特許第6568802号(P6568802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6568802多層蛍光性ナノ粒子及びその製造並びに使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568802
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】多層蛍光性ナノ粒子及びその製造並びに使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20190819BHJP
   C09B 67/02 20060101ALI20190819BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20190819BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20190819BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20190819BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20190819BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20190819BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20190819BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20190819BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20190819BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20190819BHJP
   G01N 33/552 20060101ALI20190819BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   C12M1/00 A
   C09B67/02 A
   C09K11/06
   B82Y30/00
   B82Y40/00
   B82Y5/00
   B82Y20/00
   A61K49/00
   C12M1/34 A
   C12Q1/04
   C12Q1/6806
   G01N33/552
   G01N33/543 575
【請求項の数】16
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-558943(P2015-558943)
(86)(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公表番号】特表2016-520287(P2016-520287A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】US2014017342
(87)【国際公開番号】WO2014130643
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2017年2月13日
(31)【優先権主張番号】61/767,066
(32)【優先日】2013年2月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511040838
【氏名又は名称】コーネル ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】CORNELL UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イヤー,スリカント,ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィースナー,ウルリッヒ,ベー
【審査官】 千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0297448(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/042564(WO,A1)
【文献】 NANO LETTERS, 2006, Vol. 6, No. 1, pp. 84-88
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)シリカコアであって、当該コアのシリカネットワークに共有結合した複数の蛍光応答性物質(FRM)を含むシリカコア、
b)1〜100のFRM-含有シリカ層、ここで、各層は当該FRM-含有シリカ層のシリカネットワークに共有結合している複数のFRMを含んでいる、
c)一以上のFRM-フリーシリカ層、ここで、各FRM-フリーシリカ層は、1nm〜20nmの厚みを有し、当該FRM-フリーシリカ層の一つが、前記シリカコアを前記FRM-含有シリカ層の一つから分離しており、且つ、存在する場合は、前記FRM-含有シリカ層の各隣接ペアは、当該FRM-フリーシリカ層の一つによって分離されている、
d)最外FRM-含有シリカ層上に配置されている最外FRMフリーシリカ層、および、
e)前記最外FRMフリーシリカ層の外表面に共有結合している複数のポリ(エチレングリコール)分子
を含むこと、及び、前記FRMが有機色素であることを特徴とする、ナノ粒子。
【請求項2】
さらに、前記最外FRM-フリーシリカ層の外表面に共有結合している前記ポリ(エチレングリコール)分子に共有結合している一以上の成分を含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記一以上の成分が、タンパク質、ペプチド、核酸、アプタマー、抗体、抗体フラグメント、ポリマー、有機小分子、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記核酸が、一本鎖DNA分子、二本鎖DNA分子、一本鎖RNA分子、二本鎖RNA分子、分岐DNA分子、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、5nm〜500nmの直径を有する、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、5nm〜100nmの直径を有する、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項7】
各FRM-フリーシリカ層が、前記コア内と一つの隣接するFRM-含有シリカ層内、または複数の隣接するFRM-含有シリカ層内のFRM間の測定可能なエネルギー移動が10%以下となるような厚みを有する、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記コアと全てのFRM-含有層が異なるFRMを有する、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記FRMが、N-(7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン-3-イル)(DAC)、テトラメチルローダミン-5-マレイミド(TMR)、Cy5、またはその組み合わせから選択される、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項10】
請求項1に記載のナノ粒子を製造する方法であって、以下のステップ;
a)シリカ前駆体、複数の単一タイプのFRM結合前駆体、溶媒、および塩基を接触させ、シリカコアのシリカネットワークに結合された複数のFRMを有するシリカコアを形成する、
b)ステップa)で得られた物質を、シリカ前駆体および溶媒と接触させ、FRM-フリーシリカ層を前記シリカコア上に形成する、
c)b)で得られた物質を、シリカ前駆体、単一タイプのFRM結合前駆体、溶媒、および塩基と接触させ、FRM-含有シリカ層を形成する;
d)任意に、ステップc)で得られた物質を、シリカ前駆体および溶媒と接触させ、FRM-フリーシリカ層を、前記FRM-含有シリカ層上に形成し、且つ、得られた物質を、シリカ前駆体、単一タイプのFRM結合前駆体、溶媒、および塩基と接触させ、FRM-含有シリカ層を形成する;
e)任意に、ステップd)を所望の回数繰り返し、その際、前記接触は、先に実施されたステップd)から得られた物質に対して行われる;
f)ステップc)、ステップd)、またはステップe)で得られた物質を、シリカ前駆体および溶媒と接触させ、最外FRM-フリーシリカ層を、最外FRM-含有層上に形成する;および
g)ステップf)で得られた物質を、官能化PEG分子と接触させ、ナノ粒子の最外FRM-フリーシリカ層の外表面に共有結合している複数のPEG分子を有するナノ粒子を形成する
を含む方法。
【請求項11】
前記PEG分子が、ヘテロ二官能性PEG分子である、請求項10に記載の方法
【請求項12】
さらに、前記ナノ粒子を単離するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
以下のステップ;
a)細胞を、請求項1に記載の複数のナノ粒子と接触させる;
b)前記サンプルの複数のイメージを得る、ここで、各イメージは異なる励起波長および異なる発光波長を使用して得られ、それぞれの異なる励起波長は、前記ナノ粒子中に存在する異なる種類のFRMの吸収スペクトル中に存在し、それぞれの異なる発光波長は、前記ナノ粒子中に存在する異なる種類のFRMの発光スペクトル中に存在する
を含むイメージング法(ただし、ヒトの体内において細胞をイメージングする方法を除く)
【請求項14】
さらに、単一のイメージを提供するために、複数のイメージを組み合わせるステップを含む、請求項13に記載のイメージング法。
【請求項15】
前記イメージが共焦点顕微鏡によって得られる、請求項13に記載のイメージング法。
【請求項16】
前記細胞が非ヒト被験者の中に存在する、請求項13に記載のイメージング法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2013年2月20日出願の米国仮出願第61/767,066号に基づく優先権を主張し、その開示は参照によってここに包含される。
【0002】
この発明は、国土安全保障省によって与えられたNo.2009-ST-108-LR0004の契約による政府支援によって作られた。政府は発明に一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、一般に層状の蛍光応答性物質を含むナノ粒子に関する。より具体的には、本開示は、多層の、蛍光応答性物質を含むシリカナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0004】
創薬、薬剤スクリーニング、遺伝子発現、およびワクチンターゲットとしてのタンパク質の同定は、多数の分子を使用したハイスループット・スクリーニング(HTS)アッセイを実行することに基づいている。これは、タンパク質、抗体、ヌクレオチドまたはペプチドのような特定のターゲット分子のための大規模なケミカル・ライブラリーをスクリーニングすることを要求とする。大規模なライブラリーのスクリーニングまたは生物学的多重化は、治療および診断用途のためのツールの開発を促進する。生物学的多重化は、感受性および特異性を損なうことなく、同時にマルチプルアッセイを実施することを伴う。小型HTSへの進歩は、1日で数千にわたる化合物をスクリーニングすることにつながった。完全な二次元配列製作技術は、DNAチップ、マイクロアレイおよびbioMEMSの開発をもたらした。パターン認識に基づくポジショナル・エンコーディングは、さらに特定の分子のフィンガープリントを同定するのに役立っている。これらの技術の主な欠点のいくつかは、それらが、設備のセットアップおよび試薬の点で高価であり、サンプル調製およびアレイ製作の点で複雑であるということである。さらに、交差反応性および再現性に起因する測定の可変性は、これらの方法を大規模解析に関して困難にしてきた。
【0005】
ビーズテクノロジーに基づく色の割り当てを使用した多重コーディングの可能性は、以前にも研究されていた。2つの有機色素が、多重解析のための8つの異なる強度レベルにて、5.5μmのポリスチレンビーズをコードするために使用された。異なる比率で6つの異なる強度レベルにてスペクトル的に識別可能な、6つのCdSe/ZnSコア-シェル量子ドットナノ粒子でコードされた1.2μmのポリスチレンビーズは、適切な溶媒混合物中でポリマーを膨張させることによって合成された。上記ケースにおける蛍光種は、ミクロンサイズのポリスチレン粒子中に全て物理的に組み込まれ、それらの大きなサイズのために、多重インビボあるいは細胞内バイオイメージングに容易に応用することはできなかった。デンドリマー様DNA(DL-DNA)に基づく蛍光性ナノバーコードは、利用可能な反応部位の数に基づいて異なる比率の2つの有機フルオロフォアでDL-DNAを正確にタグ付けすることによって開発された。これらのナノバーコードから蛍光シグナルを増幅するために、イメージングおよび分子検出の担体として再びマイクロビーズが使用された。同様に、異なる色素比率で色素をコードする70nmのフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)に基づくシリカナノ粒子が合成され、10μmのストレプトアビジン被覆ミクロスフェアに負荷された。この作業は、異なる色素比率で色素をコードする>100nm(FRET)ベースシリカ粒子(続いて多重化のための基質としての10μmのポリスチレン・ミクロスフェアに負荷される)を開発することによって、コンビナトリアル・ケミストリーにおける光学コード化に拡張され、応用された。これらのFRETベース粒子にコードされた色素比は、全ての色素が組み込まれたと仮定して、反応混合物中に投与された色素に基づいて定量化された。最終ビーズの大きなサイズ(>1μm)のため、これらのケースのいずれにおいても細胞内イメージングは実証されなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、所望のレベルの粒子輝度、ひいては望ましいシグナル対ノイズを得るためにFRETが抑制された多重コード粒子であって、インビボおよびインビトロ用途に使用できる約100nm以下のサイズの粒子(100nm以下のサイズの粒子が細胞取り込みに特に適しており、ひいては細胞内イメージング用途に望ましいため)を作る必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示されるのは、任意の表面PEGコーティング(タンパク質、核酸、小分子のような様々な成分による機能化のための)を有する多色蛍光性シリカナノ粒子(本明細書中で、多層・蛍光応答性物質(FRM)-含有ナノ粒子、mcCドット、並びに三色Cドット、および多色Cドットとも称される)である。前記多色蛍光性シリカナノ粒子は、明るい(輝く)多色蛍光性シリカナノ粒子とも呼ばれるかもしれない。例えば、前記ナノ粒子は、2、3、あるいはより多くの異なる強度レベルにて、スペクトル的に区別できる2、3あるいはより多くの色素を含む100nm未満のサイズを有する。前記多色蛍光性シリカナノ粒子は、例えば、細胞内バイオイメージング、ハイスループット・スクリーニングおよび医療診断のために使用できる。
