(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6568332
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】ヘリカルアンテナ及びアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 5/10 20150101AFI20190819BHJP
H01Q 11/08 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
H01Q5/10
H01Q11/08
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-88926(P2019-88926)
(22)【出願日】2019年5月9日
【審査請求日】2019年5月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591149089
【氏名又は名称】株式会社MARUWA
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 真功
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 一平
(72)【発明者】
【氏名】河合 亮輔
【審査官】
倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−101331(JP,A)
【文献】
特開2001−85931(JP,A)
【文献】
特表2012−532518(JP,A)
【文献】
国際公開第2019/010577(WO,A1)
【文献】
米国特許第8963786(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 5/00− 5/55
H01Q 11/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って延びる柱形状を有し、軸心を貫通する貫通部を有する、誘電体材料からなる内部コアと、
前記内部コアの外周面に螺旋状に形成され、前記内部コアの基端から先端に向けて所定の長さで延在する1又は複数の螺旋パターンを有し、第1共振周波数で共振する内部アンテナ素子と、
軸方向に沿って延びる中空の筒形状を有し、基端同士が連結されるように前記内部コアを内部に収容する、誘電体材料からなる外部コアと、
前記外部コアの外周面に螺旋状に形成され、前記外部コアの基端から先端に向けて所定の長さで延在する1又は複数の螺旋パターンを有し、第2共振周波数で共振する外部アンテナ素子と、
前記貫通部に内挿され、前記内部アンテナ素子及び前記外部アンテナ素子に電力を伝送する給電線と、
前記内部コアの基端で前記給電線に電気的に接続され、前記内部アンテナ素子及び前記外部アンテナ素子への給電点を有する接続基板と、を備え、
前記内部アンテナ素子及び前記外部アンテナ素子は、径方向において互いに重合しないように配置されていることを特徴とするヘリカルアンテナ。
【請求項2】
前記内部コア及び前記外部コアは、異なる比誘電率を有する誘電体材料からなることを特徴とする請求項1に記載のヘリカルアンテナ。
【請求項3】
前記内部コアは、セラミック材料からなり、前記外部コアは合成樹脂材料からなることを特徴とする請求項2に記載のヘリカルアンテナ。
【請求項4】
前記内部コアの軸方向長さが前記外部コアの軸方向長さよりも短いことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のヘリカルアンテナ。
【請求項5】
前記内部アンテナ及び前記外部アンテナは同心円状に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のヘリカルアンテナ。
【請求項6】
前記接続基板は、前記内部及び外部アンテナ素子と前記給電線とのインピーダンスを整合させるように構成されたコンデンサを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のヘリカルアンテナ。
【請求項7】
前記給電線は、同軸ケーブルの給電用の内部導線であり、前記同軸ケーブルは、前記内部導線の外周に配置されたグランド用の外周導体、及び、前記内部導線と前記外周導体との間に充填された絶縁体をさらに備え、前記内部導線が前記給電点に電気的に接続され、前記外周導体が前記内部アンテナ素子及び前記外部アンテナ素子の先端に接続されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のヘリカルアンテナ。
【請求項8】
前記内部アンテナ素子の基端には、内部接続導体が設けられ、前記接続基板の前記給電点は、前記内部接続導体に接触し、前記内部接続導体が前記接続基板上の導体を介して前記外部アンテナ素子の基端に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のヘリカルアンテナ。
【請求項9】
前記内部アンテナ素子及び前記外部アンテナ素子における前記複数の螺旋パターンは、対で閉回路を形成する第1螺旋パターン及び第2螺旋パターンを含み、前記第1螺旋パターンの基端が前記給電線に接続され、前記第2螺旋パターンの基端及び先端がグランドに接続され、前記第1螺旋パターンの基端及び前記第2螺旋パターンの基端がコンデンサを介して接続され、前記第1螺旋パターンの先端及び前記第2螺旋パターンの先端が電気的に接続されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のヘリカルアンテナ。
