特許第6568678号(P6568678)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568678
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】液状甘味料組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20190819BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20190819BHJP
【FI】
   A23L27/00 E
   A23L27/00 Z
   A23L27/10 Z
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-136330(P2014-136330)
(22)【出願日】2014年7月1日
(65)【公開番号】特開2016-13085(P2016-13085A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年3月6日
【審判番号】不服2018-16997(P2018-16997/J1)
【審判請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(72)【発明者】
【氏名】西本 明正
【合議体】
【審判長】 佐々木 秀次
【審判官】 瀬下 浩一
【審判官】 村上 騎見高
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/133835(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JST7580/JSTPlus/JMEDPlus(JDream3)
PubMed
FSTA/AGRICOLA/BIOSIS/BIOTECHNO/CABA/CAPLUS/SCISEARCH/TOXCENTER/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラクトオリゴ糖及びクエン酸緩衝剤を含み、
クエン酸緩衝剤濃度が20mM以下であり、
pHが3.5〜5.8である、液状甘味料組成物。
【請求項2】
Brixが30〜80である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
フラクトオリゴ糖の含有量が10〜80重量%である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
クエン酸緩衝剤が、クエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
還元糖を更に含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
還元糖が、単糖類及び/又は二糖類である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
フラクトオリゴ糖水溶液にクエン酸緩衝剤を添加して、クエン酸緩衝剤濃度を20mM以下、pHを3.5〜5.8に調整することを含む、液状甘味料組成物の製造方法。
【請求項8】
フラクトオリゴ糖水溶液にクエン酸緩衝剤を添加して、クエン酸緩衝剤濃度を20mM以下、pHを3.5〜5.8に調整することを含む、フラクトオリゴ糖の分解抑制方法。
【請求項9】
フラクトオリゴ糖水溶液にクエン酸緩衝剤を添加して、クエン酸緩衝剤濃度を20mM以下、pHを3.5〜5.8に調整することを含む、フラクトオリゴ糖水溶液の着色抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラクトオリゴ糖を含む液状甘味料組成物及びその製造方法に関する。より詳細には、着色が許容可能な程度に抑えられ、且つフラクトオリゴ糖の分解が低減された液状甘味料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フラクトオリゴ糖は、難消化性のオリゴ糖の一種であり、砂糖と同程度の甘味を呈するだけでなく、ビフィズス菌増殖作用や整腸作用に優れることから、機能性食品素材として近年注目され、フラクトオリゴ糖を含む液状甘味料等が上市されている。
【0003】
