(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記拡散MRIデータセットが、拡散テンソルイメージング(DTI)及び拡散強調イメージング(DWI)の少なくとも一つで構成される、請求項1または2のいずれか一項に記載のシステム。
コンピュータ・プロセッサは、コンピュータ・ユーザ・インタフェースを介して、前記ボリュームおよび関連データの表示を、前記解剖学的部分の前記ボリュームのトラクトグラフィおよび画像を前記1つまたは複数の目標の位置とともに表示することによって、さらにプログラムされ、並びに、
コンピュータ・プロセッサは、1つ以上の外科的軌跡経路にスコアをつけるためにさらにプログラムされ、スコアをつけることは、2つの格子点の間の直接経路に沿って積算された少なくとも一つのピクセル強度、平均損傷量、経路長さ、方向変化に使用されるウェイポイントの数、浸透性組織構造の性質、統計的患者回復データ、 血管、浸透性組織構造の長さ、および横断性組織構造の脆弱性、に基づく重み付けで構成される、
請求項1または2のいずれか一項に記載のシステム。
生成される前記1つまたは複数のボリュームの画像と関連データのうちの少なくとも1つにより、前記解剖学的部分の血管系の視覚表現が提供される、請求項1または2のいずれか一項に記載のシステム。
前記記憶メモリデバイスが、1つまたは複数の仮想医療器具のデータベースを記憶するようさらに構成され、並びに、前記記憶デバイスと通信する前記コンピュータプロセッサが、前記可能性のある手術軌跡経路に沿った前記医療器具の視覚表現を前記仮想医療器具のデータベースから生成するようにさらにプログラムされている、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシステム。
手術目的が、前記仮想医療器具と前記可能性のある手術軌道経路の少なくとも1つとの交点、前記仮想医療器具の周辺、前記仮想医療器具と束との間のカットオフ角度、束の長さ、束の端から前記仮想医療器具までの距離、前記仮想医療器具の端からの距離、束の相対密度、前記仮想医療器具の長さに沿った束の位置、前記解剖学的部分内の前記束の位置、前記解剖学的部分内の前記仮想医療器具の位置、および前記解剖学的部分に対する束の方向の少なくとも一つで構成される、請求項8に記載のシステム。
コンピュータ・ユーザ・インタフェースを介して、前記ボリュームおよび関連データを表示するステップには、トラクトグラフィおよび前記解剖学的部分の前記ボリュームのその他の画像を前記1つまたは複数の目標の位置とともに表示することがさらに含まれ、並びに、
コンピュータ・プロセッサは、1つ以上の外科的軌跡経路にスコアをつけるためにさらにプログラムされ、スコアをつけることは、2つの格子点の間の直接経路に沿って積算された少なくとも一つのピクセル強度、平均損傷量、経路長さ、方向変化に使用されるウェイポイントの数、浸透性組織構造の性質、統計的患者回復データ、 血管、浸透性組織構造の長さ、および横断性組織構造の脆弱性、に基づく重み付けで構成される、
請求項10に記載の方法。
コンピュータ・ユーザ・インタフェースを介して、前記ボリュームおよび関連データの表示は、生成される前記1つまたは複数のボリュームの画像と関連データのうちの少なくとも1つを表示することをさらに含み、それによって前記解剖学的部分の血管系の視覚表現が提供される、請求項10に記載の方法。
コンピュータのコンピュータプロセッサを用いて、前記1つまたは複数のイメージングデータセットを処理して、前記1つまたは複数の術前のイメージングデータセットから、1つまたは複数の前記組織への可能性のある脳溝入口点および1つまたは複数のアプローチされるべき目標を含む、脳の前記解剖学的部分のボリュームの画像と関連データを生成するステップであって、前記関連データのうちの少なくとも1つは、前記1つまたは複数の拡散MRIデータセットから生成される前記解剖学的部分の前記ボリュームのトラクトグラフィである、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
コンピュータのコンピュータ・ユーザ・インターフェースを使用して、ボリュームおよび関連データを表示することは、生成される前記1つまたは複数のボリュームの画像と関連データのうちの少なくとも1つを表示することをさらに含み、それによって脳の溝の視覚表現が提供される、請求項10に記載の方法。
コンピュータのコンピュータ・ユーザ・インターフェースを使用して、ボリュームおよび関連データを表示することは、2つ以上のボリュームの画像と関連データが、互いに重なって仮想表現を生成するようにオーバーレイすることをさらに含む、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
コンピュータのコンピュータプロセッサを用いて、前記1つまたは複数のイメージングデータセットを処理して、前記1つまたは複数の術前のイメージングデータセットから、1つまたは複数の前記組織への可能性のある脳溝入口点および1つまたは複数のアプローチされるべき目標を含む、前記患者の身体の前記解剖学的部分のボリュームの画像と関連データを生成するステップであって、前記関連データのうちの少なくとも1つは、前記1つまたは複数の拡散MRIデータセットから生成される前記解剖学的部分の前記ボリュームのトラクトグラフィは、視覚変調を提供することで構成されるタイプ変調が行われることを含み、
前記タイプ変調が行われることは、透明度、色付け、外形、および色の諧調の少なくとも一つを提供することを含む、請求項10に記載の方法。
前記コンピュータのコンピュータプロセッサを用いて、手術目的が、前記仮想医療器具と前記可能性のある手術軌道経路の少なくとも1つとの交点、前記仮想医療器具の周辺、前記仮想医療器具と束との間のカットオフ角度、束の長さ、束の端から前記仮想医療器具までの距離、前記仮想医療器具の端からの距離、束の相対密度、前記仮想医療器具の長さに沿った束の位置、前記解剖学的部分内の前記束の位置、前記解剖学的部分内の前記仮想医療器具の位置、および前記解剖学的部分に対する束の方向の少なくとも一つである、請求項18に記載の方法。
患者の身体内の組織中の1つまたは複数の目標までの1つまたは複数の手術軌跡経路を計画するためのコンピュータプログラムが内部に記憶されているコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムは、コンピュータ上で実行されると、
コンピュータの記憶メモリデバイスを用いて、前記患者の身体の解剖学的部分の1つまたは複数のイメージングモダリティからの1つまたは複数の術前のイメージングデータセットを記憶メモリデバイスに記憶するステップであって、前記1つまたは複数のイメージングデータセットのうちの少なくとも1つが、1つまたは複数の拡散MRIデータセットである、ステップと、
コンピュータのコンピュータプロセッサを用いて、前記1つまたは複数のイメージングデータセットを処理するステップであって、前記1つまたは複数の術前のイメージングデータセットから、1つまたは複数の前記組織への可能性のある脳溝入口点および1つまたは複数のアプローチされるべき目標を含む、前記患者の身体の前記解剖学的部分のボリュームの1つまたは複数の画像と関連データを生成するステップであって、前記関連データのうちの少なくとも1つは、前記1つまたは複数の拡散MRIデータセットから生成される前記解剖学的部分の前記ボリュームのトラクトグラフィである、ステップと、
コンピュータの記憶メモリデバイスを用いて、前記ボリュームの前記画像と関連データを記憶するステップと、
コンピュータのコンピュータ・ユーザインターフェースを通して、外科的処置の間にアプローチされるべき前記1つまたは複数の目標の位置のユーザの選択を受信し、前記1つまたは複数の目標の位置を前記記憶メモリデバイスに記憶するステップと、
コンピュータのコンピュータ・ユーザインターフェースを通して、前記画像と関連データボリュームを表示するステップと、
コンピュータのコンピュータ・ユーザインターフェースを通して、前記患者の組織への前記1つまたは複数の可能性のある脳溝入口点のユーザの選択を受信するステップと、
コンピュータのコンピュータ・ユーザインターフェースを通して、前記1つまたは複数の可能性のある脳溝入口点から前記1つまたは複数の目標までの1つまたは複数の可能性のある手術軌跡経路と、前記トラクトグラフィおよび前記解剖学的部分の前記ボリューム内のその他の選択される解剖学的特徴との相互作用と、を表示するステップと、
コンピュータのコンピュータ・ユーザインターフェースを通して、前記1つまたは複数の可能性のある手術軌跡経路からの1つまたは複数の手術軌跡経路のユーザの選択を受け入れるステップと、
コンピュータの記憶メモリデバイスを用いて、前記1つまたは複数の手術軌跡経路を前記記憶メモリデバイスに記憶するステップと
コンピュータ・プロセッサ用いて、1つ以上の外科的軌跡経路にスコアをつけるためにさらにプログラムされるステップにおいて、スコアをつけることは、2つの格子点の間の直接経路に沿って積算された少なくとも一つのピクセル強度、平均損傷量、経路長さ、方向変化に使用されるウェイポイントの数、浸透性組織構造の性質、統計的患者回復データ、 血管、浸透性組織構造の長さ、および横断性組織構造の脆弱性、に基づく重み付けで構成される、ステップと、
を含むステップをプログラムされている、コンピュータ可読記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示の様々な実施形態および態様を、下記に説明する詳細を参照して説明する。以下の説明および図面は本開示の例示であり、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。本開示の様々な実施形態の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が説明される。しかしながら、特定の事例において、本開示の実施形態の簡潔な説明を提供するために、周知のまたは従来の詳細は説明されない。
【0026】
本明細書において使用される場合、「備える(comprises)」および「備えている(comprising)」という用語は、包括的でオープンエンドであり、排他的ではないものとして解釈されるべきである。具体的には、本明細書および特許請求の範囲に使用されるとき、「備える(comprises)」および「備えている(comprising)」という用語ならびにその変化形は、指定されている特徴、ステップまたは構成要素が含まれることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップまたは構成要素の存在を除外するように解釈されるべきではない。
【0027】
本明細書において使用される場合、「例示的な(exemplary)」という用語は、「例、事例、または例示としての役割を果たす」ことを意味し、本明細書に開示する他の構成よりも好適または有利であると解釈されるべきではない。
【0028】
本明細書において使用される場合、「約(about)」または「おおよそ(approximately)」という用語は、特性、パラメータ、および寸法のばらつきのような、値の範囲の上限および下限内に存在し得るばらつきをカバーするように意図されている。
【0029】
本明細書において使用される場合、「患者」という用語は、人間の患者には限定されず、本明細書に開示する計画および誘導システムを使用して治療され得る任意の生命体を意味し得る。
【0030】
本明細書において使用される場合、「手術道具」または「手術器具」という語句は、患者の身体内の経路に沿った部位に向けられ得る任意のアイテムを指す。手術道具の例は、(必ずしもこれらに限定されないが)外科用メス、切除デバイス、イメージングプローブ、サンプリングプローブ、カテーテル、または、本質的に診断用であるか治療用であるかにかかわらず、患者の身体内の標的位置にアクセスする(または、患者の身体内の位置にアクセスする際に別の手術道具を補助する)ことができる任意の他のデバイスを含んでもよい。
【0031】
本明細書において使用される場合、「光コヒーレンストモグラフィ」または「OCT」という語句は、生体組織のような光散乱媒質内からマイクロメートル分解能の三次元画像を捕捉する光信号取得および処理方法を指す。OCTは、通常、近赤外光を使用する、干渉法による技法である。相対的に長い波長を使用することによって、散乱媒質内に侵入することが可能になる。医療イメージングのコンテクストにおけるOCTの利点は、現在、MRIまたは超音波のような他のイメージングモダリティよりも良好である、はるかにより高い分解能(10μmよりも良好)を有する組織形態画像を提供することである。しかしながら、現在、OCTは、一般的な生体組織の表面下では1〜2ミリメートルのイメージングに限定され、一方で、より深い深度では、散乱することなく逃げる光の割合が小さすぎて検出することができない。画像は、「非接触式」に、または、透明な窓もしくは膜を通じて得ることができるが、目標組織との見通し線内になければならない。
【0032】
本明細書において使用される場合、「高偏光感度光コヒーレンストモグラフィ(PS−OCT)」という語句は、組織のような混濁媒質から反射される光の偏光状態の深度分解測定を可能にするイメージング技法を指す。深さ分解ストークスパラメータの測定によって、線形遅相器としてモデル化することができる混濁媒質における偏光の度合いおよび光軸の向きを求めることが可能になる。
【0033】
本明細書において使用される場合、「超音波」または「US」という単語は、約2〜18メガヘルツの波長範囲内の音波を使用するイメージング技法を指す。特定の医療イメージング手順に選択される周波数は、画像の空間分解能と、イメージング侵入深さとの間のトレードオフであることが多い。周波数が低いほど、生成される分解能は低くなるが、身体内でより深くイメージングすることができ、一方、音波の周波数が高いほど、生成される分解能はより高くなる(波長がより短くなり、したがって、より小さい構造から反射または散乱することが可能になるため)。周波数がより高い波は、減衰係数もより高くなり、したがって、組織内により容易に吸収され、身体内に音波が侵入する深さが制限される。
【0034】
本明細書において使用される場合、「陽電子放出型断層撮影」または「PET」という語句は、身体内の機能的プロセスの三次元画像を生成することを対象とした核医学イメージングを指す。PETシステムは、身体内に注入される陽電子放出核種またはトレーサによって放出されるガンマ線対の検出の原理に基づいて動作する。このとき、身体内のトレーサ濃度の三次元画像がコンピュータ分析によって構築される。
【0035】
本明細書において使用される場合、「X線コンピュータ断層撮影」または「X線CT」とも称される「コンピュータ断層撮影」または「CT」という語句は、コンピュータ処理されたx線を使用してスキャンされる対象物の特定の領域の断層画像(仮想「スライス」)を生成する技術を指す。研究されている対象物の内部の三次元画像が、デジタル幾何形状処理の技法を使用して、単一の回転軸を中心として撮影される一連の二次元放射線画像から生成され得る。頭部/脳のCTスキャンは一般的に、数例を挙げると、出血、骨の損傷、腫瘍、梗塞および石灰化を検出するのに使用される。無論、低濃度の(暗い)構造が一般的に浮腫および梗塞を示し、一方で、高密度の(明るい)構造が一般的に石灰化および出血を示す。腫瘍は、当該腫瘍が引き起こす腫脹および解剖学的偏位によって、または、任意の周囲の浮腫によって検出可能であることが多い。
【0036】
本明細書において使用される場合、「磁気共鳴イメージング」または「MRI」という語句は、身体の内部構造を視覚化するために放射線医学において使用される医療イメージング技法であり、健常な状態および疾患状態における解剖学的構造および機能の両方を研究するために使用される。MRIは、小さい腫瘍に対してはCTよりも感度が高いため、神経腫瘍に一般に好まれる調査手段である。加えて、MRIによって、脳の灰白質と白質との間にもたらされるコントラストが、MRIを、限定ではないが脱髄疾患を含む中枢神経系の多くの症状に対する主要な選択肢にする。さらに、特殊化したMRIパルスシーケンスを使用して、種々のタイプの情報を与えることができる。たとえば、「拡散MRI」は、生体組織内の水分子拡散を測定するMRIシーケンスであり、脳卒中のような症状、または、多発性硬化症のような神経疾患の診断に臨床的に有用であり、脳内の白質路の方向性および接続性を理解および視覚化するのに特に有用である。拡散MRIの例が、拡散テンソルイメージング(「DTI」)および拡散強調イメージング(「DWI」)である。また、「機能的MRI」または「fMRI」は、血液酸素化レベルの変化に対して感受性があり、皮質活動が増大した領域を推測するのに使用することができるもう1つの特殊化MRIシーケンスである。一般的に、fMRIによって、患者は、指定タスク(たとえば、運動活性、認知運動)を実施するよう求められ、fMRIスキャンの強調された領域が、そのようなタスクが実施されていたときに、脳のいずれの領域で血流が増大したか(したがって、より活動的であった)を示すことができる。
【0037】
MRIはまた、造影剤(一般的にはガドリニウム)の使用を組み込んでそのような造影剤が経時的に組織を通じてどのように移動するかを観測する、血流スキャンとして実施することもできる。一般的な血流スキャン技法は、ベースライン3dボリュームをとることによって開始し、造影剤を注射し、次いでその後、繰り返しスキャンを行う(スキャンセッションの間、患者は同じスキャン位置にあるままである)。
【0038】
