【実施例1】
【0067】
以下は、本開示の多層FRM-含有ナノ粒子の合成および使用を記載する実施例である。
【0068】
この実施例において、輝く、光学的にコードされた蛍光性コア-シェル・シリカナノ粒子が製造された。前記ナノ粒子は、多色コーネルドットまたは単にmcCドットと称され、100nm未満のサイズ(当該サイズは、ナノ粒子をハイスループット・スクリーニングに、および、蛍光多重化を使用してそれらを細胞内バイオイメージングに適用するのに望ましい状態にする)を有する。これらのナノ粒子は、3つのスペクトル的に異なる有機フルオロフォア、すなわち、N-(7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン-3-イル)マレイミド(DACm、λ
abs=395 nm、λ
em=450 nm)、テトラメチルローダミン-5-マレイミド(TMRm、λ
abs=540 nm、λ
em=570 nm)およびCy5-マレイミド(Cy5m、λ
abs=640 nm、λ
em=670 nm)でコードされ、これらは、粒子ごとにそれぞれ、3つの正確に制御された色素数(すなわち、0,5,20)を有し、
図1に示されるように26の光学的に識別可能なナノ粒子を生じる。前記色素は、共焦点顕微鏡において、あるいはフローサイトメトリーのようなハイスループット・スクリーニング技術において使用されている、一般に利用できる励起レーザー源(λ
exc=405 nm、540 nmおよび 633 nm)に基づいて選択され、それゆえ標準的な蛍光計測手段のために有用なmcCドットを提供する。前記粒子構造は、前記色素が、層ごとに(一層ずつ)色素ドープ粒子コアに添加され、それぞれのスペクトル的に識別可能な色素が、色素間のエネルギー移動を減らすために(
図1)、純シリカシェルによって空間的に分離されるように設計される。これはイメージングにおいて、最大の輝度レベルおよびそれゆえ最大のシグナル対ノイズ比を確実にする。
【0069】
スクリーニングアッセイの開発において使用されることができる、異なる蛍光シグネチャーを有する光学的にコードされた複数の蛍光性シリカナノ粒子が製造された。シリカの界面化学の多用途性は、ナノ粒子表面を、オリゴヌクレオチドまたはペプチドのような生体分子プローブで修飾することを可能にした。シリカベースのmcCドットから生成できる蛍光性の光学的コード「C」の数は、各カラーに関連する2つのパラメータである、色素カラーの数「m」および、蛍光強度レベルの数「N」に依存する。0から無限大に渡る強度レベルのために、コードの数は、C=N
m−1と定義される。3つの強度レベル(N=3)、3つのカラー(m=3)の現在のケースでは、26のカラーコードが生じる。
【0070】
mcCドットの合成を実施するために、3つの問題に対処した:(1)一般に利用可能な励起レーザー線源に基づく、適切な蛍光色素「m」の同定;(2)識別可能な蛍光強度レベル「N」を生成するために、粒子中に再現性良く組み込むことができる色素の適切な数の同定;および(3)最大輝度レベルを達成するために、エネルギー移動、それによる蛍光消光を最小化するための、粒子内でのスペクトル的に識別可能な色素の空間的隔離。mcCドットを開発するために選択された3つの色素は、DACm、TMRmおよびCy5m(上記参照)であった。単一粒子と単一色のために測定される蛍光強度は、その中に組み込まれた色素の数に依存する。典型的なmcCドット合成バッチ中で、特定のカラーの色素数がポアソン分布されると仮定して(すなわち、色素封入が純粋な確率的な過程にあると仮定して)、異なるmcCドットの異なる強度レベルを識別するために、これらのポアソン分布の平均値は、分布の袖の間の重なりが最小になるように選択された(
図2a参照)。粒子中の色素取り込みを正確にコントロールし、且つ、それらの封入数を増加させるにあたり色素間のエネルギー移動を最小限にすることが、蛍光消光を避けるために望ましい。色素分子の数を増加させた所定のコアサイズにとって、色素は、空間的近接に基づいて、エネルギー移動を示す傾向がある。それゆえ、色素間のクロストークを最小化するために、高色素封入数を有する粒子を構築するのに一層ずつ(層ごと)のアプローチが使用された。以前のCドット合成研究は、20〜30nmの直径を有するコア-シェルシリカナノ粒子が、通常、所定の色素濃度のために、粒子コア当たり約5〜7個の色素を取り込むことを明らかにした。色素取り込みがポアソン分布になると仮定すると、粒子当たりの平均色素数が10および15の粒子は、
図2aに示されるようにそれぞれ、粒子当たり5色素のバッチと、〜45%および〜25%の重なりをそれぞれ有すると予想される。これに対して、粒子当たり平均色素数20の粒子は、粒子当たり5色素のバッチと、〜3%の重なりを示すだけである。同様にわずかな重なりが、粒子当たり5色素のバッチのポアソン分布と、そのカラーの色素を含まない粒子バッチとで予期される(
図2a)。これらの考察に基づいて、我々は、mcCドット中の同じカラーの異なる強度レベルを識別するために、粒子当たり0、5、および20色素の3つの異なるレベルをそれぞれ選択した。
【0071】
図2b-iは、26の異なる(区別できる)mcCドットをもたらす、様々な一層ずつの粒子合成ルートの模式図を示す。mcCドットのカラーコードを識別するためにこの実施例で使用される表記法は、蛍光強度レベルを表示するための小文字(中/高、すなわち、粒子あたり〜5/20色素のために、m/h)および蛍光カラーを表示するための大文字(緑/赤/青の発光のために、それぞれG/R/B)を含む。それぞれの順序は、コアから外殻向きである。例えば、mGhRmB mcCドットは、中緑(〜5色素)コアを有し、高赤(〜20色素)の内核がそれに続き、中青(〜5色素)の外殻がそれに続く。mcCドット中にカラーが存在しないときは(すなわち、そのカラーの色素がゼロ)、単にその表記法を省略することによって表示される。例えば、hGhB mcCドットは、高緑(〜20色素)のコア、赤無し(すなわち、赤色素ゼロ)、および高青(〜20色素)の外殻を有する。色素複合体を形成するために、マレイミド-メルカプト生体共役反応を使用し、市販のマレイミド活性色素(TMRm、Cy5m、またはDACm)を、3-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン(MPTMS)にまず共役させることによって、粒子合成が実施された(
図2b)。中程度の色素負荷を含む3つの単色粒子(それぞれ、mG、mR、またはmB、
図2c-e参照)は、アルコール中の適切なアンモニアおよび水の濃度にて、色素複合体をTEOSと共縮合させることにより、改良ステバー(Stober[oはウムラウト付])タイプのシリカ縮合を経て、最初に合成された。二次核生成を避けるために、核生成閾値未満の濃度にてTEOSを含む反応溶液を投与することによって、薄いシリカシェルが、これに追加された。各反応溶液から特定の容積が移され、これらの粒子は、中(medium}色素負荷の粒子として保存された。高(high)色素負荷の3つの単色粒子(それぞれ、hG、hR、またはhB、
