特許第6568785号(P6568785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6568785廃棄物処分場、廃棄物処分場の遮水シートの破損検知システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568785
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】廃棄物処分場、廃棄物処分場の遮水シートの破損検知システム
(51)【国際特許分類】
   B09B 1/00 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   B09B1/00 FZAB
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-237505(P2015-237505)
(22)【出願日】2015年12月4日
(65)【公開番号】特開2017-100107(P2017-100107A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108604
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 義人
(72)【発明者】
【氏名】横堀 一雄
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−099369(JP,A)
【文献】 特開2000−065669(JP,A)
【文献】 特開2000−202392(JP,A)
【文献】 特開平10−099810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B1/00、
E02B3/04−3/14、
G01M3/00−3/40、
G01N27/00−27/10、
G01N27/14−27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物が投棄される凹面を有する廃棄物処分場の、前記凹面を前記凹面に近い側から前記凹面の縁の外側まで二重に覆う、共に遮水性と絶縁性とを有する材料で形成された下遮水シートと、上遮水シートの破損部位を検知するための、遮水シートの破損検知システムであって、
前記上遮水シートの内側であって前記凹面の内部に配される加圧電極と、
前記下遮水シートの外側であって地中に配されるものであり、アース電極として機能する基準電極と、
前記加圧電極と前記基準電極との間に定電圧をかける定電圧電源と、
前記凹面の廃棄物が投棄されることが予定された部分に対応する前記上遮水シートと前記下遮水シートとの間に挟まれた空間に、平面視で分散させた状態で多数配された検知センサと、
前記検知センサが存在する位置のそれぞれで測定された電位を検知するとともに、前記電位のピーク位置を検知する検知装置と、
廃棄物が投棄されることが予定されていない前記凹面の縁に相当する部分に対応する前記上遮水シートと前記下遮水シートとの間の空間に配される前記基準電極とアースされた状態とされている周囲電極と、
を備えている、
遮水シートの破損検知システム。
【請求項2】
前記周囲電極は、廃棄物が投棄されることが予定されていない前記凹面の縁を連続して囲むようになっている一連の電極である、
請求項1記載の遮水シートの破損検知システム。
【請求項3】
前記周囲電極は、所定の間隔を空けて廃棄物が投棄されることが予定されていない前記凹面の縁を連続して囲むように配された、そのそれぞれが前記基準電極とアースされた状態となっている複数の電極である、
請求項1記載の遮水シートの破損検知システム。
【請求項4】
前記周囲電極は、線状又は面状である、
請求項2又は3記載の遮水シートの破損検知システム。
【請求項5】
前記周囲電極は、前記基準電極と導線で接続されている、
請求項1記載の遮水シートの破損検知システム。
【請求項6】
前記上遮水シートの縁部と前記下遮水シートの縁部はその全長にわたって袋状に閉じられている、
請求項1記載の遮水シートの破損検知システム。
【請求項7】
前記下遮水シートの外側であって地中に配される第2加圧電極を備えており、
前記定電圧電源は、前記加圧電極と前記基準電極との間、又は前記第2加圧電極と前記基準電極との間のいずれに定電圧をかけるかを、任意に選択できるようになっている、
請求項1記載の遮水シートの破損検知システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の破損検知システムを備えた廃棄物処分場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処分場における遮水シートの破損を検知するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処分場は地表を適度な深さに掘り下げて形成された凹面を有するのが一般的である。廃棄物処分場では、その凹面の底から順に廃棄物を埋め立てるようになっている。
このような廃棄物処分場においては、廃棄物から生じた汚水が周囲の地中に拡散するのを防止するため、凹面の底面及び法面の全体に遮水材を施すのが通常である。遮水材は遮水性能を有するシート(本願ではこれを遮水シートと称する。)であるのが一般的であり、通常、電気絶縁性の高い合成樹脂や合成ゴムを素材として構成される。