【請求項10】
軸方向に沿って延びる筒形状を有するとともに軸心を貫通する貫通部を有する、誘電体材料からなる内部コアと、
前記内部コアの外周面に螺旋状に形成され、前記内部コアの基端から先端に向けて所定の長さで延在する1又は複数の螺旋パターンを有し、第1共振周波数で共振する内部アンテナ素子と、
軸方向に沿って延びる中空の筒形状を有し、基端同士が連結されるように前記内部コアを内部に収容する、誘電体材料からなる外部コアと、
前記外部コアの外周面に螺旋状に形成され、前記外部コアの基端から先端に向けて所定の長さで延在する1又は複数の螺旋パターンを有し、第2共振周波数で共振する外部アンテナ素子と、
前記貫通部に内挿され、前記内部及び外部アンテナ素子に電力を伝送する内部導線、前記内部導線の外周に配置されたグランド用の外周導体、及び、前記内部導線と前記外周導体との間に充填された絶縁体を備える同軸ケーブルと、
前記内部コアの基端で前記内部導線の一端に電気的に接続され、前記内部アンテナ素子及び前記外部アンテナ素子への給電点を有する接続基板と、を備え、
前記同軸ケーブルの他端に電気的に接続され、信号を外部に出力可能な出力端子を有する回路板と、を備え、
前記内部アンテナ素子及び前記外部アンテナ素子は、径方向において互いに重合しないように配置されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項11】
前記回路板は、前記同軸ケーブルの他端と前記出力端子との間に接続されたローノイズアンプを備えることを特徴とする請求項10に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリカルアンテナ及びアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘリカルアンテナは、衛星通信、GPS、航空機、移動通信などの種々の分野に用いられている。ヘリカルアンテナは、一般的に、柱状のコアに螺旋状の導体パターンを形成して作成される。ヘリカルアンテナの自己共振周波数は、導体パターン長、導体パターン直径および螺旋の間隔等に依存する。軸モード型ヘリカルアンテナは、その小型構造を特長とし、小型化が進む移動通信端末、携帯端末、車載GPSなどの用途に積極的に採用されている。特に、自動運転等で必要となる高精度測位への応用では、アンテナを小型化するとともに、アンテナの動作利得性能が重要となる。このような需要に伴い、ヘリカルアンテナは、その性能を維持しつつ、その構造をより一層小型化することが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1は、小型で、かつ、2種類の異なる周波数で通信可能とするアンテナ装置を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。アンテナ装置(1)は、導体が螺旋状に形成されてなるヘリカルアンテナである。アンテナ装置(1)は、自己共振周波数が互いに異なる第1ヘリカルアンテナ(10)及び第2ヘリカルアンテナ(11)と、給電部(20)を有するループアンテナ(12)と、を備える。ループアンテナ(12)には、上記信号出力部から給電部(20)を介して、第1ヘリカルアンテナ(10)及び第2ヘリカルアンテナ(11)の各々の自己共振周波数(f1,f2)に対応する、異なる複数の周波数の信号が入力される。そして、第1ヘリカルアンテナ(10)及び第2ヘリカルアンテナ(11)の各々は、ループアンテナ(12)との電磁結合を介して給電可能な位置に配されている。具体的には、第1ヘリカルアンテナ(10)、第2ヘリカルアンテナ(11)及びループアンテナ(12)は、同一の中心軸(O)について同軸上に配されている。そして、ヘリカルアンテナ(10,11)とループアンテナ(12)との間の距離(d1,d2)を調整することにより、インピーダンスの整合がなされ、アンテナ装置(1)が当該周波数で無線通信可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−164270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のアンテナ装置では、2種類の異なる周波数で通信可能とするために、第1の共振周波数で共振する第1ヘリカルアンテナと、第2の自己共振周波数で共振する第2ヘリカルアンテナとが軸方向にスタックされる。しかしながら、このようなスタック構造は、アンテナ装置全体を小型化する障害となり得る。また、特許文献1のアンテナ装置では、ヘリカルアンテナとループアンテナとの距離を正確に調整することにより、インピーダンスの整合が行われる。しかしながら、ヘリカルアンテナとループアンテナの相対距離のずれにより、インピーダンスの不整合が生じて、利得が低下することが考えられる。このループアンテナに変えて、混合器やデュプレクサーを導入することも可能であるが、混合器やデュプレクサーによるアンテナの動作利得の低下も避けられない。すなわち、従来のアンテナ装置では、複数の周波数で通信可能とすると、アンテナの大型化及び性能低下を避けられないことが課題であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の周波数で通信可能であり、且つ、より小型化可能な簡易な構造を有するヘリカルアンテナ、及び、アンテナ装置を提供することにある。さらに、小型化に伴うアンテナ性能の低下を抑えることもまた、本発明の目的の1つとして挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態のヘリカルアンテナは、軸方向に沿って延びる柱形状を有し、軸心を貫通する貫通部を有する、誘電体材料からなる内部コアと、