図2c-e)とするために、前記反応溶液の残りに、色素複合体が添加され、コア-シェルシリカナノ粒子の表面上のシラノール基との共縮合が行われた。このステップの後に、薄いシリカシェルが、上述のように再度追加された。この交互の色素層-シリカシェル手順は、粒子あたり〜20色素の適切な高色素負荷が得られるまで実施された。
図2c-eは、高緑(TMRm)、高赤(Cy5m)および高青(DACm)単色Cドット粒子に関し、結果として生じたタマネギ様の構造の模式図を示す。高強度の発光を達成するために必要な、粒子当たりのコア上の追加の色素とシリカシェル層の数は、高緑(TMRm)粒子と高青(DACm)粒子では4、高赤(Cy5m)粒子では3であった。
【0072】
前記3つの異なる色素系に対する粒子ごとの色素の数を正確にコントロールするための合成手順の開発の次に、我々は、同じ粒子中に、それぞれの色素を様々な色素負荷レベルで、3色素全て組み込むために、注意深く粒子構造を考案した。これらの粒子は、3つの色素が層ごとの様式で添加され、コア中のTMRm色素(緑)、続いて内殻のCy5m色素複合体(赤)、続いて最終色素層として添加されたDACm色素複合体(青)となるように(
図1aの中央の粒子参照)合成された。有機フルオロフォアは、比較的広い吸収および発光スペクトルを有する。我々の粒子中の様々な色素のスペクトルのおよび空間的な近接によって、フェルスター共鳴エネルギー移動が発生することが予期される。そのような無放射のエネルギー移動は、供与体色素の発光と受容体色素の吸収スペクトルの間のスペクトルの重なりの結果である。2つの色素間のエネルギー移動の効率は、フェルスター半径(供与体と受容体の間で50%効率のエネルギー移動が発生する際の距離)によって決定される。DACm-TMRmペアのフェルスター半径の計算値は〜40Å(4.0nm)であり、一方、TMRm-Cy5mペアのそれは〜45Å(4.5nm)である。DACmとCy5mは、可視スペクトルの最遠端にあるので、このペアのフェルスター半径は1.5Å(1.5nm)と最も小さい。エネルギー移動の効率は、供与体と受容体分子の間の分離距離rにより、1/r
6で劇的に低下する。エネルギー移動を効果的に抑制するために、我々の粒子におけるTMRmとCy5mの色素層は、10〜12nm厚のシリカシェルによって分離された(例えば、
図2f参照)。Cy5m色素を含まない粒子のために、10〜12nmの厚みのシリカシェルが、DACm色素添加の前に、TMRmを含む粒子コア上に形成された(例えば、
図2g参照)。TMRmとCy5m層を含む粒子への最初のDACm色素層の追加のために、厚み6〜8nmの純シリカシェルがまず形成された(例えば、
図2i参照)。このように、異なるカラーの色素層は、エネルギー移動の効果的な抑制を期待するのに十分な厚みのシリカシェルによって空間的に分離された。
【0073】
TMRmが中央になる色素と選択されたので、様々なmcCドットの合成における一貫性を維持するために、中および高色素負荷TMRm粒子が多量バッチで合成された。2色Cドットを得るための次のステップは、これらのナノ粒子上に10〜12nm厚のシリカ分離シェルを形成し、続いて、Cy5m色素複合体を添加することであった(
図2f)。最終シリカシェルの追加後、これは中Cy5m(mR)色素負荷粒子を構成した。このステップに続いて、それらのシリカシェルに2つのさらなるCy5m色素層が、高Cy5m(hR)色素負荷粒子を得るために追加された。より大きい多色Cドット中で高色素負荷に到達するための追加の層が少ないのは、単色Cドットに対してそれらのサイズが大きい(追加の色素付着のために、粒子当たりより大きい表面積を提供する)ことに起因する。これらの手順による合成は、粒子中のDACm色素がゼロの、以下の4つの二色Cドットを提供した:mGmR、mGhR、hGmRおよびhGhR。粒子中のCy5m色素がゼロの二色粒子を得るために、DACm色素複合体が、TMRmとDACm色素層を分離する10〜12nm厚のシリカ分離層とともに、mGおよびhG粒子に添加された(
図2g)。これは、中DACm(mB)色素負荷の粒子を構成した。3つのさらなるDACm色素層およびシリカシェルが、高DACm(hB)色素負荷を得るために、mGmBおよびhGmB粒子に追加された。これらの手順による合成は、粒子中にDACm色素がゼロの、以下の4つの二色Cドットを提供した:mGmB、mGhB、hGmBおよびhGhB。
【0074】
粒子中にTMRm色素ゼロの二色Cドットが、Cy5mコア-シェル粒子をテンプレートとして使用して合成された(
図2h)。そのために、多量バッチの中Cy5mドープ粒子が合成され、これは2つに分けられ、一つのバッチは、中Cy5m(mR)色素負荷粒子として残され、他のバッチには、高Cy5m(hR)色素負荷粒子を得るために、Cy5m色素とシリカシェル層が交互に3回追加された(
図2d)。6〜8nm厚のシリカ分離シェルが、これらのmR/hRナノ粒子上に形成され、その後、DACm色素複合体が添加された(
図2h)。最終シリカシェルとともに、これは中DACm(mB)色素負荷粒子を構成した。その後、高DACm(hB)色素負荷を得るために、DACm色素とシリカシェル層が3回交互に追加された。これらの手順による合成は、粒子中にTMRm色素がゼロの、4つの二色Cドットを最終的に提供した:mRmB、mRhB、hRmBおよびhRhB。
【0075】
最終的に、3つの色素全てを取り込んだ三色粒子を得るために、6〜8nm厚のシリカシェルが、mGmR、mGhR、hGmRおよびhGhR粒子上に形成され、続いて、DACm色素層がシリカシェルとともに追加された。その結果生じたmGmRmB、mGhRmB、hGmRmBおよびhGhRmB粒子に、3つのさらなるDACm色素およびシリカシェル層が、高色素ドープDACm(hB)粒子を得るために追加された(
図2i)。これらの手順による合成は、以下の8つの三色mcCドットを提供した:mGmRmB、hGmRmB、mGhRmB、hGhRmB、mGmRhB、hGmRhB、mGhRhBおよびhGhRhB。
【0076】
このような多色蛍光性シリカナノ粒子中の色素数を正確に調整する能力は、かなりの構造上の複雑性に付随する。例えば、TMRm、Cy5mおよびDACmについて高色素負荷の三色Cドット(hGhRhB)は、中TMRm色素負荷コア-シェル粒子に追加された4つのTMRm色素と4つのシリカシェル層(合計するとTMRmコアの周りに9つの層)、続いて、高Cy5m色素負荷を得るための3つの色素と3つのシリカシェル層、続いて、高DACm色素負荷を得るための4つの色素および4つのシリカシェル層を含む。緩衝溶液中での立体安定化を提供し、且つ、それらをより生体に適合するようにするため、全ての粒子は最終的に、ポリエチレングリコール(PEG)層で表面被覆された。結果として得られたものは、色素コアの周りに24の識別可能な層(PEG層を含む)を有するタマネギ型の構造であり、前記層のうち11は色素層であり、12は純シリカシェル層である。粒子ごとの多様な色素の組み合わせに基づき、26の分光学的に識別可能な粒子が、
