(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記信号処理部は、前記検長範囲内で検出された前記検出信号の前記信号レベルの変化位置であって、且つ、該変化位置よりもばね送り方向の上流側における規定範囲に亘って前記信号レベルが閾値以下である条件を満たす前記変化位置を前記エッジの位置として特定するように構成された
ことを特徴とする請求項1に記載のコイルばね検長装置。
前記信号処理部により得られた前記コイルばねの長さの検出結果と前記コイルばねの目標長さとの偏差に基づいて、前記コイリングマシンを制御するためのフィードバック信号を生成するためのフィードバック信号生成部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のコイルばね検長装置。
前記信号処理部により得られた前記コイルばねの長さの検出結果に基づいて、前記コイルばねを振分ける振分け機に対して振分け信号を出力するための振分け信号生成部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のコイルばね検長装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1の記載によれば、受光部の延在範囲の全域について走査が行われて二値データが作成される。このため、被測定物のエッジ近傍から離れた寸法測定への影響が小さい位置で被測定物以外の異物(例えば、塵や油滴等の汚れ)が検出された際にも寸法測定装置全体を停止させたり異物を除去したりしなければならならず、異物付着に起因した誤検知の頻度が増加して製造装置の稼働率が低下してしまうという問題があった。また、特許文献1、2の何れにも、ラインセンサを用いたコイルばね検長装置の具体的な構成について何ら開示されていない。
【0007】
上記問題に鑑み、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、ラインセンサを用いたコイルばね検長装置における異物付着に起因した誤検知を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るコイルばね検長装置は、
コイリングマシンから送り出されるコイルばねに向けて、前記コイルばねのエッジを含むばね長さ方向範囲に亘って光ビームを照射するための光照射部と、
前記コイルばねを挟んで前記光照射部に対向して前記コイルばねの長さ方向に沿って配置され、前記光ビームを検出するように構成されたラインセンサと、
前記ラインセンサの延在範囲のうち一部であって前記エッジを含む検長範囲内における前記ラインセンサの検出信号の信号レベルの変化位置を、前記コイルばねの長さ方向における前記エッジの位置として特定するように構成された信号処理部と、を備え
、
前記信号処理部は、前記検長範囲内で検出された前記検出信号の前記信号レベルの変化位置であって、且つ、該変化位置よりもばね送り方向の上流側における規定範囲に亘って前記信号レベルが閾値以下である条件を満たす前記変化位置を前記エッジの位置として特定するように構成される。
【0009】
汎用のラインセンサを使用する場合、ラインセンサの検出範囲がコイルばねの検長の目的からして過大となり、ラインセンサの異物付着(例えば油汚れ)に起因した誤検知が問題となり得る。この点、上記(1)の構成によれば、ラインセンサの延在範囲の一部である検長範囲内における検出信号の信号レベルの変化位置を、コイルばねの長さ方向におけるエッジ位置として特定するようにしたので、ラインセンサの検長範囲外における異物付着に起因した誤検知を防止でき、誤検知の頻度を低減できる。
また、本発明者らの知見によれば、コイルばね検長装置の受光部としてのラインセンサを覆う受光側筐体に付着する異物は、コイリングマシンの稼働時に発生する油煙等の細かい汚れが殆どである。そこで、上記
(1)の構成によれば、ラインセンサの検出信号の変化位置よりもばね送り方向上流側における規定範囲に亘って検出信号が低レベルである場合にのみ、当該変化位置をエッジ位置として特定することで、ラインセンサの検長範囲内における異物付着に起因したエッジ誤検知の可能性を低減できる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記
(1)に記載のコイルばね検長装置であって、
前記信号処理部は、
前記ラインセンサの検出信号データの受信開始タイミングを示す第1タイミング信号を受け取り、
