特許第6568394号(P6568394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568394
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】ナットランナシステム
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   B23P19/06 Q
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-96180(P2015-96180)
(22)【出願日】2015年5月11日
(65)【公開番号】特開2016-209960(P2016-209960A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 秀士
(72)【発明者】
【氏名】竹林 潤
(72)【発明者】
【氏名】倉岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】水本 裕之
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0139375(US,A1)
【文献】 特開平04−183584(JP,A)
【文献】 特開平04−360732(JP,A)
【文献】 特開2009−013732(JP,A)
【文献】 特開平09−173624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00−21/00
B23Q 11/00−13/00
B25B 23/00−23/18
B25H 1/00− 5/00
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に締め付け軸を有し他端に結合部を有する複数のビットを保持する保持台と、
ロボットアームの手首部に連結される支持体、前記支持体に支持された回転軸、および前記回転軸に連結された、前記複数のビットのうちの1つが装着されるビットチェンジャ、を含む、ナットランナ本体と、を備え、
前記複数のビットのそれぞれの前記結合部は、前記締め付け軸と同軸上に係合穴を有し、前記係合穴の内周面には、周方向に連続する環状突起が設けられており、
前記ビットチェンジャは、前記係合穴に挿入される係合軸、および前記係合軸に設けられた作動片であって、前記環状突起の内周縁よりも径方向外側に張り出す係合位置と前記環状突起の内周縁よりも径方向内側に後退する後退位置との間で移動する作動片、を有するアクチュエータを含み、
前記回転軸の前記ビットチェンジャと反対側の端部には、ストッパ部材が固定されており、
前記ナットランナ本体は、前記回転軸と回転不能に嵌合し、かつ、前記回転軸を軸方向に摺動可能に支持するガイドと、前記ガイドに固定された従動ギアと、前記従動ギアと噛み合う駆動ギアと、前記回転軸を前記ビットチェンジャに向かって付勢するスプリングと、前記支持体に固定され、かつ、前記回転軸に挿通されたスリーブと、前記スリーブに軸受を介して回転可能に支持された、前記ストッパ部材と当接するカラーを含む、ナットランナシステム。
【請求項2】
前記アクチュエータは、流体圧によって駆動されるものであり、
前記回転軸は、管状であり、前記回転軸内に、前記アクチュエータへ流体圧を供給するチューブが配索されている、請求項1に記載のナットランナシステム。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記チューブを通じて前記アクチュエータへ流体圧が供給されないときは前記作動片を前記係合位置に維持し、前記チューブを通じて前記アクチュエータへ流体圧が供給されたときに前記作動片を前記後退位置に移動するように構成されている、請求項2に記載のナットランナシステム。
【請求項4】
前記複数のビットのそれぞれの前記結合部は、前記係合穴と平行な回り止め穴を有し、
前記ビットチェンジャは、前記回り止め穴に挿入される回り止めピンを有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のナットランナシステム。
【請求項5】
前記保持台は、前記複数のビットが挿入される保持穴を有していて、前記複数のビットの前記結合部が載置されるように構成されており、
前記複数のビットの結合部は円盤状をなしており、これらの結合部の外周面には、互いに異なる位置に少なくとも2つの位置決め溝がそれぞれ設けられており、
