特許第6569569号(P6569569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569569
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/537 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   A61F13/537 310
   A61F13/537 220
   A61F13/537 210
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-50691(P2016-50691)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-164134(P2017-164134A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】朝井 欣哉
【審査官】 姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−112341(JP,A)
【文献】 特開平08−269859(JP,A)
【文献】 特開2004−073759(JP,A)
【文献】 特開2007−143676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/537
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液不透過性のバックシートと、
吸収性物品のなかで前記バックシートよりも肌側に位置する液透過性のトップシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に位置する吸収体と、
前記トップシートと前記吸収体との間に位置する不織布シートとを備え、
前記不織布シートは、前記トップシート側から前記吸収体側への液体の通過を可能とする液体通過性を有した第1シート領域と、前記液体の通過をさせない液体難通過性を有した第2シート領域とから構成され
前記不織布シートと前記トップシートとは、一部が接着領域を介して接着されており、
前記接着領域以外の部分を構成する非接着領域は、平面視で前記第1シート領域と前記第2シート領域とに跨って存在す
吸収性物品。
【請求項2】
前記第1シート領域は、疎水性の不織布に対して設けられた親水性領域である
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記親水性領域は、前記疎水性の不織布に対して界面活性剤を付与した領域である
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第1シート領域の総面積は、前記第2シート領域の総面積より小さい
請求項1ないし3のうち、何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収性物品は、腹部領域と、背部領域と、前記腹部領域と前記背部領域との間に位置する股下部領域とを備え、
前記股下部領域は、前記第1シート領域を備えている
請求項1ないし4のうち、何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体の長手方向における少なくとも何れか一方の端部領域は、前記第2シート領域で構成されている
請求項1ないし5のうち、何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収性物品は、着用された際に着用者の臀部に接触する臀部領域を備え、
前記臀部領域は、前記第2シート領域で構成されている
請求項1ないし6のうち、何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記接着領域は、前記トップシートにおける前記液体の肌側から非肌側への通過をさせない液体難通過性で
請求項1ないし7のうち、何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記接着領域は、一または二以上の連続線で構成され、
前記連続線のそれぞれは、前記第1シート領域と前記第2シート領域とに跨って存在している
請求項8に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記不織布シートと前記吸収体の間には、拡散シートをさらに備える
