(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ショルダーラグ溝は、前記底上げ部が形成されている位置での溝深さをD2とし、前記底上げ部が形成されていない位置での溝深さをD3とし、前記最外主溝の溝深さをD1とする場合に、
(D1×0.2)≦D2≦(D1×0.8)、D2<D3、D3<D1の関係をそれぞれ満たす請求項1に記載の空気入りタイヤ。
前記細溝は、前記接地面内端部の溝深さをS1とし、前記接地面外端部の溝深さをS2とし、前記ショルダーラグ溝における前記底上げ部が形成されている位置での溝深さをD2とし、前記底上げ部が形成されていない位置での溝深さをD3とする場合に、
(D2×0.2)≦S1≦D2、D2≦S2≦D3の関係をそれぞれ満たす請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
前記細溝は、前記細溝における前記接地端との交差部と前記接地面内端部とのタイヤ周方向における距離をL1とし、前記交差部と前記接地面外端部とのタイヤ周方向における距離をL2とする場合に、
L1≧L2、1≦(L1/L2)≦2の関係をそれぞれ満たす請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記細溝は、前記接地端と前記接地面内端部とのタイヤ幅方向における距離をL1’とし、前記接地端と前記接地面外端部とのタイヤ幅方向における距離をL2’とする場合に、
L1’≧L2’、1≦(L1’/L2’)≦2の関係をそれぞれ満たす請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記細溝は、前記細溝における前記接地端との交差部と前記接地面内端部とを結ぶ直線と前記接地端とでなす角度をθ1とし、前記交差部と前記接地面外端部とを結ぶ直線と前記接地端とでなす角度をθ2とする場合に、
10°≦θ1≦45°、10°≦θ2≦45°、0.8≦(θ1/θ2)≦2.0の関係をそれぞれ満たす請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸と直交する方向をいい、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
【0016】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。
図1に示す空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド面3として形成されている。トレッド面3には、タイヤ赤道面CLを中心とするタイヤ幅方向における両側のそれぞれに、タイヤ周方向に延びる複数の主溝10と、タイヤ幅方向に延びる複数のラグ溝20とが形成されており、主溝10とラグ溝20とによって複数の陸部30が区画されている。
【0017】
本実施形態では、主溝10はタイヤ幅方向に間隔をあけて4本が並んで形成されており、即ち、主溝10は、タイヤ赤道面CLを挟んでタイヤ幅方向における両側に2本ずつ形成されている。主溝10は、溝幅が3mm以上12mm以下の範囲内になっており、溝深さが5mm以上10mm以下の範囲内になっている。
【0018】
4本の主溝10のうち、タイヤ幅方向における最も外側に位置する2本の主溝10は、最外主溝12として設けられており、最外主溝12よりもタイヤ幅方向における内側に位置すると共に最外主溝12に対して隣り合う2本の主溝10は、内側主溝11として設けられている。換言すると、4本の主溝10のうち、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に位置する2本の主溝10は、内側主溝11として設けられ、2本の内側主溝11よりもタイヤ幅方向外側に位置する2本の主溝10は、最外主溝12として設けられている。
【0019】
ラグ溝20は、2本の内側主溝11同士の間に位置するセンターラグ溝21と、隣り合う内側主溝11と最外主溝12との間に位置するセカンドラグ溝22と、最外主溝12よりもタイヤ幅方向における外側に位置するショルダーラグ溝23と、を有している。
【0020】
また、複数の陸部30のうち、タイヤ幅方向における両側が内側主溝11同士に区画されてタイヤ赤道線CL上に位置する陸部30は、センターリブ31として形成されている。センターラグ溝21は、2本の内側主溝11同士の間にかけては形成されておらず、一端が内側主溝11に接続され、他端はセンターリブ31内で終端している。即ち、センターラグ溝21は、それぞれ異なるセンターラグ溝21が2本の内側主溝11のそれぞれに複数接続されており、各センターラグ溝21は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に傾斜している。
【0021】
また、複数の陸部30のうち、センターリブ31よりもタイヤ幅方向における外側に位置して内側主溝11を介してセンターリブ31に隣接し、タイヤ幅方向における両側が内側主溝11と最外主溝12とにより区画される陸部30はセカンドリブ32として形成されている。セカンドリブ32には、内側主溝11と最外主溝12との間の位置に、タイヤ周方向に延びるセカンドリブ周方向溝28が形成されている。
【0022】