【0008】
ある実施形態では、前記シリカナノ粒子は、色素であるN-(7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン-3-イル)マレイミド(DACm (青))、 テトラメチルローダミン-5-マレイミド(TMRm (緑))およびCy5-マレイミド(Cy5m (赤))を含む。これらの色素は、色素ごとに3つの強度レベルにて含まれる(色素無し、低色素、高色素)。前記粒子構造は、色ごとに色素の数をコントロールし、最大輝度のための色素間のエネルギー移動を最小化するように設計される。3つの強度レベルにおけるこの3つの色素の組み合わせは、波長と蛍光強度に基づく26の識別可能な粒子の合成をもたらす。前記ナノ粒子は、遊離型の色素と比べて1〜3ケタの蛍光輝度の増強を有する。高(high)色素負荷のナノ粒子は、中(medium)色素負荷粒子より3.5〜4倍明るかった。このシステムにおいて、さらなるシリカシェルを組み込むことによる中から高色素負荷への移動は、ナノ粒子の相対的蛍光発光を減少させない。
【0009】
多色蛍光性シリカナノ粒子の製造方法は、例えば、色素が、層ごとの(一層ずつの)様式で色素ドープ粒子コアに添加され、スペクトル的に区別できる各色素が、色素間のエネルギー移動を減じるために純シリカシェルによって空間的に分離されることによって実施される。
【0010】
ある実施形態では、前記ナノ粒子は、前記3つの色素が層ごとの様式で添加されるようにして合成される(コアに緑、続いて内殻(インナーシェル)に赤、続いて最終色素層として添加される青)。しかしながら、いかなる順序の色素添加も、ナノ粒子のパフォーマンスに影響を与えることなく実施されることができる。色素層は、色素層間のエネルギー移動を効果的に抑制するのに十分厚いシリカシェルによって空間的に分離される。このように、個々の粒子それぞれが、例えば、色素コアの回りに最大24までの異なる層を備えた、タマネギ型の構造を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)は、シリカナノ粒子(中央)内に3つの色素、TMRm(緑)、Cy5m(赤)およびDACm(青)を組み込むための層ごとのアプローチおよび、各色素の封入レベル(それぞれ、0,5,20色素)に基づく可能な組み合わせの略図である。シンプルにするために、中色素負荷(〜5色素/粒子、明るい色調)および高色素負荷(〜20色素/粒子、暗い色調)の粒子が、緑、赤、青の明/暗の色調で示されている。(b)コア中に、TMRm無しの粒子(緑無し、下の列)、〜5TMRmの粒子(低緑色色素負荷、中央の列)および〜20TMRm色素の粒子(高緑色色素負荷、上の列)として、異なる列に配列された、水中の26個の合成コア-シェル多色蛍光性ナノ粒子の写真。一番下の列の27番目のキュベット(左)は、いかなる色素も含まない(すなわち、色のコンビネーション0,0,0の)純シリカ粒子の溶液を示す。(c)図1bに示されたナノ粒子の色調。ブランクは、コントロールとして、色素を含まない純シリカ粒子を表す。TMRm(緑)、Cy5m(赤)およびDACm(青)。
【0012】
図2】多色Cドット(mcCドット)合成の略図:(a)粒子当たり様々な平均数の色素を有する合成バッチのポアソン分布間の重複部分を比較するプロット(説明文参照)。左から右への曲線の順序:5,10,15,20色素/粒子。(b)それぞれの色素-シラン複合体を与えるための、3つの色素TMRm(1)、Cy5m(2)およびDACm(3)と(3-メルカプトプロピル)-トリメトキシシランとのマレイミド誘導体の一般化された反応図。(c)〜(e)単色Cドットのための層ごとの色素添加:TMRm粒子(G)、Cy5m粒子(R)およびDACm粒子(B)、その後に最終層として、5kモル質量のポリエチレングリコール・シラン(PEG-シラン)の添加が続く;(f)〜(h)GとRの単色Cドットから出発して、(f)はGとR、(g)はGとBおよび(h)はRとBの組み合わせのための、様々な輝度レベルを有する二色mcCドットへの層ごとのアプローチであり、その後PEG-シランによるキャッピングが続く;(i)GとRを含む二色Cドットから出発して、PEG-シランで覆われた三色Cドットへの層ごとのアプローチ。
【0013】
図3】単色Cドットの特性評価。パネル(a)〜(c)のうち、(a)はTMRm、(b)は Cy5m、(c)はDACmについて、中および高色素負荷ナノ粒子の吸光度と蛍光スペクトルを、元の(親の)遊離型色素と比較する。遊離型色素と粒子の溶液は、これらの測定前に吸光度をマッチされた(absorbance matched)。パネル(d)〜(f)は、溶液中の遊離型色素(実線)のFCS自己相関曲線と、中(○)と高(●)色素負荷ナノ粒子のそれらを比較する:(d)はTMRm、(e)はCy5m、(f)はDACm。パネル(g)〜(i)は、(g)はTMRm系、(h)はCy5m系、(i)はDACm系について、FCS検出器データセットから測定された、蛍光種ごとの輝度(色素vs粒子)を比較する。
【0014】
図4】mcCドットの特性評価。(a)溶液中の特定の粒子中間体の代表的なFCS曲線であって、中/高TMRm色素負荷単色Cドット(mG、緑色○/hG、緑色●)から出発して、中/高Cy5m色素負荷二色Cドット(hGmR、赤色○/hGhR、赤色●)を経て、中/高DACm色素負荷(hGhRmB、青色○/hGhRhB、青色●)の最終的な三色Cドットにいたる全体の合成スキームをカバーする三色Cドットへの動きを示す。青(左側の曲線)、緑(中間の曲線)、赤(右側の曲線) (b)青(左)、緑(中間)および赤(右)における励起によって得られた三色Cドットの代表的な蛍光発光スペクトル。(c)定常状態の蛍光発光スペクトルによって測定された26の蛍光性シリカナノ粒子それぞれの実験的な強度プロファイルの概略。緑のバーはTMRmからの、赤のバーはCy5mからの、青のバーはDACmからの発光を表す。バーの高さは、発光強度レベルを示す。
【0015】
図5】チャネルを示しているRBL-2H3マスト細胞におけるmcCドットの共焦点蛍光顕微鏡画像、(a)は緑Ch:560nm、(b)は赤Ch:633nm、(c)は青Ch:405nm、(d)は黄色Ch:488nm;(e)は(a、b、c、d)の重ね撮り画像、(f)は明視野像。
【0016】
図6】最大17までの様々な粒子を含む細胞を示す、単一の512×512の混合粒子画像タイル。(a)〜(d)の画像は、赤、緑、青および黄色チャネルで同時に獲得された。(e)4つの蛍光画像は全て、粒子が細胞内に実際に存在していること実証するために重ねられた。(f)明視野で獲得された画像。
【0017】
図7】17のスペクトル的に識別可能な多色ナノ粒子が、ラット好塩基球性白血病細胞に負荷された。(a)多粒子サンプルの成功的な「解読」を実証する、17の単「色」mcCドットの1つがそれぞれ負荷された細胞のフルサイズ(1280×1280ピクセル)の着色像。粒子組成および割り当てられた細胞の色の両方を図説する色分けされた説明が、右下に示される。(b)同じイメージの拡大された領域。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、多層の蛍光応答性物質(FRM)-含有ナノ粒子を提供する。また、前記多層FRM-含有ナノ粒子を製造する方法および使用する方法も提供する。
【0019】
本開示の多層FRM含有ナノ粒子は、特異的なFRM(単数または複数)およびFRM(単数または複数)レベルによって一意的に識別できるナノ粒子を提供する。同定のための組み込みコードを有する前記ナノ粒子は、分子のためのキャリアおよび標識として働く。特異的FHM(単数または複数)/レベル(単数または複数)の組み合わせ(光学的「バーコード」と記載されてもよい)は、その蛍光発光(例えば、画像の形態における)によって同定されることができる。例えば、様々なFHM/レベルの組み合わせを有する多層FRM-含有ナノ粒子の混合物において、様々なFHM/レベルの組み合わせのおのおのは、一意的に同定されることができる。各識別可能な粒子は、二次元配列(2D-アレイ)技術において単一のウェルあるいはアレイに類似している。このように多重化は、ウェルあるいはアレイの数に限定されないが、識別可能な粒子の数に限定される。前記ナノ粒子構造は、FRMからの蛍光の層内および層間消光を最小化する。これは、前記粒子内の全ての蛍光性色素の効率的な使用により望ましい輝度を有するナノ粒子を提供し、光学的/蛍光検出スキームにおける望ましいシグナル対ノイズ-レベルをもたらす。
【0020】
一面では、本開示は、多層FRM-含有シリカナノ粒子を提供する。前記ナノ粒子は、一以上の量(すなわち、レベル)で存在し得る一以上の蛍光応答性物質(FRM)を含む。前記ナノ粒子は、サイズ(例えば、直径)において、5nm〜500nmであってもよく、その間の全ての整数値と範囲を含む。
【0021】
本明細書における多層FRM-含有ナノ粒子への言及は、多層の色素-含有ナノ粒子を含むことを意図している。本明細書におけるFRM-フリーシリカ層への言及は、色素を含まないシリカ層を含むことを意図している。本明細書におけるFRM-含有シリカ層への言及は、色素含有シリカ層を含むことを意図している。本明細書における最外FRM-フリーシリカ層への言及は、色素を含まない最外シリカ層を含むことを意図している。本明細書におけるFRMへの言及は、色素分子を含むことを意図している。本明細書におけるFRM-結合前駆体への言及は、色素-結合前駆体を含むことを意図している。本明細書における最外FRM含有シリカ層への言及は、色素を含む最外シリカ層を含むことを意図している。
【0022】
一実施形態において、前記ナノ粒子は、
シリカコアであって、当該コアのシリカネットワークに共有結合した複数のFRM分子を含むシリカコア、
1〜100のFRM-含有シリカ層、ここで、各層は当該FRM-含有シリカ層のシリカネットワークに共有結合している複数のFRM分子を含んでいる、
一以上のFRM-フリーシリカ層、ここで、当該FRM-フリーシリカ層の一つが、前記シリカコアを前記FRM-含有シリカ層の一つから分離しており、且つ、存在する場合は、前記FRM-含有シリカ層の各隣接ペアは、当該FRM-フリーシリカ層の一つによって分離されている、
最外FRM-含有シリカ層上に配置されている最外FRMフリーシリカ層、および、
前記最外FRMフリーシリカ層の外表面に共有結合している複数のポリ(エチレングリコール)分子
を含む。
前記ナノ粒子はさらに、前記最外FRM-フリーシリカ層の外表面に共有結合している前記ポリ(エチレングリコール)分子に共有結合している一以上の成分(例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、アプタマー、抗体、抗体フラグメント、ポリマー、有機小分子、およびそれらの組み合わせ)を含んでもよい。前記ナノ粒子は、5nm〜500nmの直径(その間の全nmの整数値および範囲を含む)を有することができる。各FRM-フリーシリカ層は、前記コア内と一つの隣接するFRM-含有シリカ層内、または複数の隣接するFRM-含有シリカ層内のFRM間の測定可能なエネルギー移動が10%未満となるような厚み(例えば、1nm〜20nm)を有する。
【0023】
別の実施形態では、前記ナノ粒子は、
前記コアのシリカネットワークに共有結合している複数のFRM分子を含むシリカコア、
1〜100のFRM-含有シリカ層、ここで、各層は当該FRM-含有シリカ層のシリカネットワークに共有結合している複数のFRM分子を含んでいる、
一以上のFRM-フリーシリカ層、ここで、当該FRM-フリーシリカ層の一つが、前記シリカコアを前記FRM-含有シリカ層の一つから分離しており、且つ、存在する場合は、前記FRM-含有シリカ層の各隣接ペアは、当該FRM-フリーシリカ層の一つによって分離されている、
最外FRM-含有シリカ層上に配置されている最外FRMフリーシリカ層、
を含む。
前記ナノ粒子は、5nm〜500nmの直径(その間の全nmの整数値および範囲を含む)を有することができる。各FRM-フリーシリカ層は、前記コア内と一つの隣接するFRM-含有シリカ層内、または複数の隣接するFRM-含有シリカ層内のFRM間の測定可能なエネルギー移動が10%未満となるような厚み(例えば、1nm〜20nm)を有する。
【0024】
一実施形態では、前記FRM-フリーシリカ層のそれぞれが、前記シリカコアまたは一のFRM-含有シリカ層上に配置されていてもよい。
【0025】
別の実施形態では、前記ナノ粒子は、
a)前記コアのシリカネットワークに共有結合している複数のFRMを含むシリカコア;および、
b)前記シリカコアを取り囲む、FRM-フリーシリカ層とFRM-含有層が交互に重なった層、ここで、一のFRM-フリーシリカ層が前記コア取り囲んでいる;
を有する。前記最外層は、一のFRM-フリーシリカ層あるいは一のFRM-含有層である。任意に、複数のポリエーテル分子が、前記最外FRM-フリーシリカ層またはFRM-含有層の外表面に共有結合している。
【0026】
前記コアは、実質的に球状の形状であり、サイズ(例えば、直径)は1nm〜20nm(その間の全nmの整数値を含む)であってもよい。前記コアは、前記コアの酸化ケイ素ネットワークに共有結合されることができる複数の蛍光応答性物質(例えば、染料分子および顔料分子のような蛍光応答性分子)を有する。
【0027】
