塔速度(m/sec)=希薄層のガス流量(m/hr)/希薄層の有効断面積(m)/3600
【0044】
排出口6から排出された反応生成ガスC中の酸素濃度が0.1vol%以下である場合には、触媒が過剰に還元され、活性が低下する現象が起き、目的生成物の収率を維持することができない。よって、反応工程において、排出口6から排出された反応生成ガスC中の酸素濃度は、0.1vol%以上であることが好ましく、0.5vol%以上であることがより好ましく、1.0vol%以上であることがさらに好ましい。
【0045】
さらに、反応生成ガスC中の酸素濃度が2.0vol%未満である場合には、希薄層のガス滞留時間が長い場合、触媒の還元がより促進されるため、反応生成ガスC中の酸素濃度(vol%)と希薄層のガス滞留時間(sec)が下記の関係式を満たすことが好ましい。
希薄層のガス滞留時間(sec)≦7.5×(排出口から排出された反応生成ガス中の酸素濃度(vol%))+30
【0046】
一方で、反応生成ガスC中の酸素濃度が0.1%以上の場合、触媒が酸化されることによって、活性が上昇し、濃厚層3bで生成した不飽和ニトリルが希薄層3aで分解する反応が促進され、希薄層3aに滞留するガスの温度が上昇し、さらに濃厚層3bで生成した不飽和ニトリルが希薄層3aで分解する反応が促進される現象が起きる。この現象は希薄層3aにおけるガスの滞留時間を5〜50秒に調整することで、濃厚層3bで生成した不飽和ニトリルが希薄層3aで分解することを抑制でき、得られる不飽和ニトリルの収率がより向上する傾向にある。よって、排出口6から排出された反応生成ガスC中の酸素濃度は、5.0vol%以下であることが好ましく、3.5vol%以下であることがより好ましく、2.5vol%以下であることがさらに好ましい。反応生成ガスC中の酸素濃度が2.0vol%以上の場合、その酸素濃度が高いほど、濃厚層3bで生成した不飽和ニトリルが希薄層3aで分解する反応が促進される傾向にあるため、希薄層滞留時間、反応生成ガスC中の酸素濃度(vol%)と希薄層のガス滞留時間(sec)が下記の関係式を満たすことが好ましい。なお、反応生成ガスC中の酸素濃度は、酸素含有ガスBの供給量や、反応条件により調整することができる。
希薄層のガス滞留時間(sec)≦−3.0×(排出口から排出された反応生成ガス中の酸素濃度(vol%))+50
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
図1に示すものと同様の流動床反応器1を用意した。流動床反応器1は、内径0.6m、長さ17.5mの縦型円筒形を有し、内部空間3の下端から1mの位置に分散板5、その上に原料供給口4を対抗するように有し、内部空間3の上端から15.5mの位置にサイクロン7の開口部下端を有するものとした。
【0049】
流動床反応器内に、特許第5694379号公報の実施例1に記載の触媒(Mo0.207Sb0.219Nb0.1020.030Ce0.005/51.0wt%−SiO)550kgを充填し、反応温度445℃、反応圧力常圧下にプロパン:アンモニア:酸素=1:1.1:2.8のモル比となるように、反応原料であるプロパン及びアンモニアを原料供給口4から供給し、空気を供給口9を介して分散板5から供給した。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表1に示す。
【0050】
[実施例2]
触媒量を700kgとし、表1に示すとおりガス流量を変更した以外は、実施例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表1に示す。
【0051】
[実施例3]
触媒量を380kgとし、表1に示すとおりガス流量を変更した以外は、実施例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表1に示す。
【0052】
[実施例4]
内部空間の容積を調整するための部材を配置して希薄層の空間容積を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表1に示す。
【0053】
[実施例5]
内部空間の容積を調整するための部材を取り除き希薄層の空間容積を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表1に示す。
【0054】
[実施例6]
触媒量を380kgとし、表1に示すとおりガス流量を変更し、内部空間の容積を調整するための部材を配置して希薄層の空間容積を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表1に示す。
【0055】
[実施例7]
原料ガスのモル比をプロパン:アンモニア:酸素=1:1.1:2.3に変更した以外は、実施例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表1に示す。
【0056】
[実施例8]
原料ガスのモル比をプロパン:アンモニア:酸素=1:1.1:3.4に変更した以外は、実施例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表1に示す。
【0057】
[実施例9]
希薄層の温度が460℃になるようにした以外は、実施例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表1に示す。
【0058】
[実施例10]
希薄層の温度が440℃になるようにした以外は、実施例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表1に示す。
【0059】
[実施例11]
