(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568750
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】Oリングとパイプ管の継手部におけるシール構造
(51)【国際特許分類】
F16L 21/02 20060101AFI20190819BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
F16L21/02 F
F16J15/10 A
F16J15/10 C
F16J15/10 T
F16J15/10 N
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-167637(P2015-167637)
(22)【出願日】2015年8月27日
(65)【公開番号】特開2017-44278(P2017-44278A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】390024877
【氏名又は名称】東京ガスリビングエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(72)【発明者】
【氏名】槇 紀和
【審査官】
豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭45−025746(JP,B1)
【文献】
国際公開第2015/024984(WO,A1)
【文献】
特開平06−050482(JP,A)
【文献】
特開2000−356267(JP,A)
【文献】
実開昭53−029809(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/00 − 21/08
F16L 37/00 − 39/06
F16J 15/00 − 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングビードを備え、雌継手となる一方のパイプ管と、雌継手の内側に挿入される雄継手となる他方のパイプ管と、リングビードに配設されるOリングと、から構成され、
Oリングの断面形状は、長方形、もしくは4つの隅角に曲線部が形成された略長方形の本体部と、本体部の対向する長辺のうちの一方の長辺の中心位置から突出する第1の凸部と、他方の長辺の中心位置から線対称の位置において突出する2つの第2の凸部と、から構成され、
挿入されている雄継手によってOリングが挿入方向に倒されることにより、第1の凸部が雄継手の挿入方向に倒されて雄継手との間でシール部を形成し、第1の凸部が倒された方向と逆方向の本体部の隅角の曲線部が雄継手との間でシール部を形成し、且つ少なくとも1つの第2の凸部がリングビードの内壁との間でシール部を形成してなる、パイプ管の継手部におけるシール構造。
【請求項2】
Oリングの第1の凸部のうち、本体部と繋がる根元に窪みがある請求項1に記載のパイプ管の継手部におけるシール構造。
【請求項3】
Oリングの他方の長辺の中心位置にさらに他の第2の凸部がある請求項1または2に記載のパイプ管の継手部におけるシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Oリングとパイプ管の継手部におけるシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
給湯機や暖房機には、排気ガス排出用のパイプ管が接続され、複数のパイプ管が継ぎ足されることで所定場所にて排気ガスを排気している。
【0003】
昨今、給湯器等の高効率化によって排気温度が低下しており、この排気温度の低下に伴ってパイプ管内に生じる結露(ドレン)の量が増加している。
【0004】
パイプ管同士の接続部におけるシール構造の形成に当たり、
図10で示すように、一方のパイプ管Poの雌継手にはリングビードBが形成され、このリングビードB内に断面円形のOリングRを配設する。そして、他方のパイプ管Piの雄継手をこの雌継手の内側に挿入することにより(X方向)、
図11で示すようにOリングRが雄継手によって潰されて断面が楕円形に変形し、変形したOリングRと雄継手と雌継手(リングビードB)の間でシール構造Sが形成される。なお、このようなシール構造が特許文献1に開示されている。
【0005】
