(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の剥離コントロール剤は、1分子中に15〜29モル%のフッ素原子含有有機基を有し、且つヒドロシリル化反応性基を含有しないオルガノポリシロキサンを含むことを特徴とする。
【0023】
本発明においてフッ素原子含有有機基の含有量は、オルガノポリシロキサン分子を構成する全シロキサン単位のうち、フッ素原子含有有機基を有するシロキサン単位の割合として計算される。
【0024】
前記のオルガノポリシロキサンのフッ素原子含有有機基の含有量は、15〜29モル%であり、好適には、16、17、18又は19モル%以上であり、28又は27モル%以下である。特に好ましくは、オルガノポリシロキサンのフッ素原子含有有機基の含有量は、19〜27モル%の範囲である。一方、1分子中のフッ素原子含有有機基の含有量が前記下限未満又は前記上限を超えると、優れた剥離性が得られない場合がある。
【0025】
前記のオルガノポリシロキサンは、フッ素原子含有有機基の含有量に加え、分子中にヒドロシリル化反応性基を含有しないことを特徴とする。オルガノポリシロキサンがヒドロシリル化反応性基を含有する場合、特に、ヒドロシリル化反応により硬化するシリコーン剥離剤組成物において、当該オルガノポリシロキサンが、剥離性を有するシリコーン硬化物内で、架橋剤又は主剤との共有結合を形成しやすくなり、剥離コントロール剤として、優れた剥離性が実現できない場合がある。
【0026】
前記のヒドロシリル化反応性基は、白金系金属触媒等のヒドロシリル化反応触媒の存在下に炭素−炭素二重結合とケイ素原子結合水素原子との間の付加反応に関与しうる反応性官能基であり、例えば、炭素原子数2〜20のアルケニル基、アクリル基若しくはメタクリル基等の炭素−炭素二重結合を少なくとも一部に有する有機基又はケイ素原子結合水素原子である。特に、前記のオルガノポリシロキサンは、分子内にアルケニル基又はケイ素原子結合水素原子を有しないことが好ましく、アルケニル基を有しないことが特に好ましい。前記のオルガノポリシロキサンにおいて、ヒドロシリル化反応性基が特に分子末端に残存していると、剥離コントロール剤として用いた場合、軽剥離が達成できない場合がある。特に、前記のオルガノポリシロキサンの分子末端にビニル基等のアルケニル基が存在すると、フッ素原子含有有機基の含有量が前記の範囲にあっても、得られた剥離コントロール剤をシリコーン剥離剤組成物に添加した場合の軽剥離特性が損なわれる場合がある。
【0027】
また、オルガノポリシロキサンの分子鎖末端は、トリメチルシロキシ基又はシラノール基であることが好ましく、分子鎖末端の1つ以上がトリメチルシリル基であることがより好ましい。
【0028】
フッ素原子含有有機基は、C
nF
2n+1−R−、C
nF
2n+1−R−O−R−、又はF(CF(CF
3)CF
2O)
nCF(CF
3)−R−O−R−(式中、Rは、それぞれ独立に二価の炭化水素基であり、nは1〜20の整数である)で表される基であることが好ましい。
【0029】
二価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、プロピレン基、及びブチレン基等のアルキレン基;フェニレン基、トリレン基、及びキシリレン基等のアリーレン基;並びにメチルフェニレン基及びエチルフェニレン基等のアルキレンアリーレン基が例示される。
【0030】
また、フッ素原子含有有機基以外のケイ素原子結合有機基はヒドロシリル化反応性基を含有しない官能基である限り、特に限定されず、このような有機基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、及びキシリル基等のアリール基;並びにベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基などの一価の炭化水素基が例示される。さらに、水酸基やアルコキシ基を有していてもよい。
【0031】
オルガノポリシロキサンの分子構造は特に限定されず、直鎖状、環状、樹脂状、及び一部分岐を有する直鎖状のいずれであってもよく、部分的に交叉結合を有するものであってもよい。また、粘度も特に限定されず、低粘度の液状オルガノポリシロキサンから高粘度のガム状オルガノポリシロキサンまで使用することができる。しかし、特に優れた剥離性を有することから、25℃における粘度は、JIS K7117−1に準拠し、B型粘度計を用いて測定し、100〜1,000,000mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0032】
また、オルガノポリシロキサンの重合度は100〜10,000であることが好ましく、500〜5,000であることがより好ましく、800〜3,000であることがさらに好ましい。
【0033】