前記第1タイミング信号の受取り時点から、前記規定範囲に対応する時間だけ遅延した第1時点を求め、
前記検出信号データの受信期間中における前記変化位置に対応するデータの受信時点の後、前記規定範囲に対応する時間を経過後の第2時点を求め、
前記第1時点と前記第2時点との間の期間の長さから、前記変化位置の座標を求める
ように構成される。
【0011】
コイルばねの長さ測定に際して該コイルばねのエッジ位置を検出する際、ラインセンサによる検出信号の信号レベルの変化位置を含む検出信号データを信号処理部が受信した後、継続して受信される規定範囲に対応する検出信号データの信号レベルを考慮することで、エッジに起因する信号レベルの変化か異物に起因する信号レベルの変化かを判別することができる。
この点、上記
(2)の構成によれば、信号処理部が、検出信号データの受信期間中における変化位置に対応するデータを受信した後、該受信時点から規定範囲に対応する時間を経過後の第2時点まで検出信号データを受信するように構成することにより、異物に起因する検出信号を排除してエッジに起因する変化位置を高精度に検出することができる。そして、第1タイミング信号の受け取り時点から規定範囲に対応する時間だけ遅延した第1時点と上記第2時点との間の期間の長さから、変化位置の座標を適切に求めることができ、ラインセンサの検長範囲内における異物付着に起因したエッジ誤検知の可能性を低減することができる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)
又は(2)に記載のコイルばね検長装置であって、
前記コイルばねが前記光照射部と前記ラインセンサとの間に存在しない期間において、前記検長範囲内に前記ラインセンサの検出信号の前記信号レベルの変化がある場合にアラームを出力し、
前記コイルばねが前記光照射部と前記ラインセンサとの間に存在しない期間において、前記検長範囲外に前記ラインセンサの検出信号の前記信号レベルの変化があっても前記アラームを出力しないように構成されたアラーム信号生成部をさらに備える。
【0013】
上記
(3)の構成によれば、検長範囲外に異物(例えば、油汚れ)が付着した場合であってもアラームを出力しないため、コイリングマシンの稼働率を向上させることができる。一方、検長範囲内に付着した異物はコイルばねのエッジの誤検知の原因となり得るから、検長範囲内に異物が付着した場合にはアラームを出力することで、コイリングマシンの稼働率を低下させることなく適切なタイミングで異物の除去を行うことが可能になり、異物付着に起因したコイルばねのエッジの誤検知の頻度を低減できる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記
(3)に記載のコイルばね検長装置であって、
前記アラーム信号生成部は、
前記コイリングマシンの前記コイルばねの切断タイミングを示す切断タイミング信号を受け取り、
前記切断タイミング信号に基づいて、前記コイルばねが前記光照射部と前記ラインセンサとの間に存在しない前記期間に対応した前記ラインセンサの前記検出信号を得るように構成される。
【0015】
上記
(4)の構成によれば、アラーム信号生成部は、切断タイミング信号に基づいて、光照射部とラインセンサとの間にコイルばねが存在しない期間に対応したラインセンサの検出信号を得ることができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至
(4)の何れか一つに記載のコイルばね検長装置であって、
前記信号処理部により得られた前記コイルばねの長さの検出結果と前記コイルばねの目標長さとの偏差に基づいて、前記コイリングマシンを制御するためのフィードバック信号を生成するためのフィードバック信号生成部をさらに備える。
【0017】
上記
(5)の構成によれば、信号処理部により得られたコイルばねの長さの検出結果とコイルばねの目標長さとの偏差に基づいてコイリングマシンを制御するためのフィードバック信号がフィードバック信号生成部により生成される。したがって、上記偏差に基づいてコイルばねの送り出し量を補正するフィードバック信号をフィードバック信号生成部がコイリングマシンに送信することにより、コイリングマシンによるコイルばねの送り出し量を適切に補正してコイルばねの長さを目標長さに近づけることができ、コイルばねの品質の向上を図ることができる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至
