特許第6569679号(P6569679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569679
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】プライマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20190826BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20190826BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20190826BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20190826BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20190826BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   C09D133/14
   C09D5/00 D
   C09D7/63
   C09D7/65
   C09D175/04
   C09D183/04
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-547767(P2016-547767)
(86)(22)【出願日】2015年7月27日
(86)【国際出願番号】JP2015071201
(87)【国際公開番号】WO2016039028
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2018年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-182064(P2014-182064)
(32)【優先日】2014年9月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】福井 宏
(72)【発明者】
【氏名】福島 圭佑
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−181351(JP,A)
【文献】 特開2004−231954(JP,A)
【文献】 特開2002−038055(JP,A)
【文献】 特開2004−155801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シロキサン架橋型アクリルシリコン、(B)チオール基を含有するシランカップリング剤、(C)多官能イソシアネート、(D)触媒、および(E)溶剤を主成分とし、前記(A)シロキサン架橋型アクリルシリコンの数平均分子量が15,000〜20,000であり、かつ、前記(A)シロキサン架橋型アクリルシリコンを0.5〜10質量%含み、
50mm×50mm、厚さ3mmの陽極酸化処理を施したアルミニウム基板の表面に塗布し、23℃、相対湿度(RH):50%の条件下、30分間放置して硬化させた後、JIS A 1439:2010 532項に基づいてH型試験片を作成し、さらに変成シリコーン系シーリング材を塗布して得られた試験片を23±2℃で72時間養生した後、50℃環境において前記試験片に垂直方向へ30%の伸張を加えたときに、前記変成シリコーン系シーリング材の層との間に剥離が無い層を形成することができ、
前記アルミニウム基板の表面に塗布し、23±2℃で72時間養生した試験片について、JIS A 1415 WS−aに準拠し、サンシャインカーボンアーク灯を用いて100時間照射したときに黄変しない層を形成することができ、
前記アルミニウム基板の表面に塗布し、23℃、相対湿度(RH):50%の条件下、30分間放置して硬化させた後、さらに変成シリコーン系シーリング材を3mm厚に塗布して得られた試験片を20℃で72時間養生し、さらに50℃で168時間養生した後、50℃の温水に168時間浸漬し、前記変成シリコーン系シーリング材の層にナイフカットによる手剥離試験を施したときに、前記変成シリコーン系シーリング材の層との間に剥離が無い層を形成することができる、
プライマー組成物。
【請求項2】
前記(C)多官能イソシアネートがHDI/TDIイソシアヌレート化合物を含む、請求項に記載のプライマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属、プラスチック、コンクリート等からなる各種部材(例えば、アルミサッシ、塩ビ製配管、モルタル、コンクリートなどの建築用部材)の表面に塗膜を形成する場合、塗膜の部材への密着力を強化すること等を目的として、予めプライマー組成物を塗布し、その後、塗膜を形成することが、従来、行われている。
【0003】
これに関連する従来法として、例えば特許文献1には、加水分解性シリル基を有するビニル系共重合体(A)100重量部に対して、架橋剤としてイソシアナート基を2個以上含有する化合物(B)0.1〜80重量部と、有機金属化合物(C)0.1〜30重量部含有することを特徴とするプラスチック用塗料組成物が記載されている。そして、このような組成物は、常温または加熱で硬化性を有し、アクリルシリコン樹脂塗料の優れた耐汚染性と密着性、耐溶剤性、耐衝撃性、加工性を同時に有する塗装物を提供できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−155801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような各種部材の表面にプライマー組成物を塗布し、その後、変成シリコーン系シーリング材を塗布して塗膜を形成する場合に、従来、プライマー組成物の皮膜における表面のぬれ性が低く、シーリング材に対する接着性が低くなる場合があった。
【0006】
また、時間の経過とともにプライマー組成物が黄変する場合があった。被着体である各種部材が淡色である場合など、クリア塗装が必要な場合、黄変はより少ないことが好ましい。
【0007】
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明の目的は、変成シリコーン系シーリング材の塗膜との密着性が高く、かつ、経時の黄変を生じ難いプライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)〜(4)である。
(1)(A)シロキサン架橋型アクリルシリコン、(B)シランカップリング剤、(C)多官能イソシアネート、(D)触媒、および(E)溶剤を主成分とし、前記(A)シロキサン架橋型アクリルシリコンを0.5〜10質量%含む、プライマー組成物。
(2)前記(A)シロキサン架橋型アクリルシリコンの数平均分子量が15,000〜20,000である、上記(1)に記載のプライマー組成物。
(3)前記(B)シランカップリング剤がチオール基または芳香族アミンを含有するものである、上記(1)または(2)に記載のプライマー組成物。
(4)前記(C)多官能イソシアネートがHDI/TDIイソシアヌレート化合物を含む、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のプライマー組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、変成シリコーン系シーリング材の塗膜との密着性が高く、かつ、経時の黄変を生じ難いプライマー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について説明する。
本発明は、(A)シロキサン架橋型アクリルシリコン、(B)シランカップリング剤、(C)多官能イソシアネート、(D)触媒、および(E)溶剤を主成分とし、前記(A)シロキサン架橋型アクリルシリコンを0.5〜10質量%含む、プライマー組成物である。
このようなプライマー組成物を、以下では「本発明の組成物」ともいう。
【0011】
<(A)シロキサン架橋型アクリルシリコン>
本発明の組成物が含有する(A)シロキサン架橋型アクリルシリコンについて説明する。
本発明の組成物において(A)シロキサン架橋型アクリルシリコンは、塗膜形成過程においてシロキサン架橋を形成するアクリルシリコンを意味する。
