(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の一実施形態について説明する。
図1は高分子吸湿材の重要部分を成すアルギン酸の化学構造式である。
図2は高分子吸湿材が水中のミネラル成分を構造中に取り込む様子を示す概念図である。
図3は本発明の実施の形態1に係る加湿装置101を側方から見た縦断面図である。
図4は、
図3中のA−A線で切断し矢印方向から見た断面図である。
【0020】
以下、本発明の実施の形態1について
図3,4を参照しながら説明する。加湿装置101は、直方体形状の筐体を備え、この筐体には、上部の一側面に形成された吸気口5と、吸気口5に対向する側面に形成された排気口7と、排気口7側の下部に形成され、加湿皿9と図示していない給水タンクを収容するタンク収容部とが備えられている。吸気口5の、加湿装置101の内部側には吸気フィルター6が備えられている。図示していない給水タンクは、使用者が加湿装置101を運転するときに、加湿用の水を供給するための装置である。
【0021】
加湿装置101の、吸気口5と排気口7との間には、空気流通壁23が設けられている。吸気口5から取り込まれた空気は、
図3中の矢印で示されるように、空気流通壁23によって限られた空間を流通する。空気流通路には、空気の入り口側から順に、吸気口5、吸気フィルター6、加湿ユニット1、送風ファン8、及び排気口7が設けられている。
【0022】
加湿ユニット1は、基材3上に刺激応答性高分子を含有する高分子吸湿材2と平板状の加熱ヒーター4を積層して形成した素子の集合体である。各素子は、四角形板状の基材3の一面上に刺激応答性高分子を含有する高分子吸湿材2が積層され、基材3の他面側に基材3に接するように板状の加熱ヒーター4が設けられてなる。このような素子が、円筒状の台座の側面上に複数個、近接して固定され、全体として円筒を成す状態で、回転可能に支持されている。
【0023】
図4は、加湿装置101を、
図3中のA−A線で切断した断面図である。
図3および
図4に示すように、加湿ユニット1は、加湿装置101の筐体の、吸気口5が形成されている側面と、排気口7が形成されている側面とを貫通する方向に水平に設けた軸を中心に回転する。加湿ユニット1は、回転軸が脚11によって支持され、図示をしていない制御装置で駆動されるステッピングモーター10で回転駆動される。
【0024】
加湿ユニット1を構成する各素子は、ステッピングモーター10の回転軸を中心とする円筒の側面上に、等間隔で近接して配置されており、当該回転軸のまわりを、
図4中に矢印で示す方向(反時計回り)に回転可能となっている。なお、加湿ユニット1が1回転するのに要する時間または回転速度は、高分子吸湿材の吸湿特性および放出特性によって適切に決定される。加湿ユニット1の回転は、所定の時間ごとに各素子単位で加湿エリア25から吸水エリア24へ、また吸水エリア24から加湿エリア25へ送り出す制御であってもよく、連続して緩やかに回転する制御であってもよい。
【0025】
本実施の形態では、高分子吸湿材2として、熱に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子を用いる。かかる温度応答性高分子は、下限臨界溶液温度(LCST(Lower Critical Solution Temperature)、以下、本明細書において「LCST」と称することがある。)を持つ高分子である。LCSTを持つ高分子は低温では親水性となって吸水するが、LCST以上になると疎水性となって含んでいた水を液体として放出する。なお、ここで、LCSTとは、高分子を水に溶解したときに、低温では親水性で水に溶解するが、ある温度以上になると疎水性となって不溶化する場合の、その境となる温度をいう。一般にLCSTは40〜70℃となるように調整される。
【0026】
加湿ユニット1に形成される高分子吸湿材2は多孔質であることがより好ましいが、必ずしも多孔質でなくてもよい。多孔質構造とした場合には、高分子吸湿材のバルク部分から放出された水を、孔部分を移動して排出されやすくできる。なお、高分子吸湿材2の具体例については、後述する。
【0027】
本実施の形態では
図4に示すように、加湿ユニット1が回転する領域は、加湿装置101の上部に位置する加湿エリア25と、加湿装置101の下部に位置する吸水エリア24とに区分されている。加湿ユニット1が、所定の時間で一度回転する毎に、前記各素子が加湿エリア25から吸水エリア24に移動し、一方で吸水エリア24から加湿エリア25に順番に移動する。
【0028】
本実施の形態では、加湿エリア25内に9個の素子が存在する。加湿エリア25では、加湿エリア25内に移動した直後から各素子の加熱ヒーター4の図示しないヒーター電極と接触して通電できる位置に、図示しないヒーター用固定電極がそれぞれ配置されている。
【0029】
この構造によりステッピングモーター10で回転駆動されて、加湿ユニット1の前記各素子が、ヒーター用固定電極が配置されている位置に到達すると、各素子の加熱ヒーター4がそれぞれ通電により作動するようになっている。また、本実施の形態では、加湿エリア25内から吸水エリア24に移動する直前の素子の加熱ヒーター4は作動しないようにヒーター用固定電極が設置されており、加熱されていた高分子吸湿材2が自然冷却される。
【0030】
次に加湿装置101による加湿方法について、