上記の3つの例示的なMRI技法(拡散MRI、fMRI、血流MRI)において、静止イメージングデータに加えて、水拡散(拡散MRI)、血液酸素化(fMRI)、または組織を通じて移動する造影剤(血流MRI)のいずれかに関係するデータを含む4dデータセット(すなわち、経時的に変化する3dボリューム)が生成される。
【0039】
いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、トラクトグラフィを使用することを含むことができる。本明細書に記載するシステムおよび方法において、腫瘍と健常組織との間の差別化は、主要な組織コントラスト機構として、ブラウン運動による、脳の組織を通じた水の拡散を使用するDWIセンサ(複数の場合もあり)および関連するプロセッサ(複数の場合もあり)によって実施されてもよい。拡散コントラストスキャンから取得されるデータは、脳内の特定の方向に沿った拡散を視覚化することを可能にするために、所定の勾配方向において取得することができる。この方向性情報は、脳内の線維束を生成するためにベクトルセットによって確定される接続マップを生成するために使用され得、これらの束は、脳を通じた白質路の外側での水拡散に対応し、脳内の主要な神経線維に対応する。
【0040】
上述した種々のイメージングモダリティを組み合わせると、ただ1つのモダリティだけを使用して得ることができる、より大きい見識およびより多くの情報を与えることができる。たとえば、PETスキャンを、CTおよび/またはMRIスキャンとともに行うことができ、組み合わせ画像(「重ね合わせ」画像と称される)によってより良好な情報が与えられ、この情報は、解剖学的情報および代謝情報の両方を含み得る。たとえば、PETイメージングはCTのような解剖学的イメージングと組み合わせると最も有用であるため、最新のPETスキャナは、一体化された最高級のマルチスライスCTスキャナを含むことが多い(いわゆる「PET/CT」)。これらの機械において、同じセッションの間に2つのタイプのスキャンを順に連続して実施することができ、2つのタイプのスキャンの間で患者は位置を変更されず、それによって、2セットの画像がより正確に重ね合わせられ、それによって、PETイメージングモダリティによって観測される異常な領域を、CT画像から観測される解剖学的構造とより正確に相関付けることができる。これは、脳の外側でより一般的である、解剖学的変異がより大きい、運動器官または構造の詳細なビューを示すのに非常に有用である。
【0041】
したがって、本明細書において使用される場合、「レジストレーション」または「重ね合わせ」という語句は、複数の異なるデータセットを変換して1つの座標系にするプロセスを指し、「画像レジストレーション」とは、複数の異なるイメージングデータセットを変換して1つの座標系にするプロセスを指す。データは、複数の写真、すなわち、複数の異なるセンサ、時間、深さ、または視点からのデータであってもよい。本出願における「重ね合わせ」のプロセスは、複数の異なるイメージングモダリティからの画像が重ねあわされる医療イメージングに関係する。重ね合わせは、これらの異なるモダリティから得られるデータを比較または統合することを可能にするために必要である。利用可能な多数の画像重ね合わせ技法があり、それらの1つまたは複数が本出願において使用されてもよいことを、当業者は諒解しよう。非限定例は、相関メトリックによって画像内の強度パターンを比較する強度ベースの方法を含み、一方で、特徴ベースの方法は、点、線、および輪郭のような画像特徴の間の一致を見出す。画像レジストレーションアルゴリズムはまた、それらのアルゴリズムが目標画像空間を基準画像空間に関係付けるために使用する変換モデルに従って分類され得る。別の分類が、単一モダリティ方法とマルチモダリティ方法との間で行われ得る。単一モダリティ方法は一般的に、同じスキャナ/センサタイプのによって取得される同じモダリティ内で画像を見当合わせし、一方で、マルチモダリティレジストレーション方法は、異なるスキャナ/センサタイプによって取得される画像を見当合わせするのに使用される。本開示において、被験者の画像が複数の異なるスキャナから頻繁に得られるため、マルチモダリティレジストレーション方法は頭部/脳の医療イメージングにおいて使用される。例は、いくつか挙げると、腫瘍局在診断のための脳CT/MRI画像またはPET/CT画像の重ね合わせ、非コントラスト強調CT画像に対するコントラスト強調CT画像のレジストレーション、および、超音波およびCTのレジストレーションを含む。
【0042】
本明細書に開示する計画および誘導方法およびシステムは、必ずしも現在利用可能であるとは限らないイメージングモダリティに適用可能であることが諒解されよう。たとえば、MRIに関して、本明細書に概説するものに加えて、新規のシーケンス、方法または技法が、さらに有用な生物医学イメージング情報であり得、これは、適切な重ね合わせ技法を通じて本明細書に開示する方法およびシステムに容易に組み込むことができる。
【0043】
本明細書において使用される場合、「術前イメージングモダリティ」という語句は、本明細書におけるモダリティおよび侵襲性の処置が開始される前に解剖学的構造をイメージングするのに必要な組織浸透性を有する任意の他のイメージング技法を指す。
【0044】
本明細書において使用される場合、「手術結果基準」という語句は、外科的処置の、そのような外科的処置において訓練されている執刀医によって想定されるものとしての、臨床目標および予測される結果を意味する。概して、脳腫瘍切除手術の手術目的は、脳の残りの部分および周囲の組織構造に対する外傷を最小限に抑えながら、可能な限り多くの腫瘍を除去することである(周囲の組織構造はこの場合、外科的処置の間に直接的または間接的に影響を受ける任意の組織構造を含む)。脳の周囲の組織構造の例は、限定ではないが、硬膜、脳脊髄液、および頭蓋骨を含む。
【0045】
本明細書において使用される場合、「点別手術軌跡経路」という語句は、開始点(入口点としても知られる)、連続したいくつかのウェイポイント、および、目標を表す終端点を通過する経路を表す任意の連続した(すなわち、破断のない)線を意味し、各点は、3D空間において確定される曲線または直線を通じてその隣接する点と接続されており、経路は、1つまたは複数の手術結果基準を満たすために使用される手術軌跡を表す。
【0046】
本明細書において使用される場合、「ウェイポイント」という語句は、点別手術軌跡経路の開始点と終端点との間に作成される点を意味し、この点によって、経路は、手術目的を満たすために執刀医によって決定されるシーケンスを通る必要がある。多くの事例において、ウェイポイントは、点別手術軌跡経路を、所望の軌跡に沿って誘導するために作成される点である。一方で、ウェイポイントはまた、特定の手術動作が行われ得る軌跡上の点を示すこともできる。たとえば、ウェイポイントは、外科チームに、生検標本を採取する必要があり得ることを思い出させるために、脳手術において使用される軌跡に沿って導入されてもよい。代替的に、ウェイポイントは、パラメータを変更する必要があり得るというメッセージを誘導システムに送信するために使用されてもよい。たとえば、外部ビデオスコープが(自動的にまたはユーザの確認を受けて)開頭術中の広い視野から硬膜を開いている間の狭い視野へと切り替わるようにすることが望ましい場合がある。
【0047】
本明細書において使用される場合、「3D画像」という語句は、2つを超える次元の空間情報を含む画像の表示を意味する。この表示は、限定ではないが、立体表示、回転および深さ選択を可能にするインターフェースによる動的コンピュータモデル、透視図、およびホログラフィ表示を含む。加えて、3D画像は、様々な深さまたは角度の2D画像の連結によって表すことができることが当該技術分野において既知であり、それゆえ、「3D画像」を言及することは、同じ対象物の個別の2D画像のセットを言及することと同様である。いくつかのモダリティ(たとえば、MRI)における3D測定値から直に3D画像を作成することも可能であり、そのため、2D画像を連結することが標準的というわけではない。さらに、「ボリューム(volume)」および「画像」という用語は、このコンテクストにおいては交換可能に使用される。
【0048】
本明細書において使用される場合、「コードセグメント」という語句は、アルゴリズムまたはプログラムのような、コンピュータ上で実行可能なコードの単位を意味する。本開示の実施形態は、複数のコードセグメントを含み得る。コードセグメントは、序数によってラベリングされる、すなわち「第1のコードセグメント」、「第2のコードセグメント」となる。序数は、コードが実行または実施されなければならない特定の順序を意味するものではなく、プログラムまたはアルゴリズムの相互依存関係を暗示するものでもないことが理解されよう。
【0049】
本発明の方法およびシステムは、患者の解剖学的構造の任意の部分に対して手術を実施するために使用され得るが、脳内の神経束および主要な神経線維束の推測される位置および方向性を示すイメージング情報を有利に使用するため、脳手術処置を実施するのに特に有用である。本明細書に記載する実施形態は、所与の処置のための脳のある領域までの手術経路を検出および示唆し、アプローチが健常な脳組織に与えることになる可能性のある影響を予測するためのシステムおよび方法を提供するように構成されている。そのような影響評価は、執刀医が、定量的評価を使用してアプローチに関する判断を行うことを可能にする。
【0050】
たとえば、現在、低侵襲経路手術のために脳運動の生体力学モデルを実施する、臨床的に許容可能な手段はない。現行のシステムは、一般的に、脳組織の可能性のある運動を術中に判定すること、病変までの修正されたアプローチを示唆すること、より多くの健常組織が影響を受けないままにしながらより多くの病変組織が切除されることを可能にする修正された手術アプローチを示唆すること、ならびに、実際に切除する前に、組織切除の結果としての脳および組織の偏位の影響を評価すること(ほとんどの現行の走査用ファントムおよび手術用ファントムは立体容器内に収容されており、したがって、マトリクス材の偏位は一般的に最小限であるため)を可能にしない。加えて、適切な生体力学情報を提供する複数のイメージングコントラストデータセットを用いて、術前計画を更新するのに必要とされるイメージングレジストレーションを実施する手段はない。他の実施形態において、たとえば、小さな開頭アクセスホールによって、また、脳の天然の開口部を使用した、総脳変位を管理するための手段が、現行のソリューションでは可能でない方法で手術アプローチを通知することができるようにシミュレーションアプローチが利用されることを可能にする。
【0051】
さらに、脳溝を通じて計画およびナビゲートするのに使用することができる既存の計画および訓練システムはない。それゆえ、手術用ファントムの現行の型は、脳の表面上に存在するリッジ構造を模倣しない傾向にあるため、脳溝に沿ってなど、経路に沿って軌跡を計画するための手術計画および訓練システムおよび方法が必要とされている。
【0052】
また、訓練は、グレープが底部付近で立方体の中心に位置している、正方形の型に入れられる寒天ゲルを使用して行われることが知られており、これは、執刀医が、不均質性、ならびに重力および圧力下での向きおよび組織の変位のような制約を明瞭に理解することを可能にしないために、現行の訓練システムでは一般的に、訓練セッションを特定の手術シナリオに生来的に微調整することができない。他の実施形態は、外科的処置全体をシミュレートされたプラットフォーム上で実践することを可能にするインテリジェントなシステムおよび方法を提供し、これは、手術に先立って適切な手術道具を識別および配置するために患者の頭部の向きを識別するために、外科的処置の少なくとも1日前に模擬外科的処置を実施するのに有用であり得る。これは、手術用ファントムを使用することを通じて実現することができ、手術用ファントムは、特定の患者の脳寸法および上記脳ファントム内で幾何学的に正確な位置にある腫瘍モデルの位置を緊密に模倣する。
【0053】
神経をイメージングし、これらの神経に危害を加えないようにしながらデバイスを誘導し、または組織を切除するための外科的処置を確立することをできるようにするには、誘導技術、ソフトウェア計画システム、術前イメージング、および手術道具を統合する必要がある。執刀医がそこからその患者のために提供される最新のイメージングに基づいて低侵襲アプローチを計画することができるインターフェースを提供するための記載されているシステムおよび方法の実施形態。神経束は、脳内の白質路のコンテクストにおいては、三次元のコンテクストにおいて最良に表現することができる複雑なデータセットを表すため、現行のシステムおよび方法によって提供される手術アプローチに関するこの情報の正確な表現は、目標対象物までの最良の可能なルートを提供するために重要であり得る。これらの白質路、および目標対象物(複雑な腫瘍幾何形状であることが多い)に対して手術道具および手術アプローチを表現することは、手術アプローチのために効果的な軌跡計画を可能にするようには対処されていない。加えて、白質が付着しているもの(灰白質の皮質塊)、または、白質もしくは灰白質の状態、すなわち、白質もしくは灰白質に回復の機会があるか、または、白質もしくは灰白質が示唆的な領域であるかを慎重に考慮することなく、アクセス経路が、通過される灰白質および白質の量を最小限に抑えるように選択されることが多い。加えて、脳内の天然のアクセス経路を使用することは、計画のコンテクストにおいて考慮されていない。
【0054】
たとえば、脳の天然のしわ、すなわち、脳溝は、脳の深い場所への理想的な低侵襲アクセス進路であることが多い。これらの経路を効果的に利用するために、入力データを処理および計算し、これをユーザに示し、判断決定を容易にするための定量可能なメトリックを与えるための新規のソフトウェア計画システムおよび方法が提供される。
【0055】
本明細書に記載するシステムおよび方法は、腫瘍の治療、神経変性障害、脳卒中、脳損傷および整形外科の手術を含む、神経外科分野において有用であるが、これらの概念を、他の症状または医療分野に拡張することができることを、当業者は諒解しよう。
【0056】
本明細書に開示する計画および誘導方法およびシステムの実施形態の例を提供するために、様々な装置またはプロセスを下記に説明する。下記に説明する実施形態は特許請求される実施形態を何ら限定するものではなく、任意の特許請求される実施形態は、下記に説明するものとは異なるプロセスまたは装置を包含することができる。特許請求される実施形態は、任意の1つの下記に説明する装置もしくはプロセスの特徴のすべてを有する装置もしくはプロセス、または、下記に説明する装置もしくはプロセスの複数もしくはすべてに共通する特徴には限定されない。下記に説明する装置またはプロセスは、任意の特許請求される発明の実施形態ではない可能性がある。
【0057】
さらに、本明細書に記載する実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、本明細書に記載する実施形態はこれらの具体的な詳細なしに実施されることができることは当業者には理解されよう。他の例において、本明細書に記載する実施形態を不明瞭にしないように、既知の方法、手順および構成要素は詳細に説明されていない。
【0058】
また、本明細書は、本明細書に記載する実施形態の範囲を限定するものとして考えられるべきではない。さらに、以下の節において、実施形態の種々の態様がより詳細に規定されている。
【0059】
本開示において、外科的な画像によって誘導される治療処置をサポートするために、診断、手術計画、手術誘導および経過観察のイメージング情報を提供するためのソフトウェアおよびハードウェアシステムが提示されている。一実施形態において、例示的なシステムは、外科的処置を容易にするために医療イメージング情報表現を促進するためのコンピュータ処理装置、ソフトウェアアルゴリズム、表示ユニット、入出力デバイス、イメージングモダリティ、デバイス追跡デバイスから構成される。このシステムは、脳神経外科疾患ならびに頭部癌および頸部癌を管理するための低侵襲手術アプローチに焦点を当てるが、このシステムはこれらの用途には限定されない。これらの概念は、低侵襲アプローチを術前イメージングおよび/または術中イメージングと協調させることができる、身体全体を通じた疾患に対処するために使用することができる。システムは、脳神経外科用途のコンテクストにおいて説明されるが、全般的概念は、本明細書にさらに説明する様々な用途に拡張することができる。
【0060】
本開示は、低侵襲外科的処置を可能にするための術前、術中および術後計画および誘導のための方法およびシステムを説明する。システムおよび方法は、手術計画システムおよび方法として、または、組み合わせ計画および術中誘導および誘導システムおよび方法として使用されてもよく、外科的処置の間に収集される情報が、次の手術ステップを誘導し、または予測される患者結果を測定するために使用される。
【0061】
本発明の方法およびシステムの一実施形態において、術前データ入力(複数の場合もあり)および術中データ入力(複数の場合もあり)のような入力(複数の場合もあり)を検出する1つまたは複数のセンサ(複数の場合もあり)が提供され、センサ(複数の場合もあり)は、手術計画、誘導および分析に有用であり得る出力(複数の場合もあり)を生成するために、センサ(複数の場合もあり)によって検出された入力(複数の場合もあり)を受信、記録および/または処理する1つまたは複数のプロセッサ(複数の場合もあり)と通信している。
【0062】
図1は、マルチモード手術計画ツールとして使用するための、本発明の方法およびシステムの一実施形態を示す。システムおよび方法は、術前段階における手術計画ツールとして使用することができる。
