特許第6568405号(P6568405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6568405金属管継手のロックリング及びこれを備えた金属管継手
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568405
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】金属管継手のロックリング及びこれを備えた金属管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/091 20060101AFI20190819BHJP
   F16L 21/08 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   F16L37/091
   F16L21/08 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-111165(P2015-111165)
(22)【出願日】2015年6月1日
(65)【公開番号】特開2016-223544(P2016-223544A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151025
【氏名又は名称】株式会社タブチ
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】寺田 孝
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03995897(US,A)
【文献】 特開2011−163473(JP,A)
【文献】 米国特許第01817776(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/091
F16L 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管継手に複数個を同軸線上に内蔵して金属管の引き抜きを規制するロックリングであって、
金属製円板の中心に金属管の引き抜きを規制する複数の爪を有した挿通孔を設けると共に、前記円板の外周縁には前記挿通孔の軸線と平行する向きに水平なフランジを連続して設け、
該フランジの先端部は、さらに半径方向内向き90度に折り曲げて、前記円板の板面と平行する垂直部を形成し、
当該垂直部が隣合う別のロックリングの前記円板の板面に当接することで、複数個が隙間をおいて金属管継手に内蔵されることを特徴としたロックリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療用のガス銅管に代表される金属管のワンタッチ継手に係り、金属管の引き抜きを規制するロックリングの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属管のワンタッチ継手として特許文献1に開示されたものがある。この従来継手は、複数の規制片を備えた複数個のロックリングを本体に固定内蔵しており、金属管を本体奥端まで差し込むことによって、各ロックリングの規制片が管外面に食い込んで抜け止めがなされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3065308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、ロックリングを複数個内蔵する際、それらの間にスペーサを介装している。その実施形態では、ロックリングは、環状をなすベースリングと、そのベースリングから内方へ45度の角度をもって突出するように構成されており、スペーサはペースリングと同じ厚みの円環状である。スペーサは、隣合うロックリングに隙間を与えるものであって、これによって複数個のロックリングがぴったり重なることがなくなる。したがって、スペーサを介装することによって、ロックリングそれぞれの規制片の変形等が許容され、各ロックリングが金属管の抜け出し防止機能を発揮するものと理解される。言い換えれば、スペーサを介装しなければ、複数個のロックリングがぴったり重なって、あたかも分厚い一つのロックリングのようになり、規制片の変形等が実現せず、継手として機能させることができなくなる。
【0005】
