(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の突起部を配置する高さは、前記はんだによる接合面から前記第1の突起部の前記接合面側の面までの高さが1mm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の金属部材。
前記中心軸付近に向かうにしたがって厚さを薄くした三角形状または台形状の断面形状をなす前記第1の突起部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の金属部材。
前記第2の突起部を配置する高さは、前記他方の開放端から前記第2の突起部の前記他方の開放端側の面までの高さが1mm以上であることを特徴とする請求項9に記載の金属部材。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば半導体モジュールなどの半導体装置は、絶縁基板の表面の導電性板に半導体チップや他の構成部材などをはんだにより接合した構成を有する。このような半導体モジュールとして、絶縁基板のおもて面の導電性板にはんだにより接合された中空筒状の金属部材(以下、筒状コンタクト部材とする)に外部電極用端子を嵌め合わせることで、導電性板と外部電極用端子とを電気的に接続した装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。下記特許文献1では、外部電極用端子の底面の最大寸法を筒状コンタクト部材の空洞部の直径よりも若干大きくすることで、外部電極用端子と筒状コンタクト部材とを固く嵌め合わせている。
【0003】
従来の半導体モジュールの筒状コンタクト部材および外部電極用端子の構成について説明する。
図12は、従来の半導体モジュールの要部の構成を示す断面図である。
図13は、従来の半導体モジュールの要部の構成を示す平面図である。
図13には、
図12の筒状コンタクト部材110の本体筒部101を当該本体筒部101の中心軸と直交する切断面XYで切断し、当該切断面XYから積層基板120側を見たときの筒状コンタクト部材110の空洞部104および外部電極用端子125の平面形状を示す。なお、
図12,13は、それぞれ下記特許文献1の
図14,12に相当する。
【0004】
図12,13に示すように、筒状コンタクト部材110は、中空筒状の本体筒部101と、本体筒部101の両開放端110a,110bにそれぞれ設けられたフランジ102,103と、を備える。筒状コンタクト部材110の一方の開放端110aのフランジ102は、積層基板120のおもて面の導電性板122にはんだ(不図示)により接合されている。積層基板120は、セラミック基板121のおもて面に銅(Cu)箔により導電性板122を形成し、セラミック基板121の裏面に銅箔123を形成してなる。筒状コンタクト部材110は、導電性板122および図示省略するワイヤ(不図示)を介して半導体チップ124に電気的に接続されている。
【0005】
外部電極用端子125の一方の端部は、ケース126の貫通孔127からケース126の外側に突出している。外部電極用端子125の他方の端部は、筒状コンタクト部材110の本体筒部101(空洞部104)に圧入され、筒状コンタクト部材110に嵌め合わされることで固定されている。外部電極用端子125は、筒状コンタクト部材110を介して半導体チップ124に電気的に接続されている。外部電極用端子125は略正四角柱状をなし、その底面の最大寸法(対角線の長さ)d102は筒状コンタクト部材110の本体筒部101の内径(空洞部104の直径)d101よりも若干大きい(d101<d102)。筒状コンタクト部材110の本体筒部101の平面形状は、外部電極用端子125の底面の形状に合わせてわずかに変形している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、
図12,13に示す筒状コンタクト部材110の本体筒部101に外部電極用端子125を圧入して嵌め合わせる構成の従来の半導体モジュールでは、次の問題が生じる。
図10,11は、従来の半導体モジュールの組立途中の状態を模式的に示す断面図である。
図10には、筒状コンタクト部材110を積層基板120上にはんだ付けした際に、はんだ上がり性(はんだ付け性)に起因して生じるはんだ付け不良の一例を示す。
図11には、筒状コンタクト部材110の本体筒部101に外部電極用端子125を圧入する際に生じる不良の一例を示す。
【0008】
図10に示すように、筒状コンタクト部材110の一方の開放端110aのフランジ102を積層基板120上にはんだ128により接合する際に、はんだ128は毛細管現象によって本体筒部101の内壁110cまで這い上がる。このとき、筒状コンタクト部材110の空洞部104の形状によって、本体筒部101の内壁110cにはんだ128が這い上がりやすくなる。また、積層基板120上にペースト状のはんだ128を形成し、はんだ128上に筒状コンタクト部材110を設置し、リフロー炉で加熱することで、積層基板120と筒状コンタクト部材110とをはんだ接合する方法がある。この場合、リフロー炉内を減圧して、はんだ128に内在するガスを除去し、はんだ128内にボイドができないようにするが、リフロー炉内の減圧時、はんだ128に内在するガスが膨張した際に、はんだ128が飛散する場合がある。これらにより、筒状コンタクト部材110の一方の開放端110a側から他方の開放端110b(外部電極用端子125の挿入口)側に本体筒部101の内壁110cをはんだ128aが這い上がり、例えば滑らかに広がらずに固まったような厚い状態で本体筒部101の内壁110cに残る虞がある。