(5)の何れか一つに記載のコイルばね検長装置において、
前記信号処理部により得られた前記コイルばねの長さの検出結果に基づいて、前記コイルばねを振分ける振分け機に対して振分け信号を出力するための振分け信号生成部をさらに備える。
【0019】
上記
(6)の構成によれば、信号処理部によって得られたコイルばねの長さの検出結果に基づいて、振分け信号生成部が振分け信号を生成し、振分け機に対して振分け信号を出力する。従って、コイリングマシンから送り出されて形成されたコイルばねを、該コイルばねの長さに応じて振分け機によって適切に振分けることができる。
【0020】
(7)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るコイルばね製造装置は、
コイリングマシンと、
前記コイリングマシンにより送り出される前記コイルばねの長さを検出するための上記(1)乃至
(6)の何れか一つに記載のコイルばね検長装置と、
を備える。
【0021】
上記
(7)の構成によれば、ラインセンサの延在範囲の一部である検長範囲内における検出信号の信号レベルの変化位置をエッジ位置として特定するように構成されたコイルばね検長装置とコイリングマシンとにより、ラインセンサの検長範囲外における異物付着(油汚れ)に起因した誤検知の頻度を低減して稼働率が改善されたコイルばね製造装置を得ることができる。
【0022】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係るコイルばね検長装置は、
コイリングマシンから送り出されるコイルばねに向けて、前記コイルばねのエッジを含むばね長さ方向範囲に亘って光ビームを照射するための光照射部と、
前記コイルばねを挟んで前記光照射部に対向して前記コイルばねの長さ方向に沿って配置され、前記光ビームを検出するように構成されたラインセンサと、
前記ラインセンサの延在範囲のうち一部であって前記エッジを含む検長範囲内における前記ラインセンサの検出信号の信号レベルの変化位置を前記コイルばねの前記エッジの位置として特定するように構成された信号処理部と、を備え、
前記コイルばねが前記光照射部と前記ラインセンサとの間に存在しない期間において、前記検長範囲内に前記ラインセンサの検出信号の前記信号レベルの変化がある場合にアラームを出力し、
前記コイルばねが前記光照射部と前記ラインセンサとの間に存在しない期間において、前記検長範囲外に前記ラインセンサの検出信号の前記信号レベルの変化があっても前記アラームを出力しない
ように構成されたアラーム信号生成部をさらに備えることを特徴とする。
【0023】
上記(8)の構成によれば、検長範囲外に異物(例えば、油汚れ)が付着した場合であってもアラームを出力しないため、コイリングマシンの稼働率を向上させることができる。一方、検長範囲内に付着した異物はコイルばねのエッジの誤検知の原因となり得るから、検長範囲内に異物が付着した場合にはアラームを出力することで、コイリングマシンの稼働率を低下させることなく適切なタイミングで異物の除去を行うことが可能になり、異物付着に起因したコイルばねのエッジの誤検知の頻度を低減できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の幾つかの実施形態によれば、ラインセンサを用いたコイルばね検長装置における異物付着に起因した誤検知を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0027】
図1は、本発明の幾つかの実施形態に係るコイルばね製造装置の構成を示す概略図である。
図2は、一実施形態におけるコイリングマシンの構成例を示す概略図である。
図1及び
図2に示すように、本発明の少なくとも一実施形態に係るコイルばね製造装置1は、コイリングマシン10と、該コイリングマシン10により送り出される被測定物としてのコイルばね2の長さを検出するためのコイルばね検長装置20とを備えている。また、幾つかの実施形態において、コイルばね製造装置1は、コイリングマシン10により生成されるコイルばね2をコイルばね検長装置20による測定結果に応じて振分ける振分機11(後述)と、コイルばね2の画像を撮影する不図示の撮像装置(例えば、カメラ)と、コイルばね2の画像を表示するモニタ12(
図3及び
図7参照)と、を備えていてもよい。
【0028】