このようなオルガノポリシロキサンとして具体的には、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3−トリフロロプロピル)ポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ封鎖メチル(3,3,3−トリフロロプロピル)シロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ封鎖メチル(パーフロロブチルエチル)シロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチル(パーフロロヘキシルエチル)シロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチル(3,3,3−トリフロロプロピル)シロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチル(パーフロロブチルエチル)シロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチル(パーフロロヘキシルエチル)シロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、及び分子鎖片末端がシラノールで封鎖され、もう一方の片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチル(パーフロロブチルエチル)シロキサン・ジメチルシロキサン共重合体が例示される。
【0034】
また、本発明の剥離コントロール剤においては、これらのオルガノポリシロキサンの1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることも可能である。
【0035】
本発明は、
(A)1分子中に、少なくとも1個のフッ素原子含有有機基と少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)1分子中に、少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノ水素ポリシロキサン、
(C)本発明の剥離コントロール剤、及び
(D)ヒドロシリル化反応触媒
を含む、シリコーン剥離剤組成物にも関する。
【0036】
(A)成分は、シリコーン剥離剤組成物の主成分であり、1分子中に、少なくとも1個のフッ素原子含有有機基と少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。なお、アルケニル基はヒドロシリル化反応性基であり、本発明に係る剥離コントロール剤((C)成分)とは区別される成分である。
【0037】
(A)成分中のフッ素原子含有有機基として、具体的には、C
nF
2n+1−R−、C
nF
2n+1−R−O−R−、及びF(CF(CF
3)CF
2O)
nCF(CF
3)−R−O−R−(式中、Rは、それぞれ独立に二価の炭化水素基であり、nは1〜20の整数である)で表される基が挙げられる。
【0038】
(A)成分は、1分子中に、好ましくは10〜75モル%、より好ましくは10〜50モル%のフッ素原子含有有機基を有する。
【0039】
二価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、プロピレン基、及びブチレン基等のアルキレン基;フェニレン基、トリレン基、及びキシリレン基等のアリーレン基;並びにメチルフェニレン基及びエチルフェニレン基等のアルキレンアリーレン基が例示される。
【0040】
また、(A)成分中のフッ素原子含有有機基及びアルケニル基以外のケイ素原子結合有機基は特に限定されず、このような有機基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、及びキシリル基などのアリール基;並びにベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基などの一価の炭化水素基が例示される。好ましくは、フッ素原子含有有機基及びアルケニル基以外のケイ素原子結合有機基は、メチル基又はフェニル基である。さらに、(A)成分のオルガノポリシロキサンは、少量の水酸基やアルコキシ基を有していてもよい。
【0041】
このような(A)成分の分子構造は特に限定されず、直鎖状、環状、樹脂状、及び一部分岐を有する直鎖状のいずれであってもよく、また部分的に交叉結合を有するものでもよい。また、粘度も特に限定されず、低粘度の液状オルガノポリシロキサンから高粘度のガム状オルガノポリシロキサンまで使用することができる。特に剥離性が優れた硬化皮膜を形成することができることから、(A)成分の25℃における粘度は、JIS K7117−1に準拠し、B型粘度計を用いて測定し、100〜1,000,000mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0042】
(A)成分のオルガノポリシロキサンとして具体的には、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3−トリフロロプロピル)ポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ封鎖(3,3,3−トリフロロプロピル)シロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ封鎖(3,3,3−トリフロロプロピル)シロキサン・ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ封鎖(3,3,3−トリフロロプロピル)シロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(パーフロロブチルエチル)シロキサン・ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ封鎖メチル(パーフロロヘキシルエチル)シロキサン・ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルジシロキシ封鎖