特許第6568876号(P6568876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6568876高い連結度を有する非晶質メソポーラスアルミナおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6568876
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】高い連結度を有する非晶質メソポーラスアルミナおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/14 20060101AFI20190819BHJP
【FI】
   C01F7/14 C
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-572480(P2016-572480)
(86)(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公表番号】特表2017-518252(P2017-518252A)
(43)【公表日】2017年7月6日
(86)【国際出願番号】EP2015062828
(87)【国際公開番号】WO2015189202
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2018年5月15日
(31)【優先権主張番号】1455423
(32)【優先日】2014年6月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】ブアレグ マリカ
(72)【発明者】
【氏名】ブヴリ セリーヌ
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0170096(US,A1)
【文献】 特開昭60−034733(JP,A)
【文献】 特開昭55−027830(JP,A)
【文献】 特開2008−212798(JP,A)
【文献】 特表2002−519297(JP,A)
【文献】 特表2013−522164(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/095856(WO,A1)
【文献】 RENUKA N K; SHIJINA A V; PRAVEEN A K,MESOPOROUS α-ALUMINA NANOPARTICLES: SYNTHESIS, CHARACTERIZATION AND DYE REMOVAL EFFICIENCY,MATERIALS LETTERS,NL,ELSEVIER,2012年 5月12日,VOL:82,PAGE(S):42 - 44,URL,http://dx.doi.org/10.1016/j.matlet.2012.05.043
【文献】 CHANGMOOK KIM; YOUNGHUN KIM; PIL KIM; JONGHEOP YI,SYNTHESIS OF MESOPOROUS ALUMINA BY USING A COST-EFFECTIVE TEMPLATE,KOREAN JOURNAL OF CHEMICAL ENGINEERING,THE KOREAN INSTITUTE OF CHEMICAL ENGINEERS,2003年11月,VOL:20, NR:6,PAGE(S):1142 - 1144,URL,http://dx.doi.org/10.1007/BF02706951
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2.7を超える連結度(Z)を有する非晶質メソポーラスアルミナであって、前記連結度が、窒素吸着/脱着等温式から決定される、非晶質メソポーラスアルミナを調製するための方法であって
少なくとも以下の工程:
a)アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アンモニア、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される少なくとも1つの塩基性前駆体および硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸、塩酸および硝酸から選択される少なくとも1つの酸性前駆体からの水性反応媒体における少なくとも1工程の第1アルミナ沈殿工程であって、前記塩基性または酸性前駆体の少なくとも1つが、アルミニウムを含み、前記酸性および塩基性前駆体の相対流速が、8.5から10.5の間の反応媒体のpHを得るように選択され、アルミニウムを含有する前記酸性および塩基性前駆体(単数または複数)の流速が、40から100%の間の前記第1工程の進捗率を得るように制御され、前記進捗率が、前記沈殿工程(単数または複数)の最後に形成されるアルミナの総量に対する、第1沈殿工程の間にAl等価物として形成されるアルミナの割合として定義され、前記第1沈殿工程が、10から50℃の間の温度で、2分から30分の間の期間実施される、少なくとも1工程の第1アルミナ沈殿工程、
b)工程a)の最後に得られた懸濁液の、50から200℃の間の温度で、30分から5時間の間の期間の熱処理工程、
c)熱処理工程b)の最後に得られた懸濁液の濾過工程と、それに続く、得られたゲルの少なくとも1工程の洗浄工程、
d)粉末を得るための、工程c)の最後に得られたアルミナゲルの乾燥工程、
e)粗材料を得るための、工程d)の最後に得られた粉末の成形工程、
f)工程e)の最後に得られた粗材料の、500から1000℃の間の温度での、最大60容積%の水を含有する空気の流れの存在下、または不存在下、での熱処理工程
を含む、アルミナの調製方法。
【請求項2】
3から7の間の連結度を有する、請求項1に記載のアルミナの調製方法
【請求項3】
50から450m/gの間のBET比表面積を有する、請求項1または2に記載のアルミナの調製方法
【請求項4】
窒素飽和吸着等温式から測定される、0.5mL/g以上のメソ細孔容積を有する、請求項1から3のうち一項に記載のアルミナの調製方法
【請求項5】
前記塩基性前駆体が、アルミン酸ナトリウムである、請求項1から4のうち一項に記載の調製方法。
【請求項6】
前記酸性前駆体が硫酸アルミニウムである、請求項1から5のうち一項に記載の調製方法。
【請求項7】
前記塩基性前駆体の前記酸性前駆体に対する質量比が、1.6から2.05の間である、請求項1から6のうち一項に記載の調製方法。
【請求項8】
前記沈殿工程a)の進捗率が、45から90%の間である、請求項1から7のうち一項に記載の調製方法。
【請求項9】
前記第1沈殿工程a)の最後に得られる進捗率が、100%未満である場合に、第1沈殿工程後に第2沈殿工程a’)を含む、請求項1から8のうち一項に記載の調製方法。
【請求項10】
前記沈殿工程a)の最後に得られた懸濁液の加熱工程が、2工程の沈殿工程a)およびa’)の間に実行され、前記加熱工程が、20から90℃の間の温度で、7から45分の間の期間実施される、請求項に記載の調製方法。
【請求項11】
前記加熱工程の最後に得られた懸濁液の前記第2沈殿工程a’)が、前記懸濁液に、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アンモニア、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される少なくとも1つの塩基性前駆体および硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸、塩酸および硝酸から選択される少なくとも1つの酸性前駆体を添加することによって実施され、少なくとも1つの塩基性または酸性前駆体が、アルミニウムを含有し、酸性および塩基性前駆体の相対流速が、8.5から10.5の間の反応媒体のpHを得るように選択され、アルミニウムを含有する酸性および塩基性前駆体(単数または複数)の流速が、0から60%の間の第2工程の進捗率を得るように制御され、前記第2工程の進捗率が、調製方法の工程a’)の最後に形成されるアルミナの総量に対する、前記第2沈殿工程a’)中にAl等価物として形成されるアルミナの割合として定義され、前記第2工程a’)が、40から90℃の間の温度で、2分から50分の間の期間実施される、請求項9または10に記載の調製方法。
