特許第6569024号(P6569024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6569024熱可塑性樹脂組成物、樹脂成形品、メッキ付樹脂成形品の製造方法および携帯電子機器部品の製造方法
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  • 特許6569024-熱可塑性樹脂組成物、樹脂成形品、メッキ付樹脂成形品の製造方法および携帯電子機器部品の製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6569024
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物、樹脂成形品、メッキ付樹脂成形品の製造方法および携帯電子機器部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20190819BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20190819BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20190819BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20190819BHJP
   C08L 67/03 20060101ALI20190819BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20190819BHJP
   C08G 63/183 20060101ALI20190819BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20190819BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20190819BHJP
   C23C 18/38 20060101ALI20190819BHJP
   C23C 18/20 20060101ALI20190819BHJP
   C23C 18/31 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08K3/40
   C08K3/34
   C08K3/22
   C08L67/03
   C08G69/26
   C08G63/183
   C08K3/013
   C08J7/00 302
   C08J7/00CFG
   C23C18/38
   C23C18/20 A
   C23C18/31 A
【請求項の数】20
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2019-507868(P2019-507868)
(86)(22)【出願日】2018年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2018036254
【審査請求日】2019年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2017-193468(P2017-193468)
(32)【優先日】2017年10月3日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆介
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 有希
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−275413(JP,A)
【文献】 特開2010−275345(JP,A)
【文献】 特開平05−279567(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/131018(WO,A1)
【文献】 特開2016−056314(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/148796(WO,A1)
【文献】 特開昭52−155659(JP,A)
【文献】 特開2011−174051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08K3、7
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対し、強化フィラー10〜100質量部を含み、
強化フィラーが、強化繊維と厚み0.1〜2μmのガラスフレークを含み、
前記強化繊維とガラスフレークの質量比である、強化繊維/ガラスフレークが0.1〜1である、熱可塑性樹脂組成物であって、
さらに、前記結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対し、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤1〜30質量部を含む、レーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記結晶性熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含む、請求項1に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂が、半芳香族ポリアミド樹脂である、請求項2に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、請求項2に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上がセバシン酸に由来する、請求項4に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がパラキシリレンジアミンに由来する、請求項4または5に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がセバシン酸に由来し、
前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がパラキシリレンジアミンに由来する、請求項4に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリアミド樹脂の90質量%以上が、水に浸漬した後の飽和吸水率が4.0質量%以下であるポリアミド樹脂である、請求項2〜7のいずれか1項に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記結晶性熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項1に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記ポリアミド樹脂が脂肪族ポリアミド樹脂を含み、
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂が、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分またはこれらのエステル誘導体と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分から形成されるポリブチレンテレフタレート樹脂70〜30質量%と、変性ポリブチレンテレフタレート樹脂30〜70質量%を含む(ただし、合計が100質量%を超えることはない)、請求項9に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記強化繊維がガラス繊維を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
さらに、前記結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対し、タルクを0.1〜20質量部含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用
【請求項13】
前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が銅およびクロムを含む酸化物、アンチモンと錫を含む酸化物、および、少なくとも2種の金属を含み、かつ、抵抗率が5×103Ω・cm以下の導電性酸化物から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物から形成されるレーザーダイレクトストラクチャリング用樹脂成形品。
【請求項15】
さらに、表面にメッキを有する、請求項14に記載の樹脂成形品。
【請求項16】
前記メッキがアンテナとしての性能を保有する、請求項15に記載の樹脂成形品。
【請求項17】
携帯電子機器部品である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の樹脂成形品。
【請求項18】
請求項14に記載の樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキを形成することを含む、メッキ付樹脂成形品の製造方法。
【請求項19】
前記メッキが銅メッキである、請求項18に記載のメッキ付樹脂成形品の製造方法。
【請求項20】