図2に示すように、コイリングマシン10は、複数対のフィードローラ10Aにより鋼線材Wを供給する線材供給機構10Bと、鋼線材Wをコイル状に成形するコイリング機構10Cと、所定巻数コイリングされた鋼線材Wを後方の鋼線材Wと切離する切断機構10Dとを備えていてもよく、ばね長さ方向に鋼線材Wを送り出しながら該鋼線材Wをコイル状に成型してコイルばね2を生成する。
【0029】
図3は、一実施形態における制御部の構成を示すブロック図である。
図4は、一実施形態における検長範囲指定処理の概要を示す模式図である。
図3及び
図4に示すように、本発明の少なくとも一実施形態に係るコイルばね検長装置20は、コイリングマシン10から送り出されるコイルばね2に向けて、該コイルばね2のエッジ4を含むばね長さ方向範囲D1に亘って光ビーム44を照射するための光照射部40と、コイルばね2を挟んで光照射部40に対向してコイルばね2の長さ方向(ばね長さ方向)に沿って配置され、光ビーム44を検出するように構成された受光部としてのラインセンサ50(以下、受光部50ともいう)と、該ラインセンサ50の延在範囲のうち一部であって上記エッジ4を含む検長範囲D2内におけるラインセンサ50の検出信号の信号レベルの変化位置122Aを、コイルばね2の長さ方向におけるエッジ4の位置(以下、エッジ位置6とする)として特定するように構成された信号処理部101と、を備えている。以下、光照射部40及びラインセンサ50について説明した後、信号処理部101について説明する。
【0030】
光照射部40は、図示しない光源と、この光源から照射されたレーザ光を平行な光の束(平行光)である光ビーム44として照射するレンズ42と、を備えている。光照射部40は、上記のばね長さ方向範囲D1を含むばね長さ方向の所定範囲に亘って延在しており、ばね長さ方向範囲D1内のコイルばね2に向けて平行な光ビーム44を照射する。なお、レンズ42を通過した光ビーム44は、光照射部40の筐体の一部を構成するガラス窓46を通って照射される(
図4参照)。
【0031】
ラインセンサ50は、上記光照射部40に対向して該光照射部40と略平行に配置されており、光照射部40から照射された光ビーム44を検出する受光素子としてのイメージセンサ51を備えている。幾つかの実施形態において、イメージセンサ51は、コイルばね2のばね長さ方向に沿って直線状に配置されたリニアイメージセンサであってもよく、例えば、ばね長さ方向に沿って並べて配置された1〜1024(又は1〜2048)ピクセル(pix)の受光素子を含んで構成されていてもよい。このイメージセンサ51は、例えば、CMOS(Complementary MOS)を用いて構成されていてもよい。なお、他の実施形態では、例えば、イメージセンサ51としてCCD(Charge Coupled Devices)を適用してもよい。このイメージセンサ51は、受光部を覆う筐体の一部を構成するガラス窓54を介して入射した光ビーム44を受光してそのエネルギーを電気信号(受信信号)に変換し、ビデオ信号122として信号処理部101に送信する。また、受光部50は発振回路(不図示)を備えていてもよく、この発振回路により所定の周期でクロック信号121を生成して信号処理部101とイメージセンサ51とに送信するように構成されていてもよい。さらに、ラインセンサ50は、後述する信号処理部101がビデオ信号122の受信を開始するための受信開始タイミングを示すフレーム開始信号123(タイミング信号)を生成し、信号処理部101に送信するように構成されていてもよい。
【0032】
幾つかの実施形態において、上記の光照射部40及びラインセンサ50は、互いに対向配置されてデジタルセンサヘッド30(ヘッド部)を構成するように一体に組み込まれていてもよい。そして、コイルばね検長装置20は、コイリングマシン10により生成されたコイルばね2の自由長を測定し、測定された自由長に基づき振分機11に振分け信号125を送信する(
図1、
図3及び
図7参照)。なお、例えば、製品公差が±0.2mmの場合、上記の検長範囲D2は、例えば、コイルばね2の目標長さを中心に±2mmを含む範囲に設定してもよい。幾つかの実施形態において、コイルばね検長装置20は、コイルばね検長装置20による検長結果に応じてコイリングマシン10を制御するためのフィードバック信号126、及び/又は、上記検長結果に応じてコイリングマシン10を停止したり警報を出力したりするためのアラーム信号127を生成してコイリングマシン10に送信してもよい。
【0033】
次に、信号処理部101について詳しく説明する。