請求項1ないし9のうち、何れか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品として使い捨ておむつや尿パッドなどが知られている。これらの吸収性物品は、通常、液不透過性のバックシートと、液透過性のトップシートと、トップシートとバックシートの間に配置された吸収体とから構成されている。そして、着用時における吸収体は、トップシートを介して排泄物である尿などの液体を保持し、吸収性物品の外部に液体が漏出することは、バックシートによっても抑えられる。吸収体は、フラップパルプ、高吸収性ポリマーなどで構成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−110368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品では、吸収体に吸収された液体の逆戻りを抑制することが望まれており、逆戻りの抑制のため、吸収体における高吸収性ポリマーの量を増やすことが行われている。しかし、吸収体における高吸収性ポリマーの量を増やした場合には、高吸収性ポリマーが膨潤すると、吸収体が厚くなり、着用感も悪化することがある。
【0005】
特許文献1の吸収性物品では、吸収体の他に、トップシートと吸収体との間に、高吸収性ポリマーを液吸収性シートで挟み込んだ吸収性シートを配置している。しかし、吸収性シートを備える分、吸収性物品の構造が複雑化してしまう。
【0006】
本発明は、高吸収性ポリマーの量を抑えつつ、簡素な構成で吸収体に吸収された液体の逆戻りを抑制することを可能とした吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための吸収性物品は、液不透過性のバックシートと、吸収性物品のなかで前記バックシートよりも肌側に位置する液透過性のトップシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に位置する吸収体と、前記トップシートと前記吸収体との間に位置する不織布シートとを備え、前記不織布シートは、前記トップシート側から前記吸収体側への液体の通過を可能とする液体通過性を有した第1シート領域と、前記液体の通過をさせない液体難通過性を有した第2シート領域とから構成される。
【0008】
上記構成によれば、トップシートと吸収体との間に不織布シートを配置する簡素な構成で、吸収体に吸収された液体がトップシートまで逆戻りすることを抑え、肌と接触することを抑えることができる。したがって、吸収体の高吸収性ポリマーの量を従来より増やすことなく、吸収体に吸収された液体の逆戻りを抑制することができる。
【0009】
上記吸収性物品において、前記第1シート領域は、疎水性の不織布に対して設けられた親水性領域としてもよい。
上記構成によれば、親水処理により第1シート領域を形成することができる。
【0010】
上記吸収性物品において、前記親水性領域は、前記疎水性の不織布に対して界面活性剤を付与した領域としてもよい。
上記構成によれば、界面活性剤で親水性領域を形成することができる。
【0011】
上記吸収性物品において、前記第1シート領域の総面積は、前記第2シート領域の総面積より小さい構成としてもよい。
上記構成によれば、吸収体に吸収された液体がトップシートまで逆戻りするおそれのある領域を小さくすることができる。
【0012】
上記吸収性物品において、前記吸収性物品は、腹部領域と、背部領域と、前記腹部領域と前記背部領域との間に位置する股下部領域とを備え、前記股下部領域は、前記第1シート領域を備えている構成としてもよい。
上記構成によれば、股下部領域に流れた液体を効果的に吸収することができる。
【0013】
上記吸収性物品において、前前記吸収体の長手方向における少なくとも何れか一方の端部領域は、前記第2シート領域で構成してもよい。
上記構成によれば、端部領域に、吸収体に吸収された液体が逆戻りで滲みだすことを抑えることができる。
【0014】
上記吸収性物品において、前記吸収性物品は、着用された際に着用者の臀部に接触する臀部領域を備え、前記臀部領域は、前記第2シート領域で構成するようにしてもよい。
上記構成によれば、臀部の領域に、吸収体に吸収された液体が逆戻りで滲みだすことを抑えることができる。
【0015】
上記吸収性物品において、前記不織布シートと前記トップシートとは、一部が接着領域を介して接着されており、前記接着領域は、前記トップシートにおける前記液体の肌側から非肌側への通過をさせない液体難通過性であり、前記接着領域以外の部分を構成する非接着領域は、平面視で前記第1シート領域と前記第2シート領域とに跨って存在するようにしてもよい。
上記構成によれば、非接着領域が第1シート領域と第2シート領域とに跨るので、トップシートからの液体を吸収体へ案内することができる。
【0016】
上記吸収性物品において、前記接着領域は、一または二以上の連続線で構成され、前記連続線のそれぞれは、前記第1シート領域と前記第2シート領域とに跨って存在するようにしてもよい。
上記構成によれば、接着領域の連続線が第1シート領域と第2シート領域とに跨るので、トップシートからの液体を吸収体へ案内することができる。
【0017】
上記吸収性物品において、前記不織布シートと前記吸収体の間には、拡散シートをさらに備える構成としてもよい。
上記構成によれば、拡散シートによって、第1シート領域を透過した液体を広い範囲に拡散させ、吸収体に吸収させることができる。そして、吸収体が局所的に膨潤することを抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高吸収性ポリマーの量を抑えつつ、吸収体に吸収された液体の逆戻りを抑制することを可能とした吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】パンツ型使い捨ておむつの斜視図。