請求項18または19に記載のメッキ付樹脂成形品の製造方法を含む、アンテナを有する携帯電子機器部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、樹脂成形品、メッキ付樹脂成形品の製造方法および携帯電子機器部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性熱可塑性樹脂は、機械的物性その他の物理的および化学的特性に優れている。このため、車両部品、電気電子機器部品、その他の精密機器部品等に幅広く使用されている。
また、熱可塑性樹脂に各種添加剤を配合して、所望の機能を持たせることも行われている。
例えば、特許文献1には、(A)ポリアミド樹脂と、(B)無機充填材と、(C)カーボンブラックと、を含むポリアミド樹脂組成物であって、前記(A)ポリアミド樹脂の少なくとも一部が(a1)芳香族ポリアミドであり、前記(C)カーボンブラックは、平均一次粒子径が20nm以上、かつ比表面積とDBP(フタル酸ジブチル)吸油量の比である比表面積/DBP吸油量が1.0以下であるポリアミド樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、水中浸漬した際の飽和吸水率が4質量%以下であるポリアミド樹脂(A)50質量%以上を含む、ポリアミド樹脂成分100質量部に対し、ガラス繊維20〜150質量部、および、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤1〜30質量部を含む、ポリアミド樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−014388号公報
【特許文献2】特開2015−048440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のとおり、熱可塑性樹脂組成物は、種々知られている。ここで、機械的強度を高く維持しようとすると、加熱後の反りが大きくなってしまう場合があることが分かった。本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、高い機械的強度を維持しつつ、加熱後の反りが低減された樹脂成形品を提供可能な熱可塑性樹脂組成物および樹脂成形品を提供することを目的とする。
【0005】
また、近年、3次元アンテナを形成する技術の1つとして、レーザーダイレクトストラクチャリング(以下、「LDS」ということがある)技術が注目されている。LDS技術は、例えば、LDS添加剤を含む樹脂成形品の表面にレーザーを照射して活性化させ、前記活性化させた部分に金属を適用することによってメッキを形成する技術である。しかしながら、LDS添加剤は一般的に硬度が高いため、強化繊維を配合してコンパウンドすると、強化繊維がダメージを受け、得られる樹脂成形品の機械的強度が劣る場合がある。また、かかる樹脂成形品においても、加熱後の反りが低減されることが求められる。
本発明の第二の課題は、上記LDS添加剤を配合したLDS技術においても、上記課題を解決することであって、メッキを形成でき、かつ、高い機械的強度を維持しつつ、加熱後の反りが低減された樹脂成形品を提供可能な熱可塑性樹脂組成物、樹脂成形品、メッキ付樹脂成形品の製造方法および携帯電子機器部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、強化フィラーとして、強化繊維と厚みが所定の範囲にあるガラスフレークを所定のブレンド比率で配合することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>〜<22>により、上記課題は解決された。
<1>結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対し、強化フィラー10〜100質量部を含み、強化フィラーが、強化繊維と厚み0.1〜2μmのガラスフレークを含み、前記強化繊維とガラスフレークの質量比である、強化繊維/ガラスフレークが0.1〜1である、熱可塑性樹脂組成物。
<2>前記結晶性熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を含む、<1>に記載の熱可塑性樹脂組成物。
<3>前記ポリアミド樹脂が、半芳香族ポリアミド樹脂である、<2>に記載の熱可塑性樹脂組成物。
<4>前記ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、<2>に記載の熱可塑性樹脂組成物。
<5>前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上がセバシン酸に由来する、<4>に記載の熱可塑性樹脂組成物。
<6>前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がパラキシリレンジアミンに由来する、<4>または<5>に記載の熱可塑性樹脂組成物。
<7>前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がセバシン酸に由来し、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がパラキシリレンジアミンに由来する、<4>に記載の熱可塑性樹脂組成物。
<8>前記ポリアミド樹脂の90質量%以上が、水に浸漬した後の飽和吸水率が4.0質量%以下であるポリアミド樹脂である、<2>〜<7>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<9>前記結晶性熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、<1>に記載の熱可塑性樹脂組成物。
<10>前記ポリアミド樹脂が脂肪族ポリアミド樹脂を含み、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂が、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分またはこれらのエステル誘導体と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分から形成されるポリブチレンテレフタレート樹脂70〜30質量%と、変性ポリブチレンテレフタレート樹脂30〜70質量%を含む(ただし、合計が100質量%を超えることはない)、<9>に記載の熱可塑性樹脂組成物。
<11>前記強化繊維がガラス繊維を含む、<1>〜<10>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<12>さらに、前記結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対し、タルクを0.1〜20質量部含む、<1>〜<11>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<13>さらに、前記結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対し、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤1〜30質量部を含む、<1>〜<12>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<14>前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が銅およびクロムを含む酸化物、アンチモンと錫を含む酸化物、および、少なくとも2種の金属を含み、かつ、抵抗率が5×103Ω・cm以下の導電性酸化物から選択される、<13>に記載の熱可塑性樹脂組成物。
<15><1>〜<14>のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物から形成される樹脂成形品。
<16><13>または<14>に記載の熱可塑性樹脂組成物から形成される樹脂成形品。
<17>さらに、表面にメッキを有する、<16>に記載の樹脂成形品。
<18>前記メッキがアンテナとしての性能を保有する、<17>に記載の樹脂成形品。
<19>携帯電子機器部品である、<15>〜<18>のいずれか1つに記載の樹脂成形品。
<20><16>に記載の樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキを形成することを含む、メッキ付樹脂成形品の製造方法。
<21>前記メッキが銅メッキである、<20>に記載のメッキ付樹脂成形品の製造方法。
<22><20>または<21>に記載のメッキ付樹脂成形品の製造方法を含む、アンテナを有する携帯電子機器部品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高い機械的強度を維持しつつ、加熱後の反りが低減された樹脂成形品を提供可能な熱可塑性樹脂組成物および樹脂成形品を提供可能になった。さらに、LDS添加剤を配合した熱可塑性樹脂組成物においても、メッキを形成でき、かつ、高い機械的強度を維持しつつ、加熱後の反りが低減された樹脂成形品を提供可能な熱可塑性樹脂組成物、樹脂成形品、メッキ付樹脂成形品の製造方法および携帯電子機器部品の製造方法を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】樹脂成形品の表面にメッキを設ける工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0010】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は(以下、「本発明の樹脂組成物」ということがある)、結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対し、強化フィラー10〜100質量部を含み、強化フィラーが、強化繊維と厚み0.1〜2μmのガラスフレークを含み、前記強化繊維とガラスフレークの質量比である、強化繊維/ガラスフレークが0.1〜1であることを特徴とする。