幾つかの実施形態における信号処理部101は、コイルばね検長装置20のコントローラとして機能するものであり、例えば、デジタルセンサヘッド30の上記光照射部40及びラインセンサ50による被測定物の長さ測定の処理を統括的に司る制御部100(演算処理部)の一部として機能する。
【0034】
幾つかの実施形態において、信号処理部101は、例えば、FPGA(field programmable gate array)、或いは、CPLD(complex programmable logic device:結合プログラム可能論理回路)等のPLD(programmable logic device)を用いて構成されていてもよい。
【0035】
図5Aは、一実施形態における制御部の構成を示す図であり、
図5Bは、一実施形態における制御部(FPGA)の論理ブロックの構成例を示す図であり、
図5Cは、一実施形態における制御部(FPGA)による処理の概要を示す説明図である。
例えば、FPGAは、格子状に配置された配線132と、該配線132の間に配置されたセル131と(
図5A参照)を備えており、セル131内のスイッチ133(
図5B参照)と配線用素子とを論理回路で構成したLSIとして構成され得る。このFPGAは、LSI内部の論理回路を繰り返し書き換え(プログラミング)可能な半導体デバイスである。かかるFPGA(又はCPLD)によれば、複数の処理(例えば、処理A、B、C、D及びE)の全部又は一部を並列処理することができる(
図5C参照)。従って、FPGAを用いた制御部100により、従来の、例えば、CPUを用いた信号処理に比べて、ラインセンサ50から入力される検出信号の処理速度の高速化を図ることができる。また、FPGAを用いた制御部100は、各種演算のための処理プログラムやデータを格納する記憶領域としてのメモリを備えていてもよい。幾つかの実施形態では、上記メモリ内に、例えば、コイリングマシン10により生成されるコイルばね2の長さを測定するための一般的な処理を行うための信号処理プログラムの他、ラインセンサ50によるコイルばね2の長さの測定範囲(検長範囲D2)を指定可能な検長範囲指定プログラムが格納されていてもよい。また、幾つかの実施形態では、上記メモリ内に、例えば、後述するデバウンス処理プログラム、アラーム信号生成プログラム、振分け信号生成プログラム、及び/又は、フィードバック信号生成プログラムが格納されていてもよい。
また、幾つかの実施形態において、制御部100には、上記のばね長さ方向範囲D1や検長範囲D2を外部からの入力により設定可能な入力部が接続されていてもよい。入力部は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル又は専用の入力ボタン等のうち一又は複数の組み合わせにより構成されていてもよい。
【0036】
幾つかの実施形態において、信号処理部101は、ラインセンサ50の発振回路から送信されるクロック信号121を受信してカウントするカウンタ102と、該カウンタ102によるカウント値を示す信号とラインセンサ50のイメージセンサ51から送信されるビデオ信号122、及び/又は、ビデオ信号122の受信を開始するためのフレーム開始信号123とを受信する検長範囲指定回路103とを備えていてもよい。
図6は、一実施形態における検長範囲指定処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、幾つかの実施形態において、信号処理部101は、上記の検長プログラムを実行することにより、ばね長さ方向においてコイルばね2の長さ測定に供するラインセンサ50の範囲を指定する検長範囲指定処理を実行してもよい。例えば、信号処理部101は、コイリングマシン10を駆動してコイルばね2を生成し(
図6:ステップS1)、生成されて送り方向に送り出されるコイルばね2に光照射部40により光ビーム44の照射を開始する(
図6:ステップS2)。そして、信号処理部101は、タイミング信号123の信号レベルがH(High)となったタイミングで、カウンタ102によるクロック信号121のカウントを開始する。カウンタ102によりカウントされたカウント値(クロック数)は、1クロックを1ピクセル(1クロック=1pix)として時間と距離との換算に用いられてもよい。
