【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明はこの状況を改善する。
【0030】
この目的のために、デジタル音声信号を復号するための方法であって、
− 受信されて、変換コード化に従ってコード化されたデジタル信号のサンプルの前のフレームを逆変換復号に従って復号するステップと、
− 受信されて、予測コード化に従ってコード化されたデジタル信号のサンプルの現フレームを予測復号に従って復号するステップと
を含む方法を提案する。方法は、現フレームの予測復号が、前のフレームから生じたいかなる適応辞書も使用しない遷移予測復号であり、および
− 予測復号の少なくとも1つの状態を事前に決定されたデフォルト値に再初期化するステップと、
− 現フレームの予測復号によって合成された信号セグメントと、前のフレームの復号の格納されたセグメントに相当する、逆変換復号によって合成された信号セグメントとを結合する重畳加算を行うステップと
をさらに含むようなものである。
【0031】
従って、状態の再初期化は、前のフレームの復号済み信号の必要性なしで実行され、既定のまたはゼロの定数値を通じて非常に簡単な方法で実行される。従って、デコーダの複雑性は、分析または他の計算を必要とする状態メモリを更新するための技法に関して減少する。次いで、遷移アーチファクトは、前のフレームとのリンクをつなげることを可能にする重畳加算ステップの実装によって回避される。
【0032】
遷移予測復号を用いることで、適応辞書のメモリは使用されないため、この現フレームに対して適応辞書のメモリを再初期化する必要はなくなる。これにより、遷移の実装がさらに簡素化される。
【0033】
特定の実施形態では、逆変換復号は、予測復号の処理遅延より小さい処理遅延を有し、および予測復号によって復号された現フレームの第1のセグメントは、前のフレームの復号の間のメモリにおける遅延シフトおよび配置に相当する前のフレームの復号から生じたセグメントと置き換えられる。
【0034】
これにより、有利には、遷移の質を改善するためにこの遅延シフトを使用することが可能になる。
【0035】
特定の実施形態では、逆変換復号によって合成された信号セグメントは、以前にセグメントに適用されたウィンドウイングを補償する逆ウィンドウの適用によって、重畳加算ステップの前に補正される。
【0036】
従って、復号済み現フレームは、オリジナル信号のものに近いエネルギーを有する。
【0037】
異なる実施形態では、逆変換復号によって合成された信号セグメントは、現フレームの復号済み信号セグメントに相当するサンプリング周波数で事前にリサンプリングされる。
【0038】
これにより、変換復号のサンプリング周波数が予測復号のものと異なる事例において、欠陥なしで遷移を実行することが可能になる。
【0039】
本発明の一実施形態では、予測復号の状態は、以下の状態のリスト:
− 予測復号の内部周波数でのリサンプリングのためのフィルタに対する状態メモリ、
− プリエンファシス/デエンファシスフィルタに対する状態メモリ、
− 線形予測フィルタの係数、
− 合成フィルタの状態メモリ(事前増強された領域における)、
− 適応辞書のメモリ(過去の励振)、
− 低周波ポストフィルタ(LPF)の状態メモリ、
− 固定辞書利得に対する量子化メモリ
の中にある。
【0040】
これらの状態は、予測復号を実装するために使用される。これらの状態のほとんどは、ゼロの値または既定の定数値に再初期化され、それにより、このステップの実装がさらに簡素化される。しかし、このリストは網羅的ではなく、この再初期化ステップにおいて他の状態を考慮できることが非常に明らかである。
【0041】
本発明の特定の実施形態では、現フレームに対する線形予測フィルタの係数の計算は、固有のフィルタの係数の復号によって、かつフレーム終了時、フレーム半ば、およびフレーム開始時の線形予測フィルタに同一の係数を割り振ることによって実行される。
【0042】
実際に、線形予測フィルタの係数が再初期化されているため、フレーム開始時の係数は知られていない。次いで、復号済み値を使用して、完全なフレームに対する線形予測フィルタの係数が得られる。従って、これは、復号済み音声信号に著しい劣化をもたらすことなく、いまだ簡単な方法で実行される。