前記内部コアの外周面に螺旋状に形成され、前記内部コアの基端から先端に向けて所定の長さで延在する1又は複数の螺旋パターンを有し、第1共振周波数で共振する内部アンテナ素子と、
軸方向に沿って延びる中空の筒形状を有し、基端同士が連結されるように前記内部コアを内部に収容する、誘電体材料からなる外部コアと、
前記外部コアの外周面に螺旋状に形成され、前記外部コアの基端から先端に向けて所定の長さで延在する1又は複数の螺旋パターンを有し、第2共振周波数で共振する外部アンテナ素子と、
前記貫通部に内挿され、前記内部アンテナ素子及び前記外部アンテナ素子に電力を伝送する給電線と、
前記内部コアの基端で前記給電線に電気的に接続され、前記内部アンテナ素子及び前記外部アンテナ素子への給電点を有する接続基板と、を備え、
前記内部アンテナ素子及び前記外部アンテナ素子は、径方向において互いに重合しないように配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の一形態のヘリカルアンテナは、外部アンテナ素子が形成された外部コアの内部に、内部アンテナ素子が形成された内部コアを配置し、内部アンテナ素子及び外部アンテナ素子を径方向において互いに重合しないように配置したことにより、複数の周波数で通信可能であり、且つ、軸方向にスタックさせた構造と比べて、より小型化可能な構造を有する。また、共通の接続基板の給電点によって、内部アンテナ素子及び外部アンテナ素子が給電線へと接続されるので、より一層、その構造を簡易化し、全体構造の小型化を達成することができる。また、給電点が1つであることから、動作利得に影響を与える混合器の追加を必要とすることなく、アンテナ性能が劣化することも抑えられる。
【0009】
本発明のさらなる形態において、ヘリカルアンテナは、前記内部コア及び前記外部コアは、異なる比誘電率を有する誘電体材料からなることを特徴とする。すなわち、内部コア及び外部コア間で誘電体材料を変化させ、比誘電率を変えることにより、導体パターンの形状寸法を変化させることなく、内部アンテナと外部アンテナの受信周波数を変更したり、同じ周波数のままでアンテナの物理的な長さを変更することができる。また、前記内部コアは、セラミック材料からなり、前記外部コアは合成樹脂材料からなってもよい。
【0010】
本発明のさらなる形態において、ヘリカルアンテナは、前記内部コアの軸方向長さが前記外部コアの軸方向長さよりも短いことを特徴とする。外部コアの先端部位は、内部コアと径方向に重合しないので、この先端部位では、自由に導体パターンを形成することができる。また、前記内部アンテナ及び前記外部アンテナは同心円状に配置されてもよい。内部コア及び外部コアの距離が一定となり、内部コア及び外部コアの距離の変動に起因する受信周波数への影響が抑えられる。また、内部コア及び外部コアが偏心して配置された場合と比べて、構造は、無駄なスペース有さず、より良好な体積当たりの効率を有する。
【0011】
本発明のさらなる形態において、ヘリカルアンテナは、前記接続基板は、前記内部及び外部アンテナ素子と前記給電線とのインピーダンスを整合させるように構成されたコンデンサを有することを特徴とする。インピーダンスの整合により、エネルギー反射、効率低下が抑えられる。
【0012】
本発明のさらなる形態において、ヘリカルアンテナは、給電線は、同軸ケーブルの給電用の内部導線であり、前記同軸ケーブルは、前記内部導線の外周に配置されたグランド用の外周導体、及び、前記内部導線と前記外周導体との間に充填された絶縁体をさらに備え、前記内部導線が前記給電点に電気的に接続され、前記外周導体が前記内部アンテナ素子及び前記外部アンテナ素子の先端に接続されることを特徴とする。
【0013】
本発明のさらなる形態において、ヘリカルアンテナは、前記内部アンテナ素子の基端には、内部接続導体が設けられ、前記接続基板の前記給電点は、前記内部接続導体に接触し、前記内部接続導体が前記接続基板上の導体を介して前記外部アンテナ素子の基端に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0014】
本発明のさらなる形態において、ヘリカルアンテナは、前記内部アンテナ素子及び前記外部アンテナ素子における前記複数の螺旋パターンは、対で閉回路を形成する第1螺旋パターン及び第2螺旋パターンを含み、前記第1螺旋パターンの基端が前記給電線に接続され、前記第2螺旋パターンの基端及び先端がグランドに接続され、前記第1螺旋パターンの基端及び前記第2螺旋パターンの基端がコンデンサを介して接続され、前記第1螺旋パターンの先端及び前記第2螺旋パターンの先端が電気的に接続されていることを特徴とする。すなわち、外部アンテナ素子及び内部アンテナ素子がそれぞれ閉回路を形成している。アンテナ素子を開回路にした場合、アンテナ素子の先端がオープンであるため、別途、不平衡−平衡変換を行なうバランが必要となる。本発明は、両方のアンテナ素子が閉回路であることから、バランを設ける必要性をなくし、バラン導入による利得の劣化や構造の複雑化を排除する。
【0015】