【請求項12】
前記第2沈殿工程a’)において、前記塩基性前駆体対前記酸性前駆体の質量比が、1.6から2.05の間であり、塩基性および酸性前駆体が、それぞれ、アルミン酸ナトリウムおよび硫酸アルミニウムである、請求項11に記載の調製方法。
【請求項13】
前記第2沈殿工程a’)が、45から70℃の間の温度で実施される、請求項11または12に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分散性を有するアルミナゲルから成形された非晶質メソポーラスアルミナの調製に関し、前記アルミナゲルは、少なくとも1つのアルミニウム塩の沈殿によって得られる。特に、本発明は、先行技術のアルミナと比較して極めて高い連結度(connectivity)を有する非晶質メソポーラスアルミナに関する。本発明はまた、アルミナゲルを成形する工程による前記アルミナを調製するための方法に関し、前記アルミナゲルは、ゲルの調製方法の最後に形成されるアルミナの総量に対して少なくとも40重量%のアルミナが、早くも第1沈殿工程で得られることを可能にする特定の沈殿を含む調製方法に従って調製され、第1沈殿工程の最後に形成されるアルミナの量は、100%にさえ達し得る。
【0002】
本発明のアルミナは、特に、連結度の点での有用な特性のために、すべての精製方法において触媒支持体として、ならびに吸着剤として使用され得る。
【背景技術】
【0003】
特許文献1(米国特許4676928)には、水性アルミナ分散物を形成する工程と、5から9の間のpHを有する酸性分散物を製造するために酸を添加する工程と、アルミナをコロイド状ゲルに変換するのに十分な期間、70℃を超える高温での成熟工程と、それに続く、前記得られたコロイド状ゲルを乾燥させる工程とを含む、水分散性アルミナを製造するための方法が記載されている。
【0004】
特許文献2(米国特許5178849)には、70%未満の分散性を有するアルミニウム水和物の分散工程と、アルミニウム水和物を少なくとも部分的に溶解するために、3.5未満のpHでの得られた分散物の酸性化工程と、90%を超える分散性を有するコロイド状ベーマイトを得るための、150から200℃の間の温度、5から20気圧の間の圧力で、0.15から4時間の間の期間での得られた酸性分散物の熱水処理工程とを含む、αアルミナを製造するための方法が記載されている。
【0005】
沈殿によるアルミナゲルの調製もまた、先行技術では周知である。
【0006】
特に、特許文献3(米国特許7790652)には、重質炭化水素原料の水素化変換方法において触媒支持体として使用され得る、高度に規定された細孔分布を有するアルミナ支持体の沈殿による調製が記載されている。
【0007】
アルミナ支持体は、第1アルカリ性水溶液および第1酸性水溶液を制御された方法で混合することによってアルミナ分散物を形成する第1工程を含む方法に従って調製され、前記酸性および塩基性溶液のうち少なくとも一方またはその両方が、アルミニウム化合物を含む。酸性および塩基性溶液は、得られた分散物のpHが、8から11の間であるような割合で混合される。酸性および塩基性溶液はまた、所望の量のアルミナを含有する分散物が得られることを可能にする量で混合され、特に、第1工程は、2工程の沈殿工程の最後に形成されるアルミナの総量に対して25〜35重量%のアルミナが得られることを可能にする。第1工程は、20から40℃の間の温度で実施される。所望の量のアルミナが形成される場合には、懸濁液の温度は、45から70℃の間の温度に上げられ、次いで、加熱された懸濁液は、前記懸濁液を第2アルカリ水溶液および第2酸性水溶液と接触させることによって第2沈殿工程に付され、2種の溶液のうち少なくとも一方または両方の溶液が、アルミニウム化合物を含む。同様に、pHは、添加される酸性および塩基性溶液の割合によって8から10.5の間に調整され、第2工程において形成されるべき残りのアルミナの量は、2種の添加される酸性および塩基性溶液の量によって提供される。第2工程は、20から40℃の間の温度で実施される。それによって形成されるアルミナゲルは、少なくとも95%のベーマイトを含む。このように得られたアルミナゲルの分散性は、記載されていない。次いで、アルミナゲルは、当業者に公知の方法に従って、濾過され、洗浄され、場合によっては乾燥されて、アルミナ粉末が得られ、次いで、これは、当業者に公知の方法に従って成形され、その後、焼成されて、最終アルミナ支持体が得られる。
【0008】
第1工程の最後での高含量アルミナの製造は、得られたゲルの最適濾過を可能にしないので、特許文献3(米国特許7790652)の調製方法の第1沈殿工程は、25から35重量%の間の低含量アルミナの製造に限定される。その上、Shellに属する特許文献3(米国特許7790652)の第1工程におけるアルミナの製造の増大は、このように得られたゲルが成形されることを可能にしなかった。
【0009】
驚くべきことに、本出願人は、ゲルの前記調製方法の最後に形成されるアルミナの総量に対して、Al等価物(equivalent)として少なくとも40重量%のアルミナが早くも第1沈殿工程で形成される少なくとも1工程の沈殿工程、および最終熱処理工程、特に、最終エイジング工程を含む方法に従って調製された高度の分散性を有する特定のアルミナゲルが、特定の細孔分布ならびに極めて高い連結度を有する非晶質メソポーラスアルミナを得るために成形され得ることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4676928号明細書
【特許文献2】米国特許第5178849号明細書
【特許文献3】米国特許第7790652号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、極めて高い連結度を有する非晶質メソポーラスアルミナを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、高分散性、特に、70%を超える分散性ならびに2から35nmの間の微結晶のサイズを有するアルミナゲルを成形することによって前記アルミナを調製するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の対象は、2.7を超える連結度(Z)を有する非晶質メソポーラスアルミナである。
【0014】
本発明の利点は、その細孔構造が高度に連結している、すなわち、極めて多数の隣接する細孔を有するアルミナを提供することである。高い連結度は、細孔構造のアクセス性(accessibility)に関して重要な利点を表し、活性相の前駆体の極めて粘性の溶液の含浸工程中と、これらの材料を使用する触媒反応中に処理されるべき分子の拡散のためとの両方に重要な役割を果たす。
【0015】
本発明の対象はまた、前記アルミナを調製するための方法であり、前記方法は、少なくとも以下の工程を含む:
