(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記散布図に基づいて、得られる相関式の切片に任意倍率の標準偏差を加えた線、または包絡線、または前記特性値に対して前記測定値の相対値が大きい2点を結ぶ直線を描き、前記溶出物質が溶出基準値以下となるように添加材の添加量を決定することを特徴とする請求項1に記載の人工地盤材料の製造方法。
前記溶出物質が、セレン、六価クロム、砒素、ほう素、ふっ素の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の人工地盤材料の製造方法。
前記溶出物質がセレンである場合に、前記溶出物質の溶出量に関連する値がpHまたはカルシウム含有量であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の人工地盤材料の製造方法。
粉体或は微粒子状物質からなる原料と、原料から溶出する溶出物質の溶出を抑制する添加材と、水と、を混合して製造する人工地盤材料の製造における添加材の添加量の決定方法であって、
原料の前記溶出物質の溶出量に関連する特性値が異なるそれぞれの原料に対して、一定比率で添加材を混合させて人工地盤材料を複数種試験的に製造し、
製造された複数種の試験的な人工地盤材料からの前記溶出物質の溶出量に関連する値を測定値として測定し、
前記特性値と、前記測定値と、の散布図に基づいて、前記溶出物質が溶出基準値以下となるように添加材の添加量を決定する
ことを特徴とする人工地盤材料の製造における添加材の添加量の決定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、粉体或いは微粒子状物質と、セメントなどの固化材や重金属等の溶出抑制材等の添加材と、の混合材料の製造において、添加水量が少ないと、粉塵が多く発生するといった実情がある。
【0005】
一方で、添加水量が多いと、混合材料が軟弱になり締め固めなどの施工が困難となり、人工地盤材料としての利用が困難になるといったおそれがある。
【0006】
しかし、これまでは、添加水量をどの程度にすべきか指標が無く実際に製造を開始し、混合物の状態を見ながら調整していくしかなかった。
【0007】
このため、一つの指標として、例えば、実際に利用される粉体或いは微粒子状物質と、セメントや溶出抑制材と、を、複数の異なる添加水量にて混合してサンプル的に人工地盤材料を複数製造し、これらを突固めによる土の締固め試験(円筒状の容器に収容された供試用人工地盤材料に対して、円柱状(前記容器より小さい外径)の重しを所定高さから所定回数落下させることで、供試用人工地盤材料を突き固めた後、供試用人工地盤材料の乾燥密度などの特性を測定する試験。例えば、JIS A 1210など)などの予備試験に供して、例えば、
図1に示すような、含水比を横軸、乾燥密度(或いは硬さ)を縦軸としたグラフを作成し、当該グラフに基づいて、高い乾燥密度(或いは硬度)が得られる最適な含水比w(%)を取得し、取得した最適な含水比にて、実際に、粉体或いは微粒子状物質とセメントや他の添加材を混合して人工地盤材料を製造することなども行われつつある。
【0008】
しかし、実際の現場で得られる粉体或いは微粒子状物質等の原料には、その性状(粒径や湿気など)に関して、日毎(温度や湿度などの日々の相違)やロット毎に相違があるため、上記のような予備試験により得られた最適な含水比にて製造したとしても、一定の品質で人工地盤材料を製造することができない、といった実情があった。
【0009】
更に、人工地盤材料の原料である粉体或いは微粒子状物質の種類・組成・性状によっては六価クロムやほう素などの重金属等を含んでいる場合があり、これを人工地盤材料の原料として利用した場合に、土壌環境基準を超えて溶出するおそれがあるため、人工地盤材料の利用場所・利用方法によっては、土壌環境基準を満たすまで不溶化することが必要である。
【0010】
セメントなどの固化材や溶出抑制材は、重金属等の溶出を低減することが知られているが、必要な添加量は原料の種類・組成(例えば重金属等の含有量)・性状(例えば粒度や結晶状態)等によって異なり、一律に添加量を決めることはできない。
【0011】
そのため、従来は、対象となる原料に対して、配合試験を実施し、基準を満たす添加材の配合率を決定する方法が取られている。具体的には、セメントなどの固化材や重金属等の溶出抑制材等の添加材配合率を変えて添加材等を配合したものを準備して溶出試験を行って対象有害物質の溶出量を測定し、基準を満たす添加材の配合率を決定する。このとき、添加材配合率が多いほど溶出量は少なくなるため、溶出試験で基準を満たしていなくても概略の必要添加率を求めることは可能である。
