特許第6569232号(P6569232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569232
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】合成床スラブ構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/40 20060101AFI20190826BHJP
   E04C 5/06 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   E04B5/40 A
   E04C5/06
【請求項の数】2
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-27271(P2015-27271)
(22)【出願日】2015年2月16日
(65)【公開番号】特開2016-65442(P2016-65442A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-190813(P2014-190813)
(32)【優先日】2014年9月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100178283
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 孝太
(72)【発明者】
【氏名】平山 博巳
(72)【発明者】
【氏名】半谷 公司
(72)【発明者】
【氏名】北岡 聡
(72)【発明者】
【氏名】中安 誠明
(72)【発明者】
【氏名】清水 信孝
(72)【発明者】
【氏名】古賀 敦雄
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−102320(JP,U)
【文献】 国際公開第92/003622(WO,A1)
【文献】 特開2012−158886(JP,A)
【文献】 特開平07−224493(JP,A)
【文献】 実開昭50−064119(JP,U)
【文献】 特開昭63−070748(JP,A)
【文献】 特開昭61−001760(JP,A)
【文献】 特開2008−008134(JP,A)
【文献】 実開昭61−026814(JP,U)
【文献】 特開平09−235813(JP,A)
【文献】 実開昭58−009414(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/00 − 5/48
E04C 5/00 − 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキプレートと経時硬化性材料とを組み合わせた合成床スラブ構造であって、
複数の節点部が面外方向の異なる位置に配置されるトラス状部材と、略平板状に形成されたフラットプレートの片面から面外方向に略直線状に延び、面外方向に突出して配置される略平坦状等の突出面を有した補強リブが床スパン直交方向に平行して配置されたデッキプレートと、面内方向で床スパン方向に略直線状に延びる縦主筋とを備え、
前記トラス状部材は、面外方向の一方側に配置されて前記縦主筋が接合される第1節点部と、面外方向の他方側に配置されて前記補強リブに接合される第2節点部と、前記第1節点部又は前記第2節点部から面外方向に傾斜して延びる複数の脚部とを有し、前記第1節点部、前記第2節点部及び前記複数の脚部が、略矩形状の孔部が複数形成された1枚の板材を面外方向に折り曲げることで一体的に形成されて、前記フラットプレートの片面側で硬化させた経時硬化性材料の構造部材又は付着部材となるように、前記第1節点部、前記第2節点部及び前記複数の脚部が、前記補強リブ及び前記縦主筋とともに、前記経時硬化性材料に埋め込まれた状態で用いられること
を特徴とする合成床スラブ構造。
【請求項2】
前記デッキプレートは、前記フラットプレートの片面で幅方向に並べられた複数の前記補強リブが設けられるものであり、複数の前記補強リブの各々で面外方向に突出させた突出面に、面内方向の何れかに向けて開口する溝が形成されたフックを有して、面内方向に隣り合う前記フックで、面内方向で互いに逆向きとなるように前記フックの溝が形成されて、前記フックの溝に前記第2節点部が引っ掛けられて嵌合されること
を特徴とする請求項1記載の合成床スラブ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の節点部が面外方向の異なる位置に配置される合成床スラブ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリートの内部にトラス状の鉄筋を配設することでコンクリートを補強することを目的とした特許文献1に開示される構造部材が提案されている。また、スタッドジベルや孔開きジベルを波形鋼板に立設することで波形鋼板とコンクリート床版とを接合させることを目的とした特許文献2に開示される付着部材が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示された構造部材は、補強筋を複数並列して基板上に配置させることで横筋と縦筋とが格子状に形成されて、格子状に形成された横筋と縦筋とを備える上端筋及び下端筋がコンクリート打設用型枠に配置されるとともに、基板方向及びその反対方向に凸状の屈曲部を有する複数のラチス材が、ジグザグに縫うように配設されるものである。
【0004】
特許文献2に開示された付着部材は、波形鋼板ウェブの上下端に、ウェブ部の略中央が位置するように溝形鋼を取り付けて、溝形鋼のウェブ部にスタッドジベルを立設させて、溝形鋼のフランジに開設された貫通孔に鉄筋を挿通することで、溝形鋼、スタッドジベル、貫通孔及び鉄筋に、コンクリート床版に作用する剪断力や曲げモーメントを伝達させるものである。
【0005】
特許文献3に開示されたフラットデッキプレートは、フラット部およびこのフラット部から一連に突設形成した複数条の補強リブからなり、この補強リブの垂直重合部をスポット溶接してなるフラットデッキプレートにおいて、フラット部および補強リブからなるこのデッキプレートを片面に塗装を施しためっき鋼板にて構成すると共に、その塗装面がフラット部の反リブ側である下面とこれに続く補強リブの垂直重合部の内面側となるように成形されていることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−91994号公報
【特許文献2】特開2004−36101号公報