本発明の一形態のアンテナ装置は、軸方向に沿って延びる筒形状を有するとともに軸心を貫通する貫通部を有する、誘電体材料からなる内部コアと、
前記内部コアの外周面に螺旋状に形成され、前記内部コアの基端から先端に向けて所定の長さで延在する1又は複数の螺旋パターンを有し、第1共振周波数で共振する内部アンテナ素子と、
軸方向に沿って延びる中空の筒形状を有し、基端同士が連結されるように前記内部コアを内部に収容する、誘電体材料からなる外部コアと、
前記外部コアの外周面に螺旋状に形成され、前記外部コアの基端から先端に向けて所定の長さで延在する1又は複数の螺旋パターンを有し、第2共振周波数で共振する外部アンテナ素子と、
前記貫通部に内挿され、前記内部及び外部アンテナ素子に電力を伝送する内部導線、前記内部導線の外周に配置されたグランド用の外周導体、及び、前記内部導線と前記外周導体との間に充填された絶縁体を備える同軸ケーブルと、
前記内部導線の一端に電気的に接続され、前記内部アンテナ素子の基端及び前記外部アンテナ素子の基端への給電点を有する接続基板と、
前記同軸ケーブルの他端に電気的に接続され、信号を外部に出力可能な出力端子を有する回路板と、を備え、
前記内部アンテナ素子及び前記外部アンテナ素子は、径方向において互いに重合しないように配置されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の一形態のアンテナ装置は、外部アンテナ素子が形成された外部コアの内部に、内部アンテナ素子が形成された内部コアを配置し、内部アンテナ素子及び外部アンテナ素子を径方向において互いに重合しないように配置したことにより、複数の周波数で通信可能であり、且つ、軸方向にスタックさせた構造と比べて、より小型化可能な構造を有する。また、共通の接続基板の給電点によって、内部アンテナ素子及び外部アンテナ素子が給電線へと接続されるので、より一層、その構造を簡易化し、全体構造の小型化を達成することができる。また、本発明のアンテナ装置では、給電点が1つであることから、動作利得に影響を与える混合器の追加を必要とすることなく、アンテナ性能が劣化することも抑えられる。さらに、本発明のアンテナ装置は、同軸ケーブルの他端に回路板を設けることにより、所定の機能を選択的に追加して信号を外部に出力することが可能となる。
【0017】
本発明のさらなる形態において、ヘリカルアンテナは、前記回路板は、前記同軸ケーブルの他端と前記出力端子との間に接続されたローノイズアンプを備えることを特徴とする。すなわち、本発明のヘリカルアンテナは、アンテナ素子で受信した信号を増幅及びノイズフィルタリングして出力することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、複数の周波数で通信可能であり、且つ、より小型化可能な簡易構造を有するヘリカルアンテナを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態のヘリカルアンテナの概略斜視図。
【
図2】
図1のヘリカルアンテナの内部アンテナアセンブリの(a)斜視図、(b)平面図及び(c)底面図。
【
図3】
図1のヘリカルアンテナの外部アンテナアセンブリの(a)斜視図、(b)平面図及び(c)底面図。
【
図4】
図1のヘリカルアンテナの接続基板の平面図。
【
図7】
図1のヘリカルアンテナのアンテナ素子を構成する第1螺旋パターン及び第2螺旋パターンの対による回路を模式的に示す回路図。
【
図8】本発明の別形態のヘリカルアンテナの概略斜視図。
【
図9】本発明の一実施形態のアンテナ装置の概略斜視図。
【
図11】本発明の一実施形態のアンテナ装置の評価の結果を示す、周波数(MHz)vs利得(dBic)のグラフ。
【
図12】
図11の(a)比較例1及び(b)比較例2のアンテナ装置の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の例示として一実施形態について説明する。ただし、下記の説明は、本発明を限定することを目的とするものではない。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態のヘリカルアンテナ100の概略斜視図である。
図1に示すように、ヘリカルアンテナ100は、内部コア111と、内部コア111の外周面上に配置された内部アンテナ素子113と、該内部コア111の径方向外側に配置された外部コア121と、外部コア121の外周面上に配置された外部アンテナ素子123と、内部コア111及び外部コア121の基端を連結する接続基板130と、コア111,121の中心を通る同軸ケーブル140を備える。以下、各構成要素について説明する。
【0022】
図2(a)〜(c)は、内部コアアセンブリ110の斜視図、平面図及び底面図である。内部コアアセンブリ110は、内部コア111に各種導体を形成したものである。内部コア111は、軸方向に沿って基端から先端へ延びる円柱形状を有し、且つ、基端面(頂面)、先端面(底面)、及び、外周面(側面)を有する。また、内部コア111は、軸心を貫通する貫通部112を有する。貫通部112は、同軸ケーブル140を内挿可能な径を有する。内部コア111は、誘電体材料からなる。好ましくは、内部コア111は、セラミック材料によって形成される。本実施形態では、セラミック材料は、限定されないが、MgO−SiO
2を主成分とする焼結体であり、その比誘電率は約8である。すなわち、内部コア111が、比較的に比誘電率が高い誘電体材料であることにより、より低い比誘電体材料からなる外部コア121に形成された外部アンテナ素子123に対して、アンテナパターン長さの短縮効果があり、内部アンテナ素子113のアンテナパターンの全体長さを短く設計できるという効果が得られる。
