【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年12月14日第15回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2014)講演論文集にて公開。平成26年12月17日に東京ビックサイトで行われた第15回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会にて発表。
【文献】
関島律、島圭介、島谷康司,「立位姿勢制御機構における指先への体性感覚刺激が位置覚へ及ぼす影響の評価」,電子情報通信学会技術研究報告,2015年 2月26日,Vol.114,No.497,p.13-p.15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒトは、状況に応じて平衡感覚(視覚、前庭感覚および体性感覚)の重み付けを調整することにより立位姿勢を制御している。この重み付けの調整は、sensory reweightingとよばれる。
非特許文献1に開示された方法によれば、被検者のsensory reweightingが適切になされているかを評価することができる。他方、非特許文献1に開示された方法では、sensory reweightingの過渡状態を評価することができない。例えば、非特許文献1に開示された方法では、状況の変化に対する被検者の姿勢維持の適応能力を評価することができない。
本発明の目的は、sensory reweightingの過渡状態を評価するための指標値算出装置、指標値算出システム、指標値算出方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、指標値算出装置は、被検者の姿勢の変動に関する量である変動量を取得する変動量取得部と、前記被検者の
視覚、前庭感覚および体性感覚の少なくとも1つに関する刺激を受容する感覚器に与える前記刺激の
大きさの切り替えタイミングを取得するタイミング取得部と、前記
刺激の大きさの切り替えタイミングの前後における前記変動量の変化に基づいて前記被検者の平衡感覚に関する指標値を算出する指標値算出部とを備える。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に係る指標値算出装置は、前記刺激が、前記感覚器の変位に関する量に応じて触覚刺激を与える刺激装置によって与えられる触覚刺激である。
【0007】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様に係る指標値算出装置は、前記刺激が、前記感覚器が所定の物体に触れることで生じる触覚刺激である。
【0008】
本発明の第4の態様によれば、第1から第3の何れかの態様に係る指標値算出装置は、前記指標値算出部が、前記被検者の開眼時における前記
刺激の大きさの切り替えタイミングの前後の前記変動量の変化と、前記被検者の閉眼時における前記
刺激の大きさの切り替えタイミングの前後の前記変動量の変化とに基づいて前記指標値を算出する。
【0009】
本発明の第5の態様によれば、指標値算出システムは、前記感覚器の変位に関する量に応じて前記感覚器に触覚刺激を与える刺激装置と、第1から第3の何れかの態様に係る指標値算出装置とを備え、前記タイミング取得部が、前記刺激装置が与える触覚刺激の
大きさの切り替えタイミングを取得する。
【0010】
本発明の第6の態様によれば、指標値算出方法は、被検者の姿勢の変動に関する量である変動量を取得するステップと、前記被検者の
視覚、前庭感覚および体性感覚の少なくとも1つに関する刺激を受容する感覚器に与える前記刺激の
大きさを切り替えるステップと、前記
刺激の大きさの切り替わり前後における前記変動量の変化に基づいて前記被検者の平衡感覚に関する指標値を算出するステップとを有する。
【0011】
本発明の第7の態様によれば、プログラムは、コンピュータを、被検者の姿勢の変動に関する量である変動量を取得する変動量取得部、前記被検者の
視覚、前庭感覚および体性感覚の少なくとも1つに関する刺激を受容する感覚器に与える前記刺激の
大きさの切り替えタイミングを取得するタイミング取得部、前記
刺激の大きさの切り替えタイミングの前後における前記変動量の変化に基づいて前記被検者の平衡感覚に関する指標値を算出する指標値算出部として機能させる。
【発明の効果】
【0012】
上記態様のうち少なくとも1つの態様によれば、指標値算出装置は、感覚器に与える刺激の発生条件の切り替え前後における変動量に基づいて指標値を算出する。これにより評価者は、当該指標値を用いて被検者のsensory reweightingの過渡状態を評価することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、一実施形態に係る指標値算出システムの概略図である。