図2】パンツ型使い捨ておむつをトップシート側から見た平面図。
図3図2における3−3断面図。
図4】不織布シートにおける第1シート領域のパターンと接着領域のパターンを示す平面図。
図5】パンツ型使い捨ておむつにおいて、液体を吸収体で吸収するまでの経路を説明する断面図。
図6】不織布シートにおける第1シート領域のパターンの変形例1を示す平面図。
図7】不織布シートにおける第1シート領域のパターンの変形例2を示す平面図。
図8】不織布シートにおける第1シート領域のパターンと接着領域のパターンの変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照して本発明における吸収性物品を具体化した一実施形態におけるパンツ型使い捨ておむつについて説明する。
図1および図2に示すように、パンツ型使い捨ておむつ10(以下、単に「おむつ10」という。)は、人体の腹部形状に追従する形状を有する腹部領域10Fと、人体の背部形状に追従する形状を有する背部領域10Rと、腹部領域10Fおよび背部領域10Rをつなぐ股下部領域10Cとを備えている。
【0021】
腹部領域10Fにおいて股下部領域10Cとは反対側の端部である上端部分と、背部領域10Rにおいて股下部領域10Cとは反対側の端部である上端部分とは、人体のウェストの部分を取り囲むウェスト開口部10Wを構成している。また、股下部領域10Cにおける左右両端部は、人体の太股部分を取り囲む形状を有した左右一対の脚回り開口部10Lを構成している。おむつ10は、おむつ10の外面を構成する外装シート16を備える。外装シート16の左右両側部で脚回り開口部10Lの構成部分を除いた部分は、外装シート16の端部同士が接合された接合部10Jである。外装シート16の左右両側部において、それの長手方向の中央部には、脚回り開口部10Lを構成する半円弧状の形状を有した一対の切欠端部16Cが形成されている。
【0022】
図2および図3に示すように、おむつ10は、液透過性を有し肌側に位置するトップシート11と、液不透過性を有し肌とは反対側に位置するバックシート12と、トップシート11とバックシート12との間に位置する吸収体13とを備えている。さらに、おむつ10は、トップシート11と吸収体13との間に位置する不織布シート14と、不織布シート14と吸収体13との間に拡散シート15とを備えている。すなわち、おむつ10では、肌側から、トップシート11、不織布シート14、拡散シート15、吸収体13、バックシート12の順に重なっている。
【0023】
液透過性シートとしてのトップシート11を形成する材料は、例えば、織布、不織布、多孔性フィルムから構成される群から選ばれる1以上の材料で構成されている。トップシート11には、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維であって親水化処理が施された繊維から構成される不織布が用いられることが好ましい。
【0024】
液不透過性シートとしてのバックシート12を形成する材料は、例えば、液不透過性を有したポリエチレン樹脂製のフィルムである。バックシート12には、通気性を確保するため、例えば、0.1μm以上4.0μm以下の微細孔が多数形成されている。バックシート12のさらに外側には、外装シート16が配置されている。
【0025】
吸収体13は、腹部領域10F、股下部領域10C、および、背部領域10Rに跨るように細長い帯形状を有している。吸収体13を形成する材料は、例えば、フラッフパルプ、高吸収性ポリマー、親水性シートなどの吸収性材料である。吸収体13は、コアラップによって包まれることによって、その形状が保持されている。吸収体13は、トップシート11とバックシート12との間に位置し、トップシート11は、吸収体13をトップシート11とバックシート12との間に挟み込んだ状態で、バックシート12に接合される。なお、吸収体13は、コアラップで包まれていなくてもよい。
【0026】
不織布シート14は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンのような疎水性の熱可塑性樹脂の繊維から構成される不織布が用いられることが好ましい。また、不織布シート14は、例えば、カードエンボスやスパンボンド等の製法により得られた不織布が用いられ、特に防水性が高いSMSやSMMS等の不織布シートが用いられることが好ましい。このような疎水性繊維及び/又は製法による不織布シート14は、液体難通過性を有するものとなる。不織布シート14は、腹部領域10F、股下部領域10C、背部領域10Rに跨る大きさを有し、帯形状を有している。そして、不織布シート14は、全体としては、液体の通過をさせない液体難通過性でありながらも、部分的に、吸収体13側への液体の通過を可能とする液体通過性の領域を有している。なお、液体難通過性とは、液体を透過させにくい性質を指し、防水性、撥水性及び液不透過性を包含するものである。しかしながら、これらに限られることはなく、本願発明の効果が損なわれない範囲内の多少の液体通過性(例えば、第1シート領域の液体通過性よりも低い液体通過性)も含む概念である。