図1に示す手術計画ステップは、手術アプローチをさらに改良するために術中に反復することもでき、それによって、手術計画および術中誘導という用語は、交換可能に使用することができることを、当業者は諒解しよう。
【0063】
いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、限定ではないが、MRI(6)、US、CT、他の光学イメージングシステム、ならびに、手術器具(1)およびセンサのモデルを含むデータ入力を含み得る。患者の組織および臓器の様々な画像を比較することによって、DWI(拡散強調イメージング)(4)、DTI(拡散テンソルイメージング)(3)、ならびに他のイメージングコントラストシーケンスおよびモダリティの間の重ね合わせデータを含む、イメージングデータを取得することができる。手術経路を設定または更新するために、術中設定において本発明が使用される実施形態において、データ入力は、本明細書においてさらに開示されるような、センサを通じて取得される上記イメージングからの例を含んでもよい。センサ(複数の場合もあり)は、光学式または電磁式術中追跡構成要素を含む、手術道具を正確かつロバストに追跡するための手段、および、術前データセットに術中データセットを位置合わせ(15)する他の手段を含み得る。レジストレーション方法は、たとえば、近傍または領域にわたって計算される、二乗誤差および相互情報量のような類似度メトリックに基づく画像強度マッチング、エッジマッチングのような画像特徴ベースのレジストレーション、複数の画像モダリティまたは座標空間(追跡システムの座標空間およびMR画像の座標空間など)内で確定される共通の点の基準または解剖学的特徴ベースのマッチング、表面メッシュマッチングのような表面マッチング技法のいずれかまたは組み合わせを含むことができる。
【0064】
表面は、画像データから手動でアウトライン化または自動的にセグメント化される。同様に、表面は、物理的な患者から、追跡されるポインタツールを用いてアウトライン化することによって、または、表面スキャン技法(レーザ測距器、構造化光システムまたはステレオカメラなど)を通じて判定することができる。すべてのマッチングおよびレジストレーション方法は、特定の関心領域に焦点を当てるために、画像または患者ボリューム(ポートを通じて視覚化されるものなど)の部分領域に対して実施することができる。レジストレーションは、複数の部分領域に対して合同でまたは独立して実施することができ、これらの独立した領域の間で補間レジストレーションを推測することができる。画像が見当合わせされると、画像は、データ分析モジュール(16)に対する入力を形成する。
【0065】
センサ(複数の場合もあり)はまた、計画、誘導およびモデル化構成要素、コンテクストインターフェース、術中イメージングデバイス、バイポーラサクションのためのデバイス、付随するイメージングによる組織切除および組織切断、外部および内部ツール追跡を含む追跡技術(光偏向、容量性、歪みゲージ)、自動誘導外部イメージングシステム、タレットを有する半自動外部位置決めアーム、内部半自動マニピュレータ、多重ビーム送達システム、適応学習ネットワークを有するデータベース、イメージングおよび空間的にリンクされた病理診断システム、使用されるコンテクストに応答するイメージングシステム、ならびに、使用されるコンテクストおよび環境に応答するユーザインターフェースをも含むことができることを、当業者は諒解しよう。
【0066】
入力およびセンサ(複数の場合もあり)はまた、キーボード、タッチスクリーン、ポインタまたはポインティングデバイスとして機能するツール、マウスまたはジェスチャ制御構成要素をも含むことができる。
【0067】
本明細書に記載する例示的なシステムおよび方法の術前データ入力(複数の場合もあり)は、術前画像データ、組織および臓器の生体力学モデル、ならびに、手術道具の力学モデルを含むことができる。術中データ入力(複数の場合もあり)は、MRI、CTまたはPETを含む様々なモダリティからの画像、ならびに、剪刀、切除デバイス、サクションカッター、バイポーラ、追跡されるアクセスポートデバイスおよび自動誘導外部イメージングシステムのような追跡される手術デバイスを含む、追跡または誘導システムからのデータを含むことができる。いくつかの実施形態において、たとえば、患者ごとに選択される特定の外科的処置14および臨床基準13を、最適な手術計画を評価するための追加の入力(複数の場合もあり)として利用することができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、プロセッサ(複数の場合もあり)は、13および16からの入力(複数の場合もあり)を分析して手術アプローチを確定する計画モジュール(複数の場合もあり)12を含んでもよい。これらは、様々な入力(複数の場合もあり)および規則ベースの計算に基づく、開頭術、DBS刺激装置位置、生検部位、ポートベースまたは最小経路アプローチおよび鼻内ベースのアプローチを含んでもよい。さらなる実施形態において、プロセッサ(複数の場合もあり)は、入力(複数の場合もあり)を分析して、処置の間に、視覚化ならびにツール追跡、およびコンテクスト情報のような他の出力を提供する誘導モジュール(複数の場合もあり)を含んでもよい。
【0069】
他の実施形態において、プロセッサ(複数の場合もあり)は、腫瘍、神経および神経束のような組織構造、脳室、脳溝、大脳皮質、白質、主要な白質線維束のような脳構造、動脈および静脈のような血管系、ならびに頭蓋骨および脳幹のような骨構造を、計画および誘導のために分割することができる。
【0070】
出力(複数の場合もあり)は、組織抽出誘導ならびにDBSプローブおよび生検プローブを含むデバイスの誘導を含む誘導に使用される2Dおよび3D復号画像を含むことができる。モニタまたはレーザポインタを含む出力デバイス(複数の場合もあり)も、システムのプロセスに関するフィードバックをユーザに提供するために、本明細書に記載するシステムおよび方法に含まれ得ることを、当業者は諒解しよう。
【0071】
視覚化出力(複数の場合もあり)は、コンテクストボリュームイメージング、外科的処置のその点において重要である関心領域のみのイメージングを含む点光源イメージング、器具挿入または除去の前に位置決めをチェックするためのイメージング、切除後に組織マップを更新するためのイメージング、および、健常なまたは回復可能な組織に対する損傷を制限しながら最大限の腫瘍を切除するためのイメージングを含むことができる。加えて、本明細書に記載するシステムおよび方法に使用されるイメージングモダリティの間で共通のコントラスト機構を使用することによって、プロセッサ(複数の場合もあり)が、モダリティ間の正確なレジストレーション、および、処置の間の有意義なボリュームイメージング更新を生成することが可能になり得る。
【0072】
出力(複数の場合もあり)は、特徴検出による手術アプローチのための経路計画または補正データ、開頭術のような処置のための位置、患者を固定および不動化する箇所も含むことができる。出力(複数の場合もあり)は、手術アプローチ、たとえば、血管および線維束を回避するための、脳溝を越えていくアプローチの選択に関するデータも含むことができる。たとえば、出力(複数の場合もあり)は、白質および灰白質への挿入損傷を最小限に抑えるための脳溝ベースのアプローチ経路も含むことができる。さらなる出力(複数の場合もあり)は、データの時間発展、たとえば、選択される経路、組織変形、時間成分を有するデータセット(たとえば、ドップラUSまたはfMRI)の時間アニメーション、またはそのようなデータの任意の組み合わせを規定または促進するためのパラメータ曲線またはボリュームを含んだものとすることができる。
【0073】
患者の身体の任意の部分に関する一般的な計画方法
本明細書において、患者の身体の表面箇所から、アプローチおよび手術されるべき身体内の目標位置までの手術軌跡進路を計画するための、コンピュータ上で実行される計画方法が開示される。計画方法は非常に一般的であり、患者の身体の任意の部分に適用することができる。方法は、3D画像データセットまたはボリュームを取得するように構成されている少なくとも1つのイメージングモダリティを使用して、患者の身体の手術されるべき部分の術前画像を取得することと、3D画像データセットまたはボリュームを記憶媒体内に記憶することとを含む。特に、患者の手術されるべき解剖学的部分が、イメージングモダリティの特定のタイプまたは組み合わせに最良に適している場合に、2つ以上のイメージングモダリティが使用されてもよいことが理解されよう。3Dボリュームの画像は、アプローチされるべき1つまたは複数の目標とともに、身体内への可能性のある入口点を含む3D画像データセットから生成される。3Dボリュームの画像は、記憶される記憶媒体。1つまたは複数の目標の位置が識別されると、それらの位置(複数の場合もあり)が、「再フォーマット」と称される、データの2D平面推定値または投影上で調整および/または確認され得る。この技法は、画像データを含む3D空間を通る1つまたは複数の2D平面の表現を視覚化する。そのような平面は、多くの場合直交し、多くの場合「多断面再構成」または「MPR」のように正準(軸、冠状、矢状)方向において示される。共通の軸を通る1つまたは複数の平面が示され、それらの平面がすべてその軸を中心として回転する「ラジアルスタッキング」のような、他の変形形態が存在する。しかしながら、単一ソースまたは複数ソースの融合からの画像データを含む、平面の任意の構成が使用されてもよいことが諒解されよう。3Dデータ(MRI、CT、または3D超音波ボリュームなどからの)が存在する場合、任意の適切で標準的な補間方式を用いてサンプリング格子から補間することによって、再フォーマット画像を生成することができる。所望されるデータが本質的に二次元(X線、または2D超音波)である場合、データは、再フォーマット平面上に投影されるか、またはその平面交差のみが提示されるか、または両方の手法が所望に応じて融合され得る。再フォーマット平面がユーザに提示されると、ユーザは、3D空間内の正確な位置を識別することを満たすまで、3D空間内の各平面位置を調整し、各平面表現に対する目標位置を精緻化することができる。
【0074】
3Dボリュームの画像を使用して、方法は、手術装置のための、患者の身体内への少なくとも1つの入口点の位置を指定することと、1つまたは複数の目標位置から、アプローチされるべき特定の目標位置を指定することとを含む。1つまたは複数の可能性のある入口点および目標位置(複数の場合もあり)の位置の指定は、いくつかの方法のうちの1つにおいて行われ得る。たとえば、臨床医は、3Dレンダリングされた脳表面の点(複数の場合もあり)上にマウスカーソルを重ねてクリックすることによって、入口点(複数の場合もあり)を選択することができる。代替的に、システムは、一定の基準(脳溝経路を入口に使用することなど)に基づいて、可能性のある入口点(複数の場合もあり)を自動的に選択または示唆するようにプログラムされてもよい。たとえば、画像ボリューム(たとえば、T1 MRI画像)、画像の部分のラベリングを含むその画像の(白質、灰白質、硬膜、および脳溝への)分割、および目標を与えられると、システムは、特定の入口位置を制限するか、またはそれに反対することを示唆するのに使用され得る。システムは、たとえば、影響を受ける線維の数、脳溝境界から目標までの距離、ならびに、アプローチ経路によって変位される白質および/または灰白質の体積を最小限に抑えることに基づいて、最良の脳溝入口点を生成することができる。そのような点は、全数検索または様々な標準的な方法(たとえば、エネルギー最小化)によって見出すことができる。「最良」の候補点の生成により高度な分析を適用するために追加の情報(より多くの分割ラベル、生体力学モデル化、流体力学モデル化)を利用することによって、単純なアプローチを高度化することができる。執刀医は、これらの「最良」の候補点の中から選択してもよく、または、それらを拒絶して1つを手動で選択してもよい。
【0075】
その後、入口点から指定の目標位置までの手術軌跡経路によって満たされるべき1つまたは複数の手術目的または手術結果基準が選択され、手術目的に基づいて、任意選択的に、手術目的に合致する、入口点の指定位置と指定の目標位置との間の1つまたは複数のウェイポイントが選択されてもよい。
【0076】
別の実施形態において、誘導システムを使用することによって手術経路が究明および記録され得、一方で、追跡されるツールを使用する臨床医が、実際の患者の解剖学的構造をモデル化するように作製された脳ファントムにおいて目標に向かう複数の異なるアプローチを試みる。
【0077】
その後、入口点と指定の目標位置との間の1つまたは複数のウェイポイントを通過する1つまたは複数の点別手術軌跡経路を用いて、指定入口点から指定の目標位置までの1つまたは複数の点別手術軌跡経路が計算されて、指定入口点から指定の目標位置までの手術軌跡経路が確定される。これらの軌跡は、臨床医によって手動で指定されてもよく、または、自動的に計算されてもよい。例示的な自動計算は、以下を含む。MRI T1画像ならびに手術入口点および目標をその中で指定されて与えられると、システムは、格子(たとえば、画像ボクセル中心、または便宜のために選択される任意の他の格子)を指定する。格子は、選択される接続方式のすべての隣接するボクセル間の接続(すなわち、対角接続を除く6方向の隣接するボクセル、または27方向すべての接続、または任意の他の部分集合を可能にし得る)の図式を推定する。各接続は、格子点間の直接経路に沿って積分されるピクセル強度に基づく重み(すなわち、コスト)を与えられる。ここで、本発明では、標準的な経路発見アルゴリズム(たとえばA*探索アルゴリズム、たとえば、Hart, P. E.、Nilsson, N. J.、Raphael, B.(1968)「A Formal Basis for the Heuristic Determination of Minimum Cost Paths」(IEEE Transactions on Systems Science and Cybernetics SSC44 (2): 100−107))を適用して最良の経路を判定する。この手法の変形形態は、利用可能である場合、脳のラベリングされた領域、生物物理学モデル、流体力学などに基づいてコスト関数内により多くの項を含むことができる。変形形態はまた、所望に応じて経路の後処理(たとえば、平滑化)をも含んでもよい。ウェイポイントはまた、手術軌跡経路の自動計算後に臨床医によって追加されてもよい。
【0078】
1つまたは複数の点別手術軌跡経路が生成されると、それらは記憶媒体内に記憶され、臨床医に対して視覚的に表示され得る。臨床医が、1つまたは複数のリストされている目的の上にマウスを重ねて目的をクリックすることによってコンピュータ表示画面上に表示されている手術結果基準のリストからチェックすることによって、1つまたは複数の手術目的が選択され得る。さらなる実施形態は、タッチスクリーンまたはスタイラス、および、ビデオ追跡システムもしくはジェスチャ入力を送達する他の手段と接続されたモニタ、または音声入力を使用することを含んでもよい。これらの手術結果基準は、手を加えられている解剖学的構造の異なる部分に対しては異なることになり、たとえば、基準のリストは、脊髄手術と比較すると、脳手術の場合は異なる場合がある。
【0079】
手術軌跡経路によって満たされるべき手術目的または手術結果基準を選択するステップは、回避されるべき(またはそれらに対する損傷を最小限に抑えられるべき)解剖学的特徴を選択すること、または、代替的に、手術経路が通過するべき1つまたは複数の領域を選択することを含んでもよく、ここでも、これは、執刀医が、回避または通過されるべき特定の位置の上にカーソルを置き、カーソルをクリックしてそのような特定の位置を記憶することによって行われてもよい。選択が行われると、1つまたは複数の解剖学的特徴の位置が3Dボリューム画像から識別され、所望に応じて、その1つまたは複数の解剖学的特徴を回避または通過する1つまたは複数の手術経路が計算されてもよい。回避されるべき、または、それらに対する損傷を最小限に抑えられるべき解剖学的特徴の一般的な非限定例は、神経損傷、筋損傷、靭帯損傷、腱損傷、血管損傷、脳白質路損傷(脳手術の場合)の任意の1つまたは組み合わせを含む。
【0080】
そのような構造の識別は、関心領域、ラベルマップ、または、イメージングボリュームに関する他のメタデータを規定することによって、システムに提供され得る。代替的に、システムは、そのような構造を自動的に推定して、それらを他の分析に使用することができる。これを行うための1つの方法は、詳細な脳地図を、使用されている画像ボリューム(複数の場合もあり)と重ね合わせ、その後、上記に対する入力として使用される地図ラベルを使用することによるものである。そのような重ね合わせは、テンプレート臨床画像(代表的なサンプルまたは平均化されている場合がある画像)に対して地図を構築し、その後、テンプレートの重ね合わせを実施することによって達成されてもよい。この例は、「Medical Image Registration」(Derek L G Hill et al 2001 Phys Med. Biol. 46 R1)に示されている。この情報は、前述したもののような自動軌跡計算アルゴリズムに対するさらなる入力および制約として使用することができる。
【0081】
表1は、複数の手術タイプにわたるこの変動を要約している。多くの解剖学的特徴を回避することが非常に望ましいことが明らかであるが、執刀医が実際に解剖学的特徴に行き当たり、通過することを望む場合があり得る。これらの例は、脳深部刺激、複数の腫瘍の切除、および、脳溝経路を通じた侵入を含む。
【0083】
