【実施例】
【0021】
本発明の実施の形態に係る実施例の縁線スペーサーについて、
図1乃至
図6を用いて詳細に説明する。
図1は、実施例に係る縁線スペーサーの側面図である。
図2は、
図1におけるA線矢視図である。
図1及び
図2に示すように、本実施例に係る縁線スペーサー1は、両端部2,3にそれぞれ第1のネジ部11a,12aが刻設される棒状体4と、第1のネジ部11a,12aにそれぞれ螺合する第2のネジ部11b,12bが刻設される可動部5,6と、この可動部5,6の一部(後述する第2の挟持部16,17)に対向するように両端部2,3に固定される固定部7,8と、からなる把持体9,10と、を備える。
また、可動部5,6及び固定部7,8は、それぞれ棒状体4の長手方向Xにおける中間位置Dを中心として互いに対称に配置される。
さらに、第1のネジ部11a,12aは、互いに逆ネジである。したがって、第2のネジ部11b,12bも、互いに逆ネジである。なお、棒状体4及び把持体9,10は、絶縁材料で形成される。
【0022】
より詳細には、一方の可動部5は、第2のネジ部11bが刻設される貫通孔13aを備える第1の挟持部14と、この第1の挟持部14に対向する第2の挟持部16と、第1の挟持部14及び第2の挟持部16を連結する連結部18と、から略コ字形状に形成される。
他方の可動部6も、第2のネジ部12bが刻設される貫通孔13bを備える第1の挟持部15と、この第1の挟持部15に対向する第2の挟持部17と、第1の挟持部15及び第2の挟持部17を連結する連結部19と、から略コ字形状に形成される。
【0023】
また、固定部7,8は、それぞれ両端部2,3の端面2a,3aと、この付近の両端部2,3の一部を含むように両端部2,3と一体的に形成される。このように、固定部7,8と両端部2,3との境界はそれぞれ明確ではない。
さらに、固定部7,8には、端面2a,3aの中心に中心軸Eと平行に固定されるピン23a,23bを介して押え片24,25が取り付けられている。この押え片24,25は、それぞれピン23a,23bに対して回動可能、かつ、連結部18,19の側面18a,19a(
図1参照)に対してそれぞれ長手方向Xに沿ってスライド可能である。これにより、両端部2,3が回動しても押え片24,25は回動しない構造となっている。
【0024】
さらに、押え片24,25と第1の挟持部14,15の間に、それぞれストッパー26,27が備えられる。このストッパー26,27は、それぞれ第1のネジ部11a,12aと螺合しない貫通孔26a,27aを備え、一端26b,27b(
図1参照)が第1の挟持部14,15へ当接した状態を保持しながら中心軸Eを中心に回動自在に構成される。したがって、後述する
図4(a)に示すように、可動部5,6がそれぞれα
1,α
2方向へスライド移動する場合に、それぞれの他端26c,27c(
図1参照)が押え片24,25に当接するようにストッパー26,27を回動させておくと、可動部5,6の過剰なスライド移動が抑制される。これにより、縁線51a〜51c(
図4乃至
図6参照)を取り外す際に、棒状体4を必要以上に回動することが防止される。
そして、棒状体4は、第1のネジ部11a,12a同士の間に、一対の水切りツバ20,21が間隔を空けて備えられる。
【0025】
次に、
図3を用いて、棒状体4についてより詳細に説明する。
図3は、
図1におけるB−B矢視断面図である。なお、
図1及び
図2で示した構成要素については、
図3においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図3に示すように、棒状体4は、第1のネジ部11a,12a(
図1,2参照)同士の間に、短手方向(長手方向Xに直交する方向)の断面が凹凸状に形成される保持部22が設けられる。この保持部22は、例えば、ゴム材料等の絶縁材料から形成され、棒状体4の表面に接着されている。
【0026】
続いて、縁線スペーサー1の作用について、