一方、特許文献1〜3には、液状組成物に含まれる乳果オリゴ糖を安定化して、その分解を抑制する方法が報告されている。しかし特許文献1〜3には、フラクトオリゴ糖の分解抑制方法及び着色抑制方法に関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/133835号
【特許文献2】特開平10−265390号公報
【特許文献3】特開平6−38707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に液状甘味料は粘性が高過ぎると食品になじみにくく使い勝手が良くないため、さらっとした性状となるように所定量の水分を含むことが好ましい。しかし、フラクトオリゴ糖は加水分解を起こすことから、フラクトオリゴ糖を含む液状組成物においては、その水分量を増加させると、フラクトオリゴ糖が分解しやすくなるという問題がある。またフラクトオリゴ糖は、液状組成物のpHが低いほど分解しやすいが、フラクトオリゴ糖が分解することで液状組成物のpHは更に低下するため、その結果、フラクトオリゴ糖の分解は加速度的に進行する。
【0006】
フラクトオリゴ糖を含む液状組成物のpHを高くすれば、フラクトオリゴ糖は比較的分解しにくくなるものの、フラクトオリゴ糖を含む液状組成物は、pHが高いほど、フラクトオリゴ糖の分解産物や夾雑成分であるグルコース等の影響による褐変が起こって着色するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、着色が許容可能な程度に抑えられ、且つフラクトオリゴ糖の分解が低減された、フラクトオリゴ糖を含む液状甘味料組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、驚くべきことにフラクトオリゴ糖水溶液にクエン酸緩衝剤を添加して、当該水溶液のクエン酸緩衝剤濃度及びpHを、それぞれ特定の範囲内に調整することにより、フラクトオリゴ糖の分解が低減し、また着色も許容可能な程度に抑えられることを見出した。本発明者は、当該知見に基づいてさらに研究を進めることによって本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
[1]フラクトオリゴ糖及びクエン酸緩衝剤を含み、
クエン酸緩衝剤濃度が20mM以下であり、
pHが3.5〜5.8である、液状甘味料組成物。
[2]Brixが30〜80である、[1]記載の組成物。
[3]フラクトオリゴ糖の含有量が10〜80重量%である、[1]又は[2]記載の組成物。
[4]クエン酸緩衝剤が、クエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムである、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の組成物。
[5]還元糖を更に含む、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の組成物。
[6]還元糖が、単糖類及び/又は二糖類である、[5]記載の組成物。
[7]フラクトオリゴ糖水溶液にクエン酸緩衝剤を添加して、クエン酸緩衝剤濃度を20mM以下、pHを3.5〜5.8に調整することを含む、液状甘味料組成物の製造方法。
[8]フラクトオリゴ糖水溶液にクエン酸緩衝剤を添加して、クエン酸緩衝剤濃度を20mM以下、pHを3.5〜5.8に調整することを含む、フラクトオリゴ糖の分解抑制方法。
[9]フラクトオリゴ糖水溶液にクエン酸緩衝剤を添加して、クエン酸緩衝剤濃度を20mM以下、pHを3.5〜5.8に調整することを含む、フラクトオリゴ糖水溶液の着色抑制方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、着色が許容可能な程度に抑えられ、且つフラクトオリゴ糖の分解が低減された、フラクトオリゴ糖を含む液状甘味料組成物及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、フラクトオリゴ糖及びクエン酸緩衝剤を含み、クエン酸緩衝剤濃度及びpHが特定の範囲である、液状甘味料組成物(以下、単に「本発明の組成物」とも称する)を提供する。
【0012】
本発明において用いられるフラクトオリゴ糖は、ショ糖のフルクトース残基に1〜3個のフルクトースが結合したものであり、例えば、ケストース、ニストース、フラクトフラノシルニストース等が挙げられる。これらのフラクトオリゴ糖は1種単独で用いてよく、また2種以上を併用してもよい。
