【実施例1】
【0015】
図1は、本発明に係るロータリ圧縮機の実施例1を示す縦断面図であり、
図2は、実施例1の圧縮部(回転軸を除く)の上方から見た分解斜視図である。
【0016】
図1に示すように、ロータリ圧縮機1は、密閉された縦置き円筒状の圧縮機筐体10内の下部に配置されたロータリ型の圧縮部12と、圧縮部12の上方に配置され、回転軸15を介して圧縮部12を駆動するモータ11と、圧縮機筐体10の側面に固定され内部が下吸入管104、アキュムレータ下L字管31S及び上吸入管105、アキュムレータ上L字管31Tとを介して下シリンダ121Sの下吸入室131S及び上シリンダ121Tの上吸入室131Tと接続される縦置き円筒状のアキュムレータ25と、圧縮機筐体10の下部に固定され複数の弾性支持部材330が係止されロータリ圧縮機1全体を支持する筐体ベース(取付脚)310と、を備えている。
【0017】
また、圧縮機筐体10の上部中央には、圧縮機筐体10を貫通して冷媒を空気調和機の冷媒回路(冷凍サイクル)に吐出するための吐出管(吐出部)107が備えられ、アキュムレータ25の上部中央にはアキュムレータ25の筐体を貫通して冷媒を空気調和機の冷媒回路(冷凍サイクル)から吸入するためのアキュムレータ入口管255が備えられている。
【0018】
モータ11は、外側にステータ111と内側にロータ112を備え、ステータ111は圧縮機筐体10の内周面に焼嵌め固定され、ロータ112は圧縮部12の回転軸15に焼嵌め固定されている。
【0019】
回転軸15は、上偏心部152Tの上方の主軸部153が上端板160Tに設けられた主軸受部161Tに回転自在に嵌合し、下偏心部152Sの下方の副軸部151が下端板160Sに設けられた副軸受部161Sに回転自在に嵌合し、下偏心部152S及び上偏心部152Tがそれぞれ下ピストン125S及び上ピストン125Tに回転自在に嵌合することによって、ロータリ型の圧縮部12全体に対して回転自在に支持されるとともに、回転によって下ピストン125S及び上ピストン125Tを公転運動させる。
【0020】
図2に示すように、圧縮部12は、上から上端板カバー170T、上端板160T、上シリンダ121T、中間仕切板140、下シリンダ121S、下端板160S、下端板カバー170Sを積層して構成され、圧縮部12全体は上下から、略同心円上に配置された複数の通しボルト174,175及び補助ボルト176によって固定されている。
【0021】
下シリンダ121Sには、下吸入管104と嵌合する下吸入孔135Sが設けられている。上シリンダ121Tには、上吸入管105と嵌合する上吸入孔135Tが設けられている。また、下シリンダ121Sの下シリンダ室130Sには、下ピストン125Sが配置されている。上シリンダ121Tの上シリンダ室130Tには、上ピストン125Tが配置されている。
【0022】
下シリンダ121Sには、下シリンダ室130Sから放射状に外方へ延びる下ベーン溝128Sが設けられ、下ベーン溝128Sには下ベーン127Sが配置されている。上シリンダ121Tには、上シリンダ室130Tから放射状に外方へ延びる上ベーン溝128Tが設けられ、上ベーン溝128Tには上ベーン127Tが配置されている。
【0023】
下シリンダ121Sには、外側面から下ベーン溝128Sと重なる位置に下シリンダ室130Sに貫通しない深さで下スプリング穴124Sが設けられ、下スプリング穴124Sには下スプリング126Sが配置されている。上シリンダ121Tには、外側面から上ベーン溝128Tと重なる位置に上シリンダ室130Tに貫通しない深さで上スプリング穴124Tが設けられ、上スプリング穴124Tには上スプリング126Tが配置されている。
【0024】
下シリンダ室130Sは、上下をそれぞれ中間仕切板140及び下端板160Sで閉塞している。上シリンダ室130Tは、上下をそれぞれ上端板160T及び中間仕切板140で閉塞している。
【0025】
下シリンダ室130Sは、下ベーン127Sが下スプリング126Sによって下ピストン125Sの外壁に当接されることによって、下吸入孔135Sに連通する下吸入室131Sと、下端板160Sに設けられた下吐出孔190Sに連通する下圧縮室133Sと、に区画されている。上シリンダ室130Tは、上ベーン127Tが上スプリング126Tによって上ピストン125Tの外壁に当接されることによって、上吸入孔135Tに連通する上吸入室131Tと、上端板160Tに設けられた上吐出孔190Tに連通する上圧縮室133Tと、に区画されている。
【0026】