【特許文献3】特開平9−4107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示された構造部材は、複数のラチス材をジグザグに縫うように配設するとともに、各々のラチス材の屈曲部を互いに接合させることで構成されるため、ラチス材の屈曲部の接合作業に必要となる製作コストが増大して、また、ラチス材の屈曲部の接合箇所で均一な品質を維持することが困難なものとなるという問題点があった。
【0008】
また、特許文献2に開示された付着部材は、互いに独立した複数のスタッドジベルや孔開きジベルが、溝形鋼のウェブ部に離散的に立設されるものとなるため、一部のスタッドジベルや孔開きジベルに剪断力や曲げモーメントが集中的に伝達されて、コンクリート床版と波形鋼板ウェブとの確実な付着を実現することが困難なものとなるという問題点があった。
【0009】
特許文献3に開示されたフラットデッキプレートは、剛性と美観を兼ね備えた建築物の床板構造を実現しようとするものであるが、5m以上を超える大スパンの床板に適用する場合に、補強リブの高さをより大きくすることで剛性を向上させることが必要となる。このため、特許文献3に開示されたフラットデッキプレートは、補強リブの折曲分の材料費が増大するものとなり、また、補強リブの高さが大きくなることで、床版上方に配置された補強リブが主として圧縮応力を負担して、曲げ引張応力を負担することができないものとなり、床板全体の剛性が不十分なものとなるという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、コンクリート等の経時硬化性材料の補強を容易かつ確実なものとして、また、鋼板、折板等の鋼部材と経時硬化性材料とを確実に付着させることのできる合成床スラブ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1発明に係る合成床スラブ構造は、デッキプレートと経時硬化性材料とを組み合わせた合成床スラブ構造であって、複数の節点部が面外方向の異なる位置に配置されるトラス状部材と、略平板状に形成されたフラットプレートの片面から面外方向に略直線状に延び、面外方向に突出して配置される略平坦状等の突出面を有した補強リブが床スパン直交方向に平行して配置されたデッキプレートと、面内方向で床スパン方向に略直線状に延びる縦主筋とを備え、前記トラス状部材は、面外方向の一方側に配置されて前記縦主筋が接合される第1節点部と、面外方向の他方側に配置されて前記補強リブに接合される第2節点部と、前記第1節点部又は前記第2節点部から面外方向に傾斜して延びる複数の脚部とを有し、前記第1節点部、前記第2節点部及び前記複数の脚部が、略矩形状の孔部が複数形成された1枚の板材を面外方向に折り曲げることで一体的に形成されて、前記フラットプレートの片面側で硬化させた経時硬化性材料の構造部材又は付着部材となるように、前記第1節点部、前記第2節点部及び前記複数の脚部が、前記補強リブ及び前記縦主筋とともに、前記経時硬化性材料に埋め込まれた状態で用いられることを特徴とする。
【0017】
発明に係る合成床スラブ構造は、第発明において、前記デッキプレートは、前記フラットプレートの片面で幅方向に並べられた複数の前記補強リブが設けられるものであり、複数の前記補強リブの各々で面外方向に突出させた突出面に、面内方向の何れかに向けて開口する溝が形成されたフックを有して、面内方向に隣り合う前記フックで、面内方向で互いに逆向きとなるように前記フックの溝が形成されて、前記フックの溝に前記第2節点部が引っ掛けられて嵌合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
発明、第発明によれば、一般的に建築物等において使用される、コンクリート等の経時硬化性材料の捨て型枠としてのデッキプレートが使用されるため、特別なデッキプレート製造設備を必要としないものとなり、設備投資費用を低減させることが可能となる。
【0020】
発明、第発明によれば、トラス状部材、補強リブ及び縦主筋等が、フラットプレートの片面側で硬化させたコンクリート等の経時硬化性材料に埋め込まれることで、使用時上載荷重、又は、床スパンを大きくすることのできる組立配筋を提供することが可能となる。
【0021】
発明、第発明によれば、トラス状部材、補強リブ及び縦主筋等として、主に鋼材等が用いられるものであるが、経時硬化性材料に補強リブ等が埋め込まれることで、火災発生時等の床版の耐火性能を向上させることが可能となる。
【0022】
発明、第発明によれば、床スパンが大きくなった場合であっても、補強リブの高さを大きくすることを必要としないものとなり、補強リブの材料費の増大を抑制するとともに、補強リブに十分に曲げ引張応力を負担させて、トラス状部材による補強で十分な全体の剛性を確保することが可能となる。
【0023】
発明、第発明によれば、トラス状部材とデッキプレートとを一体化させるだけでなく、複数の縦主筋でトラス状部材を補強することにより、フラットプレートの片面側に現場打設コンクリートを打設するときに、経時硬化性材料が硬化する前の状態の現場打設コンクリートの自重を十分に支持することが可能となる。
【0024】
発明によれば、トラス状部材の全体を変形させることで、順方向フックの溝及び逆方向フックの溝の各々に、複数の第2節点部の各々を順次引っ掛けることができるため、トラス状部材とデッキプレートとを一体化させる作業を簡略に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明を適用したトラス状部材の経時硬化性材料に埋め込まれた状態を示す斜視図である。
図2】本発明を適用したトラス状部材に鋼板や鋼棒が取り付けられた状態を示す斜視図である。
図3】本発明を適用したトラス状部材の第1実施形態を示す斜視図である。
図4】(a)は、本発明を適用したトラス状部材の第1実施形態を示す平面図であり、(b)は、その正面図であり、(c)は、その側面図である。
図5】(a)は、本発明を適用したトラス状部材の第1実施形態における引き伸ばされる前の板材を示す平面図であり、(b)は、引き伸ばした後の板材を示す平面図である。
図6】本発明を適用したトラス状部材の第1実施形態における面外方向に折り曲げる前の板材を示す平面図である。
図7】本発明を適用したトラス状部材の第1実施形態における板材の孔部を示す平面図である。
図8】本発明を適用したトラス状部材の第2実施形態を示す斜視図である。
図9】(a)は、本発明を適用したトラス状部材の第2実施形態を示す平面図であり、(b)は、その正面図であり、(c)は、その側面図である。
図10】(a)は、本発明を適用したトラス状部材の第2実施形態における引き伸ばされる前の板材を示す平面図であり、(b)は、引き伸ばした後の板材を示す平面図である。
図11】本発明を適用したトラス状部材の第2実施形態における面外方向に折り曲げる前の板材を示す平面図である。
図12】本発明を適用したトラス状部材の第1実施形態における板材の孔部を示す平面図である。
