特許第6568352号(P6568352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568352
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】定量吐出容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/42 20060101AFI20190819BHJP
   B65D 47/20 20060101ALI20190819BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   B65D47/42
   B65D47/20
   B65D83/00 J
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-255259(P2014-255259)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-113196(P2016-113196A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】丸山 精一
(72)【発明者】
【氏名】玉野 壽美
(72)【発明者】
【氏名】住吉 聡
(72)【発明者】
【氏名】小林 武
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−274957(JP,A)
【文献】 特開2010−260581(JP,A)
【文献】 実開平03−069658(JP,U)
【文献】 実開平03−064240(JP,U)
【文献】 特開2006−123305(JP,A)
【文献】 特開2014−046960(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0147459(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/42
B65D 47/20
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部の上端部に開口部が形成され、正立姿勢において前記胴部内に塗布液が貯留される容器本体と、
前記容器本体の開口部を閉塞した状態で取り付けられ、前記開口部の軸方向に弾性変形が可能に構成されると共に、内部に前記軸方向に沿って筒状のシリンダー部が形成されて、シリンダー部の内側に連通して塗布液を外部に吐出させる吐出部を形成した軟質弾性素材により構成された塗布部材と、
前記正立姿勢における前記シリンダー部の下方に配置され、前記塗布部材が前記軸方向に弾性変形を受けた際に、前記シリンダー部との間の塗布液流路を閉塞し、シリンダー部内の塗布液を前記吐出部を介して外部に吐出させるピストン部材と、
が備えられ、前記塗布部材が前記軸方向への変形を受けない状態においては、前記シリンダー部と前記ピストン部材との間が離れ、容器本体の倒立姿勢において前記シリンダー部内に容器本体内の塗布液が供給可能に構成され、
前記ピストン部材は、軸方向に沿って円筒状の外周面を備えると共に、容器本体の前記開口部に装着される筒体部内に、当該筒体部に連結された支持リブと環状面を介して配置され、
前記塗布部材の内側における前記シリンダー部の下底部には、環状の当接部が形成され、前記環状の当接部は、塗布部材に押し当て操作による圧力が加わった際に、前記環状面に当接することを特徴とする定量吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器本体の開口部に配置された塗布部を、被供給箇所に押し当てる毎に、定量の塗布液を吐出させることができる定量吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば毛髪剤や化粧液、もしくは洗浄液などの塗布液を容器本体内に収容し、容器本体の開口部に装着された中栓の構造を工夫することにより、塗布液の吐出量を制御できるようにした吐出容器が提供されている。
【0003】
例えば特許文献1には、容器本体の開口部にバネ弁が装着され、前記開口部を覆う塗布部に加わる圧力に応じて、前記バネ弁の開弁量が制御されるようにした吐出容器が開示されている。
この特許文献1に開示された吐出容器によると、被供給箇所(被塗布部)に対する前記塗布部の押し当て力を使い分けることで、塗布液の吐出量を調整することができる。