セカンドラグ溝22は、セカンドリブ周方向溝28と最外主溝12との間にかけて形成され、タイヤ周方向に複数が並んでいる。即ち、各セカンドラグ溝22は、それぞれ両端がセカンドリブ周方向溝28と最外主溝12とに接続されている。このため、セカンドリブ32におけるセカンドラグ溝22が配設されている領域には、タイヤ周方向において隣り合うセカンドラグ溝22と、セカンドリブ周方向溝28及び最外主溝12とにより区画されるブロック部33が形成されており、ブロック部33は、複数がタイヤ周方向に並んでいる。一方、セカンドリブ32におけるセカンドリブ周方向溝28と内側主溝11との間の領域は、タイヤ周方向に延びるリブ部34になっている。
【0023】
また、複数の陸部30のうち、セカンドリブ32よりもタイヤ幅方向における外側に位置して最外主溝12を介してセカンドリブ32に隣接し、最外主溝12と、タイヤ周方向において互いに隣り合うショルダーラグ溝23とによって区画される陸部30は、ショルダーブロック35として形成されている。つまり、最外主溝12のタイヤ幅方向における外側には、複数のショルダーラグ溝23がタイヤ周方向に並んで形成されており、ショルダーブロック35は、タイヤ周方向における両側がショルダーラグ溝23によって区画されることによって、複数がタイヤ周方向に並んで形成されている。このように、ショルダーブロック35を区画するショルダーラグ溝23は、接地端Tを跨いでタイヤ幅方向に延びて形成されると共に、タイヤ幅方向における内側の端部24が最外主溝12に接続されている。また、各ショルダーラグ溝23は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に凸となって湾曲している。
【0024】
なお、この場合における接地端Tは、空気入りタイヤ1を規定リムに装着して、規定内圧、例えば、規定荷重に対応した空気圧の内圧条件、及び規定荷重の条件で、平板上に垂直方向に負荷させたときの平板上に形成される接地面において、タイヤ幅方向における最も外側に位置する部分に該当するトレッド面3上の位置をいう。即ち、接地端Tは、規定内圧及び規定荷重での接地面における接地幅最大位置になっている。
【0025】
なお、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
【0026】
図2は、
図1のA部詳細図である。タイヤ周方向において隣り合うショルダーラグ溝23同士の間には、細溝40が形成されている。細溝40は、最外主溝12よりもタイヤ幅方向における外側に位置し、ショルダーラグ溝23同士の間にかけて形成されて両端がショルダーラグ溝23に接続されている。細溝40は、一方の端部41が接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置し、他方の端部41が接地端Tよりもタイヤ幅方向外側に位置することにより、接地端Tを跨いで形成されている。この場合における細溝40は、溝幅3mm以下の溝を示し、細溝40が形成される陸部30に荷重が作用した場合に溝壁同士が接触する、いわゆるサイプも含む。
【0027】
図3は、
図2のB−B断面図である。なお、
図3は、
図2に示すショルダーラグ溝23を説明するために、セカンドラグ溝22とショルダーラグ溝23に沿った断面を示す模式図である。ショルダーラグ溝23は、最外主溝12に接続される側の端部24と接地端Tとの間の範囲に溝深さが浅くなって形成される底上げ部26を有している。底上げ部26は、ショルダーラグ溝23における底上げ部26以外の部分と比較して、溝底25が開口部に近付いていることにより溝深さが浅くなっている部分になっている。底上げ部26は、ショルダーラグ溝23における最外主溝12に接続される側の端部24の位置から、接地端Tの位置にかけて設けられている。なお、底上げ部26は、接地端T側の端部が、接地端Tの位置と正確に一致する必要はなく、接地端Tよりも最外主溝12寄りの位置に底上げ部26の端部が位置していてもよく、接地端Tを跨いで底上げ部26が形成されていてもよい。
【0028】
図4は、
図3のC部詳細図である。底上げ部26を有するショルダーラグ溝23は、底上げ部26が形成されている位置での溝深さをD2とし、底上げ部26が形成されていない位置での溝深さをD3とし、最外主溝12の溝深さをD1とする場合に、(D1×0.2)≦D2≦(D1×0.8)、D2<D3、D3<D1の関係をそれぞれ満たしている。つまり、ショルダーラグ溝23は、底上げ部26が形成されている位置での溝深さD2が、底上げ部26が形成されていない位置での溝深さD3よりも浅くなっており、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されていない位置での溝深さD3は、最外主溝12の溝深さD1よりも浅くなっている。また、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されている位置での溝深さD2は、最外主溝12の溝深さD1の0.2倍以上0.8倍以下の範囲内になっている。
【0029】
なお、ショルダーラグ溝23は、本実施形態では溝幅が2mm以上8mm以下の範囲内になっており、底上げ部26が形成されている位置での溝深さD2が1mm以上4mm以下の範囲内になっており、底上げ部26が形成されていない位置での溝深さD3が2mm以上8mm以下の範囲内になっている。