図1に示すように合成された。
図1aは、上述した合成経路を反映する方法で構築された、これらの26の色素の演色を示す。
図1bは、環境光下におけるキュベット内の水溶液中の26粒子の写真を示す。キュベットは、緑のTMRm色素負荷に従って体系化され、TMRm色素負荷が、「無し」「中」「高」の粒子がそれぞれ、「下」「中央」「上」の列に配置されている(具体的な割当は
図4b参照)。対照用に、
図1bの左下の第27キュベットには、色素無しのPEG化シリカナノ粒子が入っている。
【0077】
実験セクション 化学薬品および物質
粒子合成を行うために、すべての化学薬品は一般に認められているように使用された。テトラエトキシシラン(TEOS、≧99%、GC)とエタノール中のアンモニア(2.0M)は、Sigma Aldrich社から購入した。(3-メルカプトプロピル)-トリメトキシシラン(MPTMS、>96%純度、Gelest Inc.)は、シリカナノ粒子中への色素取り込みの為の共役リンカーとして使用された。ナノ粒子合成のために使用された色素は、Cy5-マレイミド(Cy5m、GE Healthcare Life Sciences)、テトラメチルローダミン-5-マレイミド(TMRm、Life Technologies)およびN-(7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン-3-イル)マレイミド(DACm、Anaspec, Inc)であった。色素は、ジメチル・スルホキシド(DMSO、無水≧99.9%、Sigma Aldrich)に溶解された。エトキシ-シラン終端ポリ(エチレングリコール)(mPEG-シラン、モル質量 〜5000g/mol)は、 Layson Bio社から購入した。反応は、エタノール(200 proof、Pharmaco-Aaper)および脱イオン水(DI水、18.2 MΩ.cm
-1、purity、Millipore Milli-Q system)中で実施された。粒子は、10,000分子量カットオフ(MWCO)Snakeskin透析膜チューブ(Pierce)を使用して透析され、0.2μm PTFEシリンジフィルター(Fisher Scientific)で濾過された。粒子は、細胞測定を実施するために、ダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水 1X緩衝液(カルシウムとマグネシウムを含まないDPBS、Life Sciences)中に移された(MWCO30,000を備えたMacrosep(登録商標) Advance Centrifugal Device (Pall Corporation)を使用)。アジ化ナトリウム(BioUltra、≧99.5%、Sigma Aldrich)が、バイオサイドの機能を果たすために、緩衝液中の粒子に添加された。細胞イメージングのために、前記ナノ粒子は、Gene Pulser X(Bio-Rad)を使用して、電気穿孔処理された。細胞表面は、Alexa Fluor 488 cholera toxin subunit B(Invitrogen)で標識された。
【0078】
ナノ粒子合成 色素結合
色素TMRm(DMSO中2.6mM)、Cy5m(DMSO中1.26mM)およびDACm(DMSO中3.4mM)のマレイミド誘導体が、15時間、窒素雰囲気グローブボックス中のDMSOに溶解された。ナノ粒子合成のために、前記色素は、10〜12時間、前記グローブボックス中で1:25の色素:シランのモル比にて、MPTMSと結合された。TMRm/Cy5m/DACm色素複合体のために、10×10
-5 M/4.0×10
-5 M/45×10
-5 Mの濃度がそれぞれ使用された。
【0079】
中および高色素負荷の単色Cドットの合成 中および高TMRm負荷ナノ粒子合成
エタノール中に0.88 Mの脱イオン水と0.2 Mのアンモニアを含む10 mLのエタノール溶液に、1.3×10
-5 M TMRm色素複合体が添加され、15分間撹拌下に置かれた。この溶液に、0.055 M TEOSが添加され、反応が12時間撹拌下で行われた。この溶液に、0.105 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて液滴で添加され、中TMRm負荷粒子(mG)が得られた。
【0080】
高TMRm負荷粒子(hG)のために、2×10
-5 M TMRm色素複合体が、5 mLのmG反応溶液に添加され、8時間撹拌下に置かれ、続けて、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて、0.105 MのTEOSが添加された。この溶液は、さらなるTMRm色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。hG粒子を得るために、この手順が合計4回繰り返された。
【0081】
中および高Cy5mナノ粒子合成
エタノール中に0.88 Mの脱イオン水と0.2 Mのアンモニアを含む10 mLのエタノール溶液に、1×10
-5 M Cy5m色素複合体が添加され、15分間撹拌下に置かれた。この溶液に、0.055 M TEOSが添加され、反応が12時間撹拌下で行われた。この溶液に、0.105 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて液滴で添加され、中Cy5m負荷粒子(mR)が得られた。
【0082】
高Cy5m負荷粒子(hR)のために、1×10
-5 M Cy5m色素複合体が、5 mLのmR反応溶液に添加され、8時間撹拌下に置かれ、続けて、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて、0.105 MのTEOSが添加された。この溶液は、さらなるCy5m色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。hR粒子を得るために、この手順が合計3回繰り返された。
【0083】
中および高DACmナノ粒子合成
エタノール中に0.88 Mの脱イオン水と0.2 Mのアンモニアを含む10 mLのエタノール溶液に、5×10
-5 M DACm色素複合体が添加され、15分間撹拌下に置かれた。この溶液に、0.055 M TEOSが添加され、反応が12時間撹拌下で行われた。この溶液に、0.15 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて液滴で添加され、中DACm負荷粒子(mB)が得られた。
【0084】
5 mLのmB粒子溶液に、5 mLのエタノールが添加され、高DACm負荷粒子(hB)が合成された。エタノール中の脱イオン水とアンモニアの濃度が、それぞれ0.88 M と0.2 Mに維持された。9×10