前記FRM-フリーシリカ層は、前記コア及び/又は一のFRM-含有シリカ層上に配置される。この層の中には検出可能なFRMは存在しない。この層は少なくとも部分的に、前記コア及び/又は一のFRM-含有シリカ層を被覆する。一実施形態において、前記層は、前記コア及び/又は一のFRM-含有シリカ層を完全に被覆する連続的な層である。前記ナノ粒子は、1〜99のFRM-フリーシリカ層(その間の層の全ての整数値および範囲を含む)を有することができる。
【0028】
各FRMフリーシリカ層は、前記コアと一つの隣接するFRM-含有シリカ層、あるいは複数の隣接するFRM-含有シリカ層を隔てる(すなわち、それらの間のエネルギー移動を減らす)。様々な実施形態において、各FRM-フリーシリカ層は、前記コア内と一つの隣接するFRM-含有シリカ層内、または複数の隣接するFRM-含有シリカ層内のFRM分子間の測定可能なエネルギー移動が10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下となるような厚みを有する。一実施形態では、各FRM-フリーシリカ層は、前記コアと一つの隣接するFRM-含有シリカ層、または複数の隣接するFRM-含有シリカ層内のFRM間に、測定可能なエネルギー移動を生じないような厚みを有する。前記コアと一つの隣接するFRM-含有シリカ層、または複数の隣接するFRM-含有シリカ層内のFRM間のエネルギー移動は、当該分野で既知の方法によって測定できる。例えば、エネルギー移動は、低波長で吸収する一つのFRM(例えば、一つの色素種)(供与体)の励起および、その吸光度スペクトルと前記供与体色素の発光スペクトルの間に重複を有する第二FRM(例えば、第二の色素種)(受容体)の発光の検査によって測定可能なエネルギー移動として測定できる。第二の方法は、受容体FRM(例えば、色素)の不存在および存在下で、前記供与体FRM(例えば色素)の発光強度を測定することである。もし、FRETが、供与体と受容体の間で生じれば、そのとき、供与体の発光は抑制される。例えば、前記FRM-フリーシリカ層は、1nm〜20nm(その間の全nmの整数値および範囲を含む)であってもよい。
【0029】
前記FRM-含有シリカ層は、一つのFRM-フリーシリカ層上に配置される。この層は少なくとも部分的に、前記FRM-フリーシリカ層を被覆する。一実施形態において、前記層は、前記コア及び/又は一のFRM-含有シリカ層を完全に被覆する連続的な層である。一実施形態において、各FRM-フリーシリカ層は、単一タイプのFRMを有する。前記ナノ粒子は、1〜100のFRM-含有シリカ層(その間の層の全ての整数値および範囲を含む)を有することができる。前記FRM-含有シリカ層は、1nm未満〜20nmの厚みを有することができる。一実施形態において、前記FRM-含有シリカ層は1nm〜20nmの厚みを有する(その間の全nmの整数値および範囲を含む)。前記最外FRM-フリーシリカ層は、前記最外FRM-含有シリカ層上に配置される。この層は少なくとも部分的に、前記最外FRM-含有シリカ層を被覆する。一実施形態において、前記層は、前記コア及び/又は一のFRM-含有シリカ層を完全に被覆する連続的な層である。この層は、1nm〜20nmの厚みを有する(その間の全nmの整数値および範囲を含む)。
【0030】
前記コア、FRM-含有シリカ層、およびFRM-フリーシリカ層は、ネットワーク構造を有する。前記ネットワークは、シリカ前駆体の縮合によって形成されることができる。ある実施形態では、前記ネットワークはシリカネットワークである。前記コアのシリカネットワークは、例えば、TMOSおよびTEOS等のシリカ前駆体の縮合によって形成されることができる。適切な前駆体は、既知の方法を使用して作ることや、商業的供給源から得ることができる。
【0031】
前記ナノ粒子の酸化ケイ素ネットワークに共有結合されることができる蛍光応答性物質(例えば、染料および顔料)を使用することができる。FRMの例は、色素分子を含む。適切な蛍光応答性物質は、既知の方法を使用して作ることや、商業的供給源から得ることができる。
【0032】
多種多様の適切な化学反応性の蛍光応答性物質が知られている(例えば、MOLECULAR PROBES HANDBOOK OF FLUORESCENT PROBES AND RESEARCH CHEMICALS, 6th ed., R. P. Haugland, ed.(1996)参照)。典型的なフルオロフォアは、例えば、蛍光性の芳香族あるいは複素環式芳香族化合物であり、例えば、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドールあるいはベンズインドール、オキサゾールあるいはベンゾキサゾール、チアゾールあるいはベンゾチアゾール、4-アミノ-7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(NBD)、シアニン、カルボシアニン、カルボスチリル、ポルフィリン、サリチレート、アントラニレート、アズレン、ペリレン、ピリジン、キノリン、クマリン(ヒドロキシクマリンおよびアミノクマリン並びにそれらのフッ素化誘導体を含む)および同様の化合物等である(例えば、米国特許5,830,912号;4,774,339号;5,187,288号;5,248,782号;5,274,113号;5,433,896号;4,810,636号;および4,812,409号参照)。
【0033】
例えば、前記色素は有機色素である。適切な有機色素の例には、キサンテン誘導体(例えば、フルオレセイン、ローダミン、オレゴングリーン、エオシン、テキサスレッド、およびカル・フロー(Cal Fluor)色素)、シアニン誘導体(例えば、シアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニン、メロシアニン、クエーサー色素(Quasar dyes))、ナフタレン誘導体(例えば、ダンシルおよびプロダン誘導体)、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体(例えば、ピリジルオキサゾール、ニトロベンゾキサジアゾールおよびベンゾキサジアゾール)、ピレン誘導体(例えば、カスケードブルー(cascade blue))、オキサジン誘導体(例えば、ナイルレッド、ナイルブルー、クレシルバイオレット、オキサジン170)、アクリジン誘導体(例えば、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー)、アリールメチン誘導体(例えば、オーラミン、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン)、テトラピロール誘導体(例えば、ポルフィン、フタロシアニンおよびビリルビン)、CF[登録商標]色素(Biotium)、BODIPY[登録商標](Invitrogen)、ALEXA FLUOR[登録商標](Invitrogen)、DYLIGHT[登録商標](Thermo Scientific、Pierce)、ATTO[登録商標]およびTRACY[登録商標](Sigma Aldrich)、FLUOPROBES[登録商標](Interchim)、それらの誘導体、および同様のものが含まれるがそれらに限定されない。
【0034】
一般的に使用される励起及び/又は検出波長に対応する吸収及び/又は発光スペクトルを有する蛍光応答性物質を使用することが望ましい。例えば、前記蛍光応答性物質は、市販の画像システムで使用される励起及び/又は検出波長に対応する吸収及び/又は発光スペクトルを有する。例えば、前記ナノ粒子は、赤、緑、青の発光波長のFRM、あるいはそれらの組み合わせを有することができる。一実施例では、前記蛍光応答性物質は、N-(7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン-3-イル)(DAC)、テトラメチルローダミン-5-マレイミド(TMR)、Cy5、N-(7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン-3-イル)マレイミド(DACm)、テトラメチルローダミン-5-マレイミド(TMRm)、Cy5-マレイミド(Cy5m)、あるいはそれらの組み合わせから選択される蛍光性色素である。
【0035】
FRMは、前記コアまたはFRM-含有層の前記ナノ粒子シリカネットワークに共有結合(例えば、直接的にあるいは連結基を経て)している。前記FRMは、連結基を経て、例えば、エステル結合、アミド結合あるいはチオエーテル結合を通じて、前記シリカネットワークに直接的に共有結合することができる。例えば、FRM(例えば、色素分子)は、連結基を通じてゾル-ゲル前駆体(例えば、官能化アルキル(トリアルコキシ)シラン)に共有結合することができ、このFRM-結合前駆体は、前記コアあるいはFRM-含有シリカ層を製造するために使用される。一実施形態において、前記FRMは、マレイミド-メルカプト複合体によって酸化ケイ素ネットワークに共有結合している。前記FRMとゾル-ゲル前駆体(例えば、官能化アルキル(トリアルコキシ)シラン)の間の共有結合または結合は、当該分野で既知の方法によって形成することができる。
【0036】
水溶液中で各々の蛍光発光を測定した際、前記ナノ粒子中のFRM(例えば、色素分子)(すなわち、前記コアまたはFRM-含有層のナノ粒子シリカネットワークに共有結合している)は、遊離FRMより大きい蛍光発光強度(すなわち、輝度)を有する。水溶液中で各々の蛍光発光を測定した際、様々な実施形態において、前記ナノ粒子中の一以上あるいは全てのFRM(例えば、色素分子)の蛍光発光強度は、遊離FRM(例えば、色素分子)より10%、20%、30%、40%、50%、75%、100%、2倍、5倍、10倍、あるいは20倍大きい。
【0037】
前記最外FRM-フリーシリカ層は、前記ナノ粒子が、生理的緩衝液における他のナノ粒子との凝集に対して立体的に安定化されるよう、不動態化されてもよい。例えば、前記ナノ粒子は、前記層の外表面に共有結合しているポリエーテル基等の、複数のポリマー基を有する。ポリエーテル基は、ポリエーテル分子または官能化ポリエーテル分子に由来してもよい。一実施形態において、前記ポリエーテル基は、PEG基である。
【0038】
一実施形態において、前記ナノ粒子は、前記層の外表面に共有結合している複数のポリ(エチレングリコール)(PEG)基を有する。前記PEG基は、PEG分子または官能化PDG分子に由来してもよい。前記PEG基は、前記層のシリカネットワークに共有結合している。例えば、前記PEG基は400g/mol〜10,000g/molの分子量を有することができる。前記PEG基は、前記最外FRM-フリーシリカ層の少なくとも一部を覆う。前記ナノ粒子が生理的緩衝液中の凝集に対して立体的に安定化されるように、前記PEG基が、前記層の少なくとも一部を覆うことが望ましい。
【0039】
一以上の前記PEG基は、当該基(すなわち、PEG鎖)に共有結合している成分を有していてもよい。一実施形態において、前記PEG基の全てが、前記PEG基(すなわち、PEG鎖)に共有結合している成分を有する。前記ナノ粒子は、全く同じ成分または複数の成分の組み合わせを有することができる。前記成分は、細胞構造(例えば、表面の細胞構造あるいは細胞内の構造)をターゲットとする標的成分であってもよい。好適な成分の例として、タンパク質(例えば、タンパク質サブユニットおよびタンパク質ドメイン)、ペプチド、核酸(例えば、一本鎖DNA分子、二本鎖DNA分子、一本鎖RNA分子、二本鎖RNA分子、および分岐DNA分子)、アプタマー(例えば、DNAアプタマー、RNAアプタマー、およびタンパク質アプタマー)、抗体、抗体フラグメント、ポリマー(例えば、デンドリマー)、有機小分子(例えば、薬物分子および有機化合物[葉酸塩または葉酸等])が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
一実施形態において、前記ナノ粒子は、最外FRM-フリーシリカ層に共有結合しているポリエーテル基(例えば、PEG基)を有しない。
【0041】
前記FRM(例えば、個々の色素)は、様々な量(すなわち、レベル)で前記ナノ粒子中に存在することができる。前記ナノ粒子中に存在するFRMは、前記コアおよびFRM-含有シリカ層のいずれかに存在する全く同じタイプのFRMの合計である。所定のナノ粒子中のFRMの量(すなわち、レベル)は、ナノ粒子当たりのFRM(例えば、色素分子)の数として表すことができる。色素の量は、一ナノ粒子中のFRMのレベルが、異なる一ナノ粒子中の同じFRMのレベルと区別できるようにすることが望ましい。色素の欠如は、一つのレベルとみなされる。名目上同じ色素レベルを有するナノ粒子中に存在する色素の量は、変動し得る。様々な実施形態において、前記ナノ粒子中のFRM量は、別のナノ粒子中に存在する同一FRMの量(例えば、別の光学的バーコードを構成している)と、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下の重複を有する。一実施形態において、前記ナノ粒子中のFRMの量は、別のナノ粒子中に存在する同一FRMの量(例えば、別の光学的バーコードを構成している)との重複を有しない。
【0042】
別の面では、本開示は、前記ナノ粒子を含む組成物を提供する。前記組成物は、複数の識別可能な(すなわち、一意的に特定な可能な)ナノ粒子を含むことができる。一実施形態では、前記組成物は複数のナノ粒子を含む。別の実施形態では、組成物は、色素及び/又は色素のレベルの異なる組み合わせを有する複数のナノ粒子を含む。例えば、前記複数のナノ粒子はそれぞれ、ナノ粒子当たり、0、5、もしくは20の色素レベルにて、2または3種の色素(例えば、N-(7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン-3-イル)(DAC)、テトラメチルローダミン-5-マレイミド(TMR)、Cy5)を有する。
【0043】
別の面では、本開示は、前記多層FRM-含有ナノ粒子を製造する方法を提供する。当該方法では、前記ナノ粒子は、コアに、FRM-フリーシリカ層とFRM-含有シリカ層を一層ずつ付与することによって形成される。
【0044】