このような構成とすることにより、高い機械的強度を維持しつつ、加熱後の反りを効果的に抑制することができる。さらに、LDS添加剤を配合しても、これらの効果を効果的に達成しつつ、メッキを形成できる。
以下、本発明の詳細について、説明する。
【0011】
<結晶性熱可塑性樹脂>
本発明の樹脂組成物は、結晶性熱可塑性樹脂を含む。結晶性熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などが例示され、ポリアミド樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂がより好ましい。結晶性ポリアミド樹脂を用いると、樹脂成形品を成形する際に、より早く硬化させることができるため、樹脂成形品の表面に凹凸をより効果的に形成することもできる。このため、樹脂成形品とメッキの密着性をより向上させることができる。
本発明の樹脂組成物は、結晶性熱可塑性樹脂が30質量%以上を占めることが好ましく、35質量%以上を占めることがより好ましく、40質量%以上を占めることがさらに好ましく、50質量%以上を占めることが一層好ましい。また、樹脂組成物における結晶性熱可塑性樹脂の含有量の上限値としては、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましく、65質量%以下であってもよい。
本発明の樹脂組成物は、結晶性熱可塑性樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0012】
<<ポリアミド樹脂>>
本発明で用いるポリアミド樹脂は特に定めるものではなく、公知のポリアミド樹脂を用いることができる。例えば、ポリアミド樹脂としては、特開2011−132550号公報の段落0011〜0013の記載を参酌することができる。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、半芳香族ポリアミド樹脂であることが好ましい。ここで、半芳香族ポリアミド樹脂とは、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位およびジカルボン酸由来の構成単位の合計構成単位の30〜70モル%が芳香環を含む構成単位であることをいい、ジアミン由来の構成単位およびジカルボン酸由来の構成単位の合計構成単位の40〜60モル%が芳香環を含む構成単位であることが好ましい。このような半芳香族ポリアミド樹脂を用いることにより、得られる樹脂成形品の機械的強度を高くすることができる。半芳香族ポリアミド樹脂としては、テレフタル酸系ポリアミド樹脂(ポリアミド6T、ポリアミド9T)、後述するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂などが例示される。
【0013】
本発明で用いるポリアミド樹脂は、少なくとも1種が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂(以下、「キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂」ということがある)が好ましい。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジアミン由来の構成単位は、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上がキシリレンジアミンに由来する。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジカルボン酸由来の構成単位は、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上が、炭素数が4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
キシリレンジアミンは、パラキシリレンジアミンおよびメタキシリレンジアミンが好ましく、少なくともパラキシリレンジアミンを含むことがより好ましい。
本発明のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の好ましい一実施形態として、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上(好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がパラキシリレンジアミンに由来するものが例示される。
【0014】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0015】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸またはセバシン酸がより好ましく、セバシン酸がさらに好ましい。
本発明におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の好ましい一実施形態としてジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上(好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がセバシン酸に由来するものが例示される。
また、本発明におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の好ましい他の一実施形態として、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上(好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂と、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上(好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がアジピン酸に由来するポリアミド樹脂のブレンド物が例示される。
【0016】
上記炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といったナフタレンジカルボン酸の異性体等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0017】
なお、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を主成分として構成されるが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。ここで主成分とは、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を構成する構成単位のうち、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計数が全構成単位のうち最も多いことをいう。本発明では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90%以上を占めることが好ましく、95%以上を占めることがより好ましい。
【0018】
本発明におけるポリアミド樹脂のブレンド形態の一例として、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂とテレフタル酸系ポリアミド樹脂のブレンド物も例示される。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、組成物に含まれるポリアミド樹脂の90質量%以上が、水に浸漬した後の飽和吸水率が4.0質量%以下であるポリアミド樹脂であることが好ましい。このようなポリアミド樹脂を採用することにより、成形後の吸水寸法変化が小さなり、適切にメッキを形成でき、かつ、水中飽和後や昇温冷却後においても、メッキと樹脂成形品の密着性を保つことが可能になる。本発明で用いるポリアミド樹脂(A)の飽和吸水率は、3.5質量%以下であることが好ましく、2.5〜3.3質量%であることがより好ましい。
飽和吸水率は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0020】
ポリアミド樹脂の融点は、150〜350℃であることが好ましく、180〜330℃であることがより好ましく、200〜330℃であることがさらに好ましく、200〜320℃であることが一層好ましい。
融点は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0021】
ポリアミド樹脂は、数平均分子量(Mn)の下限が、6,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましく、15,000以上であることが一層好ましく、20,000以上であることがより一層好ましく、22,000以上であることがさらに一層好ましい。上記Mnの上限は、35,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、28,000以下がさらに好ましく、26,000以下が一層好ましい。このような範囲であると、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性がより良好となる。
【0022】