【0023】
そして、内部コア111の外周面上には、内部アンテナ素子113が形成されている。この内部アンテナ素子113は、第1共振周波数f1で共振し、所定の周波数を受信可能に設計されている。内部アンテナ素子113は、内部コア111の外周面に螺旋状に形成され、内部コア111の基端から先端に向けて所定の長さで延在する複数(本実施形態では4本)の螺旋パターン114,115を有する。各螺旋パターン114,115は、軸全体に亘って互いに等間隔に延びている。各螺旋パターン114,115は、内部コア111の外周面をメタライズ処理することによって、基端から先端に亘って螺旋を描くように形成される。なお、パターン形状は、所定の設計周波数に応じて決定される。
【0024】
図2(b)に示すように、内部コア111の基端面(頂面)には、内部接続導体116,117がメタライズ処理によりに形成されている。第1内部接続導体116及び第2内部接続導体117は、互いに離隔して配置され、電気的に絶縁されている。換言すると、第1内部接続導体116及び第2内部接続導体117は、基端面の中心を通る直線状の絶縁領域によって分断されている。また、第1及び第2内部接続導体116、117には、螺旋パターン114,115の基端に接続するように、外周縁まで延びる2つの接続片がそれぞれ設けられている。接続片の数は、螺旋パターン114,115の数に応じて定められる。
【0025】
図2(c)に示すように、内部コア111の先端面(底面)には、グランド用内部導体118がメタライズ処理により形成されている。グランド用内部導体118は、一体の導体として形成されている。グランド用内部導体118は、貫通部112周囲のエッジを覆うように、内部コア111の先端面で延在している。後述するように、グランド用内部導体118は、貫通部112を通る同軸ケーブル140の外周導体に電気的に接続される。また、グランド用内部導体118には、各螺旋パターン114,115の先端に接続するように、外周縁まで延びる4つの接続片が設けられている。4つの接続片は、周方向に等間隔に配置されている。
【0026】
内部アンテナ素子113の複数の螺旋パターンは、その基端で給電線(信号線)に電気的に接続される第1螺旋パターン114と、その基端でグランドに電気的に接続される第2螺旋パターン115に分類される。そして、内部アンテナ素子113は、第1螺旋パターン114及び第2螺旋パターン115の対を有する。本実施形態では、内部アンテナ素子113は、2対の螺旋パターン114,115を有するが、パターン対の数は増減されてもよい。第1螺旋パターン114は、その基端で、内部コア111頂面の第1内部接続導体116の接続片に接続されている。他方、第2螺旋パターン115は、その基端で、内部コア111上面の第2内部接続導体117の接続片に接続されている。そして、第1螺旋パターン114及び第2螺旋パターン115は、その先端で、内部コア111底面のグランド用内部導体118の接続片にそれぞれ接続されている。つまり、第1螺旋パターン115及び第2螺旋パターン115は、基端では互いに分離し、先端でグランド用内部導体118を介して接続されている。
【0027】
なお、これら導体は、銀ペーストなどの導電ペースト材料を内部コア111外面に塗布して焼き付けることによって形成され得る。好ましくは、導体は、導電ペースト材料の表面にNi、Auメッキを施した3層構造を有する。
【0028】
図3(a)〜(c)は、外部コアアセンブリ120の斜視図、平面図及び底面図である。外部コアアセンブリ120は、外部コア121に各種導体を形成したものである。外部コア121は、軸方向に沿って基端から先端へ延びる中空の円筒形状を有する。外部コア121の中空部122は、内部コアアセンブリ120を内挿可能な径を有する。また、外部コア121の軸方向長さは、内部コア111のものよりも長く、且つ、外部コア121の径は、内部コア111のものよりも大きい。そして、外部コア121は、基端に開口を有し、先端に底板を有する。外部コア121の底板には、同軸ケーブル140を通すための開口が形成されている。また、外部コア121は、誘電体材料からなる。好ましくは、外部コア121は、合成樹脂材料によって形成される。本実施形態では、合成樹脂材料は、限定されないが、PPS(ポリフェニレンスルファイド)であり、その比誘電率は約4.5である。一般的に、比誘電率が高い程、アンテナパターンを短くすることができる。それ故、コアの小型化が目的であれば、合成樹脂材料のかわりにセラミック材料が採用されてもよい。
【0029】
そして、外部コア121の外周面上には、外部アンテナ素子123が形成されている。この外部アンテナ素子123は、(第1共振周波数と異なる)第2共振周波数f2で共振し、所定の周波数を受信可能に設計されている。外部アンテナ素子123は、外部コア121の外周面に螺旋状に形成され、外部コア121の基端から先端に向けて所定の長さで延在する複数(本実施形態では4本)の螺旋パターン124,125を有する。各螺旋パターン124,125は、軸全体に亘って互いに等間隔に延びている。外部アンテナ素子123の螺旋パターン124,125は、内部アンテナ素子113の螺旋パターン114,115に対して、径方向において重合しないように形成されている。これにより、内部アンテナ素子113及び外部アンテナ素子123が、互いに対して電波の送受信に影響を及ぼすことが抑えられる。各螺旋パターン124,125は、外部コア121の外周面をメタライズ処理することによって、基端から先端に亘って螺旋を描くように形成される。なお、パターン形状は、所定の設計周波数に応じて決定される。