-5 M DACm色素複合体が、10 mLの反応溶液に添加され、8時間撹拌下に置かれ、続けて、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて、0.15 MのTEOSが添加された。この溶液は、さらなるDACm色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。hB粒子溶液を得るために、この手順が合計4回繰り返された。
【0085】
多色Cドット(mcCドット)の合成 中および高TMRm負荷粒子上のシリカシェル合成
中TMRm負荷粒子(mG)は、前記反応溶液を、100 mLまでスケーリングすることによって、合成された。エタノール中に0.88 Mの脱イオン水と0.2 Mのアンモニアを含む100 mLのエタノールに、1.3×10
-5 M TMRm色素複合体が添加され、15分間撹拌下に置かれ、続けて、0.055 M TEOSが添加され、12時間撹拌下に置かれた。この溶液に、0.105 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて液滴で添加され、シリカシェルが形成された。前記mG粒子合成の後、前記溶液は、2つの丸底フラスコに、それぞれ50 mLずつ分け入れられた。前記50 mL mG粒子溶液の一つに、2×10
-5 M TMRm色素複合体が添加され、8時間撹拌下に置かれ、続けて、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて、0.105 MのTEOSが添加された。この溶液は、さらなるTMRm色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。高TMRm粒子(hG)を得るために、この手順が合計4回繰り返された。
【0086】
前記50 mLのmGよびhG溶液のそれぞれに、2.6 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり2μLの割合にて添加され、二色粒子合成を実施する前に、10〜12nm厚のシリカシェルが得られた。
【0087】
中および高Cy5m負荷粒子上のシリカシェル合成
中Cy5m負荷粒子(mR)は、30 mL反応系にスケーリングすることによって、合成された。エタノール中に0.88 Mの脱イオン水と0.2 Mのアンモニアを含む30 mLのエタノール溶液に、1×10
-5 M Cy5m色素複合体が添加され、15分間撹拌下に置かれ、続けて、0.055 M TEOSが添加され、反応が12時間撹拌下で行われた。この溶液に、0.105 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて液滴で添加され、シリカシェルが形成された。前記mR粒子溶液は、2つの丸底フラスコに、それぞれ15 mLずつ分け入れられた。前記15 mL mR粒子溶液の一つに、1×10
-5 M Cy5m色素複合体が添加され、8時間撹拌下に置かれ、続けて、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて、0.105 MのTEOSが添加された。この溶液は、さらなるCy5m色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。高Cy5m負荷粒子(hR)を得るために、この手順が合計3回繰り返された。
【0088】
前記15 mLのmRおよびhR溶液のそれぞれに、1.8 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり2μLの割合にて添加され、6〜8nm厚のシェルが得られた。
【0089】
二色Cドットの合成 中および高TMRm粒子へのCy5m色素複合体の添加
第二層として、Cy5m色素を有する粒子を合成するために、10〜12nm厚のシリカシェルを有するmGおよびhG粒子の溶液30 mLが、2つの別の丸底フラスコ内に入れられた。中Cy5m負荷のために、1×10
-5 M Cy5m色素複合体が、30 mLのmGおよびhG粒子溶液を含む反応フラスコのそれぞれに添加され、8時間撹拌下に置かれた。この溶液に、0.105 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて液滴で添加され、薄いシリカシェルが形成された。各反応溶液から、15 mLが取り除かれ、mGmRおよびhGmR粒子溶液として保管された。高Cy5m負荷のために、1×10
-5 M Cy5m色素複合体が、15 mLのmGmRおよびhGmR反応溶液にそれぞれ添加され、8時間撹拌下に置かれ、続いて、0.105 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて添加された。この溶液は、さらなるCy5m色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。この、交互のCy5m色素複合体-TEOSシェル追加手順は、mGhRおよびhGhRの粒子を得るために、合計2回実施された。
【0090】
中および高TMRm粒子へのDACm色素複合体の添加
第二色素層としてDACmを有する粒子を合成するために、10〜12nm厚のシリカシェルを有する中および高TMRm粒子の溶液10 mLが、2つの別の丸底フラスコ内に入れられた(セクション1.3.aから)。
【0091】
中DACm負荷のために、5×10
-5 M DACm色素複合体が、10 mLのmGおよびhG粒子溶液を含む反応フラスコのそれぞれに添加され、この反応溶液は8時間撹拌下に置かれた。薄いシリカシェルが、30分ごとの反応容積1 mLあたり1μLの割合による0.15 MのTEOSの液滴添加によって、当該反応に添加され、シリカシェルが形成された。各反応溶液の5 mLが、mGmBおよびhGmB粒子溶液として保管された。
【0092】
高DACm負荷のために、5 mLのエタノールが、5 mLの二色mGmBおよびhGmB粒子溶液に添加された。エタノール中の脱イオン水とアンモニアの濃度が、それぞれ0.88 M と0.2 Mに維持された。9×10
-5 M DACm色素複合体が、10 mLの反応溶液に添加され、8時間撹拌下に置かれ、続けて、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて、0.15 MのTEOSが添加された。この溶液は、さらなる色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。この、交互のDACm色素複合体-TEOSシェル追加手順は、mGhBおよびhGhBの粒子溶液として高DACm負荷粒子を得るために、合計3回実施された。
【0093】
中および高Cy5m粒子へのDACm色素複合体の添加