本発明の樹脂組成物の一実施形態として、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂を実質的に含まない態様が挙げられる。実質的に含まないとは、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂の含有量が本発明の樹脂組成物の5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが一層好ましい。
【0023】
<<ポリブチレンテレフタレート樹脂>>
本発明の樹脂組成物に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位および1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位および1,4−ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーと当該共重合体との混合物を含む。
【0024】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよいが、他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4−シクロへキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
【0025】
ジオール単位としては、1,4−ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいてもよいが、他のジオール単位の具体例としては、炭素原子数2〜20の脂肪族または脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ一ル、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノ一ルAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
なお、これらの1,4−ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいる場合の共重合量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満であることが好ましい。中でも、共重合量は好ましくは2モル%以上50モル%未満、より好ましくは3〜40モル%、特に好ましくは5〜20モル%である。
【0026】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましいが、また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/またはジオール単位として、前記1,4−ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。
【0027】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分またはこれらのエステル誘導体と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式または通続式で溶融重合させて製造することができる。テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分とは、ジカルボン酸のうち最も含有量が多い成分がテレフタル酸であることをいい、70モル%以上がテレフタル酸であることが好ましく、80モル%以上がテレフタル酸であることがより好ましく、90モル%以上がテレフタル酸であることがさらに好ましい。また、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とは、ジオール成分のうち最も含有量が多い成分が1,4−ブタンジオールであることをいい、70モル%以上が1,4−ブタンジオールであることが好ましく、80モル%以上が1,4−ブタンジオールであることがより好ましく、90モル%以上が1,4−ブタンジオールであることがさらに好ましい。
また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレフタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下または減圧下固相重合させることにより、重合度(または分子量)を所望の値まで高めることもできる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
【0028】
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
【0029】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂であってもよいが、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類、特にはポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられ、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。なお、これらの共重合体は、共重合量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が好ましくは2〜50モル%、より好ましくは3〜40モル%、特に好ましくは5〜20モル%である。
ポリブチレンテレフタレート樹脂として共重合体を用いる場合は、中でも、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂を用いることが好ましい。共重合中のテトラメチレングリコール成分の割合は3〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜25質量%がさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、流動性、靱性、耐トラッキング性が向上しやすい傾向にあり好ましい。
【0030】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。50eq/tonを超えると、樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しやすくなる。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/tonである。
【0031】
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリアルキレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
【0032】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5〜2dL/gであるのが好ましい。成形性および機械的特性の点からして、0.6〜1.5dL/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度が0.5dL/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が機械強度の低いものとなりやすい。また2dL/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
【0033】
本発明の樹脂組成物における樹脂成分の一実施形態として、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリアミド樹脂が樹脂成分の85質量%以上(好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上)を占める形態が例示される。
上記実施形態において、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリアミド樹脂の比率は、合計の50〜70質量%がポリブチレンテレフタレート樹脂であり、50〜30質量%がポリアミド樹脂であることが好ましい。
上記実施形態においては、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分またはこれらのエステル誘導体と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分から形成されるポリブチレンテレフタレート樹脂70〜30質量%と、変性ポリブチレンテレフタレート樹脂30〜70質量%を含むことが好ましい(ただし、合計が100質量%を超えることはない)。より好ましくは、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分またはこれらのエステル誘導体と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分から形成されるポリブチレンテレフタレート樹脂60〜40質量%と、変性ポリブチレンテレフタレート樹脂40〜60質量%を含む。
上記実施形態においては、ポリアミド樹脂は脂肪族ポリアミド樹脂が好ましく、ポリアミド6およびポリアミド66が好ましく、ポリアミド6がより好ましい。
【0034】
<強化フィラー>
本発明の樹脂組成物は、結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対し、強化フィラー10〜100質量部を含む。強化フィラーは、結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対し、20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましく、35質量部以上であることが一層好ましく、40質量部以上であることがより一層好ましい。また、強化フィラーは、結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対し、90質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、75質量部以下であることがさらに好ましく、70質量部以下であってもよい。