図3〜5を参照して説明する。吸水エリア24では、加湿皿9に蓄えられた加湿用の水に加湿ユニット1の下部にある各素子が浸漬される。この時点では、各素子は室温前後の温度であってLCST以下であるため、高分子吸湿材2は親水性となっている。これによって、各素子の高分子吸湿材2が吸水する。加湿用の水は、図示をしていない給水タンクから図示をしていない給水弁を経由して加湿皿9に供給される。加湿皿9は常時一定の水位が確保されて、高分子吸湿材2への給水を行う。
【0031】
加湿装置101が運転されると、加湿装置101内の送風ファン8が作動されて、空気12が吸気口5から吸気フィルター6を介して、加湿装置101内に取り込まれる。加湿ユニット1は、ステッピングモーター10によって駆動されて、所定の時間ごとに各素子単位で加湿エリア25から吸水エリア24へ送り出され、吸水エリア24から加湿エリア25へ回転移動する。
【0032】
加湿装置101の運転で、加湿ユニット1が回転をし、当初、加湿皿9で水に浸されていた素子が、吸水エリア24から加湿エリア25へと移動をする。加湿エリア25では、ヒーター用固定電極から給電されて加熱ヒーター4が作動し、高分子吸湿材2が基材3とともに加熱されてLCSTを超える温度に達する。これによって、吸水エリア24で取り込んだ加湿用の水が、高分子吸湿材2から水滴として放出される。この様子を
図5に模式的に示す。
【0033】
加湿装置101に取り込まれた空気12は、加湿エリア25を通過するときに、加湿ユニット1の高分子吸湿材2と接触する。高分子吸湿材2の表面に滲出した水は、高分子吸湿材2や基材3と同時に加熱されてLCST以上の温度になって気化しやすくなっている。加湿装置101に取り込まれた空気12は、高分子吸湿材2の表面の水を蒸気として含む。これによって、加湿エリア25を通過する空気12は加湿され、空気13となって排気口7から排気される。
【0034】
一連の動作で、加湿ユニット1に設けた高分子吸湿材2は、加湿皿9の加湿用の水を含み、次に加熱によって放出するという動作を繰り返す。
図1で示した高分子吸湿材の重要部分を成すアルギン酸の個々の分子が、
図2中では水酸基OHとカルボキシル基COOで修飾された曲線で示される。また、加湿用の水に含まれるミネラル成分はCa
2+で代表して表記されている。
図2に示すように、高分子吸湿材2の内部では、加湿用の水に含まれるミネラル成分を吸水とともに取り入れ、一部は分子鎖間で結合に用いられる。これによって高分子吸湿材2から放出される水では、加湿用の水に含まれていたミネラル成分が除去される。同時に高分子吸湿材2の分子間で架橋が起こり、分子構造が自己補修され強固な構造になる。
【0035】
本実施の形態では、高分子吸湿材2を積層した複数の素子が円筒状に配置されて、回転する仕組みとなっているので、加湿エリア25内にある複数の素子を加湿に用いつつ、吸水エリア24内にある残りの複数の素子において吸水することができる。すなわち、加湿と吸水とを並行して行なうことができる。
【0036】
基材3は、加熱ヒーター4の熱を高分子吸湿材2に伝えることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属をより好適に用いることができる。また、基材3の材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン、ポリアクリレート等の樹脂、シリカ、セラミック等であってもよい。
【0037】
基材3の材料として、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等を用いる場合は、基材3の表面に、カーボンブラック、酸化鉄粒子等の光熱変換材、または、酸化鉄系セラミック粒子、マグネタイトナノ粒子等の磁気熱変換材を塗布したものであることがより好ましい。これにより、光照射や変動磁場等の投入によって、基材3を加熱することができ、よって、高分子吸湿材2を加熱することができる。
【0038】
基材3への高分子吸湿材2の積層方法も特に限定されるものではないが、例えば、バインダー、シランカップリング剤等により積層する方法を用いることができる。
【0039】
また、上述した例では、板状の基材3の片面上に高分子吸湿材2が積層され、基材3の他面側に、基材3に接するように板状の加熱ヒーター4が設けられている。ここにおいて、加熱ヒーター4は、高分子吸湿材2が積層されている側の基材3の面上に設けられていてもよい。この場合は、輻射熱で高分子吸湿材2が加熱され、基材3での熱損失が削減される。
【0040】
上述した例では、加湿装置101は、筐体、吸気口5、吸気フィルター6、送風ファン8、排気口7を備えている。かかる加湿装置101は、それ自体で調湿装置としても利用することができる。しかし、加湿装置101は、これらを除いた加湿部のみで構成されていてもよい。すなわち、加湿装置101は、加湿ユニット1と、給水部としての加湿皿9と、加湿ユニット1の駆動源としてのステッピングモーター10と、を少なくとも備えた装置であってもよい。かかる場合は、加湿装置101は、部品として、調湿装置に組み込むことができる。
【0041】
上述した例では、高分子吸湿材2に効率的に熱刺激を付与するために、板状の加熱ヒーター4を用いているが、加熱ヒーター4の形状は板状に限定されるものではなく、高分子吸湿材2を加熱できるものであればよい。また、加湿ユニット1の各々の素子に加熱ヒーター4が積層される必要はなく、加湿ユニット1の近傍の所定の位置に設置されて高分子吸湿材2を加熱する構造でもよい。