図13】本発明を適用したトラス状部材が経時硬化性材料に構造部材として埋め込まれた状態を示す断面図である。
図14】本発明を適用したトラス状部材が鋼板又は折板に接合された状態を示す断面図である。
図15】本発明を適用したトラス状部材がH形鋼又はC形鋼に接合された状態を示す断面図である。
図16】本発明を適用したトラス状部材が鋼管の外周面又は内周面に接合された状態を示す断面図である。
図17】本発明を適用したトラス状部材がプレキャストコンクリートと現場打設コンクリートとに架設される状態を示す断面図である。
図18】本発明を適用したトラス状部材が地盤と現場打設コンクリートとに架設される状態を示す断面図である。
図19】本発明を適用したトラス状部材に鋼棒又は鋼管が接合された状態を示す断面図である。
図20】本発明を適用したトラス状部材が溶接又は接着により接合された状態を示す拡大正面図である。
図21】本発明を適用したトラス状部材がネジ止め又はボルト止めにより接合された状態を示す拡大正面図である。
図22】本発明を適用したトラス状部材が嵌合又は緊結により接合された状態を示す拡大正面図である。
図23】本発明を適用したトラス状部材がスタッド溶接されたボルトへの締結又は打込み鋲により接合された状態を示す拡大正面図である。
図24】本発明を適用したトラス状部材が鋼部材から離間して配置される第1節点部又は第2節点部で接合された状態を示す拡大正面図である。
図25】(a)は、本発明を適用したトラス状部材が曲げ力、引抜力及びせん断力に一体的に抵抗する状態を示す正面図であり、(b)は、その平面図である。
図26】本発明を適用した合成床スラブ構造を示す斜視図である。
図27】本発明を適用した合成床スラブ構造を示す床スパン直交方向の断面図である。
図28】本発明を適用した合成床スラブ構造を示す床スパン方向の断面図である。
図29】(a)は、本発明を適用した合成床スラブ構造でトラス状部材の脚部を傾斜させた状態を示す拡大断面図であり、(b)は、第2節点部の全部を嵌合させた状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を適用したトラス状部材1を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
本発明を適用したトラス状部材1は、図1に示すように、コンクリート等の経時硬化性材料5の内部に、構造部材又は付着部材として埋め込んで用いられるものであり、コンクリート等の内部にトラス状部材1が配設されたコンクリート構造体8を提供するものである。
【0028】
本発明を適用したトラス状部材1は、コンクリート等の経時硬化性材料5の内部で面内方向Xに延びて設けられるものであり、面内方向Xの幅方向X1で所定の幅寸法を有するとともに、面内方向Xの奥行方向X2で所定の奥行寸法を有して、また、構造部材又は付着部材としての用途に応じて、面外方向Yで所定の高さ寸法を有する。
【0029】
本発明を適用したトラス状部材1は、複数の節点部2と複数の脚部3とを組み合わせることで、複数の略三角形状の基本要素Eが形成されて、複数の略三角形状の基本要素Eを連続させた集合体を構成することで、複数の節点部2が面外方向Yの異なる位置に配置されて、複数の節点部2を複数の脚部3で連結させた略トラス状の構造形式を有するものとなる。
【0030】
本発明を適用したトラス状部材1は、面外方向Yの一方側Aに配置される複数の第1節点部21と、面外方向Yの他方側Bに配置される複数の第2節点部22と、第1節点部21又は第2節点部22から面外方向Yに傾斜して延びる複数の脚部3とを備えるものであり、図2に示すように、必要に応じて、鋼板70や鋼棒73が取り付けられる。
【0031】
本発明を適用したトラス状部材1は、例えば、面内方向Xが略水平となるように用いられる場合に、面外方向Yで一方側Aの第1節点部21が上側部に配置されて、面外方向Yで他方側Bの第2節点部22が下側部に配置される。また、本発明を適用したトラス状部材1は、例えば、面内方向Xが略鉛直となるように用いられる場合に、面外方向Yで一方側Aの第1節点部21が左側部に配置されて、面外方向Yで他方側Bの第2節点部22が右側部に配置される。
【0032】
本発明を適用したトラス状部材1は、第1実施形態において、図3に示すように、第1節点部21及び第2節点部22の何れか一方から他方に向けて、4箇の脚部3が第1節点部21又は第2節点部22の各々から面外方向Yに傾斜して延びて設けられる。
【0033】
各々の第1節点部21は、図4(a)に示すように、面内方向Xで4箇の第2節点部22に四方が取り囲まれて、四方を取り囲んだ4箇の第2節点部22の各々に向けて、各々の第1節点部21から連続するように、4箇の脚部3の各々が放射状に延びて設けられる。
【0034】
各々の第1節点部21は、図4(b)、図4(c)に示すように、略平坦状の上端面21aを有するものとなるように形成される。各々の第1節点部21は、これに限らず、湾曲した上端面21aを有するものとなるように形成されてもよい。
【0035】
各々の第2節点部22は、図4(a)に示すように、面内方向Xで4箇の第1節点部21に四方が取り囲まれて、四方を取り囲んだ4箇の第1節点部21の各々に向けて、各々の第2節点部22から連続するように、4箇の脚部3の各々が放射状に延びて設けられる。
【0036】
各々の第2節点部22は、図4(b)、図4(c)に示すように、略平坦状の下端面22aを有するものとなるように形成される。各々の第2節点部22は、これに限らず、湾曲した下端面22aを有するものとなるように形成されてもよい。
【0037】
各々の脚部3は、第1節点部21及び第2節点部22から、面外方向Yに対して所定の角度θを有するように傾斜して設けられる。各々の脚部3は、略直線状に延びて設けられるものであるが、これに限らず、部分的に屈曲させた箇所や、湾曲させた箇所が形成されてもよい。角度θは、例えば、15°〜75°程度の範囲で、特に、45°程度となるように設定される。
【0038】
本発明を適用したトラス状部材1は、図5図7に示すように、鉄鋼、アルミニウム、炭素繊維又は合成樹脂等を材質とする1枚の板材6に、所定の加工を実施することで製造される。本発明を適用したトラス状部材1は、主に、板厚を1mm〜10mm程度として、鉄鋼を材質とするエキスパンドメタル60が板材6として用いられる。
【0039】
エキスパンドメタル60は、最初に、図5(a)に示すように、略平板状に形成された板材6に複数の切れ目60aを略千鳥状に形成させて、次に、図5(b)に示すように、略千鳥状に複数の切れ目60aを形成した板材6が面内方向Xに引き伸ばされることで製造される。
【0040】