さらに、信号処理部101は、エッジ検出部104と、フレーム開始信号検出部105と、エッジ位置判定部106と、切断タイミング同期用レジスタ112とを備えていてもよい。具体的に、信号処理部101は、エッジ検出部104によりビデオ信号122(検出信号)の信号レベルを監視して該ビデオ信号122のH期間(High:受光期間)をカウントし、ビデオ信号122がL(Low:影)となった位置(信号レベルの変化位置122A)を検出する。そして、検出された変化位置122Aを、クロック信号121のカウント値をもとにエッジ位置判定部106においてエッジ位置6(pix)として特定してもよい(
図6:ステップS3)。
【0037】
ラインセンサ50の延在範囲のうち一部を検長範囲D2として測定範囲を指定し、該検長範囲D2内における検出信号の信号レベルの変化位置122Aを、コイルばね2のエッジ位置6として特定するように構成することにより、ラインセンサ50の検長範囲D2外における異物8の付着に起因した誤検知を防止できるため、誤検知の頻度を低減することができる。即ち、上記構成のコイルばね検長装置20は、検長範囲D2以外の範囲に付着した異物による検長への影響を排除(キャンセル)する機能を有している。
なお、制御部100は、例えば、演算処理部としてのCPU、該CPUに各種の処理を行わせるための種々のプログラムを記憶した記憶部としてのROM、ROMに格納された各種プログラムを展開するワークエリアとして機能するRAM、入出力インターフェース(I/O)及び、これらを電気的に接続するバス等を備えて構成されていてもよい。
【0038】
次に、幾つかの実施形態におけるコイルばね検長装置20でデバウンス処理を行うための構成について説明する。
図7は、他の実施形態における制御部の構成を示すブロック図である。
図8は、幾つかの実施形態におけるデバウンス処理の概要を示す模式図である。
図9は、他の実施形態におけるデバウンス処理を示すフローチャートである。
上記のように、検長範囲D2内における検出信号の信号レベルの変化位置122Aをエッジ位置6として特定する構成によれば、ラインセンサ50の検長範囲D2外における異物8の付着に起因した誤検知を防止できるが、検長範囲D2内に付着した異物8についてはその大きさに関わらずエッジ位置6として検出する可能性が必ずしもないとは言えない場合がある。
【0039】
そこで、幾つかの実施形態において、信号処理部101は、例えば
図8に示すように、検長範囲D2内で検出された検出信号の信号レベルの変化位置122Aであって、且つ、該変化位置122Aよりもばね送り方向の上流側における規定範囲D3に亘って信号レベルが閾値以下である条件を満たす変化位置122Aをエッジ位置6として特定するように構成されていてもよい。
具体的には、上記のデバウンス処理にあたり、幾つかの実施形態における信号処理部101は、当該信号処理部101内にデバウンス処理部110とディレイ回路111とを備えていてもよい(
図7参照)。デバウンス処理部110は、検長範囲指定回路103とエッジ検出部104との間に配置されてもよく、ディレイ回路111は検長範囲指定回路103とフレーム開始信号検出部105との間に配置されてもよい。
そして、信号処理部101は、例えば
図9に示すように、コイリングマシン10を駆動してコイルばね2を生成し(
図9:ステップS11)、ばね送り方向に送り出されたコイルばね2に向けて光照射部40から光ビーム44を照射(
図9:ステップS12)する。そして、信号処理部101は、変化位置122Aよりもばね送り方向の上流側における規定範囲D3に亘ってビデオ信号122の信号レベルが閾値以下であるか否かを監視し(
図9:ステップS13)、ビデオ信号122が連続してL(Low:影)となった時間(クロック数)をカウントしてカウント値を求め、カウント値が、規定範囲D3に対応する予め設定した値よりも少なかった場合はエッジ4とみなさずに無視する処理を実行する。
【0040】
ここで、本発明者らの知見によれば、コイルばね検長装置20の受光部50を覆う筐体に付着する異物8は、コイリングマシン10の稼働時に発生する油煙等の細かい汚れが殆どである。そこで、上記のように、ラインセンサ50による検出信号の信号レベルの変化位置122Aよりもばね送り方向の上流側における規定範囲D3に亘って信号レベルが閾値以下である条件を満たす変化位置122Aをエッジ位置6として特定するように構成することにより、上記規定範囲D3に亘って検出信号が低レベルである場合にのみ、当該変化位置122Aをエッジ位置6として特定することができる(
図9:ステップS14)。これにより、ラインセンサ50の検長範囲D2内における異物8付着に起因したエッジ誤検知の可能性を低減することができるのである。コイルばね検長装置20の場合、油煙などの微細な汚れが多いので、上記のデバウンス処理により誤検知の低減を図ることは特に有効である。