方法はまた、1つまたは複数の軌跡経路が手術目的をどれだけ良好に満たすかを定量化するために1つまたは複数の軌跡経路に対してスコアを割り当てることを含み、これらのスコアの比較に基づいて、最良の手術経路が計算される。任意の解剖学的身体部分に対する一般的な手術の手術目的に相関し、代替の手術軌跡と関連付けられるスコアを計算するときに考慮に入れられることになるメトリックのいくつかの非限定例をここにリストする。
【0084】
1.限定ではないが、神経、血管、靭帯、腱、臓器などのような構造を含む手術について、個々の構造に対する手術経路の進入角を使用して、構造が被ると予測される損傷の平均量を求めることができ、より急な進入角(構造との直交により近い)は、引き起こす損傷がより大きく、それゆえ、引き起こす損傷がより小さく、それゆえより良好なスコアに対応するより平行な進入角(構造との平行により近い)よりも、より悪いスコアに対応する。さらに、危機的に交差すると予測される構造の数を、本明細書に記載するメトリックに対する拡張として使用することができる。
【0085】
2.手術経路の長さも、軌跡をスコア付けするのに使用することができる。たとえば、手術デバイスのタイプ、その形状およびサイズに応じて、より長い軌跡は、デバイスが、より大きい領域にわたって力を加えるようにする可能性があり、その結果として、経路がより短い場合よりも全体的に外傷がより大きくなる可能性がある。それゆえ、この事例において、より短い経路はより良好なスコアに対応することになり、より長い経路はより悪いスコアに対応することになる。
【0086】
3.明確に変化する方向に使用されるウェイポイントの数も、スコア付けに使用することができる。たとえば、手術デバイスが剛直である場合、発生する方向変化の数が多いほど、また方向変化角度(複数の場合もあり)が大きくなるほど、組織はより大きく変形させられる。手術デバイスに対する様々な向きにおける組織のこの変形によって、周囲組織に対するさらなる内部歪みおよび損耗が引き起こされる可能性があり、周囲組織に対する損傷が引き起こされる。このように、より多い方向変化の数、および、より大きい方向変化の角度が、より低い手術経路スコアに対応することになる。腫瘍切除の場合、手術経路が腫瘍境界に突き当たる進入角もスコア付けに使用することができる。実質的に正接する経路は手術デバイスを腫瘍に届かなくするか、腫瘍に適切に切り込むことなく腫瘍から滑り落ちるようにするか、または、腫瘍が周囲組織に対して転げまわるようにし、したがって、周囲の健常組織に対する応力をより大きくする可能性がより高いため、これはより悪いスコアに対応するはずである。対照的に、手術経路が、腫瘍に突き当たるときに直交する進入角にある範囲において、これはより良好なスコアに対応することになる。
【0087】
4.他の例において、手術経路によって侵入されている臓器または構造も、経路のスコア付けの考慮に入れられ得る。たとえば、脊髄手術において、特定の靭帯は、関節が有効に機能するのに不可欠であるため、理想的には侵入されない方がよく、損傷を受けるこれらの靭帯が少ないほど、その特定の経路の対応するスコアはより良好になる。
【0088】
5.手術経路スコアはまた、同じコンテクスト内の以前の手術から導出される患者の回復の統計データに基づいて重み付けされ得る。たとえば、患者の回復速度が(Z2)であった、(Y)回使用された代替の経路と比較して、特定の手術を実施するために同様の経路が(X)回使用された後、患者の回復速度は(Z1)であった。例示的な実施形態において、「同様の経路」のメトリックは、標準的な地図(すなわち、執刀医が目標の位置を記載することになる)内の目標の解剖学的位置、および、同じ地図に基づく入口点の対応する位置のみに基づいて、スコア付けされるべき提案される手術経路と同様の経路を識別する。さらなる分解能)もしくは病状(たとえば、腫瘍の型)、または、追従される手術経路の詳細な統計もしくはメタデータ(たとえば、地図からの、解剖学的特徴との相互作用)のいずれかに基づいて、さらなる詳細が追加され得る。「同様の経路」の評価に使用され得る他の基準は、所与の経路から切除されようとしている腫瘍の型、所与の経路から透過されようとしている特定の靭帯、患者の年齢、腫瘍の位置、透過される対象の臓器/領域などである。それゆえ、より短い回復時間(Z)は、その特定の手術経路についてより良好なスコアに対応することになる。
【0089】
6.損傷を受ける血管(静脈および/または動脈)がより少ないほど、患者が被る外傷は少なくなるため、特定の経路に対する血管の近接度も、手術経路のスコア付けに使用することができる。それゆえ、経路の近傍にある血管の数が少ないほど、スコアはより良好になる。
【0090】
7.組織を通じた侵入は一般的に、単純に組織を脇へ押しのけるよりもはるかに外傷性が高いため、侵入されようとしている組織の長さも、手術経路をスコア付けするのに使用することができる。この場合、組織をより多く切る必要がある経路は、その必要が少ない経路よりも悪いスコアを与えられることになる。加えて、切られようとしているまたは侵入されようとしている組織の型も、スコアに影響することになる。
【0091】
8.一般的に、より脆弱性の高い組織は、より強靭な組織構造よりも、手技を受けて損傷を受ける可能性がより高いため、もう1つのメトリックは、通過されようとしている組織の脆弱性であることになる。この実施形態において、考慮にある手術経路によって通過されようとしている特定の領域の最も可能性の高い値を導出するための地図および/またはデータベースが使用され得、またはそうでなければ、この情報は、超音波またはMRエラストグラフィからのような直接の組織密度または弾性測定値から導出され得る。またさらなる実施形態において、組織脆弱性は、限定ではなく、組織の剛性または剛直性を含む、組織の既知の特性から推測されてもよい。
【0092】
これらのメトリックは、挿入されようとしている手術道具および実施されようとしている手術に応じて変化する。したがって、代替的な軌跡に提示されるスコアは、処置において使用されることが計画されている手術のタイプおよび特定のツールの両方を組み込むことになる。これはまた、執刀医に、特定の処置に対して種々の手術技法および道具を使用することへの賛否を評価する機会を与える。
【0093】
方法はまた、1つまたは複数の点別手術軌跡経路のスコアを、1つまたは複数の目標位置と最も近い入口点(複数の場合もあり)との間の最短距離の経路の手術目的スコアと比較することも含み得る。現在実施されているほとんどの手術は現在、最短距離に対応する、表面から目標までの直線経路を使用していることが留意される。それゆえ、この方法は、より顕著に使用されている最短距離手術軌跡経路と、提案されている代替の経路との間でスコア比較を実施し、その差が、将来考慮するためにユーザによって留意されることを可能にする。いくつかの事例において、直線経路アプローチが最良のスコアを与える場合があり、その場合、これはユーザによって考慮もされ得る。
【0094】
臨床医(一般的には執刀医)が指定する、1つまたは複数の可能性のある入口点の位置および目標位置(複数の場合もあり)、アプローチされるべき最初の目標、ならびに、手術結果基準が、臨床医によってコンピュータに通信され得るすべて入力であり、これらはすべて、コンピュータ記憶デバイス内に記憶される。
【0095】
本発明の方法およびシステムは、高度に自動化され、臨床医からの入力をほとんど必要としないように構成することができることが留意される。たとえば、コンピュータプロセッサは、本明細書に記載するように、患者の解剖学的構造の3Dボリュームの画像を、解剖学的地図および/または通常の健常組織の記憶されている画像のライブラリと比較することによって、アプローチされるべき1つまたは複数の手術目標の位置を求めるようにプログラムされ得る。コンピュータプロセッサは、1つまたは複数の可能性のある入口点を選択し、その後、アプローチされるべき最初の目標までの1つまたは複数の手術進路を計算し、その後、手術されようとしている特定の解剖学的部分と関連付けられる、記憶されている手術結果基準セットに基づいて各進路をスコア付けするようにプログラムされ得る。コンピュータは、その後、スコアを比較して、特定の手術結果基準セットにとって最良のスコアを有する進路を選択する。
【0096】
1つまたは複数の手術経路が決定されると、執刀医/臨床医チームは、シミュレーションを実行することを望む場合があり、それによって、システムは、1つまたは複数の手術経路に沿って目標にアプローチし、目標の、手術器具によって係合されるべきすべての部分にアクセスする手術道具のシミュレーションを視覚的に表示するようにプログラムされる。
【0097】
例示的な脳手術計画方法
図5は、計画システムに含まれる処理ステップを、流れ図を使用して示す。第1のステップは、患者の術前画像を取得すること(
図5のステップ500に示す)を含む。画像データ系列は最初に、PACSサーバのようなデータベースまたはサーバからソフトウェアにインポートされる。術前手術計画方法およびシステムは、MRI、CT、PET、または、侵襲的処置が開始される前に脳の望ましい部分をイメージングするために必要な組織透過性を有する同様のモダリティの少なくとも1つまたは組み合わせを使用して得られる術前画像(すなわち、外科的処置を開始する前に得られる画像)を使用し、それらの画像は一般的に、空間内でイメージングを方向付けるための基準または他のマーカを含む。
【0098】
本発明の計画方法およびシステムはまた、有利には、2つ以上のイメージングモダリティを使用することができる。この状況において、複数の異なるモダリティからの画像が互いに重ね合わされて、組み合わせ情報が得られる。たとえば、一実施形態において、拡散(一般的にはDTI)データ、および、3D脳溝表面マップを生成するのに有用なMRデータの両方を取得するのに適した条件下でMRIが得られ得る。そこから拡散画像が得られるこれらの術前MR画像は、各MRイメージングモダリティがそれ自体の向き、幾何学的スケーリングおよび歪みを有するため、同じく、3D脳溝表面マップを得るために使用されるMR画像を用いて行われるように、互いと重ね合わせられる(
図5のステップ510に示す)。
【0099】
本明細書において説明するように、重ね合わせプロセス(510)は、画像が幾何学的観点から互いに一致し、したがって、解剖学的領域が、様々なモダリティを使用して得られる画像内で互いに重なり合うように、適切な変換が画像に適用される、一般的に既知のプロセスである。画像を重ね合わせるための、一般的に使用されている1つのアルゴリズムが、「PET−CT image registration in the chest using free−form deformations」(IEEE Transaction on Medical Imaging, Vol:22, lssue: 1 , (2003))である。DTIおよび3D脳溝表面マップが生成されると、方法は、DTIデータを3D脳溝マップデータ上に重ね合わせることを含む。3D脳溝マップは、脳表面を表し、脳上に存在する脳しわまたは溝を明瞭に示すための3D表面マップを生成するためのMRデータを使用して構築される。3D脳溝マップは、取得された画像から頭蓋骨構造を除去した後のT1 MR画像から構築される。頭蓋骨を除去するための例示的なアルゴリズム(スカルストリッピングとしても知られている)は、「Geodesic Active Contours」(Vincent C. et.al., International Journal of Computer Vision 22(1), 61 −79 (1997))に与えられている。誤ったDTI推定値が脳溝境界を越える脳線維束の突出部または脳回への突出部として明白になるため、この脳溝マップとDTIとの重ね合わせは、重ね合わせ誤差の検出を補助する。そのようなずれは、様々なイメージングモダリティ間の重ね合わせの品質のスコアまたはメトリックに達するために量子化することができる。この段階におけるレジストレーション誤差を量子化するための例示的なアルゴリズムは以下のとおり、すなわち、白質境界に含まれる索の長さと、索全体の長さとの比である。理想的には、このメトリックは、可能な限り低くなるべきである。1からこの比を減算した値を、利用可能な脳マップに対するDTI推定の品質を評価するための良好性測度として使用することができる。
【0100】
スコア付けのプロセスによって、3D脳溝マップとDTIデータとの間の「フィットの良好性」測度が与えられ、3D脳溝マップとDTIデータとの間のスコアが、許容不可能な量のレジストレーションずれが存在することを示唆する場合、計画処置を完了する前にスコアを改善するための是正措置が必要とされることになる。この是正措置は、元のシード点の近傍にあるが重なり合わないように、ユーザによって選択されるかまたは自動的に選択される異なる開始領域を使用した、トラクトグラフィデータ(DTI)の再レジストレーションを含んでもよい。開始領域または点の集合は一般的に、DTI推定において、まとめて個々の索を表すボクセルを推定するために使用される。
【0101】
DTI推定の一般的な誤差源は、所与のボクセルを通過する線維束の主方向が誤って選択されることである。索推定のための異なる開始点の上述した選択によって、所与のボクセルの代替の主方向を強制的に選択し、したがって、脳溝内へとまたは脳表面を越えて延伸する索が推定されることを回避することができる。DTI推定は最適化プロセスであり、代替の索に到達するために多くの一般的に利用可能な推定方法のうちの1つが試みられてもよく、解剖学的に妥当な索のセットが後続の処理に対して維持され得ることが理解されるべきである。DTI推定の解剖学的な正確さは、人間の評価者によって判定することができるか、または、脳の既知の領域における索の相対濃度を示す脳の解剖学的マップのような追加の情報を利用しながら上述した同じ良好性測度を推定するソフトウェアアルゴリズムによって自動的に判定することができる。
【0102】
この手法は、大きい腫瘍が存在すると、腫瘍領域の周囲の索が幾何学的に歪むということによって複雑になり得る。提案されるシステムの発明的態様は、その推定を、腫瘍による影響が最も少ない脳の側部に限定することによって良好性測度に対するこの歪みの影響を最小限に抑えることができることである。外科的介入を必要とする腫瘍は、脳の片側に限定されることが多い。腫瘍(複数の場合もあり)の診断は手術計画を開始する前に完了していることになるため、この情報は、事前に分かっている。
【0103】
目視確認および重ね合わせスコアの評価を使用して処理結果を検討し、また、ずれが見つかった場合、上述した、許容不可能なずれが実質的にない重なりデータを得るステップを行った後、ステップ(520)に示すように、1つまたは複数の画像上で特定の関心領域を規定することができる。コンピュータインターフェースを使用することによって、これらの領域は、1つまたは複数の2D画像層上で臨床医によって規定することができ、そのように規定された領域の間を補間することによって、対応する対象ボリュームを規定することができる。代替的に、特定の点が、ユーザによって、関心領域(ROI)の初期推定値を提供するために選択されてもよく、2D画像層内の領域を識別するためのソフトウェアアルゴリズムが利用されてもよい。そのような領域を識別するための一般的な方法は、連結成分ラベリングとして既知である。これは、グラフィックス処理において一般的に使用されている、以下の引用文献およびComputer Vision, D. Ballard and C. Brownに詳細に記載されている。
【0104】
代替的に、そのようなROIを確立するために画像分割が利用されてもよい。そのようなROIは、複数の2D層に対して手動でまたは自動的に生成されてもよく、3D空間内でそのようなROIの間を補間することによって、関心体積(VOI)が確立されてもよい。ここで、スプラインフィッティングのような一般的な技法がここに利用されてもよい。VOIは、3DレンダリングされたMR、CTまたは脳溝マップ上に重ね合わされ得る解剖学的地図に関連して視覚化され得る。ROIおよび/またはVOIは、治療する必要のある病変、または、外科的処置の間に回避されなければならない重要領域に対するランドマークとして機能することができる。ROIまたはVOIが病変または切除されるべき領域を表す状況において、執刀医は、これらを目標領域として使用する。ボリュームはまた、切除されなければならない病変、腫瘍または他の領域の質量の推定値も提供し、これは、手術中の臨床医にとっては有用であり得る。また、術中イメージングを使用して、手術プロセス全体を通じた目標領域のボリュームの低減を評価することができる。ROIまたはVOIが、回避されるべき領域を表す代替の状況において、執刀医はこれらを、依然として病理学的領域(たとえば、病変、腫瘍、血栓など)にアクセスすることを可能にしながら、これらの領域を保持するように慎重に進まなければならないところのランドマークとして使用する。
【0105】
回避されるべき領域は、所望の手術結果目的に従って、患者の運動、感覚、または任意の他の重要な機能に対する可能性のある損傷を防止するために執刀医が回避するための「侵入禁止区域」として規定され得る。したがって、ROIおよび/またはVOIは、患者のために確保されることが望ましい特定の機能に基づいて患者に対して特定的に規定され得る。したがって、ROIおよびVOIは、患者のために確保される必要がある特定の機能(複数の場合もあり)に対して固有に調整される手術経路を確定するのを補助する。
【0106】
脳手術に特定的な手術目的に相関し、代替の手術軌跡と関連付けられるスコアを計算するときに考慮に入れられることになるメトリックのいくつかの非限定例をここにリストする。
【0107】