【0042】
また、高分子吸湿材2に熱による刺激を与えることができれば、加熱ヒーター4以外の加熱装置を用いてもよい。かかる加熱装置としては、例えば、ハロゲンランプ、赤外線ランプ、キセノンランプ、ニクロム線やシーズ管ヒーターなどの抵抗式ヒーター等を挙げることができる。これらは、加湿ユニット1の円筒の内側もしくは外側に配置することが出来る。
【0043】
また、上述した例では、高分子吸湿材2として、板状または層状の高分子吸湿材を用いているが、高分子吸湿材2の形状も、これに限定されるものではなく、例えば粒子状であってもよい。このような場合には、各粒子が加熱できるように網状伝熱構造や温風による加熱構造を備えることが好ましい。
【0044】
また、上述した例では、加湿ユニット1は、12個の素子を備えているが、素子の数はこれに限定されるものではない。また、上述した例では、吸水エリア24に3個の素子が存在し、加湿エリア25に9個の素子が存在しているが、その割合もこれに限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0045】
また、上述した例では、加湿ユニット1は、ステッピングモーター10によって駆動され、所定の時間で回転するようになっているが、ユーザーからの指示に応じて回転するようにしてもよく、加湿エリア25内の空気流通路に加湿量や湿度を検知するセンサーを設け、当該加湿量や加湿後の空気湿度が所定値以下になったときに回転するようにしてもよい。
【0046】
また、図示をしていないヒーター用固定電極は、加湿エリア25内に存在する素子の一部、又は全部の素子の加熱ヒーター4と接触する位置に配置されていてもよい。例えば、ヒーター用固定電極は、加湿エリア25から吸水エリア24に移動する直前の素子を除いて給電する位置に配置されていてもよい。或いは、加湿エリア25内に存在する素子の全部の加熱ヒーター4と接触する位置にヒーター用固定電極が配置されていてもよい。
【0047】
また、上述した例では、高分子吸湿材2としては、LCSTを持つ温度応答性高分子を含有する高分子吸湿材を用いているが、温度応答性高分子であればLCST型ではない温度応答性高分子を含む高分子吸湿材であってもよい。また、他の刺激に応答する刺激応答性高分子を含有する高分子吸湿材を用いることもできる。他の刺激に応答する刺激応答性高分子を含有する高分子吸湿材を用いる場合は、加熱ヒーター4の代わりに、刺激付与部として、赤外線、紫外線、可視光等の光、変動する電場、変動する磁場等、対応する刺激を与える装置を用いればよい。
【0048】
〔実施の形態2〕
実施の形態2は、実施の形態1で説明した加湿装置101の給水部を変更したものである。その他の部分は実施の形態1で説明した加湿装置101と同じであり、同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0049】
本実施の形態では、加湿装置101の運転を行わないときは、加湿皿9を排水して水位を低下させ、加湿ユニット1が常に浸漬されない構造とする。このようにすることで、高分子吸湿材2が不要に吸水することを防止でき、加湿ユニット1の損耗が抑制される。本実施の形態では、図示しない給水弁と図示しないポンプを、図示しない制御装置で制御して、加湿ユニット1の高分子吸湿材2が浸漬されない程度に加湿皿9の水位を低下させる。回収した水は給水タンクに戻される。加湿運転が開始されるときに、加湿ユニット1の高分子吸湿材2が浸水するように制御される。
【0050】
〔実施の形態3〕
実施の形態3は、実施の形態1で説明した加湿装置101の給水部を変更したものである。この概略構造を
図6に示す。その他の部分は実施の形態1で説明した加湿装置101と同じであり、同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0051】
実施の形態1では加湿ユニット1に給水する加湿皿9を設け、常に加湿ユニット1の一部の素子が加湿用の水に浸漬される構造としたが、他の構造とすることも可能である。そのような例を本実施の形態で説明する。本実施の形態の加湿装置102では、
図6に示すように、吸水エリア24内に給水ノズル18と給水ポンプ19とを設け、図示をしていない給水タンクから給水される加湿用の水を適宜加湿ユニット1に供給する構造とした。
【0052】
本実施の形態では、加湿皿9は、図示していない給水タンクから供給される加湿用の水の中継容器として使用される。給水ポンプ19は、吸水側が加湿皿9と接続されるとともに吐出側に給水ノズル18が接続される。給水ポンプ19は、図示していない制御部によって駆動され、加湿ユニット1の回転に合わせて適宜高分子吸湿材2の表面に向けて加湿用の水を噴射する。このようにすることで、給水量が調整可能となり、単位時間の加湿量や加湿後の空気の湿度が調節でき、細やかな制御が可能になる。
【0053】
〔実施の形態4〕
実施の形態4は、実施の形態1で説明した加湿装置101に気化部15を追加したものである。この概略構造を
図7に示す。その他の部分は実施の形態1で説明した加湿装置101と同じであり、同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0054】