【0003】
廃棄物処分場の凹面を覆う遮水シートは、廃棄物処分場の建設工事の際や廃棄物の埋め立ての際に損傷する可能性があり、その他廃棄物処分場に侵入した鳥獣によっても損傷を受ける可能性もある。遮水シートに対して損傷が生じた場合、それが僅かな損傷であってもそこから廃棄物処分場内の汚水が漏れ出してしまう。汚水の漏れ出しの可能性を低減させるために、遮水シートを上遮水シートと下遮水シートの2層構造とすることも行われおり、現在ではそれが主流になっているが、これによっても汚水の漏れ出しを完全に防止できるわけではない。
したがって、遮水シートに破損が生じたときにはその補修を迅速に行うことが必要となる。そして、それを可能とするためには、遮水シートに破損が生じた場合に、それを正確に検出するための遮水シートの破損検出技術が不可欠である。
【0004】
遮水シート、特には上遮水シートと下遮水シートからなる二重の遮水シートの破損を検知するための技術として、以下のような電気探査の技術が知られている。
電気探査の技術においては共通して、上遮水シートの内側に相当する部分(本願では、凹面の空間的な中心寄りの位置を内側、凹面の外側の地中に相当する位置を外側と称する。)に加圧電極を、そして下遮水シートの外側の地中に相当する部分であって、例えば、平面視した場合における凹面の縁部よりも外に基準電極を配し、そして加圧電極と基準電極との間に定電圧をかける。加圧電極と基準電極とはいずれが高電位でも構わない。
他方、この技術においては上遮水シートと下遮水シートとに挟まれた空間に、例えば、平面視で碁盤の目状に多数の検知センサを配する。検知センサはそれらが存在する位置の電位を測定するためのセンサである。
上遮水シートと下遮水シートの間にはまた、多くの場合、検知センサ間が適度な電気的な抵抗を介して通電するようにするための、適度な電気抵抗値を有する導電性シートが挟み込まれている。この導電性シートにより、後述の電位のピークから周囲の検知センサへの電圧変化がなだらかになり、電位等高線を見た際のピーク位置を確認しやすくしている。
前述のように加圧電極と基準電極との間には定電圧がかけられる。それによって加圧電極と基準電極との間には、上遮水シートの内側から、下遮水シートの外側にまで及ぶ電界が生じる。かかる電界は、検知センサにとっていわば基準となる電界を形成する。
そのような電界が存在するときに、上遮水シートに破損が生じると、上遮水シートの破損が生じた部分は破損が生じていないその周囲の部分に比して、絶縁性が小さくなる。したがって、上遮水シートに破損が生じた場合には、破損が生じた部分の近くにある検知センサの周辺には、より多くの電流が流れる状態が生じる。したがって、各検知センサで電位を測定することにより、上遮水シートのどこに破損が生じたのかを検知することができる。具体的には、各検知センサによって測定された各検知センサが存在する位置の電位に基づいて等電位線を求めることにより、電位のピークにある遮水シートの破損部位を決定することが可能となる。導電性シートがあれば、この等電位線が滑らかなものとなり、等電位線が示す電位のピークの位置は上遮水シートの破損位置を正確に反映したものとなる。
同様の理屈で、この遮水シートの破損検知システムは、下遮水シートにおける破損部位をも検知することができる。
なお、下遮水シートの破損を検知する場合には、破損検知システムにおける上述の加圧電極は、下遮水シートの外側の地中に相当する部分であって、例えば下遮水シートの真下に配される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以上のような測定原理で遮水シートの破損部位を測定する遮水シートの破損検知システムにも改良すべき点がある。以下、上遮水シートの破損を検知する場合を例に取り説明する。
まず、以上のような測定原理には根本的な課題がある。上述の遮水シートの破損検知システムでは、検知センサは、上遮水シートと下遮水シートとに挟まれた空間に配置される。ここで、上遮水シートによる上遮水シートの内側と外側の絶縁と、下遮水シートによる下遮水シートの内側と外側の絶縁が、それぞれ完璧なものであると仮定する。上遮水シートと下遮水シートはともに電気絶縁性の高い合成樹脂や合成ゴムによって構成されているので、理想的には上述の仮定は満足されるはずである。
更に、上述の仮定が満足されている上で、上遮水シートのどこかに破損が生じたと仮定する。この場合、下遮水シートの内側と外側との間の絶縁が完璧なのであるから、下遮水シートの内側から外側に電流が抜けるための電流の経路、言い換えれば上遮水シートと下遮水シートとに挟まれた空間から基準電極に至るまでの電流の経路が存在しないため、上遮水シートの内側に位置する加圧電極からの(或いは加圧電極への)電流は、上遮水シートと下遮水シートとに挟まれた空間には入り込んで来ない(或いは出て行かない)。これでは、上遮水シートに破損が生じたとしても、上遮水シートと下遮水シートとの間に、上遮水シートの破損に基づく電位の勾配が生じないから、各検知センサで電位を測定したとしても上遮水シートの破損部位を特定することができない。