a)アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アンモニア、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される少なくとも1つの塩基性前駆体および硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸、塩酸および硝酸から選択される少なくとも1つの酸性前駆体からの水性反応媒体中における少なくとも1工程の第1アルミナ沈殿工程であって、塩基性または酸性前駆体の少なくとも1つがアルミニウムを含み、酸性および塩基性前駆体の相対流速が、8.5から10.5の間の反応媒体のpHを得るように選択され、アルミニウムを含有する酸性および塩基性前駆体(単数または複数)の流速が、40から100%の間の前記第1工程の進捗率(仏taux d’avancement, 英rate of progress)を得るように制御され、前記進捗率が、前記沈殿工程(単数または複数)の最後に形成されるアルミナの総量に対する、前記第1沈殿工程の間にAl等価物として形成されるアルミナの割合として定義され、前記第1沈殿工程が、10から50℃の間の温度で、2分から30分の間の期間実施される、少なくとも1工程の第1アルミナ沈殿工程、

b)アルミナゲルが得られることを可能にする、工程a)の最後に得られた懸濁液の、50から200℃の間の温度で、30分から5時間の間の期間の熱処理工程、
c)熱処理工程b)の最後に得られた懸濁液の濾過工程と、それに続く、得られたゲルの少なくとも1工程の洗浄工程、
d)粉末を得るための、工程c)の最後に得られたアルミナゲルの乾燥工程、
e)粗材料を得るための、工程d)の最後に得られた粉末の成形工程、
f)工程e)の最後に得られた粗材料の、500から1000℃の間の温度での、最大60容積%の水を含有する空気の流れの存在下、または不存在下、での熱処理工程。
【0016】
本発明の利点は、改善された濾過性を有しかつその成形を容易にするアルミナゲルが得られることを可能にする熱処理工程特にエイジング工程の実施のおかげで、ゲルの前記調製方法の最後に形成されるアルミナの総量に対して、Al等価物(equivalent)として少なくとも40重量%アルミナが早くも第1沈殿工程で形成される少なくとも1工程の沈殿工程を含む方法に従って調製されたアルミナゲルが成形されることを可能にする、非晶質メソポーラスアルミナを調製するための新規方法を提供することである。
【0017】
本発明の別の利点は、単一の沈殿工程を含み得、例えば、ゾル−ゲル型調製方法などの、従来のアルミナを調製するための先行技術の方法と比較して安価である沈殿によってアルミナを調製するための新規方法を提供することである。
【0018】
本発明の別の利点は、特定の細孔分布ならびにアルミナ先行技術と比較して極めて高い連結度を有する非晶質メソポーラスアルミナが得られることを可能にする、本発明に従ってアルミナを調製するための新規方法を提供することである。
定義および測定方法
以下、本明細書および特許請求の範囲を通して、分散性指数(dispersibility index)は、ポリプロピレンチューブ中、3600Gで10分間の遠心分離によって分散され得る解膠(peptised)アルミナゲルの重量パーセンテージとして定義される。
【0019】
分散性は、10%のベーマイトまたはアルミナゲルを、ベーマイトの質量に対して10%の硝酸も含有する水の懸濁液に分散させることによって測定される。次いで、懸濁液は、3600G rpmで10分間遠心分離される。集められた沈降物は、100℃で一晩乾燥され、次いで、秤量される。
【0020】
DIとして示される分散性指数は、以下の計算によって得られる:DI(%)=100%−乾燥沈降物の質量(%)。
【0021】
本明細書および特許請求の範囲を通して、本発明のアルミナの連結度は、所与の細孔に隣接する細孔の数として定義される。本発明の連結度は、アルミナの総細孔構造、特に、アルミナの総メソ細孔構造、すなわち、2から50nmの平均直径を有する細孔の総数を表す。
【0022】
連結度は、Seatonによる刊行物(Liu H.、Zhang L. Seaton NA, Chemical Engineering Science、第47巻、17〜18、4393〜4404頁、1992年)に記載される手順に従って測定される相対量である。このような連結度は窒素吸着/脱着等温式に基づいたモンテカルロシミュレーションに関連する。これらの連結度パラメータは、パーコレーションの理論に基づく。連結度は、隣接する細孔の数に関連し、高い連結度は触媒反応中の処理されるべき分子の拡散についての利点を表す。
【0023】
本発明のアルミナは、特定の細孔分布をさらに有し、ここでは、マクロ細孔およびメソ細孔容積は、水銀圧入によって測定され、ミクロ細孔容積は、窒素吸着によって測定される。
【0024】
「マクロ細孔」は、開口部が50nmを超える細孔を意味すると理解される。
【0025】
「メソ細孔」は、開口部が、2nmから50nmの間(端値を含む)である細孔を意味する
と理解される。
【0026】
「ミクロ細孔」は、開口部が、厳密に2nm未満である細孔を意味すると理解される。
【0027】
本発明の以下の説明では、水銀ポロシメトリーによって測定される細孔分布は、ASTM基準D4284−83に従って、4000バール(400MPa)の最大圧力での水銀圧入ポロシメトリーによって、484ダイン/cmの表面張力および140°の接触角を用いて、測定される。ぬれ角は、論文「Jean CharpinとBernard RasneurによるTechniques of the engineer, analytical treatise and characterisatio, 1050〜5頁」の推奨に従って、140°であるとした。
【0028】
水銀がすべての粒子間空隙を満たす出発値は、0.2MPaに設定され、この値を超えると、水銀は、アルミナのすべての細孔に浸透すると考えられる。
【0029】
高い正確性を得るために、全細孔容積の値は、サンプルで測定された水銀圧入ポロシメトリーによって測定された全細孔容積の値マイナス30psi(約0.2MPa)に相当する圧力について同一サンプルで測定された水銀圧入ポロシメトリーによって測定された全細孔容積の値に相当する。
【0030】
触媒のマクロ細孔容積は、0.2MPaから30MPaの間の圧力で導入された水銀の累積容積であると定義され、50nmを超える見かけの直径を持つ細孔中に含有される容積に相当する。
【0031】
触媒のメソ細孔容積は、30MPaから400MPaの間の圧力で導入された水銀の累積容積であると定義され、2から50nmの間の見かけの直径の細孔中に含有される容積に相当する。
【0032】
ミクロ細孔の容積は、窒素ポロシメトリーによって測定される。ミクロ細孔構造の定量的分析は、F. Rouquerol、J. RouquerolとK. Singによる、論文「Adsorption by powders and porous solids. Principles, methodology and applications」, Academic Press,1999年に記載されるように、初期吸着等温式の変形に対応する「t」法リッペン−デボア(Lippens-De Boer)法、1965年)に基づいて実施される。
【0033】
メソ細孔の直径中央値(median diameter)(Dp、単位nm)はまた、この直径未満のサイズの細孔のすべてが、水銀ポロシメトリーによって測定されるメソ細孔容積の50%を構成するような直径として定義される。
【0034】
窒素吸着によって測定される細孔分布は、バレット−ジョイナー−ハレンダ(Barrett-Joyner-Halenda)(BJH)モデルによって決定された。BJHモデルに従う窒素吸着−脱着等温式は、E.P. Barrett、L.G. JoynerとP.P. Halendaによる学術誌「The Journal of the American Chemical Society」、第73巻、373号(1951年)に記載されている。本発明の以下の説明では、窒素吸着容積は、窒素がすべての細孔を満たしたと認められる圧力であるP/P=0.99に対して測定された容積を意味すると理解される。
【0035】