図1に示すものと同様の流動床反応器1であって、内径10m、長さ30mの縦型円筒形を有し、内部空間3の下端から3mの位置に分散板5、その上に原料供給口4を対抗するように有し、内部空間3の上端から21.0mの位置にサイクロン7の開口部下端を有するものとした流動床反応器1を用い、触媒量を155000kgとし、表1に示すとおりガス流量を変更した以外は、実施例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表1に示す。
【0060】
[実施例12]
充填する触媒を特許第5694379号公報の実施例3に記載の触媒(Mo0.207Sb0.219Nb0.1020.030Ce0.005/68.0wt%−SiO)に変更した以外は、実施例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表1に示す。
【0061】
[実施例13]
充填する触媒を特許第5694379号公報の実施例4に記載の触媒(Mo0.240Sb0.250Nb0.1200.030Ce0.005/51.0wt%−SiO)に変更した以外は、実施例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表2に示す。
【0062】
[実施例14]
内部空間に供給されるガス量を表2に示すとおり変更した以外は、実施例6と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表2に示す。
【0063】
[実施例15]
表2に示すように内部空間に供給される原料ガス量を変更し、原料ガスのモル比をプロパン:アンモニア:酸素=1:1.1:3.0に変更した以外は、実施例6と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表2に示す。
【0064】
[実施例16]
原料ガスのモル比をプロパン:アンモニア:酸素=1:1.1:3.4に変更した以外は、実施例6と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表2に示す。
【0065】
[実施例17]
原料ガスのモル比をプロパン:アンモニア:酸素=1:1.1:3.0に変更した以外は、実施例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表2に示す。
【0066】
[実施例18]
表2に示すように内部空間に供給される原料ガス量を変更した以外は、実施例15と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表2に示す。
【0067】
[実施例19]
表2に示すように内部空間に供給される原料ガス量を変更した以外は、実施例8と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表2に示す。
【0068】
[実施例20]
原料ガスのモル比をプロパン:アンモニア:酸素=1:1.1:3.6に変更した以外は、実施例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表2に示す。
【0069】
[実施例21]
流動床反応器内に、金属成分の組成がMo12.00Bi0.39Fe1.60Ni6.97Mg0.77Ce0.63Rb0.17で表される60質量%の複合酸化物を40質量%のシリカに担持した触媒を、以下の手順で製造した。
【0070】
(調製例)原料混合液
まず、30質量%のSiOを含む水性シリカゾル1333gに、873.5gの水に溶解させた485.9gのパラモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24・4HO]を撹拌下で加え、モリブデンとシリカとを含む第一の溶液を得た。次に、16.6質量%の硝酸396.7gに、43.1gの硝酸ビスマス[Bi(NO・5HO]、148.0gの硝酸鉄[Fe(NO・9HO]、464.7gの硝酸ニッケル[Ni(NO・6HO]、45.5gの硝酸マグネシウム[Mg(NO・6HO]、62.6gの硝酸セリウム[Ce(NO・6HO]、5.89gの硝酸ルビジウム[RbNO]を溶解させ、第二の溶液を得た。そして、第一の溶液に第二の溶液を混合してスラリー状の原料混合液を得た。
【0071】
(調製例)触媒
得られた40℃の原料混合液を第一の乾燥装置を用いて、熱風の温度を乾燥室の直前で230℃、排出した直後で110℃とした以外は実施例1と同様にして乾燥した。得られた乾燥粉体を200℃で5分間保持し、200℃から450℃まで2.5℃/分で昇温し、450℃で20分間保持することで脱硝した。得られた脱硝粉体を580℃で2時間焼成して、触媒を得た。
【0072】
流動床反応器に、得られた触媒700kgを充填し、反応温度450℃、反応圧力0.50K/G下でプロピレン:アンモニア:酸素=1:1.1:1.8のモル比となるように、反応原料であるプロピレン及びアンモニアを原料供給口4から供給し、空気を供給口9を介して分散板5から供給した。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表2に示す。
【0073】
[実施例22]
内部空間の容積を調整するための部材を取り除き希薄層の空間容積を表2に示すとおり変更した以外は、実施例21と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表2に示す。
【0074】
[実施例23]
表2に示すように内部空間に供給される原料ガス量を変更し、原料ガスのモル比をプロパン:アンモニア:酸素=1:1.1:2.4に変更した以外は、実施例21と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表2に示す。