本実施形態に係る指標値算出システム1は、VLTC(Virtual Light Touch Contact)に係る条件の切り替えにより、sensory reweightingの過渡状態を評価に用いる指標値を算出する。なお、sensory reweightingの過渡状態を評価に用いる指標値とは、被検者の平衡感覚に関する指標値の一例である。VLTCとは、被検者の指先に刺激を与えてLTCを実現することで、被検者の体性感覚を刺激する技術である。被検者の指先は、体性感覚に関する刺激を受容する感覚器の一例である。
指標値算出システム1は、VLTC生成システム10、フォースプレート20、指標値算出装置30を備える。
【0015】
VLTC生成システム10は、被検者にVLTCに係る刺激を与えるシステムである。
フォースプレート20は、自装置に乗った被検者のCOP(center of pressure:足圧中心)を検出するセンサである。COPは、重心位置を示す情報の一例である。
指標値算出装置30は、被検者がVLTC生成システム10により刺激を与えられている所定の計測時間の間にフォースプレート20が検出した重心位置の変動に基づいて、被検者のsensory reweightingの過渡状態を評価に用いる指標値を算出する。具体的には、指標値算出装置30は、VLTC生成システム10により与えられる刺激の発生条件の切り替えタイミングより前の重心位置の変動と当該切り替えタイミングより後の重心位置の変動との比を、指標値として算出する。
【0016】
VLTC生成システム10は、刺激装置100、モーションキャプチャ装置200、計算装置300、増幅器400を備える。
【0017】
刺激装置100は、被検者の指先に装着可能な筐体110と、筐体110に設けられた振動子120とを備える。本実施形態における振動子120は、振動することにより被検者の指先に対して刺激を与える。
【0018】
モーションキャプチャ装置200は、被検者を撮像した画像を解析し、筐体110の位置を算出して位置情報を計算装置300に出力する。当該位置情報は、空間上の所定の位置を原点とした3次元の絶対座標系の値である。なお、モーションキャプチャ装置200は、筐体110に付与されたマーカーを検出することで筐体110の位置を算出しても良いし、筐体110をマーカーとして認識することで筐体110の位置を算出しても良い。
【0019】
計算装置300は、モーションキャプチャ装置200から取得する位置情報に基づいて、被検者の体幹から筐体110までの距離ならびに筐体110の速度および加速度を算出する。計算装置300は、算出結果に基づいて刺激装置100の振動子120を振動させる信号を生成する。
【0020】
増幅器400は、計算装置300が生成した信号を増幅して振動子120に出力する。振動子120は、増幅器400が出力する信号により振動する。
【0021】
ここで、振動子120の振動強度の算出方法について説明する。
図2は、一実施形態に係る振動子の振動強度の算出方法を示す図である。
本実施形態に係るVLTC生成システム10は、
図2(A)に示すように、被検者の体幹を中心にインピーダンス特性を有する中空球状の仮想壁である仮想球が配置されていると仮定して、筐体110が当該仮想壁に侵入したときに生じる反力に相当する強度で振動子120を振動させる。これにより、VLTC生成システム10は、仮想的な壁に対するLTCを被検者に提示することができる。
【0022】
本実施形態では、
図2(B)に示すモデルに基づき、筐体110が当該仮想壁に侵入したときに生じる反力F
o(t)を、式(1)に基づいて計算する。
【0024】
ここで、dX
o(t)は、時刻tにおける被検者の体幹を中心とした仮想球の内壁から筐体110への法線ベクトルを示す。法線ベクトルは、仮想球の内壁と筐体110との間の距離と方向を示すものである。つまり、dX
o(t)の1階微分であるdX
o′(t)は、時刻tにおける筐体110の速度を示し、dX
o(t)の2階微分であるdX
o″(t)は、時刻tにおける筐体110の加速度を示す。なお、法線ベクトルdX
o(t)、速度dX
o′(t)、および加速度dX
o″(t)は、筐体110を取り付けた被験者の指先の変位に関する量の一例である。また、M
oは、仮想慣性を示す定数である。また、B
oは、仮想粘性を示す定数である。また、K
oは、仮想剛性を示す定数である。
【0025】
図3は、一実施形態に係るVLTC生成システムの計算装置の構成を示す概略ブロック図である。
計算装置300は、位置受信部301、体幹位置記憶部302、ベクトル算出部303、ベクトル記憶部304、速度算出部305、加速度算出部306、条件記憶部307、タイミング決定部308、タイミング通知部309、条件変更部310、強度算出部311、信号出力部312を備える。
【0026】
位置受信部301は、モーションキャプチャ装置200から筐体110の位置情報を逐次受信する。
