特許第6569587号(P6569587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569587
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】両面粘着シート及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/20 20180101AFI20190826BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20190826BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20190826BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20190826BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   C09J7/20
   C09J7/00
   C09J11/06
   C09J201/00
   B32B27/00 M
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-88056(P2016-88056)
(22)【出願日】2016年4月26日
(65)【公開番号】特開2017-197623(P2017-197623A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 万智
(72)【発明者】
【氏名】畑 章浩
(72)【発明者】
【氏名】清水 滋呂
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−017386(JP,A)
【文献】 特開2013−171250(JP,A)
【文献】 特開平10−195393(JP,A)
【文献】 特開2005−010581(JP,A)
【文献】 特開平10−219200(JP,A)
【文献】 特開平10−306140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長370nmの光透過率が50%以上である基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられ、貼合後に硬化可能であり、活性エネルギー線硬化能を有する第1の粘着剤層と、
前記基材層の他方の面側に設けられ、厚みが5μm以上75μm以下の第2の粘着剤層と、を有し、
前記第1の粘着剤層の厚みをAとし、前記第2の粘着剤層の厚みをBとした場合、A>Bである、両面粘着シート。
【請求項2】
前記第1の粘着剤層の厚みが50μm以上250μm以下である請求項1に記載の両面粘着シート。
【請求項3】
前記第1の粘着剤層は、一表面上の一部に加飾層を有する加飾基材層に貼合されるものである請求項1又は2に記載の両面粘着シート。
【請求項4】
前記第2の粘着剤層は、表示装置に貼合されるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の両面粘着シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の両面粘着シートと、前記第1の粘着剤層上に積層された加飾基材層と、前記第2の粘着剤層上に積層された表示装置と、を備える積層体であって、
前記加飾基材層は、一表面上の一部に加飾層を有し、前記加飾層を有する面と前記第1の粘着剤層が貼合されている積層体。
【請求項6】
第3の粘着剤層と表面カバー層とをさらに有し、
前記加飾基材層上に前記第3の粘着剤層を有し、前記第3の粘着剤層上に前記表面カバー層を有する請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の両面粘着シートの前記第1の粘着剤層を、一表面上の一部に加飾層を有する加飾基材層の加飾層側の面に接触させ、
その状態で前記第2の粘着剤層側から活性エネルギー線を照射して前記第1の粘着剤層を完全硬化させる工程と、
前記第2の粘着剤層に表示装置を貼合する工程と、を含む積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着シート及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられるようになってきている。これらの表示装置や入力装置の製造においては、光学部材を貼り合せる用途に透明な両面粘着シートが使用されている。例えば、透明支持体上にITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極膜を設けた導電部材とカバーガラス、タッチパネルと表示装置などの2つの部材を貼合するために両面粘着シートが広く用いられている。
【0003】
スマートフォンなどの携帯電話端末機器等においては、機器内部の電気回路等を隠蔽するために額縁印刷が施されている。このような場合、カバーパネル裏面の周縁部に加飾層が設けられることが多く、カバーパネルの裏面側に貼合される粘着剤層には、加飾層の段差に追従し得る性質を有することが求められている。また、カバーパネルが樹脂製の場合は、カバーパネルの裏面側に貼合される粘着剤層が、樹脂パネルから発生するアウトガスのガス圧に対抗し得る粘着力や凝集力を備えている必要がある。このように、粘着剤層には段差追従性と耐アウトガス性の両方が求められる場合があり、これらの課題を達成する手段としては、紫外線照射による後硬化型の粘着剤層が提案されている(例えば、特許文献1等)。
【0004】
また、特許文献2には、第1の感圧接着層と第2の感圧接着層の間に透明な水蒸気バリアー層を備えた両面粘着シートが開示されている。ここでは、第1の感圧接着層と第2の感圧接着層の貯蔵弾性率を所定の範囲とすることによりガラス板の貼り合わせに適した粘着シートを提供することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/032995号公報
【特許文献2】特許第3878386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたような紫外線後硬化型粘着剤層を用いる場合は、その貼合用途は紫外線を透過する被着体の貼合用に限られる。例えば、特許文献1に記載されたような紫外線後硬化型粘着剤層を用いる場合は、粘着シートの両面に設けられる被着体の両方が紫外線を透過させるものである必要があり、その貼合用途が限れられていた。
また、特許文献2に記載されたような粘着シートにおいては、段差追従性が十分ではなく、耐アウトガス性が不十分である場合があることが本発明者らの検討により明らかとなった。
【0007】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、紫外線を透過しない被着体の貼合にも適用が可能な両面粘着シートであって、段差追従性と耐アウトガス性の両方の性質を兼ね備えた両面粘着シートを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、第1の粘着剤層と、基材層と、第2の粘着剤層をこの順で積層してなる両面粘着シートにおいて、基材層の紫外線透過率を高め、かつ、所定の物性を有する第1の粘着剤層と第2の粘着剤層を、基材層を介して積層することにより、段差追従性と耐アウトガス性の両方の性質を兼ね備えた両面粘着シートが得られることを見出した。本発明者らは、このような両面粘着シートは、紫外線を透過しない被着体の貼合にも適用可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1] 波長370nmの光透過率が50%以上である基材層と、基材層の一方の面側に設けられ、貼合後に硬化可能な第1の粘着剤層と、基材層の他方の面側に設けられ、厚みが5μm以上75μm以下の第2の粘着剤層と、を有する両面粘着シート。
[2] 第1の粘着剤層が、活性エネルギー線硬化能を有する粘着剤層である[1]に記載に両面粘着シート。
[3] 第1の粘着剤層の厚みが50μm以上250μm以下である[1]又は[2]のいずれかに記載の両面粘着シート。