【0027】
拡散シート15は、例えば、織布、不織布、多孔性フィルムから構成される群から選ばれる1以上の材料で構成されている。拡散シート15には、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維であって親水化処理が施された繊維から構成される不織布が用いられることが好ましい。
【0028】
外装シート16において一対の切欠端部16Cに隣接した位置には、脚回りギャザーを構成する糸状の弾性部材17Aが伸長状態で接合されている。また、外装シート16においてウェスト開口部10Wに隣接した位置には、ウェストギャザーを構成する弾性部材17Bが伸長状態で接合されている。
【0029】
トップシート11における幅方向の左右両側縁部には、立体ギャザーを構成する液不透過性を有した一対のサイドシート18が備えられている。一対のサイドシート18における外側端縁部は、切欠端部16Cと同様の形状を有している。一対のサイドシート18のそれぞれには、その内側端縁部を吸収体13側に折り返して起立させる弾性部材18Aが伸張状態で配置され、弾性部材18Aは、収縮した際に、サイドシート18を着用者の肌当接方向に向かって立ち上げ立体ギャザーを構成する。
【0030】
図4に示すように、不織布シート14は、疎水材料で形成され、部分的に親水処理が施されている。したがって、不織布シート14は、トップシート11を透過した液体をさらに吸収体側に透過させる液体通過性を有した親水性領域としての第1シート領域14Aと、第1シート領域14A以外の撥水性領域であり、液体の通過をさせない液体難通過性を有した第2シート領域14Bとを備えている。第1シート領域14Aは、吸収体13への液体の透過を許容しながらも、一方で、吸収体13に吸収された液体の逆戻りを許容する領域ともなってしまう。そこで、第1シート領域14Aの総面積は、第2シート領域14Bの総面積より小さく設定され、吸収体13に吸収された液体が逆戻りするおそれのある領域を少なくしている。
【0031】
第1シート領域14Aは、腹部領域10Fから股下部領域10Cに跨ったストライプ模様のパターン形状を有している。すなわち、ストライプ模様を構成する所定幅を有する各直線部21は、等間隔に、長手方向に沿って互いに平行に配置されている。そして、第1シート領域14Aは、腹部領域10Fの股下部領域10Cに近い部分から股下部領域10Cの領域において、液体を吸収体13へ透過させる。また、直線部21の周囲は、第2シート領域14Bとなる。液体は、直線部21の間の第2シート領域14Bに沿って流れることで長手方向に拡散されながら順次直線部21から吸収される。
【0032】
腹部領域10Fおよび背部領域10Rにおけるウェスト開口部10Wに近い端部領域10Eや、背部領域10Rや、股下部領域10Cと背部領域10Rとに跨る臀部領域10Bには、第1シート領域14Aを備えておらず、第2シート領域14Bとなっている。これらの領域は、着用者の肌と常時接触したり頻繁に接触する領域である。これらにより、一度、吸収体13に吸収された液体は、端部領域10Eや背部領域10Rや臀部領域10Bの領域で逆戻りすることが抑制される。
【0033】
なお、腹部領域10Fや背部領域10Rのウェスト開口部10Wに近い端部領域10Eは、好ましくは、ウェスト開口部10Wを構成する上端部から10〜120mm程度、好ましくは30〜100mm程度の範囲である。
【0034】
このような第1シート領域14Aのパターンを有する不織布シート14は、ホットメルト接着剤などの接着剤によってトップシート11の肌とは反対側の面に接着される。不織布シート14のトップシート11に対する接着領域22Aは、接着剤が長手方向に沿って互いに平行な直線状の連続線となるように不織布シート14に塗布されることで構成される。すなわち、接着領域22Aは、腹部領域10Fから股下部領域10Cを介して背部領域10Rに亘って設けられる。
【0035】
接着剤の塗布されない非接着領域22Bの各々について、平面視において第1シート領域14Aと重複する部分を有しない場合、トップシート11を透過した液体の不織布シート14上における横方向への流動範囲が接着剤の液体難通過性の性質により制限される。このため、不織布シート14を吸収体13に向けて透過する経路(第1シート領域14A)を見いだせず、その領域に留まったり、逆戻りしてしまう場合がある。そこで、接着領域22Aは、非接着領域22Bの各々が、平面視において第1シート領域14Aと重複する部分を多く有するよう設けられることが望ましい。図4の例においては、液体が主に放出される範囲の非接着領域22Bは、平面視において第1シート領域14Aと重複する部分を有するものとなっている。
【0036】
次に、以上のように構成されたおむつ10の作用について説明する。