【0030】
図3(b),(c)に示すように、外部コア121の底板には、グランド用内部導体118がメタライズ処理により形成されている。グランド用外部導体126は、一体の導体として形成されている。グランド用外部導体126は、底板の開口の径方向内側まで延在し、同軸ケーブル140を通す通孔127を有する。後述するように、グランド用外部導体126は、中空部122を通る同軸ケーブル140の外周導体に電気的に接続される。また、グランド用外部導体126には、螺旋パターン124,125の先端に接続するように、外周縁まで延びる4つの接続片が設けられている。4つの接続片は、周方向に等間隔に配置されている。
【0031】
外部アンテナ素子123の複数の螺旋パターンは、その基端で給電線(信号線)に電気的に接続される第1螺旋パターン124と、その基端でグランドに電気的に接続される第2螺旋パターン125に分類される。そして、外部アンテナ素子123は、第1螺旋パターン124及び第2螺旋パターン125の対を有する。本実施形態では、外部アンテナ素子123は、2対の螺旋パターン124,125を有するが、パターン対の数は増減されてもよい。後述するように、第1螺旋パターン124は、その基端で、接続基板130の中間接続導体136を介して、内部コア121頂面の第1内部接続導体116の接続片に接続される。他方、第2螺旋パターン125は、その基端で、接続基板130の中間接続導体136を介して、内部コア111上面の第2内部接続導体127の接続片に接続される。そして、第1螺旋パターン124及び第2螺旋パターン125は、その先端で、外部コア121底部のグランド用外部導体126の接続片にそれぞれ接続されている。つまり、第1螺旋パターン125及び第2螺旋パターン125は、基端では互いに分離し、先端でグランド用外部導体126を介して接続されている。
【0032】
なお、これら導体は、銀ペーストなどの導電ペースト材料を外部コア121外面に塗布して焼き付けることによって形成され得る。好ましくは、導体は、導電ペースト材料の表面にNi、Auメッキを施した3層構造を有する。
【0033】
図4及び
図5は、接続基板130の平面図及び底面図である。接続基板130は、円環状の外側基板と、円板状の内側基板と、これらを連結する連結部とを備える。接続基板130は、主に合成樹脂等の絶縁基板から構成される。本実施形態では、絶縁基板は、FR−4(ガラスエポキシ)製である。接続基板130は、内側基板を内部コア111基端に結合し、外側基板を外部コア121基端に結合することで、内部コア111及び外部コア121を一体に物理的に連結する。接続基板130により、内部コア111及び外部コア121は同心円状に結合される。また、接続基板130は、給電線(信号端子141)に電気的に接続される第1接点131、及び、グランド線(グランド端子142)に電気的に接続される第2接点132を有する。第1接点131は、接続基板130の中心に位置し、内部コア111基端で貫通部112から延び出る同軸ケーブル140の信号端子141に接続される。他方、第2接点132は、第1接点131の周囲に位置し、内部コア111基端で貫通部112から延び出る同軸ケーブル140のグランド端子142に接続される。
【0034】
図5に示すように、接続基板130の内側基板の裏面には、第1接点131に電気的に接続された給電電極133、及び、第2接点132に電気的に接続されたグランド電極134が設けられている。給電電極133及びグランド電極134は、接続基板130上で絶縁体によって隔てられている。そして、給電電極133が、内部アンテナ素子113及び外部アンテナ素子123への給電点として機能する。さらに、アンテナ素子113,123と、給電線との間のインピーダンスを整合させるために、信号線とグランドとの間に複数(本実施形態では6)のコンデンサ135が設置されている。各コンデンサ135は、給電電極133とグランド電極134との間に配置されている。また、接続基板130の外側基板の裏面には、内部アンテナ素子113と外部アンテナ素子123とを電気的に接続するための複数の中間接続導体136が形成されている。
【0035】
本実施形態では、給電線として同軸ケーブル140が採用された。同軸ケーブル140は、アンテナ素子113、123に信号又は電力を伝送するための内部導線と、内部導線の外周に配置されたグランド用の外周導体、内部導線と外周導体との間に充填された絶縁体、及び、外周導体を覆う絶縁材料の外部被覆を備える。そして、同軸ケーブル140の端部には、内部導線に接続された信号端子141、及び、外周導体に接続されたグランド端子142が設けられている。
【0036】
図6は、接続基板130によって内部コアアセンブリ110及び外部コアアセンブリ120を一体化した、ヘリカルアンテナ100の平面図である。
図6に示すように、内部コア111の貫通部112を通る同軸ケーブル140の信号端子141及びグランド端子142が、接続基板130の第1接点131及び第2接点132にそれぞれ半田接合されている。
【0037】