【0035】
強化フィラーは、本発明の樹脂組成物中、10〜45質量%を占めることが好ましく、15〜40質量%を占めることがより好ましく、20〜30質量%であってもよい。
本発明の樹脂組成物は、強化フィラーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物において、強化フィラーは、強化繊維と厚み0.1〜2μmのガラスフレークの質量比である、強化繊維/ガラスフレークが0.1〜1である。前記質量比は、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.4以上であることがさらに好ましく、0.45以上であることが一層好ましい。
本発明の樹脂組成物は、強化繊維と厚み0.1〜2μmのガラスフレークを、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、強化繊維と厚み0.1〜2μmのガラスフレーク以外の他の強化フィラーを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
他の強化フィラーとしては、鱗片状、球状、針状の無機フィラーが挙げられ、成分としてはガラス、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩などが例示される。
本発明の樹脂組成物の実施形態の一例は、強化繊維と厚み0.1〜2μmのガラスフレーク以外の他の強化フィラーを実質的に含まない樹脂組成物である。実質的に含まないとは、強化繊維と厚み0.1〜2μmのガラスフレーク以外の強化フィラーの含有量が、樹脂組成物に含まれる強化フィラーの全量の5質量%以下であることをいい、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、本発明における強化フィラーは、LDS添加剤に該当するもの、および、タルクを含まないものとする。
【0036】
<<強化繊維>>
本発明の樹脂組成物は、強化繊維を含む。強化繊維としては、炭素繊維およびガラス繊維が例示され、ガラス繊維を含むことが好ましい。
【0037】
本発明における強化繊維とは、繊維状の無機材料を意味し、より具体的には、1,000〜10,000本の強化繊維を集束し、所定の長さにカットされたチョップド形状が好ましい。
本発明における強化繊維は、数平均繊維長が0.5〜10mmのものが好ましく、1〜5mmのものがより好ましい。このような数平均繊維長の強化繊維を用いることにより、機械的強度をより向上させることができる。数平均繊維長は光学顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維長を測定する対象の強化繊維をランダムに抽出してその長辺を測定し、得られた測定値から数平均繊維長を算出する。観察の倍率は20倍とし、測定本数は1,000本以上として行う。概ね、カット長に相当する。
また、強化繊維の断面は、円形、楕円形、長円形、長方形、長方形の両短辺に半円を合わせた形状、まゆ型等いずれの形状であってもよいが、円形が好ましい。ここでの円形は、数学的な意味での円形に加え、本発明の技術分野において通常円形と称されるものを含む趣旨である。
強化繊維の数平均繊維径は、下限が、4.0μm以上であることが好ましく、4.5μm以上であることがより好ましく、5.0μm以上であることがさらに好ましい。強化繊維の数平均繊維径の上限は、15.0μm以下であることが好ましく、14.0μm以下であることがより好ましく、12.0μm以下であってもよい。このような範囲の数平均繊維径を有する強化繊維を用いることにより、湿熱をした後にもメッキ性により優れた樹脂成形品が得られる。さらに、樹脂成形品を長期間保存した場合や、長期間にわたって熱処理した場合にも、高いメッキ性を維持できる。なお、強化繊維の数平均繊維径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維径を測定する対象のガラス繊維をランダムに抽出し、中央部に近いところで繊維径を測定し、得られた測定値から算出する。観察の倍率は1,000倍とし、測定本数は1,000本以上として行う。円形以外の断面を有するガラス繊維の数平均繊維径は、断面の面積と同じ面積の円に換算したときの数平均繊維径とする。
【0038】
次に、本発明で好ましく用いられるガラス繊維について説明する。
ガラス繊維は、一般的に供給されるEガラス(Electricalglass)、Cガラス(Chemical glass)、Aガラス(Alkali glass)、Sガラス(High strength glass)、および耐アルカリガラス等のガラスを溶融紡糸して得られる繊維が用いられるが、ガラス繊維にできるものであれば使用可能であり、特に限定されない。本発明では、Eガラスを含むことが好ましい。
【0039】
本発明で用いるガラス繊維は、例えば、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理剤の付着量は、ガラス繊維の0.01〜1質量%であることが好ましい。さらに必要に応じて、脂肪酸アミド化合物、シリコーンオイル等の潤滑剤、第4級アンモニウム塩等の帯電防止剤、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の被膜形成能を有する樹脂、被膜形成能を有する樹脂と熱安定剤、難燃剤等の混合物で表面処理されたものを用いることもできる。
【0040】
ガラス繊維は市販品として入手できる。市販品としては、例えば、日本電気硝子社製、T−286H、T−756H、T−289H、オーウェンスコーニング社製、DEFT2A、PPG社製、HP3540、日東紡社製、CSG3PA820等が挙げられる。
【0041】
<<ガラスフレーク>>
本発明の樹脂組成物は、厚み0.1〜2μmのガラスフレークを含む。ガラスフレークの厚みとは、平均厚みをいう。ガラスフレークの厚みは、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.4μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、一層好ましくは0.6μm以上である。また、ガラスフレークの厚みは、好ましくは1.8μm以下、より好ましくは1.6μm以下、さらに好ましくは1.4μm以下、一層好ましくは1.2μm以下、より一層好ましくは1.0μm以下、さらに一層好ましくは0.8μm以下である。ここで平均厚みは以下の方法で測定される。すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、100枚以上のガラスフレークにつき、それぞれの厚さを測定し、その測定値を平均することにより求める。ガラスフレーク断面(厚さ面)が走査型電子顕微鏡の照射電子線軸に垂直になるように、走査型電子顕微鏡の試料台を試料台微動装置により調整する。
【0042】
上記のガラスフレークのガラス組成は、Aガラス、Cガラス、およびEガラス等に代表される各種のガラス組成が適用され、特に限定されない。
【0043】
<レーザーダイレクトストラクチャリング(LDS)添加剤>
本発明の樹脂組成物は、レーザーダイレクトストラクチャリング(LDS)添加剤を含む。本発明におけるLDS添加剤は、結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対し、LDS添加剤と考えられる添加剤を10質量部添加し、波長1064nmのYAGレーザーを用い、出力10W、周波数80kHz、速度3m/sにて照射し、その後のメッキ工程は無電解のMacDermid社製M−Copper85のメッキ槽にて実施し、レーザー照射面に金属を適用したときに、メッキを形成できる化合物をいう。本発明で用いるLDS添加剤は、合成品であってもよいし、市販品を用いてもよい。また、市販品は、LDS添加剤として市販されているものの他、本発明におけるLDS添加剤の要件を満たす限り、他の用途として販売されている物質であってもよい。LDS添加剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明で用いるLDS添加剤の第一の実施形態は、銅およびクロムを含む化合物である。第一の実施形態のLDS添加剤としては、銅を10〜30質量%含むことが好ましい。また、クロムを15〜50質量%含むことが好ましい。第一の実施形態におけるLDS添加剤は、銅およびクロムを含む酸化物であることが好ましい。
【0045】
銅およびクロムの含有形態としては、スピネル構造が好ましい。スピネル構造とは、複酸化物でAB24型の化合物(AとBは金属元素)にみられる代表的結晶構造型の1つである。
【0046】
第一の実施形態のLDS添加剤は、銅およびクロムの他に、他の金属を微量含んでいてもよい。他の金属としては、アンチモン、錫、鉛、インジウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、銀、ビスマス、ヒ素、マンガン、マグネシウムおよびカルシウムなどが例示され、マンガンが好ましい。これら金属は酸化物として存在していてもよい。
第一の実施形態のLDS添加剤の好ましい一例は、銅クロム酸化物以外の金属酸化物の含有量が10質量%以下であるLDS添加剤である。
【0047】
本発明で用いるLDS添加剤の第二の実施形態は、アンチモンおよびリンの少なくとも1種と、錫とを含む酸化物、好ましくはアンチモンと錫とを含む酸化物である。