本発明の以下の説明では、用語「比表面積」は、学術誌「The Journal of the American Chemical Society」、第60巻、309号(1938年)に記載されるブルナウアー−エメット−テラー(Brunauer-Emmett-Teller)法に基づいて実施されるASTM基準D3663−78と一致する窒素吸着によって決定されたBET比表面積を意味すると理解される。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明に一致して、非晶質メソポーラスアルミナは、2.7を超える、好ましくは2.7から10の間の、好ましくは2.8から10の間の、特に好ましくは3から9の間の、より好ましくは3から8の間の、さらにより好ましくは3から7の間の連結度を有する。
【0037】
本発明のアルミナは、BET比表面積および調整された細孔容積、特に、メソ細孔容積を有することが有利である。
【0038】
好ましくは、メソポーラスアルミナは、ミクロ細孔を含まない。ミクロ細孔がないことは、窒素吸着によって測定され、確認される。
【0039】
好ましくは、アルミナは、50から450m/gの間、好ましくは100から400m/gの間、好ましくは150から400m/gの間、特に好ましくは150から350m/gの間のBET比表面積を有することが有利である。
【0040】
好ましくは、アルミナは、0.5mL/g以上の、好ましくは0.6から0.8mL/gの間のメソ細孔容積を有することが有利である。
【0041】
メソ細孔容積は、2から50nmの間(端値を含む)の平均直径を有する細孔中に含有される容積であると定義される。
【0042】
好ましくは、水銀ポロシメトリーによって測定される前記アルミナの全細孔容積は、0.6から0.9mL/gの間である。
【0043】
好ましくは、前記アルミナの全細孔容積に対する、2から50nmの間のサイズの細孔中に含有される容積パーセンテージは、50%を超える、好ましくは50から75%の間である。
【0044】
好ましくは、前記アルミナの全細孔容積に対する、50nmを超えるサイズの細孔中に含有される容積パーセンテージは、10%未満、好ましくは6%未満である。
【0045】
容積によって決定される、前記アルミナの水銀ポロシメトリーによって測定されるメソ細孔の直径中央値(median diameter)は、8から12.5nmの間、好ましくは9.0から12.5nmの間であることが有利である。
【0046】
好ましくは、本発明のアルミナは、非メソ構造アルミナである。
【0047】
本発明の別の対象は、前記アルミナを調製するための方法に関する。
【0048】
本発明に一致して、前記調製方法は、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アンモニア、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される少なくとも1つの塩基性前駆体および硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸、塩酸および硝酸から選択される少なくとも1つの酸性前駆体からの水性反応媒体における少なくとも1工程の第1アルミナ沈殿工程a)であって、塩基性または酸性前駆体の少なくとも1つが、アルミニウムを含み、酸性および塩基性前駆体の相対流速が、8.5から10.5の間の反応媒体のpHを得るように選択され、アルミニウムを含有する酸性および塩基性前駆体(単数または複数)の流速が、40から100%の間の前記第1工程の進捗率を得るように制御され、進捗率が、沈殿工程(単数または複数)の最後に(より一般的にはアルミナゲルの調製工程の最後に)形成されるアルミナの総量に対する、第1沈殿工程a)中にAl等価物として形成されるアルミナの割合として定義され、前記工程a)が、10から50℃の間の温度で、2分から30分の間の期間実施される、少なくとも1工程の第1アルミナ沈殿工程を含む。
【0049】
一般に、表現、n番目の沈殿工程の「進捗率」は、複数の沈殿工程のセットの最後に(より一般的にはアルミナゲルの沈殿工程の最後に)形成されるアルミナの総量に対する、n番目の工程中にAl等価物として形成されるアルミナのパーセンテージであると理解される。
【0050】
前記沈殿工程a)の進捗率が100%である場合には、前記沈殿工程a)は、一般に、20から100g/Lの間、好ましくは20から80g/Lの間、特に好ましくは20から50g/Lの間のAlの濃度を有するアルミナ懸濁液が得られることを可能にする。
沈殿工程a)
少なくとも1つの塩基性前駆体および少なくとも1つの酸性前駆体からの水性反応媒体中の混合物は、少なくとも塩基性前駆体または酸性前駆体が、アルミニウムを含有することまたは2種の塩基性および酸性前駆体が、アルミニウムを含有することのいずれかを必要とする。
【0051】
アルミニウムを含有する塩基性前駆体として、アルミン酸ナトリウムおよびアルミン酸カリウムがある。好ましい塩基性前駆体は、アルミン酸ナトリウムである。
【0052】
アルミニウムを含有する酸性前駆体として、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムおよび硝酸アルミニウムがある。好ましい酸性前駆体は、硫酸アルミニウムである。
【0053】
好ましくは、塩基性および酸性前駆体(単数または複数)は、水溶液の形で前記第1沈殿工程a)中に添加される。
【0054】
好ましくは、水性反応媒体は、水である。
【0055】
好ましくは、前記工程a)は、撹拌しながら実施される。
【0056】
好ましくは、前記工程a)は、有機添加剤の不在下で実施される。
【0057】
酸性および塩基性前駆体は、それらがアルミニウムを含有するか否かに関わらず、好ましくは溶液の形で、水性反応媒体中に、得られた懸濁液のpHが8.5から10.5の間になるような割合で、混合される。
【0058】
本発明によると、酸性および塩基性前駆体がアルミニウムを含有するか否かに関わらず、8.5から10.5の間の反応媒体のpHを得るように選択されるものは、酸性および塩基性前駆体の相対流速である。
【0059】
塩基性および酸性前駆体がそれぞれ、アルミン酸ナトリウムおよび硫酸アルミニウムである好ましい場合には、前記酸性前駆体に対する前記塩基性前駆体の質量比は、1.6から2.05の間であることが有利である。
【0060】
その他の塩基性および酸性前駆体について、それらがアルミニウムを含有するか否かに関わらず、塩基性/酸性の質量比は、酸による塩基の中和曲線によって確立される。このような曲線は、当業者によって容易に得られる。
【0061】
好ましくは、前記沈殿工程a)は、8.5から10の間、特に好ましくは8.7から9.9の間のpHで実施される。
【0062】
酸性および塩基性前駆体はまた、到達されるべきアルミナの最終濃度に応じて、所望の量のアルミナを含有する懸濁液が得られることを可能にする量で混合される。特に、前記工程a)は、沈殿工程(単数または複数)の最後に形成されるアルミナの総量に対してAl等価物として40〜100重量%のアルミナが得られることを可能にする。本発明に一致して、40から100%の間の第1工程の進捗率を得るように制御されるものは、アルミニウムを含有する酸性および塩基性前駆体(単数または複数)の流速である。
【0063】
好ましくは、前記沈殿工程a)の進捗率は、40から99%の間、好ましくは45から90%の間、好ましくは50から85%の間である。沈殿工程a)の最後に得られる進捗率が100%未満である場合には、形成されるアルミナの量を増大するために第2沈殿工程が必要である。第2沈殿工程が実行される場合には、進捗率は、本発明の調製方法の2工程の沈殿工程の最後に、より一般的には、アルミナゲルの調製工程の最後に形成されるアルミナの総量に対する、前記沈殿工程a)中にAl等価物として形成されるアルミナの割合であると定義される。
【0064】
