(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6568632
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】ワイヤレス充電モジュール用シールドシート及びワイヤレス充電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20190819BHJP
H02J 50/70 20160101ALI20190819BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20190819BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
H01F38/14
H02J50/70
H02J50/10
H05K9/00 H
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-175053(P2018-175053)
(22)【出願日】2018年9月19日
【審査請求日】2018年9月19日
(31)【優先権主張番号】201810529423.0
(32)【優先日】2018年5月29日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518334978
【氏名又は名称】サンウェイ コミュニケーション (ジアンスー) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パァン ジーフア
(72)【発明者】
【氏名】ワン レイ
(72)【発明者】
【氏名】リ ジィアホン
(72)【発明者】
【氏名】カン ライリ
(72)【発明者】
【氏名】ワン シュアイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ カイフアン
【審査官】
齊田 寛史
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2017/074104(WO,A1)
【文献】
国際公開第2017/014493(WO,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2016−0100786(KR,A)
【文献】
特表2015−505166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H01F 38/18
H02J 50/00−50/90
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレス充電モジュール用シールドシートであって、外周磁気シートと中央磁気シートとを含み、前記外周磁気シート上には前記中央磁気シートとマッチする穴部が設けられ、前記中央磁気シートの一端は前記穴部内に固定され、前記中央磁気シートの他端は前記外周磁気シートから突出しており、前記外周磁気シートは、少なくとも1層の第1導磁層を含み、前記第1導磁層はナノ結晶ストリップ、アモルファスストリップ又は軟磁性金属ストリップであり、前記中央磁気シートは、少なくとも2層を積層した第2導磁層を含み、前記第2導磁層はフレーク化したナノ結晶ストリップ、フレーク化したアモルファスストリップ又はフレーク化した軟磁性金属ストリップであることを特徴とする、ワイヤレス充電モジュール用シールドシート。
【請求項2】
前記穴部は、貫通穴であり、前記外周磁気シートの頂面と前記中央磁気シートの頂面が同一平面上にあることを特徴とする、請求項1に記載のワイヤレス充電モジュール用シールドシート。
【請求項3】
前記外周磁気シートの頂面には接着層が設けられており、前記中央磁気シートの頂面が前記接着層と連接することを特徴とする、請求項2に記載のワイヤレス充電モジュール用シールドシート。
【請求項4】
前記第2導磁層上にはエアギャップが設けられており、前記エアギャップが前記第2導磁層をフレーク化させることを特徴とする、請求項1に記載のワイヤレス充電モジュール用シールドシート。
【請求項5】
前記エアギャップは、メッシュ状を呈することを特徴とする、請求項4に記載のワイヤレス充電モジュール用シールドシート。
【請求項6】