一実施形態では、多層FRM-含有ナノ粒子を製造する方法は、以下のステップを含む;a)シリカ前駆体、複数の単一タイプのFRM結合前駆体、溶媒、および塩基を接触させ、シリカコアのシリカネットワークに結合された複数のFRMを有するシリカコアを形成する、b)ステップa)で得られた物質を、シリカ前駆体および溶媒と接触させ、FRM-フリーシリカ層を前記シリカコア上に形成する、c)b)で得られた物質を、シリカ前駆体、単一タイプのFRM結合前駆体、溶媒、および塩基と接触させ、FRM-含有シリカ層を形成する;d)任意に、ステップc)で得られた物質を、シリカ前駆体および溶媒と接触させ、FRM-フリーシリカ層を、前記FRM-含有シリカ層上に形成し、且つ、得られた物質を、シリカ前駆体、単一タイプのFRM結合前駆体、溶媒、および塩基と接触させ、FRM-含有シリカ層を形成する;e)任意に、ステップd)を所望の回数繰り返し、その際、前記接触は、先に実施されたステップd)から得られた物質に対して行われる;f)ステップc)、ステップd)、またはステップe)で得られた物質を、シリカ前駆体および溶媒と接触させ、最外FRM-フリーシリカ層を、最外FRM-含有層上に形成する;およびg)ステップf)で得られた物質を、官能化ポリエーテル分子と接触させ、ナノ粒子の最外FRM-フリーシリカ層の外表面に共有結合している複数のポリエーテル分子を有するナノ粒子を形成する。一例において、前記官能化ポリエーテル分子は官能化PEG分子であり、前記ポリエーテル基はPEG基である。
【0045】
別の実施形態において、多層FRM-含有ナノ粒子を製造する方法は、以下のステップを含む;a)シリカ前駆体、複数の単一タイプのFRM結合前駆体、溶媒、および塩基を接触させ、シリカコアのシリカネットワークに結合された複数のFRMを有するシリカコアを形成する、b)ステップa)で得られた物質を、シリカ前駆体および溶媒と接触させ、FRM-フリーシリカ層を前記シリカコア上に形成する、c)b)で得られた物質を、シリカ前駆体、単一タイプのFRM結合前駆体、溶媒、および塩基と接触させ、FRM-含有シリカ層を形成する;d)任意に、ステップc)で得られた物質を、シリカ前駆体および溶媒と接触させ、FRM-フリーシリカ層を、前記FRM-含有シリカ層上に形成し、且つ、得られた物質を、シリカ前駆体、単一タイプのFRM結合前駆体、溶媒、および塩基と接触させ、FRM-含有シリカ層を形成する;e)任意に、ステップd)を所望の回数繰り返し、その際、前記接触は、先に実施されたステップd)から得られた物質に対して行われる;f)ステップc)、ステップd)、またはステップe)で得られた物質を、シリカ前駆体および溶媒と接触させ、最外FRM-フリーシリカ層を、最外FRM-含有シリカ層上に形成する;
【0046】
多層FRM-含有ナノ粒子を製造する実施形態において、前記溶媒、塩基、FRM結合前駆体、およびシリカ前駆体は、本明細書に開示されたいかなる種類であってもよい。したがって、前記溶媒、塩基、FRM結合前駆体、およびシリカ前駆体は、各接触ステップにおいて同じであってもよく、一以上の接触ステップにおいて異なっていてもよい。
【0047】
前記シリカ前駆体は、シリカネットワークを形成するための反応(縮合反応等)を受ける。前記シリカ前駆体は、テトラメトキシシラン(TMOS)またはテトラエトキシシラン(TEOS)であってもよい。前記前駆体は、当該分野において既知の方法を使用して作ることができ、また、商業的供給源から入手することもできる。
【0048】
前記FRM結合前駆体は、FRMが前記コアのまたはFRM含有シリカ層のネットワーク(例えば、シリカネットワーク)に共有結合するように、縮合反応を受けることができる少なくとも1つの基(例えば、メトキシシランあるいはエトキシシラン等のアルコキシシラン基)を有するFRM結合成分に、直接または連結基を経て共有結合しているFRMである。例えば、前記FRM結合成分は、メルカプト基(-S-H)のような反応基を有するトリアルコキシシラン基である(例えば、-Si(OR)3、各Rはメチルあるいはエチル基である)。前記連結基は、マレイミド基に由来してもよい。前記FRM結合前駆体は、既知の共役化学によって形成することができる。一実施形態では、FRM結合前駆体は、マレイミド-メルカプト複合体である。例えば、前記FRMは、FRM-マレイミド複合体上のマレイミド基と直接あるいは反応を経て、3-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン(MPTMS)に結合している。一実施形態では、前記FRMは、FRM-マレイミド複合体である。例えば、FRM-マレイミド複合体は、3-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン(MPTMS)と反応して、FRM結合前駆体を形成する。
【0049】
前記官能化ポリエーテル分子(例えば、官能化PEG分子)は、当該ポリエーテル分子(例えば、PEG分子)が前記ナノ粒子の最外FRM-フリーシリカ層の外表面に共有結合できるように、前記最外FRM-フリーシリカ層の最外表面と反応できる官能基を有している。例えば、ポリエーテル分子またはPEG分子は、当該ポリエーテル分子またはPEG分子が、最外FRM-フリーシリカ層の最外表面のシリカネットワークに共有結合できるように、縮合反応を受けることができる少なくとも1つの基(例えば、メトキシシランあるいはエトキシシラン等のアルコキシシラン基)を有する成分に、直接または連結基を経て、共有結合している。適切な官能基の一例は、トリアルコキシシラン基である(例えば、-Si(OR)3、各Rはメチルあるいはエチル基である)。適切な連結基の一例は、(-O-CH2-CH2CH2-)である。一実施形態では、前記官能化PEG分子は、メトキシ-PEG-シラン(mPEG-シラン)である。
【0050】
任意に、前記官能化PEG分子は、それに共有結合している成分を有することができる。そのような官能化PEG分子は、ヘテロ二官能性PEG分子を使用して形成することができる。前記ヘテロ二官能性PEG分子は、前記最外FRM-フリーシリカ層の最外表面上の官能基と反応できる少なくとも1つの官能基と、前記成分(またはその官能化バージョン)と反応できる官能基を有する。
【0051】
前記コア形成反応において、前記シリカ前駆体、複数の単一タイプのFRM結合前駆体、溶媒、および塩基(例えば、アンモニア)は、シリカコアのシリカネットワークに結合された複数のFRMを有する複数のシリカコアを形成するようなコンディション(例えば、時間および温度)下で反応させられる。
【0052】
前記FRM-フリーシリカ層形成反応において、前記コア(例えば、その中に当該コアが形成されている反応混合物)は、FRM-フリーシリカ層が、前記シリカコア上に形成されるように、シリカ前駆体と溶媒と接触させられる。
【0053】
前記FRM-含有シリカ層形成反応において、コアとFRM-フリーシリカ層を含むナノ粒子(例えば、その中にコアとFRM-フリーシリカ層を含むナノ粒子が形成されている反応混合物)は、FRM-含有シリカ層が形成されるように、シリカ前駆体、コア中の単一タイプのFRM結合前駆体と異なる単一タイプのFRM結合前駆体、溶媒、および塩基と接触させられる。
【0054】
前記FRM-含有シリカ層形成反応において、シリカ前駆体の濃度は、核生成閾値濃度未満に保たれる。一実施形態において、前記反応は、シリカ前駆体の濃度を前記核生成閾値濃度未満に保つために、連続的に一定分量で添加される。シリカ前駆体の濃度を核生成閾値濃度未満に保つのを容易にするために、TMOS(TEOSと比較して、より速い加水分解反応動態を有する)を使用することが望ましい。
【0055】
任意に、2〜100のFRM-含有シリカ層(その間の全ての整数のFRM-含有シリカ層および範囲を含む)を有するナノ粒子が形成されるまで、前記FRM-フリーシリカ層形成反応およびFRM-含有シリカ層形成反応は、ナノ粒子の中心からから順に、コア、FRM-フリーシリカ層、およびFRM-含有シリカ層を有するナノ粒子(例えば、その中にこれらのナノ粒子が形成されている反応混合物)上で順次繰り返される。これらの任意のFRM-含有シリカ層反応において、前記FRMは、他のFRM-含有シリカ層反応で使用されるものと同じであっても、異なっていてもよい。
【0056】
前記最外FRM-フリーシリカ層形成反応において、コア、一以上のFRM-フリーシリカ層、および一以上のFRM-含有シリカ層を有する前記ナノ粒子(例えば、その中にこれらのナノ粒子が形成されている反応混合物)は、最外FRM-フリーシリカ層が、前記最外FRM-含有シリカ層上に形成されるように、シリカ前駆体と溶媒と接触させられる。
【0057】
前記PEG官能化反応(本明細書中でペグ化とも称する)において、コア、一以上のFRM-フリーシリカ層、および一以上のFRM-含有シリカ層、および、最外FRM-フリーシリカ層を有するナノ粒子(例えば、その中でこれらのナノ粒子が形成されている反応混合物)は、前記ナノ粒子の最外FRM-フリーシリカ層の外表面に共有結合している複数のPEG分子を有するナノ粒子が形成されるように、官能化PEG分子と接触させられる。
【0058】
一実施形態において、シリカコアは、単一タイプのFRM結合前駆体、溶媒、および塩基を使用して形成される。FRM-フリーシリカ層は、シリカ前駆体と溶媒を使用して前記シリカコア上に形成される。FRM-含有シリカ層は、シリカ前駆体、単一タイプのFRM結合前駆体、溶媒、および塩基を使用して、前記FRM-フリーシリカ層上に形成される。任意に、一以上のFRM-フリーシリカ層および一以上のFRM-含有シリカ層は、前記シリカコアから最も遠いFRM-含有シリカ層上に交互に形成される。全てのFRM-含有層が形成された後、最外FRM-フリーシリカ層が、シリカ前駆体と溶媒を使用して、前記シリカコアから最も遠いFRM-含有層上に形成される。前記最外FRM-フリーシリカ層は、ナノ粒子の最外FRM-フリーシリカ層の外表面に共有結合している複数のポリエーテル分子を有するナノ粒子が形成されるように、任意に官能化ポリエーテル分子と反応させられる。一実施例では、前記官能化ポリエーテル分子は官能化PEG分子であり、前記ポリエーテル基はPEG基である。
【0059】
前記方法のいずれかのステップにおいて使用される溶媒はアルコールと、前記前駆体(例えば、シリカ前駆体、FRM-結合前駆体、及び/又は官能化PEG分子)を加水分解するのに適切な量の水である。一実施形態において、前記溶媒は、アルコールと適切な量の水を含む。一実施形態において、前記アルコールはエタノールである。
【0060】
前記コア形成反応、FRM-フリーシリカ層形成反応、FRM-含有シリカ層反応、または最外FRM-含有シリカ層反応の適切な条件の決定は、当業者の管理権限内である。例えば、前記コア形成反応、FRM-フリーシリカ層形成反応、FRM-含有シリカ層反応、または最外FRM-含有シリカ層反応は、10℃〜30℃(その間の全ての整数値の℃および範囲を含む)にて、10分〜120分間(その間の全ての整数値の分および範囲を含む)実施される。
【0061】
前記方法のいずれかのステップで使用される塩基は、前駆体(例えば、シリカ前駆体、FRM-結合前駆体、及び/又は官能化PEG分子)の縮合反応を触媒する。一実施形態において、前記塩基はアンモニア(例えば、水溶液中のアンモニア)である。
【0062】
さらにもう一つの面において、本開示は、前記多層FRM-含有ナノ粒子の使用を提供する。前記ナノ粒子は、イメージング法(例えば、細胞内 バイオイメージング法)、ハイスループット・スクリーニング、医療診断、センシング、および製品追跡等の用途のために使用することができる。
【0063】
前記多層FRM-含有ナノ粒子は、細胞を溶解することなく、特定の細胞型(例えば、ある内部構造を有する細胞)を標的にする及び/又は特定するために使用することができる。前記方法は、異なる多層FRM-含有ナノ粒子を検出するための蛍光顕微鏡またはフローサイトメトリーを使用する。一実施形態において、イメージング法は、以下のステップを含む:一つの細胞あるいは複数の細胞を複数の多層FRM-含有ナノ粒子(または複数の識別可能なナノ粒子)と接触させる;および前記一つの細胞あるいは複数の細胞の複数のイメージを得る(各イメージは異なる励起波長および異なる発光波長を使用して得られる)、ここでそれぞれの異なる励起波長は、前記ナノ粒子中に存在する異なる種類のFRMの吸収スペクトル中に存在し、それぞれの異なる発光波長は、前記ナノ粒子中に存在する異なる種類のFRMの発光スペクトル中に存在する。前記方法は、さらに単一のイメージを提供するために複数のイメージを組み合わせるステップを含んでもよい。前記イメージング法において、前記イメージは、例えば、共焦点顕微鏡等の蛍光顕微鏡技術を使用して実施されることができる。前記PEG基に結合された複数の成分を有するナノ粒子を使用することが望ましいかもしれない。
【0064】
例えば、前記イメージング法は、多重方式にて、それらの内部構造に基づき細胞を特定するために使用することができる。一実施形態において、前記細胞は、ナノ粒子が細胞内に取り込まれるように、1nmから100nm未満のサイズを有する前記ナノ粒子あるいは複数の識別可能なナノ粒子と接触させられる。例えば、前記細胞は、前記細胞内へのナノ粒子の取り込みを促進するために、電気穿孔法(例えば、方形波電気穿孔法)にかけられてもよい、
【0065】
前記一つの細胞または複数の細胞は、被検者の中に存在するかもしれない。被検者は、一つの細胞または複数の細胞を有するいかなる被検者でもよい。例えば、前記被検者は人間あるいは人間以外の動物であってもよい。
【0066】
以下の実施例は、本開示を説明するために存在する。それらはいかなる方法による限定も意図しない。
【実施例1】
【0067】
以下は、本開示の多層FRM-含有ナノ粒子の合成および使用を記載する実施例である。
【0068】
この実施例において、輝く、光学的にコードされた蛍光性コア-シェル・シリカナノ粒子が製造された。前記ナノ粒子は、多色コーネルドットまたは単にmcCドットと称され、100nm未満のサイズ(当該サイズは、ナノ粒子をハイスループット・スクリーニングに、および、蛍光多重化を使用してそれらを細胞内バイオイメージングに適用するのに望ましい状態にする)を有する。これらのナノ粒子は、3つのスペクトル的に異なる有機フルオロフォア、すなわち、N-(7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン-3-イル)マレイミド(DACm、λabs=395 nm、λem=450 nm)、テトラメチルローダミン-5-マレイミド(TMRm、λabs=540 nm、λem=570 nm)およびCy5-マレイミド(Cy5m、λabs=640 nm、λem=670 nm)でコードされ、これらは、粒子ごとにそれぞれ、3つの正確に制御された色素数(すなわち、0,5,20)を有し、図1に示されるように26の光学的に識別可能なナノ粒子を生じる。前記色素は、共焦点顕微鏡において、あるいはフローサイトメトリーのようなハイスループット・スクリーニング技術において使用されている、一般に利用できる励起レーザー源(λexc=405 nm、540 nmおよび 633 nm)に基づいて選択され、それゆえ標準的な蛍光計測手段のために有用なmcCドットを提供する。前記粒子構造は、前記色素が、層ごとに(一層ずつ)色素ドープ粒子コアに添加され、それぞれのスペクトル的に識別可能な色素が、色素間のエネルギー移動を減らすために(図1)、純シリカシェルによって空間的に分離されるように設計される。これはイメージングにおいて、最大の輝度レベルおよびそれゆえ最大のシグナル対ノイズ比を確実にする。