第二色素層としてDACmを有する粒子を合成するために、6〜8nm厚のシリカシェルを有するmRおよびhR粒子の溶液10 mLが、2つの別の丸底フラスコ内に入れられた(セクション1.3.bから)。
【0094】
中DACm負荷のために、5×10
-5 M DACm色素複合体が、10 mLのmRおよびhR粒子溶液を含む反応フラスコのそれぞれに添加され、この反応溶液は8時間撹拌下に置かれた。薄いシリカシェルが、30分ごとの反応容積1 mLあたり1μLの割合による0.15 MのTEOSの液滴添加によって、当該反応に添加され、シリカシェルが形成された。反応溶液の5 mLが、mRmBおよびhRmB粒子溶液として保管された。
【0095】
高DACm負荷のために、5 mLのエタノールが、5 mLの二色mRmBおよびhRmB粒子溶液に添加された。エタノール中の脱イオン水とアンモニアの濃度が、それぞれ0.88 M と0.2 Mに維持された。9×10
-5 M DACm色素複合体が、10 mLの反応溶液に添加され、8時間撹拌下に置かれ、続けて、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて、0.15 MのTEOSが添加された。この溶液は、さらなる色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。この、交互のDACm色素複合体-TEOSシェル追加手順は、mRhBおよびhRhBの粒子溶液として高DACm負荷粒子を得るために、合計3回実施された。
【0096】
三色Cドットの合成 TMRmおよびCy5mを含む二色粒子上のシリカシェル合成
セクション1.3.c.で言及した10 mLのmGmR、mGhR、hGmRおよびhGhRに、1.8 MのTEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり2μLの割合にて添加され、6〜8nm厚のシェルが得られた。TMRmおよびCy5mを含む二色粒子のそれぞれ10 mLの溶液が、別の丸底フラスコに入れられた。脱イオン水とアンモニアの濃度が、それぞれ0.88 M と0.2 Mに維持された。
【0097】
TMRmおよびCy5m負荷二色粒子へのDACm色素複合体の添加
中DACm負荷のために、5×10
-5 M DACm色素複合体が、10 mLのmGmR、mGhR、hGmRおよびhGhR粒子溶液を含む反応フラスコのそれぞれに添加され、8時間撹拌下に置かれた。薄いシリカシェルが、30分ごとの反応容積1 mLあたり1μLの割合による0.15 MのTEOSの液滴添加によって、当該反応に添加され、シリカシェルが形成された。5 mLの反応溶液が、mGmRmB、mGhRmB、hGmRmBおよびhGhRmB粒子として保管された。
【0098】
高DACm負荷のために、5 mLのエタノールが、中DACm負荷粒子を含む5 mLの三色粒子溶液に添加された。エタノール中の脱イオン水とアンモニアの濃度が、それぞれ0.88 M と0.2 Mに維持された。9×10
-5 M DACm色素複合体が、10 mLの反応溶液に添加され、8時間撹拌下に置かれ、続けて、30分ごとに、反応容積1 mLあたり1μLの割合にて、0.15 MのTEOSが添加された。この溶液は、さらなるDACm色素層-TEOSシリカシェル追加の前に、4時間撹拌され続けた。この、交互のDACm色素複合体-TEOSシェル追加手順は、高DACm負荷粒子:mGmRhB、mGhRhB、hGmRhBおよびhGhRhB粒子を得るために、3回実施された。
【0099】
ペグ化前のナノ粒子上のシリカシェル成長
全てのナノ粒子で同じサイズとなるように、シリカシェルは、TEOSの液滴添加によって、全ての粒子上で増大化された。全ての溶液で、エタノール中の脱イオン水とアンモニアの濃度が、それぞれ0.88 M と0.2 Mに維持された。
【0100】
中(セクション1.1.b)/高(セクション1.1c)DACm粒子を含む10 mLの溶液に、4.8 M TEOSが添加され、中/高TMRm粒子(セクション1.3.a)に、2.7 M TEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり2μLの割合にて添加された。5 mLの中および高Cy5m粒子溶液(セクション1.3.b)に、3.6 M TEOSが、30分ごとに、反応容積1 mLあたり2μLの割合にて添加された。
【0101】
G-R(セクション1.3.c)/G-B(セクション1.3.d)/R-B(セクション1.3.e)を含む二色粒子溶液5 mLに、2.6 M TEOS/ 2.6 M TEOS/ 3.3 M TEOSが、30分ごとに反応容積1 mLあたり2μLの割合にてそれぞれ添加された。
【0102】
中DACm粒子(セクション1.3.f)のみを含む三色粒子溶液5 mLに、追加の0.7 M TEOSが、30分ごとに反応容積1 mLあたり2μLの割合にて添加された。高DACmを含む三色粒子には、追加のTEOSは添加されなかった。
【0103】
mcCドットナノ粒子のペグ化
1.0リットルの脱イオン水に、2.0 M塩酸(水溶液)を添加することによって、pHメーター(VWR International Symphony、SB70P)を使用して、pHが5に調節された。ペグ化を実施するために、全ての粒子を、粒子合成のセクションで言及したように、同じサイズに成長させた。0.08 Mの水溶性PEG-シラン(mPEG-シラン、M.W. 5k)溶液が、pH5にて、脱イオン水中にPEG-シランを溶解することによって調製された。この溶液1 mLがバイアルに入れられ、2 mLのエタノールが添加され、溶液は約10分間撹拌された。得られたそのままの粒子溶液1.0 mLが、エタノール-水混合物中に溶解されたmPEG-シラン3 mLに液滴で添加され、その後溶液は、70℃に維持された油浴中で、24時間撹拌され続けた。
【0104】
ペグ化後、粒子は10,000MWCO透析膜チューブを使用して脱イオン水中で透析され、0.2μm PTFEシリンジフィルターを使用してろ過され、さらなる特性評価のために、室温にて暗所で保管された。
【0105】
細胞イメージング測定のために、粒子は、ダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中に移行された(30,000MWCOを備えたMacrosep[登録商標] Advance Centrifugal Deviceを使用)。透析に続いて、5 mLのペグ化ナノ粒子溶液が、5 mLの緩衝液に添加され、30分間、3500 rpmで遠心分離された。このプロセスは、緩衝液を使用して3回繰り返された。最終ステップとして、溶液を低温殺菌するために、粒子は15分間75℃に加熱され、続いて、0.1 %(w/v)アジ化ナトリウム水溶液が添加された。
【0106】
中および高色素負荷ナノ粒子の特性評価