前記第2導磁層の透磁率は、200〜6000であり、前記第1導磁層は、透磁率≧5000のナノ結晶ストリップ、透磁率>1000のアモルファスストリップ又は透磁率≧800の軟磁性金属ストリップであることを特徴とする、請求項1に記載のワイヤレス充電モジュール用シールドシート。
【請求項7】
前記外周磁気シートは、2層又は3層のナノ結晶ストリップを積層して形成することを特徴とする、請求項6に記載のワイヤレス充電モジュール用シールドシート。
【請求項8】
前記外周磁気シート内の隣り合う2層のナノ結晶ストリップは、絶縁性接着剤で接着されることを特徴とする、請求項7に記載のワイヤレス充電モジュール用シールドシート。
【請求項9】
充電コイルを含むワイヤレス充電モジュールであって、請求項1〜8に記載のワイヤレス充電モジュール用シールドシートを更に含み、前記穴部は前記充電コイルの中空領域内に位置することを特徴とする、ワイヤレス充電モジュール。
【請求項10】
前記充電コイルの内縁面は、前記中央磁気シートの外縁面に当接することを特徴とする、請求項9に記載のワイヤレス充電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス充電技術分野に関し、特に、ワイヤレス充電モジュール用シールドシート及びワイヤレス充電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス充電技術は、近距離電磁誘導を利用し、送信側からのエネルギーを磁界を通じてワイヤレス充電の受信コイルに伝送する方法の一種である。電界結合に比べると、磁界結合原理のワイヤレス充電技術は、標準的な共振型スイッチング電源により近い。
【0003】
高い充電効率を獲得し、充電時に電磁界が電子設備に与える影響を軽減するには、磁性材料を使用する必要がある。磁性材料の役目は、磁界を高透磁率の磁性材料内に分布させることにより、磁界が磁性材料を貫通して電子設備内部に到達して、電子設備内部の金属(電池)等の部品が磁界を吸収してエネルギー損失及び電磁干渉が生じるのを阻止することである。携帯電話を例にすると、ワイヤレス充電コイルの位置に隣接するのは一般的に電池であり、送信コイルで生じた交番磁界が充電モジュールを貫通して電池表面の金属層に到達すると誘導電流が生じるが、これがいわゆる「渦電流」であり、この渦電流が送信側の磁界変化と相殺し合う1つの磁界を発生させて、受信コイルの誘導電圧を下降させてしまう。また該渦電流は磁界のエネルギーを熱量に変換し、携帯電話の電池を非常に熱くさせる。そのため、携帯電話のワイヤレス充電を実現するには、受信コイルと携帯電話の電池との間に「磁界遮断」装置を設けて、磁界が電池に影響を及ぼさないよう防止する必要がある。サムスン製携帯電話のワイヤレス充電の受信側には、Amotechが提供するアモルファス磁気シールドシート技術が採用されており、充電効率は70%以上に達する。Amotechの技術案では、アモルファスストリップ自体の磁気損失が高過ぎることを考慮して、磁気シートを圧迫して粉砕する方法を採用し、アモルファスに不規則なひび割れを生じさせると共に接着剤を入らせて、磁気損失μ´´を許容範囲(≦200)まで低減させることで、磁性材料自体の渦電流損を低減させていた。一方で、これに伴いμ´も低減され、単層磁性材料の透磁率も低下してしまうため、現在該技術ソリューションを用いて生産されるワイヤレス充電用シールドシートは、積層の層数を多くして、漏れ磁束による損失増加の問題を防止する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、体積が小さく、且つ充電効率を高めることができるワイヤレス充電モジュール用シールドシートを提供することである。
上記技術的課題を解決するため、本発明が用いる技術的解決策として、ワイヤレス充電モジュール用シールドシートは、外周磁気シートと中央磁気シートとを含み、外周磁気シート上に前記中央磁気シートとマッチする穴部が設けられ、前記中央磁気シートの一端は前記穴部内に固定され、中央磁気シートの他端は外周磁気シートから突出しており、前記外周磁気シートは、少なくとも1層の高透磁率の第1導磁層を含み、前記第1導磁層は高透磁率状態のナノ結晶ストリップ、アモルファスストリップ又は軟磁性金属ストリップであり、前記中央磁気シートは、少なくとも2層を積層した第2導磁層を含み、前記第2導磁層はフレーク化したナノ結晶ストリップ、フレーク化したアモルファスストリップ又はフレーク化した軟磁性金属ストリップである。