【0030】
細溝40は、両端部41のうち、接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する側の端部41である接地面内端部42(
図2参照)は、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されている位置に接続されている。また、細溝40の両端部41のうち、接地端Tよりもタイヤ幅方向外側に位置する側の端部41である接地面外端部43(
図2参照)は、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されていない位置に接続されている。
【0031】
このように、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されている位置に接続される接地面内端部42と最外主溝12とのタイヤ幅方向における距離Wと、最外主溝12の溝深さD1との関係は、W≧(D1×0.8)になっている。つまり、細溝40の接地面内端部42は、タイヤ幅方向における最外主溝12との距離Wが、最外主溝12の溝深さD1の0.8倍以上となる位置に位置している。
【0032】
図5は、
図2のD−D断面図である。細溝40は、接地面内端部42の位置での溝深さよりも、接地面外端部43の位置での溝深さの方が深くなっており、接地面内端部42の溝深さをS1とし、接地面外端部43の溝深さをS2とする場合に、(D2×0.2)≦S1≦D2、D2≦S2≦D3の関係をそれぞれ満たしている。つまり、細溝40の接地面内端部42の溝深さS1は、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されている位置での溝深さD2の0.8倍以上1倍以下の範囲内になっている。また、細溝40の接地面外端部43の溝深さS2は、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されている位置での溝深さD2以上で、底上げ部26が形成されていない位置での溝深さD3以下の範囲内になっている。
【0033】
図6は、
図2の要部詳細図であり、細溝の配置位置についての説明図である。細溝40は、細溝40における接地端Tとの交差部50と接地面内端部42とのタイヤ周方向における距離をL1とし、交差部50と接地面外端部43とのタイヤ周方向における距離をL2とする場合に、L1≧L2、1≦(L1/L2)≦2の関係をそれぞれ満たしている。つまり、細溝40は、交差部50と接地面内端部42とのタイヤ周方向における距離L1が、交差部50と接地面外端部43とのタイヤ周方向における距離L2以上の長さになっており、交差部50と接地面内端部42とのタイヤ周方向における距離L1は、交差部50と接地面外端部43とのタイヤ周方向における距離L2に対して、1倍以上2倍以下の長さになっている。
【0034】
また、細溝40は、接地端Tと接地面内端部42とのタイヤ幅方向における距離をL1’とし、接地端Tと接地面外端部43とのタイヤ幅方向における距離をL2’とする場合に、L1’≧L2’、1≦(L1’/L2’)≦2の関係をそれぞれ満たしている。つまり、細溝40は、接地端Tと接地面内端部42とのタイヤ幅方向における距離L1’が、接地端Tと接地面外端部43とのタイヤ幅方向における距離L2’以上の長さになっており、接地端Tと接地面内端部42とのタイヤ幅方向における距離L1’は、接地端Tと接地面外端部43とのタイヤ幅方向における距離L2’に対して、1倍以上2倍以下の長さになっている。
【0035】
また、細溝40は、接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する部分と接地端Tとでなす角度とθ1とし、接地端Tよりもタイヤ幅方向外側に位置する部分と接地端Tとでなす角度とθ2とする場合に、10°≦θ1≦45°、10°≦θ2≦45°、0.8≦(θ1/θ2)≦2.0の関係をそれぞれ満たしている。この場合における角度θ1は、交差部50と接地面内端部42とを結ぶ直線である接地面内側直線51と接地端Tとでなす角度になっており、角度θ2は、交差部50と接地面外端部43とを結ぶ直線である接地面外側直線52と接地端Tとでなす角度になっている。
【0036】
つまり、細溝40が、接地面内端部42から接地面外端部43にかけて直線状に形成されている場合には、接地面内側直線51及び接地面外側直線52は、細溝40と一致する。このように、細溝40は、接地面内側直線51と接地端Tとでなす角度θ1と、接地面外側直線52と接地端Tとでなす角度θ2とが共に10°以上45°以下の範囲内になっており、接地面内側直線51と接地端Tとでなす角度θ1が接地面外側直線52と接地端Tとでなす角度θ2に対して0.8倍以上2倍以下となる範囲内になっている。
【0037】
なお、細溝40は、好ましくは、接地面内側直線51と接地端Tとでなす角度θ1と、接地面外側直線52と接地端Tとでなす角度θ2とが、1.0≦(θ1/θ2)≦2.0の範囲内であるのが好ましい。
【0038】