本実施の形態の加湿装置103は、加湿エリア25に、加湿ユニット1の各素子から滲み出る水滴を転写し気化する気化部15が備えられている。加湿ユニット1の高分子吸湿材2の表面に滲み出てきた水滴を、気化部15が転写して気化に寄与する面積を拡大する。
【0055】
本実施の形態の気化部15は、加湿ユニット1の回転に従って回転するように軸支されている。気化部15は、
図8に示すような多数の細孔を設けたシートを円筒状に形成したものであり、円筒の内外ともに通気可能に設置される。
図7に示すように、気化部15の表面は高分子吸湿材2の表面に接しており、加湿エリア25で加熱された高分子吸湿材2が放出した水滴が転写される。加湿ユニット1の高分子吸湿材2の表面に水が滲出した状態で、気化部15を接触させることで気化部15に設けた細孔15a内に水が吸引される。
【0056】
気化部15に吸引された水は、加湿ユニット1の高分子吸湿材2が接触する気化部15の表側面から気化するだけでなく、細孔15a内に行き渡り気化部15の円筒内側からも気化することが可能になる。高分子吸湿材2の表面からも水が気化するので、これによって、気化に寄与する面積が拡大できる。気化部15の円筒直径や数は、高分子吸湿材2の吸放湿特性、加湿装置103の設定加湿量などから決定される。
【0057】
本実施の形態では気化部15は、水に対する濡れ性が良く、また、吸水性を有さない材質で円筒状に形成されている。多数の細孔15aが基材15bの表面から裏面に貫通するように形成されている。気化部15に形成される細孔15aは、毛細管として機能するため、高分子吸湿材の表面に滲出した水を細孔内部に引き込むことが出来る。気化部15の形状は、加湿ユニット1の軸方向の長さに合わせて、滲み出た水滴を無駄なく気化できるようにしておくのが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0058】
気化部15に形成される細孔15aは、毛細管現象を示す孔径であれば特に寸法を限定するものではないが、径が小さいほど水を吸い込む力が大きくなり、径が大きくなると水を吸い込む力が小さくなる。このため、気化部15に形成される細孔15aは、高分子吸湿材2と接触する面では径を小さく、反対側の面では接触面側よりも大きく形成することも可能である。また、細孔は基材の材質、基材の厚さ、孔径によっても加工方法が異なるが、パンチング、ドリル、レーザーなどによる加工が一般に使用される。
【0059】
なお、吸気口5から取り込まれた空気12は、空気流通壁23によって、加湿エリア25のみを流通し、吸水エリア24には流通しないようになっていることが好ましい。吸水エリア24側では高分子吸湿材2が吸水状態であって、水の放出を行わないので、通過する空気量が多いと加湿効率が悪くなることを考慮している。
【0060】
図9は、吸湿した素子が、加湿ユニット1の回転により加湿エリア25に移動した後の様子を示す図である。簡単のために、気化部15は1つだけ記載をして他は省略している。加湿ユニット1の高分子吸湿材2がすでに加熱によってLCST以上となって、含有されていた水が高分子吸湿材2の表面に水滴となって滲み出てきた状態である。
【0061】
図9の上部中央では、加湿ユニット1に気化部15が接触して、高分子吸湿材2の表面に滲出した水滴が気化部15に転写される様子を示す。高分子吸湿材2から滲み出た水滴が気化部15の表面に移動し、気化部15の表面の細孔15a内に取り込まれる。細孔15a内に取り込まれた水は、加湿ユニット1の回転によって気化部15が回転する間に、気化部15の円筒の内外両面で吸気口5から吸い込まれた空気12と接触して気化、搬出される。
【0062】
本実施の形態では、気化部15は円筒状として常に加湿ユニット1と接触する構造としたが、加湿ユニット1から水を転写し気化させることが出来れば、他の構造であってもよい。例えば、加湿エリア25内で
図8のような細孔を有するシートを使用した円弧状の気化部を加湿ユニット1の周縁部に沿って配置し、図示しない制御部で適時に接触させる構造でもよい。移動させる機構は、リンク、レバーやカムなど公知の構造を用いることが出来る。
【0063】
〔実施の形態5〕
実施の形態5は、実施の形態4で説明した加湿装置103の気化部15を変更したものである。この概略構造を
図10に示す。その他の部分は実施の形態4で説明した加湿装置103と同じであり、同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0064】
本実施の形態では、実施の形態4で開示した気化部15を廃止し、
図10に示す構造を有する気化部150に換える。
図10に示すシートを整形した気化部150は、細孔の数が、板状基材の第1面と第2面で異なることを特徴とする。第1面に設けた細孔150a,150cは、基材150b内部で合流し第2面に開口する。細孔数の多い第1面で高分子吸湿材2と接触、吸水させ、第2面に至るまでに水を集積して、細孔数の少ない第2面から放出するようにしたものである。このような構造とすることで、高分子吸湿材2表面に滲出した水量が少ない場合でも、第1面側から第2面側へ移動する途中で水滴が肥大し搬出されやすくなる。
【0065】
実施の形態4および5において、高分子吸湿材から放出される水を吸水性の無い基材に細孔を設けた気化部を使用して、毛管現象を利用して気化させやすくする構造を開示した。このような毛細管現象を有する気化部としては、他に繊維方向をシートの厚さ方向に揃えて束ねて成形した板、木材、フェルトなどの不織布、一般の布地、連続気孔を有するスポンジなどが使用できる。