もっとも、現実の廃棄物処分場では、このようなことは生じない。現実の廃棄物処分場では、上遮水シートと下遮水シートとをともに貫く、凹部の中に溜まった雨水を外部に排出するための排水口、マンホール等が、多くの場合複数存在するので、排水口の周辺等における上遮水シートと下遮水シートとに、絶縁が不完全な部分が必ず存在するからである。
【0006】
このように、従来の廃棄物処分場では、上遮水シートと下遮水シートとに偶然に出来る絶縁が不完全な部分を、加圧電極と基準電極との間の電流の経路として利用するということが行われている。
そのような、偶然に生じる電流の経路を加圧電極と基準電極との間で流れる電流の存在により、上遮水シートと下遮水シートとの一方に破損が生じた場合において、上遮水シートと下遮水シートとの間に検知センサによって測定すべき電位の勾配が生じる。
しかしながら、上遮水シートと下遮水シートに偶然に生じた絶縁が不完全な部分は、電流の経路との関連では、上遮水シートと下遮水シートに生じた破損と同様の性質を持つものであるが、絶縁が不完全な部分は上遮水シートと下遮水シートに偏在するものであるから、検知センサにとっていわば基準となる電界にはそもそも不均一な勾配があるのが通常である。一般に、絶縁性が不完全な部分が遮水シートに存在すると、加圧電極を+基準電極を−として両者の間に電圧を印加した場合、絶縁性が不完全な部分に近いところ程、電位は低くなるから、これが電位の測定誤差に繋がる。つまり、偶然に生じる電流の経路を利用する上記方法に頼る限り、加圧電極と基準電極との間に作られる、検知センサにとってのいわば基準となる電界は一様なものとなるように制御することが難しく、またその電界がどのような状態となっているか知ることも難しい。
したがって、そのような状態で検知センサによって求めた電位のピークには誤差が生じていることが多く、且つその誤差を抑制することも難しい。
かかる難点は、下遮水シートの破損を検知する場合にも妥当する。
【0007】
本願発明は、廃棄物処分場における遮水シートの破損を検知するための技術を、その損傷部位の検知の精度を向上させるよう改良することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本願発明者は以下の発明を提案する。
廃棄物が投棄される凹面を有する廃棄物処分場の、前記凹面を前記凹面に近い側から前記凹面の縁の外側まで二重に覆う、共に遮水性と絶縁性とを有する材料で形成された下遮水シートと、上遮水シートの破損部位を検知するための、遮水シートの破損検知システムである。この遮水シートの破損検知システムが設けられる廃棄物処分場は、従来のものとは変わらなくても良い。凹面は地面を掘下げて作られたものでも良いし、地面に盛り土をすることにより作られたものでも良いし、また、建物の内部に造られた凹面(密閉型処分場における凹面)でもよい。下遮水シートと上遮水シートはともに、その素材は従来のものと同様でよく、また、従来の廃棄物処分場でもそれらは凹面の外側にまで及ぶのが通例であったから、この点においても大差はない。
そしてこの遮水シートの破損検知システムは、前記上遮水シートの内側であって前記凹面の内部に配される加圧電極と、前記下遮水シートの外側であって地中に配されるものであり、アース電極として機能する基準電極と、前記加圧電極と前記基準電極との間に定電圧をかける定電圧電源と、前記凹面の廃棄物が投棄されることが予定された部分に対応する前記上遮水シートと前記下遮水シートとの間に挟まれた空間に、平面視で分散させた状態で多数配された検知センサと、前記検知センサが存在する位置のそれぞれで測定された電位を検知するとともに、前記電位のピーク位置を検知する検知装置と、を備えている。加圧電極、基準電極、定電圧電源、検知センサ、それに検知装置も、従来と同様のもので良い。
更に、この遮水シートの破損検知システムは、廃棄物が投棄されることが予定されていない前記凹面の縁に相当する部分に対応する前記上遮水シートと前記下遮水シートとの間の空間に配される前記基準電極とアースされた状態とされている周囲電極を備えている。
この周囲電極は、上遮水シートと下遮水シートに挟まれた空間と地中にある基準電極とを積極的に導通させるものである。つまり、この発明によれば、上遮水シートと下遮水シートとの間に加圧電極と基準電極とによって作られる、検知センサにとっていわば基準となる電界は、遮水シートの破損検知システムの管理者等が自由に決められる。しかも一般に周囲電極はその抵抗を、偶然に生じる上遮水シートと下遮水シートとにおける絶縁性の低い部分よりもより小さくすることができる。したがって、破損検知システムの管理者は、そのいわば基準となる電界を一様なものとすることが可能であり、また、より小さな抵抗を持つ周囲電極によって偶然に生じる上遮水シートと下遮水シートとにおける絶縁性の低い部分による影響を抑制することが可能である。これにより、この遮水シートの破損検知システムで検知される遮水シートの破損部位の精度を高くすることができる。