【0009】
はんだ128aの這い上がりが生じた場合、
図11(a)に示すように、本体筒部101の内壁110cに付着したはんだ128aよりも奥(導電性板122側)まで外部電極用端子125を挿入することができない。また、外部電極用端子125の圧入時に、本体筒部101の内壁110cのはんだ128aが付着している箇所において外部電極用端子125に負荷がかかる。これにより、
図11(b)に示すように、外部電極用端子125が曲がったり、折れたりしてしまう。または、本体筒部101の内壁110cにはんだ128aが付着した状態で、外部電極用端子125を挿入することにより、本体筒部101と導電性板122とを接合していたはんだ128が破損し、本体筒部101が導電性板122から取れてしまう虞がある。また、筒状コンタクト部材110から外部電極用端子125が抜けやすくなってしまう。このため、半導体チップ124と外部電極用端子125との接続不良が生じる虞がある。
【0010】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、筒状コンタクト部材に外部電極用端子を挿入して嵌め合わせる構成の半導体装置において、組立不良をなくすことができる半導体装置、金属部材および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる金属部材は、両端に開放端を備え、半導体チップまたは導電性板に前記開放端の一方をはんだにより接合されうる金属部材であって、前記開放端の他方から外部電極用端子が挿入され嵌め合わされうる中空筒状の筒部と、前記筒部の前記一方の開放端側の内壁
のみ、前記筒部の中心軸と直交する方向に内側に張り出した第1の突起部を有
し、前記内壁が前記開放端から前記第1の突起部までが平坦かつ直線状であることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる金属部材は、上述した発明において、前記内壁の全周にわたる前記第1の突起部を有することを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる金属部材は、上述した発明において、前記一方の開放端に、前記中心軸と直交する方向に外側に張り出したフランジを有することを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる金属部材は、上述した発明において、前記第1の突起部の厚さは、0.1mm以上1.6mm以下であることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる金属部材は、上述した発明において、前記第1の突起部の幅wとの比率が0.2≦2×w/d≦0.8を満たす内径dを有することを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる金属部材は、上述した発明において、前記第1の突起部を配置する高さは、前記はんだによる接合面から前記第1の突起部の前記接合面側の面までの高さが1mm以上であることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる金属部材は、上述した発明において、矩形
状の断面形状をなす前記第1の突起部を有することを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる金属部材は、上述した発明において、前記中心軸付近に向かうにしたがって厚さを薄くした三角形状または台形状の断面形状をなす前記第1の突起部を有することを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる金属部材は、上述した発明において、前記他方の開放端側の内壁に、前記中心軸と直交する方向に内側に張り出した第2の突起部を有することを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる金属部材は、上述した発明において、前記第2の突起部を配置する高さは、前記他方の開放端から前記第2の突起部の前記他方の開放端側の面までの高さが1mm以上であることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる金属部材は、上述した発明において、前記内壁に固定されるように、前記第1の突起部を嵌め合わせてなることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる金属部材は、上述した発明において、前記内壁に固定されるように、前記第2の突起部を嵌め合わせてなることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる金属部材は、上述した発明において、前記第1の突起部は、前記筒部の側壁の一部を内側に変形させてなることを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる金属部材は、上述した発明において、前記第2の突起部は、前記筒部の側壁の一部を内側に変形させてなることを特徴とする。
【0025】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、前記半導体チップまたは前記導電性板に、上述した金属部材の前記一方の開放端がはんだにより接合されたことを特徴とする。