【0012】
しかしながら、配合試験には添加材の反応時間や混合材料(原料と添加材の混合材料)の分析(試験室等への搬入も必要)のために時間が長くかかるため、その間、原料を貯蔵する施設を別途設ける必要があったり、同じ組成(例えば重金属等の含有量)・性状(例えば粒度や結晶状態)の原料がある程度の期間(例えば3週間)以上連続して生産されるような場合でないと適用することが難しかった。
【0013】
すなわち、原料となる粉体の組成(例えば重金属等の含有量)・性状(例えば粒度や結晶状態)にバラツキ(違い)があると、従来の配合試験により決定した添加材の配合率では、良好に重金属等の溶出を抑制できない、或いは必要以上に添加材を消費するおそれがあるといった問題がある。
【0014】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、例えば灰、石炭灰、粉塵、焼却灰、フライアッシュ、ダスト、砕石粉、切削・研磨粉など(これらと土の混合物なども含む)の粉体或いは微粒子状物質を原料として、これとセメントなどの固化材や重金属等の溶出抑制材等の添加材を混合して人工地盤材料を製造する人工地盤材料の製造方法において、粉体或いは微粒子状物質の原料の性状や組成にバラツキがあっても、良好な品質の人工地盤材料を得ることができる人工地盤材料の製造方法及び人工地盤材料の製造における添加材の添加量の決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このため、本発明に係る人工地盤材料の製造方法は、
粉体或は微粒子状物質からなる原料と、原料から溶出する溶出物質の溶出を抑制する添加材と、水と、を混合して製造する人工地盤材料の製造方法において、
原料の前記溶出物質の溶出量に関連する特性値が異なるそれぞれの原料に対して、一定比率で添加材を混合させて人工地盤材料を複数種試験的に製造し、
製造された複数種の試験的な人工地盤材料からの前記溶出物質の溶出量に関連する値を測定値として測定し、
前記特性値と、前記測定値と、の散布図に基づいて、前記溶出物質が溶出基準値以下となるように添加材の添加量を決定する
ことを特徴とする。
【0016】
本発明において、前記散布図に基づいて、得られる相関式の切片に任意倍率の標準偏差を加えた線、または包絡線、または前記特性値に対して前記測定値の相対値が大きい2点を結ぶ直線を描き、前記溶出物質が溶出基準値以下となるように添加材の添加量を決定することを特徴とすることができる。
【0017】
本発明において、前記溶出物質の溶出量に関連する値が、その溶出物質の溶出量または含有量であることを特徴とすることができる。
【0018】
本発明において、前記溶出物質が、重金属等の有害物質であることを特徴とすることができる。
【0019】
本発明において、前記溶出物質が、セレン、六価クロム、砒素、ほう素、ふっ素の少なくとも一つであることを特徴とすることができる。
【0020】
本発明において、前記溶出物質がセレンである場合に、前記溶出物質の溶出量に関連する値がpHまたはカルシウム含有量であることを特徴とすることができる。
【0021】
また、本発明に係る人工地盤材料の製造における添加材の添加量の決定方法は、
粉体或は微粒子状物質からなる原料と、原料から溶出する溶出物質の溶出を抑制する添加材と、水と、を混合して製造する人工地盤材料の製造における添加材の添加量の決定方法であって、
原料の前記溶出物質の溶出量に関連する特性値が異なるそれぞれの原料に対して、一定比率で添加材を混合させて人工地盤材料を複数種試験的に製造し、
製造された複数種の試験的な人工地盤材料からの前記溶出物質の溶出量に関連する値を測定値として測定し、
前記特性値と、前記測定値と、の散布図に基づいて、前記溶出物質が溶出基準値以下となるように添加材の添加量を決定する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、例えば灰、石炭灰、粉塵、焼却灰、フライアッシュ、ダスト、砕石粉、切削・研磨粉など(これらと土の混合物なども含む)の粉体或いは微粒子状物質を原料として、これとセメントなどの固化材や重金属等の溶出抑制材等の添加材を混合して人工地盤材料を製造する人工地盤材料の製造方法において、粉体或いは微粒子状物質の原料の性状や組成にバラツキがあっても、良好な品質の人工地盤材料を得ることができる人工地盤材料の製造方法及び人工地盤材料の製造における添加材の添加量の決定方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の一実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0025】