体幹位置記憶部302は、被検者の体幹の位置情報を記憶する。
ベクトル算出部303は、体幹位置記憶部302が記憶する位置情報が示す位置と位置受信部301が受信した最新の位置情報が示す位置とを用いて、式(2)に基づいて被検者の体幹を中心とした仮想球の内壁から筐体110への法線ベクトルdX
o(t)を算出し、ベクトル記憶部304に記録する。
【0028】
ここで、X(t)は、体幹位置記憶部302が記憶する位置情報が示す位置から位置受信部301が受信した最新の位置情報が示す位置へ向かうベクトルである。また、rは仮想球の内壁の半径である。
【0029】
ベクトル記憶部304は、ベクトル算出部303が算出した法線ベクトルを時系列に記憶する。
速度算出部305は、ベクトル記憶部304が記憶する最新の所定数の法線ベクトルを微分することで筐体110の速度を算出する。
加速度算出部306は、ベクトル記憶部304が記憶する最新の所定数の法線ベクトルを2階微分することで、筐体110の加速度を算出する。
【0030】
条件記憶部307は、刺激の発生条件として、式(1)の各定数を記憶する。
タイミング決定部308は、刺激の発生条件の切り替えタイミングを決定する。具体的には、タイミング決定部308は、乱数を用いて、2つの連続する切り替えタイミング間の時間が、指標値算出装置30による指標値の算出に用いられるサンプリング時間より長くなるように所定数(例えば、3つ)の切り替えタイミングを決定する。
タイミング通知部309は、タイミング決定部308が決定した切り替えタイミングを指標値算出装置30に通知する。
条件変更部310は、タイミング決定部308が決定した切り替えタイミングに、条件記憶部307が記憶する各定数を書き換える。具体的には、条件変更部310は、条件記憶部307が記憶する各定数が初期値である場合、条件変更部310は、各定数を0に書き換える。他方、条件変更部310は、条件記憶部307が記憶する各定数が0である場合、条件変更部310は、各定数を初期値に書き換える。つまり、本実施形態における刺激の発生条件の切り替えは、VLTCの提示の有無の切り替えである。
【0031】
強度算出部311は、ベクトル算出部303、速度算出部305および加速度算出部306の算出結果、ならびに条件記憶部307が記憶する定数を用いて、上述した式(1)に基づいて振動子120の振動強度を算出する。
信号出力部312は、強度算出部311が算出した強度を示す信号を増幅器400に出力する。
【0032】
図4は、一実施形態に係る指標値算出装置の構成を示す概略ブロック図である。
指標値算出装置30は、開始指示部31、重心位置取得部32、重心位置記録部33、重心位置記憶部34、タイミング取得部35、変動量取得部36、指標値算出部37、提示部38を備える。
開始指示部31は、VLTC生成システム10に刺激の付与の開始を指示する。
重心位置取得部32は、フォースプレート20から被検者の重心位置を示すCOPを逐次取得する。
重心位置記録部33は、重心位置取得部32が取得したCOPを重心位置記憶部34に記録する。
重心位置記憶部34は、被検者のCOPを時系列に記憶する。
【0033】
タイミング取得部35は、VLTC生成システム10から被検者に与える刺激の発生条件の切り替えタイミングの通知を取得する。
変動量取得部36は、タイミング取得部35が取得した切り替えタイミングの前の所定のサンプリング時間におけるCOPを重心位置記憶部34から取得し、COPの変動に基づいて切り替えタイミングの前のCOPの変動量を算出する。変動量取得部36は、タイミング取得部35が取得した切り替えタイミングの後の所定のサンプリング時間におけるCOPを取得し、COPの変動に基づいて切り替えタイミングの後のCOPの変動量を算出する。COPの変動量の例としては、サンプリング時間におけるすべてのCOPを内包する最小の矩形の面積や、サンプリング時間にCOPが描く軌跡の長さなどが挙げられる。
指標値算出部37は、変動量取得部36が取得したCOPの変動量の比を、指標値として算出する。
提示部38は、被検者に対する指示および指標値算出部37が算出した指標値を提示する。
【0034】
次に、本実施形態に係る指標値算出システム1による指標値の提示方法を説明する。
図5は、一実施形態に係る指標値算出装置の動作を示すフローチャートである。
指標値算出装置30が起動すると、提示部38は、被検者に対し、開眼でフォースプレート20上に起立する指示を提示する(ステップS1)。次に、指標値算出装置30は、被検者の開眼時における指標値の算出処理を行う(ステップS2)。なお指標値の算出処理の詳細は、後述する。指標値算出装置30が開眼時における指標値を算出すると、提示部38は、被検者に対し、閉眼でフォースプレート20上に起立する指示を提示する(ステップS3)。次に、指標値算出装置30は、被検者の閉眼時における指標値の算出処理を行う(ステップS4)。指標値算出装置30が閉眼時における指標値を算出すると、提示部38は、開眼時および閉眼時の指標値を提示する(ステップS5)。