【0013】
本発明において用いられるフラクトオリゴ糖の製造方法は特に制限されず、当該フラクトオリゴ糖は、例えば、タマネギ、アスパラガス、ニンニク、トマト、バナナ等の植物から抽出されたものであってよく、又はショ糖にβ−フルクトフラノシダーゼを作用させて生成したものであってもよい。フラクトオリゴ糖は市販品を用いてもよく、簡便であることから好ましい。
【0014】
本発明の組成物におけるフラクトオリゴ糖の含有量は、液状甘味料組成物の呈味質及び食品へのなじみやすさの観点から、好ましくは10〜80重量%であり、より好ましく10〜40重量%であり、特に好ましくは25〜40重量%である。
本発明の組成物におけるフラクトオリゴ糖の含有量は、液体クロマトグラフ法により測定される。
(液体クロマトグラフ法の分析条件)
機種:LC−20AD[株式会社島津製作所製]
検出器:示差屈折計 RID−10A[株式会社島津製作所製]
カラム:Inertsil NH,φ3mm×150mm[ジーエルサイエンス株式会社製]
カラム温度:室温
移動相:アセトニトリル:水=73:27
流量:0.5ml/min
注入量:5μl
【0015】
本発明において用いられるクエン酸緩衝剤は、クエン酸及び/又はその塩を含有し得る。クエン酸の塩は食用であれば特に制限されないが、例えば、クエン酸ナトリウム(クエン酸三ナトリウム)、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等が挙げられる。
【0016】
本発明において用いられるクエン酸緩衝剤は、甘味料組成物の呈味質及び食品原料としての汎用性の観点から、クエン酸及び/又はクエン酸ナトリウムを含有することが好ましく、クエン酸及びクエン酸ナトリウムを含有することが更に好ましい。
【0017】
本発明は、クエン酸緩衝剤濃度が特定の範囲であることが重要である。当該クエン酸緩衝剤濃度が特定の範囲であることにより、フラクトオリゴ糖の分解が低減され、着色も許容可能な程度に抑えられるとともに、良好な呈味を有する液状甘味料組成物を製造可能となる。
具体的には、クエン酸緩衝剤濃度は、20mM以下が好ましい。当該クエン酸緩衝剤濃度が、20mMを超えると、液状甘味料組成物の酸味が強くなり過ぎる傾向がある。クエン酸緩衝剤濃度の下限は0を超えさえすれば特に制限されないが、クエン酸緩衝剤濃度は、5〜20mMがより好ましく、10〜20mMが特に好ましい。
本発明において「クエン酸緩衝剤濃度」とは、本発明の組成物におけるクエン酸緩衝剤の、クエン酸としての濃度である。クエン酸緩衝剤濃度は、高速液体クロマトグラフ法により測定される。
【0018】
本発明は、本発明の組成物のpHが特定の範囲であることが重要である。pHが当該特定の範囲内である場合、クエン酸緩衝剤を添加することによって、フラクトオリゴ糖の分解を抑制することができる。
具体的には、本発明の組成物のpHは、3.5〜5.8が好ましく、4.0〜5.8がより好ましく、4.5〜5.6が特に好ましい。当該pHが、3.5未満であると、クエン酸緩衝剤を添加しても、フラクトオリゴ糖の分解を抑制できない傾向があり、逆に5.8を超えると液状甘味料組成物が許容できない程着色する傾向がある。
【0019】
本発明の組成物のpHの調整方法は特に制限されず、自体公知の方法により調整することができる。例えば、本発明の組成物に、上述のクエン酸緩衝剤を適宜添加することによって調整できる。また食品分野において慣用のpH調整剤を適宜添加することによって調整してもよい。
【0020】
本発明の組成物は、Brixが30〜80であることが好ましく、50〜80であることがより好ましく、50〜70であることが特に好ましい。ここで「Brix」とは、可溶性固形分濃度を表す指標であり、組成物100g中に含まれている可溶性固形分の重量(g)を表す。組成物のBrixが低い(即ち、組成物が水分を多く含む)程、組成物の粘度は低くくなるが、フラクトオリゴ糖は分解しやすくなる。本発明によれば、フラクトオリゴ糖の分解を低減できるため、本発明はBrixの低い組成物において特に有用である。
【0021】
本発明の組成物のBrixは、例えば、本発明の組成物の水分量を適宜調節すること等によって調整できる。本発明の組成物の水分量が増加するとBrixは低くなり、水分量が減少するとBrixは高くなる。