図5に示すように、おむつ10が着用されている状態において、排泄物である尿などの液体は、液透過性のトップシート11を透過し、次いで、不織布シート14の第1シート領域14Aを透過する。第1シート領域14Aを透過した液体は、拡散シート15で拡散し、吸収体13の広い領域に吸収される。吸収体13に対して体圧などで荷重が加わった場合や吸収体13に過剰に液体が吸収されている場合において、吸収体13から逆戻りする液体は、第2シート領域14Bによって、トップシート11まで戻ることが抑えられる。端部領域10Eや背部領域10Rや臀部領域10Bは、第2シート領域14Bとなっている。したがって、吸収体13からの逆戻りがあったとしても、逆戻りした液体がトップシート11まで戻ることはなく、これらの領域では肌と触れることが抑えられる。
【0037】
以上、上記実施形態によれば以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)トップシート11と吸収体13との間に疎水材料で形成された不織布シート14が配置されるので、吸収体13から逆戻りした液体がトップシート11にまで至り肌と接触することを抑えることができる。すなわち、吸収体13の高吸収性ポリマーの量を従来より増やすことなく、不織布シート14によって逆戻りを抑えることができる。したがって、着用者の肌がかぶれることを抑えることができる。
(2)吸収体13の他に、従来のように吸収性シートなどを配置することもないので、構成の複雑化を抑制することができる。
【0038】
(3)第1シート領域14Aは、界面活性剤を塗布して親水処理することによって構成することができる。第1シート領域14Aは、パターン塗工によって容易に形成することができる。
(4)第1シート領域14Aの総面積は、第2シート領域14Bの総面積より小さいので、吸収体13から逆戻りした液体がトップシート11まで滲みだすおそれのある領域を小さくすることができる。
(5)股下部領域10Cに第1シート領域14Aを備えているので、着用時において、尿などの液体を効果的に吸収することができる。
【0039】
(6)端部領域10Eや背部領域10Rや臀部領域10Bは、着用者の肌と常時接触したり頻繁に接触したり領域であり、ここを第2シート領域14Bとしている。したがって、逆戻りがあったとしても、逆戻りした液体がこれらの領域で肌と触れることが抑えられ、肌荒れなどを防ぐことができる。
(7)非接着領域22Bが第1シート領域14Aと第2シート領域14Bとに跨って存在するので、確実に、トップシート11からの液体を第1シート領域14Aを通じて吸収体13へ案内することができる。
(8)接着領域22Aは、連続線で構成され、第1シート領域14Aと第2シート領域14Bとに跨って存在するので、液体の肌側から非肌側への通過をさせない液体難通過性となった接着領域22Aで液体の流れを案内することができる。
(9)拡散シート15によって、不織布シート14を透過した液体を吸収体13の全面で吸収させることができる。そして、吸収体13が局所的に膨潤することを抑えることができる。
(10)吸収体13における高吸収性ポリマーの量を増やすことがないので、安価におむつ10を製造することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように適宜変更して実施することもできる。
〔第1シート領域の変形例1〕
図6に示すように、不織布シート14の第1シート領域14Aは、排尿される領域21Aと領域21Aの両側に長手方向に沿うように設けられる湾曲線部21Bとを備えている。これにより、排尿があった際に、主として、液体を領域21Aで透過し、例えば領域21Aで通過しきれない液体を湾曲線部21Bで透過させることができる。
・なお、湾曲線部21Bは直線部で構成してもよいし、連続線で構成してもよいし、点線で構成してもよい。また、複数の直線状の第1シート領域を平行に設けたストライプ模様で構成してもよいし、複数の波線状の第1シート領域で構成してもよい。また、散点模様もしくはドット模様で構成してもよい。また、領域21Aの形状は、三角形や四角形などの多角形形状でもよいし、円形や楕円形状であってもよい。
【0041】
〔第1シート領域の変形例2〕
図7に示すように、腹部領域10Fから股下部領域10Cに亘っては、第1シート領域14Aは、腹部領域10Fから股下部領域10Cに跨ったストライプ模様のパターン形状を有している。すなわち、ストライプを構成する所定幅を有する各直線部21Cは、長手方向に沿って互いに平行に配置されている。複数の直線部21Cは長さを異ならせて設けられており、ここでは、真ん中の直線部21Cが最も長くなるように設けられている。また、両側の直線部21Cは、真ん中の直線部21Cより幅広に設けられている。このように、複数の直線部21Cは、長さが異なっていてもよいし、幅が異なっていてもよい。また、直線部21Cは、波線や点線であってもよい。
【0042】
また、背部領域10Rでは、長手方向と直交する幅方向に亘って湾曲した湾曲線部21Dが設けられている。ここでは、湾曲線部21Dは、ウェスト開口部10Wに近い箇所と股下部領域10Cに近い箇所に設けられている。ウェスト開口部10Wに近い湾曲線部21Dは、ウェスト開口部10Wからの液漏れを抑制し、股下部領域10Cに近い湾曲線部21Dは、液体が背部領域10Rに流れ、着用者の背部と液体が接触してしまうことを抑制する。