【0005】
上記の技術的課題を解決するため、本発明がさらに用いる技術案として、すなわち、充電コイルを含むワイヤレス充電モジュールであって、上記ワイヤレス充電モジュール用シールドシートを更に含み、前記穴部が前記充電コイルの中空領域内に位置する。
【0006】
さらに、前記充電コイルの内縁面は、中央磁気シートの外縁面に当接する。
本発明の有利な効果として、外周磁気シートは、誘導渦電流の方向に垂直であると同時に、積層するナノ結晶ストリップの間に絶縁性接着剤が存在するため、外周磁気シートの磁気損失μ´´がどれ程高くても、それ自体は自由行程が長い渦電流を発生させることがないため、外周磁気シートが超高透磁率を保持することができ、高い渦電流損が生じることはない。また、磁界が中央磁気シートにおいて発生させる渦電流は、磁気シートの面内におけるものであるが、本発明では、中央磁気シートのフレーク化により自由行程が長い渦電流の発生が抑制されることで、渦電流損が低減する。本発明に係るシールドシートは、従来の磁性シールドシートに比べると、シールド性能が同一の条件において、外周磁気シートの積層数がより少なく、また中央磁気シートが充電コイルの中央部にちょうどよく嵌め込まれてモジュールの厚さに影響しないため、シールドシートの小型化に有利であると同時に充電効率も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施例1に係るワイヤレス充電モジュール用シールドシートの断面(概念)図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るワイヤレス充電モジュール用シールドシートの動作原理(概念)図である。
【符号の説明】
【0008】
1…外周磁気シート
2…中央磁気シート
3…貫通穴
4…充電コイル
5…接着層
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の技術内容、実現する目的及び効果を詳細に説明するため、実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の最も重要な技術的思想として、シールドシートは、高透磁率の外周磁気シートと低透磁率の中央磁気シートとを含み、外周磁気シートには貫通穴が設けられ、中央磁気シートの一端は貫通穴内に位置し、中央磁気シートの他端は外周磁気シートから突出して充電コイルの中空領域内に入る。
【0010】
図1及び
図2を参照して、ワイヤレス充電モジュール用シールドシートは、外周磁気シート1及び中央磁気シート2を含み、外周磁気シート1上には前記中央磁気シート2とマッチする穴部が設けられ、前記中央磁気シート2の一端は前記穴部内に固定され、中央磁気シート2の他端は前記外周磁気シート1から突出しており、前記外周磁気シート1は、少なくとも1層の第1導磁層を含み、前記第1導磁層はナノ結晶ストリップ、アモルファスストリップ又は軟磁性金属ストリップであり、前記中央磁気シート2は、少なくとも2層を積層した第2導磁層を含み、前記第2導磁層はフレーク化したナノ結晶ストリップ、フレーク化したアモルファスストリップ又はフレーク化した軟磁性金属ストリップである。
【0011】
本発明の構造/動作原理を以下に略述する。外周磁気シート1に垂直な磁力線が、中央磁気シート2において外周磁気シート1に平行な渦電流の発生を誘起するが、フレーク化した中央磁気シート2が渦電流の発生を抑制して渦電流損を低減させ、外周磁気シート1に平行な磁力線が、外周磁気シート1において外周磁気シート1に垂直な渦電流の発生を誘起するが、外周磁気シート1内のナノ結晶ストリップ、アモルファスストリップ又は軟磁性金属ストリップ自体の厚さが非常に薄く(10〜30μmしかない)、且つ層間にも絶縁性の高分子接着剤が存在するため、外周磁気シート1自体からは大きな渦電流が発生し得ない。
【0012】