しかも、基準電極とアースされた状態とされている周囲電極を用いる本願発明の場合には、加圧電極と基準電極とにより作られる電界が存在する範囲が事実上加圧電極と周囲電極との間となるため、その電界外に存在する検知センサは上遮水シートと下遮水シートとの破損を検知できなくなる。つまり、多数配される検知センサの間や、検知センサの直ぐ近くに周囲電極を配すると、検知センサによる電位の検知が機能しなくなることもあり得る。しかしながら本願発明では、凹面の廃棄物が投棄されることが予定された部分に対応する上遮水シートと下遮水シートとの間に挟まれた空間に検知センサを、また、廃棄物が投棄されることが予定されていない凹面の縁に相当する部分に対応する上遮水シートと下遮水シートとの間の空間に周囲電極を、それぞれ配するようにすることで、平たく言えば、多数存在する検知センサの集まりの外側に周囲電極を配することにより、周囲電極が存在しても検知センサが確実に機能するようにしている。
なお、本願において周囲電極は、基準電極とアースされた状態とされている。周囲電極が基準電極とアースされた状態とは、周囲電極が基準電極と等電位であることを意味する。前記周囲電極は、前記基準電極と導線で接続されていても構わない。これは、周囲電極が基準電極とアースされた状態となっている場合の一例となる。
検知センサは、凹面の廃棄物が投棄されることが予定された部分に対応する上遮水シートと下遮水シートとの間に挟まれた空間の全体に配置されている必要はない。例えば、凹面の法面部分に検知センサを設けず、凹面の底面部分にのみ多数の検知センサを例えば碁盤の目状に配することが可能である。
【0009】
前記周囲電極は、廃棄物が投棄されることが予定されていない前記凹面の縁を連続して囲むようになっている一連の電極であってもよい。これによれば、検知センサが存在する部分の電界をより確実に一様なものとすることができる。
また、前記周囲電極は、所定の間隔を空けて廃棄物が投棄されることが予定されていない前記凹面の縁を連続して囲むように配された、そのそれぞれが前記基準電極とアースされた状態となっている複数の電極とすることも可能である。周囲電極を一連の電極とする場合にやや劣る可能性もあるが、これによっても、検知センサが存在する部分の電界をより確実に一様なものとすることができる。
本願発明における前記周囲電極は、線状又は面状とすることができる。線状の場合には周囲電極は導線であり、面状である場合には周囲電極は金属板、金属箔、導電性を有する材料で構成された導電シート等である。
【0010】
前記上遮水シートの縁部と前記下遮水シートの縁部はその全長にわたって袋状に閉じられていてもよい。
これにより、上遮水シートと下遮水シートに挟まれた空間と、それらの内部の空間及び外部の空間とを電気的に絶縁状態にできるようになるという効果を得られる。
また、本願発明の遮水シートの破損検知システムは、前記下遮水シートの外側であって地中に配される第2加圧電極を備えていても良い。この場合、前記定電圧電源は、前記加圧電極と前記基準電極との間、又は前記第2加圧電極と前記基準電極との間のいずれに定電圧をかけるかを、任意に選択できるようになっていてもよい。これにより、加圧電極と基準電極との間に定電圧をかけることで上遮水シートの破損箇所の検知を、第2加圧電極と基準電極との間に定電圧をかけることで、下遮水シートの破損箇所の検知を、それぞれ行えるようになる。
【0011】
本願発明者は、以上の遮水シートの破損検知システムを備えた廃棄物処分場をも本願発明の一態様として提案する。かかる廃棄物処分場により得られる効果は、以上説明した遮水シートの破損検知システムにより得られる効果と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本願発明の実施形態における廃棄物処分場の全体的な構成を示す側断面図。
図2図1に示した廃棄物処分場における周囲電極の構成の一例を説明するための平面図。
図3図1に示した廃棄物処分場における周囲電極の構成の他の例を説明するための平面図。
図4図1に示した廃棄物処分場において、上遮水シートに破損が生じた場合の電流の経路を示す図。
図5図1に示した廃棄物処分場において、下遮水シートに破損が生じた場合の電流の経路を示す図。
図6】試験例における試験の環境を説明するための図。
図7】試験例により得られた等電位線のマップ(電位等高線図)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0014】
図1に、この実施形態による廃棄物処分場を示す。この廃棄物処分場は、以下に説明するように、遮水シートの破損検知システムを備えている。
【0015】
廃棄物処分場は、凹面1を備えている。この実施形態における凹面は、地面を掘ることによって作られている。凹面1は、底面1Aとその外側を囲む斜面である法面1Bとを備えている。
廃棄物処分場は、また、遮水シート2を備えている。この実施形態における遮水シート2は、二重構造となっており、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとを備えている。下遮水シート2Bは、凹面1の全面を覆い、その全周が凹面1の縁部から外側に食み出している。上遮水シート2Aは、下遮水シート2Bの上側に配されており、平面視した場合に下遮水シート2Bにその大きさ、形状が対応するようになっている。
上遮水シート2Aと、下遮水シート2Bとはともに、従来の廃棄物処分場で用いられているものと同様のもので良い。この実施形態では、上遮水シート2Aと、下遮水シート2Bとはともに、遮水性を有する合成樹脂製のシート材であるが、合成ゴム製とすることも可能である。