【0066】
実施の形態4および5において、気化部15または気化部150を使用して高分子吸湿材から放出される水を、気化させやすくする構造を開示した。このような構造は、実施の形態1〜3で説明した加湿装置101および102においても使用でき、同様の効果を得ることが出来る。
【0067】
〔実施の形態6〕
実施の形態6は、実施の形態1〜5に開示する加湿装置と異なって、加湿装置に除湿機能を追加した除加湿装置である。具体的には、実施の形態3で説明した加湿装置102の吸水エリア24内に、水滴除去部16とヒーター用固定電極を追加したものである。
図11にその構造を示す。その他の部分は実施の形態3で説明した加湿装置102と同じであり、同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0068】
本実施の形態に係る除加湿装置104では、水滴除去部16が吸水エリア24内部に設けられ、加湿ユニット1の高分子吸湿材2の表面と接触可能に配置される。水滴除去部16は、加湿ユニット1と加湿皿9との中間の位置に設けられる。水滴除去部16は固定式である必要はなく、除湿機能を使用しない場合には高分子吸湿材2の表面から離れる方向に移動可能な構成とすることが好ましい。水滴除去部16を移動させる機構は、リンク、レバーやカムなど公知の方法を用いることが出来る。
【0069】
また、本実施の形態の除加湿装置104は、吸水エリア24においても加熱ヒーター4に給電する必要がある。このため、図示をしていないヒーター用固定電極が加湿ユニット1の加熱ヒーター4に通電可能な位置に設けられる。この様な構造にすることで、加湿装置が除湿機能を有することが出来る。
【0070】
以下に、本実施の形態の除加湿装置104の動作について説明をする。除加湿装置104は、加湿器として使用されるときには前述の実施の形態3に示すような動作を行う。簡単に説明すると、給水ノズル18から給水を受けて湿り状態になった加湿ユニット1の高分子吸湿材2が、加湿エリア25に回転移動した後、図示をしていないヒーター用固定電極から給電されてLCST以上の温度まで加熱される。加熱によって高分子吸湿材2が含んでいた水が放出され、送風ファン8によって吸引された空気12が、気化した水蒸気を含んで空気13となって送出される。
【0071】
次に、除湿動作について説明をする。除湿動作は、図示をしない操作部または制御部から運転を指示されて開始される。除湿運転が開始されると、加湿エリア25は高分子吸湿材2が空気中の水分を吸収する吸湿エリアとなり、吸水エリア24は高分子吸湿材2が吸収した水分を放出する放出エリアとなる。加湿ユニット1は、実施の形態1〜5と同じ構成であって、
図11中の矢印方向に回転をする。
【0072】
除湿運転の開始によって、送風ファン8が吸気口5から空気12を吸い込み、加湿ユニット1の高分子吸湿材2が、空気12に含まれる水分を吸収する。これによって空気12は乾燥し、空気13となって排気口7から送出される。また、水分を含んで湿り状態となった高分子吸湿材2は、加湿ユニット1の回転によって加湿エリア25から吸水エリア24に移動する。
【0073】
吸水エリア24では、ヒーター用固定電極によって加湿ユニット1の加熱ヒーター4が給電されて、基材3と高分子吸湿材2がLCST以上の温度まで加熱される。加熱された高分子吸湿材2は、含んでいた水分を放出し表面に水滴として滲出する。表面に水滴を生じた高分子吸湿材2は、加湿ユニット1とともに回転移動して、水滴除去部16が設置されている位置まで移動する。高分子吸湿材2の表面の水滴が、水滴除去部16によって拭い去られて加湿皿9に回収される。
【0074】
水滴を除去された高分子吸湿材2は、加熱ヒーター4への給電が停止され、自然冷却されながら再び加湿エリア25へと移動する。冷却された高分子吸湿材2は、再び空気中の水蒸気を吸収して除湿機能を発揮する。以上の動作が繰り返されて除湿機としての動作が継続する。除湿機として動作している間は、加湿エリア25内に設置されたヒーター用固定電極は給電を停止している。
【0075】
除加湿装置104は、上記のように動作して加湿器および除湿機としての機能を発揮するが、これらの機能は図示しない操作部から使用者が選択して実行させるように構成してもよく、また、湿度検知装置を備えて予め設定された湿度、もしくは使用者によって設定された湿度を判断基準として、除湿機能と加湿機能を適時使用するように自動運転を構成してもよい。
【0076】
なお、実施の形態6の除湿動作において、高分子吸湿材2が放出した水を水滴除去部16によって拭う構造としたが、水滴除去部16は必ずしも必要ではない。加湿エリア24において、高分子吸湿材2がLCST以上の温度になれば水が放出されるが、加湿ユニット1の最も低い位置で水滴が滴下できるように加熱ヒーター4に給電すればよい。
【0077】
除湿機能を使用して空気中の水蒸気から生じた水は、一般の市水と異なりミネラル成分などの不純物を含まないので、一般的な加湿器に使用しても白粉を発生させたりはしない。一方で、蒸発器表面に付着した雑菌やほこりを結露水と一緒に滴下させるので、気化フィルターや加湿皿中の水には、空気中の雑菌が混入しやすく、時間経過とともに多くの菌が繁殖し不衛生な水に変化してしまう。このために、従来の除加湿装置では、除湿中に発生した結露水を加湿用の水として使用することはなかった。