上記からも分かるように、本発明の有利な効果として、外周磁気シートは、誘導渦電流の方向に垂直であると同時に、積層するナノ結晶ストリップの間に絶縁性接着剤が存在するため、外周磁気シートの磁気損失μ´´がどれ程高くても、それ自体は自由行程が長い渦電流を発生させることがないため、外周磁気シートが超高透磁性を保持することができ、高い渦電流損が生じることはない。また、磁界が中央磁気シートにおいて発生させる渦電流は、磁気シートの面内におけるものであるが、本発明では、中央磁気シートのフレーク化により自由行程が長い渦電流の発生が抑制されることで、渦電流損が低減する。本発明に係るシールドシートは、従来の磁性シールドシートに比べると、シールド性能が同一の条件において、外周磁気シートの積層数がより少なく、また中央磁気シートが充電コイルの中央部にちょうどよく嵌め込まれてモジュールの厚さに影響しないため、シールドシートの小型化に有利であると同時に充電効率も向上する。
【0013】
好ましくは、前記穴部は貫通穴3であり、外周磁気シート1の頂面と中央磁気シート2の頂面は同一平面上にある。
さらに、前記外周磁気シート1の頂面には接着層5が設けられており、前記中央磁気シート2の頂面は前記接着層5と連接する。
【0014】
さらに、前記第2導磁層上にはエアギャップが設けられており、前記エアギャップが前記第2導磁層をフレーク化させる。
さらに、前記エアギャップはメッシュ状を呈する。
【0015】
上記からも分かるように、エアギャップはダイカットマシンでダイカットして形成するため、シールドシートの生産過程で従来の「磁気シートの粉砕」工程を使用する必要がなく、シールドシートの製造工程を減らし、シールドシートの製造コストを削減する面で有利である。また、製造業者はエアギャップの形状を設計することで従来技術の「磁気シートの粉砕」におけるランダム性を排除できるため、製造業者が第2導磁層の透磁率をコントロールする面でも有利である。
【0016】
さらに、前記第2導磁層の透磁率は、200〜6000であり、第1導磁層は、透磁率≧5000のナノ結晶ストリップ、透磁率>1000のアモルファスストリップ又は透磁率≧800の軟磁性金属ストリップである。
【0017】
さらに、前記外周磁気シート1は、2層又は3層のナノ結晶ストリップを積層して形成する。
さらに、前記外周磁気シート1内の隣り合う2層のナノ結晶ストリップは、絶縁性接着剤で接着される。
【0018】
上記からも分かるように、第1導磁層がナノ結晶ストリップの場合、外周磁気シート内のナノ結晶ストリップの層数は、従来のナノ結晶シールドシート内のストリップ層数より遥かに少なくなるため、シールドシートの小型化に有利となる。
【0019】
充電コイル4を含むワイヤレス充電モジュールであって、上記ワイヤレス充電モジュール用シールドシートを更に含み、前記穴部が前記充電コイル4の中空領域内に位置する。
さらに、前記充電コイル4の内縁面は、中央磁気シート2の外縁面に当接する。
【0020】
ワイヤレス充電モジュール用シールドシートの製造方法は次の通りである。
ステップ1:ナノ結晶ストリップを用意し、ナノ結晶ストリップに対し熱処理を行う。
ステップ2:ステップ1を経たナノ結晶ストリップに対し接着剤を塗工する。
【0021】
ステップ3:N個のナノ結晶ストリップを積層し、且つ隣り合う2個のナノ結晶ストリップを接着(N>1の場合)することで第1ナノ結晶磁気シートが得られ、Nは≧1の整数であり、M個のナノ結晶ストリップを積層し、且つ隣り合う2個のナノ結晶ストリップを接着することで第2ナノ結晶磁気シートが得られ、Mは≧2の整数であり、且つMの数値はNの数値より大きい。
【0022】
ステップ4:第1ナノ結晶磁気シートに対し輪郭及び貫通穴3のダイカット処理を行うことで外周磁気シート1が得られる。
第2ナノ結晶磁気シートに対し輪郭のダイカット処理及びエアギャップのダイカット処理を行うことで中央磁気シート2が得られ、前記中央磁気シート2は前記貫通穴3とマッチしている。
【0023】
ステップ5で:中央磁気シート2の一端を前記貫通穴3内に挿入し、且つ中央磁気シート2の頂面と前記外周磁気シート1の頂面が同一平面上にあるようにする。
さらに、ステップ5の後に、中央磁気シート2の頂面と外周磁気シート1の頂面を同一接着層5に貼るステップを含む。
【0024】
さらに、前記Nは2又は3であり、前記Mは3〜12のうちのいずれか1個の数値である。
さらに、ステップ1において、熱処理炉でナノ結晶ストリップに対し熱処理を行い、且つナノ結晶ストリップを熱処理炉に投入する前に、ナノ結晶ストリップを巻き取るステップを有する。
【0025】
さらに、ステップ2において、ロールツーロール方式の接着剤塗工工程でナノ結晶ストリップに対し接着剤を塗工する。