1.脳手術において、個々の線維束に対する手術経路の進入角を使用して、線維束が被ると予測される損傷の平均量を求めることができ、より急な進入角(線維束との直交により近い)は、引き起こす損傷がより大きく、それゆえ、引き起こす損傷がより小さく、それゆえより良好なスコアに対応する平行な進入角(線維束との平行により近い)よりも、より悪いスコアに対応する。この基本的な実施形態は、手術経路と、交差する線維束の向きとの間の角度の余弦の絶対値をとることである。例として、平行な索には1のスコアを割り当て、垂直な索には0のスコアを割り当て、それを下回る神経線維束は危機的に交差し得る閾値スコアを設定することができる。そのような危機的に交差する索の数は、たとえば、ここでは、経路のスコアが危機的に交差する索の数に関連する関数で除算または減算され得、したがってそのような経路のスコアが低減するため、記載されているメトリックに対する拡張として使用することができる。
【0108】
2.脳手術において、手術軌跡が危機的に交差する索は、これらの索によって接続される脳の領域を識別するために追従され得る。この情報を脳地図とともに使用して、たとえば、線維束の機能が判定(すなわち、仮定)され、それに応じて経路をスコア付けするのに使用され得る。この場合、特定の患者のために確保されるのに最も適している機能(執刀医および患者によって判定される)は、交差される場合、他の神経機能よりも悪いスコアを優先して割り当てられる。たとえば、プロのギタリストについては、上肢の運動機能の確保が他の機能よりも優先される可能性が高い。そのような領域的分析は、臨床医によって行われ、一連の関心領域またはラベル画像としてシステムに提供され得る。
【0109】
3.手術経路の長さも、軌跡をスコア付けするのに使用することができる。たとえば、ポートベースの脳手術の場合、より長い軌跡は、デバイスが、より大きい領域にわたって力を加えるようにする可能性があり、その結果として、経路がより短い場合よりも脳に対する外傷がより大きくなる可能性がある。それゆえ、この事例において、より短い経路はより良好なスコアに対応することになり、より長い経路はより悪いスコアに対応することになる。
【0110】
4.明確に変化する方向に使用されるウェイポイントの数も、スコア付けに使用することができる。たとえば、ポートベースの脳手術において、ポートが剛直であるとすると、経路内で発生する方向変化の数が多いほど、また方向変化角度(複数の場合もあり)が大きくなるほど、脳組織はより大きく変形させられる。ポートに対する様々なむきにおける組織のこの変形は、影響を受ける周囲組織、特に近傍の神経および神経束に対してさらなる歪みおよび損耗を引き起こすことになる。このように、手術経路に沿ったポート内のより多い方向変化の数、および、より大きい方向変化の角度が、より低い手術経路スコアに対応することになる。
【0111】
5.腫瘍切除の場合、ポートベースの脳手術のコンテクストにおいて、手術経路が腫瘍境界に突き当たる進入角もスコア付けに使用することができる。実質的に正接する経路はポートを腫瘍に届かなくするか、腫瘍に係合することができない(滑り落ちる)か、または、腫瘍が健常組織に対して転げまわるようにし、これらはすべてポートをより多く動かすことを必要とし、その結果として、周囲の健常な脳組織に対する応力をより大きくする可能性がより高いため、これはより悪いスコアに対応することになる。一方、対照的に、手術経路が、腫瘍境界に突き当たるときに直交する進入角にある範囲において、これはより良好なスコアをもたらすことになる。
【0112】
6.手術経路スコアはまた、同じコンテクスト内の以前の手術から導出される患者の回復の統計データに基づいて重み付けされ得る。たとえば、患者の回復速度が(Z2)であった、(Y)回使用された代替の経路と比較して、特定の手術を実施するために同様の経路が(X)回使用された後、患者の回復速度は(Z1)であった。例示的な実施形態において、「同様の経路」メトリックは、経路の入口点および目標点の両方の解剖学的位置(臨床医によって標準的な地図に対して記述される)のみに基づいて経路をスコア付けする。したがって、地図にしたがって両方の位置または近傍の位置を共有した経路が、同様であると考えられる。メトリックの識別力をさらに高めるために、さらなる詳細が追加され得る。たとえば、さらなる分解能を、位置(たとえば、入口に使用される個々の脳溝の特定の位置の確定)、または病理(たとえば、腫瘍型)、または追従される手術経路の詳細な統計もしくはメタデータ(たとえば、変位されている白質または灰白質の割合、または解剖学的特徴との相互作用に加えることができる。「同様の経路」の評価に使用され得る他の基準は、所与の経路から切除されようとしている腫瘍の型、影響を受けることになる領域内の脳組織の既知の力学的特性、患者の年齢、腫瘍の位置、影響を受ける領域などである。それゆえ、この例において、より短い回復時間(Z)は、その特定の手術経路についてより良好なスコアに対応することになる。
【0113】
7.血管に対する損傷がより少ないと、患者が被る外傷は明らかに低減するため、特定の経路に対する血管の近接度も、手術経路のスコア付けに使用することができる。それゆえ、経路の近傍にある血管の数が少ないほど、スコアはより良好になる。
【0114】
8.ポートベースの脳手術の場合、脳質を通じた侵入は、単純に脳質を脇へ押しのけるよりもはるかに外傷性が高いため、侵入されようとしている組織の量および型も、手術経路をスコア付けするのに使用することができる。この場合、より多くの組織に進入することは、より少ない組織に進入することよりも悪いスコアを与えられることになる。加えて、侵入されようとしている組織の型も、スコアに影響することになる。たとえば、灰白質への損傷は一般的に、脳質の侵入によって患者に対して引き起こされる全体的な健康悪化に対してそれほど重要ではない(ほとんどの事例について)ため、白質への侵入は、その神経機能的重要性を所与とすると、灰白質よりも悪いスコアを招くことになる。それゆえ、2つの異なる経路を使用して同じ量の灰白質および白質を通じて侵入すると、白質に侵入する経路の方が、灰白質に進入する経路よりも悪いスコアを与えることになる。
【0115】
9.より剛直性の高い組織は、より柔軟な組織構造よりも、手技を受けて損傷を受ける可能性がより高いため、もう1つのメトリックは、通過されようとしている組織の剛直性であることになる。これは、考慮されている手術経路によって通過されようとしている特定の領域の最も可能性の高い値を導出するために地図および/またはデータベースを使用することが必要になる。
【0116】
10.もう1つのメトリックは、経路スコアの一部として脳機能を含むことである。脳機能は、機能的MRI(fMRI)情報(BOLDコントラストイメージング)、脳磁図(MEG)、ラマン分光法、または電気生理学的測定を使用して測定することができる。機能レベルが高い領域、脳機能階層のランク付け(領域的重要性)がより高い領域を通る経路、または、そのような領域に機能的に関係する経路はすべて、より悪いスコアを有することになる。さらに、そのような機能的に関係する領域を接続する白質路を通る経路も、より悪いスコアを有することになる。
【0117】
11.関心領域が確定されると、1つまたは複数の目標が画像内で識別され得る(ステップ530に示すように)。目標は、腫瘍(または病変)を切除するためにアクセスされなければならない、脳内の三次元位置に対応する。3D空間内で点を正確に空間的に位置特定するために、最低3つの直交する平面が必要であることが既知である。しかしながら、追加のビューが提示される場合があり、これらのビューは、複数の異なるモダリティを使用して得られる画像を含む。言い換えれば、追加の平面が、上述した直交する平面と幾何学的に重なり合い、前述の3つの直交する平面内で提示されているモダリティを補完する他のモダリティを使用してキャプチャされた画像を提示することができる。たとえば、3つの直交する平面は、T1 MR画像スライスを表すことができ、一方で追加のビューが、CTまたはBO(別のMRデータ表現)を使用して得られる重ね合わせ画像を提示することができる。補完モダリティは、腫瘍または血栓の位置および範囲を確認するのを補助する。腫瘍位置の推定を補助するための情報を提示する別の冗長手段はラジアルスライスとしてのデータの表現であり、ユーザ定義の軸を中心として半径方向に配置されている平面に沿っているように仮想スライスが生成される。
【0118】
手術されようとしている目標を複数の2D画像において視覚化することによって、脳の3Dレンダリングのみを使用して3D空間内に目標を配置することに内在する危険性が軽減される(
図7参照)。この後者の手法は、3D表面が2Dディスプレイ上にレンダリングされるため、誤りが生じやすい。執刀医が目標の位置を確認するために複数の視点から3D仮想オブジェクトを見ることができるようになるため、この危険性を克服するために3Dホログラフィックディスプレイを使用することもできることが留意されるべきである。一実施形態において、これは、3つの直交する平面において画像データを提示することに対する代替手段として使用することができる。
【0119】
本発明の別の発明的態様は、目標の直近にある白質路を視覚化することができることである。この機能は、目標領域が占めるかまたは(閾値内で)直近にある幾何学的空間に交差する索を除いて、脳のすべての領域内の拡散束(またはトラクトグラフィ情報)を隠すことによって達成される。代替的に、脳内に仮想的に挿入されている手術道具が占める幾何学的空間に交差する索が表示されてもよい。そのような道具は、いくつか挙げると、生検針、低侵襲手術のためのポート(たとえば、アクセスポート)、脳深部刺激針、またはカテーテルの仮想表現であり得る。この、DTI情報の選択的表示の手法は、DTI画像全体を視覚化することに関連付けられる大規模データの問題を管理するのを助ける。この手法はまた、脳全体と関連付けられるすべてのトラクトグラフィ情報とは対照的に、執刀医が、自身の意識の焦点を狭め、影響を受ける索を主に見ることを補助する。目標領域の直近にあるか、または、道具によって影響を受けると予測される白質路のレンダリングのこの選択的フィルタリングは、執刀医が、手術目的を最良に満たすことができる手術経路を選択することを補助するために、選択可能な透過度の中で索情報を見ることを可能にする。さらに、DTI情報のそのような選択可能な表示は、fMRI、または、腫瘍切除中に影響を受ける可能性があり得る脳機能を評価することが可能である他のモダリティを含む、任意の他の重ね合わせ可能なモダリティによって、同様に置き換えられまたは補完され得る。索の交差の視覚化の図解については
図8および
図9を参照されたい。
【0120】
システムは、閾値剪断カットオフ角度に対して表示される線維の数のヒストグラムが計算されるヒストグラム分析を可能にするようにプログラムされ得る。これによって、この閾値に対する感受性に関する情報がもたらされる。一実施形態において、ソフトウェアは、表示される線維の数が突然に急変する、すなわち、カットオフ閾値の小さい変化を所与として表示に大きな変化がある値がある場合に、設定カットオフに近い代替のカットオフ角を示唆し得る。
【0121】
代替的に、二値カットオフ閾値の代わりに、表示は、交差角が、設定閾値を超えて、または、最小設定閾値と最大設定閾値との間で増大するときに線維の漸次的変化が(たとえば、線維強度を低減することまたは透過度を増大させることによって)表示されることを可能にするように変調されてもよい。
【0122】
別の実施形態は、距離分析を含んでもよく、ここで、交差点から離れている線維は影響を受ける可能性が低いため、システムおよび方法は、索の全経路ではなく、ポートとの交差からの各索の設定距離のみを表示するように構成される。この距離閾値は動的に調整および操作することができる。各索の表示は、ポート交差からの距離によって(たとえば、輝度を低減すること、色を変更すること、透過度を増大させること、または、距離によって表示される索の太さを低減することによって)変調することもできる。
【0123】
代替的に、それらの終端点において、またはその付近で影響を受ける索は、それらの軌跡に沿って離れて影響を受ける索よりも、受ける影響が少ない可能性があるため、表示される索は、終端点までのポートとの交差の距離によって同様に変調することができる。
【0124】
手術経路の確立の次のステップは、係合点としても知られている入口点の識別である(ステップ540に示す)。この入口点は、手術ポートツールの脳溝内への先頭部分の入口点を指すことが留意される。手術ポートの脳白質内への別の入口点もあってもよい。上述した第1の入口点は、ポートツール、生検針、カテーテルなどのような仮想アクセスツールを重ね合わせて脳溝を視覚化することによって、確立される。しかしながら、本発明の利点は、仮想ポートツールが、当該仮想ポートツールを透明なツールモデルとして表すことによって遮られないように、そのようなアプローチで提示され得ることである。
【0125】
その後、目標点および係合点を誘導基準点として使用して、脳溝経路を確定することができる(ステップ550に示す)。一実施形態において、本発明の方法およびシステムは、手術経路においてそれぞれ2つの極開始点および極終端点として係合点および目標点と、2つの極点の間の追加の空間位置を含む区分的に線形な脳溝経路を確定するように構成されている。これらの追加の空間位置点は、脳溝内に曲がりが観察されるときに区分的に線形な経路を確定するために挿入され得る。脳溝内の曲がりに近密に追従する区分的に線形な経路は、脳の、手術道具が接する領域を最適に維持することができ、そのような手術道具はロープロファイルで、かつ/または柔軟もしくは多関節式である。したがって、多関節式または柔軟なポートは、そのような区分的に線形な経路を利用して脳への外傷をさらに低減すると予測することができる。仮想ポートが交差する脳神経束の範囲を示すために、メトリックまたはスコアが特定の脳溝経路と関連付けられ得る。したがって、スコアは、計画される脳溝経路を使用するときにポートによって導入されると予測される外傷の測度として使用することができる。言い換えれば、交差する索の数は、最小数の索の交差を提示する経路を識別するために、2つ以上の異なる経路を比較するのに使用することができる。
【0126】
最後に、手術道具をモデル化し、道具の動きが開頭部の寸法および位置によって制約されるときに、各道具について利用可能な動きの範囲を評価することによって、開頭部の代替的な位置および幾何形状を評価することができる(ステップ560に示す)。この動きの範囲は
図10に見ることができる。さらに、開頭位置および脳溝経路は、画像スライスをラジアルスタッキングすることによって、より正確に視覚化することができる。言い換えれば、脳全体の3D再構築MR画像を使用して、計画される脳溝経路に妥当に近い共通の軸を共有する仮想2D画像スライスを作成することができる。そのようなスライスは、計画される経路に近い脳溝の範囲を露呈させ、したがって、代替的な脳溝経路のより良好な視覚化を補助する。先行する段階の各々からのすべてのメトリック、および、確定された脳溝経路の各々のフィットの良好性を表すためのメトリックを提示するために、最終的なスコアカードが生成される。脳溝経路のフィットの良好性(脳溝対応率としても既知である)は、計画されている軌跡と、説明した脳溝経路の総延長に経路の終端点から目標までのユークリッド距離を加えた合計との比である。この比はその後、100を乗算されて、百分率の比を表す。このメトリックは、線形軌跡と選択される脳溝経路との間の対応を示す。100パーセントは、完全一致または線形経路を意味する。
【0127】
確立された手術計画はその後、誘導システムに記憶および/またはエクスポートされ(570)、誘導システムは、一般的に、執刀医が、外科的処置の間に自身の手術道具をナビゲートするのに使用するために、そのようなデータを受信し、そのような計画または手術経路を記憶および/または重ね合わせ(必要な場合)することができる。計画システムの発明的特徴は、手術ステップをビデオとして自動的に再生することによって、執刀医が、処置全体を視覚化し、代替的な手術計画を比較することを可能にする。これは、処置全体の視覚化において執刀医を補助し、したがって、確認ステップおよび執刀医の訓練ステップとしての役割を果たす。
【0128】
医療処置が、切迫した医学的緊急事態に対処することであり、複数のイメージングモダリティから画像を得るための時間がない場合、本発明の方法およびシステムは、単一の非侵襲的イメージングモダリティを使用するように構成することができる。この状況において、脳溝から、患者の脳内の手術されるべき位置までの進路を計画するための計画方法は、非侵襲的イメージングモダリティを使用して手術されるべき患者の脳の術前画像を取得することと、術前画像を重ね合わせることとを含む。重ね合わされた画像は、患者の脳の脳溝構造、ならびに、1つまたは複数の目標、および、侵襲的な外科的処置の間にアプローチおよび手術されるべき関連する1つまたは複数の目標位置を識別するのに使用される。1つまたは複数の目標位置は、3D空間における1つまたは複数の目標の位置を確認するために、少なくとも3つの直交する平面内で視覚的に表示することができる。入口点の位置および1つまたは複数の目標位置に基づいて、入口点の位置および1つまたは複数の目標位置のうちの選択される目標位置の位置が、それぞれ手術経路内の開始点および終端ちんとして指定されている、区分的に線形な手術経路が確定される。手術経路は、脳の選択される解剖学的特徴の通過を回避するように選択される。
【0129】
計画段階が完了して手術が開始した後、脳組織が見えるようになると、その後、術中画像を取得するのに使用することができない他のイメージングモダリティが使用して、上述したMRI、CTおよびPETモダリティに加えて、術中画像を取得され得る。そのようなモダリティは、OCT、PS−OCT、超音波などを含む。これらは、以降、外科的処置の誘導部分の説明の間により詳細に説明する。