【0078】
本発明に係る高分子吸湿材は、一般市水に含まれるミネラル成分を構造の一部として取り込むことをすでに説明したが、その時に雑菌もゲル中に捕捉する。そのため、高分子吸湿材に一度取り込まれた後に、再び水として取り出された空気中の水分、もしくは市水は細菌やミネラル成分が非常に少なくなるという効果が見られる。実施の形態6で説明したような除加湿装置では、自動運転で除湿機として機能した場合に回収された水は、そのまま加湿運転時の加湿用の水としても使用することが出来る。
【0079】
実施の形態6で示した除加湿装置104においても、実施の形態4で開示した気化部15を採用することが可能である。本実施の形態の除加湿装置104を除湿装置として使用するときには気化部15が特別な機能を発揮することはない。これは、除湿装置として使用しているときは、加湿エリア25にある高分子吸湿材2が、LCST以下の温度であるため水を放出することはなく、気化部15が寄与する余地がないためである。しかし、除加湿装置104を加湿装置として作用するときには、気化部15が有効であることは実施の形態4で説明した通りである。前述のように気化面積を拡大する装置として作用するため加湿効率を高めることが出来る。
【0080】
〔高分子吸湿材の詳細〕
以下に、上述した各実施形態で用いられる、刺激応答性高分子を含有する高分子吸湿材の詳細について説明する。なお、本明細書においては、「アクリル」または「メタアクリル」のいずれをも意味する場合「(メタ)アクリル」と表記する。
【0081】
上述した各実施形態では、刺激応答性高分子の乾燥体を含む高分子吸湿材を用いる。特に、刺激応答性高分子が架橋体である場合は、高分子が架橋されて形成された3次元の網目構造が、水、有機溶媒等の溶媒を吸収して膨潤した高分子ゲルを形成することが多い。かかる場合、上述した各実施形態では、高分子ゲルの乾燥体を用いる。
【0082】
ここで、高分子ゲルの乾燥体とは、高分子ゲルを乾燥することによって溶媒を除去したものをいう。なお、本発明において、高分子ゲルの乾燥体は、高分子ゲルから溶媒が完全に除去されている必要はなく、空気中の水分を吸収することができれば、溶媒または水を含んでいてもよい。したがって、前記高分子ゲルの乾燥体の含水率は、該乾燥体が空気中の水分を吸収することができれば、特に限定されるものではないが、例えば、40重量%以下であることがより好ましい。なお、ここで含水率とは、高分子ゲルの乾燥重量に対する水分の割合をいう。
【0083】
刺激応答性高分子とは、外部刺激に応答して、その性質を可逆的に変化させる高分子をいう。本発明においては、外部刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子を用いる。
【0084】
前記外部刺激としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱、光、変動する電場、変動する磁場、pH等を挙げることができる。
【0085】
また、外部刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化するとは、外部刺激を与えられた高分子が、外部刺激に応答して、親水性と疎水性との間で可逆的に変化することをいう。
【0086】
中でも、熱に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子、すなわち、温度応答性高分子は、簡易な加熱装置を用いて温度を変化させることにより、空気中の水分つまり水蒸気の吸湿と、吸湿した水分の放出とを可逆的に行えることから、調湿機に特に好適に用いることができる。
【0087】
前記温度応答性高分子としては、より具体的には、例えば、ポリ(N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−ノルマルプロピル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−メチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−エチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−ノルマルブチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−イソブチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド)等のポリ(N−アルキル(メタ)アクリルアミド);ポリ(N−ビニルイソプロピルアミド)、ポリ(N−ビニルノルマルプロピルアミド)、ポリ(N−ビニルノルマルブチルアミド)、ポリ(N−ビニルイソブチルアミド)、ポリ(N−ビニル−t−ブチルアミド)等のポリ(N−ビニルアルキルアミド);ポリ(N−ビニルピロリドン);ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−イソプロピル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−ノルマルプロピル−2−オキサゾリン)等のポリ(2−アルキル−2−オキサゾリン);ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル等のポリビニルアルキルエーテル;ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドの共重合体;ポリ(オキシエチレンビニルエーテル);メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体等、およびこれらの高分子の共重合体を挙げることができる。