従って、好ましくは20から100g/Lの間の、沈殿工程(単数または複数)の最後のアルミナの意図される濃度に応じて、酸性および/または塩基性前駆体によって提供されなくてはならないアルミニウムの量が算出され、前駆体の流速は、前記添加される前駆体のアルミニウム濃度に、反応媒体に添加される水の量に、および沈殿工程(単数または複数)に必要な進捗率に応じて制御される。
【0065】
アルミニウムを含有する酸性および/または塩基性前駆体(単数または複数)の流速は、使用される反応器のサイズに、従って、反応媒体に添加される水の量に応じて変わる。
【0066】
好ましくは、前記沈殿工程a)は、10から45℃の間、好ましくは15から45℃の間、特に、好ましくは20から45℃の間、最も好ましくは20から40℃の間の温度で実施される。
【0067】
前記沈殿工程a)は、低温で実施されることが重要である。本発明の前記調製方法が、2工程の沈殿工程を含む場合には、沈殿工程a)は、第2沈殿工程の温度未満の温度で実施されることが有利である。
【0068】
好ましくは、前記沈殿工程a)は、5から20分間の間、好ましくは5から15分間の間の期間実施される。
熱処理工程b)
本発明に一致して、前記調製方法は、沈殿工程a)の最後に得られる懸濁液の熱処理工程b)を含み、前記熱処理工程は、アルミナゲルを得るために、60から200℃の間の温度で、30分から5時間の間の期間実施される。
【0069】
好ましくは、前記熱処理工程b)は、エイジング工程である。
【0070】
好ましくは、前記熱処理工程b)は、65から150℃の間、好ましくは65から130℃の間、好ましくは70から110℃の間、特に好ましくは70から95℃の間の温度で実施される。
【0071】
好ましくは、前記熱処理工程b)は、40分から5時間の間、好ましくは40分から3時間の間、特に好ましくは45分から2時間の間の期間実施される。
任意選択の第2沈殿工程
好ましい実施形態によれば、沈殿工程a)の最後に得られる進捗率が100%未満である場合には、前記調製方法は、好ましくは、第1沈殿工程後に第2沈殿工程a’)を含む。
【0072】
前記第2沈殿工程は、製造されるアルミナの量が増大されることを可能にする。
【0073】
前記第2沈殿工程a’)は、前記第1沈殿工程a)と熱処理工程b)の間に実施されることが有利である。
【0074】
第2沈殿工程が実施される場合には、沈殿工程a)の最後に得られる懸濁液の加熱工程は、2工程の沈殿工程a)およびa’)の間に実施されることが有利である。
【0075】
好ましくは、前記工程a)と第2沈殿工程a’)の間に実施される、工程a)の最後に得られる懸濁液の前記加熱工程は、20から90℃の間、好ましくは30から80℃の間、特に好ましくは30から70℃の間、さらにより好ましくは40から65℃の間の温度で実施される。
【0076】
好ましくは、前記加熱工程は、7から45分の間、好ましくは7から35分の間の期間実施される。
【0077】
前記加熱工程は、当業者に公知のすべての加熱方法に従って実施されることが有利である。
【0078】
前記好ましい実施形態によれば、前記調製方法は、加熱工程の最後に得られた懸濁液の第2沈殿工程を含み、前記第2工程は、前記懸濁液に、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アンモニア、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される少なくとも1つの塩基性前駆体および硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸、塩酸および硝酸から選択される少なくとも1つの酸性前駆体を添加することによって実施され、塩基性または酸性前駆体の少なくとも1つは、アルミニウムを含有し、酸性および塩基性前駆体の相対流速は、8.5から10.5の間の反応媒体のpHを得るように選択され、アルミニウムを含有する酸性および塩基性前駆体(単数または複数)の流速が、0から60%の間の第2工程の進捗率を得るように制御され、当該進捗率は、2工程の沈殿工程の最後に(より一般的にはアルミナゲルの調製工程の最後に、好ましくは本発明の調製方法の工程a’)の最後に)形成されるアルミナの総量に対する、前記第2沈殿工程中にAl等価物として形成されるアルミナの割合として定義され、前記工程が、40から90℃の間の温度で、2分から50分の間の期間実施される。
【0079】
第1沈殿工程a)におけるように、少なくとも1つの塩基性前駆体および少なくとも1つの酸性前駆体の加熱した懸濁液への添加は、少なくとも塩基性前駆体または酸性前駆体がアルミニウムを含有すること、または2種の塩基性および酸性前駆体がアルミニウムを含有することを必要とする。
【0080】
アルミニウムを含有する塩基性前駆体は、アルミン酸ナトリウムおよびアルミン酸カリウムである。好ましい塩基性前駆体は、アルミン酸ナトリウムである。
【0081】
アルミニウムを含有する酸性前駆体として、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムおよび硝酸アルミニウムがある。好ましい酸性前駆体は、硫酸アルミニウムである。
【0082】
好ましくは、前記第2沈殿工程は、撹拌しながら実施される。
【0083】
好ましくは、前記第2工程は、有機添加剤の不在下で実施される。
【0084】
酸性および塩基性前駆体は、それらがアルミニウムを含有するか否かに関わらず、好ましくは溶液の形で、水性反応媒体中に、得られた懸濁液のpHが、8.5から10.5の間になるような割合で、混合される。
【0085】
好ましくは、塩基性および酸性前駆体(単数または複数)は、水溶液の形で第2沈殿工程a’)中に添加される。
【0086】
沈殿工程a)におけるように、酸性および塩基性前駆体がアルミニウムを含有するか否かに関わらず、8.5から10.5の間の反応媒体のpHを得るように選択されるものは、酸性および塩基性前駆体の相対流速である。
【0087】
塩基性および酸性前駆体がそれぞれ、アルミン酸ナトリウムおよび硫酸アルミニウムである好ましい場合には、前記塩基性前駆体の前記酸性前駆体に対する質量比は、1.6から2.05の間であることが有利である。
【0088】
その他の塩基性および酸性前駆体について、それらがアルミニウムを含有するか否かに関わらず、塩基性/酸性の質量比は、酸による塩基の中和曲線によって決定される。このような曲線は、当業者によって容易に得られる。
【0089】
好ましくは、前記第2沈殿工程は、8.5から10の間、好ましくは8.7から9.9の間のpHで実施される。
【0090】
酸性および塩基性前駆体はまた、到達されるべきアルミナの最終濃度に応じて、所望の量のアルミナを含有する懸濁液が得られることを可能にする量で混合される。特に、前記第2工程は、2工程の沈殿工程の最後に、特に、工程a’)の最後に形成されるアルミナの総量に対してAl等価物として0〜60重量%のアルミナが得られることを可能にする。
【0091】
沈殿工程a)におけるように、0から60%の間の第2工程の進捗率を得るように制御されるものは、アルミニウムを含有する酸性および塩基性前駆体(単数または複数)の流速であり、進捗率は、本発明の方法の2工程の沈殿工程の最後に、好ましくは工程a’)の最後に形成されるアルミナの総量に対する、前記第2沈殿工程中にAl等価物として形成されるアルミナの割合として定義される。
【0092】
好ましくは、前記第2沈殿工程a)の進捗率は、1から60の間、好ましくは10から55%の間、特に好ましくは15から55%の間である。
【0093】
したがって、好ましくは20から100g/Lの間の、沈殿工程(単数または複数)の最後に企図されるアルミナ濃度に応じて、酸性および/または塩基性前駆体によって提供されなくてはならないアルミニウムの量が算出され、前記添加されるアルミニウム前駆体の濃度に、反応媒体に添加される水の量に、および沈殿工程の各々の必要な進捗率に応じて前駆体の流速が調整される。