[4] 第1の粘着剤層は、一表面上の一部に加飾層を有する加飾基材層に貼合されるものである[1]〜[3]のいずれかに記載の両面粘着シート。
[5] 第2の粘着剤層は、表示装置に貼合されるものである[1]〜[4]のいずれかに記載の両面粘着シート。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の両面粘着シートと、第1の粘着剤層上に積層された加飾基材層と、第2の粘着剤層上に積層された表示装置と、を備える積層体であって、加飾基材層は、一表面上の一部に加飾層を有し、加飾層を有する面と第1の粘着剤層が貼合されている積層体。
[7] 第3の粘着剤層と表面カバー層とをさらに有し、加飾基材層上に第3の粘着剤層を有し、第3の粘着剤層上に表面カバー層を有する[6]に記載の積層体。
[8] [1]〜[5]のいずれかに記載の両面粘着シートの第1の粘着剤層を、一表面上の一部に加飾層を有する加飾基材層の加飾層側の面に接触させ、その状態で第2の粘着剤層側から活性エネルギー線を照射して第1の粘着剤層を完全硬化させる工程と、第2の粘着剤層に表示装置を貼合する工程と、を含む積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、段差追従性と耐アウトガス性の両方の性質を兼ね備えた両面粘着シートを得ることができる。本発明の両面粘着シートは、紫外線を透過しない被着体の貼合にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の両面粘着シートの一態様を説明する概略断面図である。
図2図2は、本発明の両面粘着シートを用いて被着体を貼合してなる積層体の構成を説明する概略断面図である。
図3図3は、本発明の両面粘着シートを用いて被着体を貼合してなる積層体の構成を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0013】
(両面粘着シート)
本発明は、波長370nmの光透過率が50%以上である基材層と、基材層の一方の面側に設けられ、貼合後に硬化可能な第1の粘着剤層と、基材層の他方の面側に設けられ、厚みが5μm以上75μm以下の第2の粘着剤層と、を有する両面粘着シートに関する。
【0014】
本発明の両面粘着シートは上記構成を有するため、段差追従性と耐アウトガス性の両方の性質を兼ね備えている。本発明の両面粘着シートにおいて、第1の粘着剤層は、被着体に貼合された後に硬化可能な粘着剤層であり、貼合前は柔らかい半硬化状態を呈している。この状態で、第1の粘着剤層側が凹凸構造を有する被着体側に貼合されるため、凹凸部の段差に容易に追従する。その後、第2の粘着剤層側から活性エネルギー線の照射を行い、後硬化(本硬化)を行うことで、第1の粘着剤層は完全硬化状態となり、被着体に強固に接着すると共に優れた耐アウトガス性を発揮することができる。さらに本発明は、基材層を介して第1の粘着剤層と第2の粘着剤層が積層されており、このような構成とすることにより、第1の粘着剤層が完全硬化した後でも柔軟な第2の粘着剤層により被着体に対して良好な濡れ性(密着性)を発揮することができる。
なお、本明細書中の「半硬化状態」とは、粘着剤層を被着体に貼合する前に熱もしくは活性エネルギー線により一部を硬化させた状態を指し、後硬化(本硬化)前の柔らかい状態を指す。また、「半硬化状態」とは、後硬化(本硬化)後に動的粘弾性が1.5倍以上になる状態を指す。当該動的粘弾性は、好ましくは1.5倍以上1000倍以下、より好ましくは2倍以上100倍以下である。本発明における半硬化状態において粘着剤層の動的粘弾性は、1.0×106Pa以下であることが好ましく、8.0×105Pa以下が更に好ましく、5.0×105Pa以下が特に好ましい。「完全硬化(本硬化)状態」とは、半硬化状態の粘着剤層に活性エネルギー線を照射して粘着剤層をさらに硬化させた状態を指す。
【0015】
図1は、本発明の両面粘着シートの一態様を説明する概略断面図である。図1に示されているように、両面粘着シート100は、基材層10を有する。そして、両面粘着シート100は、基材層10の一方の面側に第1の粘着剤層12を有し、基材層10の他方の面側に第2の粘着剤層14を有する。第1の粘着剤層12は、被着体に貼合された後に硬化可能な性質を有し、第2の粘着剤層14の厚みは、5μm以上75μm以下である。
【0016】
本発明の両面粘着シートの全体の厚みは、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることがさらに好ましい。また、両面粘着シートの全体の厚みは、1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。
【0017】
本発明の両面粘着シートは、段差を有する被着体の貼合に好ましく用いられる。この場合、第1の粘着剤層が、被着体の段差を有する面に貼合される。段差を有する被着体としては、例えば、一表面上の一部に加飾層を有する加飾基材層等を挙げることができ、第1の粘着剤層は、このような加飾基材層の加飾層が設けられた側の面に貼合される。第1の粘着剤層は段差追従性に優れているため、本発明の両面粘着シートは、このような段差を有する被着体の貼合用途に好ましく用いられる。
【0018】
加飾層を有する加飾基材層は、樹脂製の基材層であってもよい。本発明の両面粘着シートは耐アウトガス性に優れているため、加飾基材層が樹脂層である場合であっても、貼合後の気泡の発生を抑制することができる。
【0019】
本発明の両面粘着シートにおいて、第2の粘着剤層は、光学部材に貼合されるものであることが好ましい。光学部材としては、例えば、表示装置等を挙げることができ、表示装置は、液晶表示装置(液晶ディスプレイパネル)、プラズマ表示装置(プラズマディスプレイパネル)、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機ELパネル)等であることが好ましい。
【0020】
(基材層)
本発明の両面粘着シートは基材層を含む。基材層は、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層の間に設けられ、第1の粘着剤層から第2の粘着剤層へ粘着剤のモノマー成分等の移行を妨げる働きをする。このように基材層を設けることにより、両面粘着シートの段差追従性と耐アウトガス性を高めることができる。
【0021】
基材層は、樹脂を含む。基材層に含まれる樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素系樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂等の各種合成樹脂を挙げることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)及びシクロオレフィンポリマー樹脂(COP樹脂)から選択される少なくとも1種は好ましく用いられ、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)は特に好ましく用いられる。
【0022】
基材層の波長370nmの光透過率は50%以上であればよく、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。基材層の波長370nmの光透過率を上記範囲内とすることにより、第2の粘着剤層側から活性エネルギー線を照射することによって第1の粘着剤層の後硬化が可能となり、第1の粘着剤層側にも紫外線を透過しない被着体を積層することができる。
【0023】
基材層の波長370nmの光透過率は、紫外可視分光光度計(型式:Solid−Spec3700、島津製作所社製)を用い測定した値である。
【0024】
基材層の厚みは、20μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。また、基材層の厚みは、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。
【0025】
(第1の粘着剤層)
