特許第6569469号(P6569469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569469
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】排水用レール部材
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/07 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   B62D25/07
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-210873(P2015-210873)
(22)【出願日】2015年10月27日
(65)【公開番号】特開2017-81371(P2017-81371A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(72)【発明者】
【氏名】神谷 浩一
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−086769(JP,U)
【文献】 特開2009−120099(JP,A)
【文献】 実開昭58−139378(JP,U)
【文献】 実開昭62−150277(JP,U)
【文献】 実開昭63−180115(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
B62D 33/00
B21D 19/08
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のキャブの側面に設けられる排水用レール部材であって、
長尺状の基部と、
前記基部の短手方向の端部から曲げられ、前記基部の長手方向に沿って設けられた壁部と、
前記壁部の先端に前記長手方向に沿って設けられた折り曲げ部と、
前記壁部において前記折り曲げ部よりも前記長手方向の外方へ延びている端部に形成された面取り部と、
を備える、排水用レール部材。
【請求項2】
前記面取り部は、前記壁部の前記長手方向の両端部の角にそれぞれ形成されている、
請求項1に記載の排水用レール部材。
【請求項3】
前記排水用レール部材は、塗装されており、
前記折り曲げ部と前記壁部との対向部分の周囲に、シーリング剤が塗布されている、
請求項1又は2に記載の排水用レール部材。
【請求項4】
前記面取り部は、前記壁部の前記端部の角に対して所定の曲率で面取りされている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の排水用レール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のキャブの側面に設けられる排水用レール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の大型車両は、車両の前後方向に延びている車体フレームに取り付けられたキャブを有する。キャブは、運転席を形成しており、ルーフパネル等の複数のパネルを接合した構造となっている。また、キャブには、雨水等を排水するための排水用レール部材であるドリップレールが、キャブの側面に沿って設けられている。
【0003】
ドリップレールは、長尺状の金属板をプレス加工した部材であるため、端部が鋭利になっている。このようなドリップレールにおいて、運転者等が端部に触れて怪我等をしないようにするため、例えば、ドリップレールの短手方向の端部側に、長手方向に沿って折り曲げ部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58−86769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の折り曲げ部は、通常、ヘム加工によって形成される。ヘム加工によって折り曲げ部を形成した場合には、折り曲げ部の端面と壁部の端面とにずれが発生しやすい。そして、2つの端面にずれが発生すると、折り曲げ部と壁部のいずれか一方の端部の角(エッジ)が、露出することになる。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、折り曲げ部を有する排水用レール部材の端部の角の露出を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様においては、車両のキャブの側面に設けられる排水用レール部材であって、長尺状の基部と、前記基部の短手方向の端部から曲げられ、前記基部の長手方向に沿って設けられた壁部と、前記壁部の先端に前記長手方向に沿って設けられた折り曲げ部と、前記壁部において前記折り曲げ部よりも前記長手方向の外方へ延びている端部に形成された面取り部と、を備える、排水用レール部材を提供する。
かかる排水用レール部材によれば、ヘム加工によって折り曲げ部を形成した際に折り曲げ部の端部が位置ずれしても、長手方向において折り曲げ部の端部が壁部の端部よりも外方に露出することを防止できる。また、壁部の折り曲げ部よりも外方へ延びている端部に面取り部を設けることによって、壁部の端部の角が露出することも防止できる。
【0008】
また、前記面取り部は、前記壁部の前記長手方向の両端部の角にそれぞれ形成されていることとしてもよい。
【0009】