本発明の組成物におけるBrixは、屈折率測定器(株式会社アタゴ製、RX−500α)により測定される。
【0022】
本発明の組成物は、上述のフラクトオリゴ糖及びクエン酸緩衝剤に加え、還元糖を更に含んでよい。一般にフラクトオリゴ糖水溶液は、還元糖を含むことによってより着色しやすくなるが、本発明によれば、フラクトオリゴ糖水溶液が還元糖を含む場合であっても、許容可能な程度に着色を抑えることができる。従って本発明は、フラクトオリゴ糖に加え、還元糖を含む組成物において特に有用である。
【0023】
還元糖の種類は特に制限されないが、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類;マルトース、ラクトース等の二糖類等が挙げられる。本発明の組成物は、これらの還元糖のうち1種のみを含んでよく、又は2種以上を含んでもよい。
【0024】
本発明の組成物における還元糖の含有量は、好ましくは5〜50重量%であり、より好ましく10〜40重量%であり、特に好ましくは20〜30重量%である。
本発明の組成物における還元糖の含有量は、高速液体クロマトグラフ法により測定される。
【0025】
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、フラクトオリゴ糖、クエン酸緩衝剤及び還元糖以外の添加物を含んでよい。そのような添加物としては、例えば、甘味料(高甘味度甘味料を含む)、酸味料、保存料、香料、着色料、強化剤、安定剤等が挙げられる。本発明の組成物における当該添加剤の含有量は、通常30重量%以下であり、好ましくは20重量%以下である。
【0026】
本発明の組成物は、液状であることが好ましい。ここで「液状」とは、25℃において流動性を有する状態をいう。
【0027】
本発明の組成物は、フラクトオリゴ糖水溶液にクエン酸緩衝剤を添加して、クエン酸緩衝剤濃度及びpHを所定の範囲に調整することを含む製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」とも称する)により製造することができる。
【0028】
フラクトオリゴ糖水溶液に含まれるフラクトオリゴ糖は、本発明の組成物に含まれるフラクトオリゴ糖と同様である。またフラクトオリゴ糖水溶液に添加されるクエン酸緩衝剤は、本発明の組成物に含まれるクエン酸緩衝剤と同様であり、その好適な態様も同様である。
【0029】
フラクトオリゴ糖水溶液におけるフラクトオリゴ糖の含有量は、液状甘味料組成物の呈味質及び食品へのなじみやすさの観点から、固形分中、好ましくは10〜99重量%であり、より好ましく10〜50重量%であり、特に好ましくは25〜45重量%である。
フラクトオリゴ糖水溶液におけるフラクトオリゴ糖の含有量は、本発明の組成物におけるフラクトオリゴ糖の含有量の測定方法と同様の方法で測定される。
【0030】
フラクトオリゴ糖水溶液は、還元糖を含んでよい。当該還元糖は、本発明の組成物に含まれ得る還元糖と同様である。
【0031】
フラクトオリゴ糖水溶液における還元糖の含有量は、固形分中、好ましくは5〜50重量%であり、より好ましく10〜40重量%であり、特に好ましくは20〜40重量%である。
フラクトオリゴ糖水溶液における還元糖の含有量は、本発明の組成物における還元糖の含有量の測定方法と同様の方法で測定される。
【0032】
本発明の製造方法は、フラクトオリゴ糖水溶液のクエン酸緩衝剤濃度及びpHを所定の範囲に調整することが重要である。
具体的なクエン酸緩衝剤濃度及びpHは、本発明の組成物のクエン酸緩衝剤濃度及びpHと同様であり、その好適な態様も同様である。
【0033】
本発明の製造方法は、フラクトオリゴ糖水溶液にクエン酸緩衝剤を添加して、クエン酸緩衝剤濃度及びpHを所定の範囲に調整することを含みさえすれば、食品分野において慣用の他の製造工程(例えば、加熱処理工程、ろ過処理工程等)を更に含んでよい。
【0034】
本発明の製造方法によって得られる液状甘味料組成物(即ち、本発明の組成物)は、上述する通り、着色が許容可能な程度に抑えられ、且つフラクトオリゴ糖の分解が低減されている。従って、本発明は、フラクトオリゴ糖の分解抑制方法及びフラクトオリゴ糖水溶液の着色抑制方法も提供する。これらの方法は、本発明の製造方法と同様の手順で行うことができる。
【0035】