図4を用いながらより詳細に説明する。
図4(a)及び
図4(b)は、いずれも実施例に係る縁線スペーサーの側面図であって、それぞれ把持体を構成する可動部同士を離隔させる場合及び接近させる場合を示したものである。なお、
図1乃至
図3で示した構成要素については、
図4においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図4(a)に示すように、第2の挟持部16,17と押え片24,25の間に、開閉器50(
図5参照)から引き出された縁線51a,51bがそれぞれ把持される。可動部5,6には第1のネジ部11a,12aに螺合する第2のネジ部11b,12bが刻設されるため、棒状体4を、間接活線工具(図示せず)等を用い、長手方向Xの中心軸Eを中心としてα方向へ回動させると、中間位置Dに対して固定部7,8は移動しないが、可動部5,6が棒状体4の長手方向Xに沿ってそれぞれスライド移動する。このとき、棒状体4には、保持部22が備えられているので、間接活線工具と保持部22との摩擦力が増大し、棒状体4の回動が効率的に可動部5,6のスライド運動へと変換される。
【0027】
また、第1のネジ部11a,12a同士は、互いに逆ネジであることから、可動部5,6が移動する方向はそれぞれ逆方向のα
1方向及びα
2方向となる。さらに、可動部5,6、固定部7,8及び押え片24,25は、それぞれ棒状体4の長手方向Xにおける中間位置Dを中心として互いに対称に配置されることから、可動部5,6は、それぞれ同時に押え片24,25へ接近し、縁線51a,51bが第2の挟持部16と押え片24及び第2の挟持部17と押え片25によってそれぞれ把持される。すなわち、棒状体4の回動力が、第1のネジ部11a,12a及び第2のネジ部11b,12bを介して可動部5,6に伝達され、縁線51a,51bの締め付け力となる。これにより、縁線51a,51b同士が、棒状体4の長さ程度の間隔を空けた状態で保持される。
なお、縁線51a,51bを締め付ける場合に、予め縁線51a,51bのいずれかを間接活線工具(図示せず)で把持しておくと、棒状体4を回動させる際に、縁線51a,51bの動きが抑制されるため、作業性が低下することはない。
【0028】
逆に、
図4(b)に示すように、棒状体4をβ方向へ回動させると、棒状体4をα方向へ回動させる場合と同様に、中間位置Dに対して固定部7,8は移動しないが、可動部5,6が棒状体4の長手方向Xに沿ってそれぞれスライド移動する。
このとき、可動部5,6が移動する方向はそれぞれ逆のβ
1方向及びβ
2方向となることから、可動部5,6は、それぞれ同時に押え片24,25から離隔し、縁線51a,51bの把持が解除される。すなわち、縁線スペーサー1による縁線51a,51bの取り外しが行われる。
【0029】
次に、本実施例に係る縁線スペーサーの使用状態について、
図5及び
図6を用いながらより詳細に説明する。
図5は、実施例に係る縁線スペーサーを上方から視た場合の使用状態図である。
図6は、
図5におけるC線矢視図である。なお、
図1乃至
図4で示した構成要素については、
図5及び
図6においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図5及び
図6に示すように、三相交流電力を供給する電源側の縁線51a〜51cと、負荷側の縁線53a〜53cと、の間の電路を開閉する開閉器50が、アーム54を介して、電柱52上に設置されている。縁線スペーサー1,1は、縁線51a,51bと、縁線51b,51cの間に、
図4(a)を用いて説明したように、それぞれ装着される。より詳細には、縁線スペーサー1,1は、高圧端子カバー55a〜55cと、開閉器50との間の縁線51a〜51cにそれぞれ配置される。なお、開閉器50は、その長辺M(
図5参照)が約60(cm)程度にコンパクト化されているため、縁線スペーサー1の長さL(
図1参照)は約15(cm)に設計される。