第1の粘着剤層は、基材層の一方の面側に設けられる粘着剤層である。第1の粘着剤層は、被着体に貼合した後に、硬化可能な性質を有する。すなわち、第1の粘着剤層は、活性エネルギー線硬化能を有する粘着剤層であることが好ましい。
【0026】
また、第1の粘着剤層は、活性エネルギー線硬化能を有する粘着剤層であることが好ましい。本明細書においては、活性エネルギー線硬化能を有する粘着剤層をデュアルキュア型粘着剤層と称することもできる。ここで、活性エネルギー線硬化能を有する粘着剤層は、多段階で硬化が進行する粘着剤層であり、例えば、熱硬化性と活性エネルギー線硬化性の両方を備える粘着剤組成物から形成された粘着剤層である。本発明においては、第1の粘着剤層は、1段階目の熱硬化が行われたものであって、2段階目で活性エネルギーにより硬化ができるものであることが好ましい。本発明の両面粘着シートにおいて第1の粘着剤層は熱硬化をした半硬化状態で積層されていることが好ましく、第1の粘着剤層が被着体に貼合された後に活性エネルギーにより硬化をするものであることが好ましい。すなわち、本発明の両面粘着シートにおいては、第1の粘着剤層は活性エネルギー線硬化能を有しているものであることが好ましい。なお、第1の粘着剤層が被着体に貼合された後の硬化工程は多段階硬化工程であってもよい。
【0027】
第1の粘着剤層の厚みは、50μm以上であることが好ましく、75μm以上であることがより好ましく、90μm以上であることがさらに好ましい。また、第1の粘着剤層の厚みは、250μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。第1の粘着剤層の厚みを上記範囲内とすることにより、段差追従性をより効果的に高めることができる。また、両面粘着シートの耐アウトガス性を高めることができる。
【0028】
第1の粘着剤層は、後硬化能を有する粘着剤層であればよい。このような粘着剤層は、例えば、(a)デュアルキュア型粘着剤組成物や、(b)水素引抜型架橋剤含有粘着剤組成物から形成することができる。本発明においては、デュアルキュア型粘着剤組成物の他に、水素引抜型架橋剤含有粘着剤組成物を用いた場合であっても、後硬化能を有する粘着剤層を得ることができる。この場合も活性エネルギー線を照射することにより後硬化工程を行うことができる。
【0029】
((a)デュアルキュア型粘着剤組成物)
第1の粘着剤層は、デュアルキュア型粘着剤組成物から形成されるものであることが好ましい。デュアルキュア型粘着剤組成物は、非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)及び架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)を含むベースポリマー(A)と、単量体(B)と、熱によりベースポリマー(A)と反応する架橋剤(C)と、活性エネルギー線の照射により単量体(B)の重合反応を開始させる重合開始剤(D)と、溶剤(E)とを含有するものであることが好ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を含むことを意味し、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を含むことを意味する。
【0030】
<ベースポリマー(A)>
ベースポリマー(A)は、非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)と、架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)を含有する。ベースポリマーは、表示装置の視認性を低下させない程度の透明性を有するものが好ましい。なお、本明細書において、「単位」は重合体を構成する繰り返し単位(単量体単位)である。
【0031】
非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、粘着性が高くなることから、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0032】
架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)としては、ヒドロキシ基含有単量体単位、アミノ基含有単量体単位、グリシジル基含有単量体単位、カルボキシ基含有単量体単位等が挙げられる。これら単量体単位は1種でもよいし、2種以上でもよい。
ヒドロキシ基含有単量体単位は、ヒドロキシ基含有単量体に由来する繰り返し単位である。ヒドロキシ基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸モノ(ジエチレングリコール)などの(メタ)アクリル酸[(モノ、ジ又はポリ)アルキレングリコール]、(メタ)アクリル酸モノカプロラクトンなどの(メタ)アクリル酸ラクトンが挙げられる。
アミノ基含有単量体単位は、例えば、(メタ)アクリルアミド、アリルアミン等のアミノ基含有単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。
グリシジル基含有単量体単位は、(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。
カルボキシ基含有単量体単位は、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
【0033】
ベースポリマー(A)における架橋性アクリル単量体単位(a2)の含有量は0.01質量%以上40質量%以下であることが好ましい。架橋性アクリル単量体単位(a2)の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、半硬化状態を維持するために必要な架橋性を十分に有しており、上記範囲の上限値以下であれば、必要な粘着物性を維持できる。
【0034】
ベースポリマー(A)は、必要に応じて、非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)および架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)以外の他の単量体単位を有してもよい。他の単量体は、非架橋性(メタ)アクリル酸エステルおよび架橋性官能基を有するアクリル単量体と共重合可能なものであればよく、例えば(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等が挙げられる。ベースポリマー(A)における任意単量体単位の含有量は20質量%以下であることが好ましい。
【0035】
ベースポリマー(A)の重量平均分子量は、10万以上200万以下が好ましい。重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、第1の粘着剤層の半硬化状態を維持でき、かつ十分な段差追従性を確保することができる。なお、ベースポリマー(A)の重量平均分子量は架橋剤で架橋される前の値である。重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。ベースポリマー(A)としては、市販のものを用いてもよく、公知の方法により合成したものを用いてもよい。
【0036】
ベースポリマー(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフイー(GPC)により測定することもできる。この場合、ゲルパーミエションクロマトグラフイー(GPC)の測定条件は以下のとおりである。
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
カラム:Shodex KF801、KF803L、KF800L、KF800D(昭和電工(株)製を4本接続して使用した)
カラム温度:40℃
試料濃度:0.5質量%
検出器:RI−2031plus(JASCO製)
ポンプ:RI−2080plus(JASCO製)
流量(流速):0.8ml/min
注入量:10μl
校正曲線:標準ポリスチレンShodex standard ポリスチレン(昭和電工(株)製)Mw=1320〜2,500,000迄の10サンプルによる校正曲線を使用する。
【0037】
<単量体(B)>