<製造時添加水量の設定方法>
灰、石炭灰、粉塵、焼却灰、フライアッシュ、ダスト、砕石粉、切削・研磨粉など(これらと土の混合物なども含む)などの粉体或いは微粒子状物質(粒径φ約2mm以下、平均でφ75μm程度)と、セメントなどの固化材や重金属等の溶出抑制材等の添加材と、の混合材料(人工地盤材料:添加した添加材の機能が発揮された状態の混合材料を人工地盤材料と称する)の製造において、添加水量が少ないと、粉塵が多く発生するおそれがあり、添加水量が多いと、混合材料が軟弱になり締め固めなどの施工が困難となり、人工地盤材料としての利用ができなくなるといったおそれがある。
【0026】
このため、従来においては、上述したように、実際に利用される粉体或いは微粒子状物質と、セメントや溶出抑制材と、を、複数の異なる添加水量にて混合してサンプル的に混合材料(添加した添加材の機能が十分に発揮されていない状態)を複数製造し、これらを突固めによる土の締固め試験(以下、単に締固め試験とも称する)に供して、例えば、
図1に示すようなグラフを作成し、これに基づいて、最適な含水比w(%)を取得する。そして、この取得した最適な含水比にて、実際に、粉体或いは微粒子状物質とセメントや他の添加材を混合して人工地盤材料を製造している。
【0027】
しかし、実際の現場で得られる粉体或いは微粒子状物質等の原料の性状(例えば、組成、粒径、湿気など)は日毎に、或いはロット毎に相違する(バラツキがある)ため、上記のような最適な含水比にて製造したとしても、一定の品質で人工地盤材料を製造することが難しい、といった実情があった。
【0028】
このため、本発明者等は、種々の実験、研究を行い、以下のような、適正な添加水量を決定する方法を知得した。
具体的には、種々の実験、研究を行った結果、粉体或いは微粒子状物質等の原料の性状や組成にバラツキがあって平均より乾燥している場合には、実際には最適含水比に対してマイナス側の含水比で製造されることになるが、かかる場合には、水分不足で、実際に最適含水比で製造できた場合に比べて硬度が低下する傾向となると共に、硬化するまでに粉塵が発生し易くなる。
【0029】
これに対して、粉体或いは微粒子状物質等の原料の性状や組成にバラツキがあって平均より水分を多く含んでいる場合には、実際には最適含水比に対してプラス側の含水比で製造されることになるが、かかる場合には、水分不足の場合と同様に、実際に最適含水比で製造した場合に比べて硬度が低下するものの、硬化するまでの粉塵が発生し難い。
【0030】
このような知見に基づいて、本実施の形態では、以下のようにして適正な添加水量(製造含水比1或いは製造含水比2)を決定する。なお、「製造含水比1」は「最適含水比を基準に求める製造時の含水比」であり、「製造含水比2」は「最大含水比を基準に求める製造時の含水比」である。
【実施例1】
【0031】
(1)ケース1
従来同様の方法で、水以外の材料(粉体或いは微粒子状物質等の原料、セメントや他の添加材)を混合し、添加水量(含水比)をパラメーターとして、例えばJISに定められた土の締固め試験(例えば、JIS A 1210など)を実施して、
図1のようなグラフを作成して、最適含水比(%)を取得する。
【0032】
本実施の形態では、この得られた最適含水比(%)をプラス側(+0.1〜5%、好ましくはプラス0.5〜5%程度)に設定して、製造含水比1(=最適含水比+0.1〜5%の間、或いは、最適含水比<製造含水比1≦(最適含水比+5%))とし、この製造含水比1にて、実際に、粉体或いは微粒子状物質等の原料とセメントや他の添加材を混合して人工地盤材料を製造する。
【0033】
このように、製造含水比1を、最適含水比に対してプラス側(+0.1〜5%)に設定するのは、セメントの硬化のために水分を多めに設定するのは、粉塵の発生がなく硬さもある良い人工地盤材料を得ることができることを、種々の実験により確認できたからである。
【0034】
より詳しくは、最適含水比に対してプラス側(+0.1〜5%)に設定すれば、粉体或いは微粒子状物質等の原料の性状にバラツキがあって平均より乾燥している場合であっても、水分不足により硬度が低下したり硬化するまでに粉塵が発生し易くなるといったおそれを回避することができる。
【0035】
この一方で、最適含水比に対してプラス側(+0.1〜5%)に設定しておけば、粉体或いは微粒子状物質等の原料の性状にバラツキがあって平均より水分を多く含んでいる場合に、最適含水比に比べて硬度が低下する傾向にあるが、その低下傾向がマイナス側(水分不足)の場合と同等であるとしても、硬化するまでの粉塵の発生量を確実に抑制することができる。