【0043】
異なる実施形態では、現フレームに対する線形予測フィルタの係数の計算は、以下のステップ:
− フレーム終了時のフィルタの係数の復号済み値およびフレーム開始時のフィルタの係数の既定の再初期設定値を使用することによって、フレーム半ばのフィルタの係数の復号済み値を決定するステップと、
− フレーム開始時のフィルタの係数の復号済み値をフレーム半ばのフィルタの係数の復号済み値に置き換えるステップと、
− フレーム終了時、フレーム半ば、およびフレーム開始時のフィルタの係数のこのように復号された値を使用することによって、現フレームに対する線形予測フィルタの係数を決定するステップと
を含む。
【0044】
従って、フレーム半ばのフィルタに相当する係数は、より低い誤差で復号される。
【0045】
別の異なる実施形態では、フレーム開始時の線形予測フィルタの係数は、長期予測フィルタ係数の平均値に相当する既定の値に再初期化され、および現フレームに対する線形予測係数は、このように事前に決定された値およびフレーム終了時のフィルタの係数の復号済み値を使用することによって決定される。
【0046】
従って、フレーム開始時の係数は、既定の値で知られていると考えられる。これにより、より正確な方法で完全なフレームの係数を回収することと、より急速に予測復号を安定させることとが可能になる。
【0047】
可能な実施形態では、事前に決定されたデフォルト値は、復号すべきフレームのタイプに依存する。
【0048】
従って、復号は、復号すべき信号によく適応している。
【0049】
また、本発明は、デジタル音声信号をコード化するための方法であって、
− 変換コード化に従ってデジタル信号のサンプルの前のフレームをコード化するステップと、
− 予測コード化に従ってコード化すべきデジタル信号のサンプルの現フレームを受信するステップと
を含む方法にも関する。方法は、現フレームの予測コード化が、前のフレームから生じたいかなる適応辞書も使用しない遷移予測コード化であり、および
− 予測コード化の少なくとも1つの状態を事前に決定されたデフォルト値に再初期化するステップ
をさらに含むようなものである。
【0050】
従って、状態の再初期化は、前のフレームの信号の再構築ひいては局所復号の必要性なしで実行される。状態の再初期化は、既定のまたはゼロの定数値を通じて非常に簡単な方法で実行される。従って、コード化の複雑性は、分析または他の計算を必要とする状態メモリを更新するための技法に関して減少する。
【0051】
遷移予測コード化を用いることで、適応辞書のメモリは使用されないため、この現フレームに対して適応辞書のメモリを再初期化する必要はなくなる。これにより、遷移の実装がさらに簡素化される。
【0052】
特定の実施形態では、線形予測フィルタの係数は、予測コード化の少なくとも1つの状態の一部を形成し、および現フレームに対する線形予測フィルタの係数の計算は、フレーム半ばまたはフレーム終了時の単一の予測フィルタの係数のコード化済み値を決定することによって、かつフレーム開始時およびフレーム終了時またはフレーム半ばの予測フィルタの係数に対する同一のコード化済み値の割り振りを決定することによって実行される。
【0053】
実際に、線形予測フィルタの係数が再初期化されているため、フレーム開始時の係数は知られていない。次いで、コード化済み値を使用して、完全なフレームに対する線形予測フィルタの係数が得られる。従って、これは、コード化済み音声信号に著しい劣化をもたらすことなく、いまだ簡単な方法で実行される。
【0054】
従って、有利には、予測コード化の少なくとも1つの状態は、直接的な方法でコード化される。
【0055】
実際に、フレーム半ばまたはフレーム開始時のフィルタの一連の係数のコード化のために通常保存されるビットは、例えば、デエンファシスフィルタのメモリなど、例えば、予測コード化の少なくとも1つの状態を直接的な方法でコード化するために使用される。
【0056】