単量体(B)は、重合性不飽和基を少なくとも1つ有する単官能単量体(B1)及び重合性不飽和基を2つ以上有する多官能単量体(B2)の少なくとも一方を含有することが好ましい。単量体(B)は、単官能単量体(B1)又は多官能単量体(B2)のいずれか一方を含むことが好ましく、単官能単量体(B1)及び多官能単量体(B2)の両方を含んでもよい。
単量体(B)を含有することで、粘着剤組成物を熱硬化させたとき、熱硬化物の粘着剤層は半硬化状態であって、活性エネルギー線硬化能を有することができる。
重合性不飽和基としては、エチレン性二重結合を含む基が好ましく、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。なかでも(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
【0038】
単官能単量体(B1)としては、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
これらの中でも、融点が25℃以下である、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルから選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
【0039】
多官能単量体(B2)としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,9−ノナンジオール、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、メタクリル酸ビニル等が挙げられる。
なお、単量体(B)は、アクリル単量体単位(a2)が有する官能基と反応性を示す官能基を有さないものであることが好ましい。例えば、単量体(B)は、アクリル単量体単位(a2)と同じ官能基(例えば、ヒドロキシ基)を有するか、官能基を有さないものであることが好ましい。
【0040】
単量体(B)は単官能単量体(B1)又は多官能単量体(B2)のいずれか1種を単独、あるいは単官能単量体(B1)及び/又は多官能単量体(B2)を2種以上併用してもよい。
【0041】
粘着剤組成物中、単量体(B)の含有量は、ベースポリマー(A)の組成や分子量、架橋密度等に応じて適宜選択され、特に限定されないが、ベースポリマー(A)100質量部に対し、5質量部以上150質量部以下であることが好ましい。単量体(B)の含有量を上記範囲内とすることにより、段差追従性の変形・歪み防止性能を高め、加工性を高めることができる。
【0042】
<架橋剤(C)>
架橋剤(C)は、ベースポリマー(A)が有する架橋性官能基との反応性を考慮して適宜選択できる。例えばイソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などの公知の架橋剤の中から選択できる。これらの中でも、架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)を容易に架橋できることから、イソシアネート化合物やエポキシ化合物が好ましい。例えば、架橋性官能基としてヒドロキシ基を含む場合は、ヒドロキシ基の反応性から、イソシアネート化合物を用いることがより好ましい。
【0043】
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0044】
粘着剤組成物中の架橋剤(C)の含有量は、所望とする粘着物性等に応じて適宜選択されるが、ベースポリマー(A)100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下が好ましい。
【0045】
<重合開始剤(D)>
重合開始剤(D)は、活性エネルギー線の照射により単量体(B)の重合反応を開始させ得るものであればよく、光重合開始剤など公知のものを用いることができる。
ここで、「活性エネルギー線」とは電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
【0046】
重合開始剤(D)としては、例えばアセトフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アミン系開始剤等が挙げられる。
アセトフェノン系開始剤として具体的には、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
ベンゾインエーテル系開始剤として具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系開始剤として具体的には、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤として具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等が挙げられる。
チオキサントン系開始剤として具体的には、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン等が挙げられる。
アミン系開始剤として具体的には、トリエタノールアミン、4−ジメチル安息香酸エチル等が挙げられる。
【0047】
粘着剤組成物中の重合開始剤(D)の含有量は、単量体(B)の含有量や完全硬化させるときの活性エネルギー線の照射量等に応じて適宜選択される。具体的には、単量体(B)の全質量に対し、0.05質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0048】
<溶剤(E)>
溶剤(E)は、粘着剤組成物の塗工適性の向上のために用いられる。溶剤(E)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0049】
溶剤(E)は、重合性不飽和基を有さず、単官能単量体(b1)よりも25℃における蒸気圧の高い溶剤が好ましい。重合性不飽和基を有さず、単官能単量体(b1)よりも25℃における蒸気圧の高い溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エタノール、イソプロピルアルコール、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0050】
<任意成分>
粘着剤組成物は可塑剤をさらに含んでもよい。可塑剤は、無官能基アクリル重合体であることが好ましい。無官能基アクリル重合体は、アクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位のみからなる重合体、又はアクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位と官能基を有しない非アクリル単量体単位とからなる重合体である。無官能基アクリル重合体はベースポリマー(A)とは架橋しないため、粘着物性に影響を与えずに段差追従性を高めることができる。
【0051】
粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、粘着剤用の添加剤として公知の成分を挙げることができる。例えば酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等を挙げることができる。
【0052】
((b)水素引抜型架橋剤含有粘着剤組成物)
水素引抜型架橋剤含有粘着剤組成物は、アクリル系重合体を主成分として含む粘着剤組成物である。ここで、「主成分」とは、粘着剤組成物の全質量に対し、50質量%以上含まれている成分をいう。
【0053】
アクリル系重合体としては、非架橋性の(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)を主成分とし、これに架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)を含有する共重合体を用いることが好ましい。本明細書において、「単位」は重合体を構成する繰り返し単位(単量体単位)である。
【0054】
アクリル系重合体を構成する非架橋性の(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が挙げられる。これらは必要に応じて2種類以上を併用しても良い。