【0036】
以上の知見より、本実施例1では、製造含水比1を、最適含水比に対してプラス側(+0.1〜5%、好ましくは+0.5〜5%程度)に設定する。
【0037】
このように、本実施例1によれば、製造含水比1を、最適含水比に対してプラス側(+0.1〜5%、好ましくは+0.5〜5%程度)(或いは、最適含水比<製造含水比1≦(最適含水比+5%))に設定するようにしたので、粉体或いは微粒子状物質等の原料の性状にバラツキがあって平均より水分が少ない場合や水分を多く含んでいる場合であっても、確実に粉塵の発生を抑制しながら、硬化後の硬度低下も小さく抑えることができる。
【0038】
すなわち、本実施例1によれば、例えば灰、石炭灰、粉塵、焼却灰、フライアッシュ、ダスト、砕石粉、切削・研磨粉など(これらと土の混合物なども含む)の粉体或いは微粒子状物質を原料として、これとセメントなどの固化材や重金属等の溶出抑制材等の添加材を混合して人工地盤材料を製造する人工地盤材料の製造方法において、粉体或いは微粒子状物質の原料の性状にバラツキがあっても、良好な品質の人工地盤材料を得ることができる。
【実施例2】
【0039】
(2)ケース2
実施例1(ケース1)と同様、従来同様の方法で、例えばJISに定められた土の締固め試験(例えば、JIS A 1210など)を実施して、
図1のようなグラフを作成する。
【0040】
そして、本実施例2では、
図1のようなグラフから材料が軟弱化する最大含水比を取得し、この最大含水比から0〜2%をマイナスして製造含水比2((最大含水比−2%)≦製造含水比2<最大含水比)を設定し、この製造含水比2にて、実際に、粉体或いは微粒子状物質等の原料とセメントや他の添加材を混合して人工地盤材料を製造する。
【0041】
このように、最大含水比から0〜2%をマイナスして製造含水比2(=最大含水比−0〜2%)に設定すれば、粉体或いは微粒子状物質等の原料の性状にバラツキがあって平均より乾燥している場合であっても、水分不足により硬度が低下したり硬化するまでに粉塵が発生し易くなるといったおそれを確実に回避することができる。
【0042】
この一方で、最大含水比から0〜2%をマイナスして製造含水比2(=最大含水比−0〜2%)に設定しておけば、粉体或いは微粒子状物質等の原料の性状にバラツキがあって平均より水分を多く含んでいる場合でも、軟弱化することを確実に回避することができると共に硬化するまでの粉塵の発生量を抑制することができる。
【0043】
以上の知見より、本実施例2では、最大含水比から0〜2%をマイナスして設定される製造含水比2(=最大含水比−0〜2%)((最大含水比−2%)≦製造含水比2<最大含水比)にて、粉体或いは微粒子状物質等の原料とセメントや他の添加材を混合して人工地盤材料を製造する。
【0044】
このように、本実施例2によれば、製造時の含水比を、最大含水比から0〜2%をマイナスして設定される製造含水比2(=最大含水比−0〜2%、或いは(最大含水比−2%)≦製造含水比2<最大含水比)に設定するようにしたので、粉体或いは微粒子状物質等の原料の性状にバラツキがあって平均より水分が少ない場合や水分を多く含んでいる場合であっても、確実に粉塵の発生を抑制しながら、硬化後の硬度低下も小さく抑えることができる。
【0045】
すなわち、本実施例2によれば、例えば灰、石炭灰、粉塵などの粉体或いは微粒子状物質を原料として、これとセメントなどの固化材や重金属等の溶出抑制材等の添加材を混合して人工地盤材料を製造する人工地盤材料の製造方法において、粉体或いは微粒子状物質の原料の性状にバラツキがあっても、良好な品質の人工地盤材料を得ることができる。
【実施例3】
【0046】
(3)ケース3
上述した実施例1、実施例2では、例えばJISに定められている突固めによる土の締固め試験(JIS A 1210)を実施して、
図1に示すようなグラフを作成するが、当該試験に供すべき試料のサイズ(φ10cm、高さ12.73cm)は大きく重いため、現場において作業者が簡便に扱える手法ではなく、特に、現場において複数の試料を採取して含水比を変えて何回も試料を採取してそれを重しで何度も突き固める(2.5kgのランマー(Rammer)を30cmの高さから1層当たり25回手動で落下させる作業を3層に対して行う)といった作業は作業者にとって大きな負担となっていた。
【0047】