また、ショルダーブロック35には、ショルダーブロック35のタイヤ周方向における中央付近に位置してタイヤ幅方向に延び、タイヤ幅方向に分断された分断細溝60が形成されている。詳しくは、分断細溝60は、タイヤ幅方向において細溝40が形成されている位置付近でタイヤ幅方向に分断されており、細溝40のタイヤ幅方向内側に位置する内側分断細溝61と、細溝40のタイヤ幅方向外側に位置する外側分断細溝62とを有している。このうち、内側分断細溝61は、タイヤ幅方向内側の端部は最外主溝12に接続され、タイヤ幅方向外側の端部は、ショルダーブロック35内で終端している。また、外側分断細溝62は、タイヤ幅方向外側の端部は、接地端Tよりもタイヤ幅方向外側に位置する接地面外ラグ溝65に接続され、タイヤ幅方向内側の端部は、ショルダーブロック35内で終端している。
【0039】
これらのように構成される空気入りタイヤ1を車両に装着して走行すると、トレッド面3のうち下方に位置するトレッド面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、トレッド面3と路面との間の水が主溝10やラグ溝20に入り込み、これらの溝でトレッド面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、トレッド面3は路面に接地し易くなり、トレッド面3と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
【0040】
空気入りタイヤ1のトレッド面3には、このように濡れた路面での排水性を確保するために、主溝10やラグ溝20がそれぞれ複数形成されているが、陸部30における主溝10やラグ溝20が形成されている部分の近傍の部分は、これらの溝によって剛性が低くなっている。このため、車両の走行時に陸部30が路面に接地した際に、陸部30における主溝10やラグ溝20の近傍の部分は、路面から受ける荷重によって変形し易くなっている。特に、ショルダーブロック35は、車両の旋回時に大きな荷重を受け易くなっている。
【0041】
一方、ショルダーブロック35を区画するショルダーラグ溝23には、最外主溝12に接続される側の端部24と接地端Tとの間の範囲に底上げ部26が形成されている。このため、ショルダーブロック35おけるショルダーラグ溝23に隣接する部分において、底上げ部26が形成されている範囲に位置する部分は、剛性が確保されている。つまり、底上げ部26は、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されていない部分と比較して溝深さが浅くなっているため、ショルダーブロック35はブロック剛性が確保されており、ショルダーブロック35に荷重が作用した場合でも、ショルダーブロック35は倒れ込み難くなっている。従って、例えば、車両の旋回時にショルダーブロック35に大きな荷重が作用した場合でも、ブロック剛性が確保されたショルダーブロック35は大きく変形することなく、この荷重を受けることができるので、操安性を確保することができる。
【0042】
また、ショルダーブロック35には、隣り合うショルダーラグ溝23同士の間、即ち、ショルダーブロック35を区画するショルダーラグ溝23同士の間に細溝40が形成されているため、ショルダーブロック35内におけるブロック剛性の均一化を図ることができる。つまり、ショルダーブロック35は、ショルダーラグ溝23や最外主溝12に隣接する部分よりも中央領域の方がブロック剛性が高くなり易くなるが、細溝40を設けることにより、ショルダーブロック35における中央領域のブロック剛性を低下させることができる。これにより、それぞれのショルダーブロック35内でのブロック剛性差を少なくすることができるため、ブロック剛性差に起因する操安性の悪化を抑制することができ、操安性を確保することができる。
【0043】
また、細溝40は、接地面内端部42と最外主溝12とのタイヤ幅方向における距離Wと、最外主溝12の溝深さD1との関係が、W≧(D1×0.8)であるため、より確実にショルダーブロック35内におけるブロック剛性差を少なくすることができる。つまり、W<(D1×0.8)である場合には、ショルダーブロック35における細溝40と最外主溝12と間隔が狭過ぎるため、この部分のブロック剛性が低くなり、ショルダーブロック35内におけるブロック剛性差を少なくすることができなくなる。これに対し、W≧(D1×0.8)にした場合には、ショルダーブロック35における細溝40と最外主溝12との間のブロック剛性を確保できるため、ショルダーブロック35内におけるブロック剛性差を少なくすることができ、操安性を確保することができる。
【0044】
また、濡れた路面の走行時には、トレッド面3と路面との間の水は、例えば主溝10に入り込み、ラグ溝20を流れることにより、他の主溝10に流れたり、ショルダーラグ溝23を流れることにより、接地端Tよりもタイヤ幅方向外側に排水されたりする。その際に、ショルダーラグ溝23には、底上げ部26が設けられているため、底上げ部26が形成されている部分では溝の容積が小さくなっており、1つのショルダーラグ溝23単体では、最外主溝12側の端部24から接地端T側へ流すことのできる水の量も少なくなっている。
【0045】
一方で、ショルダーラグ溝23には、底上げ部26が形成されている位置と、隣り合うショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されていない位置との間にかけて細溝40が形成されている。このため、最外主溝12からショルダーラグ溝23に水が流れ込んだ場合、この水の一部は細溝40の接地面内端部42から細溝40に流れ、細溝40から、接地面外端部43に接続されているショルダーラグ溝23に流れる。