(3,3,3−トリフロロプロピル)シロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチル(パーフロロブチルエチル)シロキサン・ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチル(パーフロロヘキシルエチル)シロキサン・ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖(パーフロロブチルエチル)シロキサン・ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール封鎖メチル(3,3,3−トリフロロプロピル)シロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール封鎖メチル(3,3,3−トリフロロプロピル)シロキサン・ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール封鎖メチル(パーフロロブチルエチル)シロキサン・ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール封鎖メチル(パーフロロヘキシルエチル)シロキサン・ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、及び分子鎖片末端がシラノール基で封鎖され、一方の末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチル(パーフロロブチルエチル)シロキサン・ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体が例示される。
【0043】
(B)成分は、本発明の組成物において架橋剤として作用し、1分子中に、少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノ水素ポリシロキサンである。なお、ケイ素原子結合水素原子はヒドロシリル化反応性基であり、本発明にかかる剥離コントロール剤((C)成分)とは区別される成分である。
【0044】
(B)成分中のケイ素原子結合水素原子以外のケイ素原子結合有機基は特に限定されず、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びベンジル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、及びキシリル基などのアリール基;並びにベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基等などの一価の炭化水素基が例示される。
【0045】
また、(B)成分のオルガノ水素ポリシロキサンは、フッ素原子含有有機基を有していてもよく、このようなフッ素原子含有有機基として、具体的には、C
nF
2n+1−R−、C
nF
2n+1−R−O−R−、及びF(CF(CF
3)CF
2O)
nCF(CF
3)−R−O−R−(式中、Rは、それぞれ独立に二価の炭化水素基であり、nは1〜20の整数である)で表される基が挙げられる。
【0046】
二価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、プロピレン基、及びブチレン基等のアルキレン基;フェニレン基、トリレン基、及びキシリレン基等のアリーレン基;並びにメチルフェニレン基及びエチルフェニレン基等のアルキレンアリーレン基が例示される。
【0047】
このような(B)成分の分子構造は特に限定されず、直鎖状、環状、樹脂状、及び一部分岐を有する直鎖状のいずれであってもよく、また部分的に交叉結合を有するものでもよい。また、粘度も特に限定されず、取り扱いの容易さ及び架橋剤として好適に作用することから、25℃における粘度は、JIS K7117−1に準拠し、B型粘度計を用いて測定し、1〜100,000mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0048】
このような(B)成分のオルガノ水素ポリシロキサンとして、具体的には、分子鎖両末端トリメチル封鎖メチル水素ポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ鎖封鎖メチル水素シロキサン・メチル(3,3,3−トリフロロプロピル)シロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ封鎖ジメチルシロキサン・メチル水素シロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチル水素シロキシ封鎖メチル(パーフロロブチルエチル)シロキサン・メチル水素シロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチル(パーフロロブチルエチル)シロキサン・ジメチルシロキサン・メチル水素シロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチル(パーフロロヘキシルエチル)シロキサン・メチル水素ポリシロキサン共重合体、及びメチル(パーフロロブチルエチル)シロキサン単位とジメチル水素シロキサン単位とSiO
4/2単位からなる共重合体が例示される。
【0049】