本発明の組成物は、温度44℃、相対湿度78%の条件で3週間保管したときのフラクトオリゴ糖残存率(%)が、18%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることが特に好ましい。
本発明の組成物を3週間保管したときの「フラクトオリゴ糖残存率」は、下記式により算出される。
フラクトオリゴ糖残存率(%)=3週間保管後のサンプルにおけるフラクトオリゴ糖の含有量/保管前のサンプルにおけるフラクトオリゴ糖の含有量×100
本発明の組成物は、温度44℃、相対湿度78%の条件で3週間保管したときのフラクトオリゴ糖残存率(%)が、クエン酸緩衝剤を添加しなかった場合に比べて、5%以上高いことが好ましく、10%以上高いことがより好ましい。
【0036】
本発明の組成物は、例えば食品等に甘味を付与するために使用できる。本発明の組成物を添加し得る食品は、甘味が付与されることを所望されるものであれば特に制限されないが、例えば、ヨーグルト、ゼリー、ジャム、焼成菓子、飲料、煮物料理等が挙げられる。本発明において「食品」とは、経口摂取し得るものを広く包含する概念であり、飲料や調味料等も含まれる。本発明の組成物の添加量は特に制限されないが、本発明の組成物は、フラクトオリゴ糖の一日摂取量が3〜8g程度になるように使用されることが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0038】
[サンプルの調製]
市販のフラクトオリゴ糖水溶液(製品名「メイオリゴG」、株式会社明治フードマテリア製、Brix:67.5、フラクトオリゴ糖の含有量:固形分中55〜60重量%、還元糖(グルコース、フルクトース)の含有量:固形分中25〜45重量%)に、クエン酸緩衝剤としてクエン酸及びクエン酸ナトリウムを添加することにより、下表1に示されるクエン酸緩衝剤濃度及びpHに調整して、サンプルNo.1〜4、6、7、9〜14、16、17、19の液状甘味料組成物をそれぞれ調製した。
また、市販のフラクトオリゴ糖水溶液に、クエン酸緩衝剤を添加せずに、乳酸及び/又は乳酸ナトリウムを添加することにより、下表1に示されるpHに調整して、サンプルNo.5、8、15、18、20の液状甘味料組成物をそれぞれ調製した。
【0039】
[フラクトオリゴ糖残存率の評価]
調製したサンプルを、それぞれ温度44℃、相対湿度78%の条件で3週間保管した後、各サンプルのフラクトオリゴ糖の含有量を液体クロマトグラフ法により測定し、下記式によりフラクトオリゴ糖残存率を算出した。
フラクトオリゴ糖残存率(%)=3週間保管後のサンプルにおけるフラクトオリゴ糖の含有量/保管前のサンプルにおけるフラクトオリゴ糖の含有量×100
液体クロマトグラフ法による各サンプルのフラクトオリゴ糖の含有量の測定は、具体的には、カラムとしてInertsil NH(ジーエルサイエンス株式会社製、φ3mm×150mm)を用い、試料5μl注入して、カラム温度室温で移動相アセトニトリル/水=73/27を流速0.5ml/minで流し、示差屈折計にて検出して行った。
【0040】
[着色度の評価]
調製したサンプルを、それぞれ温度44℃、相対湿度78%の条件で3週間保管した後、5人の専門パネラーにより、各サンプルの着色の程度について、下記の基準に従って視覚評価を行った。
(評価基準)
○:許容可能
△:許容限界
×:許容不可
【0041】
[官能評価]
調製したサンプルについて、5人の専門パネラーにより、下記の基準に従って官能評価を行った。
(評価基準)
○:呈味良好
△:呈味許容限界
×:呈味許容不可
【0042】
結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示される結果から、pH3.5〜5.8の範囲においては、クエン酸緩衝剤が添加されることにより、クエン酸緩衝剤が添加されなかった場合と比較して、フラクトオリゴ糖の分解が抑制されることが確認された。pH3.5〜5.8の範囲では、着色度も許容範囲内であった。
クエン酸緩衝剤濃度を40mMに調整したサンプル(サンプルNo.2)は、酸味が強過ぎ、官能面で許容範囲外となることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、着色が許容可能な程度に抑えられ、且つフラクトオリゴ糖の分解が低減された、フラクトオリゴ糖を含む液状甘味料組成物及びその製造方法を提供できる。