特許第6569595号(P6569595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569595
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】車両側コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   H01R13/52 D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-99622(P2016-99622)
(22)【出願日】2016年5月18日
(65)【公開番号】特開2017-208227(P2017-208227A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2018年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】松田 俊幸
【審査官】 杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−119144(JP,A)
【文献】 特開2014−032765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口するフード状をなすコネクタ嵌合部を有し、前記コネクタ嵌合部の奥壁の下端部に排水孔が貫通して設けられたフロントハウジングと、
前記コネクタ嵌合部内に浸入した水を車内側へ排出可能なドレイン部を有し、前記フロントハウジングの後側に装着されるリアハウジングと
前記ドレイン部に接続され前記ドレイン部から車内側に排出された水を車外側へ排出可能なホースと、を備え、
前記リアハウジングは、前記排水孔と前記ドレイン部の間に位置し、車内側へ向かうにつれて下方へ向かう傾斜壁を備え、前記傾斜壁の下面は、前記排水孔に臨むように位置している車両側コネクタ。
【請求項2】
前記傾斜壁は、前記排水孔に近づくほど開口面積が大きくなる請求項1に記載の車両側コネクタ。
【請求項3】
前記排水孔の下面を構成する下面壁は、前記傾斜壁の下端部の前方に位置している請求項1または請求項2に記載の車両側コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、車両側コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車外側から端子収容部内に浸入した水を車外側へ排水する車両側コネクタとして、特開2012−243467号公報(下記特許文献1)に記載のものが知られている。端子収容部の後方には、端子金具を抜け止めするリテーナが設けられており、リテーナの後方には、ハウジングの内部をシールするゴム栓が装着されている。ゴム栓には、車外側へ向けて下り勾配をなす傾斜面が設けられている。ハウジング内に浸入した水は、ゴム栓の傾斜面を伝って下方へ流れ、車外へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−243467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両の種類によっては、車外側に向けて排水できない場合があり、その場合にはハウジング内に浸入した水を車内側に向けて排出した後、排水用のホース等を用いて車外へ排出しなければならない。また、高圧の水が車外側から傾斜面に水が直撃すると、水が端子金具に向けて跳ね返り、端子金具同士がリークするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される車両側コネクタは、前方に開口するフード状をなすコネクタ嵌合部を有し、前記コネクタ嵌合部の奥壁の下端部に排水孔が貫通して設けられたフロントハウジングと、前記コネクタ嵌合部内に浸入した水を車外側へ排出可能なドレイン部を有し、前記フロントハウジングの後側に装着されるリアハウジングとを備え、前記リアハウジングは、前記排水孔と前記ドレイン部の間に位置し、車内側へ向かうにつれて下方へ向かう傾斜壁を備え、前記傾斜壁の下面は、前記排水孔に臨むように位置している構成とした。
【0006】
このような構成によると、コネクタ嵌合部内に浸入した水が排水孔を通って傾斜壁の下面に直撃した場合、水が上方へ跳ね返ることはなく、下方へ跳ね返るため、端子同士をリークさせるおそれがない。排水孔を通過した水は、傾斜壁の下面を伝ってドレイン部に至り、ドレイン部から車外側へ排出される。なお、ドレイン部にホース等を接続することで、ドレイン部の水を車内側を経由して車外側へ排出することもできる。
【0007】
本明細書によって開示される技術は、以下の構成としてもよい。
前記傾斜壁は、前記排水孔に近づくほど開口面積が大きくなる構成としてもよい。
このような構成によると、コネクタ嵌合部内に浸入した水が排水孔から傾斜壁へ向かう際に、水が傾斜壁の内部に浸入しやすくなる。傾斜壁の内部に浸入した水は、傾斜壁の下面を伝ってドレイン部へ向かうほど一箇所に集約されるため、排水性を向上させることができる。
【0008】
前記排水孔の下面を構成する下面壁は、前記傾斜壁の下端部の前方に位置している構成としてもよい。