本発明のシリコーン剥離剤組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜40質量部、好ましくは0.1〜20質量部の範囲である。これは、(B)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して0.1質量部未満では、得られたシリコーン剥離剤組成物の硬化皮膜形成速度が著しく遅くなるためであり、またこれが40質量部を超えると、得られた硬化皮膜の粘着性物質に対する軽剥離性が実現できない場合があるためである。
【0050】
(C)成分は本発明の剥離コントロール剤であり、シリコーン剥離剤組成物を硬化して得られる皮膜に優れた剥離性を付与するための成分である。(C)成分中のフッ素原子含有有機基の含有量及びその好適範囲は、前記の通りである。(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜20質量部の範囲であり、好ましくは1〜15質量部の範囲である。(C)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して0.01質量部未満であると、硬化して得られる皮膜(剥離性硬化皮膜)の粘着性物質に対する軽剥離性が著しく低下する場合がある。また、(C)成分の含有量が20質量部を超えると、硬化して得られる皮膜の強度が著しく低下し、さらに硬化皮膜から(C)成分がにじみ出やすくなり、後述する残留接着率が著しく低下することがある。
【0051】
(D)成分は、(A)成分のオルガノポリシロキサンと(B)成分のオルガノ水素ポリシロキサンを架橋させるための触媒として作用する、ヒドロシリル化反応触媒である。
【0052】
(D)成分のヒドロシリル化反応触媒は特に限定されず、具体的には、シリカ微粉末又は炭素粉末担体上に吸着させた微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸とビニルシロキサンの配位化合物、白金黒、パラジウム、及びロジウム触媒が例示される。
【0053】
また、本発明のシリコーン剥離剤組成物において、(D)成分の含有量は触媒量であり、(D)成分として白金系触媒を用いた場合、この白金系触媒に含まれる白金金属量は、シリコーン剥離剤組成物中に質量単位で0.01〜1,000ppmの範囲内となる量であることが実用上好ましく、特に、0.1〜500ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0054】
本発明のシリコーン剥離剤組成物は、上記(A)成分〜(D)成分を含み、これらを均一に混合することにより調製することができる。本発明のシリコーン剥離剤組成物を調製する方法は特に限定されず、例えば、(A)成分と(B)成分を均一に混合した後、(C)成分と(D)成分の混合物を配合する方法、(A)成分と(B)成分と(C)成分を均一に混合した後、これに(D)成分を配合する方法が挙げられる。
【0055】
また、本発明のシリコーン剥離剤組成物には、上記(A)成分〜(D)成分以外の成分として、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。有機溶剤は、(A)成分〜(C)成分のいずれかが高粘度である場合、その成分を均一に混合することができ、さらには得られた本発明のシリコーン剥離剤組成物の各種基材に対する塗布性を向上させることができる。
【0056】
本発明のシリコーン剥離剤組成物に配合することができる有機溶剤は、(A)成分〜(C)成分を均一に溶解させることができるものであれば、その種類は特に限定されない。このような有機溶剤として、具体的には、トリフロロトルエン及びヘキサフロロキシレン等の芳香族炭化水素系有機溶剤;ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、及びイソオクタン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤;トリクロロエチレン及びパークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系有機溶剤;アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル及びメチルブチルエーテル等のエーテル系溶剤;並びに酢酸メチル及び酢酸エチル等のエステル系有機溶剤が例示される。
【0057】
また、本発明のシリコーン剥離剤組成物には、(D)成分の触媒活性を抑制して、室温における組成物の保存安定性を向上させるための任意の成分として、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5―ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、又はフェニルブチノール等のアルキニルアルコール;或いは3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−イン、(テトラメチルビニルシロキサン)環状体又はベンゾトリアゾール等のヒドロシリル化反応抑制剤を少量配合することが好ましい。
【0058】
本発明のシリコーン剥離剤組成物は、上記(A)〜(D)成分を含み、任意で有機溶剤及びヒドロシリル化反応抑制剤を含んでもよい。本発明のシリコーン剥離剤組成物は、基材への良好なコーティング特性を得るために、25℃における粘度が、JIS K7117−1に準拠し、B型粘度計を用いて測定し、100〜100,000mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0059】