エキスパンドメタル60は、図5(a)に示すように、各々の切れ目60aが板材6を貫通して面内方向Xで所定の長さを有するように略直線状に形成されて、略直線状の切れ目60aが面内方向Xに引き伸ばされることで、図5(b)に示すように、各々の切れ目60aの箇所で略矩形状の孔部4が形成される。
【0041】
板材6は、図6に示すように、略矩形状の孔部4が複数形成されるものであり、奥行方向X2の位置を異ならせた複数の孔部4が、幅方向X1で交互に隣り合うように配置されることで、複数の孔部4が面内方向Xで略千鳥状に配置される。板材6は、エキスパンドメタル60が用いられる場合に、各々の切れ目60aの箇所で略矩形状の孔部4が形成されて、複数の孔部4が面内方向Xで略千鳥状に配置されるものとなる。
【0042】
各々の孔部4は、図7に示すように、4箇所の隅点部40と、4箇所の側辺部41とを有して、幅方向X1及び奥行方向X2に傾斜した各々の側辺部41で、幅方向X1及び奥行方向X2に隣り合う隅点部40が連結されることで、略矩形状に形成されるものとなる。各々の孔部4は、幅方向X1に延びて一対の隅点部40を結ぶ対角線D1と、奥行方向X2に延びて一対の隅点部40を結ぶ対角線D2とを有する。
【0043】
本発明を適用したトラス状部材1は、第1実施形態において、奥行方向X2に延びる対角線D2、又は、幅方向X1に延びる対角線D1に沿って、エキスパンドメタル60等の板材6を折り曲げることで略トラス状に形成される。本発明を適用したトラス状部材1は、奥行方向X2に延びる対角線D2に沿って、板材6を山折り又は谷折りに折り曲げることで、図6に示すように、山折線Mで山折りに、また、谷折線Vで谷折りに、面外方向Yで山折り及び谷折りに交互に折り曲がって一体的に形成される。本発明を適用したトラス状部材1は、対角線D2に沿って板材6を折り曲げる場合は、奥行方向X2に隣り合う複数の孔部4の対角線D2で、山折線M又は谷折線Vが連続するように折り曲げられて、また、対角線D1に沿って板材6を折り曲げる場合は、幅方向X1に隣り合う複数の孔部4の対角線D1で、山折線M又は谷折線Vが連続するように折り曲げられる。
【0044】
このとき、第1節点部21、第2節点部22及び複数の脚部3は、図4に示すように、各々の略矩形状の孔部4を取り囲む4箇所の隅点部40のうち、所定の対角線上に配置される一対の隅点部40で、板材6を面外方向Yに折り曲げることで一体的に形成されて、各々の略矩形状の孔部4を取り囲む4箇所の側辺部41から4箇の脚部3が構成されることで、4箇の脚部3が第1節点部21又は第2節点部22の各々から面外方向Yに傾斜して延びて設けられるものとなる。
【0045】
次に、本発明を適用したトラス状部材1の第2実施形態について説明する。なお、上述した構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
【0046】
本発明を適用したトラス状部材1は、第2実施形態において、図8に示すように、第1節点部21及び第2節点部22の何れか一方から他方に向けて、2箇の脚部3が第1節点部21又は第2節点部22の各々から面外方向Yに傾斜して延びて設けられる。
【0047】
各々の第1節点部21は、図9(a)に示すように、2箇の第2節点部22が幅方向X1の両側方に配置されて、両側方に配置された2箇の第2節点部22の各々に向けて、各々の第1節点部21から連続するように、2箇の脚部3の各々が互いに反対方向に延びて設けられる。
【0048】
各々の第1節点部21は、図9(b)、図9(c)に示すように、略平坦状の上端面21aを有するものとなるように形成される。各々の第1節点部21は、これに限らず、湾曲した上端面21aを有するものとなるように形成されてもよい。
【0049】
各々の第2節点部22は、図9(a)に示すように、2箇の第1節点部21が幅方向X1の両側方に配置されて、両側方に配置された2箇の第1節点部21の各々に向けて、各々の第2節点部22から連続するように、2箇の脚部3の各々が互いに反対方向に延びて設けられる。
【0050】
各々の第2節点部22は、図9(b)、図9(c)に示すように、略平坦状の下端面22aを有するものとなるように形成される。各々の第2節点部22は、これに限らず、湾曲した下端面22aを有するものとなるように形成されてもよい。
【0051】
各々の脚部3は、第1節点部21及び第2節点部22から、面外方向Yに対して所定の角度θを有するように傾斜して設けられる。各々の脚部3は、略直線状に延びて設けられるものであるが、これに限らず、部分的に屈曲させた箇所や、湾曲させた箇所が形成されてもよい。角度θは、例えば、15°〜75°程度の範囲で、特に、45°程度となるように設定される。
【0052】
本発明を適用したトラス状部材1は、第2実施形態においても、図10図12に示すように、鉄鋼、アルミニウム、炭素繊維又は合成樹脂等を材質とする1枚の板材6に、所定の加工を実施することで製造されて、主に、鉄鋼を材質とするエキスパンドメタル60が板材6として用いられる。
【0053】
エキスパンドメタル60は、最初に、図10(a)に示すように、略平板状に形成された板材6に複数の切れ目60aを略千鳥状に形成させて、次に、図10(b)に示すように、略千鳥状に複数の切れ目60aを形成した板材6が面内方向Xに引き伸ばされることで製造される。
【0054】
エキスパンドメタル60は、図10(a)に示すように、各々の切れ目60aが板材6を貫通して面内方向Xで所定の長さを有するように略直線状に形成されて、略直線状の切れ目60aが面内方向Xに引き伸ばされることで、図10(b)に示すように、各々の切れ目60aの箇所で略矩形状の孔部4が形成される。
【0055】
板材6は、図11に示すように、略矩形状の孔部4が複数形成されるものであり、奥行方向X2の位置を略同一とした複数の孔部4が、幅方向X1に隣り合うように配置されることで、複数の孔部4が面内方向Xで略格子状に配置される。板材6は、エキスパンドメタル60が用いられる場合に、各々の切れ目60aの箇所で略矩形状の孔部4が形成されて、複数の孔部4が面内方向Xで略格子状に配置されるものとなる。
【0056】
各々の孔部4は、図12に示すように、4箇所の隅点部40と、4箇所の側辺部41とを有して、互いに略平行に配置される一対の側辺部41で、奥行方向X2に隣り合う隅点部40が連結されるとともに、幅方向X1に隣り合う隅点部40が連結されることで、略矩形状に形成されるものとなる。各々の孔部4は、奥行方向X2に隣り合う隅点部40を連結して奥行方向X2に延びる一対の側辺部41と、幅方向X1に隣り合う隅点部40を連結して幅方向X1に延びる一対の側辺部41とを有する。
【0057】