このため、本発明者等は、種々の実験を繰り返した結果、作業者が簡単に扱うことができる小さなサイズのモールド(型:円筒状の容器)を用いて、直径φ5cm(例えばφ3〜7cmであっても良い)、高さ10cm(例えば、3〜15cmであっても良い)程度の円柱状の試料を作成し(
図3参照)、かかる小さく軽量なサイズの試料及び小さく軽量なランマー(締固め用重し:
図3参照)を用いて、上記実施例1(ケース1)や実施例2(ケース2)の方法により、最適な製造時における含水比を求めることができるかの確認実験を行った。
【0048】
その結果、砕石などを含まなければ、石炭灰などの粒子径(サイズ)がある程度揃った粉体或いは微粒子状物質等の原料とセメントや他の添加材を混合する場合には、
図2に示すように、JISに定められている突固めによる締固め試験(JIS A 1210)を実施して得られる
図1のグラフと似た傾向の試験結果が得られることを確認できた。
【0049】
なお、
図2は、石炭灰Aにセメント(C)を10%を混ぜた場合、石炭灰Aにセメント(C)を20%を混ぜた場合、石炭灰Bにセメント(C)を10%を混ぜた場合、石炭灰Bにセメント(C)を20%を混ぜた場合を示している。
【0050】
ここで、原料としての石炭灰A(燃焼炉から排出されたままの灰)は、89%がシルト・粘土分であり、残りは砂分で礫を含んでいない。
石炭灰B(燃焼炉から排出された後、加水され、長時間保管された灰)は、自硬性のためか固結したものがあり、22.9%は礫分、シルト・粘土分は42.8%である。なお、固結した石炭灰はそれほど強度は大きくなく、締固め試験時に潰れるため、回転式破砕混合機を使うことで最大粒径は5mm程度に破砕され、本試験方法が適用できる。
石炭灰A、石炭灰Bの粒径加算曲線を、
図5に示しておく(
図5において、6号砕石は4.75〜19mmの礫である)。
【0051】
以上より、実施例3では、試料に砕石などのサイズの大きい添加材を含まないことを条件に、作業者が簡単に扱うことができる小さなサイズのモールド(型:円筒状の容器)を用いて、直径φ5cm(例えばφ3〜7cmであっても良い)、高さ10cm(例えば、3〜15cmであっても良い)程度の円柱状の試料を作成し、上記実施例1(ケース1)や実施例2(ケース2)の方法により、最適な製造時における含水比(実施例1における製造含水比1、或いは実施例2における製造含水比2)を求めるようにする。
【0052】
従って、実施例3によれば、小さく軽量なサイズの試料及び小さく軽量な重りを用いて、上記実施例1(ケース1)や実施例2(ケース2)の方法により、最適な製造時における含水比を求めることができるので、現場において作業者が簡便に扱えることができ、作業者の負担を軽減することができる。
【0053】
このように、実施例3によれば、例えば灰、石炭灰、粉塵などの粉体或いは微粒子状物質を原料として、これとセメントなどの固化材や重金属等の溶出抑制材等の添加材を混合して人工地盤材料を製造する人工地盤材料の製造方法において、粉体或いは微粒子状物質の原料の性状にバラツキがあっても、作業者の負担を軽減しながら、良好な品質の人工地盤材料を得ることに貢献可能である。
【実施例4】
【0054】
上記実施例1(ケース1)〜実施例3(ケース3)は、所定質量の重りを所定高さから所定回数落下させることによる突固めエネルギーを標準エネルギーEc≒550kJ/m
3として求めるものであり、同じエネルギーを与えることができるものであれば、上述したように実施例3(ケース3)の方法により試料を少なくして重りを小さくすることで作業者への負担を軽減することができる一方、実施例4では、バイブレータによる加振により締固める方法を採用する。
【0055】
これにより、作業者への負担を軽減しつつ安定した混合を電動式バイブレータにより自動的に行うことができるためバラツキの少ない締固め試験を行うことができるなどの利点があり、より高品質な人工地盤材料を得ることに貢献可能である。
【0056】
なお、フローテーブル使い、落下振動を与えて、試料の状態を観察する方法を採用することもできる。
すなわち、例えば、
図4に示すような公知のモルタルフロー試験機を用い、テーブル上の半円錐状容器に試料を入れてから容器を取り除き、ハンドルを回してテーブルを上下動させる(上がってから落下させる)動作を既定回数行い、試料がテーブル上においてどこまで広がるかを観察したり、何回の上下動動作で水が滲むかを観察するなどの方法を採用することができる。
【0057】
これによっても、作業者への負担を軽減しつつバラツキの少ない締固め試験を行うことができるなどの利点があり、より高品質な人工地盤材料を得ることに貢献可能である。
【実施例5】
【0058】