本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、上記各成分以外に任意成分を添加することができる。例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物からなる接着促進剤;フェノール系、キノン系、アミン系、リン系、ホスファイト系、イオウ系、チオエーテル系などの酸化防止剤;トリアゾール系、ベンゾフェノン系などの光安定剤;リン酸エステル系、ハロゲン系、リン系、アンチモン系などの難燃剤;カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤などからなる1種類以上の界面活性剤;帯電防止剤、耐熱剤、染料、顔料等の公知の添加剤を添加することができる。
【0060】
本発明のシリコーン剥離剤組成物は、これを紙、プラスチックフィルム、又は布等の各種シート状基材表面に塗布し、その後、例えば、室温又は加熱温度50〜200℃、加熱時間20〜300秒の条件下で硬化させることにより、シリコーン系粘着剤をはじめとする感圧接着剤等の粘着性物質に対しては剥離性に優れた皮膜を、紙、プラスチックフィルム、又は布等の各種シート状基材表面に対しては密着性に優れた皮膜を形成することができる。このような方法で、本発明のシリコーン剥離剤組成物の硬化物からなる硬化層、及び、シート状基材を備える剥離シートを作成することができる。
【0061】
シート状基材としては、例えば、和紙、板紙、ダンボール紙、クレーコート紙、ポリオレフィンラミネート紙、特にはポリエチレンラミネート紙、及び合成紙等の紙類;ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、及びナイロン等のプラスチックフィルム;天然繊維布、合成繊維布、及び人工皮革布等の布類;グラスウール、並びに金属箔が挙げられる。
【0062】
本発明のシリコーン剥離剤組成物とシート状基材表面との間の密着性を向上させるために、シート状基材の片面又は両面に、酸化法又は凸凹化法などによる表面処理、或いはプライマー処理を施すことができる。酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン処理、及び紫外線照射処理などが挙げられる。凸凹化法としては、例えば、サンドブラスト法及び溶射処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、シート状基材の種類に応じて適した方法を選択することができる。また、本発明のシリコーン剥離剤組成物を誘電体セラミック層成形材料用剥離フィルム、特にセラミックグリーンシート成形用剥離フィルムとして用いる場合には、これらのシート状基材(フィルム)に帯電防止処理を行い、これをシート状基材として用いることも、シート状基材へのセラミックスラリーの塗工不良等の発生の防止に有効である。
【0063】
シート状基材の厚さは、一般に、10〜300μmであり、好ましくは15〜200μmであり、特に好ましくは20〜125μmである。
【0064】
本発明のシリコーン剥離剤組成物のシート状基材上への塗布方法は、公知の任意の方法を用いて行うことができるが、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、又はダイコート法などを用いることができる。
【0065】
本発明のシリコーン剥離剤組成物をシート状基材の上に塗布して硬化させる場合、シリコーン剥離剤組成物の硬化層の厚さは特に限定されないが、0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜5μmであることがさらに好ましい。
【0066】
また、シリコーン剥離剤組成物が塗布され、硬化された剥離シートは、シリコーン剥離剤組成物が塗布された面とは反対の面にシリコーン系粘着剤等の粘着性物質を塗布し、粘着層との積層体とすることができる。
【0067】
上記の積層体に適用する粘着性物質は、各種粘着剤、各種接着剤等であり、アクリル樹脂系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、アクリル樹脂系接着剤、合成ゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、及びポリウレタン系接着剤が例示される。また、アスファルト、餅のような粘着性食品、糊、及び鳥もちが例示される。特に、シリコーン系粘着剤であることが好ましい。
【0068】
特に、本発明のシリコーン剥離剤組成物からなる硬化層は、他の粘着層に対する軽剥離特性に優れるので、粘着層を含む積層体である工程紙、粘着物質包装紙、粘着テープ、粘着ラベル、保護シート、再剥離型密着シート、及び誘電体セラミック層成形材料用剥離フィルム(例えば、セラミックグリーンシート成形用剥離フィルム)等の積層体について離型層として使用することができる。具体的には、本発明のシリコーン剥離剤組成物を用いることにより、シート状基材の少なくとも一方の面に本発明のシリコーン剥離剤組成物を加熱硬化させてなる硬化層(離型層又は剥離層)を備えたシート状基材に、シート状基材の少なくとも一方の面に粘着剤層(又は接着層)を備えた粘着シートを、前記硬化層に前記粘着剤層が接するように、貼着されて構成された積層体を得ることができる。本発明のシリコーン剥離剤組成物からなる硬化層とは反対側のシート状基材の表面、或いはシート状基材と本発明のシリコーン剥離剤組成物からなる硬化層との間には、上述した帯電防止層のほか、その他の層を任意選択で設けてもよい。