前記保持台には、前記複数のビットのそれぞれに対して、前記少なくとも2つの位置決め溝に嵌り合う少なくとも2つの位置決めピンが設けられている、請求項1〜のいずれか一項に記載のナットランナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジの締め付け用のナットランナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば各種装置の自動組み立てラインでは、ロボットを用いたネジの締め付けが行われている。例えば、特許文献1には、ロボットアームの手首部に取り付けられるナットランナ本体に、複数のビットのうちの1つを機械的に装備させることができるナットランナシステムが開示されている。
【0003】
より詳しくは、特許文献1に開示されたナットランナシステムでは、図10に示すように、ナットランナ本体100が、保持台170(図11参照)に保持された複数のビット160のうちの1つが装着されるビットチェンジャ110を含む。
【0004】
ビットチェンジャ110は、中空軸120と、中空軸120の内側に配置された内側摺動部材130と中空軸120の外側に配置された外側摺動部材140を含む。中空軸120には、適所に複数の切欠き121が設けられており、これらの切欠き121内にボール150が配置されている。また、外側摺動部材140には、ボール150が嵌まり込む凹部141が設けられている。
【0005】
一方、各ビット160の上部には、径方向外向きに開口する凹部161が設けられている。ビット160の上部がビットチェンジャ110の中空軸120内に挿入されると、内側摺動部材130がビット160に押されて上方に移動する。そうすると、ボール150が凹部161に嵌まり込み、外側摺動部材140が下方に移動する。これにより、ビットチェンジャ110へのビット160の装着が行われる。
【0006】
ビット160をビットチェンジャ110から取り外すには、外側摺動部材140を上方に移動する。そうすると、ボール150が外側摺動部材140の凹部141に嵌まり込み、ビット160が中空軸120内から抜け出し可能となる。図11に示すように、保持台170には、外側摺動部材140を上方に移動させるための突起171が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−88168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されたナットランナシステムでは、図11に示すように、保持台170の突起171がない位置がビット160の装着位置P1であり、突起171がある位置がビット160の取り外し位置P2である。従って、同一のビット160を繰り返し使用するためには、ビット160をビットチェンジャ110から取り外す際に、ロボットによってビット160を中空軸120内に抜け出し可能な状態に維持したまま取り外し位置P2から装着位置P1まで移動する必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、保持台上の同じ位置でビットを装着および取り外しすることができるナットランナシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明のナットランナシステムは、一端に締め付け軸を有し他端に結合部を有する複数のビットを保持する保持台と、ロボットアームの手首部に連結される支持体、前記支持体に支持された回転軸、および前記回転軸に連結された、前記複数のビットのうちの1つが装着されるビットチェンジャ、を含む、ナットランナ本体と、を備え、前記複数のビットのそれぞれの前記結合部は、前記締め付け軸と同軸上に係合穴を有し、前記係合穴の内周面には、周方向に連続する環状突起が設けられており、前記ビットチェンジャは、前記係合穴に挿入される係合軸、および前記係合軸に設けられた作動片であって、前記環状突起の内周縁よりも径方向外側に張り出す係合位置と前記環状突起の内周縁よりも径方向内側に後退する後退位置との間で移動する作動片、を有するアクチュエータを含む、ことを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、ビットチェンジャに含まれるアクチュエータの係合軸をビットの係合穴内に挿入した状態で、作動片を径方向外側に移動させれば、ビットチェンジャにビットを装着することができる。一方、作動片を径方向内側に移動させれば、ビットチェンジャからビットを取り外すことができる。従って、ビットを保持台上の同じ位置で装着および取り外しすることができる。
【0012】
前記アクチュエータは、流体圧によって駆動されるものであり、前記回転軸は、管状であり、前記回転軸内に、前記アクチュエータへ流体圧を供給するチューブが配索されていてもよい。この構成によれば、流体圧によって駆動されるアクチュエータ用のチューブを、ビットチェンジャの近傍では管状の回転軸内に隠すことができる。
【0013】