しかしながら、前記したバネ弁による液量の吐出制御は必ずしも安定せず、時には想定以上の過剰な塗布液の吐出を招くなど、使い勝手が悪いという課題がある。
【0004】
そこで特許文献2には、容器本体の開口部に装着された中栓部分に計量容器を形成し、この計量容器に入った塗布液を所定の操作により吐出することができるようにした吐出容器が開示されている。
すなわち、この特許文献2に開示された吐出容器においては、正立姿勢の容器本体を倒立姿勢にして、前記計量容器内に塗布液を満たし、再度容器本体を正立姿勢にすることで計量容器内の塗布液を別の貯留部内に移動させて、この状態で開口部を覆うキヤップを外す操作が必要となる。そして再び容器本体を倒立姿勢にすることで、前記貯留部に移動させた塗布液を、前記開口部を覆うように配置された塗布部より吐出させることができる。
【0005】
したがって、特許文献2に開示された吐出容器によると、定量の塗布液を吐出させるための一連の操作がきわめて繁雑であり、しかも前記中栓部分には計量容器や、計量容器内の塗布液を移動させる別の貯留部を備える構造が必要となる。
このように、前記中栓部分にはきわめて複雑な機構を備える必要があり、このために吐出容器全体の部品点数が増加し、必然的に吐出容器の製造コストの高騰は免れないものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−123305号公報
【特許文献2】特開2014−46960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこでこの発明は、従来の前記した吐出容器が抱える問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、構造が単純で製造コストを低減し得ると共に、塗布液の吐出操作が容易になし得る定量吐出容器を提供する点にある。
加えて、容器本体の開口部には軟質弾性素材による塗布部を備え、前記塗布部の押し当て操作による独自のポンプ作用により、一操作ごとに定量の塗布液を連続して吐出させることができる定量吐出容器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る定量吐出容器は、胴部の上端部に開口部が形成され、正立姿勢において前記胴部内に塗布液が貯留される容器本体と、前記容器本体の開口部を閉塞した状態で取り付けられ、前記開口部の軸方向に弾性変形が可能に構成されると共に、内部に前記軸方向に沿って筒状のシリンダー部が形成されて、シリンダー部の内側に連通して塗布液を外部に吐出させる吐出部を形成した軟質弾性素材により構成された塗布部材と、前記正立姿勢における前記シリンダー部の下方に配置され、前記塗布部材が前記軸方向に弾性変形を受けた際に、前記シリンダー部との間の塗布液流路を閉塞し、シリンダー部内の塗布液を前記吐出部を介して外部に吐出させるピストン部材とが備えられ、前記塗布部材が前記軸方向への変形を受けない状態においては、前記シリンダー部と前記ピストン部材との間が離れ、容器本体の倒立姿勢において前記シリンダー部内に容器本体内の塗布液が供給可能に構成され、前記ピストン部材は、軸方向に沿って円筒状の外周面を備えると共に、容器本体の前記開口部に装着される筒体部内に、当該筒体部に連結された支持リブと環状面を介して配置され、前記塗布部材の内側における前記シリンダー部の下底部には、環状の当接部が形成され、前記環状の当接部は、塗布部材に押し当て操作による圧力が加わった際に、前記環状面に当接することを特徴とする。
【0009】
この場合好ましくは、前記ピストン部材は、容器本体の前記開口部に装着される筒体部内に、当該筒体部に連結された支持リブを介して配置され、前記筒体部、支持リブ、ピストン部材が樹脂素材により一体成形されて中栓部材を構成した形態が採用される。
そして一つの好ましい例においては、前記塗布部材は、前記中栓部材を構成する前記筒体部を介して、容器本体の開口部を閉塞した状態で取り付けられる。
加えて前記塗布部材は、全体がシリコンゴムもしくはウレタン樹脂あるいは熱可塑性エラストマー等の軟質弾性素材により形成されることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
前記した構成の定量吐出容器によると、容器本体の開口部を覆う塗布部材は、軟質弾性素材により構成されて、塗布液を外部に吐出させる吐出部が形成される。そして、塗布部材の先端部を被供給箇所(被塗布部)に押し当てることで、前記塗布部材を開口部の軸方向に変形させることができ、これにより内部に配置されたシリンダー部とピストン部材との作用により、一定量の塗布液を前記吐出部より吐出させることができる。