【0026】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、前記半導体チップと、前記導電性板と、を絶縁基板上に実装した半導体装置の製造方法であって、次の特徴を有する。まず、前記半導体チップ上または前記導電性板上に、上述した金属部材の前記一方の開放端を、はんだにより接合する第1工程を行う。次に、前記金属部材の前記他方の開放端から前記外部電極用端子を圧入して、前記金属部材に前記外部電極用端子を嵌め合わせる第2工程を行う。
【0027】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、端部の尖った前記外部電極用端子を圧入することを特徴とする。
【0028】
上述した発明によれば、金属部材のはんだ付け時に、金属部材の内壁を這い上がったり飛散したはんだが突起部よりも上方側(絶縁基板上の導電性板に接合されていない他方の端部側)まで這い上がることを防止することができる。これにより、金属部材の内壁を這い上がったり飛散したはんだを金属部材の下端側(絶縁基板上の導電性板に接合された一方の端部側)で塞き止めることができる。このため、金属部材に外部電極用端子を挿入するときに、外部電極用端子にはんだによる負荷がかかることはない、または外部電極用端子にかかる負荷は無視できるほど小さい。これによって、金属部材の内壁に這い上がったり飛散したはんだを原因として、外部電極用端子を所定深さまで挿入することができなかったり、外部電極用端子が曲がったり折れたりすることを防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明にかかる半導体装置、金属部材および半導体装置の製造方法によれば、筒状コンタクト部材に外部電極用端子を挿入して嵌め合わせる構成の半導体装置において、組立不良をなくすことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置、金属部材および半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0032】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体装置の構成について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置の構成を示す説明図である。
図2は、実施の形態1にかかる半導体装置の要部の構成を詳細に示す説明図である。
図1(b)には、
図1(a)の切断線X−X’における断面で切断し、当該断面から積層基板20の奥行方向を見たときの状態を示す。なお、
図1では積層基板20のおもて面側を覆うケースを図示省略する。
図1(a)では、
図1(b)のワイヤー26を図示省略する。
図2(a)は、導電性板22に接合された筒状コンタクト部材10の断面構造を示す断面図である。
図2(b)は、
図2(a)の筒状コンタクト部材10を開放端10b側から見たときの平面構造を示す平面図である。
図2(c)は、筒状コンタクト部材10の本体筒部1に外部電極用端子25を嵌め合わせた状態を示す断面図である。
図2(d)は、
図2(c)の切断面X2から積層基板20側を見たときの筒状コンタクト部材10の空洞部4および外部電極用端子25の平面形状を示す平面図である。
【0033】
図1に示す実施の形態1にかかる半導体装置は、積層基板20のおもて面の導電性板22に、設計条件に基づく所定の平面レイアウトに半導体チップ24や他の構成部材などをはんだ(不図示)により接合した構成の半導体モジュールである。具体的には、実施の形態1にかかる半導体装置は、積層基板20上の半導体チップ24または導電性板22に、筒状コンタクト部材10の一方の開放端10aをはんだ27により接合され、他方の開放端10bから外部電極用端子25が挿入され嵌め合わされた半導体装置である。積層基板20は、例えば、絶縁基板21のおもて面に銅(Cu)箔により導電性板22を形成し、絶縁基板21の裏面に銅箔23を形成する。なお、絶縁基板21には、アルミナや窒化アルミニウムなどのセラミックが用いられる。積層基板20の裏面の銅箔23は、例えばヒートシンク(不図示)にはんだ接合されている。積層基板20のおもて面の導電性板22には、半導体チップ24および筒状コンタクト部材(金属部材)10が配置されている。半導体チップ24の裏面電極(不図示)は導電性板22にはんだ(不図示)により接合される。半導体チップ24にはおもて電極(不図示)が設けられ、おもて面電極はワイヤー26を介して導電性板22に電気的に接続されている。また、半導体チップ24のおもて電極は、はんだ27を介して筒状コンタクト部材10の一方の開放端と接合されていてもよい。
【0034】
図2に示すように、筒状コンタクト部材10は、中空筒状の本体筒部1と、本体筒部1の両開放端10a,10bにそれぞれ設けられたフランジ(輪縁)2,3と、本体筒部1の内部(空洞部4)に設けられた突起部5と、を備えた金属部材である。筒状コンタクト部材10の材質は、導電性の優れた材料で、所定の強度を満足し、はんだ27との接合性の優れた材料が望ましい。特に好ましくは、筒状コンタクト部材10の材質は例えば銅乃至銅合金である。また、筒状コンタクト部材10の本体筒部1の表面(内壁10cや外壁)に銅めっきやニッケル(Ni)めっきを施してもよい。筒状コンタクト部材10は、導電性板22上にはんだ付けされており、導電性板22およびワイヤー26を介して半導体チップ24のおもて面電極に電気的に接続されている。筒状コンタクト部材10は、半導体チップ24のおもて面電極に直にはんだ接合されてもよい。筒状コンタクト部材10の本体筒部1には外部電極用端子25が嵌め合わせられ、筒状コンタクト部材10を介して半導体チップ24のおもて面電極と電気的に接続されている。
【0035】