【0048】
第二の実施形態のLDS添加剤は、錫の含有量がリンおよびアンチモンの含有量よりも多いものがより好ましく、錫とリンとアンチモンの合計量に対する錫の量が、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0049】
特に、第二の実施形態のLDS添加剤としては、アンチモンと錫とを含む酸化物が好ましく、錫の含有量がアンチモンの含有量よりも多い酸化物がより好ましく、錫とアンチモンの合計量に対する錫の量が、80質量%以上である酸化物がさらに好ましい。
【0050】
より具体的には、第二の実施形態のLDS添加剤としては、アンチモンがドープされた酸化錫、酸化アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、リン酸化物がドープされた酸化錫が挙げられ、アンチモンがドープされた酸化錫および酸化アンチモンがドープされた酸化錫が好ましく、酸化アンチモンがドープされた酸化錫がより好ましい。例えば、リンと酸化錫とを含むLDS添加剤において、リンの含有量は、1〜20質量%であることが挙げられる。また、アンチモンと酸化錫とを含むLDS添加剤において、アンチモンの含有量は、1〜20質量%であることが好ましい。また、リンとアンチモンと酸化錫とを含むLDS添加剤において、リンの含有量は、0.5〜10質量%、アンチモンの含有量は、0.5〜10質量%であることが好ましい。
【0051】
本発明で用いるLDS添加剤の第三の実施形態は、少なくとも2種の金属を含み、かつ、抵抗率が5×103Ω・cm以下の導電性酸化物を含むことが好ましい。導電性酸化物の抵抗率は、8×102Ω・cm以下がより好ましく、7×102Ω・cm以下がさらに好ましく、5×102Ω・cm以下が一層好ましい。下限については特に制限はないが、例えば、1×101Ω・cm以上であってもよく、さらには、1×102Ω・cm以上であってもよい。
本発明における導電性酸化物の抵抗率は、通常、粉末抵抗率をいい、導電性酸化物の微粉末10gを、内面にテフロン(登録商標)加工を施した内径25mmの円筒内へ装入して100kgf/cm2に加圧し(充填率20%)、横河電機社製の「3223型」テスターで測定することができる。
【0052】
第三の実施形態で用いるLDS添加剤は、抵抗率が5×103Ω・cm以下の導電性酸化物を含んでいれば特に制限されないが、少なくとも2種の金属を含むことが好ましく、具体的には、周期表のn族(nは3〜16の整数)の金属とn+1族の金属を含むことが好ましい。nは10〜13の整数がより好ましく、12または13がさらに好ましい。
第三の実施形態で用いるLDS添加剤は、LDS添加剤中における、周期表のn族(nは3〜16の整数)の金属の含有量とn+1族の金属の含有量の合計を100モル%としたとき、一方の金属の含有量が15モル%以下であることが好ましく、12モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。下限については特に制限はないが、0.0001モル%以上が好ましい。2種以上の金属の含有量をこのような範囲とすることで、メッキ性を向上させることができる。本発明では特に、n+1族の金属がドープされたn族の金属酸化物が好ましい。
さらに、第三の実施形態で用いるLDS添加剤は、LDS添加剤中に含まれる金属成分の98質量%以上が、上記周期表のn族の金属の含有量とn+1族の金属で構成されることが好ましい。
【0053】
周期表のn族の金属としては、例えば、3族(スカンジウム、イットリウム)、4族(チタン、ジルコニウムなど)、5族(バナジウム、ニオブなど)、6族(クロム、モリブテンなど)、7族(マンガンなど)、8族(鉄、ルテニウムなど)、9族(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、10族(ニッケル、パラジウム、白金)、11族(銅、銀、金など)、12族(亜鉛、カドミウムなど)、13族(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、14族(ゲルマニウム、錫など)、15族(ヒ素、アンチモンなど)、16族(セレン、テルルなど)が挙げられる。中でも、12族(n=12)の金属が好ましく、亜鉛がより好ましい。
【0054】
周期表のn+1族の金属としては、例えば、4族(チタン、ジルコニウムなど)、5族(バナジウム、ニオブなど)、6族(クロム、モリブテンなど)、7族(マンガンなど)、8族(鉄、ルテニウムなど)、9族(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、10族(ニッケル、パラジウム、白金)、11族(銅、銀、金など)、12族(亜鉛、カドミウムなど)、13族(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、14族(ゲルマニウム、錫など)、15族(ヒ素、アンチモンなど)、16族(セレン、テルルなど)が挙げられる。中でも、13族(n+1=13)の金属が好ましく、アルミニウムまたはガリウムがより好ましく、アルミニウムがさらに好ましい。
【0055】
第三の実施形態で用いるLDS添加剤は、導電性金属酸化物以外の金属を含有していてもよい。導電性酸化物以外の金属としては、アンチモン、チタン、インジウム、鉄、コバルト、ニッケル、カドミウム、銀、ビスマス、ヒ素、マンガン、クロム、マグネシウム、カルシウムなどが例示される。これら金属は酸化物として存在していてもよい。これら金属の含有量は、LDS添加剤に対してそれぞれ0.01質量%以下が好ましい。
【0056】
上記の中でも、本発明では、LDS添加剤が、銅、アンチモンおよび錫の少なくとも1種を含むことが好ましく、銅を含むことがより好ましい。従って、第一の実施形態のLDS添加剤がより好ましい。
【0057】
本発明で用いるLDS添加剤の数平均粒子径は、0.01〜100μmであることが好ましく、0.05〜30μmであることがより好ましく、0.05〜15μmであることがさらに好ましい。このような平均粒子径とすることにより、メッキの表面をより均一にすることができる。
【0058】
樹脂組成物における、LDS添加剤の含有量は、結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対し、好ましくは1〜30質量部であり、より好ましくは2〜25質量部であり、さらに好ましくは5〜20質量部であり、一層好ましくは5〜15質量部である。LDS添加剤の含有量をこのような範囲にすることによって、得られる樹脂成形品のメッキ性をより良好にすることができる。また、後述するように、タルクと組み合わせることにより、少ない含有量でメッキを形成することが可能になる。2種以上のLDS添加剤を含む場合には、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0059】
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は、離型剤をさらに含有していてもよい。離型剤は、主に、樹脂組成物の成形時の生産性を向上させるために使用されるものである。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸アミド系、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0060】
離型剤の詳細は、特開2016−196563号公報の段落0037〜0042の記載および特開2016−078318号公報の段落0048〜0058の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0061】
離型剤の含有量は、配合する場合、樹脂組成物に対して、下限は、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、また、上限は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。このような範囲とすることによって、離型性を良好にすることができ、また、射出成形時の金型汚染を防止することができる。離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0062】
<タルク>
本発明の樹脂組成物は、さらに、タルクを含んでいてもよい。タルクを配合することによって寸法安定性、製品外観を良好にすることができ、また、タルクを配合することにより、よりメッキ成長速度を早くすることができる。さらに、タルクを配合することにより、LDS添加剤の含有量を減らしても、樹脂成形品のメッキ性を良好にすることができる。タルクは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類およびオルガノポリシロキサン類から選択される化合物の少なくとも1種で表面処理されたものを用いてもよい。この場合、タルクにおけるシロキサン化合物の付着量は、タルクの0.1〜5質量%であることが好ましい。
タルクの数平均粒子径は1〜50μmであることが好ましく、2〜25μmであることがより好ましい。タルクは、通常、鱗片状であるが、最も長い部分の長さを平均粒子径とする。タルクの数平均粒子径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、粒子径を測定する対象のタルクをランダムに抽出し粒子径を測定し、得られた測定値から算出する。観察の倍率は1,000倍とし、測定数は1,000個以上として行う。
【0063】
本発明の樹脂組成物における、タルクの含有量は、配合する場合、結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1〜20質量部である。