下吐出孔190Sの出口側には、互いに密着固定された下端板160Sと下端板カバー170Sとの間に下端板カバー室180Sが形成され、下端板カバー室180Sは、下端板161Sに凹部(図示せず)を備え、この凹部には、下吐出孔190Sを逆流して下圧縮室133Sに冷媒が流れ込むのを防止する下吐出弁200Sと下吐出弁200Sの開度を規制する下吐出弁押さえ201Sが収容されている。
【0027】
上吐出孔190Tの出口側には、互いに密着固定された上端板160Tと上端板カバー170Tとの間に上端板カバー室180Tが形成され、上端板カバー室180Tは、上端板161Tに凹部181Tを備え、凹部181Tには、上吐出孔190Tを逆流して上圧縮室133Tに冷媒が流れ込むのを防止する上吐出弁200Tと上吐出弁200Tの開度を規制する上吐出弁押さえ201Tが収容されている。
【0028】
次に、回転軸15の回転による冷媒の流れを説明する。下シリンダ室130S内及び上シリンダ室130T内において、回転軸15の回転によって回転軸15の下偏心部152S及び上偏心部152Tにそれぞれ嵌合された下ピストン125S及び上ピストン125Tがそれぞれ下シリンダ室130S及び上シリンダ室130Tの内壁に沿って公転することにより、下吸入室131S及び上吸入室131Tが容積を拡大しながらアキュムレータ25を経由してそれぞれ下吸入管104及び上吸入管105から冷媒を吸入する。
【0029】
また、下圧縮室133S及び上圧縮室133Tが容積を縮小しながら冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒の圧力がそれぞれ下吐出弁200S及び上吐出弁200Tの外側の下端板カバー室180S及び上端板カバー室180Tの圧力より高くなると下吐出弁200S及び上吐出弁200Tが開いて下圧縮室133S及び上圧縮室133Tからそれぞれ下端板カバー室180S及び上端板カバー室180Tへ冷媒が吐出される。
【0030】
下端板カバー室180Sに吐出された冷媒は、冷媒通路孔136(
図1参照)及び上端板カバー室180Tを通って上端板カバー吐出孔172T(
図1参照)から圧縮機筐体10内部に吐出される。上端板カバー室180Tに吐出された冷媒は、上端板カバー吐出孔172Tから圧縮機筐体10内部に吐出される。
【0031】
圧縮機筐体10内部に吐出された冷媒は、ステータ111外周に設けられた上下を連通する切欠き(図示せず)、又はステータ111の巻線部の隙間(図示せず)、又はステータ111とロータ112との隙間を通ってモータ11の上方に導かれ、圧縮機筐体10上部の吐出管107から吐出される。
【0032】
次に、
図1及び
図3を参照して、実施例1のロータリ圧縮機1の特徴的な構成について説明する。
図1及び
図3に示すように、圧縮機筐体10の下端には、取付脚としての三角盤状の筐体ベース310が、筐体中心線16(
図1参照)に直交するように固定されている。筐体ベース310の三角形の各角部には、第1係止孔311、第2係止孔312及び第3係止孔313が設けられている。取付脚(310)としては、三角盤状の筐体ベース310に替えて、一端が圧縮機筐体10の下部に固定され、他端が夫々第1係止孔311、第2係止孔312及び第3係止孔313の位置まで放射状に延びる3本の取付脚を採用してもよい。
【0033】
筐体中心線16からアキュムレータ25の最も近くに配置される第1係止孔311までの距離LAは、筐体中心線16から第2係止孔312までの距離LB及び筐体中心線16から第3係止孔313までの距離LCよりも大きくされている。第1係止孔311と第2係止孔312との間のピッチ角α1、第2係止孔312と第3係止孔313との間のピッチ角α2及び第3係止孔313と第1係止孔311との間のピッチ角α3は、略等しくされている。
【0034】
第1係止孔311、第2係止孔312及び第3係止孔313には、弾性支持部材330の上部の小径部が嵌合されて係止される。夫々の弾性支持部材330の底部は、第1係止孔311、第2係止孔312及び第3係止孔313に対応するように空気調和機の室外機の底板320に設けられた3つの支持部321上に設置される。各支持部321に固定(溶接)された係止ボルト331は、各弾性支持部材330及び第1、第2、第3係止孔311、312、313を夫々貫通し、係止ボルト331の先端のねじ部に係止ナット332をねじ込み、第1、第2、第3係止孔311、312、313を弾性支持部材330を介して各支持部321に締結する。
【0035】
第1係止孔311は、アキュムレータ25よりも径方向外側へ出ない位置に配置するのがよい。このようにすることにより、室外機内で筐体ベース310の設置スペースが拡大することはない。