【0069】
本発明の組成物からなる硬化層を備えた保護シート又は再剥離型密着シートは、金属板、塗装した金属板、アルミサッシ、樹脂板、化粧鋼板、塩化ビニルラミネート鋼板、又はガラス板等の部材を運搬、加工又は養生する際等に、それら部材表面に貼り付け保護する用途等に用いられる。また、各種の液晶表示パネル(モニター又はディスプレイともいう)の製造工程、偏光板の流通過程、自動車等の各種機械用の樹脂部材の製造工程及び流通過程、食品包装等において使用される保護シートとして好適に使用することができる。例えば、本発明の組成物からなる硬化層を有するシート状物品は、液晶パネル、プラズマディスプレイ、偏光板及び位相差板等の光学部品或いはプリント配線板、IC、トランジスタ、コンデンサ等の電気・電子部品の表面を保護するための表面保護フィルムとしても用いることができ、その場合には、本発明の組成物に公知の帯電防止剤を添加することが好ましい。
【0070】
同様に、シート状基材とその上に本発明のシリコーン剥離剤組成物を塗工して硬化させて得られる硬化層とを有するシート状物品は、誘電体セラミック層成形材料用剥離フィルム、特に、セラミックグリーンシート成形用剥離フィルムとして用いることができる。セラミックグリーンシートは、本発明のセラミックグリーンシート成形用剥離フィルムの上、すなわち硬化したポリオルガノシロキサン組成物の面の側にセラミックスラリーを塗工し、そのスラリーを乾燥させる工程を含む方法で作成することができる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例において、部はいずれも質量部を意味し、Meはメチル基を表し、Viはビニル基を表し、C
4F
9H
4はCH
2CH
2C
4F
9基を表す。また、合成例に示した各フロロシリコーンの構造は、
29Si−及び
13C−NMR(日本電子株式会社製 JNM−ECA500)を用いて同定した。
【0072】
実施例及び比較例における剥離剤組成物に用いたフロロシリコーンの合成は、以下の方法に従って行った。
【0073】
[合成例1]フロロシリコーン1の合成
反応器に(MeC
6F
9H
4SiO)
3を57.74部、(Me
2SiO)
4を42.03部、(Me
3SiO
1/2)
2を0.24部、及びトリフルオロメタンスルホン酸を0.017部加えて撹拌混合し、60℃で6時間重合した。重合後、混合物を40℃に冷却し、炭酸水素ナトリウムを5.6部加えて中和し、1時間撹拌を続けた。その後、撹拌を停止し、反応物を一晩放置して室温に冷却した。冷却した反応物を濾過してトリフルオロメタンスルホン酸と炭酸水素ナトリウムの中和塩を除去し、N
2フロー下、160℃、フルバキュームで2時間ストリッピングを行った。その結果、以下の平均分子式を有するフロロシリコーンを得た。
(Me
3SiO
1/2)
0.86(HOMe
2SiO
1/2)
1.14(MeC
6F
9H
4SiO)
374(Me
2SiO)
1053【0074】
[合成例2]フロロシリコーン2の合成
反応器に(MeC
6F
9H
4SiO)
3を50.69部、(Me
2SiO)
4を49.20部、(Me
3SiO
1/2)
2を0.11部、及びトリフルオロメタンスルホン酸を0.017部加えて撹拌混合し、60℃で6時間重合した。重合後、混合物を40℃に冷却し、炭酸水素ナトリウムを5.6部加えて中和し、1時間撹拌を続けた。その後、撹拌を停止し、反応物を一晩放置して室温に冷却した。冷却した反応物を濾過してトリフルオロメタンスルホン酸と炭酸水素ナトリウムの中和塩を除去し、N
2フロー下、160℃、フルバキュームで2時間ストリッピングを行った。その結果、以下の平均分子式を有するフロロシリコーンを得た。
(Me
3SiO
1/2)
1.25(HOMe
2SiO
1/2)
0.75(MeC
6F
9H
4SiO)
256(Me
2SiO)
992【0075】
[合成例3]フロロシリコーン3の合成
反応器に(MeC
6F
9H
4SiO)
3を63.79部、(Me
2SiO)
4を36.11部、(Me
3SiO
1/2)
2を0.09部、及びトリフルオロメタンスルホン酸を0.017部加えて撹拌混合し、60℃で6時間重合した。重合後、混合物を40℃に冷却し、炭酸水素ナトリウムを5.6部加えて中和し、1時間撹拌を続けた。その後、撹拌を停止し、反応物を一晩放置して室温に冷却した。冷却した反応物を濾過してトリフルオロメタンスルホン酸と炭酸水素ナトリウムの中和塩を除去し、N
2フロー下、160℃、フルバキュームで2時間ストリッピングを行った。その結果、以下の平均分子式を有するフロロシリコーンを得た。
(Me
3SiO
1/2)
1.27(HOMe
2SiO
1/2)
0.73(MeC
6F
9H
4SiO)
619(Me
2SiO)
1379【0076】
[合成例4]フロロシリコーン4の合成
反応器に(MeC
6F
9H
4SiO)
3を37.01部、(Me
2SiO)
4を62.86部、(Me
3SiO
1/2)
2を0.13部、及びトリフルオロメタンスルホン酸を0.017部加えて撹拌混合し、60℃で6時間重合した。重合後、混合物を40℃に冷却し、炭酸水素ナトリウムを5.6部加えて中和し、1時間撹拌を続けた。その後、撹拌を停止し、反応物を一晩放置して室温に冷却した。冷却した反応物を濾過してトリフルオロメタンスルホン酸と炭酸水素ナトリウムの中和塩を除去し、N