【0055】
架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水フマル酸等のカルボキシル基含有単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、モルホリルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−tert−ブチルアミノエチルアクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基などが挙げられる。これらは必要に応じて2種類以上を併用しても良い。
【0056】
アクリル系重合体は、必要に応じて、非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)および架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)以外の他の単量体単位を有してもよい。他の単量体としては、非架橋性(メタ)アクリル酸エステルおよび架橋性官能基を有するアクリル単量体と共重合可能なものであればよい。他の単量体としては、例えば(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等が挙げられる。
【0057】
アクリル系重合体の重量平均分子量は、10万以上200万以下が好ましく、30万以上150万以下がより好ましい。重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、十分な耐久性と柔軟性を確保できる。なお、アクリル系重合体の重量平均分子量は架橋剤で架橋される前の値である。重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。また、クリル系重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフイー(GPC)により測定することもできる。
【0058】
アクリル系重合体を重合する際には、例えば、溶液重合法を適用することができる。溶液重合法としては、イオン重合法やラジカル重合法など挙げられる。その際に使用される溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0059】
水素引抜型架橋剤含有粘着剤組成物は、水素引抜型光重合開始剤を含有する。水素引抜型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアンスラキノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン等を挙げることができる。中でもベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンが好適である。
【0060】
水素引抜型架橋剤含有粘着剤組成物は、水素引抜型光重合開始剤の他に、架橋剤を含有していてもよい。他の架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などが挙げられる。
【0061】
水素引抜型架橋剤含有粘着剤組成物中の水素引抜型光重合開始剤の含有量は、所望とする粘着物性等に応じて適宜選択され、特に限定されないが、例えばアクリル系重合体100質量部に対し、0.01質量部以上20質量部以下が好ましい。
【0062】
水素引抜型架橋剤含有粘着剤組成物には溶媒が含まれていてもよい。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、n−ヘキサン、n−ブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドンなどが使用される。これらは1種以上を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0063】
水素引抜型架橋剤含有粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、粘着剤用の添加剤として公知の成分を挙げることができる。例えば酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等を挙げることができる。
【0064】
(第2の粘着剤層)
第2の粘着剤層は、基材層の他方の面側に設けられる粘着剤層である。第2の粘着剤層の厚みは、5μm以上75μm以下である。
【0065】
第2の粘着剤層の厚みは5μm以上であればよく、10μm以上であることが好ましい。また、第2の粘着剤層の厚みは75μm以下であればよく、60μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。第2の粘着剤層の厚みを上記範囲内とすることにより、耐アウトガス性を効果的に高めることができる。
【0066】
第2の粘着剤層は、ベースポリマーを主成分として含む第2の粘着剤組成物から形成されるものであることが好ましい。ベースポリマーは、アクリル系重合体、ゴム系重合体、シリコン系重合体、ウレタン系重合体及びポリエステル系重合体から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。中でもベースポリマーは、アクリル系重合体、ゴム系重合体及びシリコン系重合体から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アクリル系重合体及びゴム系重合体から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、アクリル系重合体を含むことがさらに好ましい。
【0067】
第2の粘着剤組成物中に含まれる他の成分は、第1の粘着剤組成物中に含まれる他の成分と同様である。
【0068】
第2の粘着剤層の厚みは、第1の粘着剤層の厚みよりも薄いものであることが好ましい。第1の粘着剤層の厚みをAとし、第2の粘着剤層の厚みをBとした場合は、A>Bであることが好ましく、A>1.5Bであることがより好ましく、A>2Bであることがさらに好ましい。第1の粘着剤層と第2の粘着剤層の厚みの関係を上記関係とすることにより、耐アウトガス性と段差追従性をより効果的に高めることができる。
【0069】
(剥離シート付き両面粘着シート)
本発明は、上述した両面粘着シートの少なくとも一方の面に剥離シートが積層された剥離シート付き両面粘着シートに関するものであってもよい。剥離シートは、両面粘着シートの少なくとも一方の面に積層されており、両面粘着シートの両面に積層されていることが好ましい。
【0070】
剥離シートは、少なくとも片面に離型性を有するシートである。剥離シートとしては、剥離シート用基材と剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シートや、低極性基材としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
【0071】
剥離性積層シートにおける剥離シート用基材としては、紙類、高分子フィルムが使用される。剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコン系剥離剤が好ましく用いられる。
シリコン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24−4527、SD−7220等や、信越化学工業(株)製のKS−3600、KS−774、X62−2600などが挙げられる。また、シリコン系剥離剤中にSiO2単位と(CH33SiO1/2単位あるいはCH2=CH(CH3)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24−843、SD−7292、SHR−1404等や、信越化学工業(株)製のKS−3800、X92−183等が挙げられる。
【0072】