図11で示すシール構造Sは、楕円形断面のOリングRの2点が雄継手とリングビードBの内壁との間で形成する2箇所のシール部から構成される。
【0006】
しかしながら、本発明者等によれば、このシール構造Sを構成する2箇所のシール部のシール性はパイプ嵌合の可動性を考慮しているために比較的弱く、パイプ管内に生じた結露Dは2箇所のシール部を通り抜け(Y方向)、雌継手を有するパイプ管Poの端部Po’から外部へ漏れ出易いことが特定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3055824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、相互に接続されたパイプ管内に生じた結露が外部へ漏れ出るのを効果的に防止できるOリングと、このOリングを備えたパイプ管の継手部におけるシール構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明によるOリングは、パイプ管のリングビード内に配設されるOリングであって、Oリングの断面形状は、長方形、もしくは4つの隅角に曲線部が形成された略長方形の本体部と、本体部の対向する長辺のうちの一方の長辺の中心位置から突出する第1の凸部と、他方の長辺の中心位置から線対称の位置において突出する2つの第2の凸部と、から構成されているものである。
【0010】
本発明のOリングは、その断面形状に特徴を有するものであり、具体的には、長方形、もしくは4つの隅角に曲線部が形成された略長方形の本体部と、本体部の対向する長辺のうちの一方の長辺の中心位置から突出する第1の凸部と、他方の長辺の中心位置から線対称の位置において突出する2つの第2の凸部とを備えた断面形状である。このような断面形状により、第1の凸部は雄継手の挿入方向に倒され、雄継手との間で高いシール性のシール部を形成する。具体的には、雄継手の挿入によって倒されながらその一部が雄継手によって潰された第1の凸部と、第1の凸部が倒された方向と逆方向の本体部の隅角の曲線部と、の2箇所が雄継手とそれぞれ押圧状態で接触し、高いシール性を有するシール部となる。
【0011】
一方、線対称の位置にある第2の凸部の一方も潰され、リングビードの内壁に対して押圧状態で接触し、リングビードの内壁との間で高いシール性のシール部を形成する。また、場合によっては、この接触している第2の凸部側にある本体部の隅角の曲線部も同様に潰され、リングビードの内壁に対して押圧状態で接触し、リングビードの内壁との間で高いシール性のシール部を形成することもあり得る。
【0012】
ここで、2つの第2の凸部が「他方の長辺の中心位置から線対称の位置に」あることで、Oリングに方向性がなくなることから、Oリングをリングビード内に設置する際に方向合わせをおこなう必要がなく、設置作業が容易となる。
【0013】
線対称の2つの第2の凸部を有することで、雄継手の挿入時にOリングがリングビード側に押し込まれた際に、これら2つの第2の凸部の一方が容易に押し潰され、この押し潰されによって高いシール性のシール部を形成することができる。なお、一方の第2の凸部が潰されるとは、雄継手の挿入の際にOリングが挿入方向に傾いた姿勢となる結果、傾いた側の第2の凸部がリングビードに押し潰され、他方の第2の凸部はリングビードから離れた状態となることに依拠している。
【0014】
また、本体部が略長方形の断面形状を有する場合は、本体部の4つの隅角が直角でなく、面取りされて曲線部を形成していることで、この隅角の曲線部が雄継手やリングビードの内壁と接した際の接触長さ(シール長さ)が長くなり、シール性能を高めることができる。
【0015】
なお、このように、本発明のOリングはその断面形状がO型(円形)ではないが、本明細書では従来から一般に用いられているOリングをそのまま適用することとする。
【0016】
また、本発明によるOリングの好ましい実施の形態は、第1の凸部のうち、本体部と繋がる根元に窪みがあるものである。
【0017】
第1の凸部のうち、本体部と繋がる根元に窪みがあることで、この根元の剛性が弱くなり、第1の凸部の変形性能が高くなる結果、第1の凸部は雄継手の挿入方向に倒され易くなり、雄継手との間でシール部を形成し易くなる。
【0018】
また、本発明によるOリングの他の実施の形態は、他方の長辺の中心位置にさらに他の第2の凸部があるものである。