【0011】
したがって、前記容器本体内に塗布液として例えば毛髪剤を収容した例においては、容器本体を倒立姿勢にして、前記塗布部材を頭皮に押し当てることで、頭皮に適度なマッサージ効果を与えることができる。
そして、塗布部材の一度の押し当て操作ごとに、前記したシリンダー部とピストン部材とによるポンプ作用により、定量の塗布液を吐出させることができるので、塗布部材の押し当て回数に応じた適切な量の毛髪剤を頭皮に供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明に係る定量吐出容器の全体構成を示した斜視図である。
図2】同じく中央部の縦断面図である。
図3】容器本体の開口部に装着される中栓部材を拡大して示した上面図である。
図4図3におけるA−A線より矢印方向に見た中栓部材の断面図である。
図5】容器本体の開口部を覆う塗布部材の拡大断面図である。
図6】塗布部材を被塗布部に押し当てることで弾性変形した状態を示す塗布部材の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明に係る定量吐出容器について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。なお、以下に示す各図においては、それぞれ同一部分を同一符号で示しているが、紙面の都合により一部の図面においては、代表的な部分に符号を付け、その詳細な構成は他の図面に付けた符号を引用して説明する場合もある。
そして、以下においては定量吐出容器内に塗布液として毛髪剤を貯留し、頭皮に対して定量の毛髪剤を供給することができるようにした例に基づいて説明する。
【0014】
図1および図2は、定量吐出容器の全体構成を示すものであり、この例に示す定量吐出容器1は、塗布液(毛髪剤)が貯留される容器本体2と、容器本体2の開口部に配置された中栓部材3と、容器本体2の開口部を覆う軟質弾性素材により構成された塗布部材4より構成されている。
そして、中栓部材3にはOリング5が装着されて、このOリング5によって前記中栓部材3は、容器本体2の開口部に対して液密状態に取り付けられている。
【0015】
容器本体2は、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂により成形され、図1および図2に示すように底部2aを有する円筒状の胴部2bを備え、この胴部2bの上部側が若干小径に成形されて端部に環状の開口部2cが形成されている。すなわち、容器本体2は正立姿勢において、前記胴部2b内に塗布液(毛髪剤)が貯留される。
【0016】
前記容器本体2の開口部2cには、前記したとおり中栓部材3が装着されている。
この中栓部材3の単体構成は、図3および図4に拡大した状態で示されており、中栓部材3は容器本体2の前記開口部2c内に装着されて、容器本体2に対して嵌合状態で取り付けられる筒体部3aを備えている。
この筒体部3aの上端部側は、外径が若干細く形成されて前記塗布部材4を装着するための円筒面3bが形成されている。そして、前記円筒面3bの上端部の内側には、軸方向に沿って円筒状の外周面を備えたピストン部材3cが、支持リブ3dを介して、前記筒体部3aと同心円状に取り付けられている。
【0017】
この実施の形態においては、前記ピストン部材3cは、図3に示したように筒体部3aの内周面に120度の間隔を持って放射状に成形された3つの支持リブ3dを介して取り付けられており、前記筒体部3a、支持リブ3d、ピストン部材3cは樹脂素材により一体成形されて中栓部材3を構成している。
したがって、定量吐出容器1を倒立姿勢にした場合においては、前記3つの支持リブ3dの間に形成された円弧状の隙間を介して、塗布液を塗布部材4側に流入させることができる。
【0018】
なお、前記中栓部材3には、図3および図4に示すように、ピストン部材3cの底部を取り囲むようにして環状の水平面3e(環状面3eとも言う。)が形成されており、この環状の水平面3eは、後述するとおり前記塗布部材4の所定以上の軸方向への変形を阻止するストッパーとしての機能を果たす。
また、中栓部材3に施された符号3fは、前記したOリング4を装着するための環状の溝部であり、符号3gは、容器本体2の環状の開口部2cに当接して、容器本体2に対する中栓部材3の位置決めを果たす鍔部である。さらに符号3hは、前記塗布部材4の基端部が装着されることで、中栓部材3から塗布部材4が外れるのを防止するオーバハング部である。