評価者は、指標値算出装置30が提示した指標値を参照することで、被検者のsensory reweightingの過渡状態を適切に評価することができる。
【0035】
次に、指標値算出装置30による指標値の算出処理について詳述する。
図6は、一実施形態に係る指標値の算出処理の動作を示すフローチャートである。
指標値算出装置30がステップS2またはステップS4にて指標値の算出処理を開始すると、開始指示部31は、VLTC生成システム10に刺激の付与の開始を指示する(ステップS101)。VLTC生成システム10が刺激の付与を開始すると、指標値算出装置30は、所定の計測時間の間、以下に示すステップS102およびステップS103の処理を繰り返し実行する。すなわち、計測時間の間、重心位置取得部32は、フォースプレート20から被検者のCOPを取得し(ステップS102)、重心位置記録部33は、重心位置取得部32が取得したCOPを重心位置記憶部34に記録する(ステップS103)。
【0036】
計測時間が終了すると、タイミング取得部35は、VLTC生成システム10から切り替えタイミングの通知を取得する(ステップS104)。次に、変動量取得部36は、各切り替えタイミングの前後それぞれにおける所定のサンプリング時間の間のCOPの変動量を算出する(ステップS105)。例えば、切り替えタイミングが時刻Tであり、サンプリング時間がN秒である場合、変動量取得部36は、時刻T−Nから時刻TまでのCOPの変動量と、時刻Tから時刻T+NまでのCOPの変動量とを算出する。
【0037】
次に、指標値算出部37は、各切り替えタイミングについて、当該切り替えタイミングの前後のCOPの変動量の比を算出する(ステップS106)。次に、指標値算出部37は、VLTCの提示がある状態からVLTCの提示がない状態に変化する切り替えタイミングにおける変動量の比の平均値を、非提示状態への切替時の指標値として算出する(ステップS107)。また指標値算出部37は、VLTCの提示がない状態からVLTCの提示がある状態に変化する切り替えタイミングにおける変動量の比の平均値を、提示状態への切替時の指標値として算出する(ステップS108)。なお、指標値算出部37は、健常者の平均的な指標値の平均値を用いて、ステップS107およびステップS108で得られた指標値を正規化しても良い。
上述した処理により、指標値算出装置30は、被検者のsensory reweightingの過渡状態を評価に用いる指標値を算出することができる。
【0038】
次に、指標値算出装置30から刺激の付与の開始指示を受け付けたときのVLTC生成システム10の動作について説明する。
図7は、一実施形態に係るVLTC生成システムの動作を示すフローチャートである。
まず、計算装置300が指標値算出装置30から刺激の付与の開始指示を受け付けると、タイミング決定部308は、乱数を用いて、2つの連続する切り替えタイミング間の時間がサンプリング時間より長くなるように所定数の切り替えタイミングを決定する(ステップS201)。計測時間が60秒であり、サンプリング時間が5秒であり、切り替えタイミングの数が3つである場合、タイミング決定部308は、例えば、14秒目、22秒目および38秒目を切り替えタイミングに決定する。
【0039】
次に、位置受信部301は、モーションキャプチャ装置200から新たな位置情報を受信する(ステップS202)。次に、ベクトル算出部303は、体幹位置記憶部302が記憶する位置情報が示す位置から、位置受信部301が受信した位置情報が示す位置へ向かうベクトルを算出する(ステップS203)。次に、ベクトル算出部303は、上記式(2)に基づいて被検者の体幹を中心とした仮想球の内壁から筐体110へ向かう法線ベクトルを算出する(ステップS204)。
【0040】
次に、ベクトル算出部303は、算出した法線ベクトルをベクトル記憶部304に記録する(ステップS205)。次に、速度算出部305は、ベクトル記憶部304が記憶する最新の所定数の法線ベクトルについて微分フィルタを掛けることにより、筐体110の速度を示すベクトルを算出する(ステップS206)。また、加速度算出部306は、ベクトル記憶部304が記憶する最新の所定数の法線ベクトルについて微分フィルタを2回掛けることにより、筐体110の加速度を示すベクトルを算出する(ステップS207)。
【0041】
次に、強度算出部311は、ベクトル算出部303が算出した法線ベクトルの方向が、被検者の体幹から離間する方向であるか否かを判定する(ステップS208)。強度算出部311は、法線ベクトルの方向が被検者の体幹に対向する方向であると判定した場合(ステップS208:NO)、筐体110が仮想球の内壁に達していないため、振動子120の振動の強度を0とする(ステップS209)。
【0042】