【0019】
線対称の関係にある2つの第2の凸部の中央位置に別途の第2の凸部があることで、場合によってはこの中央の第2の凸部もリングビードの内壁と押圧状態で接触し、既述する1箇所もしくは2箇所のシール部に対してシール部の数を増加させることができる。
【0020】
また、本発明はパイプ管の継手部におけるシール構造にも及ぶものであり、このシール構造は、
リングビードを備え、雌継手となる一方のパイプ管と、雌継手の内側に挿入される雄継手となる他方のパイプ管と、前記Oリングと、から構成され、リングビードにOリングが配設され、挿入されている雄継手によってOリングが潰され、Oリングの第1の凸部と1つの曲線部の2箇所が雄継手との間でシール部を形成し、少なくとも1つの第2の凸部がリングビードの内壁との間でシール部を形成してなるものである。
【0021】
本発明のシール構造によれば、本発明のOリングが適用されていることで、雄継手との間で2箇所の高いシール性のシール部が形成され、リングビードの内壁との間で少なくとも1箇所の高いシール性のシール部が形成され、これら複数のシール部からなるシール構造により、パイプ管内に生じた結露が外部へ漏れ出るのを確実に防止することができる。
【0022】
なお、「少なくとも1つの第2の凸部がリングビードの内壁との間でシール部を形成している」とは、1つの第2の凸部がリングビードの内壁との間でシール部を形成している形態の他、このシール部を形成している第2の凸部側にある本体部の隅角の曲線部も同様にリングビードの内壁との間でシール部を形成している形態を含む意味である。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から理解できるように、本発明のOリングは、長方形、もしくは4つの隅角に曲線部が形成された略長方形の本体部と、本体部の対向する長辺のうちの一方の長辺の中心位置から突出する第1の凸部と、他方の長辺の中心位置から線対称の位置において突出する2つの第2の凸部と、から構成されている断面形状を備えたものである。このような断面形状を適用したことにより、第1の凸部は雄継手の挿入方向に倒され、雄継手に対して押圧状態で接触してシール部を形成する。さらに、第1の凸部が倒された方向と逆方向の本体部の隅角の曲線部も雄継手に対して押圧状態で接触してシール部を形成し、第1の凸部と合わせて雄継手との間で2箇所の高いシール性のシール部を形成する。また、線対称の位置にある第2の凸部の一方も潰され、リングビードの内壁に対して押圧状態で接触してシール部を形成する。このように、Oリングが雄継手とリングビードの内壁との間でそれぞれシール部を形成し、これら複数のシール部からなるシール構造を形成することにより、パイプ管内に生じた結露がパイプ管の外部に漏れ出るのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】
図1のII−II矢視図であって、Oリングの実施の形態1の断面形状を示した図である。
【
図3】Oリングの実施の形態2の断面形状を示した図である。
【
図4】Oリングの実施の形態3の断面形状を示した図である。
【
図5】一方のパイプ管の雌継手のリングビードにOリングを配設し、他方のパイプ管の雄継手を挿入している状態を示した図である。
【
図6】雌継手に雄継手が挿入されて形成された本発明のシール構造の実施の形態を示した図である。
【
図7】(a)はOリングの実施の形態2の前方斜め方向から見た写真図であり、(b)はOリングの実施の形態2の後方斜め方向から見た写真図である。
【
図8】Oリングの実施の形態2で構成されたシール構造の断面を見た写真図である。
【
図9】水漏れ試験の概要を示した写真図であって、(a)は試験装置の側面写真図であり、(b)はパイプ管の継手部の拡大写真図であり、(c)は注水状況を示した写真図であり、(d)はパイプ管内に水が入っている状態を示した写真図であり、(e)はパイプ管の角度を傾斜させている状態を示した写真図である。
【
図10】一方のパイプ管の雌継手のリングビードに従来のOリングを配設し、他方のパイプ管の雄継手を挿入している状態を示した図である。
【
図11】雌継手に雄継手が挿入されて形成された従来のシール構造の実施の形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明のOリングとパイプ管の継手部におけるシール構造の実施の形態を説明する。なお、図示例のOリングは、断面形状が4つの隅角に曲線部が形成された略長方形の本体部を具備する形態であるが、断面形状が長方形の本体部を具備する形態であってもよい。