本発明の樹脂組成物における、タルクの含有量は、LDS添加剤を配合する場合、LDS添加剤100質量部に対し、1〜200質量部であることが好ましく、10〜150質量部であることがより好ましく、30〜120質量部であることがさらに好ましく、80〜120質量部であることが一層好ましい。また、タルクがシロキサン化合物で表面処理されている場合には、シロキサン化合物で表面処理されたタルクの含有量が、上記範囲内であることが好ましい。
【0064】
<その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物は、上記の他、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、難燃剤、光安定剤、熱安定剤、アルカリ、エラストマー、酸化チタン、酸化防止剤、耐加水分解性改良剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤等が例示される。これらの詳細は、特許第4894982号公報の段落0130〜0155の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。これらの成分は、合計で、樹脂組成物の20質量%以下であることが好ましい。これらの成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、任意の方法が採用される。
例えば、ポリアミド樹脂、強化フィラー(強化繊維、ガラスフレーク)、LDS添加剤等をV型ブレンダー等の混合手段を用いて混合し、一括ブレンド品を調製した後、ベント付き押出機で溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。あるいは、二段階練込法として、予め、強化フィラー以外の成分等を、十分混合後、ベント付き押出機で溶融混練りしてペレットを製造した後、そのペレットと強化フィラーを混合後、ベント付き押出機で溶融混練りする方法が挙げられる。
さらに、強化フィラー以外の成分等を、V型ブレンダー等で十分混合したものを予め調製しておき、それをベント付き二軸押出機の第一シュートより供給し、強化フィラーは押出機途中の第二シュートより供給して溶融混練、ペレット化する方法が挙げられる。
【0066】
押出機の混練ゾーンのスクリュー構成は、混練を促進するエレメントを上流側に、昇圧能力のあるエレメントを下流側に配置されることが好ましい。
混練を促進するエレメントとしては、順送りニーディングディスクエレメント、直交ニーディングディスクエレメント、幅広ニーディングディスクエレメント、および順送りミキシングスクリューエレメント等が挙げられる。
【0067】
溶融混練に際しての加熱温度は、通常180〜360℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、ストランド切れ等押出不良の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練り時や、後工程の成形時の分解を抑制するため、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
【0068】
<樹脂成形品>
本発明は、また、本発明の樹脂組成物から成形される樹脂成形品を開示する。
【0069】
本発明の樹脂組成物は、厚み4mmに成形したときの、ISO178に準拠した曲げ強さが170MPa以上であることが好ましく、180MPa以上であることがさらに好ましく、190MPa以上であることが一層好ましい。上記曲げ強度の上限は、特に定めるものではないが、例えば、270MPa以下、さらには260MPa以下、特には250MPa以下が実際的である。
本発明の樹脂組成物は、厚み4mmに成形したときの、ISO178に準拠した曲げ弾性率が7.5GPa以上であることが好ましく、8.0GPa以上であることがさらに好ましく、8.5GPa以上であることが一層好ましい。上記曲げ弾性率の上限は、特に定めるものではないが、例えば、15GPa以下、さらには14GPa以下、特には13GPa以下が実際的である。
【0070】
本発明の樹脂組成物は、厚み4mmに成形したときの、ISO179規格に準拠したノッチ有りシャルピー衝撃強さが3kJ/m2以上であることが好ましい。上記ノッチ有りシャルピー衝撃強さの上限は、特に定めるものではないが、例えば、10kJ/m2以下、さらには9kJ/m2未満、特には7kJ/m2以下が実際的である。
本発明の樹脂組成物は、厚み4mmに成形したときの、ISO179規格に準拠したノッチ無しシャルピー衝撃強さが25kJ/m2以上であることが好ましい。上記ノッチ無しシャルピー衝撃強さの上限は、特に定めるものではないが、例えば、50kJ/m2以下、さらには40kJ/m2未満、特には39kJ/m2以下が実際的である。
【0071】
上記比重、曲げ強さ、曲げ弾性率、ノッチ有りシャルピー衝撃強さおよびノッチ無しシャルピー衝撃強さは、それぞれ、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0072】
本発明における、樹脂成形品の製造方法は、特に限定されず、樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
【0073】
本発明の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品は、樹脂成形品の表面にメッキを有する、メッキ付樹脂成形品として好ましく用いられる。本発明の樹脂成形品におけるメッキはアンテナとしての性能を保有する態様が好ましい。
【0074】
<メッキ付き樹脂成形品の製造方法>
次に、本発明の樹脂組成物から形成される樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキを形成することを含む、メッキ付樹脂成形品の製造方法について開示する。
図1は、レーザーダイレクトストラクチャリング技術によって、樹脂成形品1の表面にメッキを形成する工程を示す概略図である。図1では、樹脂成形品1は、平坦な基板となっているが、必ずしも平坦な基板である必要はなく、一部または全部が曲面している樹脂成形品であってもよい。また、得られるメッキ付き樹脂成形品は、最終製品に限らず、各種部品も含む趣旨である。
【0075】
再び図1に戻り、樹脂成形品1にレーザー2を照射する。ここでのレーザーとは、特に定めるものではなく、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、YAGレーザーが好ましい。また、レーザーの波長も特に定めるものではない。好ましい波長範囲は、200nm〜1200nmであり、より好ましくは800〜1200nmである。
レーザーが照射されると、レーザーが照射された部分3のみ、樹脂成形品1が活性化される。この活性化された状態で、樹脂成形品1をメッキ液4に適用する。メッキ液4としては、特に定めるものではなく、公知のメッキ液を広く採用することができ、金属成分として、銅、ニッケル、銀、金、およびパラジウムの少なくとも1種以上からなるメッキ液(特に、無電解のメッキ液)が好ましく、銅、ニッケル、銀、および金の少なくとも1種以上からなるメッキ液(特に、無電解のメッキ液)がより好ましく、銅を含むメッキ液(特に、無電解のメッキ液)がさらに好ましい。すなわち、本発明におけるメッキは、金属成分が、上記金属の少なくとも1種からなることが好ましい。
樹脂成形品1をメッキ液4に適用する方法についても、特に定めるものではないが、例えば、メッキ液を配合した液中に投入する方法が挙げられる。メッキ液を適用後の樹脂成形品は、レーザー照射した部分のみ、メッキ5が形成される。
本発明の方法では、1mm以下、さらには、150μm以下の幅の間隔(下限値は特に定めるものではないが、例えば、30μm以上)を有するメッキ(回路)を形成することができる。メッキは、形成したメッキ(回路)の腐食や劣化を抑えるために、例えば無電解メッキを実施した後にニッケル、金でさらに保護することもできる。また、同様に無電解メッキ後に電解メッキを用い、必要な膜厚を短時間で形成することもできる。
また、上記メッキ付樹脂成形品の製造方法は、上記メッキ付樹脂成形品の製造方法を含む、アンテナを有する携帯電子機器部品の製造方法として好ましく用いられる。
【0076】
本発明の樹脂組成物から得られる樹脂成形品は、例えば、コネクタ、スイッチ、リレー、導電回路等の電子部品(特に、携帯電子機器部品)などの種々の用途に用いることができる。
【0077】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2011−219620号公報、特開2011−195820号公報、特開2011−178873号公報、特開2011−168705号公報、特開2011−148267号公報の記載を参酌することができる。
【実施例】
【0078】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0079】
ポリアミド樹脂:下記に記載の合成方法に従って得られたPXD10を用いた。
<結晶性熱可塑性樹脂(PXD10)の合成例>