これには限られないがこの実施形態による上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとは、その縁部が袋状に加工されている。これには限られないが、この実施形態における上遮水シート2Aと、下遮水シート2Bとは、それらの縁部の全周を互いに公知の手法である熱融着により接続することによって接続されることにより、袋状に加工された状態となっている。これにより、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bの間には、両者によって囲まれた閉空間が形成されるが、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとは、その閉空間が概ね気密になるようにされる。
【0016】
以上説明した廃棄物処分場は、上述したように遮水シート2の破損を検知するための遮水シートの破損検知システムを備えている。かかる検知システムは概ね、加圧電極3、基準電極4、定電圧電源5、検知センサ6、周囲電極7、及び検知装置8を含んで構成されている。また、これには限られないが、この検知システムは、第2加圧電極3A、及びリレー9を有している。
これらのうち、周囲電極7を除くものはいずれも、従来の検知システムにも存在したものであり、従来の検知システムに用いられていた公知又は周知のそれらを転用することが可能である。
【0017】
加圧電極3は、上遮水シート2Aの内側に配置される電極である。これには限られないが、この実施形態における加圧電極3は1つであるが、加圧電極3を複数とすることも可能である。加圧電極3が複数であるとき、それらの電位は同じにされる。加圧電極3は、検知システムの使用時には廃棄物処分場に廃棄された廃棄物Xに埋もれた状態となる。第2加圧電極3Aは、下遮水シート2Bの外側の地中に配される。第2加圧電極3Aは、平面視した場合における下遮水シート2Bの真下に配置される。第2加圧電極3Aはこの実施形態では1つとされるが、これが複数でも良いのは加圧電極3の場合と同様である。
基準電極4は、下遮水シート2Bの外側に配置され、地中にアースされる電極である。これには限られないが、この実施形態における基準電極4は、平面視した場合における凹面の縁部の外に位置するようにされる。これには限られないが、この実施形態における基準電極4は2つである。もっとも基準電極4を1つとすることも3つ以上とすることも可能である。基準電極4が複数である場合、それらの電位は同じにされる。
定電圧電源5は、加圧電極3と基準電極4との間に、或いは第2加圧電極3Aと基準電極4との間に、選択的に定電圧をかけるための電源である。かかる選択は、追って詳述するリレー9により実現される。
定電圧電源5の+側の端子は、導線である第1導線5Aの一端と接続されている。第1導線5Aの他端は、リレー9と接続されている。リレー9は、公知又は周知のスイッチであり、第1導線5Aの接続先を切り替えるものである。第1導線5Aと接続される端子は、リレー9中に2つ含まれている。それら端子の一方に、導線である第2導線5Bの一端が接続されている。第2導線5Bの他端は、加圧電極3に接続されている。リレー9中に含まれる端子の他方には、導線である第3導線5Cの一端が接続されている。第3導線5Cの他端には、第2加圧電極3Aが接続されている。定電圧電源5の−側の端子は、導線である第4導線5Dの一端と接続されている。第4導線5Dの他端は、基準電極4と接続されている。もっとも、加圧電極3と基準電極4とに対する定電圧電源5の接続の向きはこれとは逆向きでも構わない。
リレー9が、第1導線5Aと、第2導線5Bとを接続した場合には、定電圧電源5の存在により、加圧電極3と基準電極4との間に、前者から後者へと電位が下る勾配を持つ電界が形成される。リレー9が、第1導線5Aと、第3導線5Cとを接続した場合には、定電圧電源5の存在により、第2加圧電極3Aと基準電極4との間には、前者から後者へと電位が下る勾配を持つ電界が形成される。
【0018】
検知センサ6はそれが存在する位置における電位を測定するためのものである。この実施形態における検知センサ6は電極である。検知センサ6は、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間に多数配される。検知センサ6は、一般に、廃棄物処分場の凹面1における廃棄物Xが投棄されることが予定された部分に設けられる。その部分の遮水シート2が破損する可能性が高いからである。
これには限られないが、この実施形態では、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間のうち、検知センサ6は、凹面1の底面1Aに対応する部分にのみ設けられている。検知センサ6は、凹面1の法面1Bに対応する部分にも設けられていても良い。ただし、検知センサ6は一般に、凹面1の外側には設けられない。
検知センサ6は、平面視した場合に、凹面1の底面1Aの略全範囲に分散させた状態で配置される。これには限られないが、この実施形態では、検知センサ6は、平面視した場合に、碁盤の目状に配置される。
各検知センサ6は、導線である第5導線6Aによって、検知装置8に接続されている。検知センサ6は、遮水シート2を貫いているが、その部分でも、遮水シート2の気密さが保たれるように適当な措置がなされている。