【0026】
(Oリングの実施の形態1〜3)
図1は本発明のOリングの平面図であり、
図2は
図1のII−II矢視図であって、Oリングの実施の形態1の断面形状を示した図であり、
図3,4はそれぞれ、Oリングの実施の形態2,3の断面形状を示した図である。
【0027】
図1で示すOリング10は、フッ素ゴム製もしくはシリコーンゴム製であり、適用されるパイプ管のリングビードに嵌り込む寸法を有し、平面視環状に形成されている。
【0028】
図2で示す実施の形態1にかかるOリング10の断面形状は、4つの隅角に曲線部1cが形成された略長方形の本体部1と、本体部1の対向する長辺1a,1bのうちの一方の長辺1aの中心位置(中心ラインCL上にある位置)から突出する第1の凸部2と、他方の長辺1bの中心位置から線対称の位置(中心ラインCLから長さtの位置)において突出する2つの第2の凸部3,3と、から構成されている。
【0029】
本体部1の4つの隅角が直角でなく、面取りされて曲線部1cを形成していることで、この隅角の曲線部1cが雄継手やリングビードの内壁と接した際の接触長さ(シール長さ)が長くなり、シール性能を高めることができる。
【0030】
また、2つの第2の凸部3,3が他方の長辺1bの中心位置から線対称の位置にあることで、Oリング10に方向性がなくなることから、Oリング10をリングビード内に設置する際に方向合わせをおこなう必要がなく、設置作業が容易となる。
【0031】
一方、
図3で示す実施の形態2にかかるOリング10Aの断面形状は、第1の凸部2のうち、本体部1と繋がる根元に窪み2aがあり、その他の形状はOリング10と同様である。
【0032】
第1の凸部2のうち、本体部1と繋がる根元に窪み2aがあることで、この根元の剛性が弱くなり、第1の凸部2の変形性能が高くなる結果、第1の凸部2は雄継手の挿入方向に倒され易くなり、雄継手との間でシール部を形成し易くなる。
【0033】
また、
図4で示す実施の形態3にかかるOリング10Bの断面形状は、他方の長辺1bの中心位置にさらに他の第2の凸部3があり(したがって3つの第2の凸部3がある)、その他の形状はOリング10Aと同様である。
【0034】
線対称の関係にある2つの第2の凸部3,3の中央位置に別途の第2の凸部3があることで、場合によってはこの中央の第2の凸部3もリングビードの内壁と押圧状態で接触し、リングビードの内壁との間で形成されるシール部の数を増加させることができる。
【0035】
(シール構造の実施の形態)
次に、
図5,6を参照して、
図3で示すOリング10Aを適用した場合の本発明のシール構造の実施の形態を説明する。ここで、
図5は、一方のパイプ管の雌継手のリングビードにOリングを配設し、他方のパイプ管の雄継手を挿入している状態を示した図である。また、
図6は、雌継手に雄継手が挿入されて形成された本発明のシール構造の実施の形態を示した図である。
【0036】
パイプ管同士の接続部におけるシール構造20の形成に当たり、
図5で示すように、一方のパイプ管Poの雌継手にリングビードBが形成され、このリングビードB内に
図3で示すOリング10Aを配設する。そして、他方のパイプ管Piの雄継手をこの雌継手の内側に挿入することにより(X方向)、
図6で示すようにOリング10Aが雄継手によって潰されて変形し、変形したOリング10Aと雄継手と雌継手(リングビードB)の間でシール構造20が形成される。
【0037】
具体的には、雄継手の挿入によってOリング10Aが挿入方向に倒され(
図6のZ方向)、第1の凸部2も雄継手の挿入方向に倒されながら雄継手によって潰され、雄継手との間でシール部S1を形成する。また、第1の凸部2が倒された方向と逆方向の本体部1の隅角の曲線部1cも雄継手と押圧状態で接触し、雄継手との間でシール部S2を形成する。このように、Oリング10Aの2箇所が雄継手とそれぞれ押圧状態で接触し、高いシール性を有するシール部S1,S2を形成する。
【0038】