剥離シートは、剥離しやすくするために、一方の剥離シートと他方の剥離シートとでそれぞれ剥離性が異なることが好ましい。つまり、一方からの剥離性と他方からの剥離性とが異なると、剥離性が高い方の剥離シートだけを先に剥離することが容易となる。その場合、貼合方法や貼合順序に応じて一方の剥離シートと他方の剥離シートの剥離性を調整すればよい。
【0073】
剥離シート上に粘着剤組成物を塗工する場合は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。塗膜の加熱は、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いて実施できる。
【0074】
(両面粘着シートの製造方法)
本発明の両面粘着シートの製造方法は、貼合後に硬化可能な第1の粘着剤層を得る工程と、厚みが5μm以上75μm以下の第2の粘着剤層を得る工程と、波長370nmの光透過率が50%以上である基材層の一方の面側に、第1の粘着剤層を貼合する工程と、基材層の他方の面側に第2の粘着剤層を貼合する工程とを含む。
【0075】
第1の粘着剤層を得る工程は、第1の剥離シート上に第1の粘着剤組成物を塗工する工程であることが好ましい。第1の粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。塗工後は加熱乾燥工程を設けることが好ましく、加熱乾燥工程では、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いることが好ましい。
【0076】
第1の粘着剤層を形成する工程では、厚みが50μm以上250μm以下の第1の粘着剤を形成することが好ましい。この場合、第1の粘着剤組成物の塗工量は粘着剤組成物の固形分濃度や粘度に応じて適宜決定することができる。
【0077】
第2の粘着剤層を得る工程は、第2の剥離シート上に第2の粘着剤組成物を塗工する工程であることが好ましい。第2の粘着剤組成物の塗工方法としては、上述した塗工方法を同様に挙げることができる。
【0078】
第2の粘着剤層を形成する工程では、厚みが5μm以上75μm以下の第2の粘着剤を形成することが好ましい。
【0079】
波長370nmの光透過率が50%以上である基材層の一方の面側に、第1の粘着剤層を貼合する工程と、基材層の他方の面側に第2の粘着剤層を貼合する工程においては、基材層の各面に第1の粘着剤層と、第2の粘着剤層をそれぞれ貼合する。
【0080】
(両面粘着シートの使用方法)
本発明の両面粘着シートの使用方法は、両面粘着シートの第1の粘着剤層が半硬化状態のときに被着体と貼合し、活性エネルギー線を照射して第1の粘着剤層を完全硬化させる方法であることが好ましい。被着体は、段差を有するものであってもよく、このような被着体としては、例えば、加飾層を有する加飾基材層を挙げることができる。
【0081】
両面粘着シートを、加飾層を有する加飾基材層に貼合する場合、活性エネルギー線は第2の粘着剤層側から照射する。活性エネルギー線を照射する前は、第1の粘着剤層は半硬化状態であることから、加飾層と加飾基材層との段差に追従することができる。両面粘着シートを貼合し、段差に追従させた後、第1の粘着剤層を活性エネルギー線で完全硬化させることで、第1の粘着剤層の凝集力が高まり、加飾基材層への粘着性が向上する。
【0082】
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられ、粘着剤層に含まれる重合開始剤に応じて適宜選択できる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
紫外線の光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、無電極紫外線ランプ等を使用できる。
電子線としては、例えば、コックロフトワルト型、バンデクラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線を使用できる。
【0083】
第1の粘着剤層を完全硬化した後に、第2の粘着剤層に被着体を貼合することが好ましい。第2の粘着剤層は後硬化能を有する粘着剤層である必要はなく、活性エネルギー線を照射しなくても被着体と貼合することが可能である。すなわち、第2の粘着剤層は活性エネルギー線非硬化性の粘着剤層である。
第2の粘着剤層に貼合される被着体は、表示装置等の光学部材であることが好ましい。表示装置としては、例えば、液晶表示装置(液晶ディスプレイパネル)、プラズマ表示装置(プラズマディスプレイパネル)、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機ELパネル)等を挙げることができる。
【0084】
(積層体)
<第1の態様>
本発明は、上述した両面粘着シートにさらに他の層を積層した積層体に関するものであってもよい。このような積層体の第1の態様として、上述した両面粘着シートと、第1の粘着剤層上に積層された加飾基材層と、第2の粘着剤層上に積層された表示装置と、を備える積層体を挙げることができる。ここで、加飾基材層は、一表面上の一部に加飾層を有するものであって、加飾層を有する面と第1の粘着剤層が貼合される。
【0085】
図2は、本発明の両面粘着シートを用いて被着体を貼合してなる積層体200の構成を説明する概略断面図である。図2に示されているように、第1の粘着剤層12上には、加飾層25を有する加飾基材層20が積層されており、第2の粘着剤層14上には被着体30が積層されている。ここで、被着体30は表示装置であることが好ましい。表示装置としては、例えば、液晶表示装置(液晶ディスプレイパネル)、プラズマ表示装置(プラズマディスプレイパネル)、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機ELパネル)等を挙げることができる。
【0086】
<加飾基材層>
本発明では、加飾基材層は紫外線を透過しない性質を有するものであってもよい。本発明においては、第1の粘着剤層を硬化させる際、第2の粘着剤層側から活性エネルギー線を照射することができる。このため、第1の粘着剤層を貼合する被着体は紫外線を透過しないものであってもよく、本発明の両面粘着シートは様々な被着体の貼合に用いることができる。
【0087】
積層体において、加飾基材層は多層構造を有していてもよい。加飾基材層が多層構造を有する場合、加飾基材層は、例えば、基材樹脂層と機能層を有していることが好ましい。
【0088】
機能層としては、例えば、プライマー層及びハードコート層から選択される少なくとも1層を挙げることができる。すなわち、加飾基材層は、基材樹脂層と、プライマー層及びハードコート層から選択される少なくとも1層を含むものであることが好ましい。
【0089】
<プライマー層>
プライマー層は、基材樹脂層の下塗り層であることが好ましい。プライマー層を設けることにより、溶剤型の粘着剤層を用いた場合等に、基材樹脂層に与える溶剤の影響を最小限に抑えることができる。なお、基材層が、基材樹脂層とプライマー層の多層構造を有する場合は、基材樹脂層の厚みがプライマー層の厚みよりも大きいものであり、このような厚みによって両者を区別することができる。
【0090】
プライマー層を構成する樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を挙げることができる。エポキシ樹脂は、一液硬化型や二液硬化型のいずれも用いることができる。また、水溶性のエポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。水溶性のエポキシ樹脂としては、例えば、ポリアミドエポキシ樹脂等を挙げることができる。ポリアミドエポキシ樹脂は、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンのようなポリアルキレンポリアミンと、アジピン酸のようなジカルボン酸との反応で得られるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られる。
【0091】