【0075】
[実施例24]
表2に示すように内部空間に供給される原料ガス量を変更した以外は、実施例22と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表2に示す。
【0076】
[比較例1]
内部空間の容積を調整するための部材を配置して希薄層の空間容積を表3に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表3に示す。
【0077】
[比較例2]
触媒量を380kgとし、表3に示すとおりガス流量を変更し、原料ガスのモル比をプロパン:アンモニア:酸素=1:1.1:3.0に変更した以外は、実施例5と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表3に示す。
【0078】
[比較例3]
原料ガスのモル比をプロパン:アンモニア:酸素=1:1.1:3.0に変更した以外は、比較例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表3に示す。
【0079】
[比較例4]
内部空間の容積を調整するための部材を配置して希薄層の空間容積を表3に示すとおり変更した以外は、実施例11と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表3に示す。
【0080】
[比較例5]
触媒量を130000kgとし、表3に示すとおりガス流量を変更した以外は、実施例11と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表3に示す。
【0081】
[比較例6]
充填する触媒を特許第5694379号公報の実施例3に記載の触媒(Mo0.207Sb0.219Nb0.1020.030Ce0.005/68.0wt%−SiO)に変更した以外は、比較例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表3に示す。
【0082】
[比較例7]
充填する触媒を特許第5694379号公報の実施例3に記載の触媒(Mo0.207Sb0.219Nb0.1020.030Ce0.005/68.0wt%−SiO)に変更した以外は、比較例2と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表3に示す。
【0083】
[比較例8]
充填する触媒を特許第5694379号公報の実施例4に記載の触媒(Mo0.240Sb0.250Nb0.1200.030Ce0.005/51.0wt%−SiO)に変更した以外は、比較例1と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表3に示す。
【0084】
[比較例9]
充填する触媒を特許第5694379号公報の実施例4に記載の触媒(Mo0.240Sb0.250Nb0.1200.030Ce0.005/51.0wt%−SiO)に変更した以外は、比較例2と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表3に示す。
【0085】
[比較例10]
原料ガスのモル比をプロパン:アンモニア:酸素=1:1.1:2.2に変更した以外は、比較例9と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表3に示す。
【0086】
[比較例11]
原料ガスのモル比をプロパン:アンモニア:酸素=1:1.1:3.0に変更した以外は、比較例9と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表3に示す。
【0087】
[比較例12]
原料ガスのモル比をプロパン:アンモニア:酸素=1:1.1:3.4に変更した以外は、比較例9と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表3に示す。
【0088】
[比較例13]
原料ガスのモル比をプロパン:アンモニア:酸素=1:1.1:3.0に変更した以外は、比較例8と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表3に示す。
【0089】
[比較例14]
原料ガスのモル比をプロパン:アンモニア:酸素=1:1.1:3.4に変更した以外は、比較例8と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表3に示す。
【0090】
[比較例15]
希薄層の温度が440℃になるようにし、内部空間の容積を調整するための部材を配置して希薄層の空間容積を表3に示すとおり変更した以外は、実施例21と同様にして、気相接触アンモ酸化反応を行った。気相接触アンモ酸化反応を開始してから、3時間後(スタート直後)のアクリロニトリルの収率と、1週間後のアクリロニトリルの収率を、表3に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
※1:触媒が飛散して反応継続不可能
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、不飽和ニトリルの製造方法として産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0095】
1:流動床反応器、2:触媒、3:内部空間、3a:上部空間、3b:下部空間、4:原料供給口、5:分散板、6:排出口、7:サイクロン、7a:入口、8:分散管、9:供給口、A:原料ガス、B:酸素含有ガス、C:反応生成ガス
図1