(A)シロキサン架橋型アクリルシリコンは架橋点として反応性シリル基を有し、架橋によりシロキサン結合を生成する。
【0012】
(A)シロキサン架橋型アクリルシリコンの合成方法として、反応性シリル基を含有するビニル系単量体(a)とその他の共重合可能な単量体(b)を共重合する方法が挙げられる。
ビニル系単量体(a)として、例えば、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0013】
【化1】
【0014】
ここで式(I)中、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または、炭素数7〜10のアラルキル基を表し、複数存在する場合には、同一であっても異なっていてもよい。R3は炭素数1〜10のアルキル基を表し、複数存在する場合には、同一であっても異なっていてもよい。xは、0〜2の整数を表す。nは1〜12の整数を表す。
【0015】
ビニル系単量体(a)は単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。ビニル系単量体(a)は、得られるビニル系共重合体(A)中に反応性シリル基を含有する単量体が好ましくは1〜90質量%、より好ましくは3質量%以上含有されるように使用され、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下含有されるように使用する。
【0016】
その他の共重合可能な単量体(b)の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2ーエチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレートや(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アロニクスM−5700、マクロモノマーであるAS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5などの化合物(以上、東亜合成化学工業(株)製)、Placcel FA−1、Placcel FA−4、Placcel FM−1、Placcel FM−4、HEAC−1(以上、ダイセル化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類とリン酸またはリン酸エステル類との縮合生成物などのリン酸エステル基含有(メタ)アクリル系化合物、ウレタン結合やシロキサン結合を含む(メタ)アクリレートやスチレン、αーメチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸、4ーヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル化合物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などの塩;無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の酸無水物、これら酸無水物と炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖を有するアルコールまたはアミンとのジエステルまたはハーフエステルなどの不飽和カルボン酸のエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;ビニルピリジン、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ基含有ビニル系化合物;イタコン酸ジアミド、クロトン酸アミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸ジアミド、N−ビニルピロリドンなどのアミド基含有ビニル系化合物;2ーヒドロキシエチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、フルオロオレフィンマレイミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルスルホン酸などのその他ビニル系化合物などが挙げられる。但し、第3級アミン単位を有するアクリルアミド以外の単量体および分子内に2個以上のアミノ基を有するアクリルアミドは除くことが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0017】
(A)シロキサン架橋型アクリルシリコンは、その数平均分子量が15,000〜20,000であることが好ましい。
【0018】
本発明の組成物における(A)シロキサン架橋型アクリルシリコンの含有率は0.5〜10質量%であり、2〜10質量%であることが好ましく、5〜8質量%であることがより好ましい。
【0019】
<(B)シランカップリング剤>
本発明の組成物が含有する(B)シランカップリング剤について説明する。
本発明の組成物において(B)シランカップリング剤として、例えば、エポキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、(ポリ)スルフィド基、ビニル基、(メタ)アクリロキシ基、カルボキシ基、イソシアネート基、ハロゲンおよびシクロプロピル基、スチリル基からなる群より選択される少なくとも1つの有機官能基を持つシランカップリング剤が挙げられる。
(B)シランカップリング剤は、チオール基または芳香族アミンを含有するものであることが好ましい。
【0020】
(B)シランカップリング剤として、より具体的には、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン化合物;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン化合物;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン化合物;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等の(ポリ)スルフィド基含有シラン化合物;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等のビニル基含有シラン化合物;γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ基含有シラン化合物;
【0021】
β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン化合物;γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートエチルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートエチルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートエチルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートエチルメチルジメトキシシラン等のイソシアネート基含有シラン化合物;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン化合物;メチルシリルエステル等のシリルエステル;オルソケイ酸エステル等のシラン化合物等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
中でも、接着性をより向上できるという点で、メルカプト基含有シラン化合物、アミノ基含有シラン化合物が好ましい。
【0023】
(B)シランカップリング剤は、市販品を用いてもよく、製造してもよい。製造条件は特に限定されず、公知の方法、条件で行うことができる。
【0024】
本発明の組成物における(B)シランカップリング剤の含有率は、1〜10質量%であることが好ましく、3〜7質量%であることがより好ましい。
【0025】
<(C)多官能イソシアネート>
本発明の組成物が含有する(C)多官能イソシアネートについて説明する。