また、これには限られないが、この実施形態では、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間内に、導電性シート6Bが配されている。導電性シート6Bは、適度な電気抵抗を有する公知又は周知のシート状物であり、それを検知システムで用いることもまた公知又は周知である。導電性シート6Bの存在により、隣接する検知センサ6同士が適度な電気的な抵抗を介して通電するようになる。それにより、後述の電位のピークから周囲の検知センサへの電圧変化がなだらかになり、電位等高線を見た際にピーク位置を確認しやすくなる。
【0019】
周囲電極7は、廃棄物Xが投棄されることが予定されていない凹面1の縁部の外に設けられた電極である。周囲電極7は、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間に設けられている。周囲電極7は、基準電極4と等電位になるように構成されている。
この実施形態の周囲電極7は、図2(A)に示したように、線状体であり、導電性を有する導線により構成されている。その素材は例えば、高導電性の金属あるいはカーボンであり、その導電性は当然に遮水シート2よりも遥かに高く(或いは抵抗が遥かに低く)、導電性シートの導電性よりも高い(或いは抵抗が小さい)。これには限られないが、導線である周囲電極7は、凹面1の周囲を一周囲む連続したものとなっている。
周囲電極7は、図2(B)に示したように、面状、より詳しくはシート状のものであってもよい。面状である周囲電極7も、凹面1の周囲を一周囲む連続したものとすることができる。この場合の周囲電極7は、金属箔、金属板、或いは、導電性シート6Bよりも高い導電性を持つ導電性のシートとすることができる。金属箔、金属板の素材は、周囲電極7が線状体である場合と同様にすることができる。導電性のシートは例えば、カーボンブラックの粉末を添加したゴム或いは合成樹脂製のものが公知又は周知であり、それを用いることができる。
図2(A)、図2(B)に示したいずれの場合でも、周囲電極7は、導線である第6導線7Aによって、基準電極4に接続されることにより、基準電極4と等電位となるようにされている。
【0020】
なお、周囲電極7は、図3に示したように構成することができる。この場合の周囲電極7は、そのそれぞれが電極である、複数個の小電極7Bからなる。
各小電極7Bは、全体として見れば、凹面1を取り囲むように配置される。これには限られないが、各小電極7Bは、面状である。面状である小電極7Bは、図2(B)で示した面状である電極7と同じように、金属箔、金属板或いは導電性のシートとすることができ、その素材も図2(B)に示した周囲電極7に倣うことができる。各小電極7Bの構成、例えば、大きさや形状は、同じであってもよいし、そうでなくても良いが、この実施形態ではすべて同じとしている。すべての小電極7Bは、導線である第6導線7Aによって、これには限られないがこの実施形態では、最寄りの基準電極4に接続されることにより、基準電極4と等電位となるようにされている。
【0021】
検知装置8は、上述したように各検知センサ6に第5導線6Aによって接続されており、第5導線6Aを介して各検知センサ6が存在する位置における電位を測定することができるようになっている。
また、検知装置8は、各検知センサ6の位置に関する情報を有しており、各検知センサ6が存在する位置を2次元的にマッピングするとともに、各検知センサ6について測定された電位に基づいて等電位線を得ることができるようになっている。
これらの機能は一般に、市販のコンピュータに上述のごとき機能を果たすソフトウエアをインストールすることにより得ることができるが、各検知センサ6の電位を測定すること、また各検知センサ6の電位にもとづいて等電位線を得ることとも、従来からの遮水シートの破損検知システムにおける検知装置で公知又は周知であるから、詳しい説明は省略する。
【0022】
以上で説明した遮水シートの破損検知システムの使用方法、及び動作を説明する。
破損検知システムは、常時、或いは所定時間おきに、遮水シート2の破損の検知を行う。その方法は以下の如きである。以下の説明では上遮水シート2Aの破損の検知を先に、下遮水シート2Bの破損の検知を後に行うこととしているが、その先後が問われないのは当然である。
まず、リレー9により、第1導線5Aと第2導線5Bとを接続することにより、加圧電極3と基準電極4との間に、定電圧電源5によって定電圧の電圧をかける。そうすると、加圧電極3と基準電極4との間に電界が生じる。
遮水シート2に破損が存在しない状態を考える。この場合、加圧電極3から上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間に向けて電流が流れる経路が存在しない。したがって、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間から、基準電極4へも電流は流れない。他方、周囲電極7は、基準電極4とアースされた状態となっており、基準電極4と電位が等しくされているので、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間の全体は、基準電極4の電位と等しい一様な電位となる。この状態では、当電位線は生じない。