このように特許文献1の継手では、スペーサが必須の部材となる。しかも、ロックリングの間に少なくとも一つが必要であるから、その数は、ロックリングの数より一つ少ないだけであるから、部品点数の増加により、その分、組み立て作業に手間を要し、当然、コストも上昇する。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、複数個を並べて金属管の引き抜きを防止する際、別途スペーサを必要としないロックリングと、該ロックリングを用いた金属管のワンタッチ継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために本発明では、金属管継手に複数個を同軸線上に内蔵して金属管の引き抜きを規制するロックリングであって、金属製円板の中心に金属管の引き抜きを規制する複数の爪を孔周囲に形成した金属管の挿通孔を設けると共に、前記円板の外周縁には水平なフランジを連続して設け、該フランジの先端部が隣合う別のロックリングの前記円板の板面に当接することで、複数個の前記ロックリングを隙間をおいて継手本体に内蔵するという手段を用いた。この手段によれば、ロックリングのフランジがスペーサとして機能するため、別部材としてのスペーサを必要としない。
【0008】
なお、フランジの先端部は切りっぱなしであってもよいが、内向きに折曲されていることが好ましい。このような折曲部によって隣合うロックリングとの当接面積が拡大して、より確実に所定の隙間を維持することができるからである。
【0009】
また、爪やフランジは円板と別体のものを溶接等によって円板に付加することも可能であるが、一枚の金属製円板を加工して爪とフランジとが一体に形成されていることが、製造効率の面で好ましい。
【0010】
さらに、爪のそれぞれは、金属管の挿通方向に向かって傾斜していることが好ましく、この場合、金属管を挿通孔に挿通する際、爪がこれを阻害することがない一方、挿通後の金属管に引き抜き方向の力が加わったときには、爪が金属管の外周面に確実に食い込んで前記引き抜きを規制することができる。
【0011】
また、本発明では、上述したロックリングを用いた金属管継手として、複数個のロックリングを同軸線上に内蔵する継手本体と、該継手本体に装着することにより前記複数個のロックリングをフランジによる隙間を維持して固定するキャップとを備える。この金属管継手においては、キャップを装着することで複数個のロックリングが継手本体内に固定されるが、これらロックリングがキャップ装着に係る押圧によって軸方向に移動しないように、継手本体内にキャップとの間で複数個のロックリングの軸方向の移動を規制するストッパーリングを設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数個のロックリングにより金属管の引き抜きを防止する継手において、引き抜き防止のために必要とされるロックリングの隙間を、予め一体成形したフランジによって確保するため、従来、別途必要としていたスペーサを省略できる。したがって、部品点数が少なく、製造効率及びコスト面で有利である。また、一枚の金属製円板を加工してフランジを形成するため、製造時に正確な寸法出しが可能であり、設計上の誤差がない状態で継手に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態に係る金属管継手の上半断面図
図2】同継手に用いるロックリング単体の詳細図
図3】同ロックリング単体の折り曲げ加工前の詳細図
図4】本発明の第二実施形態に係る金属管継手の上半断面図
図5】同継手に用いるロックリング単体の詳細図
図6】本発明の完成前の参考例に係る金属管継手の上半断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る金属管継手の上半断面図である。同図中、1は継手本体、2はキャップ、3はロックリングである。継手本体1は、その中空内部が、金属管Pの接続側から奥端側に向けて、雌ねじ部1a、シール部1b、差込規制部1cの順で形成されている。これら環状の中空部は、環状の段差1d〜1fによって、奥端側にいくほど縮径するように構成している。
【0015】
このうち雌ねじ部1aはキャップ2を装着してロックリング3を二つ収容するスペースとして機能し、シール部1bはシールリング4を二つ収容するスペースとして機能する。
【0016】
さらに本実施形態では、奥端側のロックリング3とこれに隣合うシールリング4との間にはストッパーリング5を介装している。また、シールリング4・4の間にはスペーサリング6を介装している。これらストッパーリング5とシールリング6は、二つのシールリング4・4の収納空間を区画するものである。即ち、シール部1bは区画を有しない単なる円筒状に形成しているため、ストッパーリング5とスペーサリング6によって二つのシールリング4・4の収納空間を区画している。
【0017】
一方、キャップ2は、一端側に金属管Pの差込孔2aを有して、他端側は外周に継手本体1の雌ねじ部1aに螺合する雄ねじ部2bを有している。さらに、雄ねじ部2bの内部にはロックリング3の収納空間として段差2cを介し差込孔2aよりも大径な円孔2dが形成されている。この円孔2dは、二つのロックリング3・3とストッパーリング5を収容する大きさと奥行きを有する。
【0018】
したがって、組み立て手順としては、継手本体1に対して二つのシールリング4・4と一方のスペーサリング6をシール部1bに組み付けておき、これと並行して、キャップ2に対しても二つのロックリング3・3と他方のストッパーリング5を組み付けておく。そして、この状態でキャップ2を継手本体1に螺合装着することで本発明の継手が完成する。