他方、強度算出部311は、法線ベクトルの方向が被検者の体幹から離間する方向であると判定した場合(ステップS208:YES)、式(1)に基づいて振動子120の振動の強度を算出する(ステップS210)。
【0043】
そして、信号出力部312は、強度算出部311がステップS209またはステップS210で算出した強度を示す信号を、増幅器400を介して刺激装置100に出力する(ステップS211)。これにより、刺激装置100の振動子120は、仮想球の内壁に接触したときの反力に応じた振動刺激を被検者に与えることができる。なお、条件記憶部307が記憶する各定数がいずれも0である場合、ステップS210で算出される振動の強度は0となる。つまり、条件記憶部307が記憶する各定数がいずれも0である場合、VLTC生成システム10は被検者にVLTCを提示しない。
【0044】
次に、条件変更部310は、現在時刻がタイミング決定部308が決定した切り替えタイミングに達しているか否かを判定する(ステップS212)。現在時刻が切り替えタイミングである場合(ステップS212:YES)、条件変更部310は、条件記憶部307が記憶する定数が初期値であるか否かを判定する(ステップS213)。条件記憶部307が記憶する定数が初期値である場合(ステップS213:YES)、条件変更部310は、当該定数を0に書き換える(ステップS214)。他方、条件記憶部307が記憶する定数が0である場合(ステップS213:NO)、条件変更部310は、当該定数を初期値に書き換える(ステップS215)。
【0045】
現在時刻が切り替えタイミングでない場合(ステップS212:NO)、またはステップS214もしくはステップS215で条件変更部310が定数を書き換えた場合、計算装置300は、処理の開始時刻からの経過時間が所定の計測時間に達したか否かを判定する(ステップS216)。経過時間が計測時間に達していない場合(ステップS216:NO)、計算装置300は、処理をステップS202に戻り、処理を継続する。他方、経過時間が計測時間に達した場合(ステップS216:YES)、タイミング通知部309は、タイミング決定部308が決定した切り替えタイミングを、指標値算出装置30に通知し(ステップS217)、処理を終了する。
上述した処理により、VLTC生成システム10は、切り替えタイミングごとにVLTCの提示の有無を切り替えることができる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、指標値算出装置30は、VLTCの提示の有無の切り替え前後におけるCOPの変動量の比を、指標値として算出する。これにより、評価者は、当該指標値と健常者の平均的な指標値とを比較することで、被検者のsensory reweightingの過渡状態を適切に評価することができる。なお、当該指標値が健常者の平均的な指標値の平均値により正規化されているならば、評価者は正規化された指標値と1より大きい値である所定の閾値とを比較することで、被検者のsensory reweightingの過渡状態を適切に評価することができる。
また、本実施形態によれば、指標値算出装置30は、VLTCに係る刺激の発生条件の切り替えタイミングに基づいて指標値を算出する。これにより、指標値算出装置30は、VLTCの刺激の大きさを決定する式(1)の各定数の値を切り替えることで、容易に体性感覚への刺激の発生条件を切り替えることができる。
また、本実施形態によれば、指標値算出装置30は、開眼時と閉眼時の指標値を併せて提示する。これにより、評価者は、被検者の立位について総合的に評価することができる。
【0047】
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本実施形態に係る指標値算出システム1は、刺激の発生条件の切り替えとして、VLTCの提示の有無を切り替えるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る指標値算出システム1は、式(1)の定数を他の値に変更すること、仮想球の半径を変更すること、法線ベクトルの向きを逆転させることなどによって、発生条件を切り替えても良い。
【0048】
また、本実施形態に係るVLTC生成システム10は、モーションキャプチャ装置200が検出した刺激装置100の位置情報に基づいて刺激装置100と体幹との距離を検出するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係るVLTC生成システム10は、被検者の体幹と刺激装置100とにそれぞれ通信機を設け、当該通信機の送受信電力比に基づいて刺激装置100と体幹との距離を検出しても良い。
【0049】