【0130】
図2は、術中マルチモード手術計画および誘導システムおよび方法として使用するための、本発明の方法およびシステムの一実施形態を示す。システムおよび方法は、術前段階および術中段階における手術計画および誘導ツールとして使用することができる。イメージング中に見える患者基準マーカ、または、当該技術分野において既知である他のイメージング技法を使用することによって、
図1に示す手術計画ステップおよび外科的処置のデータ入力(複数の場合もあり)を、
図2に示す術中誘導段階の入力(複数の場合もあり)として使用することができることを、当業者は諒解しよう。
【0131】
図2の実施形態は、術前データ入力(複数の場合もあり)および更新された術中データ入力(複数の場合もあり)を利用することによって、執刀医のようなユーザに、手術領域を通じてナビゲートする統一された手段を提供する。システムおよび方法のプロセッサ(複数の場合もあり)は、命令/アルゴリズム11を用いて、術前データ入力(複数の場合もあり)および術中データ入力(複数の場合もあり)を分析して手術の過程の間に手術計画を更新するようにプログラムされている。たとえば、新たに取得された画像の形態の術中入力(複数の場合もあり)が、以前は分かっていなかった神経束または脳神経束を識別した場合、これらの入力は、所望に応じて、その神経束との接触を回避するために術中に手術計画を更新するのに使用することができる。術中入力(複数の場合もあり)は、様々なセンサ(複数の場合もあり)を使用して収集されるローカルデータを含む様々な入力(複数の場合もあり)を含んでもよいことを、当業者は諒解しよう。
【0132】
いくつかの実施形態において、
図2のシステムおよび方法は、組織位置を検証し、腫瘍切除後に組織イメージングを更新し、手術中に手術デバイス位置を更新するために、術中イメージングセンサ(複数の場合もあり)を用いて、特定の外科的処置のコンテクストにおいて更新された術中入力(複数の場合もあり)を連続的に提供することができる。
【0133】
システムおよび方法は、たとえば、手術中の手術道具による重要な構造の穿刺、または、手術中の手術道具との衝突について警告するために、画像の再フォーマットを可能にし得る。加えて、本明細書に開示する実施形態は、針振れ、組織偏位または患者の動きに起因して発生する可能性のある任意の偏位に対するイメージングおよび入力更新、ならびに既知のイメージング歪みを補正するためのアルゴリズム法を可能にし得る。これらの複合誤差の程度は臨床的に重大であり、通常2cmを超える。いくつかの最も重大な誤差は、標準的なMRIスキャナ(1.5Tおよび3.0Tシステム)上で1cmを超える場合がある、MRIベースの歪みそのような傾斜磁場非線形性、磁化率変化、渦電流アーティファクトである。
【0134】
様々な術中イメージング技法を実施して、解剖学に特有のMRIデバイス、表面配列MRIスキャン、鼻内MRIデバイス、解剖学に特有のUSスキャン、鼻内USスキャン、解剖学に特有のCTまたはPETスキャン、ポートベースまたはプローブベースの光音響イメージング、および、遠隔スキャンまたはプローブベースのスキャンによって行われる光学イメージングを含む術中入力(複数の場合もあり)を生成することができることを、当業者は諒解しよう。
【0135】
図3は、術後データ分析のための本発明の方法およびシステムの一実施形態を示す。
図3に示すように、本明細書に記載する方法およびシステムの術前段階および術中段階の間にキャプチャされた入力(複数の場合もあり)および出力(複数の場合もあり)1を、将来の外科的処置および訓練目的の分析に使用することができる。術前段階および術中段階の間にキャプチャされる大量のデータを、将来の外科的処置および訓練目的に使用することができる。
【0136】
そのような実施形態において、システムは、入力(複数の場合もあり)、出力(複数の場合もあり)およびプロセッサ(複数の場合もあり)の活動を記憶し取り出すための専用データベース(複数の場合もあり)2を含むことができる。データベース2は、回復分析、結果評価、治療計画、病理相関3、将来の手術計画および/または訓練4およびコスト検証(健康アウトカム対経済的メトリック)のデータを含んでもよい。
【0137】
システムおよび方法によってキャプチャされる入力(複数の場合もあり)および出力(複数の場合もあり)は、手術道具の使用に関するデータ、ローカルを使用した外科的処置中の組織の連続記録、イメージングスキャン、局所ラマンスペクトル、形態構造を示すための組織の局所異方性情報、組織の区別を補助するための組織の局所ハイパースペクトル画像データ、身体内の特定の領域との相関のための、切除される組織の空間位置、および、将来の外科的処置または訓練目的を補助するために病理学者または放射線科医によって推測される病理情報を含んでもよいことを、当業者は諒解しよう。
【0138】
術前段階および術中段階の間に蓄積された情報は、
図3に示すように、同じ患者の将来の手術計画、他の患者の術前手術計画のための臨床的に関連する情報の収集、および/または、訓練目的に効率的に利用することができる。
【0139】
本明細書に開示するシステムおよび方法は、キャプチャされるべき大量のデータを生成し得るため、いくつかの実施形態において、入力および出力データは、たとえば、遠隔位置に位置するユーザがデータを遠隔して検討するために、追加のシステム構成要素に通信することができる。
【0140】
さらなる実施形態において、たとえば、患者ごとに選択される外科的処置および臨床基準を、最適な手術計画を評価するための追加の入力(複数の場合もあり)メトリックとして利用することができる。追加のメトリック入力(複数の場合もあり)は、最小限の血管外傷、最小限の神経束外傷または優先される神経束への外傷のような、対象箇所までの最小限の外傷の軌跡を含むことができる。メトリック入力(複数の場合もあり)はたとえば、白質に対する損傷、白質によって接続された領域に対する損傷、白質によって接続された大脳皮質の領域に対する損傷、および、アプローチ上の血管に対する損傷を含む、脳組織に対する測定または予測される外傷を含むことができる。
【0141】
いくつかの実施形態において、入力メトリック(複数の場合もあり)は、組織と器具との間の接触の角度、ならびに、履歴および手術データの両方から器具による組織の遮断または変位によって測定することができる神経および接続されている線維に対する外傷を含み得る。
【0142】
さらなる入力メトリック(複数の場合もあり)は、追跡技術によって対象組織に対して追跡されるべきデバイスの位置、手術デバイスおよびポートの幾何形状、手術中の器具およびポートの予期される位置付け、メイフィールドクランプに対するヘッドバンド領域のような患者の解剖学的構造の不動化に最良の実践位置、ならびに、局部麻酔薬の投与のような関連する処置のための位置を含んでもよい。入力メトリック(複数の場合もあり)は、特定のアプローチ、疾患または処置と関連付けることができること、ならびに、これらのメトリックはユーザ選択および自動生成のいずれであってもよいことを、当業者は諒解しよう。
【0143】
さらなる実施形態において、プロセッサ(複数の場合もあり)は、構造および目標を正確な位置に表現するために、イメージングアーティファクトまたは異常の補正を実施するために使用することができる。傾斜磁場非線形性補正、磁化率変化補正、渦電流アーティファクト補正およびピクセル補間誤差補正が、取得後の画像内のアーティファクトを補正するために、また、高品質で正確な表現をもたらすために方法およびシステムによって実施することができるプロセスの例である。
【0144】
またさらなる実施形態において、システムおよび方法は、様々なイメージングモダリティおよびモダリティ内の様々なスキャンを位置整合するための重ね合わせ構成要素および技法を含むことができる。レジストレーションは、MRI、PET、CT、US、表面スキャンおよび分光技法のような光学イメージング、ならびに、光音響イメージングを含む、多数のタイプのセンサ(複数の場合もあり)によって取得される画像に対して実施することができる。
【0145】
またさらなる実施形態において、システムおよび方法は、センサを、患者の身体内の特定の関心領域に向け、術中に、特定の関心領域、特に、手術中の適時に所望の手術野または点の領域に焦点を当てた高品質の画像を生成するように構成することができる。そのような手術野イメージングの実施は、システムによって、たとえば、適切なスケールのイメージングまたはコントラスト機構を使用することによって達成することができる。イメージングの焦点を特定の対象位置に当てることによって、複数の要因による信号対雑音比を改善することができ、新たなイメージングコントラスト機構を利用することができる。
【0146】
いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、入力メトリック(複数の場合もあり)のプロセッサ(複数の場合もあり)分析に基づいて、低侵襲アプローチを出力(複数の場合もあり)として生成することができる。たとえば、入力メトリック(複数の場合もあり)は、患者または処置に特有の出力(複数の場合もあり)を生成するために重み付けされてもよい。プロセッサは、執刀医によって提示される様々な手術代替案をランク付けすることができ、または、様々な手術代替案は、決定木およびニューラルネットワークのような適応学習パラダイムを使用して、システムによって自動的に生成されてもよい。
【0147】
本発明の方法およびシステムのいくつかの態様において、ユーザ選択のポートアプローチを適格にするために、サイズ、形状または神経組織に対する影響のような手術器具およびポート特有の情報を、患者の解剖学的構造に関するデータと統合するためのシステムおよび方法が提供される。たとえば、被験者の神経小束、神経束、脳溝および脳回パターン、血管、頭蓋骨および頭蓋底の特性を含む入力(複数の場合もあり)を使用して、手術器具またはポート挿入具の、脳の神経構造に対する影響を評価することができる。いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、手術器具およびポート計画が、適切な開頭術、切開、ヘッドホルダ、外部イメージングデバイス、および、ベースとなる手術室内の機器の配置を決定することを可能にすることができる。これらのシステムおよび方法は、患者アウトカムおよび経済的効果を改善して、より侵襲性の低い、より正確でより高速な挿入デバイスまたはポートベースの外科的処置をもたらすことができる。
【0148】
いくつかの実施形態において、開示されるシステムおよび方法は、腫瘍位置のような他の入力(複数の場合もあり)に加えて、脳の線維、脳溝および脳回構造に関するデータを入力(複数の場合もあり)として含むことができる。これらの入力(複数の場合もあり)は、たとえば、手術デバイス挿入の経路または位置を決定するのに有用であり得る。いくつかの実施形態において、計画出力(複数の場合もあり)は、脳溝のような天然開口部を通じた脳内へのデバイス挿入経路を含むことができる。他の実施形態において、腫瘍位置のような他の入力(複数の場合もあり)に加えて、腫瘍データベースのような入力(複数の場合もあり)が含まれ得る。
【0149】
いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、トラクトグラフィ入力(複数の場合もあり)を含むことができる。本明細書に記載するシステムおよび方法において、腫瘍と健常組織との間の差別化は、主要なコントラスト機構として、ブラウン運動による、脳の組織を通じた水の拡散を使用するDWIセンサ(複数の場合もあり)および関連するプロセッサ(複数の場合もあり)によって実施されてもよい。画像全体を通じた拡散の全体的な方向性に関する情報を提供するFAマップにおいて表される、拡散コントラストスキャンから取得されるデータは、脳内の特定の方向に沿った拡散を視覚化することを可能にするために、所定の勾配方向において取得することができる。プロセッサ(複数の場合もあり)は、この方向性情報を使用して、脳内の線維束を生成するためにベクトルセットによって確定される接続マップを生成することができ、これらの束は、脳を通じた白質路の外側での水拡散に対応し、脳内の主要な神経線維に対応する。
【0150】
たとえば、システムおよび方法は、DTI画像を生成し、組織の異方性比率(「FA」)および見かけ上の拡散係数(「ADC」)を測定するための拡散コントラストイメージングデバイスを含むことができる。拡散の程度の測定単位となるADC、および、画像全体を通じた拡散の全体的な方向性の測定単位となるFAは、脳を通じた主な線維束を識別し、腫瘍と関連付けられる細胞質充実度の増大を測定し、びまん性または局所外傷性の脳損傷および神経変性障害と関連付けられる白質障害を測定するのに使用することができる。
【0151】
ADC、FAマップおよびDTI画像を組み合わせることによって、システムおよび方法は、脳を通じた主な線維束を測定し、腫瘍と関連付けられる細胞質充実度の増大を測定し、びまん性または局所外傷性脳損傷および神経変性障害と関連付けられる白質障害を測定することができる。たとえば、腫瘍境界を可能な限り完全に切除するために開頭術を実施するために、多数のMRIコントラスト機構を使用して、腫瘍境界を画定し、脳内の重要構造を画定し、機能領域を画定し、腫瘍切除へのアプローチを確定することができる。
【0152】
図4は、本発明の方法およびシステムの一実施形態の出力を示し、プロセッサ(複数の場合もあり)が手術アプローチの最適な選択のための線維束を識別している。図示されている実施形態において、出力(複数の場合もあり)は、血管および線維束を回避することを可能にすることができる、脳溝を越えていく進路の位置および視覚化を含むことができる。出力(複数の場合もあり)は、白質および灰白質への挿入損傷を最小限に抑えるための手術アプローチを視覚化および追跡することができる。
【0153】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示する方法およびシステムは、線維および組織の情報のランク付けを入力(複数の場合もあり)として含むことができる。
【0154】
いくつかの実施形態において、現行のシステムおよび方法は、低侵襲進路を計算するのに使用することができる、システムによって利用可能な白質および灰白質情報のすべての総合計のような入力に基づいて、たとえば、脳溝を通る低侵襲経路を識別するように構成されている。たとえば、白質、灰白質、脳溝、およびCSFなどへの分割を有するMRI T1画像、および、その情報内で指定される手術入口点および目標を所与として、システムは、画像ボクセル中心の格子を指定し、直に隣接する接続された27個のボクセルの図式を形成する。各接続には、白質、灰白質、脳溝などとしてのボクセルラベルに基づいて重みが与えられる。重みは、1つの組織型への影響が他の組織型への影響を超えるという相対的な傾向(臨床医によって判定されてもよい)を反映するように選択される。組織に対する総影響が最も小さい経路を判定するために経路発見アルゴリズム(たとえば、A*探索アルゴリズム、上述)が使用されてもよい。さらなる実施形態は、手術器具を表現された組織と相対的にかつ相互作用して現実的に表現することができ、各経路が試行されるときに、組織歪みをシミュレートするために組織の生体力学特性を表すようにする。さらなる実施形態は、そのアプローチのために臨床決定を行うのをサポートするために、さらなるイメージングおよび結果情報を統合することができる。
【0155】
システムおよび方法は、変形モデルのコンテクストにおいては、1)変形モデルを使用しない計画、2)変形モデルを使用する計画、または3)情報を更新するために術中イメージングを使用する計画のような、いくつかの異なる実施形態を通じて低侵襲経路を生成および計画することができる。変形組織モデルを生成する例示的な方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、「SYSTEM AND METHOD FOR DETECTING TISSUE AND FIBER TRACK DEFORMATION」と題する同時係属の国際特許出願第PCT/CA2014/050243号明細書に開示されている。
【0156】
一実施形態において、システムおよび方法は、ポートが組織内に挿入されるときに組織が変形しないという仮定のもとに機能するよう構成され得る。この実施形態におけるシステムおよび方法は、固定セットの画像データを用いて低侵襲経路出力を生成するように構成され得る。臨床的に、これは妥当な仮定ではあり得るが、たとえば、ポート手術中、ポートは一般的に脳溝をたどり、脳溝は下部の組織を引っ張るか、または圧迫することになる。
【0157】
低侵襲経路を生成および計画するために、システムおよび方法は、たとえば、造影剤取り込み情報、拡散強調マップ(ADC)、T2変化、またはこれらの組み合わせおよび追加のコントラストの重ね合わせとして表現され得る対象目標を選択するように構成およびプログラムされる。この目標は、たとえば、ユーザ入力であってもよく、または、システムおよび方法によって、既存のデータもしくは画像に基づいて生成することができる。システムおよび方法が対象目標(3D画像セット上の点など)を識別すると、ユーザによって選択されるアクセスポートの表現が、スクリーンのような、システムおよび方法の出力またはフィードバック構成要素上に示され得る。
【0158】
たとえば、ポート手術中、システムおよび方法は、ポートを定位置、たとえば、三次元においてその点を中心として回転され得る、病変の先端に固定することができる。ポートの入口線およびその挿入軸が、システムおよび方法による経路選択に応じて脳内へとられるアプローチを画定し、進入は、複数の線形軌跡でも、湾曲した軌跡でもなく、単一の線形軌跡上で行われる。