【0019】
この完成した継手において、ストッパーリング5は継手本体1内の段差1dと当接して、該ストッパーリング5とキャップ2内の段差2cとの間に二つのロックリング3・3が軸方向に移動しないように固定される。また、二つのシールリング4・4はストッパーリング5と継手本体1内の段差1eとの間に、軸方向に移動しないように固定される。そして、キャップ2の差込孔2aから差し込んだ金属管Pは継手本体1内の最奥端の段差1fと当接した段階で、それ以上の差し込みが規制される。この差し込みが規制された段階で、作業者は引き抜き可能な位置まで金属管Pが十分に差し込まれたことを認識することができる。
【0020】
次に、ロックリング3の詳細を、それ単体で示した図2・3にしたがって説明する。このロックリング3は、図2に示すように、金属製の円板3aの中心に、孔周囲に複数の爪3bを有した金属管Pの挿通孔3cが形成されている。この挿通孔3cは、元々、図3に示したように、爪3bの形に打ち抜いただけであって、その後の工程で、該爪3bが金属管Pの挿通方向に向かって傾斜するように折り曲げ加工したものである。その際、爪3bの先端同士を結ぶ仮想円C(図面上の二点鎖線)が、接続しようとする金属管Pの外径よりも僅かに小径となるように爪3bを折り曲げ加工している。これによって、金属管Pの挿通時には爪3bが弾性的に拡径して金属管Pの挿通が許容される一方、挿通後は、金属管Pに引き抜き方向の力が加われば、爪3bの先端が金属管Pの外表面に食い込んで、当該引き抜きを規制する。即ち、本発明は、金属管Pを所定長差し込むだけで引き抜きを規制するワンタッチ継手である。
【0021】
このような爪3bからなる挿通孔3cを形成した円板3aについて、その外周縁には、挿通孔3cの軸線S(図面上の一点鎖線)と平行する水平なフランジ3dが連続して設けられている。このフランジ3dも、元々は、図3に示すように、垂直であったものを、その後の折り曲げ加工によって形成したものである。また、この実施形態では、フランジ3dの先端部をさらに半径方向内向き90度に折り曲げて、円板3aの板面と平行する垂直部3eを形成している。
【0022】
このフランジ3dは、図1に示したように、複数のロックリング3を同軸線上に並べて継手本体1内に組み込んだ際、隣合うロックリング3の円板3aの板面と当接して、両ロックリング3・3の間に隙間を確保するためのものである。このような隙間を確保することによって、ロックリング3・3がぴったり重なることを防止して、それぞれの爪3bを独立して機能させることができる。
【0023】
なお、この実施形態では、フランジ3dの先端部が爪3bよりも円板3aから突出しているが、フランジ3dの長さ(円板3aから垂直部3eまでの長さ)はこれに限定するものではなく、爪3bがフランジ3dの先端部よりも突出する長さとしてもよい。
【0024】
図4は、本発明の第二実施形態に係る継手を示したもので、図5は当該継手に用いたロックリング30単体を示したものである。第一実施形態からの変更点は、ロックリング30のフランジ31の先端部が切りっぱなしとなっている点である。また、ストッパーリング50を第一実施形態のものよりも大径で厚めのものを採用して、これを継手本体10の雌ねじ部11に収容すると共に、キャップ20の円孔21には二つロックリング30のみを収納するようにした点である。その他、共通の部材や構成部分については、第一実施形態と同じ符号を付している。
【0025】
この第二実施形態においても、各部材を第一実施形態と同じように組み立てることで、ロックリング30のフランジ31が隣合うロックリング30と当接して、両ロックリング30・30の間に隙間を確保することは第一実施形態と同じである。
【0026】
図6は、本発明を完成する前の開発段階で本発明者が案出したワンタッチ継手の参考例である。この参考例では、二つのロックリング50・50を隙間をおいて配置している点において本発明と同じであるが、隙間を確保する手段が、ロックリングに水平なフランジを形成するという手段ではなく、スペーサ60としている点で本発明と相違する。したがって、参考例のものは本発明よりも部品点数が多いものであるが、スペーサ60を予めロックリング50に接着等により固着して一部材としておけば、本発明と同等の組み立て効率が得られるものである。ただし、この参考例は、本発明の範囲に含まれず、また、本発明の出願時に、未実施且つ未公表である。
【符号の説明】
【0027】
1・10 継手本体
1a 雌ねじ部
1b シール部
1c 差込規制部
1d〜1f 段差
2・20 キャップ
2a 差込孔
2b 雄ねじ部
2c 段差
2d 円孔
3・30 ロックリング
3a 金属製円板
3b 爪
3c 挿通孔
3d・31 フランジ
3e 垂直部
4 シールリング
5・50 ストッパーリング
6 スペーサリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6