環境光の下で、27キュベットの反射光イメージの写真が撮られた。写真画像は、コア中に、TMRm色素無しの粒子(下の列)、〜5TMRm色素の粒子(中央の列)および〜20色素の粒子(上の列)として配置された。各列は、ISO 100および三脚上に固定されたCanon EOS digital Rebel 400 D cameraのf/4.5、第二露光1/20
thの同じ設定を使用して、別々に撮影され、その後、Adobe Photoshopを使用して上述した配列に並べられた。
【0107】
分光分析および分光蛍光分析
前記粒子は、Varian Cary 5000 Spectrometer (Varian、Palo Alto、CA)を使用して、石英キュベット中で、脱イオン水を用いて、前記粒子または遊離型染料を希釈することによって、それぞれの遊離型色素に吸光度マッチ(absorbance matched)された。DACm(25,000 M
-1cm
-1)、TMRm(98,000 M
-1cm
-1)およびCy5m(250,000 M
-1cm
-1)の吸光係数が、サンプル中の色素濃度を定量化するために使用された。吸光度マッチドサンプルの蛍光測定は、Photon Technologies International Quantamaster Spectrofluorometer (PTI、Birmingham、NJ)で実施された。
【0108】
蛍光相関分光法(FCS)
粒子あたりの輝度を定量化するための、粒子の流体力学半径および濃度;前記吸光度マッチドサンプルは、固体405 nm(DACm粒子用)、HeNe 535 nm(TMRm粒子用)およびHeNe 633 nm(Cy5m粒子用)レーザー励起源を使用してセットアップされた自家製マルチスペクトル蛍光相関分光法(FCS)で測定された。励起ビームは、60X Olympus UPlan SAPO、1.2NA水浸対物レンズを通じて反射された。ナノモル濃度の蛍光サンプル200μL体積が、No.1.5カバースリップ・ボトムのマイクロウェル皿(MatTek P35G-1.5-10-C)の上に乗せられた。サンプルからの放射光が、対物レンズによって収集され、励起/発光二色性を通過し、発光ミラーによって集束レンズ内に反射された。励起光を除去し、発光光子のみを収集するために、発光は、ロングパスフィルター(Chroma)を通して焦点合わせされた。50ミクロンのピンホールが、蛍光が収集された有効容積を軸方向に制限するために使用された。前記光はその後第二レンズを通過して、アバランシェフォトダイオード(SPCM 14、Perkin Elmer)に入った。その結果生じた光電流は、相関器カード(Correlator.com)によりデジタル処理で自己相関された。
【0109】
データは、等式1の解析形に示されるように、三重項補正自己相関関数を使用してフィットされた。
【数1】
Aは、三重項補正の振幅であり、τ
Rは三重項状態における色素分子/粒子の見かけの拡散時間であり、τ
Dは一重項状態における分子/粒子の拡散時間であり、Nは焦点ボリューム中の分子の数である。構造因子パラメータ「s」は、軸と放射軸の比の観点からの3-Dガウス焦点ボリュームを表し、既知の拡散係数を有する標準色素の測定から計算される。405 nm、535 nmおよび 633 nmのレーザー線のための構造因子「s」を得るために使用された色素は、それぞれ、N-(7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン-3-イル)-マレイミド、テトラメチルローダミン-5-マレイミドおよびAlexa Fluor 647-マレイミドであった。
【0110】
細胞イメージング 細胞培養
RBL-2H3細胞は、前述したように、20% FBS (Atlanta Biologicals)および10μg/mlの硫酸ゲンタマイシンが追加されたMEMにおいて単層培養で維持された。
【0111】
電気穿孔法による細胞中へのナノ粒子送達
細胞は継代後3〜5日で収集され、1×10
6/mL RBL-2H3細胞は、DPBS緩衝液中に懸濁されたナノ粒子200μL(5〜10μM)を含む、0.5 mLの低温の電気穿孔法緩衝液(137 mM NaCl、2.7 mM KCl、1 mM MgCl
2、1 mg/mlグルコース、20 mM HEPES(pH 7.4))中で電気穿孔処理された。Gene Pulser X (Bio-Rad)を使用して、280 V、10.0 msパルス長、4パルス、および0.1 msのパルス間隔の設定で、方形波電気穿孔法が使用された。この手順は、26のナノ粒子のそれぞれで繰り返された。電気穿孔処理された細胞は、4%のパラホルムアルデヒドと0.1%グルタルアルデヒドで固定される前に約1時間リカバーされた。固定された細胞は、その後、細胞膜を染色するために、室温にて15分間、0.5μg/mL Alexa 488 cholera toxin subunit Bで標識された。
【0112】
共焦点イメージング
ナノ粒子含有細胞は、40X水浸対物レンズ(N.A=1.2)を使用して、Zeiss 510 LSM共焦点顕微鏡で画像化された。画像は、励起用の405、488、561、633 nmレーザー線および放射光を集めるための420〜480(Band Pass、BP)、575(Long Pass、LP)、505〜550(BP)および650(LP)フィルターセットを使用して順次撮影された。ImageJは、画像を、緑、赤、青、黄色および明視野像に分けるために使用された。重ね撮り画像は、ImageJで連結され、4つの発光チャネルからの画像のみを含んでいる。粒子は、赤、緑および青の画像の共局在に基づいて同定された。
【0113】
得られた粒子は全て、分光計測を実施する前に、5kモル質量のポリ(エチレングリコール)-シランを使用してペグ化された(実験セクション参照)。26の粒子種全ての完全な分光特性評価の記述は、この明細書の範囲を超えるので、ここでは特定のmcCドットの代表的な例のみが、全26粒子の全ての色の輝度レベルの分光計測の要約とともに提供される(
図3および4参照)。ナノ粒子の特性を明らかにし、それらの蛍光特性を理解するために、中および高DACm、TMRm、およびCy5m色素負荷単色ナノ粒子の第一水溶液は、それぞれの遊離型親染料と吸光度マッチされた。
図3a-cは、得られた吸光度および発光スペクトルを示す。遊離型色素と粒子の間で有意なスペクトルのシフトは観察されず、色素の電子構造は封入されても保存されることが示唆された。中および高DACm、TMRmおよびCy5m色素ドープナノ粒子は、遊離型色素と比べて、それぞれ〜6.0、〜1.3、および〜1.5の増強を示す。3つの系全てにおいて、強固なシリカ環境内への色素封入は、水溶液中の遊離型色素と比べて有意な輝度の増加をもたらし、これは従前の研究と一致し、これらのコンディション下では、ここで実証された高負荷レベルでさえ、色素は蛍光消光を示さないことを示唆している。
【0114】