【0041】
幾つかの実施形態において、信号処理部101は、例えば
図8に示すように、上記のデバウンス処理に際してラインセンサ50の検出信号データの受信開始タイミングを示す第1タイミング信号ST1を受け取り、該第1タイミング信号ST1の受取り時点から、上記規定範囲D3に対応する時間だけ遅延した第1時点T1を求め、検出信号データの受信期間中における変化位置122Aに対応するデータの受信時点Trの後、規定範囲D3に対応する時間を経過後の第2時点T2を求め、第1時点T1と第2時点T2との間の期間の長さから、変化位置122Aの座標を求めるように構成されてもよい。
【0042】
コイルばね2の長さ測定に際して該コイルばね2のエッジ位置6を検出する際、ラインセンサ50による検出信号の信号レベルの変化位置122Aを含む検出信号データを信号処理部101が受信した後、継続して受信される規定範囲D3に対応する検出信号データの信号レベルを考慮することで、エッジ4に起因する信号レベルの変化か異物8に起因する信号レベルの変化かを判別することができる。
この点、上記のように、第1時点T1と第2時点T2との間の期間の長さから、変化位置122Aの座標を求める構成によれば、信号処理部101が、検出信号データの受信期間中における変化位置122Aに対応するデータを受信した後、該受信時点Trから規定範囲D3に対応する時間を経過後の第2時点T2まで検出信号データを受信するように構成することにより、異物8に起因する検出信号を排除してエッジ4に起因する変化位置122Aを高精度に検出することができる。そして、第1タイミング信号ST1の受け取り時点から規定範囲D3に対応する時間だけ遅延した第1時点T1と、設定した時間(規定範囲D3)と同じだけタイミング信号123にディレイをかけて遅延時間をオフセットした上記第2時点T2との間の期間の長さから、変化位置122Aの座標を適切に求めることができ、ラインセンサの検長範囲D2内における異物8の付着に起因したエッジ誤検知の可能性を低減することができる。
【0043】
幾つかの実施形態において、上記コイルばね検長装置20は、被測定物(ワーク)としてのコイルばね2が光照射部40とラインセンサ50との間に存在しない期間において、検長範囲D2内にラインセンサ50の検出信号の信号レベルの変化がある場合にアラーム信号127を出力し、コイルばね2が光照射部40とラインセンサ50の間に存在しない期間において、検長範囲D2外にラインセンサ50の検出信号の信号レベルの変化があってもアラーム信号127を出力しないように構成されたアラーム信号生成部107をさらに備えていてもよい(
図3及び
図7参照)。アラーム信号127が出力されると、コイリングマシンは停止し、アラームを発する。当該アラームは、例えば、音、光或いは動作等によって作業者に注意喚起するものであってもよい。また、コイルばね検長装置20から直接アラームを発するように構成してもよい。
例えば、公差付近に汚れが付着している場合は、コイルばね2の品質に影響する可能性がある。この点、コイルばね検長装置20を、上記のように構成されたアラーム信号生成部107を備えた構成とすれば、検長範囲D2外に異物8(例えば、油汚れ)が付着した場合であってもアラームを出力しないため、コイリングマシン10の稼働率を向上させることができる。一方、検長範囲D2内に付着した異物8はコイルばね2のエッジ4の誤検知の原因となり得るから、検長範囲D2内に異物8が付着した場合には上記のように構成されたコイルばね検長装置20の異物チェック機能を発揮させてアラームを出力することで、コイリングマシン10の稼働率を低下させることなく適切なタイミングで異物8の除去を行うことが可能になり、異物8付着に起因したコイルばね2のエッジ4の誤検知の頻度を低減することができる。
【0044】
幾つかの実施形態において、アラーム信号生成部107は、コイリングマシン10のコイルばね2の切断タイミングを示す切断タイミング信号124を受け取り、該切断タイミング信号124に基づいて、コイルばね2が光照射部40とラインセンサ50との間に存在しない期間に対応したラインセンサ50の検出信号を得るように構成されてもよい。このようにすれば、アラーム信号生成部107は、切断タイミング信号124に基づいて、光照射部40とラインセンサ50との間にコイルばね2が存在しない期間に対応したラインセンサ50の検出信号を得ることができる。