ところで、粉体或いは微粒子状物質である原料の種類を変えずに添加材(セメントなどの固化材や重金属等の溶出抑制材等)の量を変える場合、それぞれの配合について最適な含水比を取得するために、その都度、突固めによる土の締固め試験を何度も実施する必要があるが、本発明者等は、以下の方法によって、それぞれの配合について最適な含水比を求めることが可能であることを確認した。
【0059】
粉体或いは微粒子状物質である原料について単独で(他の添加材と混合せず)、上記実施例1(ケース1)または実施例2(ケース2)または実施例3(ケース3)(または実施例4(ケース4))の方法にて、締固め試験を行って、最適含水比または最大含水比を取得し、製造時に適した含水比(製造含水比1或いは製造含水比2)を取得する。
【0060】
添加材(セメントなどの固化材や重金属等の溶出抑制材等)についてもそれぞれ単独で、同様の方法にて、締固め試験を行って、最適含水比または最大含水比を取得し、製造含水比1或いは製造含水比2を取得する。
【0061】
そして、実施例5では、石炭灰等の粉体或いは微粒子状物質である原料、添加材のそれぞれの配合量と、求めた含水比(製造含水比1)(或いは製造含水比2)から、以下の計算式(式(1))によって、原料と添加材とを混合して混合材料(人工地盤材料)を製造する際の製造含水比1における添加水量X(或いは製造含水比2における添加水量X’)を取得する。
【0062】
X(or X’)=(100×wF(or wF’)+A×wa(or wa’)+B×wb(or wb’)+C×wc(or wc’)+・・・)/(100+A+B+C+・・・) …式(1)
ここで、
wF(or wF’):原料の含水比(製造含水比1)(或いは製造含水比2)
wa(or wa’):添加材A(例えばセメント)の含水比(製造含水比1)(或いは製造含水比2)
wb(or wb’):添加材B(例えば重金属等1の溶出抑制材)の含水比(製造含水比1)(或いは製造含水比2)
wc(or wc’):添加材C(例えば重金属等2の溶出抑制材)の含水比(製造含水比1)(或いは製造含水比2)
・
・
・
A:原料に対する添加材の添加率(%)
B:原料に対する添加材の添加率(%)
C:原料に対する添加材の添加率(%)
・
・
・
【0063】
このように、実施例5によれば、添加材の種類が多くなっても、それぞれ単独に最適含水比延いては製造含水比1(或いは最大含水比延いては製造含水比2)を求め(予め求めておいて)(なお、セメントや石灰などの製品は性状の変動が小さいので、毎回測定する必要はない)、上記の式(1)により、添加材の種類や添加量に応じて製造含水比1における添加水量X(或いは製造含水比2における添加水量X’)を簡単に求めることができるので、添加材の種類が多くなっても、最適な含水比(製造含水比1)(或いは製造含水比2)にて混合材料(人工地盤材料)を製造することができる。
【0064】
すなわち、実施例5によれば、例えば灰、石炭灰、粉塵などの粉体或いは微粒子状物質を原料として、これとセメントなどの固化材や重金属等の溶出抑制材等の添加材を混合して人工地盤材料を製造する人工地盤材料の製造方法において、粉体或いは微粒子状物質の原料の性状にバラツキがあっても、更に、添加材の種類や添加量を変更したい場合でも、作業者の負担を軽減しながら、簡単な方法で、良好な品質の人工地盤材料を得ることができる。
【実施例6】
【0065】
<重金属等の溶出抑制のための添加材の配合量について>
ここで、原料である粉体或いは微粒子状物質の種類によっては六価クロムやほう素などの重金属等を含んでいる場合があり、これを人工地盤材料の原料として利用した場合に、土壌環境基準を超えて溶出するおそれがあるため、製造する人工地盤材料(混合材料)の利用場所・利用方法によっては、土壌環境基準を満たすまで不溶化することが必要である。
【0066】
セメントなどの固化材や溶出抑制材は、重金属等の溶出を低減することが知られているが、必要な添加量は原料の種類・性状によって異なり、一律に添加量を決めることはできない。
【0067】
そのため、従来は、対象となる原料に対して、配合試験を実施し、基準を満たす添加材の配合率を決定する方法が取られている。具体的には、セメントなどの固化材や重金属等の溶出抑制材等の添加材配合率を変えて添加材等を配合したものを準備して溶出試験を行って対象有害物質の溶出量を測定し、基準を満たす添加材の配合率を決定する。このとき、添加材配合率が多いほど溶出量は少なくなるため、溶出試験で基準を満たしていなくても概略の必要添加率を求めることは可能である。
【0068】