【0088】
また、温度応答性高分子は、これらの高分子の架橋体であってもよい。温度応答性高分子が架橋体である場合、かかる架橋体としては、例えば、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ノルマルプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ノルマルブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド;N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニルノルマルプロピルアミド、N−ビニルノルマルブチルアミド、N−ビニルイソブチルアミド、N−ビニル−t−ブチルアミド等のN−ビニルアルキルアミド;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルアルキルエーテル;エチレンオキサイドとプロピレンオキサイド;2−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロピル−2−オキサゾリン、2−ノルマルプロピル−2−オキサゾリン等の2−アルキル−2−オキサゾリン等のモノマーまたはこれらのモノマーの2種類以上を、架橋剤の存在下で重合して得られる高分子を挙げることができる。
【0089】
前記架橋剤としては、従来公知のものを適宜選択して用いればよいが、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリレンジイソシアネート、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の重合性官能基を有する架橋性モノマー;グルタールアルデヒド;多価アルコール;多価アミン;多価カルボン酸;カルシウムイオン、亜鉛イオン等の金属イオン等を好適に用いることができる。これらの架橋剤は単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
また、温度応答性高分子にカーボンや酸化鉄などの不溶性粒子を混合して使用することが出来る。このようにすると、カーボンや酸化鉄などが磁場変動によって発熱するために外部刺激を磁場とすることが出来る。
【0091】
また、光に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子としては、アゾベンゼン誘導体、スピロピラン誘導体等の光により親水性または極性が変化する高分子、それらと温度応答性高分子およびpH応答性高分子の少なくともいずれかとの共重合体、前記光応答性高分子の架橋体、または、前記共重合体の架橋体を挙げることができる。
【0092】
また、電場に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基等の解離基を有する高分子、カルボキシル基含有高分子とアミノ基含有高分子との複合体のような静電相互作用や水素結合などによって複合体を形成した高分子、または、これらの架橋体を挙げることができる。
【0093】
また、pHに応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基等の解離基を有する高分子、カルボキシル基含有高分子とアミノ基含有高分子との複合体のような静電相互作用や水素結合などによって複合体を形成した高分子、または、これらの架橋体を挙げることができる。
【0094】
また、刺激応答性高分子は、上述した刺激応答性高分子の誘導体であってもよいし、他のモノマーとの共重合体であってもよい。なお、他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、どのようなモノマーであってもよい。例えば、(メタ)アクリル酸、アリルアミン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、マレイン酸、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、アクリルアミドアルキルスルホン酸、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等のモノマーを好適に用いることができる。
【0095】
或いは、刺激応答性高分子は、他の架橋された高分子又は架橋されていない高分子と、相互浸入高分子網目構造またはセミ相互浸入高分子網目構造を形成してなる高分子であってもよい。
【0096】
前記刺激応答性高分子の分子量も特に限定されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により決定された数平均分子量が3000以上であることが好ましい。
【0097】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る加湿装置は、加湿用の水を供給する給水部と、外部刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子吸湿材または前記刺激応答性高分子を含有する高分子吸湿材と、前記高分子吸湿材に外部刺激を付与する刺激付与部と、前記高分子吸湿材に送風して加熱によって滲出した水を気化させる送風ファンを備えていることを特徴とする。
