(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568385
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】空調制御装置
(51)【国際特許分類】
F24F 11/33 20180101AFI20190819BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20190819BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20190819BHJP
F24F 11/88 20180101ALI20190819BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20190819BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20190819BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20190819BHJP
G01J 5/48 20060101ALI20190819BHJP
F24F 120/10 20180101ALN20190819BHJP
F24F 120/12 20180101ALN20190819BHJP
F24F 120/14 20180101ALN20190819BHJP
F24F 120/20 20180101ALN20190819BHJP
F24F 140/10 20180101ALN20190819BHJP
【FI】
F24F11/33
F24F11/64
F24F11/80
F24F11/88
F24F11/89
G06T7/20 300Z
G06T1/00 340B
G01J5/48 A
F24F120:10
F24F120:12
F24F120:14
F24F120:20
F24F140:10
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-83091(P2015-83091)
(22)【出願日】2015年4月15日
(65)【公開番号】特開2016-205634(P2016-205634A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 寛
【審査官】
町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−055226(JP,A)
【文献】
特開2011−174648(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0205371(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0148706(US,A1)
【文献】
特開2008−051463(JP,A)
【文献】
特開2015−111019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/33
F24F 11/64
F24F 11/80
F24F 11/88
F24F 11/89
G01J 5/48
G06T 1/00
G06T 7/20
F24F 120/10
F24F 120/12
F24F 120/14
F24F 120/20
F24F 140/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間の空間的温度分布を測定する熱画像センサと、
前記熱画像センサの測定によって得られた熱画像より前記対象空間に在室する人を判別する人判別部と、
前記熱画像における前記人判別部が判別した人の部分より前記人の行動を特定する行動特定部と、
前記行動特定部が特定した行動により前記人の暑いまたは寒いのいずれかの体感温度状態を推定する体感温度推定部と、
前記体感温度推定部が推定した体感温度状態より前記対象空間の空調を行う空調設備の動作を制御する空調機器制御部と
複数の行動と各々の前記行動に対応する熱画像とを記憶した行動分類記憶部と、
複数の行動と各々の前記行動に対応する体感温度状態とを記憶した体感温度分類記憶部と
を備え、
前記行動特定部は、前記熱画像における前記人判別部が判別した人の部分に類似する熱画像に対応する行動を前記行動分類記憶部より取得して前記人の行動とし、
前記体感温度推定部は、前記行動特定部が特定した行動に対応する体感温度状態を前記体感温度分類記憶部より取得して前記人の体感温度状態と推定する
ことを特徴とする空調制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在室者にとってより快適な空調を行う空調制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数のテナントを収用する商業施設など、大規模な建築物においては、在室者に対する快適な空間の提供を目指し、計測される温度や湿度などをもとに、様々な手法により温度および湿度などの制御を行っている。しかしながら、このような空調制御では、温湿度などの環境に対する感受性は在室者毎に異なり、在室者の要望に必ずしも適合した空調制御が行われていない場合もある。
【0003】