【0094】
沈殿工程a)におけるように、アルミニウムを含有する酸性および/または塩基性前駆体の流速は、使用される反応器のサイズに、従って、反応媒体に添加される水の量に応じて変わる。
【0095】
例として、3リットル反応器が使用され、50g/Lの最終Al濃度の1リットルのアルミナ懸濁液が望まれる場合には、目標の進捗率は、第1沈殿工程に対してAl等価物として50%である。したがって、沈殿工程a)の間に、総アルミナの50%が提供されなければならない。アルミナ前駆体は、155g/LのAlの濃度のアルミン酸ナトリウムおよび102g/LのAlの濃度の硫酸アルミニウムである。第1工程の沈殿pHは、9.5に設定され、第2工程のpHは9に設定される。反応器に添加される水の量は、622mLである。
【0096】
30℃で8分間実施される第1沈殿工程a)について、硫酸アルミニウムの流速は、10.5mL/分でなくてはならず、アルミン酸ナトリウムの流速は、13.2mL/分である。したがって、アルミン酸ナトリウム対硫酸アルミニウムの質量比は、1.91である。
【0097】
70℃で30分間実施される第2沈殿工程については、硫酸アルミニウムの流速は、2.9mL/分でなくてはならず、アルミン酸ナトリウムの流速は、3.5mL/分である。したがって、アルミン酸ナトリウム対硫酸アルミニウムの質量比は、1.84である。
【0098】
好ましくは、第2沈殿工程は、40から80℃の間、特に、好ましくは45から70℃の間、さらにより好ましくは50から70℃の間の温度で実施される。
【0099】
好ましくは、第2沈殿工程は、5から45分の間、特に好ましくは7から40分の間の期間実施される。
【0100】
第2沈殿工程は、一般に、20から100g/Lの間、好ましくは20から80g/Lの間、特に好ましくは20から50g/Lの間のAlの濃度を有するアルミナ懸濁液が得られることを可能にする。
【0101】
前記第2沈殿工程が実施される場合には、前記調製方法はまた、50から95℃の間の、好ましくは、60から90℃の間の温度での前記第2沈殿工程の最後に得られた懸濁液の第2加熱工程を含むことが有利である。
【0102】
好ましくは、前記第2加熱工程は、7から45分の間の期間実施される。
【0103】
前記第2加熱工程は、当業者に公知のすべての加熱方法に従って実施されることが有利である。
【0104】
前記第2加熱工程は、得られた懸濁液を熱処理工程b)に付す前に、反応媒体の温度が増大されることを可能にする。
濾過工程c)
本発明に一致して、本発明のアルミナを調製するための方法はまた、熱処理工程b)の最後に得られた懸濁液の濾過工程c)と、それに続く、得られたゲルの少なくとも1工程の洗浄工程を含む。前記濾過工程は、当業者に公知の方法に従って実施される。
【0105】
沈殿工程a)の最後に、または2工程の沈殿工程の最後に得られる懸濁液の濾過性は、得られる懸濁液の最終熱処理工程b)の存在によって改善され、前記熱処理工程は、本発明の方法の生産性ならびに本方法の工業レベルへのスケールアップを増進する。
【0106】
前記濾過工程の後に、水を用いる少なくとも1工程の洗浄工程、好ましくは、濾過された沈殿物の量と等しい水の量を用いる1〜3つの洗浄工程を続けることが有利である。
【0107】
一連の工程a)およびc)および場合によっては第2沈殿工程、第2加熱工程および場合によっては濾過工程は、70%を超える分散性指数、1から35nmの間の微結晶のサイズならびに0.001%から2重量%の間の硫黄含量および0.001%から2重量%の間のナトリウム含量を有する特定のアルミナが得られることを可能にし、重量パーセンテージは、アルミナゲルの総質量に対して表される。
【0108】
このように得られたアルミナゲルは、70から100%の間の、好ましくは80から100%の、特に好ましくは85から100%の間の、最も好ましくは90から100%の間の分散性指数を有する。
【0109】
好ましくは、このように得られたアルミナゲルは、2から35nmの間の微結晶のサイズを有する。
【0110】
好ましくは、このように得られたアルミナゲルは、0.001%から1重量%の間、好ましくは0.001から0.40重量%の間、特に好ましくは0.003から0.33重量%の間、最も好ましくは0.005から0.25重量%の間の硫黄含量を有する。
【0111】
好ましくは、このように得られたアルミナゲルは、0.001%から1重量%の間、好ましくは0.001から0.15重量%の間、特に好ましくは0.0015から0.10重量%の間および0.002から0.040重量%の間のナトリウム含量を有する。
【0112】
特に、本発明の粉末の形態のアルミナゲルまたはベーマイトは、シェラー(Scherrer)のX線回折式によって得られるサイズがそれぞれ、[120]および[020]結晶学的方向に沿って2から20nmの間および2から35nmの間である微結晶から構成される。
【0113】
好ましくは、本発明のアルミナゲルは、2から15nmの間の[020]結晶学的方向に沿った微結晶のサイズおよび2から35nmの間の[120]結晶学的方向に沿った微結晶のサイズを有する。
【0114】
アルミナゲルまたはベーマイトでのX線回折は、回折計によって従来の粉末法を使用して実施された。
【0115】
シェラー(Scherrer)の式は、ハーフハイト(half height)回折ピーク幅を微結晶のサイズと関連づける粉末または多結晶サンプルでのX線回折において使用される式である。参考文献: Appl. Cryst. (1978). 11, 102-113 Scherrer after sixty years: A survey and some new results in the determination of crystallite size, J.I. Langford and A. J. C. Wilsonに詳細に記載されている。
【0116】
このように調製された、高分散性指数有するアルミナゲルは、当業者に公知のすべての方法に従う、特に、混錬押出成形による、造粒による、およびいわゆる油滴技術による(英語技術用語による)前記ゲルの成形工程を増進する。
乾燥工程d)
本発明によると、ろ過工程c)の最後に得られるアルミナゲルは、乾燥工程d)において粉末を得るために乾燥される。
【0117】
乾燥工程は有利には、噴霧法(atomisation)によって温度20〜50℃にて1日〜3週間の時間行われる。
【0118】
乾燥工程d)を温度20〜50℃にて1日〜3週間の時間行う場合、該乾燥工程d)は有利には閉鎖した及び通気したオーブン中で行われ、好ましくは該乾燥工程は25〜40℃の温度で3日〜2週間の時間行われる。
【0119】
乾燥工程d)を噴霧法によって行う場合、熱処理工程と、場合によってはそれに続くろ過工程の最後に得られるケーキを再懸濁する。次いで、前記懸濁液は、当業者に周知の原理に従って、垂直円柱状容器内において微細な液滴に微粒化され、熱空気の流れと接触させられ、水を蒸発させるようにする。得られた粉末は、粉末を空気と分離するサイクロンまたはスリーブフィルターに熱流によって取り込まれる。好ましくは、乾燥工程d)を噴霧法により行う場合、該噴霧法は出版物Asep Bayu Dani Nandiyanto、Kikuo Okuyama、アドバンスト パウダー テクノロジー(Advanced Powder Technology)、第22号、1−19頁、2011年に記載の作業プロトコルに従って行われる。
成形工程e)
本発明と一致して、乾燥工程d)の最後に得られた粉末は、粗材料を得るために工程e)において成形される。
【0120】
用語「粗材料」は、熱処理段階に付されていない成形された材料を意味すると理解される。
【0121】
好ましくは、前記成形工程e)は、混錬押出成形によって、ペレット化によって、油滴凝固法によって、回転板造粒によって、または当業者に周知の任意のその他の方法によって実施される。