プライマー層を形成する樹脂として水溶性のエポキシ樹脂を用いる場合は、さらに塗工性を向上させるために、ポリビニルアルコール系樹脂などの他の水溶性樹脂を混合してもよい。ポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコールや完全ケン化ポリビニルアルコールのほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールのような、変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。
【0092】
プライマー層を構成する樹脂は、溶媒に溶解した状態で用いることが好ましい。この際に用いられる溶媒としては、水を用いることが好ましいが、有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル類、塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類など、一般的な有機溶媒を用いることもできる。
【0093】
<ハードコート層>
ハードコート層は、加飾印刷適性を高めるために設けられる層であることが好ましい。また、ハードコート層は、積層体の強度や耐久性を高めることもできる。
【0094】
ハードコート層は硬度を付与するための硬質成分を含有することが好ましい。硬質成分としては、例えば架橋重合体を挙げることができる。架橋重合体としては、単官能モノマー重合体および多官能モノマー重合体を挙げることができる。多官能モノマー重合体は、好ましくは3官能以上の多官能モノマーを含む重合性モノマーの重合体であり、より好ましくは4官能以上の多官能モノマーを含む重合性モノマーの重合体である。例えば、3官能以上の多官能モノマーと2官能モノマーの混合モノマーの共重合体なども好ましく例示することができる。なお、ここでいうモノマーには、オリゴマーも含まれる。
【0095】
架橋重合体を得るために使用し得るモノマーの種類は特に制限されないが、例えば、アクリルモノマーなどを好ましく例示することができる。具体的には、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重量平均分子量600)ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重量平均分子量400)ジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
重合性不飽和基を有する有機化合物のモノマーまたはオリゴマーは、熱硬化性であっても良いし、活性エネルギー線硬化性であっても良い。
【0096】
ハードコート層は、柔軟性成分を含有しても良い。柔軟性成分としては、例えば、トリシクロデカンメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパンのプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパンのエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0097】
また、ハードコート層は、無機粒子および/または有機粒子を含有していても良い。無機粒子および/または有機粒子を含有すると、硬化収縮が抑制される点で好ましい。無機粒子としては、例えば、二酸化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子、二酸化スズ粒子、五酸化アンチモン粒子、三酸化アンチモン粒子などの無機酸化物粒子を挙げることができる。また、有機粒子としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリシロキサン、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリアミドなどの樹脂粒子を挙げることができる。
【0098】
無機粒子を用いる場合は、カップリング剤により処理した反応性無機酸化物粒子を用いても良い。有機粒子を用いる場合は、カップリング剤により処理した反応性有機酸化物粒子を用いても良い。カップリング剤により処理することにより、アクリル系重合体との間の結合力を高めることができる。
【0099】
カップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシアルミニウム等が挙げられる。これらは1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0100】
ハードコート層の厚みは特に制限されないが、例えば、0.5μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、2.0μm以上であることがさらに好ましい。また、ハードコート層の厚みは、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
【0101】
<加飾層>
加飾基材層の一方の面には加飾層が設けられている。加飾層は印刷によって設けられた加飾印刷層であってもよい。加飾印刷層を構成するための印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷などを挙げることができる。加飾層は、額縁状の電極隠蔽用の加飾印刷層であってもよく、意匠性を有する印刷パターンであってもよい。
【0102】
加飾印刷層を構成するための塗料としては、特に制限はなく、公知の塗料を使用できる。塗料としては、例えば、紫外線硬化型インキ、酸化重合型インキ等を挙げることができる。
【0103】
加飾層の厚みは、5μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。また、加飾層の厚みは、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることがさらに好ましい。なお、加飾層の厚みは必要に応じて50μmより厚くすることも可能である。この場合、第1の粘着剤層の厚みを適宜調整することによって、加飾層と基材層との段差に追従することが可能である。
【0104】
<第2の態様>
積層体の第2の態様として、第1の態様の積層体に加えて、第3の粘着剤層と表面カバー層とをさらに有する積層体を挙げることができる。第2の態様の積層体は、第3の粘着剤層と表面カバー層とをさらに有し、加飾基材層上に第3の粘着剤層を有し、第3の粘着剤層上に表面カバー層を有する。
【0105】
図3は、第2の態様の積層体200の構成を説明する概略断面図である。図3に示されているように、加飾基材層20上に第3の粘着剤層40が積層されており、第3の粘着剤層40上にさらに表面カバー層50が積層されている。
【0106】
表面カバー層50としては、例えば、ガラス板や樹脂層が挙げられる。ガラス板としては、具体的には、ソーダガラスや無アルカリガラス、強化ガラスといった無機材料から構成されるものを挙げることができる。表面カバー層は、表面樹脂層であることが好ましく、この場合は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA樹脂)等の透明樹脂から構成される樹脂層が好ましく用いられる。これらの表面樹脂層は紫外線を透過しない性質を有するものであってもよい。
【0107】
第3の粘着剤層は、ベースポリマーを主成分として含む第3の粘着剤組成物から形成されるものであることが好ましい。ベースポリマーは、アクリル系重合体、ゴム系重合体、シリコン系重合体、ウレタン系重合体及びポリエステル系重合体から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。中でもベースポリマーは、アクリル系重合体、ゴム系重合体及びシリコン系重合体から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アクリル系重合体及びゴム系重合体から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、アクリル系重合体を含むことがさらに好ましい。
【0108】
第3の粘着剤層の厚みは、5μm以上であればよく、10μm以上であることが好ましい。また、第3の粘着剤層の厚みは75μm以下であればよく、60μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