具体的には、本体筒部1は、外部電極用端子25を安定して固定可能な所定長さの中空筒状をなす。本体筒部1の内径(空洞部4の直径)d1は、外部電極用端子25を嵌め合わせることができる程度に、外部電極用端子25の直径d2よりも若干大きい。フランジ2,3は、本体筒部1の両開放端10a,10bからそれぞれ本体筒部1の中心軸と直交する方向(
図2の横方向)に外側に所定幅で張り出したリング状(鍔状)をなし、本体筒部1の外壁の例えば全周にわたって設けられている。本体筒部1の一方の開放端10aのフランジ2は、積層基板20のおもて面の導電性板22上にはんだ27により接合されている。本体筒部1の、導電性板22とはんだ接合される側の開放端10aのみにフランジ2が設けられてもよい。これにより、後述するように本体筒部1の一方の開放端10a側に配置された突起部5の位置をフランジ2の有無によって確認することができ、筒状コンタクト部材10をはんだ接合する際の方向性の選択が容易となる。一方、本体筒部1の両開放端10a,10bにそれぞれフランジ2,3を設けることで、筒状コンタクト部材10の形成時に方向性を選ばずに突起部5を取付け可能な構造となるため、筒状コンタクト部材10を形成するときの作業効率が向上する。筒状コンタクト部材10の形成方法については後述する。
【0036】
筒状コンタクト部材10(本体筒部1)の一方の開放端10a(筒状コンタクト部材10の下端)は、導電性板22上へのはんだ付けにより閉塞されている。すなわち、筒状コンタクト部材10の一方開放端10aの端面ははんだ27との接合面となる。なお、筒状コンタクト部材10の一方の開放端10aは、はんだ27によって完全に閉塞されていなくてもよいが、フランジ2と導電性板22とははんだ付けされていることが望ましい。筒状コンタクト部材10(本体筒部1)の他方の開放端10b(筒状コンタクト部材10の上端)は開放され、外部電極用端子25の挿入口となっている。突起部5は、筒状コンタクト部材10の一方の開放端10a側に配置されている。また、
図2(b)に示すように、突起部5は、本体筒部1の内壁10cから本体筒部1の中心軸と直交する方向に内側に例えば所定幅w1で張り出したリング状をなし、本体筒部1の内壁10cの全周にわたって設けられている。この突起部5を境に、筒状コンタクト部材10の空洞部4は、突起部5よりも筒状コンタクト部材10の他方の開放端10b側の第1領域Aと、突起部5よりも筒状コンタクト部材10の一方の開放端10a側の第2領域Bとに分離されている。なお、突起部5は、本体筒部1とは別の部材により形成されてもよいし、本体筒部1を変形させて形成されてもよい。本体筒部1を変形させて形成した突起部5の一例については後述する実施の形態3において説明する。
【0037】
突起部5は、筒状コンタクト部材10のはんだ付け時に、毛細管現象により本体筒部1の内壁10cに這い上がったり、飛散したはんだ27aが筒状コンタクト部材10の上端側の第1領域Aまで這い上がったり、飛散することを防止する機能を有する。はんだ27aの這い上がりおよび飛散防止とは、筒状コンタクト部材10の下端側から第1領域Aまではんだ27aが這い上がったり飛散しない、または第1領域Aまではんだ27aが這い上がったり、飛散したとしても外部電極用端子25の挿入時に組立不良を生じさせない程度であることをいう。外部電極用端子25の挿入時に生じる組立不良とは、外部電極用端子25を所定深さまで挿入することができないことや、挿入時に外部電極用端子25が曲がったり折れたりしてしまうことである。また、突起部5は、本体筒部1の内壁10cに這い上がったり飛散したはんだ27aを筒状コンタクト部材10の下端側の第2領域B内にほぼ塞き止める機能を有する。すなわち、突起部5は、筒状コンタクト部材10と導電性板22とを接合するはんだ27が破損し、本体筒部1が導電性板22から取れてしまうことを防止する。そのため、突起部5は、本体筒部1の内壁10cの全周にわたって設けられていることが好ましいが、はんだ27aが這い上がったり飛散することを防ぐことができれば、全周にわたって設けられていなくてもかまわない。
【0038】
突起部5の幅w1は、本体筒部1の内径d1の1/2倍よりも狭いことがよい。具体的には、突起部5の幅w1は、本体筒部1の内径d1に対して、0.2≦2×w1/d1≦0.8を満たすことが好ましい。すなわち、突起部5は、本体筒部1の内壁10cを分離することができればよく、本体筒部1の内径d1と同じ寸法の外径を有し、かつ例えば本体筒部1の中心軸付近に位置する略円形状の孔部5aによる所定の内径w2を有するリング状の平面形状をなす。したがって、第1領域Aと第2領域Bとの間は突起部5によって完全に塞がれておらず、第1領域Aと第2領域Bとは連続した領域となっている。
【0039】
仮に、円形状の平面形状を有する突起部5によって第1領域Aと第2領域Bとの間を完全に塞いだ場合(w2=0)、筒状コンタクト部材10のはんだ付け時に発生するはんだフラックス等の溶融ガス(気体)を筒状コンタクト部材10の外側に逃がすことができない。この溶融ガスは、はんだ27の内部にボイド(気泡)を生じさせ、はんだ不良を生じさせる原因となる。このため、第1領域Aと第2領域Bとを本体筒部1の中心軸に平行な方向につなげて、筒状コンタクト部材10の他方の開放端10bから外側に溶融ガスが流動可能な幅の孔(以下、孔部とする)5aの空いたリング状の平面形状に突起部5を設けることが好ましい。
【0040】
突起部5の孔部5aは、例えば円形状の平面形状を有する。突起部5の内径(孔部5aの幅(直径))w2は、筒状コンタクト部材10のはんだ付け時に発生する溶融ガスを、筒状コンタクト部材10の他方の開放端10bから外側に十分に逃がすことができる寸法とすることが好ましい。突起部5の孔部5aの位置、寸法および平面形状は、第1領域Aと第2領域Bとを本体筒部1の中心軸に平行な方向につながった領域とすることができ、かつ筒状コンタクト部材10のはんだ付け時に発生する溶融ガスを筒状コンタクト部材10の外側に十分に逃がすことができる所定面積を有していればよく、種々変更可能である。