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置および窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したセバシン酸(伊藤製油製、セバシン酸TA)8950g(44.25mol)、次亜リン酸カルシウム12.54g(0.074mol)、酢酸ナトリウム6.45g(0.079mol)を秤量して仕込んだ。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素で0.4MPaに加圧し、撹拌しながら20℃から190℃に昇温して55分間でセバシン酸を均一に溶融した。次いでパラキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)5960g(43.76mol)を撹拌下で110分を要して滴下した。この間、反応容器内温は293℃まで連続的に上昇させた。滴下工程では圧力を0.42MPaに制御し、生成水は分縮器および冷却器を通して系外に除いた。分縮器の温度は145〜147℃の範囲に制御した。パラキシリレンジアミン滴下終了後、反応容器内圧力0.42MPaにて20分間重縮合反応を継続した。この間、反応容器内温は296℃まで上昇させた。その後、30分間で反応容器内圧力を0.42MPaから0.12MPaまで減圧した。この間に内温は298℃まで昇温した。その後0.002MPa/分の速度で減圧し、20分間で0.08MPaまで減圧し、分子量1,000以下の成分量を調整した。減圧完了時の反応容器内の温度は301℃であった。その後、系内を窒素で加圧し、反応容器内温度301℃、樹脂温度301℃で、ストランドダイからポリマーをストランド状に取出して20℃の冷却水にて冷却し、これをペレット化し、約13kgのポリアミド樹脂を得た。なお、冷却水中での冷却時間は5秒、ストランドの引き取り速度は100m/分とした。以下、「PXD10」という。
後述する方法に従って測定した水に浸漬した際の飽和吸水率は3.0質量%であった。
【0080】
<ポリアミド樹脂の水中浸漬した際の飽和吸水率の測定方法>
100×100mmで厚み2mmのプレート試験片を80℃熱水中に浸漬し、24時間毎にプレート質量を測定した。その際、プレート表面の水分はエアーブローによって十分に吹き飛ばすこととした。質量変化が飽和した時点で浸漬を終了とし、初期質量に対する質量変化率を飽和吸水率として算出した。
【数1】
【0081】
5007:ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT):三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバデュラン5008−C」
5605:IPA−PBT(イソフタル酸共重合)三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバデュラン5605」
1010X:ポリアミド6(PA6)、宇部興産社製
【0082】
LDS添加剤:
Black1G:シェファードジャパン製、銅クロム酸化物(CuCr24
CP−5C:アンチモンドープ酸化スズ、Keeling & Walker社製
23K:アルミニウムドープ酸化亜鉛、ハクスイテック(株)製、抵抗率(製品規格値)100〜500Ω・cm
【0083】
強化繊維:
T−756H:日本電気硝子社製、Eガラス、ガラス繊維、ウレタン系集束剤、カット長(数平均繊維長)3mm、数平均繊維径10μm、ガラス繊維の断面は円形である。
T−127:日本電気硝子社製、Eガラス、ガラス繊維、チョップドストランド、数平均繊維径13μm、カット長(数平均繊維長)3mm、ガラス繊維の断面は円形である。
【0084】
ガラスフレーク:
フレカREFG313:日本板硝子社製(5μm厚)
ファインフレーク6145:日本板硝子社製、(0.7μm厚)
【0085】
離型剤:
CS8CP:日東化成工業社製、モンタン酸カルシウム
PED522:酸化ポリエチレンワックス、クラリアントケミカル社製
【0086】
タルク:
MW(ミクロンホワイト)5000S:林化成社製、平均径4.7μm
【0087】
実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例7
<コンパウンド>
後述する下記表1に示す組成となるように、各成分をそれぞれ秤量し、ガラス繊維およびガラスフレークを除く成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)の根元から投入し、溶融した後で、ガラス繊維およびガラスフレークをサイドフィードしてペレットを作製した。二軸押出機の温度設定は、300℃とした。ただし、実施例6および比較例7は、二軸押出機の設定温度は、260℃とした。
【0088】
<曲げ強さおよび曲げ弾性率>
上記の製造方法で得られたペレットを70℃で3時間乾燥させた後、射出成形機(東芝機械社製、「EC75SX」)にて、シリンダー温度300℃、金型温度130℃、成形サイクル50秒の条件で、ISO引張り試験片(4mm厚)を射出成形した。ただし、実施例6および比較例7は、シリンダー温度260℃、金型温度120℃、成形サイクル50秒の条件とした。
ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で曲げ強さ(単位:MPa)および曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。
【0089】
<シャルピー衝撃強さ>
上記の製造方法で得られたペレットを70℃で3時間乾燥させた後、射出成形機(東芝機械社製、「EC75SX」)にて、シリンダー温度300℃、金型温度130、成形サイクル50秒の条件で、ISO引張り試験片(4mm厚)を射出成形した。ただし、実施例6および比較例7は、シリンダー温度260℃、金型温度120℃、成形サイクル50秒の条件とした。
ISO179規格に従い、シャルピー衝撃強さ(ノッチ有りおよびノッチ無し)の測定を行った。
【0090】
<反り性評価>
上述の製造方法で得られたペレットを70℃で3時間乾燥させた後、射出成形機(東芝機械社製、「EC75SX」)にて、シリンダー温度300℃、金型温度130℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形し、60mm×60mm×2mm厚さのプレート試験片を成形した。反り性評価として、得られた成形品の反り量を測定した。また、以下の条件でアニール処理し、得られた成形品の反り量を測定した。ただし、実施例6および比較例7は、シリンダー温度260℃、金型温度120℃、成形サイクル50秒の条件とし、100mm×100mm×2mm厚さのプレート試験片を成形した。
アニール条件として、300℃に設定した面型遠赤外線ヒーターを用いて、得られた試験片を90秒間加熱した。サーモグラフィーにて試験片の表面温度を測定したところ、最高到達温度は270℃であった。ただし、実施例6および比較例7は、140℃に設定した熱風オーブンを用いて、得られた試験片を12時間加熱した。
反り量は、キーエンス社3次元測定機VR−3000にてプレート試験片の実体をスキャニングし、検出された最大高さと最小高さの差から、算出した。
変化量は、アニール後の反りとアリール前の反りの差を示した。
【0091】
<Plating外観>
上述の製造方法で得られたペレットを70℃で3時間乾燥させた後、射出成形機(東芝機械社製、「EC75SX」)にて、シリンダー温度300℃、金型温度130℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形し、3mm厚さのプレートを成形した。ただし、実施例6および比較例7は、シリンダー温度260℃、金型温度120℃、成形サイクル50秒の条件とした。
得られたプレートについて、波長1064nmのYAGレーザーを、出力10W、速度80m/s、周波数3μsで照射した。試験片を硫酸にて脱脂後、キザイ社製、THPアルカリアクチおよびTHPアルカリアクセで処理し、キザイ社製SELカッパーにて銅メッキ処理を行った。以下の通り評価した。
A:メッキが乗った。
B:メッキが乗らなかった。
【0092】
【表1-1】
【表1-2】
【0093】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、強化フィラーとして、ガラス繊維と所定の厚さのガラスフレークを所定の比率でブレンドすることにより、加熱後の反りが小さい樹脂成形品が得られた(実施例1〜7)。さらに、機械的強度にも優れていた。さらに、LDS添加剤を配合した場合(実施例3〜6)、加熱後の反りを小さく維持し、機械的強度を高く維持した状態で、メッキが形成可能であった。
これに対し、ガラスフレークを含まない場合、加熱後の反りが大きかった(比較例1、比較例5、比較例7)。
また、ガラス繊維とガラスフレークを所定の比率でブレンドしても、ガラスフレークの厚みが所定の範囲外である場合、加熱後の反り性が大きかった(比較例2、比較例6)。さらに、機械的強度も格段に劣っていた。また、ガラス繊維と所定の厚さのガラスフレークをブレンドしても、所定の範囲外の比率でブレンドした場合、やはり、加熱後の反りが大きかった(比較例3)。一方、ガラス繊維を配合しない場合、加熱後の反りは小さかったが、機械的強度が劣っていた(比較例4)。
【符号の説明】
【0094】
1 樹脂成形品
2 レーザー
3 レーザーが照射された部分
4 メッキ液
5 メッキ
【要約】
高い機械的強度を維持しつつ、加熱後の反りが低減された樹脂成形品を提供可能な熱可塑性樹脂組成物および樹脂成形品の提供可能。さらに、LDS添加剤を配合した熱可塑性樹脂組成物において、メッキを形成でき、かつ、高い機械的強度を維持しつつ、加熱後の反りが低減された樹脂成形品を提供可能な熱可塑性樹脂組成物、樹脂成形品、メッキ付樹脂成形品の製造方法および携帯電子機器部品の製造方法の提供。
結晶性熱可塑性樹脂100質量部に対し、強化フィラー10〜100質量部を含み、
強化フィラーが、強化繊維と厚み0.1〜2μmのガラスフレークを含み、強化繊維とガラスフレークの質量比である、強化繊維/ガラスフレークが0.1〜1である、熱可塑性樹脂組成物。
図1