【0043】
〔第1シート領域のその他の変形例〕
・第1シート領域14Aのパターンは、以上の例に限定されるものではなく、腹部領域10Fと股下部領域10Cと背部領域10Rとに亘って散点状もしくはドット状に設けられていてもよい。また、波線状や点線状に設けられていてもよい。
図4に示す各直線部21は、等間隔に設けられていなくてもよいし、互いに平行に設けられていなくてもよいし、全てが同じ幅でなくてもよい。また、長手方向に対して斜めに設けられていてもよいし、長手方向に対して直交するように設けられていてもよい。
・第1シート領域14Aは、界面活性剤を塗布する以外の方法で形成してもよい。例えば、親水性処理は、プラズマ処理で行ってもよい。また、第1シート領域14Aは、液体を透過できる程度にまで第2シート領域14Bより薄く形成して構成してもよい。また、第1シート領域14Aは、不織布シートにおける開口、あるいは微小孔の多数形成により構成してもよい。
【0044】
〔接着領域の変形例〕
図8に示すように、接着領域22Aは、直線状の連続線ではなく、螺旋状の連続線で構成してもよい。この場合にも、接着領域22A以外の非接着領域22Bは、第1シート領域14Aと第2シート領域14Bとに跨って存在することで、第1シート領域14Aを接着領域22Aで塞がないようにすることができる。
【0045】
・接着領域22Aは、連続線ではなく、点線で構成してもよいし、不織布シート14の全面に対して散点状もしくはドット状に設けてもよい。また、直線状ではなく波線状に設けてもよい。接着領域22Aを点線や散点状もしくはドット状に設けるときには、熱シールによって接着することができる。
・また、接着領域22Aは、第1シート領域14Aを塞がないように配置されるのであれば、第1シート領域14Aのパターンより幅広のものであってもよい。
・接着領域22Aを構成する連続線は、第1シート領域14Aと第2シート領域14Bとに跨って存在していなくてもよい。
・非接着領域22Bは、第1シート領域14Aと第2シート領域14Bとに跨って存在していなくてもよい。例えば、接着領域22Aを第2シート領域14Bに全体的に設け、非接着領域22Bを第1シート領域14Aとしてもよい。これにより、不織布シート14には、第1シート領域14Aと第2シート領域14Bとが設けられることになる。
【0046】
〔不織布シートの変形例〕
・不織布シート14は、吸収体13の吸収面の大きさと比較して、吸収体13の吸収面より小さくてもよいし、大きくてもよい。
・不織布シート14は、股下部領域10Cと腹部領域10Fに配置されていてもよい。腹部領域10Fを第2シート領域14Bとしたときには、腹部の肌がかぶれることを抑制することができる。
・不織布シート14は、股下部領域10Cと背部領域10Rに配置されていてもよい。背部領域10Rを第2シート領域14Bとしたときには、背部の肌がかぶれることを抑制することができる。
・第2シート領域14Bは、ウェストギャザーなどが配置された腹部や背部と接触する端部領域の少なくとも一方に設けられているだけでもよい。
・不織布シート14は、疎水性材料で形成されていなくてもよく、例えば、親水性の不織布で構成し、撥水処理などによって第2シート領域14Bを設けるようにしてもよい。
・第2シート領域14Bは、トップシート11との接着領域22Aで構成するようにしてもよい。この場合、親水性の不織布で構成された不織布シート14は、接着剤が含浸されることで、第2シート領域14Bが設けられることになる。
・不織布シート14は、拡散シート15に接着されていてもよい。また、拡散シート15を備えていない場合は、吸収体13に対して接着されていてもよい。
【0047】
〔その他の変形例〕
・おむつ10において、拡散シート15は備えていなくてもよい。
・第1シート領域14Aの総面積は、第2シート領域14Bの総面積と同じであってもよいし、第2シート領域14Bの総面積より大きくてもよい。
・吸収性物品は、テープ型のおむつであってもよいし、尿パッド等であってもよい。また、幼児用おむつであってもよいし、成人用おむつであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
10…おむつ、10B…臀部領域、10C…股下部領域、10E…端部領域、10F…腹部領域、10J…接合部、10L…脚回り開口部、10R…背部領域、10W…ウェスト開口部、11…トップシート、12…バックシート、13…吸収体、14…不織布シート、14A…第1シート領域、14B…第2シート領域、15…拡散シート、16…外装シート、16C…切欠端部、17A,17B…弾性部材、18…サイドシート、18A…弾性部材、21…直線部、21A…領域、21B…湾曲線部、21C…直線部、21D…湾曲線部、22A…接着領域、22B…非接着領域。
図1
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図8