(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569172
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】固形粉末化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20190826BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20190826BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20190826BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20190826BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20190826BHJP
A61Q 1/08 20060101ALI20190826BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/25
A61K8/31
A61K8/37
A61Q1/10
A61Q1/08
A61Q1/12
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-937(P2015-937)
(22)【出願日】2015年1月6日
(65)【公開番号】特開2016-124839(P2016-124839A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 久美子
(72)【発明者】
【氏名】森地 恵理子
【審査官】
田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−174003(JP,A)
【文献】
特開2013−209308(JP,A)
【文献】
特開2005−306847(JP,A)
【文献】
特開平06−087720(JP,A)
【文献】
特開2005−289975(JP,A)
【文献】
特開2004−217567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c)を含有することを特徴とする固形粉末化粧料。
(a)酸化鉄40重量%以上(但し、パール顔料の被覆に用いられる酸化鉄は除く)
(b)粘土鉱物が有する葉片形態を保持し、含水二酸化ケイ素が極薄片状に積み重なった非晶質板状シリカ
(c)30℃における動粘度が10,000mm2/s以上の炭化水素油及び/又は25℃においてペースト状である油性成分から選ばれる1種又は2種以上
【請求項2】
前記成分(a)を50重量%以上含有することを特徴とする請求項1記載の固形粉末化粧料。
【請求項3】
前記成分(b)を2〜20重量%含有することを特徴とする請求項1又は2記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】
前記成分(c)を1〜10重量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の固形粉末化粧料。
【請求項5】
前記成分(c)の炭化水素油として重質流動イソパラフィン及びポリブテンの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の固形粉末化粧料。
【請求項6】
前記成分(c)のペースト状である油性成分としてワセリン及びヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の固形粉末化粧料。
【請求項7】
前記固形粉末化粧料がアイブロウ、アイシャドウ、アイライナー及び頬紅である請求項1〜6のいずれか1項記載の固形粉末化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、固形粉末化粧料に関するものであり、さらに詳しくは、塗布時の彩度・発色が高く、のびのなめらかな使用感を付与し、耐衝撃性に優れ、使用時にケーキングが起こらない固形粉末化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から固形粉末化粧料としては、例えばアイシャドウやファンデーション等が知られている。固形粉末化粧料は主に色材を含む粉体や油剤で構成されており、様々な使用感や機能性の効果を得るために、これらの成分の種類や配合量の検討がなされている。その検討の中で、特にメイクアップ化粧料においては、塗布時の彩度・発色が高いこと、のびのなめらかさが重要である。また、携帯性がよいコンパクト容器に装着する化粧料であるため耐衝撃性にも優れる必要があるが、耐衝撃性を高めるために固形粉末化粧料の硬度を上げると使用時に化粧料の表面でケーキングが生じ易くなることが一般に知られている。そのため、耐衝撃性に優れ、なおかつ使用時にケーキングが起こらないことも重要な品質として求められている。