【0122】
特に好ましくは、前記成形工程e)は、混錬押出成形によって実施される。
熱処理工程f)
本発明に一致して、成形工程e)の最後に得られた粗材料は、次いで、500から1000℃の間の温度で、2から10時間の間の期間、最大60容積%の水を含有する空気の流れの存在下、または不存在下、での熱処理工程f)を受ける。
【0123】
好ましくは、前記熱処理工程f)は、540℃から850℃の間の温度で実施される。
【0124】
好ましくは、前記熱処理工程f)は、2時間から10時間の間の期間実施される。
【0125】
前記熱処理工程f)は、ベーマイトが最終アルミナに変換されることを可能にする。
【0126】
本発明の調製方法は、2.7を超える連結度および制御されたメソ細孔構造を有し、良好な熱および化学安定性を示し、集中された、均一の、制御されたサイズ分布のメソ細孔および比表面積および細孔容積、特に、調整されたメソ細孔を示す非晶質メソポーラスアルミナが得られることを可能にする。本発明の方法に従って調製されたメソポーラスアルミナは、ミクロ細孔を含まない。50から450m/gの間のBET比表面積および0.5mL/g以上の、好ましくは0.6から0.8mL/gの間のメソ細孔容積を有することが有利である。
【0127】
本発明を、以下の実施例によって例示するが、これは、決して本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0128】
【実施例1】
【0129】
(比較)
Pural SB3市販のベーマイトを粉末の形態で使用する。酸性水溶液(Ta:混錬において導入される3重量%/乾燥質量の硝酸含量)を用いる、0から60分間の酸性混錬によって、第1工程において粉末の成形を実施する。これに、塩基性混錬を続けて、中性pHとする(Tb:50重量%/HNO)。得られたペーストを、2mmの3葉(three-lobed)金型の押出成形機によって押出成形する。得られた押出成形物を、100℃で一晩乾燥し、次いで、600℃で2時間、焼成する。
【0130】
【表1】
【実施例2】
【0131】
(比較)
本発明と一致しない調製方法に従ってアルミナゲルを合成し、実施例2の調製方法は、沈殿工程の最後に得られた懸濁液の熱処理工程を含まず、第1沈殿工程a)は、第2沈殿工程の最後に形成されるアルミナの総量に対して、40%を超えるアルミナの量をもたらさない。実施例2は、特許文献3(米国特許7790562)に記載される調製手順に従って実施する。
【0132】
合成は、7Lの反応器中でおよび2工程の沈殿工程において5Lの最終懸濁液にて実施する。反応器に添加される水の量は、3868mLである。
【0133】
所望の最終アルミナ濃度は、30g/Lである。
【0134】
硫酸アルミニウムAl(SO)およびアルミン酸ナトリウムNaAlOOの第1共沈工程を30℃およびpH=9.3で、8分の期間実施する。使用されるアルミニウム前駆体の濃度は、以下である:Al(SO)=102g/LのAlおよびNaAlOO 155g/LのAl。撹拌は、合成を通じて350rpmである。
【0135】
pHを9.3の値に調整するために、塩基/酸質量比=1.80に従い、硫酸アルミニウムAl(SO)の溶液を、アルミン酸ナトリウムNaAlOOの溶液に、19.6mL/分の流速で8分にわたって連続添加する。反応媒体の温度は、30℃で維持する。
【0136】
アルミナ沈殿物を含有する懸濁液が得られる。
【0137】
所望の最終アルミナ濃度は30g/Lであるので、第1沈殿工程において導入されるアルミニウムを含有する前駆体、硫酸アルミニウムAl(SO)およびアルミン酸ナトリウムNaAlOOの流速は、それぞれ、19.6mL/分および23.3mL/分である。
【0138】
アルミニウムを含有する酸性および塩基性前駆体のこれらの流速は、第1沈殿工程の最後に30%進捗率が得られることを可能にする。
【0139】
次いで、得られた懸濁液は、30から57℃への温度の上昇を受ける。
【0140】
次いで、得られた懸濁液の第2共沈工程を、102g/LのAlの濃度の硫酸アルミニウムAl(SO)および155g/LのAlの濃度のアルミン酸ナトリウムNaAlOOを添加することによって実施する。したがって、硫酸アルミニウムAl(SO)の溶液を、第1沈殿工程の最後に得られた加熱された懸濁液に、アルミン酸ナトリウムNaAlOOの溶液に対して塩基/酸質量比=1.68に従って、12.8mL/分の流速で30分間連続添加し、pHを8.7の値に調整するようにする。第2工程では、反応媒体の温度は、57℃で維持する。
【0141】
アルミナ沈殿物を含有する懸濁液が得られる。
【0142】
所望の最終アルミナ濃度は、30g/Lであるので、第2沈殿工程において導入されるアルミニウムを含有する前駆体、硫酸アルミニウムAl(SO)およびアルミン酸ナトリウムNaAlOOの流速は、それぞれ、12.8mL/分および14.1mL/分である。
【0143】
アルミニウムを含有する酸性および塩基性前駆体のこれらの流速は、第2沈殿工程の最後に70%の進捗率が得られることを可能にする。
【0144】
このように得られた懸濁液は、エイジング工程を受けない。
【0145】
次いで、得られた懸濁液を、フリットブフナー漏斗中の空気の排出によって濾過し、得られたアルミナゲルを5Lの蒸留水を用いて70℃で3回洗浄する。濾過および洗浄時間は、4時間である。
【0146】
このように得られたアルミナゲルの特徴は、表2にまとめられている。
【0147】
【表2】
次いで、アルミナゲルを、250℃の入口温度および130℃の出口温度で噴霧によって乾燥する。
【0148】
乾燥アルミナゲルをブラベンダー(Brabender)型混錬機に添加する。混錬機に導入される乾燥ゲルの質量に対して重量で表される3%の総酸含量に硝酸を用いて酸性化した水を、20rpmで混錬しながら5分で添加する。酸性混錬を15分間継続する。次いで、混錬機にアンモニア溶液を添加することによって、50%の中和度で中和工程を実施する。中和度は、酸性化工程のために混錬機に添加された硝酸の量に対するアンモニアの重量で表される。混錬を3分間継続する。
【0149】
次いで、得られたペーストを、2mmの3葉(three-robed)押出成形機によって押出成形する。得られた押出成形物を、100℃で一晩乾燥し、次いで、600℃で2時間、焼成する。
【0150】
成形されたアルミナの特徴は、表3に示されている。
【0151】
【表3】
【実施例3】
【0152】
(比較):
アルミナを、沈殿工程が高温で、すなわち、60℃の温度で実施される、本発明と一致しない調製方法に従って合成する。撹拌は、合成を通じて350rpmで行われる。
【0153】
合成は、5Lの反応器で実施し、単一の沈殿工程および得られた懸濁液のエイジング工程を含む。
【0154】
所望の最終アルミナ濃度は、50g/Lである。
【0155】
硫酸アルミニウムAl(SO)およびアルミン酸ナトリウムNaAlOOの沈殿工程を、60℃およびpH=10.2で20分の期間実施する。使用されるアルミニウム前駆体の濃度は、以下のとおりである:Al(SO)=102g/LのAlおよび155g/LのAlのNaAlOO。
【0156】
10.2の値にpHを調整するために塩基/酸質量比=2.0に従って、硫酸アルミニウムAl(SO)の溶液を、アルミン酸ナトリウムNaAlOOの溶液に対して25.9mL/分の流速で30分かけて連続添加する。すべての前駆体は、60℃の温度で接触する。
【0157】
アルミナ沈殿物を含有する懸濁液が得られる。
【0158】
所望の最終アルミナ濃度が50g/Lであるので、第1沈殿工程において導入されるアルミニウムを含有する前駆体、硫酸アルミニウムAl(SO)およびアルミン酸ナトリウムNaAlOOの流速は、それぞれ、25.9mL/分および34.1mL/分である。
【0159】