しかしながら、配合試験には添加材の反応時間や混合材料(原料と添加材の混合材料)の分析(試験室等への搬入も必要)のために時間が長くかかるため、その間、原料を貯蔵する施設を別途設ける必要があったり、同じ組成(重金属等の含有量)・性状(粒度や結晶状態)の原料がある程度の期間(例えば3週間)以上連続して生産されるような場合でないと適用することが難しかった。
【0069】
すなわち、原料となる粉体或いは微粒子状物質の組成(重金属等の含有量)・性状(粒度や結晶状態)にバラツキ(違い)があると、従来の配合試験により決定した添加材の配合率では、良好に重金属等の溶出を抑制できない、或いは必要以上に添加材を消費するおそれがあるといった問題がある。
【0070】
本発明者等は、種々の検討・実験等を繰り返し、その結果、原料の性状(重金属等の溶出量)や組成(重金属等の含有量)に変化があっても、簡単かつ正確に、溶出抑制材の添加量(添加率)を決定することができる方法に関して、以下のような知見を得た。
【0071】
実施例6では、重金属等の含有量の異なる原料に添加材を一定量(y%)混合して複数種の人工地盤材料を試験的製造し、反応させた後に溶出試験を行う。
【0072】
ここで、溶出試験の試験方法自体は、例えば、平成3年環境庁公示第46号「土壌の汚染に係る環境基準について」(改正:平成22年環境省告示37号)に示された別表および付表に従って行うことができる。
【0073】
より詳細には、
(1)試料の作成
採取した土壌を風乾し、中小礫、木片等を除き、土塊、団粒を粗砕した後、非金属製の2mmの目のふるいを通過させて得た土壌を十分混合する。
(2)試料液の調整
試料(単位g)と溶媒(純水に塩酸を加え、水素イオン濃度指数が5.8以上6.3以下となるようにしたもの)(単位ml)とを重量体積比10%の割合で混合し、かつ、その混合液が500ml以上となるようにして作成する。
(3)溶出
調整した試料液を常温(おおむね20°C)常圧(おおむね1気圧)で振とう機(あらかじめ振とう回数を毎分約200回に、振とう幅を4cm以上5cm以下に調整したもの)を用いて、6時間連続して振とうする。
(4)検液の作成
(1)から(3)の操作を行って得られた試料液を10分から30分程度静置後、毎分約3000回転で20分間遠心分離した後の上澄み液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過してろ液を取り、定量に必要な量を正確に計り取って、これを検液とする。
【0074】
このような溶出試験を、重金属等の含有量の異なる原料(本例では石炭灰)のそれぞれに対して、添加材(溶出抑制材)を一定比率(y%)で混合して得られる複数種の試験的な人工地盤材料に対して行い、それらにより得られた結果の一例を、
図6、
図7に示す。
図6、
図7では、添加材の添加率(混合率)y%の一例として、セメント10%の場合、セメント15%の場合、セメント20%の場合の3つの例を示しているが、これに限定されるものではない。
【0075】
図6、
図7は、横軸を原料(本例では石炭灰)の特性値(例えば、重金属等の溶出量や含有量)とし、縦軸を混合材料(人工地盤材料)からの重金属等の有害物質の溶出量(測定値)として描いている。このとき、選定する原料(本例では石炭灰)の特性値としては、相関係数が高くなる項目を選択するのが良い。
【0076】
そして、同一添加材添加率(或いは添加量)(
図6、
図7ではセメント10%、15%、20%)毎に前記測定値の相対値が大きい(相対的溶出量が多い)2点を結ぶ直線を描き(なお、前述のとおり相関式の切片に任意倍率の標準偏差を加えた線、または包絡線を引くこともできる)、この直線が溶出基準値になるときの(直線が溶出基準値を通る水平線と交わるときの)原料の特性値(石炭灰の特性値、例えば重金属等の溶出量や含有量)(横軸の値)Z(Z‘、Z“)を求める。なお、Zはセメント10%に対応し、Z’はセメント15%に対応し、Z”はセメント20%に対応している。
【0077】
そして、人工地盤材料の原料とされる任意の原料(本例では石炭灰)の特性値(単体試験により簡単に取得できる値、例えば重金属等の溶出量や含有量)が、上述にて求めた値Z(Z‘、Z“)以下となるように、添加材の添加量を定めれば、その添加量にて添加材を混合した人工地盤材料の溶出量は高い確率で土壌環境基準(溶出基準)を満たす。
【0078】
すなわち、
図6、
図7から解るように、添加材の量を変えて上述した溶出試験を実施することで、重金属等の含有量の異なる任意の原料に対して、土壌環境基準(溶出基準)を満たすために必要な添加材の量を定めることができる。
【0079】
なお、原料の重金属等の有害物質の含有量が同じでも、原料からの溶出量が異なる場合があることから、「横軸を原料の重金属等の有害物質の含有量(特性値の一例)とし、縦軸を人工地盤材料からのその物質の溶出量(測定値の一例)とした図」(