【0003】
そこでこれまでは、塗布部位に高い彩度を付与するために、着色された、屈折率の異なる2種以上の高分子化合物を含む干渉繊維を配合した技術(特許文献1)、耐衝撃性に優れた固形粉末化粧料にするために、化粧料基材と薄片状シリカ分散液を混合した技術(特許文献2)が知られている。
【0004】
しかしながら、上記記載の方法でも、使用感と機能性の両立は難しく、いまだに満足のいく固形粉末化粧料を得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−314389号公報
【特許文献2】特開2005−289975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、塗布時の彩度・発色が高く、のびのなめらかな使用感を付与し、耐衝撃性に優れ、使用時にケーキングが起こらない固形粉末化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本願発明者らは、鋭意研究を行った結果、下記成分(a)〜(c)を含有することによって、塗布時の彩度・発色が高く、のびのなめらかな使用感を付与し、耐衝撃性に優れ、使用時にケーキングが起こらない固形粉末化粧料を提供することができることを見出した。すなわち本願発明は、次の成分(a)〜(c)を含有することを特徴とする固形粉末化粧料である。(a)酸化鉄40重量%以上、(b)非晶質板状シリカ、(c)30℃における動粘度が10,000mm
2/s以上の炭化水素油及び/又は25℃においてペースト状である油性成分から選ばれる1種又は2種以上。
【0008】
以下、本願発明について記述する。
【0009】
本願発明においては、酸化鉄及び非晶質板状シリカを含む粉体を均一に混合した混合粉体物に、油性成分を加えて均一に混合し、金皿にプレスすることにより、固形粉末化粧料を構成する。また、混合粉体物と油性成分とを揮発性溶媒又は水に添加してスラリー化し、スラリーの状態で金皿に充填した後、真空吸引などで溶媒を除去しながらプレスし、乾燥させることにより、固形粉末化粧料を構成しても良い。
【0010】
本願発明の前記成分(a)である酸化鉄は、本願発明において固形粉末化粧料の色材として含有されており、塗布時に高い彩度・発色の効果を有する。
【0011】
本願発明の前記成分(a)である酸化鉄は、酸化鉄であれば特に限定されないが、黒酸化鉄、黄酸化鉄、赤酸化鉄等を用いることができる。また、これらは必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。さらには、シリコーン等で表面処理されていても良い。
【0012】
本願発明の前記成分(a)である酸化鉄の含有量は、特に限定されないが、塗布時に高い彩度・発色の効果を有する点で40重量%以上であり、好ましくは50〜70重量%である。前記成分(a)が40重量%未満では塗布時の彩度・発色が低くなり、また、70重量%を超えるとケーキングを生じる場合もある。
【0013】
本願発明の前記成分(b)である非晶質板状シリカは、本願発明において塗布時に酸化鉄の高い彩度・発色を保ったまま、のびのなめらかさを付与し、また耐衝撃性及び使用時のケーキングを防ぐ効果を有する。
【0014】
本願発明の前記成分(b)である非晶質板状シリカは、葉片状(薄片状)の非晶質含水二酸化ケイ素である。その中でも粘土鉱物を強度に酸処理することにより、粘土鉱物が有する葉片形態を保持したままシリカ成分を純粋に抽出した非晶質板状シリカが好ましく、さらには、含水二酸化ケイ素が極薄片状に積み重なり、厚さ0.5μm以下、面方向4〜30μmの葉片状の非晶質板状シリカが最も好ましい。
【0015】
本願発明の前記成分(b)である非晶質板状シリカは通常化粧料に使用されるものであればいずれのものも使用することができる。市販品としては、例えば、シルリーフ(水澤化学工業社製)等が例示できる。
【0016】
本願発明の前記成分(b)である非晶質板状シリカの含有量は、特に限定されないが、のびのなめらかさを付与し、耐衝撃性及びケーキングの無い効果を有する点で2〜20重量%が好ましい。より好ましくは5〜15重量%であり、さらに好ましくは8〜12重量%の範囲である。また、前記成分(b)が2重量%未満ではのびのなめらかさが低下する場合やケーキングが生じる場合がある。また、20重量%を超えるとのびのなめらかさが低下する場合や耐衝撃性が低下する場合がある。
【0017】
本願発明の前記成分(c)である30℃における動粘度が10,000mm
2/s以上の炭化水素油及び/又は25℃においてペースト状である油性成分の少なくとも1種は、のびのなめらかさを付与し、また耐衝撃性に優れた効果を発揮させるために用いる。
【0018】
30℃における動粘度が10,000mm
2/s以上の炭化水素油としては、特に限定されないが、重質流動イソパラフィン又はポリブテン等を用いることができる。また、これらは必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