これに対し、例えば、要望を受け付ける端末装置を設け、ネットワークを介し、端末装置に入力された空調に対する事情,要望を収集し、収集した各情報に対応して空調を行うシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−295202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術では、在室者からの情報(要望)通知が必要となり、在室者が要望などを通知するという行動を起こさなければ、空調制御を、在室者の要望に適合させることができない。このように、従来では、空調制御を、在室者の潜在的な要望に適合させることが容易ではないという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、在室者の潜在的な要望に適合させて空調制御が実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空調制御装置は、対象空間の空間的温度分布を測定する熱画像センサと、熱画像センサの測定によって得られた熱画像より対象空間に在室する人を判別する人判別部と、熱画像における人判別部が判別した人の部分より人の行動を特定する行動特定部と、行動特定部が特定した行動により人の暑いまたは寒いのいずれかの体感温度状態を推定する体感温度推定部と、体感温度推定部が推定した体感温度状態より対象空間の空調を行う空調設備の動作を制御する空調機器制御部とを備える。
【0008】
上記空調制御装置において、複数の行動と各々の行動に対応する熱画像とを記憶した行動分類記憶部と、複数の行動と各々の行動に対応する体感温度状態とを記憶した体感温度分類記憶部とを備え、行動特定部は、熱画像における人判別部が判別した人の部分に類似する熱画像に対応する行動を行動分類記憶部より取得して人の行動とし、体感温度推定部は、行動特定部が特定した行動に対応する体感温度状態を体感温度分類記憶部より取得して人の体感温度状態と推定す
る。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したことにより、本発明によれば、在室者の潜在的な要望に適合させて空調制御が実施できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態における空調制御装置101の構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、複数の熱画像センサ102の配置例を示す構成図である。
【
図3】
図3は、熱画像センサ102により測定された空間温度分布の1例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態における空調制御装置101の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態における空調制御装置101の構成を示す構成図である。空調制御装置101は、熱画像センサ102,人判別部103,行動分類記憶部104,体感温度分類記憶部105,行動特定部106,体感温度推定部107,空調機器制御部108,および画像取得部109を備える。
【0012】
熱画像センサ102は、対象空間121の空間的温度分布を測定する。熱画像センサ102は、
図2に例示するように、対象空間121の天井などに、均等に分割したエリア201毎に配置されている。
図2の例では、4行6列に、24個の熱画像センサ102が配列されている。熱画像センサ102固有の検出範囲に基づいて、各エリア201の間隔が決定されている。このようにすることで、対象空間121内の各エリア201の下方空間における、3次元的な温度分布(空間的温度分布)を測定することができる。また、熱画像センサ102は、例えば、2次元に配列された複数のサーモパイルから構成されたサーモパイルアレイセンサである。サーモパイルは、熱電対より構成された熱電変換素子(赤外線センサ)である。
【0013】
人判別部103は、熱画像センサ102の測定によって得られた空間的温度分布情報(熱画像)より対象空間121に在室する人(在室者)を判別する。熱画像センサ102が測定した空間温度分布は、画像取得部109により収集され、空間的温度分布情報として人判別部103に転送される。
【0014】
例えば、
図3に示すように、熱画像センサ102によって人間が存在している空間を測定することで得られた空間的温度分布のパターンを、基準パターンとして予め用意しておく。
図3において、より高温の領域を示す白に近い部分が、人の空間的温度分布のパターンである。この基準パターンと所定の範囲で近似している空間的温度分布のパターンが得られた場合、対象空間121に人が在室していることを判別する。
【0015】
行動分類記憶部104は、複数の行動と各々の行動に対応する熱画像とを記憶している。例えば、行動分類記憶部104は、「上着を脱ぐ」、「着ている衣服の袖をまくる」、「うちわで扇ぐ」、「扇風機を操作している」、「上着を着る」、「着衣のポケットに手を入れる」、「暖かいもの(缶コーヒー、カイロ、など)を握る」の各行動に対し、予め取得してある熱画像を対応づけて記憶している。
【0016】
体感温度分類記憶部105は、複数の行動と各々の行動に対応する体感温度状態とを記憶している。例えば、「上着を脱ぐ」、「着ている衣服の袖をまくる」、「うちわで扇ぐ」、「扇風機を操作している」の行動に対し、「暑い」の体感温度状態を対応づけて記憶している。また、「上着を着る」、「着衣のポケットに手を入れる」、「暖かいものを握る」の行動に対して「寒い」の体感温度状態を対応づけて記憶している。