図6、
図7において、左側の図)と、「横軸を原料からの重金属等の有害物質の溶出量とし、縦軸を人工地盤材料からのその物質の溶出量とした図」(
図6、
図7において、右側の図)と、を作成しておいて、土壌環境基準値に対して厳しい側の図(土壌環境基準値を満たすために多くの添加材量が必要となる側の図)により、必要な添加材の量を定めるようにすることが好ましい。
【0080】
なお、石炭灰の特性値としては、法律や政令、規則、告示、通達、条例、JIS、学術協会等の試験方法による結果を用いることができる。
【0081】
また、pH、セレンの溶出量、セレンの含有量、六価クロムの溶出量、六価クロムの含有量、砒素の溶出量、砒素の含有量、ほう素の溶出量、ほう素の含有量、カルシウム含有率、土粒子密度においては、石炭灰混合材料の製造現場において短時間で分析可能な簡易分析法による結果を用いることができる。
【0082】
また、セレンの溶出量、セレンの含有量の簡易分析として、イオンクロマト法やボルタンメトリー法を用いることができる。なお、ボルタンメトリー法とは、電気分解の際の電圧と電流の関係を記録し,その解析から物質の定性および定量分析や電極反応の研究などを行う手法の総称であり、土壌中に含まれる重金属等の簡易分析に利用されている分析方法である。
【0083】
また、上述した環境省等が定める溶出試験においては、試料を塩酸を含む溶媒に浸けることとなっているが、ボルタンメトリー法によるセレンの含有量の簡易分析においては、塩化物が試料液に含まれると正確な測定ができなくなることから、塩酸の代わりに、硝酸又は硫酸を溶媒として利用し、これにより簡易的な溶出試験であっても精度良くセレンの含有量を測定することが可能となる。
【0084】
人工地盤材料から溶出するセレンの評価においては、pH、カルシウム(Ca)含有率を原料(例えば石炭灰)の特性値とすることができる。
図8に示すように、横軸を原料(例えば石炭灰)の特性値(例えば、原料のCa含有率、pH)とし、縦軸に混合材料(人工地盤材料)からのセレンの溶出量として描くと煩雑なセレンの溶出量測定や含有量測定を行わなくてもセレンに関して土壌環境基準を満たすために必要な添加材の量を定めることができる。
【0085】
すなわち、上述したように、実施例6に係る人工地盤材料の製造方法は、粉体からなる原料と、原料から溶出する溶出物質の溶出を抑制する添加材と、水と、を混合して製造する人工地盤材料の製造方法において、
原料の前記溶出物質の溶出量に関連する特性値が異なるそれぞれの原料に対して、一定比率(上記y%)で添加材を混合させて人工地盤材料を複数種試験的に製造し、
製造された複数種の試験的な人工地盤材料からの前記溶出物質の溶出量に関連する値を測定値として測定し、
前記特性値と、前記測定値と、の散布図に基づいて(例えば、得られる相関式の切片に任意倍率の標準偏差を加えた線、または包絡線または前記特性値に対して前記測定値の相対値が大きい(相対的溶出量が多い)2点を結ぶ直線に基づいて)、前記溶出物質が溶出基準値以下となるように添加材の添加量を決定することを特徴とする。
【0086】
このような構成の実施例6に係る方法によれば、重金属等の有害物質の含有量の異なる任意の原料に対して、土壌環境基準(溶出基準)を満たすために必要な添加材の量を簡単かつ正確に決定することができる。
【0087】
すなわち、実施例6によれば、原料となる粉体或いは微粒子状物質の性状(重金属等の溶出量)や組成(重金属等の含有量)にバラツキ(違い)があっても、簡単かつ確実に、土壌環境基準(溶出基準)を満たすために必要な添加材の添加量を決定することができるため、確実に重金属等の溶出を抑制することができる。また、必要以上に添加材を消費することを抑制することができ経済的な利益を享受することができる。
【0088】
実施例6によれば、例えば灰、石炭灰、粉塵、焼却灰、フライアッシュ、ダスト、砕石粉、切削・研磨粉など(これらと土の混合物なども含む)の粉体或いは微粒子状物質を原料として、これとセメントなどの固化材や重金属等の溶出抑制材等の添加材を混合して人工地盤材料を製造する人工地盤材料の製造方法において、粉体或いは微粒子状物質の原料の性状にバラツキがあっても、良好な品質の人工地盤材料を得ることができる人工地盤材料の製造方法及び人工地盤材料の製造における添加材の添加量の決定方法を提供することができる。
【0089】
以上で説明した本発明に係る実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。