【0019】
前述の重質流動イソパラフィン又はポリブテンとは、イソブテンとn−ブテンを共重合した後、水素添加して得られる側鎖を有する炭化水素油の混合物である。
【0020】
具体的には、市販品として、例えば、パールリーム18、パールリーム24、パールリーム46(日本油脂社製)等が例示できる。その中でも特に、パールリーム18、パールリーム24が好ましい。また、これらを必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
【0021】
25℃でペースト状である油性成分とは、25℃で高い粘性を示す半固形の油性成分であり、医薬部外品原料規格2006(薬事日報社刊)記載の、一般試験法、融点測定法(第2法)によって、融点が25℃よりも高いと測定された油性成分をさす。
【0022】
本願発明の前記成分(c)中の25℃においてペースト状である油性成分としては通常化粧料に使用されるものであればいずれのものも使用することができる。中でもワセリン、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)が好ましく、その中でも特にワセリン、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルが特に好ましい。市販品としては、例えば、クロラータムV(クローダジャパン社製)、YOFCOMAS(日本精化社製)、コスモール168ARV(日清オイリオ社製)、Plandool−H(日本精化社製)、ノムコートW(日清オイリオ社製)、等が例示できる。また、これらは必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
本願発明の前記成分(c)である30℃における動粘度が10,000mm
2/s以上の炭化水素油及び/又は25℃においてペースト状である油性成分の少なくとも1種の含有量は、特に限定されないが、のびのなめらかさを付与する点で1〜10重量%が好ましい。より好ましくは2〜8重量%であり、さらに好ましくは4〜6重量%の範囲である。1重量%未満の含有量では耐衝撃性が低下する場合がある。一方、10重量%を超えると、のびのなめらかさが低下する場合やケーキングが起こる場合がある。
【0024】
本願発明の固形粉末化粧料は、上記成分の他、本願発明の効果を損なわない範囲で、化粧料一般に使用される成分を含有することができる。例えば、体質粉体、有機色材、無機色材等の粉体、炭化水素油、高級アルコール、高級脂肪酸等の油剤、界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、抗酸化剤、水溶性紫外線吸収剤、キレート剤、防腐剤、香料、ビタミン類、植物抽出液、無機塩等を用いることができ、これらは1種又は2種以上含有してもよい。
【0025】
本願発明の固形粉末化粧料としては、ファンデーション、アイブロウ、アイシャドウ、アイライナー、頬紅、ボディパウダー等が挙げられる。この中でも、アイブロウ、アイシャドウ、アイライナー、頬紅等のポイントメイクアップ製品が、本願発明の効果がより発揮しやすい化粧料である。
【発明の効果】
【0026】
本願発明は、塗布時の彩度・発色が高く、のびのなめらかな使用感を付与し、耐衝撃性に優れ、使用時にケーキングが起こらない固形粉末化粧料を提供できることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、実施例をあげて、本願発明をより詳細に説明するが、本願発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
(製造例1〜27)アイライナー
本願発明の固形粉末化粧料を以下の実施例1〜3の製造例1〜27を用いて説明する。本願発明のアイライナーを実際に人の顔に塗布した際の彩度・発色、のびのなめらかさ、耐衝撃性及びケーキングの無さについて検討するため、各実施例に対応する表1〜3に示す処方及び下記製法により、アイライナーを調製し、以下に示す評価方法及び判定基準により評価し、その結果も併せて表1〜3に示した。
【0029】
(塗布時の彩度・発色の評価)
製造例、比較例に示した固形粉末化粧料を専門評価者20名に使用させ、塗布時の彩度・発色について目視観察し、以下の評価基準に従って判定した。
<評価基準>
◎:15名以上が彩度・発色が高いと評価した。
○:10〜14名が彩度・発色が高いと評価した。
△:5〜9名が彩度・発色が高いと評価した。
×:4名以下が彩度・発色が高いと評価した。
【0030】
(肌へののびのなめらかさの評価)
製造例、比較例に示した固形粉末化粧料を専門評価者20名に使用させ、肌へののびのなめらかさについて官能評価し、以下の評価基準に従って判定した。
<評価基準>
◎:15名以上がのびのなめらかさがあると評価した。
○:10〜14名がのびのなめらかさがあると評価した。
△:5〜9名がのびのなめらかさがあると評価した。