2フロー下、160℃、フルバキュームで2時間ストリッピングを行った。その結果、以下の平均分子式を有するフロロシリコーンを得た。
(Me
3SiO
1/2)
1.08(HOMe
2SiO
1/2)
0.92(MeC
6F
9H
4SiO)
210(Me
2SiO)
1326【0077】
[合成例5]フロロシリコーン5の合成
反応器に(MeC
6F
9H
4SiO)
3を57.74部、(Me
2SiO)
4を42.03部、(ViMe
2SiO
1/2)
2を0.24部、及びトリフルオロメタンスルホン酸を0.0017部加えて撹拌混合し、60℃で6時間重合した。重合後、混合物を40℃に冷却し、炭酸水素ナトリウムを5.6部加えて中和し、1時間撹拌を続けた。その後、撹拌を停止し、反応物を一晩放置して室温に冷却した。冷却した反応物を濾過してトリフルオロメタンスルホン酸と炭酸水素ナトリウムの中和塩を除去し、N
2フロー下、160℃、フルバキュームで2時間ストリッピングを行った。その結果、以下の平均分子式を有するフロロシリコーンを得た。
(ViMe
2SiO
1/2)
1.65(HOMe
2SiO
1/2)
0.35(MeC
6F
9H
4SiO)
146(Me
2SiO)
439【0078】
実施例及び比較例におけるシリコーン粘着剤の調製は、以下の方法に従って行った。
(シリコーン粘着剤調製)
東レ・ダウコーニング社製付加硬化型シリコーン粘着剤SD4580FC 100部にトルエン50部を加えて希釈し、更に、架橋剤として東レ・ダウコーニング社製 BY24−741 CROSSLINKER 1部、及び白金触媒として東レ・ダウコーニング社製NC−25 CATALYST 0.9部を添加して、十分攪拌した。
【0079】
実施例及び比較例における剥離力及び残留接着率の測定は以下の方法に従って行い、その結果を各剥離コントロール剤のフッ素原子含有有機基含有量と併せて、表1に示す。
【0080】
(剥離力の測定)
シリコーン剥離剤組成物をマイヤーバー#10を用いてポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの基材表面に塗工量が約1g/m
2になるように塗布し、150℃の熱風循環式オーブン中で40秒加熱して剥離シートを作成した。
続いて、この剥離シート上に、下記1〜3のいずれかの条件で粘着層を形成し、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムと貼り合わせて積層体を作成した。この積層体を2.5cm幅に切断して試験片を作成し、引っ張り試験機を用いて、シリコーン剥離剤組成物が塗布された方のフィルムを180°の角度で剥離速度0.3m/分で剥離して、剥離に要する力[gf/in]を測定した。
【0081】
(積層体サンプル作成条件1)
150℃の熱風循環式オーブンで40秒加熱して得られた剥離シートを、オーブンから取り出してから1日、室温でそのまま静置した。その後、剥離剤塗工面上に、粘着剤を硬化後の粘着剤の塗布厚が100μmになるように塗布した。室温で150秒静置した後、180℃のオーブン内で150秒硬化させた。得られた粘着シートをオーブンから取り出し、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに2kgfのハンドローラーで貼り合わせ、20g/cm
2の荷重下、室温で30分エージングした。
【0082】
(積層体サンプル作成条件2)
150℃の熱風循環式オーブンで40秒加熱して得られた剥離シートを、オーブンから取り出した後、剥離剤塗工面上に、粘着剤を硬化後の粘着剤の塗布厚が100μmになるように塗布した。室温で150秒静置した後、180℃のオーブン内で150秒硬化させた。得られた粘着シートをオーブンから取り出し、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに2kgfのハンドローラーで貼り合わせ、100kg/cm
2の荷重下、室温で1日エージングした。
【0083】
(積層体サンプル作成条件3)
150℃の熱風循環式オーブンで40秒加熱して得られた剥離シートを、オーブンから取り出した後、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムとハンドローラーを用いて重ね合わせ、100kg/cm
2の荷重下、室温で1日エージングした。その後、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを剥がし、剥離シートの剥離剤塗布面上に、粘着剤を硬化後の粘着剤の塗布厚が100μmになるように塗布した。室温で150秒静置した後、180℃のオーブン内で150秒硬化させた。得られた粘着シートをオーブンから取り出し、新たに別のポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに2kgfのハンドローラーで貼り合わせ、20g/cm
2の荷重下、室温で30分エージングした。
【0084】
(残留接着率)
上記評価用積層体サンプル作成条件1で作製し、上記剥離抵抗を測定した後の試験片を、鏡面ステンレス板に2kgのハンドローラーを用いて貼り付け、室温で30分静置した。次いで、その試験片を180°の角度で剥離速度0.3m/分の条件下で剥離して、剥離に要する力(F1)[gf/in]を測定した。