また、本実施形態に係る指標値算出システム1は、被検者にVLTCに係る刺激を与えるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る指標値算出システム1は、被検者に物理的なLTCに係る刺激を与えても良い。つまり、指標値算出装置30は、感覚器が所定の物体に触れることで生じる触覚刺激を用いることで、体性感覚への刺激の発生条件を切り替えによるsensory reweightingの過渡状態を評価するための指標値を算出することができる。なお、LTCに係る刺激を与える場合、評価者は、切り替えタイミングにおいて、被検者が触れる対象物を触れることのできない位置に移動させる必要がある。
また、他の実施形態に係る指標値算出システム1は、VLTCおよびLTC以外の方法で他の受容器への刺激の発生条件を切り替えても良い。例えば、他の実施形態に係る指標値算出システム1は、VLTC生成システム10に代えて、被検者の両側乳様突起や隆椎への電気刺激を与える装置を用いても良い。また、他の実施形態に係る指標値算出システム1は、VLTC生成システム10に代えて、被検者のアキレス腱への振動刺激を与える装置を用いても良い。
【0050】
また、他の実施形態に係る指標値算出システム1は、体性感覚以外の平衡感覚への刺激の発生条件を切り替えるものであっても良い。例えば、他の実施形態に係る指標値算出システム1は、被検者の視界の遮断の有無を切り替えることで、視覚への刺激の発生条件を切り替えても良い。また例えば、他の実施形態に係る指標値算出システム1は、被検者の三半規管への電気刺激の有無を切り替えることで、前庭感覚への刺激の発生条件を切り替えても良い。つまり、被検者の目は、視覚に関する刺激を受容する感覚器である。また、被検者の三半規管は、前庭感覚に関する刺激を受容する感覚器である。
【0051】
また、本実施形態に係る指標値算出システム1においては、VLTC生成システム10が決定した切り替えタイミングを指標値算出装置30に通知することで、タイミング取得部35が切り替えタイミングを取得するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係るVLTC生成システム10が刺激の発生条件を切り替える度に発する切り替えの通知の受信時刻に基づいて、タイミング取得部35が切り替えタイミングを特定しても良い。また他の実施形態では、タイミング取得部35が切り替えタイミングを決定し、当該切り替えタイミングをVLTC生成システム10に通知しても良い。
【0052】
また、本実施形態では、計算装置300と指標値算出装置30とを別の装置として設けるが、これに限られない。例えば他の実施形態に係る指標値算出システム1は、計算装置300および指標値算出装置30に代えて、計算装置300の機能と指標値算出装置30の機能とを両方備える1つの装置を備えても良い。
【0053】
また、本実施形態に係る指標値算出装置30は、重心位置の情報としてフォースプレート20が検出するCOPを用いるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る指標値算出装置30は、重心位置の情報としてCOM(center of mass:体重心)を用いても良い。なお、COMは、モーションキャプチャ装置200が被検者の姿勢を検出することにより特定されることができる。
【0054】
また、本実施形態では、変動量取得部36が重心位置記憶部34に記録されたCOPに基づいて変動量を算出するが、これに限られない。例えば、他の実施形態では、フォースプレート20が変動量を算出し、変動量取得部36がフォースプレート20によって算出された変動量を取得しても良い。
【0055】
図8は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、CPU91、主記憶装置92、補助記憶装置93、インタフェース94を備える。
上述の指標値算出装置30および計算装置300は、それぞれコンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置93に記憶されている。CPU91は、プログラムを補助記憶装置93から読み出して主記憶装置92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置92に確保する。
【0056】
なお、少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置93は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェース94を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムを主記憶装置92に展開し、上記処理を実行しても良い。
【0057】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置93に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。