【0046】
つまり、最外主溝12から、ショルダーラグ溝23における底上げ部26に形成されている位置に水が流れ込んだ場合には、この水の一部は、当該ショルダーラグ溝23を通って接地端Tのタイヤ幅方向外側に流れ、底上げ部26が形成されていない位置に流れる。また、ショルダーラグ溝23における底上げ部26に形成されている位置に水のうち、別の一部は、当該ショルダーラグ溝23に隣り合うショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されていない位置に、細溝40を介して流れる。ショルダーラグ溝23における、底上げ部26が形成されていない位置は、溝深さが比較的深く、溝の容積が比較的大きくなっているため、底上げ部26が形成されていない位置に流れたいずれの水も、ショルダーラグ溝23内を流れ易くなっている。このため、ショルダーラグ溝23における、底上げ部26が形成されていない位置に流れ込んだ水は、ショルダーラグ溝23を通って接地端Tのタイヤ幅方向外側に流れる。
【0047】
これらにより、ショルダーラグ溝23は、最外主溝12に入り込んだ水を、接地端Tのタイヤ幅方向外側に流すことができ、トレッド面3と路面との間の溝を、トレッド面3の接地領域外に排水することができる。従って、濡れた路面を走行する際におけるトレッド面3と路面との間の摩擦力を確保することができ、ウェット性能を確保することができる。これらの結果、操安性とウェット性能とを両立することができる。
【0048】
また、ショルダーラグ溝23は、底上げ部26が形成されている位置での溝深さD2が、最外主溝12の溝深さD1に対して、(D1×0.2)≦D2≦(D1×0.8)の範囲内で形成されているため、ショルダーラグ溝23での水の流れ易さとショルダーブロック35のブロック剛性とを、より確実に両立することができる。つまり、D2<(D1×0.2)である場合には、底上げ部26が形成されている位置での溝深さD2が浅過ぎるため、ショルダーラグ溝23に水が流れ難くなり、ウェット性能を効果的に確保するのが困難になる可能性がある。また、D2>(D1×0.8)である場合には、底上げ部26における底上げが不十分であるため、ショルダーラグ溝23に底上げ部26を設けても、ショルダーブロック35のブロック剛性を効果的に確保するのが困難になる可能性がある。これに対し、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されている位置での溝深さD2を、最外主溝12の溝深さD1に対して(D1×0.2)≦D2≦(D1×0.8)の範囲内にした場合には、より確実にショルダーラグ溝23での水の流れ易さを確保しつつ、ショルダーブロック35のブロック剛性を確保することができる。この結果、より確実に操安性とウェット性能とを両立することができる。
【0049】
また、ショルダーラグ溝23は、底上げ部26が形成されていない位置での溝深さD3が、最外主溝12の溝深さD1よりも浅くなっているため、ショルダーブロック35のブロック剛性を、より確実に確保することができる。この結果、ショルダーラグ溝23を設けてウェット性能を確保する場合における操安性を、より確実に確保することができる。
【0050】
また、細溝40は、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されている位置での溝深さD2に対する、接地面内端部42の溝深さS1が、(D2×0.2)≦S1≦D2の範囲内で形成されているため、ショルダーラグ溝23及び細溝40での水の流れ易さとショルダーブロック35のブロック剛性とを、より確実に両立することができる。つまり、S1<(D2×0.2)である場合には、接地面内端部42の溝深さS1が浅過ぎるため、ショルダーラグ溝23から細溝40に水が流れ難くなり、ショルダーラグ溝23で水の流れ確保するのが困難になる可能性がある。また、S1>D2である場合には、接地面内端部42の溝深さS1が深過ぎるため、ショルダーラグ溝23に底上げ部26を設けたにも関わらず、ショルダーブロック35のブロック剛性を効果的に確保するのが困難になる可能性がある。これに対し、接地面内端部42の溝深さS1を、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されている位置での溝深さD2に対して(D2×0.2)≦S1≦D2の範囲内にした場合には、より確実にショルダーラグ溝23と細溝40とでの水の流れ易さを確保しつつ、ショルダーブロック35のブロック剛性を確保することができる。この結果、より確実に操安性とウェット性能とを両立することができる。
【0051】