また、上記とは別に、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに、粘着剤を硬化後の粘着剤の塗布厚が100μmになるように塗布した。塗布物を室温で150秒静置した後、180℃のオーブン内で150秒硬化させた。その後、硬化物を室温で1日放置した後、2.5cm幅に切断して試験片を作製した。この試験片を鏡面ステンレス板に2kgのハンドローラーを用いて貼り付け、室温で30分静置した。次いで、その試験片を180°の角度で剥離速度0.3m/分の条件下で剥離して、剥離に要する力(F2)[gf/in]を測定した。残留接着率((F1)/(F2))×100[%]を求めた。
【0085】
[実施例1]シリコーン剥離剤組成物の調製
ダウ・コーニング社製の付加硬化型シリコーン粘着剤用剥離剤Q2−7785 RELEASE COATING(フッ素原子含有有機基と2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、微量の白金触媒、溶剤の混合物。固形分85%)11.76部にイソオクタン88.24部を加えて希釈し、更に架橋剤としてダウ・コーニング社製の7560 CROSSLINKER(トリメチルシロキシ末端を有するメチル(パーフロロブチルエチル)・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)を0.4部加えた。剥離コントロール剤として、合成例1で得られたフロロシリコーン1をイソオクタンで固形分が10%となるよう希釈したものを調製し、Q2−7785 RELEASE COATING11.76部に対して、フロロシリコーン1が0.5部となるように加えて混合し、シリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0086】
[実施例2]
剥離コントロール剤として、合成例2で得られたフロロシリコーン2をフロロシリコーン1の代わりに加えた以外は実施例1と同様の方法でシリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0087】
[実施例3]
剥離コントロール剤として、合成例1で得られたフロロシリコーン1を、Q2−7785 RELEASE COATING11.76部に対して、フロロシリコーン1が2.0部となるように加えた以外は実施例1と同様の方法でシリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0088】
[比較例1]
剥離コントロール剤として、合成例3で得られたフロロシリコーン3をフロロシリコーン1の代わりに加えた以外は実施例1と同様の方法でシリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0089】
[比較例2]
剥離コントロール剤として、合成例4で得られたフロロシリコーン4をフロロシリコーン1の代わりに加えた以外は実施例1と同様の方法でシリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0090】
[比較例3]
剥離コントロール剤として、合成例5で得られたフロロシリコーン5(ビニル基含有量0.04質量%)をフロロシリコーン1の代わりに加えた以外は実施例1と同様の方法でシリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0091】
[比較例4]
剥離コントロール剤として、以下の平均分子式:
(ViMe
2SiO
1/2)
1(Me
3SiO
1/2)
1(MeC
6F
9H
4SiO)
36.2(Me
2SiO)
108.6
を有するフロロシリコーン6(ビニル基含有量0.14質量%)をフロロシリコーン1の代わりに加えた以外は実施例1と同様の方法でシリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0092】
[比較例5]
剥離コントロール剤に相当する成分を添加しない以外は、実施例1と同様の方法でシリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0093】
表1:粘着剤に対する剥離力及び残留接着率
【表1】
(*1)剥離コントロール剤であるオルガノポリシロキサン中の全シロキサン単位のうち、フッ素原子含有有機基を有するシロキサン単位の割合(モル%)を示す。
(*2)Q2−7785 RELEASE COATING11.76部に対する剥離コントロール剤の添加部数である。Q2−7785は、固形分濃度が85%なので、固形分100質量部に換算すると、表中の添加量(0.5部、2.0部)は5.0部、20.0部に相当する。
【0094】
表1に示した結果より、剥離コントロール剤であるオルガノポリシロキサンのフッ素原子含有有機基の含有量が15〜29モル%の範囲内であり、アルケニル基及びケイ素原子結合水素原子を有しない(実施例1〜実施例3)場合では、オルガノポリシロキサンのフッ素原子含有有機基の含有量が前記範囲内にない(比較例1及び比較例2)場合に比して、条件1〜3のいずれにおいても、軽剥離を実現できた。一方、分子中に反応性のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを用いた場合(比較例3および比較例4)、フッ素原子含有有機基の含有量が15〜29モル%の範囲内であっても、軽剥離を実現できなかった。なお、比較例5は、剥離コントロール剤を含まない対照実験であり、本発明に係る剥離コントロール剤(実施例1〜実施例3)は、サンプル作成条件1〜3のいずれの場合においても、粘着剤に対する剥離力が顕著に低下していることが確認できた。