【0159】
本明細書に開示するシステムおよび方法は、ポートまたは他の手術道具の脳組織への仮想挿入および除去を可能にすることができる。ポートが挿入されると、先端と接触する、DTIトラックのレジストレーションされたセット、および、ポートの外面が、システムおよび方法によって、レイトレーシングまたは同様の計算を通じて識別され得る。線維が90度の角度でポートと接触する場合、システムおよび方法は、これらが、ポートの接触から剪断または裂開の危険性が最も高いと予測し得、一方、それらが平行になっている場合、システムおよび方法は、剪断または裂開の危険性が最も低いと検出し得る。いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、神経線維への損傷を示唆し得る閾値(たとえば、60度を超える角度)を設定することができる。この閾値は、実践中に執刀によって修正することができ、設定されると、処置の間に危険性のあるすべての神経線維の推定を可能にすることができる。
【0160】
さらなる実施形態は、交差する線維と挿入されるポートとの間の、種々の可能性のある剪断角度の影響を評価するための視覚化ツールを提供することができる。これらのツールは、剪断の危険性に晒されることになる線維の数対剪断カットオフ角度の計算されたヒストグラムの表示を含むことができる。そのようなツールは、この閾値に対する感受性に関する情報をもたらすことができる。この実施形態は、表示される線維の数が突然に急変する、すなわち、カットオフ閾値の小さい変化を所与として表示に大きな変化がある値がある場合に、設定カットオフに近い代替のカットオフ角を示唆するように構成することもできる。代替的に、二値カットオフ閾値の代わりに、実施形態は、交差角が、設定閾値を超えて、または、最小設定閾値と最大設定閾値との間で増大するときに線維の漸次的変化が(たとえば、線維強度を低減することまたは透過度を増大させることによって)表示されるように、表示が変調され得るように構成することもできる。
【0161】
別の実施形態は、交差点から離れている線維はポート挿入によって影響を受ける可能性が低いため、線維の全経路ではなく、ポートとの交差からの各索の設定距離のみを示すことができる。この長さ閾値は動的に調整および操作することができる。この実施形態はまた、各線維の表示が、ポート交差からの距離によって(たとえば、輝度を低減すること、色を変更すること、透過度を増大させること、または、距離によって表示される線維の太さを低減することによって)変調されるようにするように構成することもできる。代替的に、他の実施形態において、それらの終端点付近で影響を受ける線維は、それらの軌跡に沿って離れて影響を受ける線維よりも、受ける影響が少ない可能性があるため、表示線維は、線維終端点までのポートとの交差の距離によって同様に変調することができる。
【0162】
ユーザが、レンダリングされるボリュームのコンテクスト内で神経線維を視覚化することを可能にするために、システムは、たとえば、黒色の線を、3Dレンダリングによって投影することができるように、影響を受ける神経線維を黒色でアウトライン化することができる。加えて、システムは、ポートに沿った様々な深さにおいて影響を受ける線維を表示するために、薄板が出力デバイス上でポートの軸に沿って動かされ得るように、レンダリングされたDTIデータボリュームの薄板を表示することができる。加えて、たとえば、同軸上でポートを見下ろすと、ポートに接するすべての線維が、システムおよび方法の出力デバイス上のレンダリングとして示され得る。
【0163】
さらに、ポートベースのアプローチを増強するための手段として、システムおよび方法は、ポートの下の脳および組織が、出力デバイスまたはディスプレイ上ではポートに対して動かされ得るように、固定視覚化モードとしてポートを表現することができる。これによって、対象の点までの適切で影響が最も少ない経路を発見する視覚的な手段を提供することができる。
【0164】
加えて、システムおよび方法は、腫瘍のような目標の中にある目標点において基準枠を識別することができる。これは、ユーザに「内側から外を見る」視点を提供することができ、これは、経路を通って表面に出る開口を識別することによって可能性のある腫瘍への進路を視覚化するために有益であり得る。これは、システムおよび方法の、経路を識別するためのレンダリング使用の代替または補完手段として使用されてもよい。
【0165】
いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、特定の処置に異なるポートサイズを使用することができるか否か、または、データセットのレジストレーション不一致、ポートの誘導による不正確さ、もしくは処置の間の組織の移動のような、処置の変動に対するアプローチの感受性を判定するために、ポートのような手術器具を、より大きいまたはより小さい直径としてモデル化することができる。加えて、アプローチの感受性に対する影響を判定するために、システムおよび方法によってポート目標点が偏位され得る。
【0166】
いくつかの実施形態において、小束および神経束に対する影響が最も少ないアプローチを発見することに加えて、システムおよび方法は、脳への好ましいアクセスルートとして脳溝を識別する傾向にあり得る。そのような実施形態において、組織の表面レンダリングが、システムおよび方法によって、これらの天然開口部を識別するために使用され得る。このことが、出力軌跡を、脳の表面にある脳溝における挿入する軌跡のみに制約する場合がある。
【0167】
加えて、システムは、アプローチに対して提示される静脈、存続可能な灰白質、および動脈を重ね合わせることを可能にし得る。この情報から、アプローチの影響をより良好に評価することができる。たとえば、システムは、所与の点において、または、所与の軌跡に沿ってポートと交差し得る線維束の総体積、または数、または長さを計算することができる。これは、神経束および小束の所定のまたはユーザ入力の階層を表すために総数(たとえば、ヒストグラムなど)が重み付けされ得るため、システムおよび方法によって表すことができる。いくつかの実施形態において、この計算はまた、システムおよび方法によって、脳内の血管に関して、または、主な線維束、もしくは、随意運動野のような重要な組織塊に関して行うこともできる。ポートのような手術デバイスが組織塊に対して成す距離および角度が、いくつかの実施形態において追加のメトリックとして計算され得る。システムがこの処理を適用することができる主な線維束は、いくつかの非限定例として、放射冠、または視交叉を含み得る。
【0168】
いくつかの実施形態において、システムおよび方法はまた、線維束を重み付けするために、患者フレームに対する線維の全体的な向きに関する入力を使用することもできる。たとえば、システムおよび方法は、軌跡の影響の総合計において計算することができる線維に異なる重み付けを割り当てることができる。いくつかの実施形態において、赤色を割り当てられた線維が青色を割り当てられた線維に支配的であり、青色を割り当てられた線維は緑色に支配的であるように、線維の階層が色で重み付けされ得る。他の実施形態において、システムおよび方法は、ポートに対する線維配向を規定するためにレンダリング上に色を使用することができる。たとえば、ポートに実質的に垂直である線維は、赤として色付けされてもよく、一方で、損傷が許容範囲内である線維は青で色付けされてもよく、損傷が許容範囲外である線維は緑で色付けされてもよい。代替的に、いくつかの実施形態において、線維接続を表すために異方性度マップがシステムおよび方法によって使用されてもよく、それによって、そのような表現による色が線維の重み付けに対応するように、スケーリングされ得る。
【0169】
いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、対象病変まで脳溝をたどる傾向にあり、脳溝への変形を可能な限り最小限にする低侵襲経路を選択することができる。そのような実施形態において、システムおよび方法は、所与のポート軌跡について、脳溝からの総距離を求めることができ、総距離は、たとえば、ポートに沿った積算距離、または、ポート経路を脳溝に位置整合させるのに必要とされる偏位の総量として表され得る。脳溝アプローチを測定するとき、通過される灰白質または白質の総量は、システムおよび方法の重要なメトリックになる傾向にある。これは、システムおよび方法によって3Dモデルから計算され、ミリメートルもしくは他の単位の測定値として、または、たとえば、通過される灰白質、白質および脳溝の比として表示され得る。いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、異なるタイプの組織(たとえば、灰白質、白質および脳溝)および影響を受ける小束に異なる重み付けを関連付けることができる。これは、ポート位置から計算することができるが、いくつかの実施形態において、ポートが挿入され、脳溝がポートの外面形状をたどるときは、脳溝の変位を計上する追加の入力を用いて測定されてもよい。
【0170】
いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、手術アクセスポート、および、たとえば、導入器の導入が、相当量の組織を内部で変位させ、また、脳溝が脳内に押されるために脳溝のしわを変位させる傾向になることに基づいて、入力を処理することができる。周囲の脳組織よりも剛直な組織、たとえば、いくつかの血栓/血腫、細胞性腫瘍について、システムおよび方法は、導入器が組織を圧迫することによる組織の予測される内部偏位を考慮に入れることができる。この変位は、たとえば、事前の組織剛性情報、導入器およびポートの幾何学的知識、組織変形の生物力学モデル(頭蓋骨を境界条件として使用し、ポートを境界条件として使用する)を使用し、術前イメージングデータを使用して、正確なシミュレーションを用いるシステムおよび方法によって予測または測定することができる。いくつかの実施形態において、ユーザは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、「SYSTEM AND METHOD FOR DETECTING TISSUE AND FIBER TRACK DEFORMATION」と題する同時係属の国際特許出願第PCT/CA2014/050243号明細書に開示されているように、腫瘍および周囲組織の相対剛性のような、モデル化のための多数の変数を修正することができる。
【0171】
これらの値を変更し、脳ボリューム内で腫瘍がどのように動き得るかに関する視覚的出力を可能にする、ユーザまたは実装されるシステムおよび方法は、とられるべき挿入アプローチの良好な感受性分析を可能にすることができる。いくつかの実施形態において、剛性は、T2、拡散およびコントラスト情報に基づいて予測することができるが、剛性は、エラストグラフィイメージング(たとえば、超音波、MRIまたはOCT)から直に測定することもできる。
【0172】
いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、ポートと接している脳溝が、ポートの表面に一致するように、周囲の脳溝を変形させることになるという概念に基づいて入力を処理し、出力を生成することができる。システムおよび方法は、生物力学モデルを使用してこの界面をモデル化することができ、脳溝組織が、ポートとの滑り境界界面にあることになる。一般的に脳の表面付近の端部において終端し、並列により低く延伸している拡散線維、および、脳溝の表面に付着している血管は脳溝をたどる傾向にあるため、システムおよび方法によって処理されるもう1つの境界条件は、線維が脳溝変位をたどることであり得る。このとき、神経網が、レジストレーション点として使用され、それ自体の応力および歪みプロファイルを有する3Dネットワークの一部としての接続として機能することができる。脳の大域的な変形は、システムおよび方法によって、脳溝、血管、および主な構造の連続性を使用してモデル化することができる。
【0173】
システムおよび方法は、導入器が患者の内部、たとえば、患者の頭部に位置付けられているときのリアルタイムイメージング情報入力(複数の場合もあり)を使用して、このプロセスおよびモデルを更新することができる。いくつかの実施形態において、リアルタイムイメージングは、in−situポートを使用して実施されてもよい。たとえば、ポートの先端に対して実施されるリアルタイム超音波イメージングが、脳内部の組織剛性を検出することができる。この情報は、システムおよび方法によって、事前に予測される剛性の代わりに使用され得、組織の動きの推定値をもたらすことができる。加えて、ポートが患者内に導入されているときに、脳溝パターンを識別するために超音波が使用されてもよい。これらの実際の脳溝パターンが、システムおよび方法によって術前脳溝パターンとマッチングされ得、この情報に基づいて変形した術前モデルが生成され得る。この反復様式において、モデルは、腫瘍位置の正確な表現、たとえば、脳内の腫瘍回転のモデル化を可能にし、また、ポートが脳内に挿入されるときの神経線維に対する総応力および歪みを測定することを可能にするために、システムおよび方法によって、処置の間に得られる情報に従って更新されることになる。これは、システムおよび方法によって、大域値として表すことができ、また線維の階層の重み付けと同様に、線維の実際の歪みを使用して、手術アプローチの侵襲性と関連付けられる値を計算することができる。
【0174】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示するシステムおよび方法を使用して、ポートの端部にある開口よりも大きい腫瘍を除去することを可能にするために、その組織のような患者の身体内のポートのような、手術デバイスの提案される動きをより良好にモデル化することができる。この実施形態において、腫瘍のすべての境界にアクセスするためのポートの掃引を、システムおよび方法によって、脳の表面でのポートの固定に基づいてモデル化することができる。たとえば、ポートが腫瘍の種々の位置を通じて動かされるとき、ポートの動きが線維を変位させる場合があり、前述のように、生物力学モデルを使用して脳内の線維にわたる応力および歪みプロファイルを測定することができる。いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、これらの影響をリアルタイムで測定するために、ポートの外部に位置する追加の歪みゲージを含んでもよい。これらの値は、脳の計画モデルと相関し、執刀医に、これらの値がいつ変動しているか、または、予め決定されている許容閾値をいつ超えたかを示すことができる。
【0175】
加えて、ポートが動かされると、組織は執刀医によって示されるボリュームにおいて除去され得る。現行のシステムおよび方法の生物力学モデル化構成要素はその後、局部ボリュームを通じて新たな組織位置を計算する。新たな組織境界を検証するために、システムによってさらなるリアルタイムイメージングが実施され得る。たとえば、航法測位情報を有するリアルタイムイメージングが利用可能である場合、そのような画像を、計算された組織の推定位置と比較することができる。そのような比較は、同様のコントラストが両方の事例において使用される場合は直に行うことができ、または、データが直に比較可能でない場合は、相互情報量検知において行うことができる。システムはその後、新たなデータと推定組織位置との間の一致の質を報告することができる。またさらに、いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、同様のコンテクストにおいて使用するためのロボットマニピュレータまたは半自動マニピュレータを含んでもよい。ロボットに対する入力は、in−vivoで直に、ならびに/または、手術計画モデルにおいて予測される応力および歪みと同期して使用することによって測定される歪みゲージメトリックであってもよい。システムおよび方法が微細な応力および歪みを測定することができることは、TBI(外傷性脳損傷)、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、およびアルツハイマー病のような他の脳損傷および疾患に関与する外科的介入に有用であり得る。
【0176】
実施形態において、コンピュータまたは処理システムと、様々なモダリティ(MRI、CT、PETなど)からの術前画像と、追跡または誘導システム(計画システムの場合の任意選択)と、単一またはセットの入力デバイス(キーボード、タッチスクリーン、マウス、ジェスチャ制御装置など)と、単一またはセットの出力デバイス(モニタ、レーザーポインタなど)、ポインタまたはポインティングデバイスとして機能するツール(計画システムの場合の任意選択)と、剪刀、切除デバイス、サクションカッター、バイポーラのような追跡される手術デバイス(計画システムの場合の任意選択)と、追跡されるアクセスポートデバイスと、誘導される誘導(自動、半自動、または、位置整合フィードバックを用いて手動で位置付けられるなど)外部イメージングデバイス(アクセスポートデバイスを通じてイメージングを送達するように位置整合される、外部イメージングモダリティの送達を促進するためのもの)とから構成されるシステムがある。システムは、手術計画システムとして使用することができる、すなわち、術中誘導および術中イメージングはシステムの一部ではなく、または、外科的処置の間に収集される情報が次の手術ステップを誘導するか、または、予測患者アウトカムを測定するのに使用される組み合わせ計画および術中誘導システムとして使用することができる。
【0177】