【0109】
(積層体の製造方法)
本発明は積層体の製造方法に関するものでもある。本発明の積層体の製造方法は、上述した両面粘着シートの第1の粘着剤層を、一表面上の一部に加飾層を有する加飾基材層の加飾層側の面に接触させ、その状態で第2の粘着剤層側から活性エネルギー線を照射して第1の粘着剤層を完全硬化させる工程と、第2の粘着剤層に表示装置を貼合する工程と、を含む。第1の粘着剤層を、一表面上の一部に加飾層を有する加飾基材層の加飾印側の面に接触させる工程においては、第1の粘着剤層は半硬化状態であることが好ましい。
【0110】
活性エネルギー線としては、上述したエネルギー線を挙げることができ、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
紫外線の照射出力は、積算光量が100mJ/cm2以上10000mJ/cm2以下となるようにすることが好ましく、500mJ/cm2以上5000mJ/cm2以下となるようにすることがより好ましい。
【0111】
積層体の製造方法において、活性エネルギー線を照射する前は、両面粘着シートの第1の粘着剤層は半硬化状態であることから、被着体が段差部を有していても、粘着剤層はその凹凸に追従することができる。このように、粘着シートを貼合し、凹凸に追従させた後、第1の粘着剤層を活性エネルギー線で完全硬化させることで、第1の粘着剤層の凝集力が高まり、被着体への粘着性が向上する。
【0112】
本発明においては、第1の粘着剤層を活性エネルギー線で完全硬化させる際には、第2の粘着剤層側から活性エネルギー線を照射する。第2の粘着剤層側から活性エネルギー線を照射することにより、第1の粘着剤層を、加飾層を有する加飾基材層に貼合した場合であっても、第1の粘着剤層を均一かつ完全に硬化させることが可能となる。これは加飾層によって活性エネルギー線の照射が妨げられる箇所が発生しないことに起因する。
【0113】
第1の粘着剤層を完全硬化した後に、第2の粘着剤層に被着体を貼合することが好ましい。第2の粘着剤層は後硬化能を有する粘着剤層である必要はなく、活性エネルギー線を照射しなくても被着体と貼合することが可能である。なお、第2の粘着剤層に貼合される被着体は、表示装置等の光学部材であることが好ましい。
【0114】
積層体が第1の態様の積層体に加えて、第3の粘着剤層と表面カバー層とをさらに有する場合、表面カバー層に、第3の粘着剤層を貼合し、さらに第3の粘着剤層に加飾層を有する加飾基材層を貼合する。貼合の際はロール貼合を行うことが好ましい。加飾基材層には、両面粘着シートの第1の粘着剤層側が貼合される。
【実施例】
【0115】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0116】
(実施例1)
セパレーターA(王子エフテックス社製、100RL―07V(10.5))の片面上に第1の粘着剤新タック化成社製、DC124)をアプリケータにより塗工し、100℃で2分間乾燥させて、厚みが100μmの第1の粘着剤層を形成した。次いで、PETフィルム(東レ社製、ルミラーU483、厚み75μm)の一方の面上に第1の粘着剤層を貼合した。
セパレーターB(王子エフテックス社製、75RL−07V(6.5))の片面上に第2の粘着剤組成物(新タック化成社製、SA151)をアプリケータにより塗工し、100℃で2分間乾燥させて、厚みが25μmの第2の粘着剤層を形成した。次いで、第1の粘着剤層を貼合したPETフィルムの反対側の面上に第2の粘着剤層を貼合した。このようにして、実施例1の両面粘着シートを得た。基材フィルム(PETフィルム)の波長370nmの光透過率は表1の通りであった。
【0117】
(実施例2)
第2の粘着剤組成物のSA151を新タック化成社製のNA021に変更した以外は、実施例1と同様にして両面粘着シートを作製した。
【0118】
(比較例1)
基材フィルムのPETフィルムをSRFフィルムに変更した以外は、実施例1と同様にして両面粘着シートを得た。基材フィルムの波長370nmの光透過率は表1の通りであった。
【0119】
(比較例2)
第1の粘着剤組成物を新タック化成社製のDC126に変更し、厚みを表1の通りとなるように変更した。基材フィルムを介さずに、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層を貼合した以外は実施例1と同様にして両面粘着シートを得た。
【0120】
(比較例3)
第1の粘着剤組成物として新タック化成社製のDC126を用い、単層の両面粘着シートを得た。
【0121】
(比較例4)
第1の粘着剤組成物を新タック化成社製のDC126に変更し、厚みを表1の通りとなるように変更し、かつ、第2の粘着剤組成物を新タック化成社製のDC121に変更した以外は実施例1と同様にして両面粘着シートを得た。
【0122】
(比較例5)
第1の粘着剤組成物として新タック化成社製のSA037を用い、厚みを表1の通りとなるように変更した以外は比較例3と同様にして、単層の両面粘着シートを得た。
【0123】
(比較例6)
第1の粘着剤組成物として新タック化成社製のNA017を用い、厚みを表1の通りとなるように変更した以外は比較例3と同様にして、単層の両面粘着シートを得た。
【0124】
(比較例7)
第1の粘着剤組成物として新タック化成社製のSA034を用い、厚みを表1の通りとなるように変更した以外は比較例4と同様にして、両面粘着シートを得た。
【0125】
(評価)
(紫外線透過率)
基材層の紫外線透過率は、紫外可視分光光度計(型式:Solidspec 3700、島津製作所社製)を用い測定した。具体的には、波長370nmの分光透過率を測定した。
【0126】
(耐発泡性(耐アウトガス性))
三菱ガス化学社製のPC(ポリカーボネート樹脂)とPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)の共押し出しフィルム(商品名:MR58)のPC側にスクリーン印刷を施し、加飾印刷層を形成した。加飾印刷層の厚みは20μmであった。
次いで、実施例及び比較例で得た両面粘着シートを55mm×80mmの大きさにカットし、セパレーターAを剥離し、第1の粘着剤層が上記共押し出しフィルム(MR58)の加飾印刷層側に来るようにして貼合した。
さらに、セパレーターBを剥離し、第2の粘着剤層をガラス板に貼合し、40℃、0.5MPa、30分の条件でオートクレーブ脱泡処理を行った。このようにして得られた積層体を、85℃、相対湿度0〜3%の環境下に24時間置き、このような耐久試験後に、PC/PMMAの共押し出しフィルム面側から積層体を観察し、気泡の発生の有無を下記の評価基準で評価した。
○:積層体の中央部(加飾層の縁から10mm以上離れた領域)に、気泡が無い。
△:積層体の中央部に気泡があるが、直径200μm未満の気泡である。
×:積層体の中央部に直径200μm以上の大きな気泡がある。
【0127】
(段差追従性)
耐発泡性の評価方法と同様の方法で、積層体を作製し、上記と同様の方法で、脱泡処理及び耐久試験を行った後に、PC/PMMAの共押し出しフィルム面側から積層体を観察し、額縁印刷周辺(加飾層と、加飾層の縁から10mm未満離れた領域を含む)の気泡の発生の有無(段差追従性)を下記の評価基準で評価した。
○:額縁印刷周辺に、気泡が無い。
△:額縁印刷の角部分に気泡は発生しているが、長辺と短辺の周辺に気泡はない。
×:額縁印刷の角、辺の両方の周辺に気泡がある。
【0128】
【表1】
【0129】
実施例で得られた両面粘着シートは、耐アウトガス性と段差追従性に優れていることがわかる。一方、比較例で得られた両面粘着シートは、耐アウトガス性と段差追従性が両立されていなかった。
【0130】
実施例で得られた両面粘着シートを用いて積層体を作製することもできた。両面粘着シートの第1の粘着層側の剥離シートを剥がして加飾層有する加飾基材層に貼合し、その後、第2の粘着剤層側の剥離シートを剥がして表示装置にロール貼合した。
【符号の説明】
【0131】
10 基材層
12 第1の粘着剤層
14 第2の粘着剤層
20 加飾基材層
25 加飾層
30 被着体
40 第3の粘着剤層
50 表面カバー層
100 両面粘着シート
200 積層体
図1
図2
図3