前記アクチュエータは、前記チューブを通じて前記アクチュエータへ流体圧が供給されないときは前記作動片を前記係合位置に維持し、前記チューブを通じて前記アクチュエータへ流体圧が供給されたときに前記作動片を前記後退位置に移動するように構成されていてもよい。この構成によれば、停電などによってアクチュエータへ流体圧が供給されなくなったとしても、ビットチェンジャからのビットの落下を防止することができる。
【0014】
前記ナットランナ本体は、前記回転軸と回転不能に嵌合し、かつ、前記回転軸を軸方向に摺動可能に支持するガイドと、前記ガイドに固定された従動ギアと、前記従動ギアと噛み合う駆動ギアと、前記回転軸を前記ビットチェンジャに向かって付勢するスプリングを含んでもよい。この構成によれば、ビットの締め付け軸が締め付け対象ネジに過度に強い力で押し付けられることを防止することができる。
【0015】
例えば、前記回転軸の前記ビットチェンジャと反対側の端部には、ストッパ部材が固定されており、前記ナットランナ本体は、前記支持体に固定され、かつ、前記回転軸に挿通されたスリーブと、前記スリーブに軸受を介して回転可能に支持された、前記ストッパ部材と当接するカラーを含んでもよい。
【0016】
前記複数のビットのそれぞれの前記結合部は、前記係合穴と平行な回り止め穴を有し、前記ビットチェンジャは、前記回り止め穴に挿入される回り止めピンを有してもよい。この構成によれば、ビットチェンジャおよびビットの結合部をフラットな面で互いに接触する単純な形状とすることができる。
【0017】
前記保持台は、前記複数のビットが挿入される保持穴を有していて、前記複数のビットの前記結合部が載置されるように構成されており、前記複数のビットの結合部は円盤状をなしており、これらの結合部の外周面には、互いに異なる位置に少なくとも2つの位置決め溝がそれぞれ設けられており、前記保持台には、前記複数のビットのそれぞれに対して、前記少なくとも2つの位置決め溝に嵌り合う少なくとも2つの位置決めピンが設けられていてもよい。この構成によれば、作業者による保持穴へのビットの入れ間違いを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、保持台上の同じ位置でビットを装着および取り外しすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るナットランナシステムにおけるナットランナ本体の側面図および保持台の断面図である。
図2】ナットランナ本体の平面図である。
図3図2のIII−III線に沿った断面図である。
図4】回転軸の上部付近の断面図である。
図5】ビットチェンジャの断面図である。
図6】ビットチェンジャの下面図である。
図7図6のVII−VII線に沿った断面図である。
図8】保持台の平面図である。
図9図8のIX−IX線に沿った断面図である。
図10】従来のナットランナシステムの一部の拡大図である。
図11】従来のナットランナシステムにおける保持台の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、本発明の一実施形態に係るナットランナシステム1を示す。このナットランナシステム1は、ネジ(例えば、六角穴付ボルト)の締め付け用のものであり、複数のビット5を保持する保持台6と、ナットランナ本体11を含む。なお、図1では、作図の便宜上、保持台6をロボットアームの手首部10の真下に描いているが、保持台6の正確な位置は、後述するビットチェンジャ4の下方である。
【0021】
ナットランナ本体11は、ロボットアームの手首部10に連結される支持体2と、支持体2に支持された、上下方向に延びる回転軸3と、回転軸3に連結されたビットチェンジャ4を含む。ビットチェンジャ4には、複数のビット5のうちの1つが装着される。
【0022】
図1図3に示すように、支持体2は、水平面と平行な略長方形状の天板21と、天板21の一端側(図1および図2では右側)の上面に固定された、ロボットアームの手首部10との連結用の台座22と、天板21の他端側の下面に固定されたハウジング23を含む。回転軸3は、ハウジング23および天板21を貫通している。
【0023】
天板21には、回転軸3を回転させるモータ12が、減速機13を介して取り付けられている。減速機13の出力軸14はハウジング23内に位置しており、この出力軸14には駆動ギア15が固定されている。
【0024】
本実施形態では、回転軸3が支持体2に対して軸方向に移動可能に構成されている。具体的には、ハウジング23内に、回転軸3と回転不能に嵌合し、かつ、回転軸3を軸方向に摺動可能に支持するガイド31が配置されている。回転軸3およびガイド31は、例えばボールスプラインである。
【0025】