×:4名以下がのびのなめらかさがあると評価した。
【0031】
(耐衝撃性の評価)
製造例、比較例に示した固形粉末化粧料を各5枚について、50cmの高さから塩ビ板上に水平に落下させた。これをひびや割れが生じるまで繰り返し、ひびや割れが生じるまでの落下回数について5枚で平均をとり、以下の判定基準に従って判定した。
<評価基準>
◎:4回以上
○:2以上4回未満
△:1以上2回未満
×:1回未満
【0032】
(ケーキングの無さの評価)
製造例、比較例に示した固形粉末化粧料を、ウレタン製化粧塗布用チップにて、同一方向に50回繰り返し擦り取り、ケーキ表面を目視観察し、油性成分の固まり様(ケーキング)が無い効果を以下に示す判定基準に従って判定した。
<評価基準>
◎:ケーキングが見られない。
○:ケーキングが見られるが使用性に問題なし。
×:ケーキングが見られ使用性に問題がある。
【実施例1】
【0033】
実施例1として表1に示す製造例1〜9及び比較例1により、アイライナーを下記製法にて調製し、前記の使用試験方法、評価項目及び評価基準に基づいて評価した。なお、表中※印のついた成分は、下記市販原料である。
【0034】
【表1】
※1 シルリーフ(水澤化学工業社製)
※2 パールリーム18(日本油脂社製)
※3 パールリームEX(日本油脂社製)
【0035】
(製法)
成分(1)〜(7)をヘンシェル型ミキサーにて均一に混合し、アトマイザーにて粉砕を行った。さらに、成分(1)〜(7)の混合粉砕物と、予め加熱混合しておいた成分(8)〜(10)をヘンシェル型ミキサーに加えて均一に混合し、アトマイザー粉砕後、ふるいを通し、金皿にプレスしてアイライナーを得た。
【0036】
表1の結果から明らかなように、製造例1〜9のアイライナーは塗布時の彩度・発色が高く良好であった。それに対し、比較例1は塗布時の彩度・発色が十分に得られなかった。この結果から、成分(a)の酸化鉄の含有量は40重量%以上が好ましいことが明らかとなった。
【実施例2】
【0037】
実施例2として表2に示す製造例10〜15及び比較例2〜4により、アイライナーを下記製法にて調製し、前記の使用試験方法、評価項目及び評価基準に基づいて評価した。なお、表中※印のついた成分は、下記市販原料である。
【0038】
【表2】
※4 シリカマイクロビードP−1500(日揮触媒化成工業社製)
※5 サイリシア550(富士シリシア社製)
【0039】
(製法)
成分(1)〜(7)をヘンシェル型ミキサーにて均一に混合し、アトマイザーにて粉砕を行った。さらに、成分(1)〜(7)の混合粉砕物と、予め加熱混合しておいた成分(8)〜(10)をヘンシェル型ミキサーに加えて均一に混合し、アトマイザー粉砕後、ふるいを通し、金皿にプレスしてアイライナーを得た。
【0040】
表2の結果から明らかなように、製造例10〜15の固形粉末化粧料はのびのなめらかさ、耐衝撃性及びケーキングの無さが良好であった。それに対し、非晶質板状シリカを含有していない比較例2はのびのなめらかさが無く、またケーキングを生じ十分な効果を得られなかった。非晶質板状シリカ以外のシリカを含有した比較例3及び4では塗布時の彩度・発色、耐衝撃性について十分な効果を得られなかった。この結果から、成分(b)の非晶質板状シリカを使用する必然性があり、さらに含有量は2〜20重量%が好ましく、より好ましくは5〜15重量%であり、さらに好ましくは8〜12重量%であることが明らかとなった。
【実施例3】
【0041】
実施例3として表3に示す製造例16〜27及び比較例5により、アイライナーを下記製法にて調製し、前記の使用試験方法、評価項目及び評価基準に基づいて評価した。なお、表中※印のついた成分は、下記市販原料である。
【0042】
【表3】
※6 パールリーム24(日油社製)
※7 コスモール168AVR(日清オイリオグループ社製)
※8 クロラータムV(クローダジャパン社製)
【0043】
(製法)
成分(1)〜(5)をヘンシェル型ミキサーにて均一に混合し、アトマイザーにて粉砕を行った。さらに、成分(1)〜(5)の混合粉砕物と、予め加熱混合しておいた成分(6)〜(11)をヘンシェル型ミキサーに加えて均一に混合し、アトマイザー粉砕後、ふるいを通し、金皿にプレスしてアイライナーを得た。
【0044】
表3の結果から明らかなように、製造例16〜27のアイライナーはのびのなめらかさ、耐衝撃性及びケーキングの無さが良好であった。それに対し、比較例5は耐衝撃性が弱く、塗布時の彩度・発色が低く十分な効果を得られなかった。この結果から、成分(c)30℃における動粘度が10,000mm
2/s以上の炭化水素油及び/又は25℃においてペースト状である油性成分の少なくとも1種の含有量が1〜10重量%が好ましく、より好ましくは2〜8重量%であり、さらに好ましくは4〜6重量%であることが明らかとなった。
【実施例4】
【0045】
(製造例28)アイライナー
(成分) 含有量(重量%)
1.タルク 5.0
2.セリサイト 5.7
3.シリコーン処理黒酸化鉄 ※9 50.0