いくつかの実施形態において、本発明のシステムは、外科的シミュレーション構成要素、たとえば、触覚フィードバックを用いるロボットシステムを含んでもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に開示するシステムおよび方法によってもたらされるシミュレーション機構はまた、特定の外科的処置の訓練および計画に使用することができるファントム、ならびに、ファントムのイメージングをも組み込むことができる。手術されようとしている患者の脳のイメージングおよび生物力学的訓練の両方のための脳ファントムの製造方法の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、それぞれ米国仮特許出願第61/900,122号明細書および米国仮特許出願第61/845,256号明細書に対応する米国特許第XXX号明細書および米国特許第YYY号明細書に開示されている。
【0178】
このファントムの特徴は、脳溝に沿った手術ポートの挿入を実践することができるように、人間の脳を近密にマッピングしたテクスチャ、手術に十分に先立ってMRIのような方法によって確立することができる特定の患者の脳を近密に模倣するための解剖学的に正確な脳構造、正しい型でファントム内の正しい位置にある腫瘍の存在の模倣(たとえば、この腫瘍は、事前に柔軟で自由に流れるか、または、高度に細胞性で高密度であると識別することができる。この情報は、腫瘍の配置を、術前イメージングモダリティから推測される情報に近密にマッチングし、外科チームが、特定の患者のコンテクストにおいて特定の外科的処置およびアプローチを評価することを可能にするための、シミュレートされた脳の作成に組み込むことができる)、たとえば、頭皮の直下にある静脈構造を模倣するための着色流体を用いた血管の存在の模倣、および、たとえば、鋳込材料のような、成型可能な剛性材料を使用することによる頭蓋骨および硬膜の存在の模倣を含むことができる。硬膜は、合成硬膜が手術開放ステップ中に変位するように、薄く、相当の硬度を有するポリマーシートを使用することによって模倣することができる。合成頭蓋骨の存在は、外科チームが、開頭術のシミュレーション中に頭蓋ポートの開放を実践することを可能にすることができる。
【0179】
ポート位置に関する軌跡の計算に定量的手法が使用されるすべての方法において、ユーザがそこから選択することができる、軌跡経路をランク付けしたセットを計算するためにアルゴリズムが使用され得ることを、当業者は諒解しよう。執刀医のようなユーザは、大域的な小束の包含を最小限に抑えること、血管の包含を最小限に抑えること、または、総神経線維歪みを最小限に抑えることのような、種々の基準に基づいて、これらのオプションを検索することができる。
【0180】
さらに、いくつかの実施形態において、軌跡が選択されると、システムおよび方法は、同様の腫瘍サイズ、位置、およびDTI線維マップ路のコンテクストにおいて使用される同様の軌跡に関する以前の事例のデータベースを探索することができる。これらのアプローチと関連付けられる結果が、システムおよび方法によって比較され得、軌跡選択に影響を与えるように提示され得る。いくつかの実施形態において、実際の術中データ、たとえば、in vivoの歪み測定値が参照され得、または、DTIマップが術後に参照され得る。
【0181】
使用時、本開示のシステムおよび方法は、術前または術中イメージングモダリティを使用してイメージングすることができる重要構造に危害を加えない必要がある外科的処置に使用することができる。本発明の方法およびシステムの手術計画態様は、経路ベースの処置、鼻内処置、ポートベースの処置(堅固に直径を固定)、腫瘍切除、脳卒中の組織の切除および再灌流、ICH血管クリッピング、脳溝を介した生検、幹細胞回復、DBSシステム送達、カテーテルベース(可撓性、より小径)のような、ポートベースの脳外科的処置および鼻内アプローチを含む低侵襲アクセス処置に有用であり得る。本明細書に記載するシステムおよび方法は、例としてポートベースの手術、および手術道具を使用しているが、本発明の範囲は、例に記載されている実施形態によって限定されるべきではなく、全体としての記述と一致する最も広い解釈を与えられるべきである。
【0182】
本明細書に記載するシステムおよび方法は、脊髄外科手術、腫瘍切除、円板修復、腱の調整、疼痛処理、機能デバイス埋め込み、頸部または洞手術、機能外科手術、心臓または肺手術、心機能、肺癌除去、血栓または病変組織の除去、身体癌または結腸イメージング、ポリープ除去、肝臓、前立腺、腎臓または膵臓イメージングのような用途に使用することができる。本明細書に記載する方法およびシステムは、上述した用途および外科的処置には限定されず、イメージング、計画および誘導を利用する様々な処置に拡張することができることを、当業者は諒解しよう。
【0183】
本明細書に記載するシステムの要素の少なくともいくつかは、ソフトェア、またはソフトェアとハードウェアとの組み合わせによって実装されてもよい。ソフトウェアによって実装されるシステムの要素は、オブジェクト指向プログラミング言語またはスクリプト言語のような高度なプロシージャ言語で書かれてもよい。したがって、プログラムコードは、C、C++、C# SQLまたは任意の他の適切なプログラミング言語で書かれてもよく、オブジェクト指向プログラミングにおける専門家に既知であるようなモジュールまたはクラスを含んでもよい。ソフトウェアによって実装されるシステムの要素の少なくともいくつかは、必要に応じて、アセンブリ言語、マシン語またはファームウェアで書かれてもよい。いずれにせよ、プログラムコードは、記憶媒体上、または、プロセッサ、オペレーティングシステムならびに、本明細書に記載する実施形態の少なくとも1つの機能を実装するのに必要である関連するハードウェアおよびソフトウェアを有する汎用または専用プログラム可能コンピューティングデバイスによって可読であるコンピュータ可読媒体上に記憶することができる。プログラムコードは、コンピューティングデバイスデバイスによって読み出されると、本明細書に記載する方法の少なくとも1つを実施するために、新たな、特定の、および所定の様式で動作するようにコンピューティングデバイスを構成する。
【0184】
したがって、完全に機能するコンピュータおよびコンピュータシステムのコンテクストにおいていくつかの実施形態を説明したが、様々な実施形態が、様々な形態のプログラム製品として配布されることが可能であり、実際に配布を実行するのに使用される機械またはコンピュータ可読媒体の特定のタイプにかかわらず、適用されることが可能であることを、当業者は諒解しよう。
【0185】
コンピュータ可読記憶媒体は、データ処理システムによって実行されると、システムに様々な方法を実施させるソフトウェアおよびデータを記憶するのに使用することができる。実行可能ソフトウェアおよびデータは、たとえば、ROM、揮発性RAM、不揮発性メモリおよび/またはキャッシュを含む様々な場所に記憶することができる。このソフトウェアおよび/またはデータの部分は、これらの記憶デバイスのいずれか1つに記憶することができる。一般的に、機械可読媒体は、機械(たとえば、コンピュータ、ネットワークデバイス、携帯情報端末、製造ツール、1つまたは複数のプロセッサのセットを有する任意のデバイスなど)によってアクセス可能な形態で情報を提供する(すなわち、記憶および/または送信する)任意のメカニズムを含む。
【0186】
図6は、1つまたは複数のプロセッサ430(たとえば、CPU/マイクロプロセッサ)と、バス402と、ランダムアクセスメモリ(RAM)および/または読み出し専用メモリ(ROM)を含んでもよいメモリ435と、1つまたは複数の内部記憶デバイス440(たとえば、ハードディスクドライブ、コンパクトディスクドライブまたは内部フラッシュメモリ)と、電源445と、もう1つの通信インターフェース450と、臨床医が様々な入力を提供し、シミュレーションを実施などするためのユーザインターフェースのような、様々な入力/出力デバイスおよび/またはインターフェース460とを含む、コンピュータ制御システム425の例示的な非限定実施態様を提供する。
【0187】
各構成要素の1つのみが
図6に示されているが、任意の数の各構成要素が、含まれるコンピュータ制御システム425であってもよい。たとえば、コンピュータは一般的に、いくつかの異なるデータ記憶媒体を含む。さらに、バス402はすべての構成要素の間の単一の接続として図示されているが、バス402は、これらの構成要素の2つ以上を連結する1つまたは複数の回路、デバイスまたは通信チャネルを表してもよいことが諒解されよう。たとえば、パーソナルコンピュータでは、バス402は多くの場合、マザーボードを含むか、またはマザーボードである。
【0188】
一実施形態において、コンピュータ制御システム425は、汎用コンピュータ、または、空間で動作するように構成されている任意の他のハードウェア均等物であってもよく、またはそれを含んでもよい。コンピュータ制御システム425はまた、より多くの通信チャネルまたはインターフェースの1つを通じてプロセッサ430に結合されている1つまたは複数の物理デバイスとして実装されてもよい。たとえば、コンピュータ制御システム425は、特定用途向け集積回路(ASIC)を使用して実装することができる。代替的に、コンピュータ制御システム425は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせとして実装することができ、ソフトウェアは、メモリから、またはネットワーク接続を介してプロセッサ内にロードされる。
【0189】
コンピュータ可読記憶媒体の例は、限定ではないが、中でも、揮発性および不揮発性メモリデバイス、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリデバイス、フロッピーおよび他のリムーバブルディスク、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体(たとえば、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)など)のような、記録可能および記録不能タイプの媒体を含む。命令は、搬送波、赤外線信号、デジタル信号などのような、電気、光、音響または他の形態の伝播信号のためのデジタルおよびアナログ通信リンクにおいて具現化することができる。記憶媒体は、インターネットクラウドであってもよく、または、ディスクのようなコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。
【0190】
コンピュータ可読記憶媒体の例は、限定ではないが、中でも、揮発性および不揮発性メモリデバイス、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリデバイス、フロッピーおよび他のリムーバブルディスク、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体(たとえば、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)など)のような、記録可能および記録不能タイプの媒体を含む。命令は、搬送波、赤外線信号、デジタル信号などのような、電気、光、音響または他の形態の伝播信号のためのデジタルおよびアナログ通信リンクにおいて具現化することができる。
【0191】
図8は、手術計画システムによって利用可能にされる1つのビューを示す。この例示的な実施形態において、このビューは、ユーザによって選択される、脳ボリューム800の2Dスライスと、ポートの特定の態勢または向きにある視覚化ポートツール810とを含み、ポートの先端は、脳内の目標点820と接している。目標は、脳内の病変の位置にあってもよい。実施形態は、この向きについてツールに交差すると予期される索830のセットを表示している。索は、それらが現在の断面の平面上で、または、断面の一定範囲内の設定可能な距離の中でツールに交差する場合に可視的に表示される。ポートベースの神経外科手術の場合、この設定可能な距離の例は、3mmであってもよい。索は、ユーザに表示され、3つの直交する方向における索の方向性を示すために、赤−緑−青の着色(図示せず)を含んでもよい。索は、ポートとの交差から設定可能な距離だけ離れて存在している場合、アウトラインとして(すなわち、色または不透明性なしで)表示されてもよい。ここでも、ポートベースの脳手術の場合、この距離は一般的に3〜10mmであってもよい。この設定可能な距離は、手術誘導システムによって誘導されるとき、執刀医が、意図される位置に対して自身の手術道具を位置付ける際に有し得る確度を計上するように調整されてもよい。その結果として、この視覚化は、ユーザが、ツールの周囲および脳800の現在見えている断面(またはスライス)の周囲の空間内でDTI索交差情報を知覚することを可能にする。
図8を
図9と比較すると、
図8においてユーザに示される索の数は、
図9における、脳内の同じ目標点についての同じポートの異なるアプローチ角度(または態勢)において見える索の数と比較してより少ないことは明白である。このことから、臨床医は、
図9内の目標820までのポートツール810のアプローチが、
図8内の目標820までのツール810のアプローチよりも多くの索と交差すると推測することができる。
【0192】
一実施形態において、臨床医は、患者特有のイメージングボリュームを使用して、腫瘍にアクセスするために、そのような患者の解剖学的構造内への最適な入口点、たとえば、脳内の脳溝を自身が選択することを補助することができる。さらなる実施形態において、臨床医は、脳内に位置する目標点820を中心としてポートツール810を回転させ、開示されているシステムおよび方法の一実施形態を利用して、所定の手術結果基準を使用して代替のアプローチをスコア付けすることができる。
【0193】
別の実施形態において、索情報は、患者の解剖学的構造内の目標620の位置までの最適なアプローチを自動的に示唆するために、本明細書に開示するように手術結果基準に照らして数学的な費用最小化プロセスとともに使用することができる。
【0194】
図9は、
図8における交差した索を視覚化するために使用されている態勢とは異なる態勢についての、手術道具が交差した索の図解を示す。この事例において、ツールの態勢は、患者ボリュームの2Dスライスに対して面外として図示されている。索は、
図8に記載のものと同じ規則を使用して表現されている。
【0195】
図10は、選択された軌跡1000および手術道具810を使用した予期される開頭範囲の2D断面視覚化を示す。開頭範囲は、脳にアクセスするために切断される頭蓋骨のサイズである。一般的に、この切断のサイズが小さいほど、脳の減圧は小さくなり、脳への損傷が低減することになる。軌跡1000は、それに沿ってツールが挿入される経路を示す。軌跡は、脳の表面付近の仮想係合点1040において始まり、目標820において終端し得る。外向きに延伸する線1020は、手術中に手術道具810を操作するために、頭皮の上で利用可能な空間を示す。脳領域1030内で延伸する放射面は、所与のサイズの開頭のために手術道具によってアクセス可能になる脳の範囲(または3Dの場合、ボリューム)を示す。手術道具は、索交差830および手術中にアクセス可能になる脳領域のボリュームを視覚化するためにこの空間内で動かすことができる。一実施形態において、対象の組織領域を切除するためにポートツール810によってアクセス可能になる脳の領域を評価しながら、開頭の最適なサイズを評価するために異なるサイズの開頭が選択されてもよい。この動作は、人間によって実施されてもよく、または、開頭サイズおよび脳内でアクセス可能な領域の体積を制約として組み込む費用最小化アルゴリズムを使用して自動化されてもよい。脳内でアクセス可能な領域の最小体積は、一実施形態において、脳内で識別される腫瘍の体積であってもよい。
【0196】
患者イメージングボリュームを視覚化し、DTI情報を重ね合わせ、3D脳溝表面マップの3Dレンダリング、または他の3D画像化された患者の解剖学的構造に対して仮想手術道具を表示するための他の方法が、ここで当業者には想起されることになり、企図されている。
【0197】
さらに、本明細書に記載する方法の少なくともいくつかは、記載されている方法の諸態様を実施するために、1つまたは複数のプロセッサによって実行するためのコンピュータ使用可能命令を保持するコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品において配布されることが可能である。媒体は、限定ではないが、1つまたは複数のディスケット、コンパクトディスク、テープ、チップ、USBキー、外部ハードドライブ、有線送信、衛星送信、インターネット送信またはダウンロード、磁気および電子記憶媒体、デジタルおよびアナログ信号などのような様々な形態で提供されてもよい。コンピュータ使用可能命令はまた、コンパイル済みおよび非コンパイル済みコードを含む、様々な形態であってもよい。
【0198】
本明細書に記載する本出願人の教示は例示を目的とした様々な実施形態と関連しているが、本出願人の教示がそのような実施形態に限定されることは意図されていない。逆に、本明細書に記載され示されている本出願人の教示は、実施形態から逸脱することなく様々な代替形態、修正形態、および均等物を包含し、その一般的範囲は、添付の特許請求の範囲において画定される。
【0199】
プロセス自体に必要であるか、または内在する範囲を除いて、本開示に記載する方法またはプロセスのステップまたは段階に対するいかなる特定の順序も意図されておらず、暗示もされていない。多くの場合、プロセスステップの順序は、記載されている方法の目的、効果、または重要性を変化させることなく、変更されてもよい。