【0041】
また、突起部5は、本体筒部1の中心軸と直交する方向に一様な厚さt1の略矩形状の断面形状を有する。突起部5の断面形状を略矩形状とすることで、所定の強度を有することができる。また、突起部5の断面形状を略矩形状とした場合、突起部5の形状が単純であるため、筒状コンタクト部材10を安価に作成することができる。突起部5の厚さt1は、筒状コンタクト部材10の本体筒部1に外部電極用端子25を圧入(挿入)するときの荷重によって突起部5が容易に変形する厚さに設定されていることが好ましい。すなわち、突起部5の厚さt1は、外部電極用端子25の挿入時の荷重によって例えば突起部5の孔部5aを広げ、変形させることができる厚さとする。具体的には、突起部5の厚さt1は、突起部5の構成材料や内径w2、形成方法によって種々調整可能であり、例えば0.1mm以上1.6mm以下程度であってもよい(0.1mm≦t1≦1.6mm)。
図2(d)に示すように、外部電極用端子25の切断面XYでの平面形状(外部電極用端子25の底面の形状)は例えば略四角形状であってもよい。これにより、筒状コンタクト部材10の本体筒部1に外部電極用端子25を強固に嵌め合わせることができる。外部電極用端子25の下端部(積層基板20側の端部)25aは、面取りされていたり、尖っていることが望ましい。その理由は、筒状コンタクト部材10の本体筒部1に外部電極用端子25を圧入(挿入)するときに、外部電極用端子25の下端部25aによって突起部5を容易に変形させやすいからである。
【0042】
突起部5を配置する高さh1は、筒状コンタクト部材10の一方の開放端10aのフランジ2の下面(積層基板20側の表面)から突起部5の下面までの高さが例えば1mm以上程度となる高さであることが好ましい(h1≧1mm)。その理由は、次の通りである。筒状コンタクト部材10に嵌め合わされたときの外部電極用端子25の下端部25aの高さh2は、筒状コンタクト部材10の一方の開放端10aのフランジ2の下面から例えば0.5mm以上2.0mm以下程度となる。このため、突起部5を配置する高さh1を1mm以上程度とすることで、本体筒部1の内壁10cにはんだ27aが這い上がったり飛散したとしても、外部電極用端子25の下端部25aまでの隙間内ではんだ27aの這い上がりや飛散を止めることができるからである。すなわち、突起部5を配置する高さh1は、本体筒部1の所定深さまで挿入された外部電極用端子25の下端部25aとの間に隙間ができるように、本体筒部1の内壁10cに這い上がったり飛散したはんだ27aを塞き止め可能な高さに設定されている。なお、フランジ2,3が配置されていない場合には、突起部5を配置する高さh1は、筒状コンタクト部材10の一方の開放端10aの端面から突起部5の下面までの高さである。
【0043】
また、突起部5を配置する高さh1は、外部電極用端子25の下端部25aの高さh2に対して、h1≦2×h2を満たすことが好ましい。具体的には、突起部5を配置する高さh1は、例えば4mm以下程度であることが好ましい(h1≦4mm)。突起部5を配置する高さh1を4mmよりも大きくした場合、空洞部4に占める第2領域B(はんだ27aが這い上がったり飛散する領域)の割合が大きくなり、かつ外部電極用端子25の第2領域Bに露出される部分の割合も大きくなる。このため、第2領域B内ではんだ27aの這い上がりや飛散を塞き止めたとしても、第2領域B内に這い上がったり飛散したはんだ27aによる悪影響が外部電極用端子25に及ぶことを抑制することができないからである。したがって、突起部5を配置する高さh1は、1≦h1≦2×h2を満たすことが好ましい。
【0044】
このように、突起部5は、筒状コンタクト部材10のはんだ付け時にはんだ27aの這い上がりや飛散を第2領域B内に塞き止め可能な幅w1を有し、かつ外部電極用端子25の挿入時に妨げにならない厚さt1を有する。また、突起部5は、筒状コンタクト部材10の下端から第2領域B内に這い上がったり飛散したはんだ27aの悪影響が外部電極用端子25に及ばない高さh1に配置される。突起部5の構成材料は、筒状コンタクト部材10の本体筒部1と同じ金属材料であることが好ましい。その理由は、導電性、強度ともに優れているからである。また、筒状コンタクト部材10と突起部5とを異種材料とした場合、筒状コンタクト部材10と突起部5との接合部において、電気抵抗が増加したり、応力による割れが生じる虞があるからである。しかし、突起部5の構成材料は、突起部5の形成方法によっては本体筒部1と異なる材料であってもよいし、カーボンやセラミックスなどはんだ濡れ性の悪い材料であってもよい。なお、筒状コンタクト部材10と突起部5とを異種材料とする場合、突起部5の構成材料は、封止材と反応せず、はんだ接合時の加熱に耐えられる材料であることが望ましい。
【0045】
上述した実施の形態1にかかる半導体装置を作製(製造)するには、まず、絶縁基板21上に実装した半導体チップ24上または導電性板22上に、筒状コンタクト部材10の一方の開放端10aを、はんだ27により接合する(第1工程)。そして、筒状コンタクト部材10の他方の開放端10bから外部電極用端子25を圧入して、筒状コンタクト部材10に外部電極用端子25を嵌め合わせればよい(第2工程)。具体的には、第1工程においては、半導体チップ24または導電性板22にペースト状または板状のはんだ27を形成し、はんだ27上に筒状コンタクト部材10の一方の開放端10aを絶縁基板21側にして設置し、リフロー炉で加熱することによってなされる。このようして、筒状コンタクト部材10の一方の開放端10aは、半導体チップ24のおもて電極または導電性板22と、はんだ27により接合される。第2工程においては、筒状コンタクト部材10の他方の開放端10bに外部電極用端子25を圧入して嵌め合わせる。これにより、外部電極用端子25は、筒状コンタクト部材10の一方の開放端10aの内壁10cに形成された突起部5を変形して筒状コンタクト部材10に嵌め合わされる。