4.酸化チタン 15.0
5.非晶質板状シリカ ※1 10.0
6.パラベン 0.2
7.重質流動イソパラフィン ※2 6.0
8.イソノナン酸イソトリデシル 1.0
9.フェニル変性シリコーン ※10 7.0
10.香料 0.1
※9 ジメチルポリシロキサン3%処理
※10 KF−56A(信越化学工業株式会社製)
(製法)
成分(1)〜(6)をヘンシェル型ミキサーにて均一に混合し、アトマイザーにて粉砕を行った。さらに、成分(1)〜(6)の混合粉砕物と、予め加熱混合しておいた成分(7)〜(10)をヘンシェル型ミキサーに加えて均一に混合し、アトマイザー粉砕後、ふるいを通し、金皿にプレスしてアイライナーを得た。
【0046】
実施例4について、実施例1〜3で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、塗布時の彩度・発色、肌へののびのなめらかさ、耐衝撃性、ケーキングの無さに優れたアイライナーを得た。
【実施例5】
【0047】
アイブロウ
(成分) 含有量(重量%)
1.タルク 14.0
2.セリサイト 15.8
3.赤酸化鉄 10.0
4.黄酸化鉄 10.0
5.黒酸化鉄 30.0
6.酸化チタン 5.0
7.非晶質板状シリカ ※1 8.0
8.パラベン 0.2
9.ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル ※7 4.0
10.イソノナン酸イソトリデシル 3.0
(製法)
成分(1)〜(8)をヘンシェル型ミキサーにて均一に混合し、アトマイザーにて粉砕を行った。さらに、成分(1)〜(8)の混合粉砕物と、予め加熱混合しておいた成分(9)〜(10)をヘンシェル型ミキサーに加えて均一に混合し、アトマイザー粉砕後、ふるいを通し、金皿にプレスしてアイブロウを得た。
【0048】
実施例5について、実施例1〜3で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、塗布時の彩度・発色、肌へののびのなめらかさ、耐衝撃性、ケーキングの無さに優れたアイブロウを得た。
【実施例6】
【0049】
アイシャドウ
(成分) 含有量(重量%)
1.タルク 8.0
2.セリサイト 9.8
3.赤酸化鉄 5.0
4.黄酸化鉄 5.0
5.黒酸化鉄 40.0
6.酸化チタン 5.0
7.非晶質板状シリカ ※1 8.0
8.雲母チタン 5.0
9.酸化鉄被覆雲母チタン 7.0
10.パラベン 0.2
11.重質流動イソパラフィン ※2 4.0
12.イソノナン酸イソトリデシル 3.0
(製法)
成分(1)〜(10)をヘンシェル型ミキサーにて均一に混合し、アトマイザーにて粉砕を行った。さらに、成分(1)〜(10)の混合粉砕物と、予め加熱混合しておいた成分(11)〜(12)をヘンシェル型ミキサーに加えて均一に混合し、アトマイザー粉砕後、ふるいを通し、プレスして圧縮成型する前のアイシャドウ粉末を得た。次いで湿式プレスを行うために、アイシャドウ粉末に揮発性溶媒又は水を添加してスラリー化し、スラリーの状態で金皿に充填した後、真空吸引などで溶媒を除去しながらプレスし、乾燥させてアイシャドウを得た。
【0050】
実施例6について、実施例1〜3で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、塗布時の彩度・発色、肌へののびのなめらかさ、耐衝撃性、ケーキングの無さに優れたアイシャドウを得た。
【実施例7】
【0051】
頬紅
(成分) 含有量(重量%)
1.タルク 4.5
2.セリサイト 4.3
3.赤酸化鉄 30.0
4.黄酸化鉄 10.0
5.酸化チタン 25.0
6.非晶質板状シリカ ※1 10.0
7.雲母チタン 3.0
8.酸化鉄被覆雲母チタン 5.0
9.パラベン 0.2
10.ワセリン ※8 4.0
11.イソノナン酸イソトリデシル 4.0
(製法)
成分(1)〜(9)をヘンシェル型ミキサーにて均一に混合し、アトマイザーにて粉砕を行った。さらに、成分(1)〜(9)の混合粉砕物と、予め加熱混合しておいた成分(10)〜(11)をヘンシェル型ミキサーに加えて均一に混合し、アトマイザー粉砕後、ふるいを通し、金皿にプレスして頬紅を得た。
【0052】
実施例7について、実施例1〜3で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、塗布時の彩度・発色、肌へののびのなめらかさ、耐衝撃性、ケーキングの無さに優れた頬紅を得た。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本願発明は、固形粉末化粧料において特定の成分を組合せ、特定量含有することにより、塗布時の彩度・発色が高く、のびのなめらかさが良好であり、また耐衝撃性に優れ、さらに使用時にケーキングを防ぐ技術である。したがって、この技術を活用すれば医薬品の錠剤成型等、固まりやすさや、崩壊をコントロールしなければならないような固形粉末製品に広く応用可能である。