第1接点131に電気的に接続された給電電極133が、内部コア111頂面の第1内部接続導体116に半田接合されている。その結果、内部アンテナ素子113の第1螺旋パターン114の基端が給電点(給電線)に電気的に接続される。また、接続基板130の中間接続導体136を介して、第1内部接続導体116が外部アンテナ素子123の第1螺旋パターン124の基端に接続されている。その結果、外部アンテナ素子123の第1螺旋パターン124の基端が給電点(給電線)に電気的に接続される。すなわち、1つの給電点が、内部アンテナ113及び外部アンテナ123の両方に信号電力を給電することができる。なお、第1螺旋パターン114の基端と、第1螺旋パターン124の基端は、周方向にずれて配置される。
【0038】
第2接点132に電気的に接続されたグランド電極134が、内部コア111頂面の第2内部接続導体117に半田接合されている。その結果、内部アンテナ素子113の第2螺旋パターン115の基端がグランドに電気的に接続される。また、接続基板130の中間接続導体136を介して、第2内部接続導体117が外部アンテナ素子123の第2螺旋パターン125の基端に接続されている。その結果、外部アンテナ素子123の第2螺旋パターン125の基端がグランドに接続される。なお、第2螺旋パターン115の基端と、第2螺旋パターン125の基端は、周方向にずれて配置される。
【0039】
そして、内部コア111の先面に形成されたグランド用内部導体118が、同軸ケーブル140の外周導体に半田接合されている。これにより、内部アンテナ素子113の全ての螺旋パターン114,115の先端が最終的にグランドに接続される。同様に、外部コア111の先端に形成されたグランド用外部導体126が、同軸ケーブル140の外周導体に半田接合されている。これにより、外部アンテナ素子123の全ての螺旋パターン124,125の先端が最終的にグランドに接続される。なお、内部アンテナ素子113の螺旋パターン114,115の先端と、外部アンテナ素子123の螺旋パターン124,125の先端は、周方向にずれて配置される。
【0040】
すなわち、第1螺旋パターン114(124)及び第2螺旋パターン115(125)の対からなる1ユニットのアンテナ構造は、
図7の等価回路図によって簡易的に示される。ここで、螺旋パターンは、インダクタ、キャパシタ及び抵抗によって表される。
図7に示すように、アンテナ素子113(123)は、第1螺旋パターン114(124)及び第2螺旋パターン115(125)によって閉回路を形成している。そして、ヘリカルアンテナ100は、給電点133を共通として、複数の螺旋パターン対の等価回路を並列に接続したものである。
【0041】
また、本実施形態のヘリカルアンテナ100では、外部コア121よりも内部コア111が短いので、外部コア121の内部コア111と重合しない部分では、内外のアンテナ素子の径方向の重なりに配慮することなく、自由にパターンを形成可能である。例えば、
図8のヘリカルアンテナ100’では、外部コア121の先端部位では、基端部位と比べて、外部アンテナ素子123’の螺旋パターンの巻き数が増加している。このように、ヘリカルアンテナが軸長さの異なるコアによる2重構造を有することにより、アンテナパターンの設計自由度を増えて、所定の共振周波数に合わせる調整が容易となる。
【0042】
図9は、本実施形態のヘリカルアンテナ100によるアンテナ装置10の斜視図である。
図10は、アンテナ装置10の分解斜視図である。
図9及び
図10に示すように、アンテナ装置10は、ヘリカルアンテナ100、回路板11、出力端子12及びカバー13を備える。なお、説明の便宜上、
図9ではカバー13を省略した。
【0043】
アンテナ装置10では、同軸ケーブル140の先端に回路板11が接続されている。そして、回路板11の先端に信号を出力するための出力端子12が設けられている。この回路板11により、アンテナ装置10に様々の機能を付加することができる。例えば、回路板11は、ローノイズアンプ(LNA)であってもよい。LNAは、ヘリカルアンテナ100が受信した信号のノイズを抑えつつ、出力を増幅する。この場合、アンテナ装置10は、アクティブアンテナとして機能する。あるいは、回路板11は、信号を伝達するためだけのブランク回路であってもよい。この場合、アンテナ装置10は、パッシブアンテナとして機能する。そして、樹脂製のカバー13が、アンテナ装置10の内部構造を保護するために、ヘリカルアンテナ100及び回路板11全体を覆う。
【0044】
本発明のアンテナ装置10及びヘリカルアンテナ100の利得性能の評価試験が実施された。ここで、アンテナ装置10はパッシブアンテナとし、2つの周波数帯域の信号を受信し、その利得を測定した。ここで、一方の受信周波数帯域であるL1帯域は1559−1606MHzであり、他方の受信周波数帯域であるL2帯域は1197−1249MHzである。
図11は、その試験結果を示し、
図12は、比較対象とした比較例1,2の形態を示す。
【0045】
実施例のアンテナ装置10は、上記実施形態の構成に準拠する。本実施例では、内部コア111の寸法を径14mm、長さ33mmとし、外部コア121の寸法を径16mm、長さ45mmとした。螺旋パターンの寸法形状は、各受信周波数に合わせて調整された。
【0046】
比較例1のアンテナ装置は、
図12(a)に示すように、L1帯域の信号を受信可能なL1ヘリカルアンテナと、L2帯域の信号を受信可能なL2ヘリカルアンテナとを軸方向にスタックさせたものである。本実施形態と同様に、比較例1のL1,L2ヘリカルアンテナは、円柱状のコア表面に螺旋パターンを形成したものである。螺旋パターンの寸法形状は、各受信周波数に合わせて調整された。比較例1のアンテナ装置は給電点を2つ必要とする。よって、このアンテナ装置の出力側には、L1ヘリカルアンテナとL2ヘリカルアンテナの出力信号を合成する混合器が組み込まれた。比較例1のアンテナ装置の寸法は、径14mm、長さ60mmである。