【0046】
次に、筒状コンタクト部材10の形成方法について説明する。まず、本体筒部1およびフランジ2,3を有する筒状コンタクト部材10と、リング状の平面形状を有する突起部5とをそれぞれ個々に成形(形成)する。次に、突起部5を配置する高さh1に位置決め治具の表面が位置するように、例えば筒状コンタクト部材10の一方の開放端10a側から本体筒部1の内部に位置決め治具を挿入する。次に、筒状コンタクト部材10の他方の開放端10b側から本体筒部1の内部に突起部5を挿入し、位置決め治具の高さ位置に合わせて突起部5を本体筒部1に嵌め込む。この際、突起部5の直径は、本体筒部1の内径より100μm程度大きくすることが望ましい。これによって、突起部5を本体筒部1に嵌め込んだ後に、突起部5が本体筒部1から外れることを防止することができる。または、位置決め治具に突起部5を配置し、位置決め治具に本体筒部1を上部より嵌めこんでもよい。このようにして、本体筒部1、フランジ2,3および突起部5を有する筒状コンタクト部材10が完成する。位置決め治具の材質としては、ステンレスなどの合金やタングステンカーバイドなどの超硬合金が、強度の点から、好ましい。この方法によれば、突起部5の構成材料によらず、突起部5を有する筒状コンタクト部材10を形成可能である。
【0047】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、筒状コンタクト部材の下端側に配置されるように、本体筒部の内壁の全周にわたってリング状の平面形状を有する突起部を設けることで、筒状コンタクト部材のはんだ付け時に、本体筒部の内壁を這い上がったり飛散したはんだが突起部よりも上方側の第1領域まで這い上がることを防止することができる。これにより、本体筒部の内壁を這い上がったり飛散したはんだを筒状コンタクト部材の下端側で塞き止めることができる。このため、筒状コンタクト部材に外部電極用端子を挿入するときに、外部電極用端子にはんだによる負荷がかかることはない、または外部電極用端子にかかる負荷は無視できるほど小さい。このため、本体筒部の内壁に這い上がったり飛散したはんだを原因として、外部電極用端子を所定深さまで挿入することができなかったり、外部電極用端子が曲がったり折れたりするなどの組立不良をなくすことができる。したがって、良品率を向上させることができる。
【0048】
また、実施の形態1によれば、外部電極用端子の圧入による荷重によって外部電極用端子が突起部を変形させることが可能な寸法で突起部を形成することで、筒状コンタクト部材に外部電極用端子を所定深さまで挿入することができる。このため、筒状コンタクト部材から外部電極用端子を抜けづらくすることができる。また、実施の形態1によれば、外部電極用端子の挿入時の組立不良をなくすことができるため、外部電極用端子と筒状コンタクト部材との嵌め合わせに関する不良発生を検出する工程や設備が不要となる。また、実施の形態1によれば、筒状コンタクト部材に突起部を設けることで、はんだの這い上がりや飛散を抑制するために施される、はんだ材の仕様変更や積層基板の表面処理等の他の対策に比べて、はんだの這い上がりや飛散を防止する効果を容易に得ることができる。
【0049】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる半導体装置の構成について説明する。
図3は、実施の形態2にかかる半導体装置の構成を示す断面図である。実施の形態2にかかる半導体装置は、筒状コンタクト部材10の本体筒部1の内壁10cに設けられた、はんだ27aの這い上がりおよび飛散防止用の突起部31,32の断面形状が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる。
【0050】
具体的には、
図3に示すように、筒状コンタクト部材10の本体筒部1の内部に、本体筒部1の中心軸付近に向かうにしたがって厚さt1を薄くした、略三角形状の断面形状を有する突起部31(
図3(a))や略台形状の断面形状を有する突起部32(
図3(b))が設けられている。突起部31,32の幅w1および内径w2、および、突起部31,32を配置する高さh1は、実施の形態1と同様である(
図2参照)。略三角形状や略台形状の断面形状を有する突起部31,32を備えた筒状コンタクト部材10の形成方法は、実施の形態1と同様である。突起部31,32の断面形状を略三角形状や略台形状とすることで、筒状コンタクト部材10に外部電極用端子25を圧入するとき、突起部31,32を変形させる力を低減させることができる。したがって、軽い力で筒状コンタクト部材10の所定の深さまで外部電極用端子25を圧入することができる。
【0051】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0052】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる半導体装置の構成について説明する。