また、細溝40は、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されている位置での溝深さD2と底上げ部26が形成されていない位置での溝深さD3とに対する、接地面外端部43の溝深さS2が、D2≦S2≦D3の範囲内で形成されているため、ショルダーラグ溝23及び細溝40での水の流れ易さとショルダーブロック35のブロック剛性とを、より確実に両立することができる。つまり、S2<D2である場合には、接地面外端部43の溝深さS2が浅過ぎるため、ショルダーラグ溝23から細溝40に水が流れ難くなり、ショルダーラグ溝23で水の流れ易さを確保するのが困難になる可能性がある。また、S2>D3である場合には、接地面外端部43の溝深さS2が深過ぎるため、ショルダーブロック35のブロック剛性が低下する可能性がある。これに対し、接地面外端部43の溝深さS2を、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されている位置での溝深さD2と底上げ部26が形成されていない位置での溝深さD3とに対してD2≦S2≦D3の範囲内にした場合には、より確実にショルダーラグ溝23と細溝40とでの水の流れ易さを確保しつつ、ショルダーブロック35のブロック剛性を確保することができる。この結果、より確実に操安性とウェット性能とを両立することができる。
【0052】
また、細溝40は、交差部50と接地面内端部42とのタイヤ周方向における距離L1が、交差部50と接地面外端部43とのタイヤ周方向における距離L2以上であるため、細溝40における、接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する範囲を確保することができる。これにより、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されている部分に流れ込んだ水を、より確実に細溝40に流すことができる。この結果、ショルダーラグ溝23に底上げ部26を設けて操安性を確保する場合におけるウェット性能を、より確実に確保することができる。
【0053】
また、細溝40は、交差部50と接地面内端部42とのタイヤ周方向における距離L1と、交差部50と接地面外端部43とのタイヤ周方向における距離L2とが、1≦(L1/L2)≦2の範囲内となって形成されているため、ショルダーラグ溝23及び細溝40での水の流れ易さとショルダーブロック35のブロック剛性とを、より確実に両立することができる。つまり、(L1/L2)<1である場合には、細溝40における、接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する範囲が小さく、細溝40における接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する部分の長さが短過ぎるため、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されている部分に流れ込んだ水が、細溝40に流れ難くなる可能性がある。また、(L1/L2)>2である場合には、細溝40における、接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する範囲が大きく、細溝40における接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する部分の長さが長過ぎるため、ショルダーブロック35における接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する部分のブロック剛性を確保するのが困難になる可能性がある。これに対し、細溝40の交差部50と接地面内端部42とのタイヤ周方向における距離L1と、交差部50と接地面外端部43とのタイヤ周方向における距離L2を、1≦(L1/L2)≦2の範囲内にした場合には、より確実にショルダーラグ溝23と細溝40とでの水の流れ易さを確保しつつ、ショルダーブロック35のブロック剛性を確保することができる。この結果、より確実に操安性とウェット性能とを両立することができる。
【0054】
また、細溝40は、接地端Tと接地面内端部42とのタイヤ幅方向における距離L1’が、接地端Tと接地面外端部43とのタイヤ幅方向における距離L2’以上であるため、細溝40における、接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する範囲を確保することができる。これにより、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されている部分に流れ込んだ水を、より確実に細溝40に流すことができる。この結果、ショルダーラグ溝23に底上げ部26を設けて操安性を確保する場合におけるウェット性能を、より確実に確保することができる。
【0055】
また、細溝40は、接地端Tと接地面内端部42とのタイヤ幅方向における距離L1’と、接地端Tと接地面外端部43とのタイヤ幅方向における距離L2’とが、1≦(L1’/L2’)≦2の範囲内となって形成されているため、ショルダーラグ溝23及び細溝40での水の流れ易さとショルダーブロック35のブロック剛性とを、より確実に両立することができる。つまり、(L1’/L2’)<1である場合には、細溝40における、接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する範囲が小さく、細溝40における接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する部分の長さが短過ぎるため、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されている部分に流れ込んだ水が、細溝40に流れ難くなる可能性がある。