他方、図4に示したように、上遮水シート2Aに破損Hが生じたとする。破損Hが生じると、加圧電極3から、その破損Hした部位を介して、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間に電流が流れこむ。この電流は、検知センサ6付近を通過し、周囲電極7に到達し、周囲電極7から基準電極4へと至ることになる。ここに、定電圧電源5の+端子→第1導線5A→第2導線5B→加圧電極3→上遮水シート2Aの破損Hした部位→上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間→周囲電極7→第6導線7A→基準電極4→第4導線5D→定電圧電源5の−端子、という電流の閉じた経路が完成する。図4にこの経路を、太い破線と矢印により示す。これにより、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間には、平面視した場合の部位により電位が異なる電位の勾配が生じることになる。
検知装置8が検知センサ6との協働により、各検知センサ6が存在する部分の電位を測定し、検知センサ6が存在する範囲の等電位線のマップを作る。マップにおける等電位線のピークが、上遮水シート2Aにおける破損Hの部位であると特定することができる。
なお、上述のごとき電流の閉じた経路が存在する場合であっても、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間から、従来技術で述べた遮水シート2に偶然生じた絶縁性の弱い部分から、基準電極4へと電流が流れるという現象は生じ得る。しかしながら、周囲電極7の抵抗は、遮水シート2に偶然生じた絶縁性の弱い部分からの電流よりも遥かにその抵抗が小さいから、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間からから基準電極4へと流れる電流の大半は、周囲電極7を介する上述の経路を辿って基準電極4へと流れることになる。つまり、遮水シート2に偶然生じた絶縁性の弱い部分が存在する場合であっても、周囲電極7が存在すれば、等電位線のピークの位置は、遮水シートの現実の破損Hの部位に即したものとなり、その誤差は小さくなる。
【0023】
他方、下遮水シート2Bに破損Hが生じた場合には、以下のようにしてその位置を検出する。
下遮水シート2Bの破損Hを検出するには、リレー9により、第1導線5Aと第3導線5Cとを接続し、第2加圧電極3Aと基準電極4との間に、定電圧電源5によって定電圧の電圧をかける。そうすると、第2加圧電極3Aと基準電極4との間に電界が生じる。
遮水シート2に破損が存在しない場合には、上述のように、第2加圧電極3Aから上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間に向けて電流が流れる経路が存在しない。したがって、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間から、基準電極4へも電流は流れない。したがって、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間の全体は、基準電極4の電位と等しい一様な電位となる。この状態では、当電位線は生じない。
他方、図5に示したように、下遮水シート2Bに破損Hが生じたとする。破損Hが生じると、第2加圧電極3Aから、その破損Hした部位を介して、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間に電流が流れこむ。この電流は、検知センサ6付近を通過し、周囲電極7に到達し、周囲電極7から基準電極4へと至ることになる。ここに、定電圧電源5の+端子→第1導線5A→第3導線5C→第2加圧電極3A→下遮水シート2Bの破損Hした部位→上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間→周囲電極7→第6導線7A→基準電極4→第4導線5D→定電圧電源5の−端子、という電流の閉じた経路が完成する。図5にこの経路を、太い破線と矢印により示す。これにより、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間には、平面視した場合の部位により電位が異なる電位の勾配が生じることになる。
検知装置8が検知センサ6との協働により、各検知センサ6が存在する部分の電位を測定し、検知センサ6が存在する範囲の等電位線のマップを作る。マップにおける等電位線のピークが、下遮水シート2Bにおける破損Hの部位であると特定することができる。
【0024】
<試験例>
この試験を行うにあたり、図6に示したような試験用検知システムを作成した。
試験用検知システムは、まず、本願の実施形態における下遮水シート2Bを模した、実施形態における遮水シート2と同様のものである、絶縁性素材でできた下遮水シート102Bを含んでいる。下遮水シート102Bは、矩形である。下遮水シート102Bの上には、実施形態における検知センサ6を模した、電位測定が可能な電極である検知センサ106を縦9個×横13個となるように縦横に配した。検知センサ106は、実施形態における第5導線6Aと同じように構成された第5導線106Aにより、実施形態における検知装置8と同様に構成された検知装置108と接続した。これにより、検知装置108は、各検知センサ106が存在する位置における電位を検知可能となっている。