[実施例1]
図1及び
図2を参照して、本発明の実施例1では、ワイヤレス充電モジュールは充電コイル4及びワイヤレス充電モジュール用シールドシートを含み、前記ワイヤレス充電モジュール用シールドシートは、外周磁気シート1及び中央磁気シート2を含み、外周磁気シート1上には前記中央磁気シート2とマッチする穴部が設けられ、前記中央磁気シート2の一端は前記穴部内に固定され、中央磁気シート2の他端は前記外周磁気シート1から突出しており、前記外周磁気シート1は、少なくとも1層の第1導磁層を含み、前記第1導磁層はナノ結晶ストリップ、アモルファスストリップ又は軟磁性金属ストリップであり、前記中央磁気シート2は、少なくとも2層を積層した第2導磁層を含み、前記第2導磁層はフレーク化したナノ結晶ストリップ、フレーク化したアモルファスストリップ又はフレーク化した軟磁性金属ストリップであり、前記穴部が前記充電コイル4の中空領域内に位置する。
【0026】
前記軟磁性金属ストリップは、工業用純鉄の薄いストリップ、Fe−Siストリップ、及びパーマロイストリップを含むが、これらに限定されない。
前記穴部は、貫通穴3であり、外周磁気シート1の頂面と中央磁気シート2の頂面が同一平面上にある。本実施例では、前記外周磁気シート1の頂面に接着層5が設けられており、前記中央磁気シート2の頂面は前記接着層5と連接する。
【0027】
本実施例では、前記第2導磁層上にエアギャップが設けられており、前記エアギャップが前記第2導磁層をフレーク化させるが、エアギャップは空気通路である。前記エアギャップはメッシュ状を呈してもよく、また当然、その他の実施例において、前記エアギャップはその他の形状、例えば三角形の枠状でもよい。
【0028】
前記第2導磁層の透磁率は、200〜6000であり、第1導磁層は、透磁率≧5000のナノ結晶ストリップ、透磁率>1000のアモルファスストリップ又は透磁率≧800の軟磁性金属ストリップであるのが好ましい。
【0029】
また、前記外周磁気シート1は、2層又は3層のナノ結晶ストリップを積層して形成し、前記中央磁気シート2は3〜12個のナノ結晶ストリップを積層して形成し、前記外周磁気シート1内の隣り合う2層のナノ結晶ストリップを絶縁性接着剤で接着し、内周磁気シート内の隣り合う2層のナノ結晶ストリップを絶縁性接着剤で接着してもよい。ナノ結晶ストリップの厚さは、10〜30μmであり、前記中央磁気シート2は、6〜12個のナノ結晶ストリップを積層して形成するのが好ましい。
【0030】
さらに、充電コイル4は、感圧接着剤によりシールドシートの外周磁気シート1上に接着され、且つ前記充電コイル4の内縁面は、中央磁気シート2の外縁面に当接する。
ワイヤレス充電モジュール用シールドシートの製造方法は次の通りである。
【0031】
ステップ1:ナノ結晶ストリップを用意し、ナノ結晶ストリップに対し熱処理を行う。
ステップ2:ステップ1を経たナノ結晶ストリップに対し接着剤を塗工する。
ステップ3:N個のナノ結晶ストリップを積層し、且つ隣り合う2個のナノ結晶ストリップを接着(N>1の場合)することで第1ナノ結晶磁気シートが得られ、Nは≧1の整数であり、M個のナノ結晶ストリップを積層し、且つ隣り合う2個のナノ結晶ストリップを接着することで第2ナノ結晶磁気シートが得られ、Mは≧2の整数であり、且つMの数値はNの数値より大きい。
【0032】
ステップ4:第1ナノ結晶磁気シートに対し輪郭及び貫通穴のダイカット処理を行うことで外周磁気シートが得られる。
第2ナノ結晶磁気シートに対し輪郭のダイカット処理及びエアギャップのダイカット処理を行うことで中央磁気シートが得られ、前記中央磁気シートはが前記貫通穴とマッチしており、中央磁気シートの性能要求として、透磁率μ´は200〜2000、磁気損失μ´´<200である。
【0033】
ステップ5:中央磁気シートの一端を前記貫通穴内に挿入し、且つ中央磁気シートの頂面と前記外周磁気シート1の頂面が同一平面上にあるようにする。
さらに、ステップ5の後に、中央磁気シートの頂面と外周磁気シートの頂面を同一接着層に貼るステップを含む。
【0034】
前記Nは2又は3であり、前記Mは3〜12のうちのいずれか1個の数値である。
発明者は、サンプルを製造し、サンプルに対して試験を行なった。
ナノ結晶合金ストリップの材料記号:1K107b、厚さ:20μm。