【0098】
より具体的には、前記高分子吸湿材と、刺激付与部とを基板上に形成して単位となる素子を形成し、前記素子を複数組み合わせて円筒状の加湿ユニットを構成し、吸水エリアと加湿エリアを交互に通過する回転可能な構造とすることで吸水と放出を並行して実現する。
【0099】
前記の構成によれば、加湿用の水を一度高分子吸湿材に吸水させた後に、加熱によって放出された水を気化させるので、加湿用の水に含まれるミネラル成分が高分子吸湿材によって除去され、加湿によって白粉を発生させることがないという効果を有する。
【0100】
また、前記高分子吸湿材は、加湿用の水に含まれるミネラル成分を構造の一部として取り込むので、加湿ユニットにミネラル成分が析出しないという効果を有する。さらに、取り込んだミネラル成分は、高分子吸湿材の構造を強固にするという効果を生じる。
【0101】
本発明の態様2に係る加湿装置は、前記態様1に加えて加湿用の水を貯える加湿皿の水位を可変に構成する。例えば、給水弁や排水弁と、給水ポンプなど公知の手段を使用して水位を調節する。
【0102】
本発明の態様2に係る加湿装置では、加湿動作を行わないときに図示しない制御部によって加湿皿の水位を低下させる。加湿動作を行うとき以外は高分子吸湿材を加湿用の水に浸漬しないので、不要な損耗を防ぐという効果を奏する。
【0103】
本発明の態様3に係る加湿装置は、前記態様1に加えて、給水ノズルと給水ポンプを備える。
【0104】
前記の構成によれば、高分子吸湿材への給水量を可変にできるので、加湿量を自由に調整できるという効果を奏する。また、加湿動作を行うとき以外は高分子吸湿材を水に浸漬しないので不要な損耗を抑制できる。
【0105】
本発明の態様4に係る加湿装置は、前記態様1に加えて、加湿エリアにおいて、加熱された高分子吸湿材から放出された水を気化しやすくさせる気化部を備える。
【0106】
前記の構成によれば、高分子吸湿材表面から水を積極的に吸い取り、水が放出されやすくするとともに、水の気化に寄与する表面積を気化部が拡大するので、加湿効率が高められるという効果を奏する。
【0107】
本発明の態様5に係る加湿装置は、前記態様4に換えて、高分子吸湿材の表面から放出された水を内部で集積する構造を有する気化部を備える。
【0108】
前記の構成によれば、気化部の吸水側表面と放出側表面で細孔数が異なるため、高分子吸湿材表面から水を吸い込み、吸い込んだ水を集積して放出側に送り出すことが出来る。これによって、高分子吸湿材表面からの水の放出を促進し、放出側では水滴を肥大化して放出するので気化部の機能を向上させることが出来る。水の放出が少量でも気化しやすく加湿効率が高められるという効果を奏する。
【0109】
本発明の態様6に係る除加湿装置は、前記態様3に開示した加湿装置において、吸水エリア内においても、高分子吸湿材を加熱できるように加熱ヒーターに給電するヒーター用固定電極を設けた。
【0110】
前記の構成によれば、加湿エリア内で空気中の水分を吸湿させ、吸水エリア内で高分子吸湿材から水として放出させることが出来る。これによって、加湿装置の構成で除湿機能を発揮させることが出来る。つまり、加湿装置と除湿装置が一体となり、周囲条件を判断し制御によって加湿機能と除湿機能を使い分けしたり、加湿と除湿を連続動作したりすることが可能になる。
【0111】
また、前記の構成によれば、加湿機能と除湿機能がほぼ同じ構成部品を共有して実現できるので、構成部品が少なくて済み小型化、軽量化が容易になる。さらに、空調装置として機能拡大と利便性向上が出来るという効果を奏する。
【0112】
実施の形態1〜6で、加熱ヒーターを加湿ユニットと一体化した構造としたが、加熱ヒーターを別設置とすることも可能である。加湿ユニットの近傍に設置して加湿ユニットとして形成した高分子吸湿材を加熱できれば良く、熱を放射する一般的なヒーターを使用することが出来る。
【0113】
本発明に係る加湿方法は、外部刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する刺激応答性高分子吸湿材または刺激応答性高分子を含有する高分子吸湿材を使用する加湿方法であって、高分子吸湿材に加湿用の水を吸水させる工程と、前記高分子吸湿材に外部刺激を付与して水との親和性を低下させる工程と、送風によって高分子吸湿材から放出された水を気化する工程とを含む。
【0114】
本発明によれば、加湿用の水を一度高分子吸湿材に吸水させた後に、加熱によって放出された水を気化させるので、加湿用の水に含まれるミネラル成分が高分子吸湿材によって除去され、加湿によって白粉を発生させることがないという効果を有する。
【0115】
また、前記高分子吸湿材は加湿用の水に含まれるミネラル成分を構造の一部として取り込むので、加湿ユニットにミネラル成分が析出しないという効果を有する。さらに、取り込んだミネラル成分は架橋することで高分子吸湿材の構造を強固にするという効果を生じる。
【0116】
また、本発明によれば、高分子吸湿材をLCSTを超える程度に加熱し、冷却するだけで除湿または加湿が出来るので、過冷却や大きな熱量を用いずに効率よく調湿することができるという効果を奏する。