検知センサ106の上には、実施形態における導電性シート6Bを模した導電性シート106Bが配される。この導電性シート106Bは、実施形態における導電性シート6Bと同様に構成され、また、下遮水シート102Bと同じ形状、大きさとされ、下遮水シート102Bをぴったり覆うようにしてある。導電性シート106Bの上には、実施形態における周囲電極7を模した周囲電極107が配されている。この周囲電極107は、これには限られないが導電性の高い金属でできた箔である。周囲電極107は、矩形の導電性シート106Bの縁部を、所定の幅でぐるっと一周囲んでいる。
試験用検知システムは、また、定電圧電源105を備えている。定電圧電源105は、実施形態における定電圧電源5を模したものであり、例えば一般的なバッテリである。
定電圧電源5の+側端子は、実施形態における第1導線5A及び第2導線5Bに相当する、導線である第1第2導線105Aの一端に接続されている。第1第2導線105Aの他端側には、実施形態における加圧電極3に相当する電極であり、実施形態における加圧電極3と同様に構成された加圧電極103に接続されている。加圧電極103は、導電性シート106Bの適当な位置に侵されている。後述するように、この試験用検知システムでは、導電性シート106Bに加圧電極103が置かれたその位置が、実施形態における上遮水シートの破損Hした部位に相当することになる。
定電圧電源105のマイナス側端子は、実施形態における第4導線5Dに相当する第4導線105Dの一端と接続されている。第4導線105の他端は、二股に分岐しており、その一方が周囲電極107に接続され、その他方が電位0Vのグランドに接続されている。つまり、この検知システムでは、その周囲電極7の全体がグランドに接続され、電位が0Vとなるようにされている。
この試験用検知システムは、実施形態における上遮水シート2Aの破損位置を検知する試験を行うものであるが、実施形態における上遮水シート2Aに相当する部材を有さない。実施形態においては、加圧電極3からの電流は破損Hした部位から、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間に流れ込んでくるようになっており、それがその空間にあった導電性シート6Bに沿って流れるようになっていた。他方、この試験用検知システムにおいては、加圧電極103を導電性シート106Bの上の適当な位置に置くようにしており、それにより加圧電極103からの電流が、加圧電極3が存在する位置から、導電性シート106Bに沿って流れていくようにしている。したがって、この試験用検知システムでは、加圧電極3が置かれた位置を、実施形態における、上遮水シート2Aが破損した部位である破損Hした部位と見做すことができるのである。
【0025】
上述の試験用検知システムにおいて、定電圧電源105により印加電極103と、グランドとの間に定電圧をかけた。
その結果、定電圧電源105の+端子→第1第2導線105A→加圧電極103→導電性シート106B→周囲電極107→第4導線105D→定電圧電源5の−端子という閉じた回路が形成され、上述のルートで電流が流れる。
それにより、導電性シート106Bに沿って電位の勾配が生じる。導電性シート106Bの各位置における電位は、導電性シート106Bに沿って配されている多数の検知センサ106によって検知される。検知センサ106が検知した電位についての情報を受け取った検知装置108に、等電位線のマップを作らせた。
このようにして作られたマップの一例を、図7に示す。マップ上には、上下一組で一対とされた数字が多数書き込まれている。それら数字のうち、上に記載されたものは、各検知センサ106を特定する情報である。検知装置108は、各検知センサ106がどこに位置しているのかということを示す情報を持っているから、マップ上に各検知センサ106が位置する場所を書き込むことができる。他方、それら数字のうち、下に記載されたものは、上に記載された数字で特定される検知センサ106における電位(単位mV)である。そして、マップには、等高線状の等電位線が書き込まれている。かかる等電位線は、各検知センサ106で測定された電位のうちの等電位となる部分を結んだものである。
結果として、得られた等電位線のマップは、周囲電極107が存在しない場合(図7(B))と比較して、明らかに明確なものとなった(同(A))。なお、周囲電極107を用いない場合においては、導電性シート106Bのうちの一箇所、より詳細には図6(A)における左下の角のみを、グランドした。周囲電極107が存在した場合(図7(A))における電位のピークの方が、擬似的な破損部位である加圧電極103の位置により即していたのは当然である。
【符号の説明】
【0026】
1 凹面
2 遮水シート
2A 上遮水シート
2B 下遮水シート
3 加圧電極
4 基準電極
5 定電圧電源
6 検知センサ
6B 導電性シート
7 周囲電極
8 検知装置
9 リレー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7