また、前記排水用レール部材は、塗装されており、前記折り曲げ部と前記壁部との対向部分の周囲に、シーリング剤が塗布されていることとしてもよい。
【0010】
また、前記面取り部は、前記壁部の前記端部の角に対して所定の曲率で面取りされていることとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、折り曲げ部を有する排水用レール部材の端部の角の露出を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一の実施形態に係るキャブ1の骨格構造を示す斜視図である。
図2】キャブ1の骨格構造を示す側面図である。
図3図2のA−A断面の模式図である。
図4】ドリップレール60の後端60b側の構成を示す斜視図である。
図5】ドリップレール60の前端60a側の構成を示す斜視図である。
図6】壁部62及び折り曲げ部64の対向部分70を説明するための模式図である。
図7】シーリング剤90の塗布例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<車両のキャブの概要>
図1及び図2を参照しながら、本発明の一の実施形態に係る車両のキャブ1の概要について説明する。
【0014】
図1は、一の実施形態に係るキャブ1の骨格構造を示す斜視図である。図2は、キャブ1の骨格構造を示す側面図である。
キャブ1は、トラック等の大型車両に設けられている。具体的には、キャブ1は、車両の前後方向(図1のX方向)に延びている車体フレームに取り付けられている。キャブ1は、複数のパネルが接合した箱状体を成している。キャブ1の内部には、運転手等の乗員が座る室内空間である車室3が形成されている。
【0015】
図1及び図2に示すように、キャブ1は、ルーフパネル10と、一対のサイドパネル20、22と、フロントパネル30と、バックパネル40と、フロアパネル50と、ドリップレール60とを有する。ルーフパネル10等の各パネルは、例えば鋼鈑等の高強度材料から成り、プレス成形によって成形されている。また、パネル同士は、例えば溶接によって接合されている。
【0016】
ルーフパネル10は、車室3の天井面を形成している。ルーフパネル10は、天井を高くして車室3を広くするように(所謂ハイルーフ)、複数の鋼鈑を接合した構成となっている。
【0017】
一対のサイドパネル20、22は、キャブ1の車幅方向(図1のY方向)の両端側にそれぞれ設けられ、車室3の左右の側面を形成している。一対のサイドパネル20、22は、ルーフパネル10に接合されている。一対のサイドパネル20、22には、サイドドアが取り付けられるドア開口部20a、22aが形成されている。
【0018】
フロントパネル30は、車室3の前面を形成している。フロントパネル30は、一対のサイドパネル20、22に接合されている。
【0019】
バックパネル40は、車室3の背面を形成している。バックパネル40は、ルーフパネル10及び一対のサイドパネル20、22に接合されている。バックパネル40には、窓が取り付けられる窓開口部42が形成されている。
【0020】
フロアパネル50は、車室3の床面を形成している。フロアパネル50は、一対のサイドパネル20、22、フロントパネル30及びバックパネル40に接合されている。車両において、フロアパネル50の下方にはエンジンが設けられている。
【0021】
ドリップレール60は、キャブ1の側面(具体的には、車幅方向の両側)に設けられ、雨水等を排水するための排水用のレール部材である。これにより、サイドドアが開いた際に雨水がドア開口部20a、22aへ落下することを防止できる。ドリップレール60は、キャブ1の前後方向(図1のX方向)に沿って設けられており、図2に示す前端60a又は後端60bにて雨水を排水する。ドリップレール60は、ルーフパネル10とサイドパネル20、22に連結されている。
【0022】
<ドリップレール60の詳細構成>
図3図5を参照しながら、ルーフパネル10とサイドパネル20に連結されたドリップレール60の詳細構成の一例について説明する。なお、ルーフパネル10とサイドパネル22に連結されたドリップレールも、図3に示すドリップレール60と同様な構成であるので、説明は省略する。
【0023】
図3は、図2のA−A断面の模式図である。ドリップレール60は、図3に示すように、サイドパネル20のサイドアウターパネル20bと溶接等で接合している。サイドアウターパネル20bは、サイドパネル20の外側パネルである。また、ドリップレール60は、ルーフパネル10のルーフサイドパネル11と溶接等で接合している。ルーフサイドパネル11は、ルーフパネル10の側面を形成するパネルである。
【0024】
ドリップレール60は、図3に示すように、レール部61と、壁部62と、サイド対向部63と、折り曲げ部64とを有する。
【0025】
レール部61は、長さ方向がキャブ1の前後方向に沿うように設けられた長尺状の基部である。レール部61を設けたことによって、ルーフパネル10に沿って落下した雨水は、レール部61の長手方向に沿って流れて、ドリップレール60の前端60a(図2参照)又は後端60bにて排水される。また、レール部61は、ルーフサイドパネル11と接合している。
【0026】
壁部62は、レール部61の短手方向である幅方向(図3のY方向)の一端から曲げられた壁であり、レール部61の長手方向に沿って設けられている。壁部62を設けたことによって、雨水がレール部61から溢れることを防止できる。