なお、切断タイミング信号124は、コイリングマシンから切断のタイミングで出力される。また、切断タイミング信号124は、生成されたコイルばね2を切断する切断刃(図示略)の近傍に設けた近接センサ60(
図3及び
図7参照)の検出信号(切断タイミング信号124)を遅延させて得られる信号であってもよい。
【0045】
幾つかの実施形態において、コイルばね製造装置1は、コイルばね検長装置20により測定されたコイルばね2の長さに応じてコイルばね2を振分ける振分機11をさらに備えていてもよい(
図1、
図3及び
図7参照)。そして、コイルばね検長装置20は、信号処理部101により得られたコイルばね2の長さの検出結果に基づいて、振分機11に対して振分け信号125を出力するための振分信号生成部108(良否判定部)をさらに備えていてもよい。具体的に、振分信号生成部108は、コイルばね検長装置20によって測定されたコイルばね2の自由長が目標長さの公差内であるか否かを比較判断することにより、生成されたコイルばね2の良否を判定してもよい。そして、振分信号生成部108は、コイルばね検長装置20により測定されたコイルばね2の長さと目標長さとの偏差に応じて、例えば、短い、やや短い、適切、やや長い、長い……等の複数段階に応じてコイルばね2を振分けたり、適/不適の2段階にコイルばね2を振分けたりするための振分け信号125を振分機11に送信するように構成されてもよい。
この構成によれば、信号処理部101によって得られたコイルばね2の長さの検出結果に基づいて、振分信号生成部108が振分け信号125を生成し、コイリングマシン10の振分機11に対して振分け信号125を出力することにより、コイリングマシン10から送り出されて形成されたコイルばね2を、該コイルばね2の長さに応じて振分機11によって適切に振分けることができる。
【0046】
幾つかの実施形態において、上記コイルばね検長装置20は、信号処理部101により得られたコイルばね2の長さの検出結果とコイルばね2の目標長さとの偏差に基づいて、コイリングマシン10を制御するためのフィードバック信号126を生成するためのフィードバック信号生成部109をさらに備えていてもよい(
図1、
図3及び
図7参照)。
具体的に、フィードバック信号生成部109は、例えば、信号処理部101により得られたコイルばね2の長さの検出結果がコイルばね2の目標長さよりも所定長さ短い場合、例えば、当該コイルばね2の生成時よりも上記所定長さ分だけ長くコイルばね2を形成することを指示するフィードバック信号126をコイリングマシン10に送信する。一方、フィードバック信号生成部109は、例えば、信号処理部101により得られたコイルばね2の長さの検出結果がコイルばね2の目標長さよりも所定長さ長い場合、例えば、当該コイルばね2の生成時よりも上記所定長さ分だけ短くコイルばね2を形成することを指示するフィードバック信号126をコイリングマシン10に送信する。なお、上記偏差が適切な公差範囲内である場合は、フィードバック信号126を送信しないか、又は、設定値を維持するフィードバック信号126を送信する構成としてもよい。
この構成によれば、信号処理部101により得られたコイルばね2の長さの検出結果とコイルばね2の目標長さとの偏差に基づいてコイリングマシン10を制御するためのフィードバック信号126がフィードバック信号生成部109により生成される。したがって、上記偏差に基づいてコイルばね2の送り出し量を補正するフィードバック信号126をフィードバック信号生成部109がコイリングマシン10に送信することにより、コイリングマシン10によるコイルばね2の送り出し量を適切に補正してコイルばね2の長さを目標長さに近づけることができ、コイルばね2の品質の向上を図ることができる。
【0047】
以上述べた構成によれば、ラインセンサ50を用いたコイルばね検長装置20における異物8付着に起因した誤検知を効果的に低減することができる。また、以上に述べた構成により、ラインセンサ50の延在範囲の一部である検長範囲D2内における検出信号の信号レベルの変化位置122Aをエッジ位置6として特定するように構成されたコイルばね検長装置20とコイリングマシン10とにより、ラインセンサ50の検長範囲D2外における異物8の付着に起因した誤検知の頻度を低減して稼働率が改善されたコイルばね製造装置1を得ることができる。
【0048】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変更を加えた形態や、これらの形態を組み合わせた形態も含む。