ガイド31の上方には、上述した駆動ギア15と噛み合う従動ギア16が配置されている。従動ギア16は、ガイド31を収容する筒状の固定部材32と共にガイド31を挟み込むことによって、ガイド31に固定されている。固定部材32は、一対の軸受33を介してハウジング23に回転可能に支持されている。
【0026】
さらに、本実施形態では、回転軸3が、モータ12の脇に配置されたスプリング85によってビットチェンジャ4に向かって付勢されている。図4に示すように、回転軸3のビットチェンジャ4と反対側の端部には、ストッパ部材75が固定されている。このストッパ部材75の上部は、一対の軸受81を介して筒状部材82に回転可能に支持されている。筒状部材82の上端部には、スプリング受け板83が固定されており、このスプリング受け板83には、スプリング85をガイドする突起84が設けられている。一方、スプリング85の上方には、スプリング受け板86が配置されている。このスプリング受け板86は、4本の支柱87によって天板21に固定されている。なお、図示は省略するが、スプリング受け板86にも、スプリング85をガイドする突起が設けられている。
【0027】
ストッパ部材75は、通常は、スプリング85の付勢力によって、支持体2の天板21との相対位置が不変のカラー74と当接する。天板21には、回転軸3に挿通されたスリーブ71が固定されている。このスリーブ71には、当該スリーブの外周縁部から上方に延びる筒状部材72が固定されている。そして、筒状部材72とカラー74の間に軸受73が配置されている。換言すれば、カラー74は、スリーブ71に軸受73および筒状部材72を介して回転可能に支持されている。
【0028】
上述したビットチェンジャ4は、図5および図6に示すように、上下方向に延びる円柱状のビットチェンジャ本体41と、このビットチェンジャ本体41の下面に取り付けられたアクチュエータ9を含む。ビットチェンジャ本体41の上面には、回転軸3の下部が挿入される凹部46が設けられている。
【0029】
アクチュエータ9は、ビットチェンジャ本体41に埋め込まれる本体部91と、本体部91から下方に突出する係合軸92と、係合軸92に設けられた複数(図例では3つであるが、2つまたは4つ以上であってもよい)の作動片93を有する。本実施形態では、アクチュエータ9が流体圧(空圧であってもよいし油圧であってもよい)によって駆動されるものである。このため、回転軸3が管状であり、回転軸3内に、アクチュエータ9へ流体圧を供給するチューブ35が配索されている。
【0030】
ビットチェンジャ本体41には、アクチュエータ9から凹部46の底面に至るように、上記の流体圧を持つ作動流体用の流路42が形成されており、流路42の上端には継手43が設けられている。この継手43に、チューブ35の下端が接続されている。
【0031】
図4に示すように、ストッパ部材75にも、作動流体用の流路76が当該ストッパ部材75の中心線上に形成されており、流路76の下端および上端には継手77,78がそれぞれ設けられている。チューブ35の上端は、下側の継手77に接続され、上側の継手78には、筒状部材82を貫通する図略のチューブが接続されている。
【0032】
図5および図6に戻って、本実施形態では、作動片93がボールである。ただし、アクチュエータ9は、リング状の作動片を1つだけ有していてもよい。
【0033】
作動片93は、係合軸92内に収まる後退位置と係合軸92から突出する係合位置との間で径方向に移動する。本実施形態では、アクチュエータ9が、チューブ35を通じて当該アクチュエータ9へ流体圧が供給されないときは作動片93を係合位置に維持し、チューブ35を通じて当該アクチュエータ9へ流体圧が供給されたときに作動片93を後退位置に移動するように構成されている。
【0034】
具体的には、図7に示すように、本体部91および係合軸92は中空であり、本体部91および係合軸92の内部には受圧部材94が配置されている。受圧部材94は、作動片93を係合位置に維持するための先端部94aと、作動片93を後退位置に移動させるための凹部94bを有する。受圧部材94は、通常時はスプリング95によってピットチェンジャ本体41に押し付けられ、これにより先端部94aが作動片93と当接する。一方、流路42を通じて受圧部材94の背面に流体圧が作用すると、受圧部材94が上昇し、作動片93が凹部94bに嵌まり込む。
【0035】
上述した各ビット5は、図1に示すように、一端(下端)に締め付け軸51を有し、他端(上端)に結合部52を有し、中央に本体部58を有している。本実施形態では、図8および図9に示すように、結合部52が本体部58よりも大径の円盤状である。
【0036】
上述した保持台6には、複数のビット5が挿入される保持穴61が設けられている。保持穴61の直径は、結合部52の直径よりも小さい。このため、保持台6には、複数のビット5の結合部52が載置される。