本発明を適用したトラス状部材1は、第2実施形態において、奥行方向X2に延びる側辺部41、又は、幅方向X1に延びる側辺部41に沿って、エキスパンドメタル60等の板材6を折り曲げることで略トラス状に形成される。本発明を適用したトラス状部材1は、奥行方向X2に延びる側辺部41に沿って、板材6を山折り又は谷折りに折り曲げることで、図11に示すように、山折線Mで山折りに、また、谷折線Vで谷折りに、面外方向Yで山折り及び谷折りに交互に折り曲がって一体的に形成される。本発明を適用したトラス状部材1は、奥行方向X2に延びる側辺部41に沿って板材6を折り曲げる場合は、奥行方向X2に隣り合う複数の孔部4の奥行方向X2に延びて連続する側辺部41で、山折線M又は谷折線Vが連続するように折り曲げられて、また、幅方向X1に延びる側辺部41に沿って板材6を折り曲げる場合は、幅方向X1に隣り合う複数の孔部4の幅方向X1に延びて連続する側辺部41で、山折線M又は谷折線Vが連続するように折り曲げられる。
【0058】
本発明を適用したトラス状部材1は、図9に示すように、奥行方向X2に延びる2箇所の側辺部41が、面外方向Yに傾斜させることなく、各々の第1節点部21から奥行方向X2に隣り合う第1節点部21まで、又は、各々の第2節点部22から奥行方向X2に隣り合う第2節点部22まで、略稜線状に延びて設けられる。また、本発明を適用したトラス状部材1は、幅方向X1に延びる2箇所の側辺部41が、各々の第1節点部21から幅方向X1に隣り合う第2節点部22まで、又は、各々の第2節点部22から幅方向X1に隣り合う第1節点部21まで、面外方向Yに傾斜して延びて設けられる。
【0059】
このとき、第1節点部21、第2節点部22及び複数の脚部3は、各々の略矩形状の孔部4を取り囲む4箇所の側辺部41のうち、互いに略平行に配置される一対の側辺部41の一方又は両方で、板材6を面外方向Yに折り曲げることで一体的に形成されて、4箇所の側辺部41のうち2箇所の側辺部41から2箇の脚部3が構成されることで、2箇の脚部3が第1節点部21又は第2節点部22の各々から面外方向Yに傾斜して延びて設けられるものとなる。
【0060】
本発明を適用したトラス状部材1は、図13図19に示すように、第1実施形態及び第2実施形態の何れにおいても、硬化させた経時硬化性材料5の構造部材又は付着部材となるように、第1節点部21、第2節点部22及び複数の脚部3の一部又は全部が、コンクリート又はモルタル等の経時硬化性材料5に埋め込まれた状態で用いられる。
【0061】
本発明を適用したトラス状部材1は、第1節点部21、第2節点部22及び複数の脚部3の全部が、コンクリート等の経時硬化性材料5に埋め込まれる場合に、図13(a)に示すように、硬化させた経時硬化性材料5の面外方向Yの上側部から下側部まで設けられてもよく、図13(b)に示すように、硬化させた経時硬化性材料5の面外方向Yの下側部又は上側部の何れか一方又は両方のみに設けられてもよい。このとき、本発明を適用したトラス状部材1は、面外方向Yで10.0cm〜20.0cm程度の高さ寸法hを有して、硬化させた経時硬化性材料5の内部で、コンクリート等の経時硬化性材料5を補強する構造部材として設けられる。
【0062】
本発明を適用したトラス状部材1は、図14図16に示すように、第1節点部21及び第2節点部22の何れか一方又は両方に、鋼板70、折板71、形鋼72、鋼棒73又は鋼管74が用いられた鋼部材7が、溶接、接着、ネジ止め、ボルト止め、嵌合、緊結、スタッド溶接されたボルトへの締結又は打込み鋲により接合されてもよい。このとき、本発明を適用したトラス状部材1は、面外方向Yで3.0cm〜8.0cm程度の高さ寸法hを有して、主に、硬化させた経時硬化性材料5の内部で、コンクリート等の経時硬化性材料5と鋼部材7とを付着させる付着部材として設けられるものとなる。
【0063】
本発明を適用したトラス状部材1は、図14(a)に示すように、面内方向Xで略平板状に形成された鋼板70の上面7a又は下面7bに、複数の第1節点部21又は第2節点部22を当接させて、鋼板70に当接させた複数の第1節点部21又は第2節点部22のうち、一部又は全部を溶接等で接合させる。また、本発明を適用したトラス状部材1は、図14(b)に示すように、面外方向Yで凹凸状に形成されたデッキプレート、コルゲート等の折板71の上面7a又は下面7bに、複数の第1節点部21又は第2節点部22を当接させて、折板71に当接させた複数の第1節点部21又は第2節点部22のうち、一部又は全部を溶接等で接合させてもよい。本発明を適用したトラス状部材1は、第1節点部21又は第2節点部22を当接させた鋼板70又は折板71の上面7a又は下面7bに連続して、コンクリート等の経時硬化性材料5が設けられる。
【0064】
本発明を適用したトラス状部材1は、図15に示すように、H形鋼、C形鋼又は鋼矢板等の形鋼72に、複数の第1節点部21又は第2節点部22を当接させて、形鋼72に当接させた複数の第1節点部21又は第2節点部22のうち、一部又は全部を溶接等で接合させてもよい。本発明を適用したトラス状部材1は、図15(a)に示すように、断面略H形状に形成されたH形鋼のフランジ部7c及びウェブ部7dの何れか一方又は両方に、第1節点部21又は第2節点部22を接合させて、H形鋼全体を取り囲むようにコンクリート等の経時硬化性材料5が設けられる。また、本発明を適用したトラス状部材1は、図15(b)に示すように、断面略C形状に形成されたC形鋼のウェブ部7dに、第1節点部21又は第2節点部22を接合させて、C形鋼のフランジ部7c及びウェブ部7dにより形成された溝部7eで、トラス状部材1を取り囲むようにコンクリート等の経時硬化性材料5が設けられる。
【0065】
本発明を適用したトラス状部材1は、図16に示すように、断面略円形状に形成された鋼管74の外周面7f又は内周面7gに沿って、トラス状部材1を周方向Wに湾曲させるとともに、鋼管74の外周面7f又は内周面7gに複数の第1節点部21又は第2節点部22を当接させて、鋼管74に当接させた複数の第1節点部21又は第2節点部22のうち、一部又は全部を溶接等で接合させる。本発明を適用したトラス状部材1は、鋼管74の外周面7fに、第1節点部21又は第2節点部22を当接させた場合に、図16(a)に示すように、鋼管74の外周面7fを取り囲むようにコンクリート等の経時硬化性材料5が設けられて、また、鋼管74の内周面7gに、第1節点部21又は第2節点部22を当接させた場合に、図16(b)に示すように、コンクリート等の経時硬化性材料5が鋼管74の管内部7hに充填されて設けられる。
【0066】
本発明を適用したトラス状部材1は、第1節点部21、第2節点部22及び複数の脚部3の一部が、コンクリート等の経時硬化性材料5に埋め込まれる場合に、図17(a)に示すように、プレキャストコンクリート50の経時硬化性材料5の上面5a又は下面5bから、面外方向Yに突出させて設けられてもよい。ここで、本発明を適用したトラス状部材1は、図17(b)に示すように、プレキャストコンクリート50の上面5a又は下面5bから突出させた部分が、プレキャストコンクリート50に連続して設けられる現場打設コンクリート51の経時硬化性材料5に埋め込まれてもよい。このとき、本発明を適用したトラス状部材1は、複数の脚部3でプレキャストコンクリート50と現場打設コンクリート51とに架設されるものとなり、プレキャストコンクリート50及び現場打設コンクリート51を補強する構造部材となるのみならず、プレキャストコンクリート50と現場打設コンクリート51との一体性を向上させる付着部材となるように設けられるものとなる。