このような構成によると、下面壁が傾斜壁の下端部の前方に位置しているから、水が排水孔の下面壁を伝って浸入し後端部に至ると、傾斜壁の下面に臨んだ状態となり、水が上方に跳ねることを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本明細書によって開示される技術によれば、水が上方へ跳ね返ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両側コネクタの正面図
図2図1におけるA−A線断面図
図3図2における要部拡大断面図
図4】車両側コネクタの側面図
図5】車両側コネクタの内部構造を示した斜視断面図
図6】インレットハウジングの背面図
図7】インレットハウジングの断面図
図8】リテーナの正面側を示した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
実施形態を図1から図8の図面を参照しながら説明する。本実施形態の車両側コネクタ10は、電気自動車やハイブリッド車などに搭載されたバッテリ(図示せず)に接続され、このバッテリへの充電時に充電用コネクタ(図示せず)が嵌合接続される。以下においては、充電用コネクタとの嵌合側(図2における図示左側)を前側として説明する。
【0012】
車両側コネクタ10は、図2に示すように、車両のボディに装着されるインレットハウジング20と、インレットハウジング20に後方から装着される大小二種類の端子30、40と、端子30、40を後方から抜け止めするリテーナ90とを備えて構成されている。大径の端子30と小径の端子40とは、いずれも円筒状をなす雌端子とされ、このうち大径の端子30はパワー端子で、小径の端子40は信号用端子である。
【0013】
インレットハウジング20は、合成樹脂材により形成された雌側ハウジングであって、車両のボディ(パネル)に取り付けられる正面方形をなす取付板21と、取付板21に設けられたコネクタ嵌合部22とを備えている。コネクタ嵌合部22は前方に開口するフード状をなし、車両の内外を隔離する円形の奥壁23と、奥壁23の外周縁に設けられた環形のフード部24とを備えて構成されている。コネクタ嵌合部22の内部に、充電用コネクタの雄側ハウジング(図示せず)が嵌合されるようになっている。取付板21の四隅には、取付孔21Aが開口されている。
【0014】
コネクタ嵌合部22には、図1に示すように、4本の端子収容部60、70が奥壁23を前後方向に貫通するようにして形成されている。端子収容部60、70のうち第1端子収容部60は、大径の端子30を収容するためのものであり、第2端子収容部70は、小径の端子40を収容するためのものである。第1端子収容部60が横方向に、第2端子収容部70が縦方向に並んで、十字を組んだような位置に配されている。
【0015】
第2端子収容部70は、円筒状をなす周壁71の内周側に4本の円筒部72を配置した構造である。各円筒部72は、十字形をなす配置で周壁71の内周面に連結されている。また、円筒部72は奥壁23を前後方向に貫通する形態とされているのに対して、周壁71は奥壁23の前側のみに配されている。図2に示すように、各円筒部72の内部には、小径の端子40が収容される端子収容室73が形成されている。
【0016】
インレットハウジング20における奥壁23の背面には、図6に示すように、後面開口の装着筒部80が突出形成されている。装着筒部80の軸心は、コネクタ嵌合部22の軸心よりも下方に偏心した位置に配されている。装着筒部80には、各端子30、40を一括して抜け止めするためのリテーナ90が装着されるようになっている。装着筒部80の内周側に、各端子収容部60、70が配されている。
【0017】
リテーナ90は、図8に示すように、円形の基部91と、基部91の外周縁に設けられた環形のシール装着壁92と、基部91から前方に立設された大小二種類の保持筒部93とを備え、シール装着壁92の外周側に複数の取付片94が設けられた構成である。各取付片94は、図4に示すように、装着筒部80の外周に設けられた複数の取付突部81に係止することでリテーナ90を装着筒部80に保持可能とされている。
【0018】
図2に示すように、シール装着壁92には、シールリング50が装着されている。リテーナ90を装着筒部80に装着すると、シールリング50がシール装着壁92と装着筒部80との間に挟持されるようになっている。また、保持筒部93によって各端子30、40が後方へ移動できなくなることで、各端子30、40の後方への抜け止めが行われる。一方、各端子30、40は、コネクタ嵌合部22の奥壁23に当接することで前止まりが行われる。これにより、各端子30、40は、各端子収容部60、70内に保持される。
【0019】
さて、図7に示すように、コネクタ嵌合部22の奥壁23の下端部には、排水孔25が前後方向に貫通して設けられている。排水孔25の下面は、フード部24の内周下面24Aと段差24Bを介して連なり、内周下面24Aよりも下方に位置する下面壁25Aと、内周下面24Aよりも上方に位置する上面壁25Bとによって上下方向に囲まれた空間とされている。言い換えると、下面壁25Aは、排水孔25の下面を構成する壁であり、上面壁25Bは、排水孔25の上面を構成する壁である。なお、排水孔25の後端と装着筒部80の下端とは、前後方向において揃う位置とされている。したがって、コネクタ嵌合部22内に浸入した水は、下面壁25Aを伝って排水孔25から後方に排出される。