図4は、実施の形態3にかかる半導体装置の構成を示す断面図である。実施の形態3にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、本体筒部1の側壁を内側に塑性変形させることで、はんだ27aの這い上がりおよび飛散防止用の突起部33を形成している点である。具体的には、
図4に示すように、筒状コンタクト部材30の本体筒部1の側壁の全周にわたって、本体筒部1の一部を内側に塑性変形させてなる略半円形状や略半楕円形状の断面形状を有する突起部33が設けられている。
【0053】
突起部33を配置する高さh1や、突起部33の幅w1および内径w2は、実施の形態1と同様である(
図2参照)。突起部33を形成する高さh1とは、筒状コンタクト部材30の一方の開放端10aのフランジ2の下面から突起部33の下端部(積層基板20側の端部)33aまでの高さである。突起部33の端部33a,33bとは、本体筒部1の側壁が曲がり始めている箇所である。突起部33の幅w1とは、本体筒部1の内壁10cから突起部33の最も突出した頂点部33cまでの距離である。突起部33の内径w2とは、突起部33の最も突出した頂点部33c間の距離である。
【0054】
突起部33の幅w1および厚さt3は、突起部33の断面形状が略半円形状である場合にはともに突起部33の直径に相当し、略半楕円形状である場合にはそれぞれ突起部33の長軸の1/2の長さおよび短軸の長さに相当する。突起部33は、本体筒部1の側壁の一部を塑性変形させて略半円形状または略半楕円形状に湾曲させることで金属厚さの薄くなった部分である。突起部33の幅w1および厚さt3は、本体筒部1の側壁の一部を塑性変形させることによって金属厚さの薄くなった部分を外部電極用端子25の圧入時の荷重によって本体筒部1の内壁10c側に押し潰すことができる程度に薄い金属厚さにすることができる寸法に設定される。
【0055】
略半円形状や略半楕円形状の断面形状を有する突起部33を備えた筒状コンタクト部材30は、例えば、次のように形成すればよい。まず、本体筒部1およびフランジ2,3を有する筒状コンタクト部材30を例えば一体成形により形成する。次に、筒状コンタクト部材30の本体筒部1を旋盤に装着する。次に、本体筒部1の外壁に所定形状のバイトを押し付けながら中心軸回りに筒状コンタクト部材30を回転させることで、本体筒部1の側壁の全周にわたって本体筒部1の一部を内側に塑性変形させる。これによって、略半円形状や略半楕円形状の断面形状を有する突起部33を備えた筒状コンタクト部材30が完成する。
【0056】
以上、説明したように、実施の形態3によれば、実施の形態1,2と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4にかかる半導体装置の構成について説明する。
図5は、実施の形態4にかかる半導体装置の構成を示す断面図である。実施の形態4にかかる半導体装置が実施の形態1にかかる半導体装置と異なる点は、さらに、筒状コンタクト部材40の他方の開放端10b側にも、はんだ27aの這い上がりおよび飛散防止用の突起部(以下、第2突起部とする)41が設けられている点である。すなわち、筒状コンタクト部材40の本体筒部1の内壁10cには、筒状コンタクト部材40の一方の開放端10a側に第1突起部5が設けられ、かつ他方の開放端10b側に第2突起部41が設けられている。
【0058】
実施の形態4においては、筒状コンタクト部材40のいずれの開放端10a,10bにそれぞれフランジ2,3を設けて対称的な構造とすることが好ましい。その理由は、次の通りである。本体筒部1の内壁10cにも開放端10a,10b側にそれぞれ第1,2突起部5,41が設けられ対称的な構造となっている。このため、筒状コンタクト部材40のいずれの開放端10a,10bのフランジ2,3を導電性板22との接合面にしたとしても、本体筒部1の内壁10cに這い上がったり飛散したはんだ27aが筒状コンタクト部材40の下端側に配置された突起部(第1突起部5または第2突起部41)を超えて筒状コンタクト部材40の上端側に這い上がり飛散することを防止することができるからである。すなわち、筒状コンタクト部材40は、方向性を選ばずにはんだ付け可能な構造となっている。また、筒状コンタクト部材40のいずれの開放端10a,10b側のフランジ2,3を導電性板22との接合面としてもよいため、組立間違い等による組立不良を低減させることができ、組立時の作業効率が向上する。
【0059】
第1突起部5の構成は、実施の形態1と同様である。第2突起部41の構成は、例えば、第1突起部5の構成と同様である。第1,2突起部5,41は、例えば、本体筒部1の中心軸方向の全長の1/2の深さを通り、かつ本体筒部1の中心軸と直交する切断面に対して略面対称に配置されている。また、第2突起部41は、上述した幅w1、内径w2および配置する高さh1の条件を満たしていればよく、第1突起部5と異なる構成であってもよい。第2突起部41を配置する高さh1とは、筒状コンタクト部材40の他方の開放端10bのフランジ3の下面から第2突起部41の上面(筒状コンタクト部材40の他方の開放端10b側の面)までの高さである。筒状コンタクト部材40の形成方法は、位置決め治具に第1,2突起部5,41を離して配置し、位置決め治具に本体筒部1を上部より嵌め込めばよい。
【0060】
以上、説明したように、実施の形態4によれば、実施の形態1〜3と同様の効果を得ることができる。
【0061】
(実施例1)
次に、はんだ27aの這い上がりおよび飛散防止用の突起部5の幅w1について検証した。
図6は、実施例1にかかる半導体装置の突起部の幅について検証した結果を示す図表である。実施の形態1にかかる半導体装置の構成にしたがい、突起部5の幅w1と本体筒部1の内径d1との比率(=2×w1/d1)が異なる筒状コンタクト部材10をはんだ付けした複数の試料を作製した。突起部5を配置する高さh1は1mmとし、突起部5の厚さt1は0.1mmとした。本体筒部1には、内径d1が1mmの中空筒状部材を用いた。これら各試料において、はんだ27aの這い上がりや飛散の有無を判定した結果を