また、(L1’/L2’)>2である場合には、細溝40における、接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する範囲が大きく、細溝40における接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する部分の長さが長過ぎるため、ショルダーブロック35における接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する部分のブロック剛性を確保するのが困難になる可能性がある。これに対し、細溝40の接地端Tと接地面内端部42とのタイヤ幅方向における距離L1’と、接地端Tと接地面外端部43とのタイヤ幅方向における距離L2’を、1≦(L1’/L2’)≦2の範囲内にした場合には、より確実にショルダーラグ溝23と細溝40とでの水の流れ易さを確保しつつ、ショルダーブロック35のブロック剛性を確保することができる。この結果、より確実に操安性とウェット性能とを両立することができる。
【0056】
また、細溝40は、接地面内側直線51と接地端Tとでなす角度θ1と、接地面外側直線52と接地端Tとでなす角度θ2とが、それぞれ10°≦θ1≦45°、10°≦θ2≦45°の範囲内で形成されているため、細溝40を設けることによる排水性をより確実に確保すると共に、ショルダーブロック35のブロック剛性をより確実に確保することができる。つまり、θ1<10°であったり、θ2<10°であったりする場合には、隣り合うショルダーラグ溝23における、底上げ部26が形成されている位置と底上げ部26が形成されていない位置との間にかけて細溝40を配設するのが困難になる。また、θ1>45°であったり、θ2>45°であったりする場合には、細溝40とショルダーラグ溝23とが接続されている部分の角度が小さくなるため、ショルダーブロック35における、当該部分のブロック剛性を確保するのが困難になる可能性がある。これに対し、細溝40における接地面内側直線51と接地端Tとでなす角度θ1と、接地面外側直線52と接地端Tとでなす角度θ2とを、それぞれ10°≦θ1≦45°、10°≦θ2≦45°の範囲内にした場合には、隣り合うショルダーラグ溝23における、底上げ部26が形成されている位置と底上げ部26が形成されていない位置との間にかけて細溝40を形成することによって排水性を確保しつつ、ショルダーブロック35のブロック剛性を確保することができる。この結果、より確実に操安性とウェット性能とを両立することができる。
【0057】
また、細溝40は、接地面内側直線51と接地端Tとでなす角度θ1と、接地面外側直線52と接地端Tとでなす角度θ2とが、0.8≦(θ1/θ2)≦2.0の範囲内で形成されているため、細溝40を設けることによる排水性をより確実に確保すると共に、ショルダーブロック35のブロック剛性をより確実に確保することができる。つまり、(θ1/θ2)<0.8である場合には、細溝40における、接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する範囲が小さく、細溝40における接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する部分の長さが短過ぎるため、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されている部分に流れ込んだ水が、細溝40に流れ難くなる可能性がある。また、(θ1/θ2)>2.0である場合には、細溝40における接地端Tよりもタイヤ幅方向内側に位置する部分の長さが長過ぎるため、ショルダーブロック35のブロック剛性を確保するのが困難になる可能性がある。これに対し、細溝40における接地面内側直線51と接地端Tとでなす角度θ1と、接地面外側直線52と接地端Tとでなす角度θ2とを、0.8≦(θ1/θ2)≦2.0の範囲内にした場合には、ショルダーラグ溝23における底上げ部26が形成されている部分から細溝40への水の流れ易さを確保しつつ、ショルダーブロック35のブロック剛性を確保することができる。この結果、より確実に操安性とウェット性能とを両立することができる。
【0058】
また、ショルダーブロック35には、分断細溝60が形成されているため、細溝40のみでなく、分断細溝60によってもショルダーブロック35のブロック剛性の均一化を図ることができる。つまり、ショルダーブロック35は、タイヤ周方向における両端がショルダーラグ溝23によって区画されているため、タイヤ周方向における中央付近よりも、タイヤ周方向における両端部分付近の方が、ブロック剛性が低くなる傾向になっている。これに対し、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、ショルダーブロック35のタイヤ周方向における中央付近に分断細溝60を形成することにより、各ショルダーブロック35においてタイヤ周方向における位置ごとのブロック剛性の均一化を図ることができる。また、分断細溝60を設けることにより、最外主溝12よりもタイヤ幅方向外側の領域での排水性を、より向上させることができる。これらの結果、より確実に操安性とウェット性能とを高めることができる。