【0067】
本発明を適用したトラス状部材1は、図18に示すように、地盤面80上方にコンクリート構造体8が設けられる場合に、図18(a)に示すように、第1節点部21、第2節点部22及び複数の脚部3の一部を地盤面80から突出させた状態で地盤内に埋め込まれて、図18(b)に示すように、地盤面80から突出させた部分が、地盤面80に連続して設けられる現場打設コンクリート51に埋め込まれるものとされてもよい。このとき、本発明を適用したトラス状部材1は、複数の脚部3で地盤と現場打設コンクリート51とに架設されるものとなり、現場打設コンクリート51を補強する構造部材となるのみならず、地盤とコンクリート構造体8との一体性を向上させる付着部材となるように設けられるものとなる。
【0068】
本発明を適用したトラス状部材1は、図19に示すように、異形鉄筋等の鋼棒73又は小径の鋼管74が、複数の第1節点部21又は第2節点部22に溶接等で接合されて架設された状態で、面内方向X及び面外方向Yの何れか一方又は両方に延びて設けられてもよい。このとき、本発明を適用したトラス状部材1は、鋼棒73又は鋼管74が、第1節点部21、第2節点部22及び複数の脚部3とともに、コンクリート等の経時硬化性材料5に埋め込まれて、経時硬化性材料5を補強する構造部材となるのみならず、トラス状部材1と経時硬化性材料5との一体性を向上させる付着部材となるように設けられるものとなる。
【0069】
本発明を適用したトラス状部材1は、図20図24に示すように、第1節点部21及び第2節点部22の何れか一方又は両方に、溶接、接着、ネジ止め、ボルト止め、嵌合、緊結、スタッド溶接されたボルト27への締結又は打込み鋲28により鋼部材7が接合される。このとき、本発明を適用したトラス状部材1は、図20に示すように、第1節点部21の上端面21a又は第2節点部22の下端面22aを鋼部材7に当接させた状態で隅肉溶接等により溶接箇所J1が設けられて、又は、接着剤等を用いることにより接着箇所J2が設けられて、第1節点部21又は第2節点部22と鋼部材7とが接合される。
【0070】
本発明を適用したトラス状部材1は、図21に示すように、第1節点部21又は第2節点部22と鋼部材7とに貫通させてネジ23又はボルトナット24が設けられることで、第1節点部21の上端面21a又は第2節点部22の下端面22aを鋼部材7に当接させた状態で、ネジ止め、ボルト止めにより鋼部材7が接合されてもよい。また、本発明を適用したトラス状部材1は、図22に示すように、第1節点部21の上端面21a又は第2節点部22の下端面22aを鋼部材7に当接させた状態で、第1節点部21又は第2節点部22をフック25に引っ掛けて嵌合させて、又は、第1節点部21又は第2節点部22を鋼線等の線材26で縛って緊結させることにより、鋼部材7が接合されてもよい。
【0071】
本発明を適用したトラス状部材1は、図23に示すように、鋼部材7へのスタッド溶接等により立設させたボルト27を第1節点部21又は第2節点部22に貫通させてナットが締結されて、又は、第1節点部21又は第2節点部22と鋼部材7とに貫通させて打込み鋲28が設けられることで、スタッド溶接されたボルト27への締結又は打込み鋲28により鋼部材7が接合されてもよい。また、本発明を適用したトラス状部材1は、図24に示すように、鋼部材7から離間して配置される第1節点部21又は第2節点部22に、棒状の位置保持部材29のネジ切り部分やスタッド溶接されたボルト27を貫通させてナットが締結されることで、鋼部材7が接合されてもよい。
【0072】
本発明を適用したトラス状部材1は、図25(a)に示すように、第1節点部21、第2節点部22及び複数の脚部3が、硬化させたコンクリート等の経時硬化性材料5に埋め込まれた状態で、硬化させた経時硬化性材料5に、曲げ力F、引抜力P及びせん断力S等が作用する。
【0073】
本発明を適用したトラス状部材1は、硬化させた経時硬化性材料5の面外方向Yに曲げ力Fが作用したときに、第1節点部21又は第2節点部22から互いに反対方向に延びる複数の脚部3の各々が、経時硬化性材料5の内部で互いに反対方向に作用する引張力Tを負担する。本発明を適用したトラス状部材1は、図25(b)に示すように、各々の脚部3に作用する引張力Tを、第1節点部21又は第2節点部22を介して反対方向で一対に作用させることができるように、反対方向に延びる複数の脚部3の各々が、第1節点部21及び第2節点部22を介して一体的に形成される。
【0074】
このとき、本発明を適用したトラス状部材1は、図25に示すように、複数の脚部3の各々が、第1節点部21及び第2節点部22を介して一体的に形成されて、第1節点部21又は第2節点部22から反対方向で一対となるように、各々の脚部3に引張力Tを作用させることで、複数の脚部3で一対の引張力Tを負担するものとなり、経時硬化性材料5に作用する曲げ力Fに強固に抵抗する構造部材となる。
【0075】
これにより、本発明を適用したトラス状部材1は、複数の脚部3で負担する一対の引張力Tが、一体的に形成された第1節点部21及び第2節点部22を介して円滑に伝達されるものとなるため、経時硬化性材料5に作用する曲げ力Fに抵抗する構造部材として、経時硬化性材料5の補強を確実なものとすることが可能となる。
【0076】
また、本発明を適用したトラス状部材1は、第1節点部21、第2節点部22及び複数の脚部3が一体的に形成されるため、第1節点部21又は第2節点部22において、複数の脚部3を互いに接合させることを必要としないものとなる。このとき、本発明を適用したトラス状部材1は、複数の脚部3の接合作業を必要としないものとすることで製作コストを低減させるとともに、複数の脚部3の接合作業による接合箇所の品質のばらつきをなくすことで、第1節点部21又は第2節点部22で均一な品質を維持することができるものとなる。
【0077】
これにより、本発明を適用したトラス状部材1は、製作コストを低減させるとともに均一な品質を維持しながら、硬化させたコンクリート等の経時硬化性材料5にトラス状部材1を埋め込むのみで、経時硬化性材料5に構造部材を設けることができるものとなり、経時硬化性材料5を容易に補強することが可能となる。
【0078】