【0037】
複数のビット5の結合部52の外周面には、互いに異なる位置に少なくとも2つ(図例では3つ)の位置決め溝56がそれぞれ設けられている。一方、保持台6には、各ビット5に対して、位置決め溝56に嵌り合う少なくとも2つ(図例では3つ)の位置決めピン62が設けられている。このため、作業者による保持穴61へのビット5の入れ間違いを防止することができる。なお、隣り合うビット5では、位置決めピン62が共有されているため、位置決めピン62の総数は9個ではなく7個である。
【0038】
各ビット5の結合部52には、締め付け軸51と同軸上に係合穴53が設けられている。係合穴53の内周面には、周方向に連続する環状突起54が設けられている。係合穴53には、上述したアクチュエータ9の係合軸92が挿入される。また、作動片93に関する上述した係合位置とは、作動片93が環状突起54の内周縁よりも径方向外側に張り出す位置であり、上述した後退位置とは、作動片93が環状突起54の内周縁よりも径方向内側に後退する位置である。
【0039】
さらに、各ビット5の結合部52には、係合穴53と平行な2つの回り止め穴55が設けられている。ただし、回り止め穴55は、1つだけ設けられていてもよい。一方、図5および図6に示すように、ビットチェンジャ本体41の下面には、回り止め穴55に挿入される2つの回り止めピン45が設けられている。
【0040】
なお、図9に示すように、各ビット5の結合部52には、ネジ軸57が一体的に形成されており、このネジ軸57に本体部58が螺合している。さらに、ネジ軸57には、本体部58を固定する固定ナット59が螺合している。
【0041】
本実施形態の構成によれば、ビットチェンジャ4に含まれるアクチュエータ9の係合軸92をビット5の係合穴53内に挿入した状態で、作動片93を径方向外側に移動させれば、ビットチェンジャ4にビット5を装着することができる。一方、作動片93を径方向内側に移動させれば、ビットチェンジャ4からビット5を取り外すことができる。従って、ビット5を保持台6上の同じ位置で装着および取り外しすることができる。
【0042】
また、本実施形態では、チューブ35が管状の回転軸3内に配索されているので、流体圧によって駆動されるアクチュエータ9用のチューブ35を、ビットチェンジャ4の近傍では回転軸3内に隠すことができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、アクチュエータ9に流体圧が供給されたときに作動片93が係合位置から後退位置に移動するので、停電などによってアクチュエータ9へ流体圧が供給されなくなったとしても、ビットチェンジャ4からのビット5の落下を防止することができる。
【0044】
また、本実施形態では、軸方向に移動可能な回転軸3がビットチェンジャ4に向かって付勢されているので、ビット5の締め付け軸51が締め付け対象ネジに過度に強い力で押し付けられることを防止することができる。
【0045】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0046】
例えば、回転軸3は、必ずしも支持体2に対して軸方向に移動可能に構成されている必要はなく、回転軸3の軸方向における回転軸3と支持体2との相対位置が固定されていてもよい。
【0047】
また、ビットチェンジャ4に対するビット5の回り止め構造は、必ずしも回り止め穴55と回り止めピン45である必要はない。例えば、ビット5の結合部52の上面およびビットチェンジャ本体41の下面を、互いに回転不能に係合するような形状にしてもよい。ただし、前記実施形態のように回り止め穴55および回り止めピン45を用いれば、ビットチェンジャ本体41およびビット5の結合部52をフラットな面で互いに接触する単純な形状とすることができる。
【0048】
また、アクチュエータ9は、必ずしも流体圧によって駆動される必要はなく、例えばソレノイドによって駆動されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ナットランナシステム
10 ロボットアームの手首部
11 ナットランナ本体
12 モータ
15 駆動ギア
16 従動ギア
2 支持体
3 回転軸
31 ガイド
35 チューブ
4 ビットチェンジャ
45 回り止めピン
5 ビット
51 締め付け軸
52 結合部
53 係合穴
54 環状突起
55 回り止め穴
56 位置決め溝
6 保持台
61 保持穴
62 位置決めピン
71 スリーブ
73 軸受
74 カラー
75 ストッパ部材
87 スプリング
9 アクチュエータ
92 係合軸
93 作動片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11