【0017】
行動特定部106は、熱画像における人判別部103が判別した人の部分より人の行動を特定する。行動特定部106は、熱画像における人判別部103が判別した人の部分に類似する熱画像に対応する行動を行動分類記憶部104より取得し、人判別部103が判別した人の行動とする。例えば、熱画像における人判別部103が判別した人の部分が、行動分類記憶部104に記憶されている「上着を脱ぐ」に対応づけられている熱画像に類似している場合、行動特定部106は、人判別部103が判別した人が、「上着を脱ぐ」という行動をしているものと特定する。熱画像は、例えば、予め設定されている時間の間の熱分布の変化を示すものである。例えば、上着を着ている状態と脱いでいる状態とでは、熱画像において2℃程度の差があり、これらの区別が可能である。
【0018】
体感温度推定部107は、行動特定部106が特定した行動により人の暑いまたは寒いのいずれかの体感温度状態を推定する。体感温度推定部107は、行動特定部106が特定した行動に対応する体感温度状態を、体感温度分類記憶部105より取得して人の体感温度状態と推定する。また、体感温度推定部107は、行動特定部106が特定した行動により、人が丁度良いとしている体感温度状態を推定する。
【0019】
例えば、上述したように、行動特定部106が、「上着を脱ぐ」という行動をしているものと特定した場合、体感温度分類記憶部105においては、「上着を脱ぐ」は、「暑い」の体感温度状態を対応づけられているので、体感温度推定部107は、人判別部103が判別した人の体感温度状態は、「暑い」であると推定する。この推定の結果は、在室者の潜在的な要望ととらえることができる。
【0020】
空調機器制御部108は、体感温度推定部107が推定した体感温度状態より対象空間の空調を行う空調設備151の動作を制御する。例えば、体感温度推定部107が推定した体感温度状態が「暑い」の場合、対象空間121の温度を低下させる方向に空調設備151の動作を制御する。また、体感温度推定部107が推定した体感温度状態が「寒い」の場合、対象空間121の温度を上昇させる方向に空調設備151の動作を制御する。また、体感温度推定部107が推定した体感温度状態が「丁度良い」の場合、空調機器制御部108は、現状の空調設備151の動作を維持する。
【0021】
また、空調機器制御部108は、人判別部103が人を検出しない場合、熱画像センサ102の測定によって得られた空間的温度分布情報の全体より算出される温度の平均値により、空調設備151の動作を制御する。
【0022】
次に、本発明の実施の形態における空調制御装置の動作例について
図4のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS401で、熱画像センサ102より対象空間121の空間的温度分布を測定し、空間的温度分布情報を得る。次に、ステップS402で、人判別部103が、熱画像センサ102の測定によって得られた空間的温度分布情報より対象空間121に在室する人を判別する。
【0023】
次に、ステップS403で、人判別部103が、得られた空間的温度分布情報に、在室者の存在を判定する。この判定で、在室者が存在するものとされた場合(ステップ403のy)、ステップS404で、行動特定部106が、熱画像における人判別部103が判別した人の部分に類似する熱画像に対応する行動を行動分類記憶部104より取得し、人判別部103が判別した人の行動とする。 次いで、ステップS405で、体感温度推定部107が、行動特定部106が特定した行動に対応する体感温度状態を、体感温度分類記憶部105より取得し、人判別部103が判別した人の体感温度状態と推定する。この後、ステップS406で、空調機器制御部108が、体感温度推定部107が推定した体感温度状態より対象空間の空調を行う空調設備151の動作を制御する。
【0024】
一方、人判別部103の判定で、在室者が存在しないとされた場合(ステップ403のn)、ステップS407で、空調機器制御部108が、空間的温度分布情報の全体より温度の平均値を算出する。次いで、ステップS408で、空調機器制御部108が、算出された温度平均値により、空調設備151の動作を制御する。例えば、設定されている制御温度と算出された温度平均値との差が小さくなるように、空調設備151の動作を制御する。
【0025】
以上に説明したように、本発明によれば、熱画像センサの測定により得られた対象空間の空間的温度分布情報の中で、人の部分の空間的温度分布より人の行動を特定し、特定した行動より人の体感温度状態を推定し、推定した体感温度状態より空調設備の動作を制御するようにした。この結果、在室者による要望の通知がなくても、在室者の潜在的な要望に適合させて空調制御が実施できるようになる。
【0026】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0027】
101…空調制御装置、102…熱画像センサ、103…人判別部、104…行動分類記憶部、105…体感温度分類記憶部、106…行動特定部、107…体感温度推定部、108…空調機器制御部、109…画像取得部、121…対象空間、151…空調設備。