本発明を適用したトラス状部材1は、図25(a)に示すように、面外方向Yで硬化させた経時硬化性材料5から鋼部材7を離間させる方向に引抜力Pが作用した場合や、面内方向Xで硬化させた経時硬化性材料5と鋼部材7とが互いにずれる方向にせん断力Sが作用した場合に、経時硬化性材料5と鋼部材7との付着状態を維持するための付着部材として設けられる。
【0079】
従来の付着部材においては、複数のスタッドジベルや孔開きジベル等が離散的に設けられるため、一部のスタッドジベルや孔開きジベルに引抜力P又はせん断力Sが集中的に伝達されるものとなり、引抜力Pやせん断力Sに対して複数のスタッドジベルや孔開きジベルで一体的に抵抗することができないものとなっていた。これに対して、本発明を適用したトラス状部材1は、複数の第1節点部21、第2節点部22及び複数の脚部3が一体的に形成されるため、引抜力Pやせん断力Sが複数の第1節点部21、第2節点部22及び複数の脚部3に相互に分散されて、引抜力Pやせん断力Sを一部分に集中的に負担させないものとなることから、複数の第1節点部21、第2節点部22及び複数の脚部3で引抜力Pやせん断力Sに対して一体的に抵抗することができるものとなる。
【0080】
これにより、本発明を適用したトラス状部材1は、複数の第1節点部21、第2節点部22及び複数の脚部3で引抜力Pやせん断力Sに対して一体的に抵抗するものとすることで、トラス状部材1の全体で、引抜力Pやせん断力Sに強固に抵抗することができるものとなることから、鋼部材7と経時硬化性材料5との確実な付着を実現させることが可能となる。
【0081】
本発明を適用した合成床スラブ構造10は、図26に示すように、建築物、建造物又は土木構造物等の床版として、デッキプレート11と経時硬化性材料5とを組み合わせて用いられる。
【0082】
本発明を適用した合成床スラブ構造10は、例えば、面内方向Xの奥行方向X2を床スパン方向、面内方向Xの幅方向X1を床スパン直交方向として、主に、床スパン方向が5m以上となる大スパンの床版として用いられるものとなる。
【0083】
本発明を適用した合成床スラブ構造10は、第1実施形態又は第2実施形態のトラス状部材1と、硬化させた経時硬化性材料5の上方又は下方に設けられるデッキプレート11と、面内方向Xの奥行方向X2で略直線状に延びる複数の縦主筋15とを備える。
【0084】
デッキプレート11は、例えば、経時硬化性材料5の下方に連続して設けられるものであり、面内方向Xに延びて略平板状に形成された鋼板70等のフラットプレート12と、フラットプレート12の片面12aから面外方向Yに突出させて設けられる補強リブ13とを有する。
【0085】
デッキプレート11は、面内方向Xの幅方向X1に並べられた複数の補強リブ13の各々で、面外方向Yに突出させた突出面13aに、面内方向Xの何れかに向けて開口する溝25aが形成された複数のフック25を有する。デッキプレート11は、例えば、各々の補強リブ13の突出面13aにおいて、面内方向Xの奥行方向X2に隣り合わせて複数のフック25が形成されて、面内方向Xに隣り合う各々のフック25で、図26の図面左上側に向けて溝25aが開口するフック25と、図26の図面右下側に向けて溝25aが開口するフック25とが交互となるように、面内方向Xで互いに逆向きにフック25の溝25aが形成される。
【0086】
フラットプレート12は、図27図28に示すように、経時硬化性材料5の下方にデッキプレート11が設けられる場合に、経時硬化性材料5の下面5bに対向させて、上方に向けて配置される一方の片面12aに、複数の補強リブ13が設けられて、下方に向けて配置される他方の片面12bが、略平坦状等に形成される。
【0087】
各々の補強リブ13は、屈曲加工させた鋼材等が用いられて、面内方向Xの奥行方向X2で略直線状に延びて設けられる。各々の補強リブ13は、フラットプレート12の片面12aと略平行に、面外方向Yに突出して配置される略平坦状等の突出面13aを有して、複数の補強リブ13の各々の突出面13aが、奥行方向X2に延びて互いに略平行に形成される。
【0088】
各々の縦主筋15は、異形鉄筋等の鉄筋が用いられて、面内方向Xの奥行方向X2で略直線状に延びて設けられる。各々の縦主筋15は、補強リブ13の突出面13aから面外方向Yに離間させて、各々の補強リブ13の突出面13aと略平行に、面内方向Xの幅方向X1の位置を異ならせて配置される。
【0089】
各々の縦主筋15は、必要に応じて、面内方向Xの幅方向X1で略直線状に延びる異形鉄筋等の横方向筋16が接合される。横方向筋16は、面内方向Xの奥行方向X2で互いに略平行に複数並べて設けられるものであり、各々の縦主筋15に上方から溶接等で接合されて、各々の縦主筋15に面内方向Xで略直交させて、複数の縦主筋15に連続して架設される。
【0090】
なお、各々の縦主筋15及び横方向筋16は、工場製作により縦主筋15と横方向筋16とが格子状に組み立てられたメッシュ組立配筋が用いられてもよい。
【0091】
トラス状部材1は、複数の第1節点部21が、フラットプレート12の片面12aと略平行の同一平面上に配置される。トラス状部材1は、略直線状に延びる各々の縦主筋15が、奥行方向X2で隣り合う第1節点部21の上端面21aに連続して架設されて、溶接又は緊結等により複数の第1節点部21の各々に接合される。
【0092】
トラス状部材1は、複数の第2節点部22が、フラットプレート12の片面12aと略平行の同一平面上に配置される。トラス状部材1は、略直線状に延びる各々の補強リブ13の突出面13aが、奥行方向X2で隣り合う第2節点部22の下端面22aに連続して架設されて、所定の接合方法により複数の第2節点部22の各々に接合される。
【0093】
トラス状部材1は、複数の第2節点部22の各々が、溶接、接着、ネジ止め、ボルト止め、緊結、打込み鋲等の接合方法により補強リブ13の突出面13aに接合される。トラス状部材1は、特に、複数の第2節点部22の各々が、各々の補強リブ13の突出面13aで、フック25の溝25aに引っ掛けられて、嵌合により接合される。
【0094】
フック25は、例えば、補強リブ13の突出面13aをU字状等に切り込んで、U字状等の切込部分を引き起こすことで、面内方向Xの奥行方向X2に開口する溝25aが形成される。フック25は、溶接、接着、ネジ止め、ボルト止め等により、略L字状等の別途の部材を補強リブ13の突出面13aに接合させて、面内方向Xの幅方向X1又は奥行方向X2に開口する溝25aが形成されてもよい。
【0095】
フック25は、図28に示すように、奥行方向X2に隣り合う複数のフック25の各々で、奥行方向X2の右側に向けて溝25aを開口させた順方向フック251と、奥行方向X2の左側に向けて溝25aを開口させた逆方向フック252とが、互いに奥行方向X2で溝25aの開口する向きが逆向きとなるように交互に配置される。
【0096】