【0069】
スクリーニングアッセイの開発において使用されることができる、異なる蛍光シグネチャーを有する光学的にコードされた複数の蛍光性シリカナノ粒子が製造された。シリカの界面化学の多用途性は、ナノ粒子表面を、オリゴヌクレオチドまたはペプチドのような生体分子プローブで修飾することを可能にした。シリカベースのmcCドットから生成できる蛍光性の光学的コード「C」の数は、各カラーに関連する2つのパラメータである、色素カラーの数「m」および、蛍光強度レベルの数「N」に依存する。0から無限大に渡る強度レベルのために、コードの数は、C=Nm−1と定義される。3つの強度レベル(N=3)、3つのカラー(m=3)の現在のケースでは、26のカラーコードが生じる。
【0070】
mcCドットの合成を実施するために、3つの問題に対処した:(1)一般に利用可能な励起レーザー線源に基づく、適切な蛍光色素「m」の同定;(2)識別可能な蛍光強度レベル「N」を生成するために、粒子中に再現性良く組み込むことができる色素の適切な数の同定;および(3)最大輝度レベルを達成するために、エネルギー移動、それによる蛍光消光を最小化するための、粒子内でのスペクトル的に識別可能な色素の空間的隔離。mcCドットを開発するために選択された3つの色素は、DACm、TMRmおよびCy5m(上記参照)であった。単一粒子と単一色のために測定される蛍光強度は、その中に組み込まれた色素の数に依存する。典型的なmcCドット合成バッチ中で、特定のカラーの色素数がポアソン分布されると仮定して(すなわち、色素封入が純粋な確率的な過程にあると仮定して)、異なるmcCドットの異なる強度レベルを識別するために、これらのポアソン分布の平均値は、分布の袖の間の重なりが最小になるように選択された(図2a参照)。粒子中の色素取り込みを正確にコントロールし、且つ、それらの封入数を増加させるにあたり色素間のエネルギー移動を最小限にすることが、蛍光消光を避けるために望ましい。色素分子の数を増加させた所定のコアサイズにとって、色素は、空間的近接に基づいて、エネルギー移動を示す傾向がある。それゆえ、色素間のクロストークを最小化するために、高色素封入数を有する粒子を構築するのに一層ずつ(層ごと)のアプローチが使用された。以前のCドット合成研究は、20〜30nmの直径を有するコア-シェルシリカナノ粒子が、通常、所定の色素濃度のために、粒子コア当たり約5〜7個の色素を取り込むことを明らかにした。色素取り込みがポアソン分布になると仮定すると、粒子当たりの平均色素数が10および15の粒子は、図2aに示されるようにそれぞれ、粒子当たり5色素のバッチと、〜45%および〜25%の重なりをそれぞれ有すると予想される。これに対して、粒子当たり平均色素数20の粒子は、粒子当たり5色素のバッチと、〜3%の重なりを示すだけである。同様にわずかな重なりが、粒子当たり5色素のバッチのポアソン分布と、そのカラーの色素を含まない粒子バッチとで予期される(図2a)。これらの考察に基づいて、我々は、mcCドット中の同じカラーの異なる強度レベルを識別するために、粒子当たり0、5、および20色素の3つの異なるレベルをそれぞれ選択した。
【0071】
図2b-iは、26の異なる(区別できる)mcCドットをもたらす、様々な一層ずつの粒子合成ルートの模式図を示す。mcCドットのカラーコードを識別するためにこの実施例で使用される表記法は、蛍光強度レベルを表示するための小文字(中/高、すなわち、粒子あたり〜5/20色素のために、m/h)および蛍光カラーを表示するための大文字(緑/赤/青の発光のために、それぞれG/R/B)を含む。それぞれの順序は、コアから外殻向きである。例えば、mGhRmB mcCドットは、中緑(〜5色素)コアを有し、高赤(〜20色素)の内核がそれに続き、中青(〜5色素)の外殻がそれに続く。mcCドット中にカラーが存在しないときは(すなわち、そのカラーの色素がゼロ)、単にその表記法を省略することによって表示される。例えば、hGhB mcCドットは、高緑(〜20色素)のコア、赤無し(すなわち、赤色素ゼロ)、および高青(〜20色素)の外殻を有する。色素複合体を形成するために、マレイミド-メルカプト生体共役反応を使用し、市販のマレイミド活性色素(TMRm、Cy5m、またはDACm)を、3-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン(MPTMS)にまず共役させることによって、粒子合成が実施された(図2b)。中程度の色素負荷を含む3つの単色粒子(それぞれ、mG、mR、またはmB、図2c-e参照)は、アルコール中の適切なアンモニアおよび水の濃度にて、色素複合体をTEOSと共縮合させることにより、改良ステバー(Stober[oはウムラウト付])タイプのシリカ縮合を経て、最初に合成された。二次核生成を避けるために、核生成閾値未満の濃度にてTEOSを含む反応溶液を投与することによって、薄いシリカシェルが、これに追加された。各反応溶液から特定の容積が移され、これらの粒子は、中(medium}色素負荷の粒子として保存された。高(high)色素負荷の3つの単色粒子(それぞれ、hG、hR、またはhB、図2c-e)とするために、前記反応溶液の残りに、色素複合体が添加され、コア-シェルシリカナノ粒子の表面上のシラノール基との共縮合が行われた。このステップの後に、薄いシリカシェルが、上述のように再度追加された。この交互の色素層-シリカシェル手順は、粒子あたり〜20色素の適切な高色素負荷が得られるまで実施された。図2c-eは、高緑(TMRm)、高赤(Cy5m)および高青(DACm)単色Cドット粒子に関し、結果として生じたタマネギ様の構造の模式図を示す。高強度の発光を達成するために必要な、粒子当たりのコア上の追加の色素とシリカシェル層の数は、高緑(TMRm)粒子と高青(DACm)粒子では4、高赤(Cy5m)粒子では3であった。
【0072】
前記3つの異なる色素系に対する粒子ごとの色素の数を正確にコントロールするための合成手順の開発の次に、我々は、同じ粒子中に、それぞれの色素を様々な色素負荷レベルで、3色素全て組み込むために、注意深く粒子構造を考案した。これらの粒子は、3つの色素が層ごとの様式で添加され、コア中のTMRm色素(緑)、続いて内殻のCy5m色素複合体(赤)、続いて最終色素層として添加されたDACm色素複合体(青)となるように(図1aの中央の粒子参照)合成された。有機フルオロフォアは、比較的広い吸収および発光スペクトルを有する。我々の粒子中の様々な色素のスペクトルのおよび空間的な近接によって、フェルスター共鳴エネルギー移動が発生することが予期される。そのような無放射のエネルギー移動は、供与体色素の発光と受容体色素の吸収スペクトルの間のスペクトルの重なりの結果である。2つの色素間のエネルギー移動の効率は、フェルスター半径(供与体と受容体の間で50%効率のエネルギー移動が発生する際の距離)によって決定される。DACm-TMRmペアのフェルスター半径の計算値は〜40Å(4.0nm)であり、一方、TMRm-Cy5mペアのそれは〜45Å(4.5nm)である。DACmとCy5mは、可視スペクトルの最遠端にあるので、このペアのフェルスター半径は1.5Å(1.5nm)と最も小さい。エネルギー移動の効率は、供与体と受容体分子の間の分離距離rにより、1/r6で劇的に低下する。エネルギー移動を効果的に抑制するために、我々の粒子におけるTMRmとCy5mの色素層は、10〜12nm厚のシリカシェルによって分離された(例えば、図2f参照)。Cy5m色素を含まない粒子のために、10〜12nmの厚みのシリカシェルが、DACm色素添加の前に、TMRmを含む粒子コア上に形成された(例えば、図2g参照)。TMRmとCy5m層を含む粒子への最初のDACm色素層の追加のために、厚み6〜8nmの純シリカシェルがまず形成された(例えば、図2i参照)。このように、異なるカラーの色素層は、エネルギー移動の効果的な抑制を期待するのに十分な厚みのシリカシェルによって空間的に分離された。
【0073】
TMRmが中央になる色素と選択されたので、様々なmcCドットの合成における一貫性を維持するために、中および高色素負荷TMRm粒子が多量バッチで合成された。2色Cドットを得るための次のステップは、これらのナノ粒子上に10〜12nm厚のシリカ分離シェルを形成し、続いて、Cy5m色素複合体を添加することであった(図2f)。最終シリカシェルの追加後、これは中Cy5m(mR)色素負荷粒子を構成した。このステップに続いて、それらのシリカシェルに2つのさらなるCy5m色素層が、高Cy5m(hR)色素負荷粒子を得るために追加された。より大きい多色Cドット中で高色素負荷に到達するための追加の層が少ないのは、単色Cドットに対してそれらのサイズが大きい(追加の色素付着のために、粒子当たりより大きい表面積を提供する)ことに起因する。これらの手順による合成は、粒子中のDACm色素がゼロの、以下の4つの二色Cドットを提供した:mGmR、mGhR、hGmRおよびhGhR。粒子中のCy5m色素がゼロの二色粒子を得るために、DACm色素複合体が、TMRmとDACm色素層を分離する10〜12nm厚のシリカ分離層とともに、mGおよびhG粒子に添加された(図2g)。これは、中DACm(mB)色素負荷の粒子を構成した。3つのさらなるDACm色素層およびシリカシェルが、高DACm(hB)色素負荷を得るために、mGmBおよびhGmB粒子に追加された。これらの手順による合成は、粒子中にDACm色素がゼロの、以下の4つの二色Cドットを提供した:mGmB、mGhB、hGmBおよびhGhB。
【0074】
粒子中にTMRm色素ゼロの二色Cドットが、Cy5mコア-シェル粒子をテンプレートとして使用して合成された(図2h)。そのために、多量バッチの中Cy5mドープ粒子が合成され、これは2つに分けられ、一つのバッチは、中Cy5m(mR)色素負荷粒子として残され、他のバッチには、高Cy5m(hR)色素負荷粒子を得るために、Cy5m色素とシリカシェル層が交互に3回追加された(図2d)。6〜8nm厚のシリカ分離シェルが、これらのmR/hRナノ粒子上に形成され、その後、DACm色素複合体が添加された(図2h)。最終シリカシェルとともに、これは中DACm(mB)色素負荷粒子を構成した。その後、高DACm(hB)色素負荷を得るために、DACm色素とシリカシェル層が3回交互に追加された。これらの手順による合成は、粒子中にTMRm色素がゼロの、4つの二色Cドットを最終的に提供した:mRmB、mRhB、hRmBおよびhRhB。
【0075】
最終的に、3つの色素全てを取り込んだ三色粒子を得るために、6〜8nm厚のシリカシェルが、mGmR、mGhR、hGmRおよびhGhR粒子上に形成され、続いて、DACm色素層がシリカシェルとともに追加された。その結果生じたmGmRmB、mGhRmB、hGmRmBおよびhGhRmB粒子に、3つのさらなるDACm色素およびシリカシェル層が、高色素ドープDACm(hB)粒子を得るために追加された(図2i)。これらの手順による合成は、以下の8つの三色mcCドットを提供した:mGmRmB、hGmRmB、mGhRmB、hGhRmB、mGmRhB、hGmRhB、mGhRhBおよびhGhRhB。
【0076】
このような多色蛍光性シリカナノ粒子中の色素数を正確に調整する能力は、かなりの構造上の複雑性に付随する。例えば、TMRm、Cy5mおよびDACmについて高色素負荷の三色Cドット(hGhRhB)は、中TMRm色素負荷コア-シェル粒子に追加された4つのTMRm色素と4つのシリカシェル層(合計するとTMRmコアの周りに9つの層)、続いて、高Cy5m色素負荷を得るための3つの色素と3つのシリカシェル層、続いて、高DACm色素負荷を得るための4つの色素および4つのシリカシェル層を含む。緩衝溶液中での立体安定化を提供し、且つ、それらをより生体に適合するようにするため、全ての粒子は最終的に、ポリエチレングリコール(PEG)層で表面被覆された。結果として得られたものは、色素コアの周りに24の識別可能な層(PEG層を含む)を有するタマネギ型の構造であり、前記層のうち11は色素層であり、12は純シリカシェル層である。粒子ごとの多様な色素の組み合わせに基づき、26の分光学的に識別可能な粒子が、図1に示すように合成された。図1aは、上述した合成経路を反映する方法で構築された、これらの26の色素の演色を示す。図1bは、環境光下におけるキュベット内の水溶液中の26粒子の写真を示す。キュベットは、緑のTMRm色素負荷に従って体系化され、TMRm色素負荷が、「無し」「中」「高」の粒子がそれぞれ、「下」「中央」「上」の列に配置されている(具体的な割当は図4b参照)。対照用に、図1bの左下の第27キュベットには、色素無しのPEG化シリカナノ粒子が入っている。
【0077】
実験セクション 化学薬品および物質