【0020】
一方、リテーナ90は、図8に示すように、半円錐状をなして後方に延びる形態をなす傾斜壁95を備えている。傾斜壁95は、基部91の下端部に位置するとともに、基部91を後方に膨出させるようにして形成されている。このため、傾斜壁95の開口面積は、開口部側から奥側へ向かうほど小さくなる。すなわち、図5に示すように、リテーナ90が装着筒部80に装着された状態では、傾斜壁95は、排水孔25に近づくほど開口面積が大きくなる。
【0021】
図3に示すように、傾斜壁95の下方でかつシール装着壁92の後方には、連通孔96が設けられており、連通孔96より奥側(後側)には、ドレイン部97が設けられている。連通孔96は下方に開口する形態をなし、傾斜壁95の内部とドレイン部97の内部とを互いに連通させている。図4に示すように、ドレイン部97は、円筒状をなして後方に開口する形態とされ、排水用のホース(図示せず)が装着されるようになっている。ドレイン部97の後端下側には、ホースに巻回された固定用のバンド(図示せず)が外れないように引っ掛けるための段部98が設けられている。ドレイン部97からホース内に排出された水は、ホース内を通って車内側を経由した後、車外側へ排出される。また、ドレイン部97は、車両側コネクタ10の上下方向および前後方向の最大寸法の範囲内にほぼ収められているため、車両側コネクタ10の小型化に寄与している。
【0022】
リテーナ90を装着筒部80に装着した状態では、図5に示すように、排水孔25の下面壁25Aの後端部25Cが傾斜壁95の下端部の前方に位置している。これにより、後端部25Cは、傾斜壁95の下面95Aに臨んで位置することになり、図3の一点鎖線の矢線で示すように、排水孔25に浸入した水が傾斜壁95の下面95Aに直撃した場合に、水が上方に跳ね返ることはなく、下方に跳ね返ることにより、連通孔96を介してドレイン部97に案内される。また、シール装着壁92の後端部は、傾斜壁95の前端部よりも後方に位置している。これにより、排水孔25の下面壁25Aを伝って傾斜壁95の内部に浸入した水は、後端部25Cでシール装着壁92に落下することになるものの、シール装着壁92の後端部が傾斜壁95の開口部よりも奥側に位置しているため、落下した水は、連通孔96を通ってそのままドレイン部97へと浸入する。
【0023】
以上のように本実施形態では、コネクタ嵌合部22内に浸入した水が排水孔25を通って傾斜壁95の下面95Aに直撃した場合、水が上方へ跳ね返ることはなく、下方へ跳ね返るため、端子30、40同士をリークさせるおそれがない。排水孔25を通過した水は、傾斜壁95の下面95Aを伝ってドレイン部97に至り、ドレイン部97から車外側へ排出される。なお、ドレイン部97にホース等を接続することで、ドレイン部97の水を車内側を経由して車外側へ排出することもできる。
【0024】
傾斜壁95は、排水孔25に近づくほど開口面積が大きくなる構成としてもよい。
このような構成によると、コネクタ嵌合部22内に浸入した水が排水孔25から傾斜壁95へ向かう際に、水が傾斜壁95の内部に浸入しやすくなる。傾斜壁95の内部に浸入した水は、傾斜壁95の下面95Aを伝ってドレイン部97へ向かうほど一箇所に集約されるため、排水性を向上させることができる。
【0025】
排水孔25の下面を構成する下面壁25Aは、傾斜壁95の下端部の前方に位置している構成としてもよい。
このような構成によると、下面壁25Aが傾斜壁95の下端部の前方に位置しているから、水が排水孔25の下面壁25Aを伝って浸入し後端部25Cに至ると、傾斜壁95の下面95Aに臨んだ状態となり、水が上方に跳ねることを確実に防止できる。
【0026】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態ではリアハウジングとしてリテーナ90を例示しているものの、電線の引き出し方向を規制するカバーをリアハウジングとしてもよい。
【0027】
(2)上記実施形態では後方に向かうほど上下寸法および幅寸法が小さくなる半円錐状の傾斜壁95を例示しているものの、後方に向かうほど上下寸法が小さくなるものの幅寸法が一定の傾斜壁を設けてもよい。
【0028】
(3)上記実施形態では下面壁25Aの後端部25Cが傾斜壁95の内部に収容されておらず、傾斜壁95の外部(前方)に位置しているものを例示したが、下面壁25Aの後端部25Cが傾斜壁95の下方に位置するように後方に突出する形態をなすものでもよい。
【符号の説明】
【0029】
10…車両側コネクタ
20…インレットハウジング(フロントハウジング)
22…コネクタ嵌合部
23…奥壁
25…排水孔
25A…下面壁
25B…上面壁
25C…突出部
90…リテーナ(リアハウジング)
95…傾斜壁
95A…下面
97…ドレイン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8