異なる実施形態では、線形予測フィルタの係数は、予測コード化の少なくとも1つの状態の一部を形成し、および現フレームに対する線形予測フィルタの係数の計算は、以下のステップ:
− フレーム終了時のフィルタの係数のコード化済み値およびフレーム開始時のフィルタの係数の既定の再初期設定値を使用することによって、フレーム半ばのフィルタの係数のコード化済み値を決定するステップと、
− フレーム開始時のフィルタの係数のコード化済み値をフレーム半ばのフィルタの係数のコード化済み値に置き換えるステップと、
− フレーム終了時、フレーム半ば、およびフレーム開始時のフィルタの係数のこのようにコード化された値を使用することによって、現フレームに対する線形予測フィルタの係数を決定するステップと
を含む。
【0057】
従って、フレーム半ばのフィルタに相当する係数は、より小さいパーセンテージ誤差でコード化される。
【0058】
異なる実施形態では、線形予測フィルタの係数は、予測コード化の少なくとも1つの状態の一部を形成し、およびフレーム開始時の線形予測フィルタの係数は、長期予測フィルタ係数の平均値に相当する既定の値に再初期化され、および現フレームに対する線形予測係数は、このように事前に決定された値およびフレーム終了時のフィルタの係数のコード化済み値を使用することによって決定される。
【0059】
従って、フレーム開始時の係数は、既定の値で知られていると考えられる。これにより、完全なフレームの予測係数を計算するために、追加の分析なしで、前のフレームの予測係数の良い推定を得ることが可能になる。
【0060】
可能な実施形態では、事前に決定されたデフォルト値は、コード化すべきフレームのタイプに依存する。
【0061】
また、本発明は、デジタル音声信号デコーダであって、
− 受信されて、変換コード化に従ってコード化されたデジタル信号のサンプルの前のフレームを復号することができる逆変換復号エンティティと、
− 受信されて、予測コード化に従ってコード化されたデジタル信号のサンプルの現フレームを復号することができる予測復号エンティティと
を備えるデコーダにも関する。デコーダは、現フレームの予測復号が、前のフレームから生じたいかなる適応辞書も使用しない遷移予測復号であり、および
− 予測復号の少なくとも1つの状態を事前に決定されたデフォルト値によって再初期化することができる再初期化モジュールと、
− 現フレームの予測復号によって合成された信号セグメントと、前のフレームの復号の格納されたセグメントに相当する、逆変換復号によって合成された信号セグメントとを結合する重畳加算を実行することができる処理モジュールと
をさらに備えるようなものである。
【0062】
同様に、本発明は、デジタル音声信号コーダであって、
− デジタル信号のサンプルの前のフレームをコード化することができる変換コード化エンティティと、
− デジタル信号のサンプルの現フレームをコード化することができる予測コード化エンティティと
を備えるコーダにも関する。コーダは、現フレームの予測コード化が、前のフレームから生じたいかなる適応辞書も使用しない遷移予測コード化であり、および
− 予測コード化の少なくとも1つの状態を事前に決定されたデフォルト値によって再初期化することができる再初期化モジュール
をさらに備えるようなものである。
【0063】
デコーダおよびコーダは、それぞれが実装する復号およびコード化方法と同じ利点をもたらす。
【0064】
最後に、本発明は、これらの命令がプロセッサによって実行される際に、上記に説明されるものなどの復号方法および/または上記に説明されるものなどのコード化方法のステップを実装するためのコード命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0065】
また、本発明は、上記に説明されるものなどの復号方法および/またはコード化方法を実装するコンピュータプログラムを格納する、プロセッサによって読み取り可能であり、デコーダまたはコーダに組み込むことができ、任意選択により取り外し可能な格納手段にも関する。
【0066】
本発明の他の特性および利点は、以下で詳述する説明および添付の図を調査することで明らかになるであろう。