粒子合成を行うために、すべての化学薬品は一般に認められているように使用された。テトラエトキシシラン(TEOS、≧99%、GC)とエタノール中のアンモニア(2.0M)は、Sigma Aldrich社から購入した。(3-メルカプトプロピル)-トリメトキシシラン(MPTMS、>96%純度、Gelest Inc.)は、シリカナノ粒子中への色素取り込みの為の共役リンカーとして使用された。ナノ粒子合成のために使用された色素は、Cy5-マレイミド(Cy5m、GE Healthcare Life Sciences)、テトラメチルローダミン-5-マレイミド(TMRm、Life Technologies)およびN-(7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン-3-イル)マレイミド(DACm、Anaspec, Inc)であった。色素は、ジメチル・スルホキシド(DMSO、無水≧99.9%、Sigma Aldrich)に溶解された。エトキシ-シラン終端ポリ(エチレングリコール)(mPEG-シラン、モル質量 〜5000g/mol)は、 Layson Bio社から購入した。反応は、エタノール(200 proof、Pharmaco-Aaper)および脱イオン水(DI水、18.2 MΩ.cm-1、purity、Millipore Milli-Q system)中で実施された。粒子は、10,000分子量カットオフ(MWCO)Snakeskin透析膜チューブ(Pierce)を使用して透析され、0.2μm PTFEシリンジフィルター(Fisher Scientific)で濾過された。粒子は、細胞測定を実施するために、ダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水 1X緩衝液(カルシウムとマグネシウムを含まないDPBS、Life Sciences)中に移された(MWCO30,000を備えたMacrosep(登録商標) Advance Centrifugal Device (Pall Corporation)を使用)。アジ化ナトリウム(BioUltra、≧99.5%、Sigma Aldrich)が、バイオサイドの機能を果たすために、緩衝液中の粒子に添加された。細胞イメージングのために、前記ナノ粒子は、Gene Pulser X(Bio-Rad)を使用して、電気穿孔処理された。細胞表面は、Alexa Fluor 488 cholera toxin subunit B(Invitrogen)で標識された。
【0078】
ナノ粒子合成 色素結合
色素TMRm(DMSO中2.6mM)、Cy5m(DMSO中1.26mM)およびDACm(DMSO中3.4mM)のマレイミド誘導体が、15時間、窒素雰囲気グローブボックス中のDMSOに溶解された。ナノ粒子合成のために、前記色素は、10〜12時間、前記グローブボックス中で1:25の色素:シランのモル比にて、MPTMSと結合された。TMRm/Cy5m/DACm色素複合体のために、10×10-5 M/4.0×10-5 M/45×10-5 Mの濃度がそれぞれ使用された。
【0079】
中および高色素負荷の単色Cドットの合成 中および高TMRm負荷ナノ粒子合成
エタノール中に0.88 Mの脱イオン水と0.2 Mのアンモニアを含む10 mLのエタノール溶液に、1.3×10-5 M TMRm色素複合体が添加され、15分間撹拌下に置かれた。この溶液に、0.055 M TEOSが添加され、反応が12時間撹拌下で行われた。この溶液に、0.105 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて液滴で添加され、中TMRm負荷粒子(mG)が得られた。
【0080】
高TMRm負荷粒子(hG)のために、2×10-5 M TMRm色素複合体が、5 mLのmG反応溶液に添加され、8時間撹拌下に置かれ、続けて、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて、0.105 MのTEOSが添加された。この溶液は、さらなるTMRm色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。hG粒子を得るために、この手順が合計4回繰り返された。
【0081】
中および高Cy5mナノ粒子合成
エタノール中に0.88 Mの脱イオン水と0.2 Mのアンモニアを含む10 mLのエタノール溶液に、1×10-5 M Cy5m色素複合体が添加され、15分間撹拌下に置かれた。この溶液に、0.055 M TEOSが添加され、反応が12時間撹拌下で行われた。この溶液に、0.105 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて液滴で添加され、中Cy5m負荷粒子(mR)が得られた。
【0082】
高Cy5m負荷粒子(hR)のために、1×10-5 M Cy5m色素複合体が、5 mLのmR反応溶液に添加され、8時間撹拌下に置かれ、続けて、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて、0.105 MのTEOSが添加された。この溶液は、さらなるCy5m色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。hR粒子を得るために、この手順が合計3回繰り返された。
【0083】
中および高DACmナノ粒子合成
エタノール中に0.88 Mの脱イオン水と0.2 Mのアンモニアを含む10 mLのエタノール溶液に、5×10-5 M DACm色素複合体が添加され、15分間撹拌下に置かれた。この溶液に、0.055 M TEOSが添加され、反応が12時間撹拌下で行われた。この溶液に、0.15 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて液滴で添加され、中DACm負荷粒子(mB)が得られた。
【0084】
5 mLのmB粒子溶液に、5 mLのエタノールが添加され、高DACm負荷粒子(hB)が合成された。エタノール中の脱イオン水とアンモニアの濃度が、それぞれ0.88 M と0.2 Mに維持された。9×10-5 M DACm色素複合体が、10 mLの反応溶液に添加され、8時間撹拌下に置かれ、続けて、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて、0.15 MのTEOSが添加された。この溶液は、さらなるDACm色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。hB粒子溶液を得るために、この手順が合計4回繰り返された。
【0085】
多色Cドット(mcCドット)の合成 中および高TMRm負荷粒子上のシリカシェル合成
中TMRm負荷粒子(mG)は、前記反応溶液を、100 mLまでスケーリングすることによって、合成された。エタノール中に0.88 Mの脱イオン水と0.2 Mのアンモニアを含む100 mLのエタノールに、1.3×10-5 M TMRm色素複合体が添加され、15分間撹拌下に置かれ、続けて、0.055 M TEOSが添加され、12時間撹拌下に置かれた。この溶液に、0.105 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて液滴で添加され、シリカシェルが形成された。前記mG粒子合成の後、前記溶液は、2つの丸底フラスコに、それぞれ50 mLずつ分け入れられた。前記50 mL mG粒子溶液の一つに、2×10-5 M TMRm色素複合体が添加され、8時間撹拌下に置かれ、続けて、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて、0.105 MのTEOSが添加された。この溶液は、さらなるTMRm色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。高TMRm粒子(hG)を得るために、この手順が合計4回繰り返された。
【0086】
前記50 mLのmGよびhG溶液のそれぞれに、2.6 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり2μLの割合にて添加され、二色粒子合成を実施する前に、10〜12nm厚のシリカシェルが得られた。
【0087】
中および高Cy5m負荷粒子上のシリカシェル合成
中Cy5m負荷粒子(mR)は、30 mL反応系にスケーリングすることによって、合成された。エタノール中に0.88 Mの脱イオン水と0.2 Mのアンモニアを含む30 mLのエタノール溶液に、1×10-5 M Cy5m色素複合体が添加され、15分間撹拌下に置かれ、続けて、0.055 M TEOSが添加され、反応が12時間撹拌下で行われた。この溶液に、0.105 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて液滴で添加され、シリカシェルが形成された。前記mR粒子溶液は、2つの丸底フラスコに、それぞれ15 mLずつ分け入れられた。前記15 mL mR粒子溶液の一つに、1×10-5 M Cy5m色素複合体が添加され、8時間撹拌下に置かれ、続けて、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて、0.105 MのTEOSが添加された。この溶液は、さらなるCy5m色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。高Cy5m負荷粒子(hR)を得るために、この手順が合計3回繰り返された。
【0088】
前記15 mLのmRおよびhR溶液のそれぞれに、1.8 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり2μLの割合にて添加され、6〜8nm厚のシェルが得られた。
【0089】
二色Cドットの合成 中および高TMRm粒子へのCy5m色素複合体の添加
第二層として、Cy5m色素を有する粒子を合成するために、10〜12nm厚のシリカシェルを有するmGおよびhG粒子の溶液30 mLが、2つの別の丸底フラスコ内に入れられた。中Cy5m負荷のために、1×10-5 M Cy5m色素複合体が、30 mLのmGおよびhG粒子溶液を含む反応フラスコのそれぞれに添加され、8時間撹拌下に置かれた。この溶液に、0.105 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて液滴で添加され、薄いシリカシェルが形成された。各反応溶液から、15 mLが取り除かれ、mGmRおよびhGmR粒子溶液として保管された。高Cy5m負荷のために、1×10-5 M Cy5m色素複合体が、15 mLのmGmRおよびhGmR反応溶液にそれぞれ添加され、8時間撹拌下に置かれ、続いて、0.105 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて添加された。この溶液は、さらなるCy5m色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。この、交互のCy5m色素複合体-TEOSシェル追加手順は、mGhRおよびhGhRの粒子を得るために、合計2回実施された。
【0090】
中および高TMRm粒子へのDACm色素複合体の添加
第二色素層としてDACmを有する粒子を合成するために、10〜12nm厚のシリカシェルを有する中および高TMRm粒子の溶液10 mLが、2つの別の丸底フラスコ内に入れられた(セクション1.3.aから)。
【0091】
中DACm負荷のために、5×10-5 M DACm色素複合体が、10 mLのmGおよびhG粒子溶液を含む反応フラスコのそれぞれに添加され、この反応溶液は8時間撹拌下に置かれた。薄いシリカシェルが、30分ごとの反応容積1 mLあたり1μLの割合による0.15 MのTEOSの液滴添加によって、当該反応に添加され、シリカシェルが形成された。各反応溶液の5 mLが、mGmBおよびhGmB粒子溶液として保管された。
【0092】
高DACm負荷のために、5 mLのエタノールが、5 mLの二色mGmBおよびhGmB粒子溶液に添加された。エタノール中の脱イオン水とアンモニアの濃度が、それぞれ0.88 M と0.2 Mに維持された。9×10-5 M DACm色素複合体が、10 mLの反応溶液に添加され、8時間撹拌下に置かれ、続けて、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて、0.15 MのTEOSが添加された。この溶液は、さらなる色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。この、交互のDACm色素複合体-TEOSシェル追加手順は、mGhBおよびhGhBの粒子溶液として高DACm負荷粒子を得るために、合計3回実施された。
【0093】
中および高Cy5m粒子へのDACm色素複合体の添加
第二色素層としてDACmを有する粒子を合成するために、6〜8nm厚のシリカシェルを有するmRおよびhR粒子の溶液10 mLが、2つの別の丸底フラスコ内に入れられた(セクション1.3.bから)。
【0094】
中DACm負荷のために、5×10-5 M DACm色素複合体が、10 mLのmRおよびhR粒子溶液を含む反応フラスコのそれぞれに添加され、この反応溶液は8時間撹拌下に置かれた。薄いシリカシェルが、30分ごとの反応容積1 mLあたり1μLの割合による0.15 MのTEOSの液滴添加によって、当該反応に添加され、シリカシェルが形成された。反応溶液の5 mLが、mRmBおよびhRmB粒子溶液として保管された。
【0095】
高DACm負荷のために、5 mLのエタノールが、5 mLの二色mRmBおよびhRmB粒子溶液に添加された。エタノール中の脱イオン水とアンモニアの濃度が、それぞれ0.88 M と0.2 Mに維持された。9×10-5 M DACm色素複合体が、10 mLの反応溶液に添加され、8時間撹拌下に置かれ、続けて、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて、0.15 MのTEOSが添加された。この溶液は、さらなる色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。この、交互のDACm色素複合体-TEOSシェル追加手順は、mRhBおよびhRhBの粒子溶液として高DACm負荷粒子を得るために、合計3回実施された。
【0096】
三色Cドットの合成 TMRmおよびCy5mを含む二色粒子上のシリカシェル合成
セクション1.3.c.で言及した10 mLのmGmR、mGhR、hGmRおよびhGhRに、1.8 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり2μLの割合にて添加され、6〜8nm厚のシェルが得られた。TMRmおよびCy5mを含む二色粒子のそれぞれ10 mLの溶液が、別の丸底フラスコに入れられた。脱イオン水とアンモニアの濃度が、それぞれ0.88 M と0.2 Mに維持された。
【0097】
TMRmおよびCy5m負荷二色粒子へのDACm色素複合体の添加
中DACm負荷のために、5×10-5 M DACm色素複合体が、10 mLのmGmR、mGhR、hGmRおよびhGhR粒子溶液を含む反応フラスコのそれぞれに添加され、8時間撹拌下に置かれた。薄いシリカシェルが、30分ごとの反応容積1 mLあたり1μLの割合による0.15 MのTEOSの液滴添加によって、当該反応に添加され、シリカシェルが形成された。5 mLの反応溶液が、mGmRmB、mGhRmB、hGmRmBおよびhGhRmB粒子として保管された。