粒子中に取り込まれた色素の数は、吸光度測定と組み合わされた蛍光相関分光法(FCS)を使用して定量化された。FCS実験のセットアップは、それぞれλ=405 nm、543 nmおよび633 nmで色素を励起させるために装備された(実験セクション参照)。FCSは、拡散に基づく分光技術であり、自己相関曲線を生成するために拡散成分の蛍光を使用する。動的光散乱(DLS)と同様に、相関減衰が拡散に関連するタイムスケールは、同様に拡散成分の流体力学半径/直径に関連する。
図3d-fは、3つの親色素(実線)の自己相関曲線と、中および高色素負荷における3つの色素/色に由来する6つの単色Cドット(mG、mR、およびmB[○];hG、hR、およびhB[●])の自己相関曲線をそれぞれ比較する。色素を取り込んだナノ粒子は、親の遊離型色素よりはるかに遅く拡散し、遊離型色素から粒子への流体力学半径の有意な増加を確認する。さらに、中および高色素レベル含有粒子は、非常によく似た相関曲線を示し、最終標的粒子サイズに対する高制御を明らかにしている。DACm、TMRmおよびCy5m系の自己相関曲線の分析は、遊離型色素について、それぞれ1.3nm、1.4nmおよび1.4nmの直径を、同様に、中および高色素負荷粒子の両方について、それぞれ40nm、45nmおよび35nmの直径を明らかにする。
【0115】
FCS自己相関曲線の振幅、G(0)から、焦点ボリューム中の蛍光成分の数が得られ、そこから、それらの濃度を推定できる。吸光度測定から得られた色素濃度とともに、この粒子濃度を使用すると、粒子あたりの色素の数が計算できる。これは、多色Cドット(mcCドット)の合成における粒子あたりの色素数の定量的評価を可能にする情報であり、ここに記載されたコントロールの必要レベルを達成するため、合成プロトコルを最適化するためのフィードバックとして使用された。これらの測定に基づいて、我々は中および高色素負荷粒子について粒子あたりの色素数を計算し、それらは、TMRm、Cy5mおよびDACm色素負荷について、6/27、6/22および6/24であった。さらに、水溶液中の遊離型色素を超える、粒子に内包された色素の蛍光増強の結果と、粒子あたりの色素数から、各色素-粒子系の輝度ファクターが計算できる。このファクターは、水溶液中の単一の遊離型色素と比べて粒子がどれだけ明るくなったかを表す。この方法で決定されたそれぞれの輝度ファクターは、中/高TMRm粒子で9.1/35、中/高Cy5m粒子で9/33、中/高DACm粒子で36/144であった。これらの結果は、前記粒子が、親の遊離型色素より1〜2桁明るいことを示唆する。それらの多重特性に加えて、これらの非常に高い輝度レベルは、mcCドットをバイオイメージング用途にとって非常に魅力的なものにするであろう。計算された輝度ファクターは、光学的FCS検出器で個々の拡散種の計数率によって測定された色素および粒子の実験で得られた輝度と比較することができる。これは、遊離型色素および粒子それぞれの輝度の直接的尺度を提供する。
図3g-iは、これらの測定の結果を示す。
図3gは、中/高TMRm負荷粒子が、TMRm遊離型親色素より6.6(±0.1)/32(±0.4)倍明るいことを示し、一方、Cy5m系について、
図3hは、中/高Cy5m負荷粒子が、Cy5m遊離型親色素より5.3(±0.2)/27.6(±0.4)倍明るいことを示す。
図3iは、DACm粒子系の輝度を比較し、中/高DACm負荷粒子が、DACm遊離型親色素より、それぞれ24(±3.0)/105(±10)倍明るいことを示す。これらの直接的な輝度測定は、目標としたように、個々の輝度レベルが、4〜6のファクターによって互いに区別されることを確認する。従前の研究における同様の観察と同じく、計算された輝度ファクターは、FCS測定から得られた値を体系的に過大評価する。これは、色素当量の決定におけるエラーに起因するかもしれない(例えば、遊離型と封入色素間における吸収断面積における変化無しと想定している)。それはさらに、FCS測定が、偏光で実施されたという事実に起因しているかもしれず、これは粒子中の色素のサブセットを励起させただけかもしれず、それは、輝度ファクターから予測されるより粒子あたりのカウントがより小さくなる原因となる。
【0116】
>3μmサイズの蛍光性多重シェルナノ粒子に関する従前の研究は、粒子の蛍光強度が、放射光の散乱を引き起こす屈折率の変化に起因して、シェル層の数が増加すると減少することを明らかにした。我々は、中および高色素負荷粒子について、粒子あたりの色素数と粒子あたりの輝度の比を比較することによって、同じ効果が本件の粒子に当てはまるかどうか調べた。結果は、中および高DACm負荷粒子について、前記比は4.0/4.3であり、中および高TMRm負荷粒子について、前記比は4.5/4.8であり、中および高Cy5m負荷粒子について、前記比が3.66/3.69であることを示した。これらの結果は、従前の結果と対照的に、我々のシステムにおける、さらなるシリカシェルの組み込みによる中から高色素負荷への移行が、相対的な蛍光発光を減じないことを明らかにする。
【0117】
図4aは、中/高TMRm色素負荷単色Cドット(mG、○/hG、●)から始まり、中/高Cy5m色素負荷二色Cドット(hGmR、○/hGhR、●)を経て、中/高DACm色素負荷を有する最終の三色mcCドット(hGhRmB、○/hGhRhB、●)へと至る全合成スキームをカバーする、三色mcCドットへと移行する特定の粒子の代表的なFCS曲線を示す。このプロットの全粒子は、〜85nmの同じサイズに成長しなかったが、ペグ化ステップを使用して終結された。中TMRm色素負荷粒子から出発し、高色素負荷にて三色素全てを含む粒子への、相関曲線の長時間方向へのシフトに反映されるように、結果は粒子サイズの増加を明確に示す。緑の蛍光性粒子のFCS曲線は、短時間での三重項状態からの明確な寄与を示し、これはフィッティング手順によって説明された(実験セクション参照)。中TMRm負荷コアシェル粒子合成(mG、緑の○)は、15nm(±0.5)直径(PEG層含む)の粒子をもたらした。4つのTMRm色素およびシリカシェル層の追加は、直径28nm(±0.6;PEG層含む)の高TMRm色素負荷粒子(hG、緑の●)をもたらした。4つの交互の色素およびシリカシェル層のそれぞれは、シェルの厚みに1.2〜1.5nm(あるいは、粒子の直径に2.4〜3nm)を与えた。中Cy5m色素負荷の二色粒子は、当初、直径28nmのhG粒子上にグラフトされた10〜12nm厚のシリカシェル(粒子の直径は20〜24nm増加)を有し、続いて、1つの交互のCy5m色素およびシリカシェル層を追加された(hGmR、赤の○)。hGおよびhGmR粒子の自己相関曲線の比較は、hGmR曲線が、hG曲線の右に有意にシフトしたことから、粒子サイズにおける大きな違いを明らかにする。分析は、二色Cドットの直径が53nm(±2.0)であることを明らかにする。前記hGmR粒子上に追加された2つの交互のCy5m色素およびシリカシェル層を有する、高Cy5m色素負荷粒子は、直径57nm(±2.2)の二色Cドット(hGhR、赤の●)となった。それぞれの追加のCy5m色素およびシリカシェル層は、粒子の厚みを1.0〜1.1nm増加した(粒子の直径は2.0〜2.2nm増加)。最終的に、三番目のDACm色素を含む粒子は、前記57nm(±2.2)hGhR粒子上で成長した6〜8nm厚のシリカ分離シェルを有し(粒子の直径は12〜16nm増加)、その後、1つの交互のDACm色素およびシリカシェル層が追加され、粒子径〜72nm(±4.1)の三色Cドット(hGhRmB、青の○)を生じた。粒子サイズの増加は、hGhRとhGhRmBのFCS曲線を比較すると容易に理解できる。