【0059】
なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、細溝40は直線状に形成されているが、細溝40は直線状以外の形状で形成されていてもよい。
図7は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、細溝が屈曲している場合の説明図である。細溝40は、例えば
図7に示すように、屈曲して形成されていてもよい。細溝40が屈曲して形成される場合、屈曲部分である屈曲部45の劣角の角度θ3が小さ過ぎると、細溝40内での水の流れが悪くなり、ウェット性能を確保し難くなるため、屈曲部45の角度θ3は、135°以上であることが好ましい。また、屈曲部45と交差部50とは、一致していてもよく、一致していなくてもよい。屈曲部45と交差部50とが一致していない場合には、細溝40は、交差部50と接地面内端部42とを結ぶ直線を接地面内側直線51とし、交差部50と接地面外端部43とを結ぶ直線を接地面外側直線52とし、接地端Tと接地面内側直線51とでなす角度θ1と、接地端Tと接地面外側直線52とでなす角度θ2とが、10°≦θ1≦45°、10°≦θ2≦45°、0.8≦(θ1/θ2)≦2.0の関係をそれぞれ満たしていればよい。
【0060】
図8は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、細溝が湾曲している場合の説明図である。また、細溝40は、
図8に示すように、曲線状に形成されることによって、接地面内端部42と接地面外端部43との間で湾曲していてもよい。細溝40は、このように湾曲している場合も、交差部50と接地面内端部42とを結ぶ直線を接地面内側直線51とし、交差部50と接地面外端部43とを結ぶ直線を接地面外側直線52として、10°≦θ1≦45°、10°≦θ2≦45°、0.8≦(θ1/θ2)≦2.0の関係をそれぞれ満たしていればよい。
【0061】
〔実施例〕
図9A〜
図9Cは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、濡れた路面での走行性能であるウェット性能と、乾燥路での操安性とついての試験を行った。
【0062】
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが195/65R15 91Hサイズの空気入りタイヤ1を15×6.0JサイズのJATMA標準リムのリムホイールにリム組みして空気圧を230kPaに調整し、排気量が1800ccで前輪駆動の試験車両に装着してテスト走行をすることにより行った。各試験項目の評価方法は、ウェット性能については、水膜1mmのウェット路面において、初速100km/hから制動を行って停止するまでの距離を測定し、測定値の逆数を指数化することによって評価した。ウェット性能は、後述する従来例を100とする指数で表し、数値が大きいほどウェット性能が優れていることを示している。また、操安性については、評価試験を行う空気入りタイヤ1を装着した車両をパネラーが運転し、パネラーによる官能評価を実施することにより行った。操安性は、後述する従来例を100とする評点で表示され、数値が大きいほど操安性に優れていることを示している。
【0063】
評価試験は、従来の空気入りタイヤ1の一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1〜15と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例1、2の18種類の空気入りタイヤについて行った。これらの空気入りタイヤ1のうち、従来例の空気入りタイヤは、ショルダーラグ溝23に底上げ部26が設けられていない。また、比較例1、2の空気入りタイヤは、ショルダーラグ溝23に底上げ部26が設けられているが、ショルダーブロック35に接地端Tを跨ぐ細溝40が設けられていないか、細溝40の端部41が最外主溝12に近付き過ぎている。
【0064】
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜15は、全てショルダーラグ溝23に底上げ部26が設けられ、ショルダーブロック35に接地端Tを跨ぐ細溝40が設けられており、タイヤ幅方向における最外主溝12からの細溝40の端部41の距離Wが、最外主溝12の溝深さD1の0.8倍以上になっている。また、実施例1〜15に係る空気入りタイヤ1は、ショルダーブロック35における底上げ部26が形成されている位置の溝深さD2と底上げ部26が形成されていない位置の溝深さD3との比率や、ショルダーブロック35の溝深さに対する細溝40の溝深さの比率、細溝40における接地端Tの両側への配設形態、分断細溝60の有無が、それぞれ異なっている。
【0065】
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、
図9A〜
図9Cに示すように、実施例1〜15の空気入りタイヤ1は、従来例や比較例1、2に対して、操安性とウェット性能とのいずれの性能も低下することなく、少なくとも一方の性能を向上させることができることが分かった。つまり、実施例1〜15に係る空気入りタイヤ1は、操安性とウェット性能とを両立することができる。