【0019】
図5および図6は、前記中栓部材3を介して容器本体2の開口部2cを覆うようにして取り付けられた塗布部材4の拡大断面図であり、図5は軸方向への変形を受けない状態を示しており、図6は白抜きの矢印で示す押圧力を受けて塗布部材4が弾性変形した状態を示している。
なお、この塗布部材4は、前記したとおり全体が軟質弾性素材により構成されており、好ましくはシリコンゴムもしくはウレタン樹脂あるいは熱可塑性エラストマー等の軟質弾性素材などにより構成される。
【0020】
前記塗布部材4は、基端部4aが円筒状に形成されて、前記中栓部材3のオーバハング部3gおよび円筒面3bに装着されることで、中栓部材3を介して容器本体2の開口部2cを閉塞した状態で取り付けられている。そして、塗布部材4の軸方向の中央部は、円錐形状に形成されて薄肉部4bを構成しており、その上端部は軸方向に若干肉厚状態に成形されて、塗布面としての天面4cが平坦状に形成されている。
さらに塗布部材4の内側には、軸方向に沿って筒状のシリンダー部4dが形成され、このシリンダー部4dの内側に連通して、塗布液を外部に吐出させる吐出部4eが形成されている。この例においては、吐出部4eとしての小径の孔が前記天面4cの中央部を貫通した状態で形成されている。
【0021】
また、前記シリンダー部4dに続いて、容器本体2側に向かって内径を拡大するテーパ面4fが形成されると共に、テーパ面4fが施された下底部は、環状の当接部4gを構成している。
この環状の当接部4gは、図6に示すように塗布部材4の天面4cに対して白抜きの矢印で示す押し当て操作による圧力が加わった際に、中栓部材3に形成されたストッパーとして機能する環状面3eに当接して、前記塗布部材4が所定以上に変形するのを阻止するように作用する。
【0022】
斯くして前記した構成の定量吐出容器1は、図1および図2に示す正立姿勢から倒立姿勢に反転させて、前記塗布部材4を下向きにした状態で利用される。
なお、定量吐出容器1を倒立姿勢とした場合には、容器本体2内に貯留された塗布液は、塗布部材4における吐出部4eの直後に到来する。しかしながら、吐出部4eは直径が0.6〜1.4mmの小径の孔が、軸方向に若干肉厚状態になされた部分に穿設されているので、塗布液の表面張力の作用により、塗布液が吐出部4eから漏出し、いわゆるボタ落ちするのを避けることができる。
【0023】
そして、前記塗布部材4を下向きにした状態で、前記塗布部材4の天面4cを頭皮に押し当てることで、塗布部材4に形成された円錐形状の薄肉部4bは、図6に示すように屈曲して軸方向への変形を受ける。
これにより、塗布部材4内に形成されたシリンダー部4bに対して、中栓部材3に形成されたピストン部材3cが相対的に入り込む。この時、シリンダー部4dに続く前記したテーパ面4fは、シリンダー部4bに対してピストン部材3cが確実に入り込むようにガイドとしての機能を果たす。
そうするとシリンダー部4b内の圧力が上昇するが、シリンダー部4bとピストン部材3cの隙間は極めて狭くなるため、塗布液(毛髪剤)はシリンダー部4bとピストン部材3cの隙間からは流出しにくく、シリンダー部4bとピストン部材3cの間の流路はほぼ閉塞状態となる。
【0024】
したがって、シリンダー部4b内の塗布液(毛髪剤)は、前記ピストン部材3cによって相対的に押されて、前記吐出部4eから天面4c側に吐出される。
この時の塗布液の吐出量は、シリンダー部4bの内側の容積に対応するものとなり、塗布部材4の一度の押し当て操作ごとに、定量の塗布液が塗布部材4の吐出部4eから吐出されることになる。
【0025】
それ故、軟質弾性素材により成形された塗布部材4の天面4cが、頭皮に対して適度なマッサージ効果を与えることができると共に、塗布部材4の押し当て回数に応じた適切な量の毛髪剤を頭皮に供給することが可能であり、前記した発明の効果の欄に記載したとおりの作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 定量吐出容器
2 容器本体
2a 底部
2b 胴部
2c 開口部
3 中栓部材
3a 筒体部
3b 円筒面
3c ピストン部材
3d 支持リブ
3e 環状面(ストッパー)
3f 環状溝部
3g 鍔部
3h オーバハング部
4 塗布部材
4a 基端部
4b 薄肉部
4c 天面(塗布面)
4d シリンダー部
4e 吐出部(小径孔)
4f テーパ面
4g 当接部
5 Oリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6