アルミニウムを含有する酸性および塩基性前駆体のこれらの流速は、第1沈殿工程の最後に100%の進捗率が達成されることを可能にする。
【0160】
次いで、得られた懸濁液は、60から90℃への温度の上昇を受ける。
【0161】
次いで、懸濁液は、90℃で60分間維持されるエイジング工程を受ける。
【0162】
次いで、得られた懸濁液を、フリットブフナーフィルター中の水の置換によって濾過し、得られたアルミナゲルを3.5Lの蒸留水を用いて70℃で3回洗浄する。濾過および洗浄時間は、3時間である。
【0163】
それによって得られたアルミナゲルの特徴は、表4にまとめられている。
【0164】
【表4】
次いで、アルミナゲルを、250℃の入り口温度および130℃の出口温度で噴霧によって乾燥する。
【0165】
次いで、乾燥したアルミナゲルをブラベンダー(Brabender)型混錬機に添加する。混錬機に添加される乾燥ゲルの質量に対して重量で表される、3%の総酸含量に硝酸を用いて酸性化した水を、20rpmで混錬しながら5分で添加する。酸性混錬を15分間継続する。
【0166】
非凝集性のペーストが得られた。したがって、アルミナ押出成形物は得られず、連結度の測定は実施され得なかった。
【0167】
本発明と一致しない実施例3は、特に、第1沈殿工程の際に、沈殿工程を低温で実施することの重要性を実証する。したがって、特許請求される範囲の外側の70℃の温度で実施された沈殿工程は、分散性ゲルが得られることを可能にしない。対照的に、アルミナゲルの質量に対して10%の硝酸も含有する水の懸濁液での、このように得られたアルミナゲルの10%分散と、それに続く、3600Gで10分間の懸濁液の遠心分離は、100%の沈降物につながる。
【0168】
したがって、沈殿工程において高温で実施される実施例3の調製方法は、得られたアルミナゲルが成形されることを可能にせず、従って、アルミナ押出生成物が得られることを可能にしない。
【実施例4】
【0169】
(本発明による)
本発明による調製方法に従って、アルミナを、7Lの反応器中で、2工程の沈殿工程とそれに続く熟成工程との3工程において最終懸濁液5L中で合成する。
【0170】
所望の最終アルミナ濃度は、45g/Lである。反応器に添加される水の量は、3267mLである。撹拌は、合成を通じて350rpmで実施する。
【0171】
硫酸アルミニウムAl(SO)およびアルミン酸ナトリウムNaAlOOの水中の第1共沈工程を30℃およびpH=9.5で、8分の期間実施する。使用されるアルミニウム前駆体の濃度は、以下のとおりである:Al(SO)=102g/LのAlおよびNaAlOO 155g/LのAl
【0172】
pHを9.5の値に調整するために、塩基/酸質量比=1.84に従って、84.5mL/分の流速のアルミン酸ナトリウムNaAlOOの溶液に、硫酸アルミニウムAl(SO)の溶液を69.6mL/分の流速で8分かけて連続添加する。反応媒体の温度は、30℃で維持する。
【0173】
アルミナ沈殿物を含有する懸濁液が得られる。
【0174】
所望の最終アルミナ濃度は、45g/Lであるので、第1沈殿工程に導入されるアルミニウムを含有する前駆体、硫酸アルミニウムAl(SO)およびアルミン酸ナトリウムNaAlOOの流速は、それぞれ、69.6mL/分および84.5mL/分である。
【0175】
アルミニウムを含有する酸性および塩基性前駆体のこれらの流速は、第1沈殿工程の最後に72%の進捗率が得られることを可能にする。
【0176】
次いで、得られた懸濁液は、30から68℃への温度の上昇を受ける。
【0177】
次いで、102g/LのAlの濃度の硫酸アルミニウムAl(SO)および155g/LのAlの濃度のアルミン酸ナトリウムNaAlOOを添加することによって、得られた懸濁液の第2共沈工程を実施する。したがって硫酸アルミニウムAl(SO)の溶液を、第1沈殿工程の最後に得られた加熱懸濁液に、アルミン酸ナトリウムNaAlOOの溶液に対して塩基/酸質量比=1.86に従って、7.2mL/分の速度で30分間、連続添加し、pHを9の値に調節するようにする。第2工程における反応媒体の温度は、68℃で維持する。
【0178】
アルミナ沈殿物を含有する懸濁液が得られる。
【0179】
所望の最終アルミナ濃度は、45g/Lであるので、第2沈殿工程において導入されるアルミニウムを含有する前駆体、硫酸アルミニウムAl(SO)およびアルミン酸ナトリウムNaAlOOの流速は、それぞれ、7.2mL/分および8.8mL/分である。
【0180】
アルミニウムを含有する酸性および塩基性前駆体のこれらの流速は、第2沈殿工程の最後に28%の進捗率が得られることを可能にする。
【0181】
次いで、得られた懸濁液は、68から90℃への温度の上昇を受ける。
【0182】
次いで、懸濁液を、90℃で60分間維持される熱処理工程に付す。
【0183】
次いで、得られた懸濁液を、フリットブフナー漏斗中の水の排出によって濾過し、得られたアルミナゲルを、5Lの蒸留水を用いて3回洗浄する。濾過および洗浄時間は、3時間である。
【0184】
このように得られたアルミナゲルの特徴が、表5にまとめられている。
【0185】
【表5】
100%の分散性指数を有するゲルが、このように得られる。
【0186】
次いで、得られたアルミナゲルを、250℃の入口温度および130℃の出口温度で噴霧によって乾燥させる。噴霧によって乾燥されたゲルは、ゲル1番と呼ばれる。
【0187】
実施例4に従って得られたアルミナゲルをまた、換気型オーブン中、35℃で4日間乾燥させた。オーブン中で乾燥されたゲルは、ゲル2番と呼ばれる。
【0188】
乾燥アルミナゲル1番および2番を、ブラベンダー(Brabender)型混錬機にそれぞれ添加する。混錬機に添加される乾燥ゲルの質量に対して重量で表される3%の総酸含量に硝酸で酸性化した水を、20rpmで混錬しながら5分で添加する。酸性混錬を15分間継続する。次いで、アンモニア溶液を混錬機に添加することによって50%の中和度で中和工程を実施する。中和度は、酸性化工程のために混錬機に導入された硝酸の量に対するアンモニアの重量で表される。混錬を3分間継続する。
【0189】
次いで、得られたペーストを、2mmの3葉(three-robed)押出成形機によって押出成形する。得られた押出成形物を、100℃で一晩乾燥し、次いで、600℃で2時間、焼成する。
【0190】
成形されたアルミナの特徴は、表6に示されている。
【0191】
【表6】
本発明と一致する調製方法に従って得られたゲルの熱処理は、ゲルの良好な濾過性、すなわち、工業レベルへの方法のスケールアップに適合する濾過時間を可能にし、それによって、前記方法の良好な生産性を可能にする。
【0192】
さらに、本発明の調製方法は、アルミナゲルが成形されることを可能にし、これでは、前記調製方法の最後で形成されるアルミナの総量に対してアルミナの70重量%が、早くも沈殿工程で形成される。
【0193】
得られたアルミナ押出成形物は、使用される乾燥法に関わらず、極めて高い連結度を有する。
【実施例5】
【0194】
(比較)
本発明と一致しない実施例5を、第2沈殿工程の最後で得られた懸濁液がエイジング工程を受けない点を除いて本発明に従う実施例4と同一の方法で、同一の操作条件下で実施する。
【0195】
第2沈殿工程の最後で得られた懸濁液を、フリットブフナー漏斗中の水の排出によって濾過し、得られたアルミナゲルを3.5Lの蒸留水を用いて3回洗浄する。
【0196】
濾過および洗浄時間は、24時間である。
【0197】
それによって得られたアルミナゲルの特徴が、表7にまとめられている。
【0198】
【表7】
それによって得られたアルミナゲルは、成形され得なかった。実際、120℃のオーブン中での乾燥は、混錬押出成形によって、または油滴法によって成形することが不可能である粉末につながる。
【0199】
本発明と一致しない実施例5は、得られたゲルの沈殿工程と乾燥工程の間に熱処理工程を実行することの重要性を示す。