一方、Oリング10Aが挿入方向に倒されることで線対称の位置にある第2の凸部3,3のうちの挿入方向にある第2の凸部3がリングビードBの内壁に対して押圧状態で接触し、リングビードBの内壁との間でシール部S3を形成する。さらに、この接触している第2の凸部3側にある本体部1の隅角の曲線部1cも同様にリングビードBの内壁に対して押圧状態で接触し、リングビードBの内壁との間でシール部S4を形成する。このように、Oリング10Aの2箇所がリングビードBの内壁とそれぞれ押圧状態で接触し、高いシール性を有するシール部S3,S4を形成する。
【0039】
Oリング10Aが雄継手とリングビードBの内壁との間でそれぞれ2箇所ずつのシール部S1,S2,S3,S4を形成し、これら複数のシール部S1,S2,S3,S4からなるシール構造20を形成することにより、パイプ管Po内に生じ得る結露がパイプ管Po、Piの外部に漏れ出るのを確実に防止することができる。
【0040】
なお、Oリング10Aの傾斜態様やOリング10Aの各部の寸法関係によっては、第2の凸部3のみがリングビードBの内壁に対して押圧状態で接触し、リングビードBの内壁との間でシール部S3のみを形成している形態、言い換えれば、シール部S4を備えていないシール構造もあり得る。また、2つの第2の凸部3,3がともにリングビードBの内壁に対して押圧状態で接触し、2箇所のシール部を形成する形態もあり得る。
【0041】
(Oリングおよびシール構造の実施例)
本発明者等はOリングの実施の形態2を実際に製作し、このOリングを適用してシール構造を実際に形成した。ここで、
図7(a)はOリングの前方斜め方向から見た写真図であり、
図7(b)はOリングの後方斜め方向から見た写真図であり、
図8は
図7で示すOリングで構成されたシール構造の断面を見た写真図である。
【0042】
図8より、実際に製作されたOリングを備えたシール構造において、Oリングが雄継手との間で2箇所のシール部を形成し、リングビードの内壁との間で1箇所のシール部を形成し(計3箇所のシール部)、これら3箇所のシール部からなるシール構造が形成されていることが分かる。
【0043】
(水漏れ試験とその結果)
本発明者等は、2本のパイプ管を繋ぎ、繋ぎ箇所に本発明のOリング(
図3で示すOリング10A)を備えたシール構造を形成し、このシール構造における水漏れの有無を検証する実験をおこなった。また、比較として、従来の断面円形のOリングを備えたシール構造を形成し、同様に水漏れの有無を検証した。ここで、
図9は水漏れ試験の概要を示した写真図であって、
図9(a)は試験装置の側面写真図であり、
図9(b)はパイプ管の継手部の拡大写真図であり、
図9(c)は注水状況を示した写真図であり、
図9(d)はパイプ管内に水が入っている状態を示した写真図であり、
図9(e)はパイプ管の角度を傾斜させている状態を示した写真図である。
【0044】
水漏れ試験では、φ100mm、長さ600mmの直管を2本繋いで試験装置に水平取り付け、繋ぎ箇所のリングビードに本発明のOリングを配設し、2本の直管の一方端に注水口を備えた90度エルボ管を取り付け、2本の直管の他端を閉塞した(実施例)。そして、注水口から2リットルの水を注水した。一方、比較例では、実施例と同様に2本の直管を繋ぎ、繋ぎ箇所のリングビードに従来の断面円形のOリングを配設した。なお、比較例は、Oリングの直径をφ5.7mmのもの、φ3.5mmのものの2種類でおこなった。
【0045】
そして、直管の円周方向に2本の直管を0度(水平)、45度、90度、135度、180度と順次回動させ、各角度で3分間直管の姿勢を保持し、その際の水漏れの有無を検証した。実験結果を以下の表1に示す。
【0046】
【表1】
(注記)表中、○は水漏れなしを示す。
【0047】
表1より、比較例1、2は直管を135度以上に傾斜させた際に水漏れが確認され、比較例2はOリング線径が小さ過ぎるために水漏れが比較的大きかった。
【0048】
それに対し、実施例は180度まで傾斜させても水漏れは確認されなかった。これは、本発明のOリングが雄継手とリングビードの内壁との間でそれぞれ高いシール性のシール部を形成していることによるものと考えられる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0050】
1…本体部、1a…長辺(一方の長辺)、1b…長辺(他方の長辺)、1c…曲線部、2…第1の凸部、2a…窪み、3…第2の凸部、10,10A,10B…Oリング、20…シール構造(パイプ管の継手部におけるシール構造)、Po、Pi…パイプ管、B…リングビード、S1,S2,S3,S4…シール部