トラス状部材1は、最初に、図29(a)に示すように、複数の順方向フック251の各々に第2節点部22を引っ掛けることで、複数の第2節点部22の一部が、順方向フック251が設けられた突出面13aのみに、順方向フック251の溝25aで嵌合により接合される。
【0097】
このとき、トラス状部材1は、複数の第2節点部22の一部が、順方向フック251に引っ掛けられた箇所以外で固定されていない状態となるとともに、複数の第1節点部21の全部が、固定されていない状態となることで、各々の脚部3を様々な角度となるように傾斜させて、全体を変形させることができるものとなる。
【0098】
トラス状部材1は、次に、各々の脚部3を様々な角度に傾斜させることで、図29(b)に示すように、順方向フック251に引っ掛けられた箇所以外での第2節点部22を、奥行方向X2の左側に向けて開口する逆方向フック252の溝25aに、奥行方向X2の左側から引っ掛けて、複数の第2節点部22の各々が、各々のフック25に引っ掛けられるものとなる。
【0099】
本発明を適用した合成床スラブ構造10は、次に、複数の第2節点部22の各々が、各々のフック25に引っ掛けられて、トラス状部材1とデッキプレート11とを一体化させた後に、図27図28に示すように、複数の第1節点部21の各々に、縦主筋15が接合されるとともに、複数の縦主筋15の各々に、ひび割れ防止のための横方向筋16が接合される。
【0100】
なお、本発明を適用した合成床スラブ構造10は、トラス状部材1とデッキプレート11とを一体化させて、縦主筋15及び横方向筋16を接合させた組立配筋が、建築現場での施工により構築されてもよく、また、あらかじめ組立工場又は現場サイトで先組みした組立配筋が、建築物の梁等の上方に揚上されるものであってもよい。
【0101】
本発明を適用した合成床スラブ構造10は、次に、フラットプレート12の片面12a側に現場打設コンクリート51を打設して、トラス状部材1、補強リブ13、縦主筋15及び横方向筋16を、硬化させた現場打設コンクリート51に埋め込んで、床版が形成されるものとなる。
【0102】
ここで、本発明を適用した合成床スラブ構造10は、フラットプレート12の片面12a側に現場打設コンクリート51を打設するときに、硬化する前の状態の現場打設コンクリート51の自重を十分に支持するために、トラス状部材1とデッキプレート11とを一体化させるだけでなく、複数の縦主筋15でトラス状部材1を補強することが効果的となる。
【0103】
このとき、本発明を適用した合成床スラブ構造10は、フラットプレート12の片面12a側で、硬化させた経時硬化性材料5の構造部材又は付着部材となるように、第1節点部21、第2節点部22及び複数の脚部3が、補強リブ13、縦主筋15及び横方向筋16とともに、経時硬化性材料5に埋め込まれた状態で用いられるものとなる。
【0104】
本発明を適用した合成床スラブ構造10は、最後に、建築物の梁等の上方において、複数の補強リブ13が床スパン直交方向と一致する幅方向X1に並列して配置されるものとなるように、トラス状部材1、補強リブ13、縦主筋15及び横方向筋16が経時硬化性材料5に埋め込まれて、建築物等の床版が構築されるものとなる。
【0105】
本発明を適用した合成床スラブ構造10は、一般的に建築物等において使用される、コンクリート等の経時硬化性材料5の捨て型枠としてデッキプレート11が使用されるため、特別なデッキプレート製造設備を必要としないものとなり、設備投資費用を低減させることが可能となる。
【0106】
本発明を適用した合成床スラブ構造10は、トラス状部材1の各々の脚部3を様々な角度に傾斜させて、トラス状部材1の全体を変形させることで、順方向フック251の溝25a及び逆方向フック252の溝25aの各々に、複数の第2節点部22の各々を順次引っ掛けることができるため、トラス状部材1とデッキプレート11とを一体化させる作業を簡略に実施することが可能となる。
【0107】
本発明を適用した合成床スラブ構造10は、トラス状部材1、補強リブ13及び縦主筋15等が、フラットプレート12の片面12a側で硬化させたコンクリート等の経時硬化性材料5に埋め込まれることで、使用時上載荷重、又は、床スパンを大きくすることのできる組立配筋を提供することが可能となる。また、本発明を適用した合成床スラブ構造10は、トラス状部材1、補強リブ13及び縦主筋15等に、主として鋼材が用いられるものであるが、経時硬化性材料5に補強リブ13等が埋め込まれることで、火災発生時等の床版の耐火性能を向上させることが可能となる。
【0108】
本発明を適用した合成床スラブ構造10は、床スパンが大きくなった場合であっても、補強リブ13の高さを大きくすることを必要としないものとなり、補強リブ13の材料費の増大を抑制するとともに、補強リブ13に十分に曲げ引張応力を負担させて、第1実施形態又は第2実施形態のトラス状部材1による補強で十分な全体の剛性を確保することが可能となる。
【0109】
本発明を適用した合成床スラブ構造10は、図26に示すように、第1実施形態のトラス状部材1を用いる場合のほか、図8に示す第2実施形態のトラス状部材1を用いる場合であっても同様に、各々の脚部3を幅方向X1に傾斜させて変形させることができるため、フック25の溝25aの開口する向きを面内方向Xに調整して、第2節点部22をフック25の溝25aに引っ掛けることができる。
【0110】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0111】
1 :トラス状部材
10 :合成床スラブ構造
11 :デッキプレート
12 :フラットプレート
13 :補強リブ
13a :突出面
15 :縦主筋
16 :横方向筋
2 :節点部
21 :第1節点部
21a :上端面
22 :第2節点部
22a :下端面
23 :ネジ
24 :ボルトナット
25 :フック
25a :溝
251 :順方向フック
252 :逆方向フック
26 :線材
27 :ボルト
28 :打込み鋲
29 :位置保持部材
3 :脚部
4 :孔部
40 :隅点部
41 :側辺部
5 :経時硬化性材料
5a :経時硬化性材料の上面
5b :経時硬化性材料の下面
50 :プレキャストコンクリート
51 :現場打設コンクリート
6 :板材
60 :エキスパンドメタル
60a :切れ目
7 :鋼部材
7a :鋼板又は折板の上面
7b :鋼板又は折板の下面
7c :形鋼のフランジ部
7d :形鋼のウェブ部
7e :形鋼の溝部
7f :鋼管の外周面
7g :鋼管の内周面
7h :鋼管の管内部
70 :鋼板
71 :折板
72 :形鋼
73 :鋼棒
74 :鋼管
8 :コンクリート構造体
80 :地盤面
A :一方側
B :他方側
X :面内方向
X1 :幅方向
X2 :奥行方向
Y :面外方向
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