【0027】
サイド対向部63は、レール部61の幅方向の他端から曲げられており、サイドアウターパネル20bに対向している。サイド対向部63は、レール部61の長手方向に沿って設けられている。サイド対向部63は、サイドアウターパネル20bと接合している。
【0028】
折り曲げ部64は、壁部62の短手方向の先端を折り曲げた部分であり、レール部61の長手方向に沿って設けられている。折り曲げ部64は、例えばヘム加工によって形成されている。壁部62の先端に折り曲げ部64を設けたことによって、壁部62の先端が露出しなくなり、乗員等が壁部62の先端に触れて怪我することを防止できる。
【0029】
ところで、折り曲げ部64をヘム加工によって形成した場合には、ドリップレール60の前端60a及び後端60bにおいて、折り曲げ部64の端面と壁部62の端面とにずれが発生しやすい。そして、2つの端面にずれが発生すると、折り曲げ部64と壁部62のいずれか一方の端部の角(エッジ)が、露出することになる。
そこで、本実施形態では、端部の角が露出することを防止するために、ドリップレール60の前端60a及び後端60b側を、図4及び図5に示すような構成にしている。
【0030】
図4は、ドリップレール60の後端60b側の構成を示す斜視図である。図4に示すように、折り曲げ部64は、ドリップレール60の長手方向の後端60bまでは設けられていない。すなわち、壁部62が、長手方向において折り曲げ部64よりも外方へ延びている。これにより、ヘム加工時に折り曲げ部64の端面の位置ずれが発生しても、折り曲げ部64の端部の角が、長手方向において壁部62よりも外方へ露出することを防止できる。
【0031】
また、壁部62の折り曲げ部64よりも外方へ延びている端部62aには、端部62aの角を面取りした面取り部65が形成されている。面取り部65は、端部62aの角を所定の曲率で面取りした部分である。すなわち、面取り部65は、R面取りを施した部分である。これにより、端部62aの角が鋭利な状態で露出することを防止できる。ただし、上記に限定されず、面取り部65は、C面取りを施した部分であってもよい。
【0032】
図5は、ドリップレール60の前端60a側の構成を示す斜視図である。図5に示すドリップレール60の前端60a側の構成は、図4で説明した後端60b側の構成と同様である。すなわち、図5に示すように、ドリップレール60の前端60a側においても、壁部62は、長手方向において折り曲げ部64よりも外方へ延びている。また、壁部62の折り曲げ部64よりも外方へ延びている端部62aには、面取り部65が形成されている。すなわち、面取り部65は、壁部62の長手方向の両端部にそれぞれ形成されている。これにより、ヘム加工により折り曲げ部64が形成されたドリップレール60の長手方向の両端部の角が露出することを抑制できる。
【0033】
ところで、ドリップレール60を含むキャブ1は、錆防止のために、製造時に電着塗装法によって塗装される。具体的には、キャブ1を電着液の塗料槽の中に漬け込むことで、塗装が行われる。しかし、ドリップレール60に折り曲げ部64を設けた場合には、壁部62及び折り曲げ部64の対向部分に、電着液が入り込まない。
【0034】
図6は、壁部62及び折り曲げ部64の対向部分70を説明するための模式図である。図6に示すように、壁部62及び折り曲げ部64の対向部分70には、隙間が存在する。しかし、この隙間は小さいため、隙間に電着液が入り込まず、対向部分70に電着液が塗布されない。かかる場合には、電着液が塗布されない対向部分70が外気に触れることで、錆が発生する恐れがある。
【0035】
これに対して、本実施形態では、壁部62と折り曲げ部64との対向部分70の周囲に、シーリング剤90が塗布されている。
図7は、シーリング剤90の塗布例を説明するための模式図である。図7に示すように、本実施形態では、シーリング剤90が、上記の隙間を囲むように塗布されている。かかる場合には、電着液が塗布されない対向部分70が、シーリング剤90によって外気に触れることを防止できるので、錆の発生を防止できる。特に、本実施形態では、折り曲げ部64の長手方向の端部の側面64aが壁部62の端部よりも内側に位置するため、折り曲げ部64の側面64aの周囲にもシーリング剤90を塗布しやすくなる。
【0036】
<本実施形態における効果>
上述したように、本実施形態に係るドリップレール60は、壁部62の長手方向に沿って設けられた折り曲げ部64と、壁部62において折り曲げ部64よりも長手方向の外方へ延びている端部62aに形成された面取り部65とを有する。
かかる場合には、ヘム加工によって折り曲げ部64を形成した際に折り曲げ部64の端部が位置ずれしても、長手方向において折り曲げ部64の端部が壁部62の端部よりも外方に露出することを防止できる。また、壁部62の折り曲げ部64よりも外方へ延びている端部62aに面取り部65を設けることによって、端部62aの角が露出することも防止できる。
【0037】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0038】
1 キャブ
60 ドリップレール
61 レール部
62 壁部
62a 端部
64 折り曲げ部
65 面取り部
70 対向部分
90 シーリング剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7