【0047】
比較例2のアンテナ装置は、
図12(b)に示すように、1つのコアに、L1帯域の信号を受信可能なL1アンテナ素子と、L2帯域の信号を受信可能なL2アンテナ素子とを螺旋状に形成したものである。本実施形態と同様に、比較例2のL1,L2アンテナ素子は、円柱状のコア表面に螺旋パターンを形成したものである。螺旋パターンの寸法形状は、各受信周波数に合わせて調整された。そして、L1アンテナ素子がコアの基端から途中まで延びて、開回路を形成する。L2アンテナ素子がコアの基端から先端まで延びて、閉回路を形成する。比較例2のアンテナ装置の出力側には、不平衡−平衡変換のためにバランが組み込まれた。比較例2のアンテナ装置の寸法は、径14mm、長さ33mmである。
【0048】
図11は、アンテナ装置の評価の結果を示す、周波数(MHz)vs利得(dBic)のグラフである。
図11に示すように、実施例のL1帯域の1575.4MHzでの利得は、3.2dBi、L2帯域の1227.99MHzの利得は0.6dBiである。また、実施例では、帯域内の周波数において利得の変化が緩やかである。これに対し、比較例1のL1帯域の利得は、−2.9dBi、L2帯域の利得は−6.5dBiである。比較例1のアンテナ装置は、実施例1と比べて、全体形状がより大きく、尚且つ、アンテナ性能が大きく劣る。比較例2のL1帯域の利得は、−7.0dBi、L2帯域の利得は−2.3dBiである。比較例1のアンテナ装置は、実施例1と比べて、僅かに小型であるが、アンテナ性能が大きく劣る。比較例1,2のアンテナ装置は、いずれもアンテナの利得が低いことから、実施例と比べて実用性に乏しい。
【0049】
したがって、本発明のアンテナ装置10及びヘリカルアンテナ100は、
図11からも明らかであるように、(バラン、混合器などを必要しない)簡易な構造を有し、小型化及び改善したアンテナ性能の両立を実現するものである。
【0050】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の技術的範囲の下で、種々の実施形態や変形例を取り得る。
【0051】
[変形例]
(1)本発明のヘリカルアンテナは、少なくとも、内外アンテナ素子が電磁的に互いに干渉しないように配置された、内部コアアセンブリ及び外部コアアセンブリの多重構造を有していればよい。その他の構成については、当業者であれば、任意に設計変更可能である。例えば、上記実施形態では、内部コア及び外部コアの軸方向長さが異なるが、両者が同じであってもよい。また、上記実施形態のヘリカルアンテナのアンテナ素子から、グランドに接続された第2螺旋パターンが省略されてもよい。また、アンテナ素子の螺旋パターンは、閉回路でなく、開回路であってもよい。
【0052】
(2)上記実施形態のヘリカルアンテナは、内部コアアセンブリ及び外部コアアセンブリの2重構造を有し、2種の周波数帯の電波信号に対応する。しかしながら、本発明のヘリカルアンテナは、1又は複数の追加のコアアセンブリを内側又は外側に設けて3種以上の周波数帯の電波信号に対応してもよい。
【0053】
(3)本発明のヘリカルアンテナにおいて、螺旋パターンは、全体として螺旋状であればよく、実施形態のような一様の線に限定されない。例えば、アンテナパターンの途中に膨らみが形成されてもよい。また、アンテナパターンは、螺旋状に連続する波線で形成されてもよい。このように、アンテナパターンの電気的長さを変えることで、アンテナ素子のインピーダンス値を調整してもよい。
【0054】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。すなわち、本発明は、技術的範囲を逸脱することなく、当業者によって修正又は改変されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 アンテナ装置
11 回路板(LNA)
12 出力端子
13 カバー
100 ヘリカルアンテナ
110 内部コアアセンブリ
111 内部コア
112 貫通部
113 内部アンテナ素子
114 第1螺旋パターン
115 第2螺旋パターン
116 第1内部接続導体
117 第2内部接続導体
118 グランド用内部導体
120 外部コアアセンブリ
121 外部コア
122 中空部
123 外部アンテナ素子
124 第1螺旋パターン
125 第2螺旋パターン
126 グランド用外部導体
127 通孔
130 接続基板
131 第1接点
132 第2接点
133 給電電極(給電点)
134 グランド電極
135 コンデンサ
136 中間接続導体
140 同軸ケーブル(給電線)
141 信号端子
142 グランド端子
【要約】
【課題】複数の周波数で通信可能であり、且つ、より小型化可能な簡易な構造を有するヘリカルアンテナを提供する
【解決手段】ヘリカルアンテナ100は、誘電体材料からなる内部コア111と、内部アンテナ素子113と、内部コア111を内部に収容する誘電体材料からなる外部コア121と、外部アンテナ素子123と、内部アンテナ素子113及び外部アンテナ素子123に電力を伝送する給電線140と、内部アンテナ素子113及び外部アンテナ素子123への給電点133を有する接続基板130と、を備える。内部アンテナ素子113及び外部アンテナ素子123は、径方向において互いに重合しないように配置されている。
【選択図】
図1