図6に示す。
図6では、第1領域Aへのはんだ27aの這い上がりや飛散を防止することができた場合を○とし、第1領域Aまではんだ27aの這い上がりや飛散が生じた場合を×とした。
【0062】
図6に示す結果より、突起部5の幅w1と本体筒部1の内径d1との比率が0.2≦2×w1/d1≦0.8を満たす場合に、第2領域Bから第1領域Aへのはんだ27aの這い上がりおよび飛散を防止することができることが確認された。このとき、はんだ27aの濡れ上がった厚さt2は0.3mmであることが確認された。はんだ27aの濡れ上がった厚さt2とは、本体筒部1の内壁10cに這い上がったり飛散したはんだ27aの表面張力(はんだ27aと本体筒部1の内壁10cとの界面張力)に基づいて本体筒部1の内壁10cに円弧状に膨らんだはんだ27aの膨らみの最大厚さである。このため、突起部5の幅w1は0.3mm以上であることが好ましい。例えば、本体筒部1の内径d1が1mmの場合、上記範囲において最小の突起部5の幅w1は0.1mmである(0.2=2×w1[mm]/1[mm])。したがって、突起部5の幅w1がはんだ27aの濡れ上がった厚さt2の1/3以上の幅があれば、はんだ27aの這い上がりおよび飛散を防止する効果があることが確認された(w1≧t2/3)。図示省略するが、突起部5を配置する高さh1は1mmより高くても同様の結果を得られることが発明者らによって確認されている。また、突起部5の厚さt1は0.1mmより厚くても同様の結果を得られることが発明者らによって確認されている。
【0063】
(実施例2)
次に、はんだ27aの這い上がりおよび飛散防止用の突起部5の厚さt1について検証した。
図7は、実施例2にかかる半導体装置の突起部の厚さについて検証した結果を示す図表である。実施の形態1にかかる半導体装置の構成にしたがい、突起部5の厚さt1が異なる筒状コンタクト部材10をはんだ付けし、筒状コンタクト部材10の本体筒部1に外部電極用端子25を圧入した複数の試料を作製した。外部電極用端子25を圧入するための加圧力は5kgfとした。これら各試料において、突起部5を変形させることができたか否かを判定した結果を
図7に示す。
図7では、突起部5を変形させることができた場合を○とし、突起部5を変形させることができなかった場合を×とした。なお、突起部5を配置する高さh1は1mmとした。そして、突起部5の幅w1と本体筒部1の内径d1との比率(=2×w1/d1)は0.2とした。
【0064】
図7に示す結果より、突起部5の厚さt1が0.1mm以上1.6mm以下の範囲内である場合に、外部電極用端子25を圧入したときの荷重によって突起部5を変形させることができることが確認された。
【0065】
(実施例3)
次に、はんだ27aの這い上がりおよび飛散防止用の突起部5を配置する高さh1について検証した。
図8は、実施例3にかかる半導体装置の突起部を配置する高さの下限値について検証した結果を示す図表である。
図9は、実施例3にかかる半導体装置の突起部を配置する高さの上限値について検証した結果を示す図表である。実施の形態1にかかる半導体装置の構成にしたがい、突起部5を配置する高さh1が異なる筒状コンタクト部材10をはんだ付けし、筒状コンタクト部材10の本体筒部1に外部電極用端子25を圧入した複数の試料を作製した。突起部5の幅w1と本体筒部1の内径d1との比率(=2×w1/d1)は0.2とした。突起部5の厚さt1は、0.2mmとした。
図8,9では、筒状コンタクト部材10の上端側の第1領域Aにはんだ27aが這い上がったり飛散していない、および第1領域Aにはんだ27aが這い上がったり飛散したとしても外部電極用端子25の挿入時に組立不良を生じさせない場合を○とし、第1領域Aにはんだ27aが這い上がったり飛散することで組立不良が生じた場合を×とした。
【0066】
図8に示す結果より、突起部5を配置する高さh1が1mm以上である場合に、第1領域Aへのはんだ27aの這い上がりや飛散が生じない、または第1領域Aにはんだ27aが這い上がったり飛散していても外部電極用端子25の挿入時に組立不良を生じさせない程度に良好であることが確認された。また、外部電極用端子25の下端部25aまでの高さh2の隙間内ではんだ27aの這い上がりや飛散を止めることができることが確認された。
図9に示す結果より、突起部5を配置する高さh1の上限値を、外部電極用端子25の下端部25aの高さh2に対してh1≦2×h2とすることで、第1領域Aへのはんだ27aの這い上がりや飛散が生じない、または第1領域Aにはんだ27aが這い上がったり飛散していても外部電極用端子25の挿入時に組立不良を生じさせない程度に良好であることが確認された。具体的には、突起部5を配置する高さh1は、1mm以上4mm以下とすることが好ましいことが確認された(1mm≦h1≦4mm)。
図9には、外部電極用端子25の下端部25aまでの高さh2を2mmとした場合を一例に示すが、外部電極用端子25の下端部25aまでの高さh2を種々変更した場合においても、突起部5を配置する高さh1を上記範囲とすることで同様の結果が得られることが発明者らによって確認されている。
【0067】
図示省略するが、実施の形態2〜4にかかる半導体装置についても実施の形態1と同様に上述した実施例1〜3の結果が得られることが発明者らによって確認されている。
【0068】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。