【0098】
高DACm負荷のために、5 mLのエタノールが、中DACm負荷粒子を含む5 mLの三色粒子溶液に添加された。エタノール中の脱イオン水とアンモニアの濃度が、それぞれ0.88 M と0.2 Mに維持された。9×10-5 M DACm色素複合体が、10 mLの反応溶液に添加され、8時間撹拌下に置かれ、続けて、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて、0.15 MのTEOSが添加された。この溶液は、さらなるDACm色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。この、交互のDACm色素複合体-TEOSシェル追加手順は、高DACm負荷粒子:mGmRhB、mGhRhB、hGmRhBおよびhGhRhB粒子を得るために、3回実施された。
【0099】
ペグ化前のナノ粒子上のシリカシェル成長
全てのナノ粒子で同じサイズとなるように、シリカシェルは、TEOSの液滴添加によって、全ての粒子上で増大化された。全ての溶液で、エタノール中の脱イオン水とアンモニアの濃度が、それぞれ0.88 M と0.2 Mに維持された。
【0100】
中(セクション1.1.b)/高(セクション1.1c)DACm粒子を含む10 mLの溶液に、4.8 M TEOSが添加され、中/高TMRm粒子(セクション1.3.a)に、2.7 M TEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり2μLの割合にて添加された。5 mLの中および高Cy5m粒子溶液(セクション1.3.b)に、3.6 M TEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり2μLの割合にて添加された。
【0101】
G-R(セクション1.3.c)/G-B(セクション1.3.d)/R-B(セクション1.3.e)を含む二色粒子溶液5 mLに、2.6 M TEOS/ 2.6 M TEOS/ 3.3 M TEOSが、30分ごとに反応容積1 mLあたり2μLの割合にてそれぞれ添加された。
【0102】
中DACm粒子(セクション1.3.f)のみを含む三色粒子溶液5 mLに、追加の0.7 M TEOSが、30分ごとに反応容積1 mLあたり2μLの割合にて添加された。高DACmを含む三色粒子には、追加のTEOSは添加されなかった。
【0103】
mcCドットナノ粒子のペグ化
1.0リットルの脱イオン水に、2.0 M塩酸(水溶液)を添加することによって、pHメーター(VWR International Symphony、SB70P)を使用して、pHが5に調節された。ペグ化を実施するために、全ての粒子を、粒子合成のセクションで言及したように、同じサイズに成長させた。0.08 Mの水溶性PEG-シラン(mPEG-シラン、M.W. 5k)溶液が、pH5にて、脱イオン水中にPEG-シランを溶解することによって調製された。この溶液1 mLがバイアルに入れられ、2 mLのエタノールが添加され、溶液は約10分間撹拌された。得られたそのままの粒子溶液1.0 mLが、エタノール-水混合物中に溶解されたmPEG-シラン3 mLに液滴で添加され、その後溶液は、70℃に維持された油浴中で、24時間撹拌され続けた。
【0104】
ペグ化後、粒子は10,000MWCO透析膜チューブを使用して脱イオン水中で透析され、0.2μm PTFEシリンジフィルターを使用してろ過され、さらなる特性評価のために、室温にて暗所で保管された。
【0105】
細胞イメージング測定のために、粒子は、ダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中に移行された(30,000MWCOを備えたMacrosep[登録商標] Advance Centrifugal Deviceを使用)。透析に続いて、5 mLのペグ化ナノ粒子溶液が、5 mLの緩衝液に添加され、30分間、3500 rpmで遠心分離された。このプロセスは、緩衝液を使用して3回繰り返された。最終ステップとして、溶液を低温殺菌するために、粒子は15分間75℃に加熱され、続いて、0.1 %(w/v)アジ化ナトリウム水溶液が添加された。
【0106】
中および高色素負荷ナノ粒子の特性評価
環境光の下で、27キュベットの反射光イメージの写真が撮られた。写真画像は、コア中に、TMRm色素無しの粒子(下の列)、〜5TMRm色素の粒子(中央の列)および〜20色素の粒子(上の列)として配置された。各列は、ISO 100および三脚上に固定されたCanon EOS digital Rebel 400 D cameraのf/4.5、第二露光1/20thの同じ設定を使用して、別々に撮影され、その後、Adobe Photoshopを使用して上述した配列に並べられた。
【0107】
分光分析および分光蛍光分析
前記粒子は、Varian Cary 5000 Spectrometer (Varian、Palo Alto、CA)を使用して、石英キュベット中で、脱イオン水を用いて、前記粒子または遊離型染料を希釈することによって、それぞれの遊離型色素に吸光度マッチ(absorbance matched)された。DACm(25,000 M-1cm-1)、TMRm(98,000 M-1cm-1)およびCy5m(250,000 M-1cm-1)の吸光係数が、サンプル中の色素濃度を定量化するために使用された。吸光度マッチドサンプルの蛍光測定は、Photon Technologies International Quantamaster Spectrofluorometer (PTI、Birmingham、NJ)で実施された。
【0108】
蛍光相関分光法(FCS)
粒子あたりの輝度を定量化するための、粒子の流体力学半径および濃度;前記吸光度マッチドサンプルは、固体405 nm(DACm粒子用)、HeNe 535 nm(TMRm粒子用)およびHeNe 633 nm(Cy5m粒子用)レーザー励起源を使用してセットアップされた自家製マルチスペクトル蛍光相関分光法(FCS)で測定された。励起ビームは、60X Olympus UPlan SAPO、1.2NA水浸対物レンズを通じて反射された。ナノモル濃度の蛍光サンプル200μL体積が、No.1.5カバースリップ・ボトムのマイクロウェル皿(MatTek P35G-1.5-10-C)の上に乗せられた。サンプルからの放射光が、対物レンズによって収集され、励起/発光二色性を通過し、発光ミラーによって集束レンズ内に反射された。励起光を除去し、発光光子のみを収集するために、発光は、ロングパスフィルター(Chroma)を通して焦点合わせされた。50ミクロンのピンホールが、蛍光が収集された有効容積を軸方向に制限するために使用された。前記光はその後第二レンズを通過して、アバランシェフォトダイオード(SPCM 14、Perkin Elmer)に入った。その結果生じた光電流は、相関器カード(Correlator.com)によりデジタル処理で自己相関された。
【0109】
データは、等式1の解析形に示されるように、三重項補正自己相関関数を使用してフィットされた。
【数1】
Aは、三重項補正の振幅であり、τRは三重項状態における色素分子/粒子の見かけの拡散時間であり、τDは一重項状態における分子/粒子の拡散時間であり、Nは焦点ボリューム中の分子の数である。構造因子パラメータ「s」は、軸と放射軸の比の観点からの3-Dガウス焦点ボリュームを表し、既知の拡散係数を有する標準色素の測定から計算される。405 nm、535 nmおよび 633 nmのレーザー線のための構造因子「s」を得るために使用された色素は、それぞれ、N-(7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン-3-イル)-マレイミド、テトラメチルローダミン-5-マレイミドおよびAlexa Fluor 647-マレイミドであった。
【0110】
細胞イメージング 細胞培養
RBL-2H3細胞は、前述したように、20% FBS (Atlanta Biologicals)および10μg/mlの硫酸ゲンタマイシンが追加されたMEMにおいて単層培養で維持された。
【0111】
電気穿孔法による細胞中へのナノ粒子送達
細胞は継代後3〜5日で収集され、1×106/mL RBL-2H3細胞は、DPBS緩衝液中に懸濁されたナノ粒子200μL(5〜10μM)を含む、0.5 mLの低温の電気穿孔法緩衝液(137 mM NaCl、2.7 mM KCl、1 mM MgCl2、1 mg/mlグルコース、20 mM HEPES(pH 7.4))中で電気穿孔処理された。Gene Pulser X (Bio-Rad)を使用して、280 V、10.0 msパルス長、4パルス、および0.1 msのパルス間隔の設定で、方形波電気穿孔法が使用された。この手順は、26のナノ粒子のそれぞれで繰り返された。電気穿孔処理された細胞は、4%のパラホルムアルデヒドと0.1%グルタルアルデヒドで固定される前に約1時間リカバーされた。固定された細胞は、その後、細胞膜を染色するために、室温にて15分間、0.5μg/mL Alexa 488 cholera toxin subunit Bで標識された。
【0112】
共焦点イメージング
ナノ粒子含有細胞は、40X水浸対物レンズ(N.A=1.2)を使用して、Zeiss 510 LSM共焦点顕微鏡で画像化された。画像は、励起用の405、488、561、633 nmレーザー線および放射光を集めるための420〜480(Band Pass、BP)、575(Long Pass、LP)、505〜550(BP)および650(LP)フィルターセットを使用して順次撮影された。ImageJは、画像を、緑、赤、青、黄色および明視野像に分けるために使用された。重ね撮り画像は、ImageJで連結され、4つの発光チャネルからの画像のみを含んでいる。粒子は、赤、緑および青の画像の共局在に基づいて同定された。
【0113】
得られた粒子は全て、分光計測を実施する前に、5kモル質量のポリ(エチレングリコール)-シランを使用してペグ化された(実験セクション参照)。26の粒子種全ての完全な分光特性評価の記述は、この明細書の範囲を超えるので、ここでは特定のmcCドットの代表的な例のみが、全26粒子の全ての色の輝度レベルの分光計測の要約とともに提供される(図3および4参照)。ナノ粒子の特性を明らかにし、それらの蛍光特性を理解するために、中および高DACm、TMRm、およびCy5m色素負荷単色ナノ粒子の第一水溶液は、それぞれの遊離型親染料と吸光度マッチされた。図3a-cは、得られた吸光度および発光スペクトルを示す。遊離型色素と粒子の間で有意なスペクトルのシフトは観察されず、色素の電子構造は封入されても保存されることが示唆された。中および高DACm、TMRmおよびCy5m色素ドープナノ粒子は、遊離型色素と比べて、それぞれ〜6.0、〜1.3、および〜1.5の増強を示す。3つの系全てにおいて、強固なシリカ環境内への色素封入は、水溶液中の遊離型色素と比べて有意な輝度の増加をもたらし、これは従前の研究と一致し、これらのコンディション下では、ここで実証された高負荷レベルでさえ、色素は蛍光消光を示さないことを示唆している。
【0114】
粒子中に取り込まれた色素の数は、吸光度測定と組み合わされた蛍光相関分光法(FCS)を使用して定量化された。FCS実験のセットアップは、それぞれλ=405 nm、543 nmおよび633 nmで色素を励起させるために装備された(実験セクション参照)。FCSは、拡散に基づく分光技術であり、自己相関曲線を生成するために拡散成分の蛍光を使用する。動的光散乱(DLS)と同様に、相関減衰が拡散に関連するタイムスケールは、同様に拡散成分の流体力学半径/直径に関連する。図3d-fは、3つの親色素(実線)の自己相関曲線と、中および高色素負荷における3つの色素/色に由来する6つの単色Cドット(mG、mR、およびmB[○];hG、hR、およびhB[●])の自己相関曲線をそれぞれ比較する。色素を取り込んだナノ粒子は、親の遊離型色素よりはるかに遅く拡散し、遊離型色素から粒子への流体力学半径の有意な増加を確認する。さらに、中および高色素レベル含有粒子は、非常によく似た相関曲線を示し、最終標的粒子サイズに対する高制御を明らかにしている。DACm、TMRmおよびCy5m系の自己相関曲線の分析は、遊離型色素について、それぞれ1.3nm、1.4nmおよび1.4nmの直径を、同様に、中および高色素負荷粒子の両方について、それぞれ40nm、45nmおよび35nmの直径を明らかにする。
【0115】
FCS自己相関曲線の振幅、G(0)から、焦点ボリューム中の蛍光成分の数が得られ、そこから、それらの濃度を推定できる。吸光度測定から得られた色素濃度とともに、この粒子濃度を使用すると、粒子あたりの色素の数が計算できる。これは、多色Cドット(mcCドット)の合成における粒子あたりの色素数の定量的評価を可能にする情報であり、ここに記載されたコントロールの必要レベルを達成するため、合成プロトコルを最適化するためのフィードバックとして使用された。これらの測定に基づいて、我々は中および高色素負荷粒子について粒子あたりの色素数を計算し、それらは、TMRm、Cy5mおよびDACm色素負荷について、6/27、6/22および6/24であった。さらに、水溶液中の遊離型色素を超える、粒子に内包された色素の蛍光増強の結果と、粒子あたりの色素数から、各色素-粒子系の輝度ファクターが計算できる。このファクターは、水溶液中の単一の遊離型色素と比べて粒子がどれだけ明るくなったかを表す。この方法で決定されたそれぞれの輝度ファクターは、中/高TMRm粒子で9.1/35、中/高Cy5m粒子で9/33、中/高DACm粒子で36/144であった。これらの結果は、前記粒子が、親の遊離型色素より1〜2桁明るいことを示唆する。それらの多重特性に加えて、これらの非常に高い輝度レベルは、mcCドットをバイオイメージング用途にとって非常に魅力的なものにするであろう。計算された輝度ファクターは、光学的FCS検出器で個々の拡散種の計数率によって測定された色素および粒子の実験で得られた輝度と比較することができる。これは、遊離型色素および粒子それぞれの輝度の直接的尺度を提供する。図3g-iは、これらの測定の結果を示す。図3gは、中/高TMRm負荷粒子が、TMRm遊離型親色素より6.6(±0.1)/32(±0.4)倍明るいことを示し、一方、Cy5m系について、図3hは、中/高Cy5m負荷粒子が、Cy5m遊離型親色素より5.3(±0.2)/27.6(±0.4)倍明るいことを示す。図3iは、DACm粒子系の輝度を比較し、中/高DACm負荷粒子が、DACm遊離型親色素より、それぞれ24(±3.0)/105(±10)倍明るいことを示す。これらの直接的な輝度測定は、目標としたように、個々の輝度レベルが、4〜6のファクターによって互いに区別されることを確認する。従前の研究における同様の観察と同じく、計算された輝度ファクターは、FCS測定から得られた値を体系的に過大評価する。これは、色素当量の決定におけるエラーに起因するかもしれない(例えば、遊離型と封入色素間における吸収断面積における変化無しと想定している)。それはさらに、FCS測定が、偏光で実施されたという事実に起因しているかもしれず、これは粒子中の色素のサブセットを励起させただけかもしれず、それは、輝度ファクターから予測されるより粒子あたりのカウントがより小さくなる原因となる。