【0036】
また、第1係止孔311は、上方から見てアキュムレータ25と重ならない位置に配置するのがよい。このようにすることにより、ねじ締結機のソケットレンチを上方から下降させて係止ナット332を係止ボルト331の先端のねじ部にねじ込むときに、ソケットレンチがアキュムレータ25と干渉しない。
【0037】
図5は、従来のロータリ圧縮機を示す上面図である。
図5に示すように、従来のロータリ圧縮機2の筐体ベース510では、筐体中心線16からアキュムレータ25の最も近くに配置される第1係止孔511までの距離LAと、筐体中心線16から第2係止孔512までの距離LBと、筐体中心線16から第3係止孔513までの距離LCとは、等しくされていた。また、第1係止孔511と第2係止孔512との間のピッチ角α1と、第2係止孔512と第3係止孔513との間のピッチ角α2と、第3係止孔513と第1係止孔511との間のピッチ角α3とは、等しくされていた。
【0038】
実施例1のロータリ圧縮機1は、筐体中心線16からアキュムレータ25の最も近くに配置される第1係止孔311までの距離LAを、筐体中心線16から第2係止孔312までの距離LB及び筐体中心線16から第3係止孔313までの距離LCよりも大きくし、複数の弾性支持部材330間の距離を増大させることができる。「ロータリ圧縮機1の振動抵抗トルク=弾性支持部材330にかかる力の大きさ×弾性支持部材330間の距離」であるため、弾性支持部材330間の距離が大きくなる分だけ大きな振動抵抗トルクを負担することができる。これによって、吐出側配管108及び吸入側配管256が負担する振動抵抗トルクを軽減することができ、配管応力が許容値を超えて吐出側配管108及び吸入側配管256が破損するのを防ぐことができる。
【0039】
また、ロータリ圧縮機1の支持点の1箇所(第1係止孔311に係止された弾性支持部材330)をアキュムレータ25の真下近くに配置するので、アキュムレータ25の上下振動が抑制され、アキュムレータ25に接続される吸入側配管256の振動を抑えることができる。
【0040】
また、圧縮機筐体10に対し、アキュムレータ25が張出している方向にだけ筐体ベース310を張出すため、ロータリ圧縮機1を室外機に搭載する設置スペースの増加を、可能な限り小さく抑えることができる。
【実施例2】
【0041】
次に、
図1及び
図4を参照して、実施例2のロータリ圧縮機1の特徴的な構成について説明する。
図4は、本発明に係るロータリ圧縮機の実施例2を示す上面図である。
図1及び
図4に示すように、実施例2では、圧縮機筐体10の下端には、取付脚としての三角盤状の筐体ベース410が、筐体中心線16に直交するように固定されている。筐体ベース410の三角形の各角部には、第1係止孔411、第2係止孔412及び第3係止孔413が設けられている。取付脚(410)としては、三角盤状の筐体ベース410に替えて、図示はしないが、一端が圧縮機筐体10の下部に固定され、他端が夫々第1係止孔411、第2係止孔412及び第3係止孔413の位置まで放射状に延びる3本の細長板状の取付脚を採用してもよい。
【0042】
実施例2では、筐体中心線16からアキュムレータ25の最も近くに配置される第1係止孔411までの距離LAを、筐体中心線16から第2係止孔412までの距離LB及び筐体中心線16から第3係止孔413までの距離LCよりも大きくしている。また、第1係止孔411と、第1係止孔411との間にアキュムレータ25を挟む第2係止孔412との間のピッチ角α1を、第1係止孔411と第3係止孔413との間のピッチ角α3及び第2係止孔412と第3係止孔413との間のピッチ角α2より小さくしている。
【0043】
実施例2のロータリ圧縮機1は、第1係止孔411と、第1係止孔411との間にアキュムレータ25を挟む第2係止孔412との間のピッチ角α1を、第1係止孔411と第3係止孔413との間のピッチ角α3及び第2係止孔412と第3係止孔413との間のピッチ角α2より小さくしているので、第2係止孔412の位置がアキュムレータ25に近くなり、アキュムレータ25側に振動しようとする大きい振動力を、第1係止孔411及び第2係止孔412に係止された2つの弾性支持部材330で受けることになり、アキュムレータ25の上下振動が抑制され、アキュムレータ25に接続される吸入側配管256の振動をさらに抑えることができる。
【0044】
本発明は、単シリンダ式ロータリ圧縮機及び2段圧縮式ロータリ圧縮機に適用することができる。
【0045】
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。