【0030】
このような構成の縁線スペーサー1においては、縁線51a,51bと、縁線51b,51cが、それぞれ15cm程度離隔した状態で保持されることから、縁線51a,51bや高圧端子カバー55a,55bの接近や接触が防止される。さらに、縁線51b,51cや高圧端子カバー55b,55cの接近等が防止される。
また、雨天の場合においても、把持体9,10で縁線51a〜51cを把持している場合に、それぞれの縁線51a〜51cの表面を流下した雨水は把持体9,10を伝って棒状体4の両端部2,3に達するものの、水切りツバ20,21を超えて棒状体4の中間位置Dに向かって移動することや、逆に中間位置D付近の雨水が両端部2,3に移動することが防止される。
【0031】
以上、説明したように、本実施例の縁線スペーサー1によれば、棒状体4を回動するという一つの操作により、
図5及び
図6に示したように、可動部5,6と固定部7,8の間にそれぞれ把持される縁線51a,51bを同時に締緩可能である。同様に、縁線51b,51cも、もう一つの縁線スペーサー1によって同時に締緩可能である。したがって、縁線51a〜51cに対し、縁線スペーサー1,1を迅速に着脱することが可能となり、従来と比較して作業時間をおよそ半分に短縮することができる。
また、縁線スペーサー1,1を着脱する際には、保持部22によって、棒状体4の回動が効率的に可動部5,6のスライド運動へと変換されるので、棒状体4を回動させる際の操作性が良好である。
さらに、縁線スペーサー1,1が縁線51a〜51cに装着されることで、縁線51a,51b間と縁線51b,51c間の離隔をそれぞれ十分に確保することができるので、三相交流における異相間の短絡を防止可能である。よって、配電線事故の防止に有効であり、縁線同士の間隔を拡大させるような改修作業の頻度を減少させ得ることが期待できる。加えて、棒状体4,把持体9,10及び保持部22は絶縁材料で形成されるため、一層確実に異相間の短絡を防止することができる。加えて、雨水が水切りツバ20,21を超えて棒状体4の中間位置Dに向かって伝うことが防止されるので、天候に関わらず、上記の短絡防止の効果を発揮することができる。
【0032】
また、縁線スペーサー1は、その長さLが約15cmと小型であることから、コンパクト化された開閉器50から引き出される縁線51a〜51cの間に、困難なく装着可能であると同時に、間接活線工具で保持部22を把持する際のスペースを十分確保可能である。
さらに、固定部7,8は両端部2,3と一体的に形成されるため、部品点数を実質的に少なくすることができる。そのため、縁線スペーサー1の製造コストを抑制可能であるとともに軽量となる。そのため、後者の効果によれば、縁線51a〜51cに取り付けられている間に、縁線スペーサー1が自重によって次第にずり落ちるといったおそれが少ない。
【0033】
なお、本発明の縁線スペーサー1の構造は実施例に示すものに限定されない。例えば、ストッパー26,27は、省略されても良い。また、第2のネジ部11b,12bと第2のネジ部11b,12bは、それぞれ雄ネジと雌ネジ、又は雌ネジと雄ネジのいずれの組み合わせであっても良い。
さらに、固定部7,8は、両端部2,3の端面2a,3a以外の位置に両端部2,3と別体的に形成されても良い。そして、可動部5,6同士の間隔と、固定部7,8同士の間隔は、いずれが広くても良い。つまり、中間位置Dにより近い位置の両端部2,3に、可動部5,6又は固定部7,8のいずれが配置されても良い。
また、可動部5,6と固定部7,8は、いずれも側面視で短冊状に形成されて、それぞれ互いに対向するように構成されても良い。この場合、可動部5,6と固定部7,8を収容する長尺孔を備える無端のガイド部材であって、固定部7,8と長尺孔の一端は互いに固定されるが、可動部5,6を長尺孔に沿って摺動可能とするガイド部材を備えることで、棒状体4の回動に伴い可動部5,6が両端部2,3に沿ってスライド可能に構成されても良い。