【0035】
窒素雰囲気炉でナノ結晶ストリップに対し熱処理を行なった。熱処理の具体的過程は以下の通りである。まずナノ結晶ストリップを450〜600℃まで昇温させ、2時間保温し、次に500℃/時間の速度で250℃まで冷却した後、炉から取り出した。
【0036】
熱処理後のストリップに対し片面の接着剤塗工を行った。
一部分の片面接着剤塗工ストリップを貼り合わせ、ダイカットマシンで輪郭のダイカット及び貫通穴のダイカットを行なって、2層及び3層の第1ナノ結晶磁気シートを得たが、そのパラメータは表1に示す通りである。
【0038】
別の部分の片面接着剤塗工ストリップを貼り合わせ、6層、9層、12層の第2ナノ結晶磁気シートを得た。さらにダイカットマシンで輪郭のダイカット及びエアギャップのダイカットを行い、第2ナノ結晶磁気シートに0.01〜0.2mmのメッシュ状エアギャップを形成したが、ダイカット後の第2ナノ結晶磁気シートの磁気パラメータは表2に示す通りである。
【0040】
第2ナノ結晶磁気シートの一端を第1ナノ結晶磁気シートの貫通穴内に挿入し、第1、2ナノ結晶磁気シートの頂面が同一平面上にあるようにし、且つ両者の頂面を接着層によって接続させる。
【0041】
試験:作製したサンプル1〜7の磁気シートをワイヤレス充電モジュールに組み込んだ後、電気特性試験を行なった。従来の製造工程で作製されたシールドシートと比較するため、発明者は従来の製造工程で作製された3層、5層のナノ結晶シールドシートに対応するワイヤレス充電モジュールを比較サンプル8、9として追加したが、サンプル試験の結果は表3に示す通りである。
【0043】
表3からも分かるように、本発明のシールドシートを用いたワイヤレス充電モジュールのインダクタンスは全体的に比較サンプル8、9より高く、同時にQ値も顕著に増加した。
【0044】
5W充電プラットフォームで、サンプル1〜9に対し充電効率試験の比較を行なったが、試験結果は表4に示す通りである。
【0046】
表4に示すように、充電効率の比較分析を通じて、本発明のシールドシートを用いたワイヤレス充電モジュールの充電効率は、同じ層数の従来シールドシートを用いたワイヤレス充電モジュールより遥かに高く、厚さがさらに厚い5層のナノ結晶磁性材料と比べても、充電効率は約2%の向上が見られた。
【0047】
上記をまとめると、本発明が提供するワイヤレス充電モジュール用シールドシートは、従来の磁性シールドシートに比べると、シールド性能が同一の条件において、本発明はシールドシート内の外周磁気シートを積層したナノ結晶ストリップ層数がより少なく、中央磁気シートがコイルの中央にちょうどよく嵌め込まれてモジュールの厚さに影響しないため、シールドシートの小型化に有利であると同時に充電効率も向上し、またシールドシートの生産過程で従来の「磁気シートのフレーク化」工程を使用する必要がなく、シールドシート製造工程を減らし、シールドシートの製造コストを削減する面でも有利である。
【0048】
以上に述べたのは、あくまでも本発明の実施例であって、本発明の特許請求の範囲はこれら実施例により何ら限定されるものではなく、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づいて行われる均等範囲内の置換又は直接的若しくは間接的な関連する技術分野への運用は、いずれも本発明の特許の保護範囲内に含めるものであるのが勿論である。
【要約】 (修正有)
【課題】ワイヤレス充電モジュール用シールドシート及びワイヤレス充電モジュールの磁気シートで積層するナノ結晶ストリップ数量を従来に比べ少なくし、シールドシートの小型化と同時に充電効率も向上する技術を提供する。
【解決手段】ワイヤレス充電モジュール用シールドシートは、外周磁気シート1と中央磁気シート2とを含み、外周磁気シート上に中央磁気シートとマッチする穴部3が設けられる。中央磁気シートの一端は穴部内に固定され、他端は外周磁気シートから突出している。外周磁気シートは、少なくとも1層の第1導磁層を含み、第1導磁層がナノ結晶ストリップ、アモルファスストリップ又は軟磁性金属ストリップである。中央磁気シートは、少なくとも2層を積層した第2導磁層を含み、第2導磁層はフレーク化したナノ結晶ストリップ、フレーク化したアモルファスストリップ又はフレーク化した軟磁性金属ストリップである。
【選択図】
図1