【0116】
>3μmサイズの蛍光性多重シェルナノ粒子に関する従前の研究は、粒子の蛍光強度が、放射光の散乱を引き起こす屈折率の変化に起因して、シェル層の数が増加すると減少することを明らかにした。我々は、中および高色素負荷粒子について、粒子あたりの色素数と粒子あたりの輝度の比を比較することによって、同じ効果が本件の粒子に当てはまるかどうか調べた。結果は、中および高DACm負荷粒子について、前記比は4.0/4.3であり、中および高TMRm負荷粒子について、前記比は4.5/4.8であり、中および高Cy5m負荷粒子について、前記比が3.66/3.69であることを示した。これらの結果は、従前の結果と対照的に、我々のシステムにおける、さらなるシリカシェルの組み込みによる中から高色素負荷への移行が、相対的な蛍光発光を減じないことを明らかにする。
【0117】
図4aは、中/高TMRm色素負荷単色Cドット(mG、○/hG、●)から始まり、中/高Cy5m色素負荷二色Cドット(hGmR、○/hGhR、●)を経て、中/高DACm色素負荷を有する最終の三色mcCドット(hGhRmB、○/hGhRhB、●)へと至る全合成スキームをカバーする、三色mcCドットへと移行する特定の粒子の代表的なFCS曲線を示す。このプロットの全粒子は、〜85nmの同じサイズに成長しなかったが、ペグ化ステップを使用して終結された。中TMRm色素負荷粒子から出発し、高色素負荷にて三色素全てを含む粒子への、相関曲線の長時間方向へのシフトに反映されるように、結果は粒子サイズの増加を明確に示す。緑の蛍光性粒子のFCS曲線は、短時間での三重項状態からの明確な寄与を示し、これはフィッティング手順によって説明された(実験セクション参照)。中TMRm負荷コアシェル粒子合成(mG、緑の○)は、15nm(±0.5)直径(PEG層含む)の粒子をもたらした。4つのTMRm色素およびシリカシェル層の追加は、直径28nm(±0.6;PEG層含む)の高TMRm色素負荷粒子(hG、緑の●)をもたらした。4つの交互の色素およびシリカシェル層のそれぞれは、シェルの厚みに1.2〜1.5nm(あるいは、粒子の直径に2.4〜3nm)を与えた。中Cy5m色素負荷の二色粒子は、当初、直径28nmのhG粒子上にグラフトされた10〜12nm厚のシリカシェル(粒子の直径は20〜24nm増加)を有し、続いて、1つの交互のCy5m色素およびシリカシェル層を追加された(hGmR、赤の○)。hGおよびhGmR粒子の自己相関曲線の比較は、hGmR曲線が、hG曲線の右に有意にシフトしたことから、粒子サイズにおける大きな違いを明らかにする。分析は、二色Cドットの直径が53nm(±2.0)であることを明らかにする。前記hGmR粒子上に追加された2つの交互のCy5m色素およびシリカシェル層を有する、高Cy5m色素負荷粒子は、直径57nm(±2.2)の二色Cドット(hGhR、赤の●)となった。それぞれの追加のCy5m色素およびシリカシェル層は、粒子の厚みを1.0〜1.1nm増加した(粒子の直径は2.0〜2.2nm増加)。最終的に、三番目のDACm色素を含む粒子は、前記57nm(±2.2)hGhR粒子上で成長した6〜8nm厚のシリカ分離シェルを有し(粒子の直径は12〜16nm増加)、その後、1つの交互のDACm色素およびシリカシェル層が追加され、粒子径〜72nm(±4.1)の三色Cドット(hGhRmB、青の○)を生じた。粒子サイズの増加は、hGhRとhGhRmBのFCS曲線を比較すると容易に理解できる。図4aの最後のFCS曲線は、前記hGhRmB粒子に追加された、3つのさらなる交互のDACm色素およびシリカシェル層に加えてPEG表面層を有する3色素全てが高負荷された三色Cドットのものであり(hGhRhB、青の●)、最終粒子の直径は85nm(±4.6)となった。
【0118】
同じ粒子内で異なる色の色素間のエネルギー移動がないこと、すなわち、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)を抑制する純シリカ層の能力は、それぞれ3つ全ての色素/色を含む4つの粒子(hGhRhB、hGhRmB、mGhRhBおよびhGmRhB)の溶液の6つの蛍光発光スペクトルを示す図4bで明らかにされている。左側および右側のスペクトル(それぞれ、青および赤の発光)のために、溶液は緑に吸光度マッチされ、中央のスペクトル(緑の発光)のために、溶液は赤に吸光度マッチされた。図4bは、中および高DACm(mB/hB)、TMRm(mG/hG)、およびCy5m(mR/hR)を含む三色粒子の、それぞれ、405 nm、540 nm、および633 nmにおける励起からの発光特性を比較する。高DACm色素負荷(hGhRhB)粒子は、405 nmで励起されたとき、中DACm負荷(hGhRmB)のものより、〜3.8倍明るかった。高TMRm色素負荷(hGhRhB)粒子は、540 nmで励起されたとき、中TMRm負荷(mGhRhB)のものより、〜3.5倍明るかった。633 nmの励起では、高Cy5m負荷(hGhRhB)粒子は、中負荷(hGmRhB)のものより、〜4.0倍明るかった。大きく異なる発光レベルは、各色について中および高色素負荷された粒子が、分光学的に明確に識別できることを明らかにする。さらに、青または緑の発光のスペクトルのいずれも、FRETの分光学的証拠を示さない。例えば、405 nm(青)でサンプルhGhRmBまたはhGhRhBを励起させると、DACmからTMRmまたはCy5mへの有意なエネルギー移動は、緑または赤の発光それぞれにより明らかではない。同様に、540 nmでhGhRhBまたはmGhRhBの粒子を励起させると、TMRmからCy5mへの有意なエネルギー移動は、赤の発光により観察されない。我々は、異なる色の色素の層を空間的に分離するために使用したシリカシェルが、FRETを明確に抑制すると結論付ける(そうでなければ、それは前記スペクトルで観察されるであろう)。
【0119】
図4cは、粒子溶液で満たされた図1bのキュベットと同じ方法で配置された棒グラフの形式で、全26粒子の全ての色の分光輝度レベルをまとめる。輝度レベルは、図4bに例示されるように、各粒子の各色のそれぞれの蛍光発光最大値として測定された。各色に関するバーの高さは、中色素負荷の粒子の輝度で正規化された。我々は、図1bの写真と同様に、上から下へかけて、粒子コア中の粒子あたりの緑のTMRm色素(緑のバー)の数の減少に合わせて、表示を、〜20(上の行)、〜5(中央の行)、0色素(下の行)と、3つの族/列に分けた。これらの棒グラフによると、高TMRm色素負荷の粒子は、中色素負荷TMRm粒子より3.5倍明るかった。我々は、図の左から右にかけて、異なる量のCy5m(赤のバー)およびDACm色素(青のバー)を含む粒子について、これらの「緑の」族/列のそれぞれにおいて、蛍光輝度レベルを比較する。その結果から、設計時の狙い通り(上記参照)、高Cy5m色素負荷粒子は、中Cy5m色素レベルの粒子より4〜4.3倍明るく、一方で、高DACm負荷粒子は中DACm負荷粒子より約3.8〜4.2倍明るかった。図4cで明らかになったように、mcCドットの三色について測定された粒子輝度レベルは、もっぱら粒子中のその色の色素の数に起因した。これは、合成プロトコルに基づく輝度レベルの予測を可能にし、且つ、特定のカラーコードの同定をより管理しやすくする。
【0120】
細胞集合体における生物学的多重化
mcCドットの特性評価に続いて、多色細胞内イメージングを実証するために、蛍光多重化が実施された。個々の細胞溶液は、一種類の粒子溶液で電気穿孔処理され(実験セクション参照)、これに続いて、細胞は、共焦点イメージングを使用して、RGB色混合スキームに基づいて混合され、識別された。ラットの好塩基球性白血病マスト細胞(RBL-2H3)は、これらの測定のために使用され、当該細胞の表面は、細胞外面を同定するために、Alexa488-Cholera toxin subunit B (λabs=488 nm、λem=515 nm、mcCドット合成で利用されていない波長)で標識された。
【0121】
図5は、hB、hGhB、hGhRおよびhGhRmB粒子をそれぞれ含む細胞混合物の共焦点蛍光顕微鏡画像を示す。図5(a-d)は、細胞を560 nm、633 nm、405 nmおよび488 nmでそれぞれ励起させた際の、緑、赤、青および黄色チャネルで得られた細胞画像を示す。これらの画像は、前記ナノ粒子中に存在する各色素カラーから放射された光子に対応する各色チャネルの発光を示す。RBL-2H3細胞は、緑(図5a)および青(図5b)チャネルで自己蛍光を示すが、粒子が明るいので、その高シグナル対ノイズ比は、細胞に内部移行したナノ粒子の同定を可能にする。図5eは、4つのチャネルの重ね撮り画像を示し、そこでは、hB粒子で標識された細胞(青の円)は、青色チャネルでのみ発光を示し、緑または赤色チャネルでは発光を示さないが、それに対して、hGhRmBで標識された細胞(マゼンタの円)は、赤、緑および青色チャネルで発光を示す。二色粒子、hGhB(黄色の円)およびhGhR(赤の円)を含む細胞は、それぞれ、赤および青色チャネルで寄与を示さない。図5fは、これらのRBL-2H3細胞の形態が電気穿孔法後も無傷であること(それゆえ、細胞イメージングを実施することが可能であること)を示す細胞の明視野像を示す。この図に基づいて、我々は、mcCドットが内部移行し、各チャネルからの発光寄与が共存することから、ナノ粒子で染色された細胞は、互いから識別可能であることを示す。
【0122】
この実施例は、多色シリカナノ粒子を利用する細胞内蛍光多重化の最初の実証である。明るいmcCドットは、シンプルなRGBカラーコードに基づいてターゲットを区別するためのプラットフォームを提供する。これらの多層粒子構造の適切なナノ粒子表面機能化は、基礎生物学におけるインビトロおよびインビボ用途の強力なツールとして、細胞シグナリング、バイオメディシンおよびハイスループット細胞および医薬品スクリーニングを提供できると予期される。
【実施例2】
【0123】
以下は、本開示の多層FRM-含有ナノ粒子の、イメージング法における使用を開示する例である。
【0124】
サンプル調製
これらの実験では、26のラット好塩基球性白血病(RBL)細胞の各サンプルは、方形波電気穿孔法により単一タイプの粒子を機械的に導入された。細胞は、Alexa Fluor[登録商標]488とコレラ毒素の複合体を使用して膜標識された。この第四のスペクトル的に異なる蛍光性色素は、蛍光性細胞膜が、細胞内部のmcCドットと区別できるように選択された。単一粒子サンプルは、顕微鏡スライドガラス上に直接蒔かれ、イメージングの前に固定された。プレーティング前の単一粒子細胞サンプルの混合は、細胞ごとに単一タイプのmcCドットのみを有する多粒子サンプルを作ることを可能にした。
【0125】
イメージングおよび解析
細胞は、Cy5、TMR、DAC、およびAlexa Fluor[登録商標]488色素の同時検出を可能にする、Zeiss 710走査型共焦点レーザー顕微鏡を使用して画像化された。画像は、「赤」チャネル(λex=633 nm)、「緑」チャネル(λex=561 nm)、「青」チャネル(λex=405 nm)および「黄」チャネル(λex=488 nm)で同時に獲得された。それぞれの16ビット 1280×1280ピクセル画像、4つの蛍光画像、および1つの明視野像が獲得され、512×512ピクセルのタイルに区分された。最大17の異なる粒子を含むAlexa Fluor[登録商標]488で標識されたRBL細胞を示す、混合粒子画像の代表的なタイルが、図6に示される。また、蛍光画像は、細胞が十分に高濃度の粒子を取り込んだことを示すために、重ねられた。
【0126】
単細胞は、蛍光性細胞膜標識を使用して特定された。バックグラウンド蛍光および細胞凝集体は、サイズ分析を使用して排除され、それにより細胞は高強度の円形面積に近くなった。5μm未満または15μmを超える直径を有する蛍光性の実体は、単細胞の正常サイズ範囲外であると考えられ、それゆえ解析されなかった。この画像で同定された単細胞の境界は、対応するRGBチャネル画像にも適用された。細胞内部の位置におけるピクセル強度のみが、この解析の残りで使用された。全画像処理アルゴリズムは自作され、MATLABを用いて実施された。
【0127】
単一粒子画像(1280×1280ピクセル)は、対応するmcCドットの蛍光符号の特性を明らかにするために使用された。各細胞は、各細胞における最大明るさの50%ピクセルを使用して計算された、平均赤、緑、および青強度を割り当てられた。低強度のピクセルは、わずかな粒子を含むあるいは粒子を含まないピクセルの寄与を最小化にするために、この解析から排除された。1000以上の細胞からの、赤、緑および青の平均ピクセル強度の統計解析は、多粒子画像の「解読」を可能にするRGB閾値を作成するために使用された。多粒子画像は、上記で生成された結果に従って、細胞ごとに解析された。我々は、概念実証として、この方法に従って17粒子の画像を成功裏に「解読」した。この画像の疑似色バージョン(1280×1280ピクセル)を図7に示す。この図では、細胞は、ナノ粒子内側の「色」に従って色分けされた。
【0128】
本発明は、特定の実施形態(好ましい実施形態のいくつか)を参照して詳細に示され記載されてきたが、ここに開示された本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形式および詳細の様々な変更が可能であることが当業者によって理解される。
図1a-c】
図2a-c】
図2d-f】
図2g-i】
図3a-c】
図3d-f】
図3g-i】
図4a-b】
図4c
図5a-f】
図6a-f】
図7a-b】