図4aの最後のFCS曲線は、前記hGhRmB粒子に追加された、3つのさらなる交互のDACm色素およびシリカシェル層に加えてPEG表面層を有する3色素全てが高負荷された三色Cドットのものであり(hGhRhB、青の●)、最終粒子の直径は85nm(±4.6)となった。
【0118】
同じ粒子内で異なる色の色素間のエネルギー移動がないこと、すなわち、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)を抑制する純シリカ層の能力は、それぞれ3つ全ての色素/色を含む4つの粒子(hGhRhB、hGhRmB、mGhRhBおよびhGmRhB)の溶液の6つの蛍光発光スペクトルを示す
図4bで明らかにされている。左側および右側のスペクトル(それぞれ、青および赤の発光)のために、溶液は緑に吸光度マッチされ、中央のスペクトル(緑の発光)のために、溶液は赤に吸光度マッチされた。
図4bは、中および高DACm(mB/hB)、TMRm(mG/hG)、およびCy5m(mR/hR)を含む三色粒子の、それぞれ、405 nm、540 nm、および633 nmにおける励起からの発光特性を比較する。高DACm色素負荷(hGhRhB)粒子は、405 nmで励起されたとき、中DACm負荷(hGhRmB)のものより、〜3.8倍明るかった。高TMRm色素負荷(hGhRhB)粒子は、540 nmで励起されたとき、中TMRm負荷(mGhRhB)のものより、〜3.5倍明るかった。633 nmの励起では、高Cy5m負荷(hGhRhB)粒子は、中負荷(hGmRhB)のものより、〜4.0倍明るかった。大きく異なる発光レベルは、各色について中および高色素負荷された粒子が、分光学的に明確に識別できることを明らかにする。さらに、青または緑の発光のスペクトルのいずれも、FRETの分光学的証拠を示さない。例えば、405 nm(青)でサンプルhGhRmBまたはhGhRhBを励起させると、DACmからTMRmまたはCy5mへの有意なエネルギー移動は、緑または赤の発光それぞれにより明らかではない。同様に、540 nmでhGhRhBまたはmGhRhBの粒子を励起させると、TMRmからCy5mへの有意なエネルギー移動は、赤の発光により観察されない。我々は、異なる色の色素の層を空間的に分離するために使用したシリカシェルが、FRETを明確に抑制すると結論付ける(そうでなければ、それは前記スペクトルで観察されるであろう)。
【0119】
図4cは、粒子溶液で満たされた
図1bのキュベットと同じ方法で配置された棒グラフの形式で、全26粒子の全ての色の分光輝度レベルをまとめる。輝度レベルは、
図4bに例示されるように、各粒子の各色のそれぞれの蛍光発光最大値として測定された。各色に関するバーの高さは、中色素負荷の粒子の輝度で正規化された。我々は、
図1bの写真と同様に、上から下へかけて、粒子コア中の粒子あたりの緑のTMRm色素(緑のバー)の数の減少に合わせて、表示を、〜20(上の行)、〜5(中央の行)、0色素(下の行)と、3つの族/列に分けた。これらの棒グラフによると、高TMRm色素負荷の粒子は、中色素負荷TMRm粒子より3.5倍明るかった。我々は、図の左から右にかけて、異なる量のCy5m(赤のバー)およびDACm色素(青のバー)を含む粒子について、これらの「緑の」族/列のそれぞれにおいて、蛍光輝度レベルを比較する。その結果から、設計時の狙い通り(上記参照)、高Cy5m色素負荷粒子は、中Cy5m色素レベルの粒子より4〜4.3倍明るく、一方で、高DACm負荷粒子は中DACm負荷粒子より約3.8〜4.2倍明るかった。
図4cで明らかになったように、mcCドットの三色について測定された粒子輝度レベルは、もっぱら粒子中のその色の色素の数に起因した。これは、合成プロトコルに基づく輝度レベルの予測を可能にし、且つ、特定のカラーコードの同定をより管理しやすくする。
【0120】
細胞集合体における生物学的多重化
mcCドットの特性評価に続いて、多色細胞内イメージングを実証するために、蛍光多重化が実施された。個々の細胞溶液は、一種類の粒子溶液で電気穿孔処理され(実験セクション参照)、これに続いて、細胞は、共焦点イメージングを使用して、RGB色混合スキームに基づいて混合され、識別された。ラットの好塩基球性白血病マスト細胞(RBL-2H3)は、これらの測定のために使用され、当該細胞の表面は、細胞外面を同定するために、Alexa488-Cholera toxin subunit B (λ
abs=488 nm、λ
em=515 nm、mcCドット合成で利用されていない波長)で標識された。
【0121】
図5は、hB、hGhB、hGhRおよびhGhRmB粒子をそれぞれ含む細胞混合物の共焦点蛍光顕微鏡画像を示す。
図5(a-d)は、細胞を560 nm、633 nm、405 nmおよび488 nmでそれぞれ励起させた際の、緑、赤、青および黄色チャネルで得られた細胞画像を示す。これらの画像は、前記ナノ粒子中に存在する各色素カラーから放射された光子に対応する各色チャネルの発光を示す。RBL-2H3細胞は、緑(
図5a)および青(
図5b)チャネルで自己蛍光を示すが、粒子が明るいので、その高シグナル対ノイズ比は、細胞に内部移行したナノ粒子の同定を可能にする。
図5eは、4つのチャネルの重ね撮り画像を示し、そこでは、hB粒子で標識された細胞(青の円)は、青色チャネルでのみ発光を示し、緑または赤色チャネルでは発光を示さないが、それに対して、hGhRmBで標識された細胞(マゼンタの円)は、赤、緑および青色チャネルで発光を示す。二色粒子、hGhB(黄色の円)およびhGhR(赤の円)を含む細胞は、それぞれ、赤および青色チャネルで寄与を示さない。
図5fは、これらのRBL-2H3細胞の形態が電気穿孔法後も無傷であること(それゆえ、細胞イメージングを実施することが可能であること)を示す細胞の明視野像を示す。この図に基づいて、我々は、mcCドットが内部移行し、各チャネルからの発光寄与が共存することから、ナノ粒子で染色された細胞は、互いから識別可能であることを示す。
【0122】
この実施例は、多色シリカナノ粒子を利用する細胞内蛍光多重化の最初の実証である。明るいmcCドットは、シンプルなRGBカラーコードに基づいてターゲットを区別するためのプラットフォームを提供する。これらの多層粒子構造の適切なナノ粒子表面機能化は、基礎生物学におけるインビトロおよびインビボ用途の強力なツールとして、細胞シグナリング、バイオメディシンおよびハイスループット細胞および医薬品スクリーニングを提供できると予期される。