本発明の組成物において(C)多官能イソシアネートは、1分子中2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。例えば、低分子量のポリイソシアネート化合物、ウレタンプレポリマーが挙げられる。低分子量のポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)のような芳香族炭化水素基含有ポリイソシアネート;キシリレンジイソシアネートのようなアラルキル基含有ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)のような脂肪族炭化水素基含有ポリイソシアネートが挙げられる。また、脂肪族炭化水素基含有ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′−MDIを水素添加することにより得られうるジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート(水添MDI)のような芳香族炭化水素基含有ポリイソシアネートの水素添加物、アラルキル基含有ポリイソシアネートの水素添加物が挙げられる。
ウレタンプレポリマーとしては、例えば、上記の低分子量のポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応物が挙げられる。ポリオール化合物は、特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールのようなポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、その他のポリオール、および、これらの混合ポリオールが挙げられる。接着性に優れている点で1分子中のイソシアネート基の数は3〜7個であることが好ましい。
【0026】
中でも、(C)多官能イソシアネートは、1分子中2個以上のイソシアネート基とイソシアヌレート環とを有するポリイソシアネート化合物であることがより好ましい。
【0027】
上記1分子中2個以上のイソシアネート基とイソシアヌレート環とを有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート、トリレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとのイソシアヌレートが挙げられる。
【0028】
(C)多官能イソシアネートはトリレンジイソシアネートのイソシアヌレート、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート、およびトリレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとのイソシアヌレートからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0029】
トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレートとして、例えば、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0030】
【化2】
【0031】
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレートとして、例えば、下記式(III)で表される化合物が挙げられる。
【0032】
【化3】
【0033】
イソホロンジイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレートとして、例えば、下記式(IV)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【化4】
【0035】
トリレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとのイソシアヌレート(HDI/TDIイソシアヌレート)として、例えば、下記式(V)で表される化合物が挙げられる。
【0036】
【化5】
【0037】
(C)多官能イソシアネートは、市販品を用いてもよく、製造してもよい。製造条件は特に限定されず、公知の方法、条件で行うことができる。
【0038】
本発明の組成物における(C)多官能イソシアネートの含有率は、10〜25質量%であることが好ましく、11〜20質量%であることがより好ましく、12〜18質量%であることがさらに好ましい。
【0039】
<(D)触媒>
本発明の組成物が含有する(D)触媒について説明する。
本実施形態の組成物に含有される触媒(D)としては、プライマーの硬化を促進するものであれば特に制限されない。金属系触媒、錫系触媒、アミン系触媒としては、有機金属化合物、第3級アミン類、第3級アミン類とカルボン酸等の塩類などが挙げられる。具体的には、有機金属化合物としては、例えば、オクタン酸錫、オクチル酸錫、ブタン酸錫、ナフテン酸錫、カプリル酸錫、オレイン酸錫等の2価の有機錫化合物;ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジステアレート、ジブチル錫ジオレエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジフェニル錫ジアセテート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジオキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価の有機錫化合物;ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、錫系キレート化合物、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトンマグネシウム、アセチルアセトンビスマス、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンマンガン等の各種金属のキレート化合物;テトラ−n−ブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;その他、オクチル酸鉛やオクチル酸ジルコニウム等のマンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、鉛、ビスマス等の錫以外の各種金属と、オクチル酸、ステアリン酸、ナフテン酸等の各種有機酸との金属有機酸塩などが挙げられる。アミン類としては、例えば、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミンのような第1級アミン;ジブチルアミンのような第2級アミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、キシリレンジアミンのようなポリアミン;トリエチレンジアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンのような環状アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンのようなアミノアルコール化合物;2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールのようなアミノフェノール化合物等のアミン化合物およびそのカルボン酸塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセタートのような第4級アンモニウム塩;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量アミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物等が挙げられる。また、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等の第3級アミン類、或いはこれらのアミン類とカルボン酸等の塩類などが挙げられる。これらの触媒は、それぞれ1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
中でも、接着性に優れている点で、ジブチル錫オキサイドやジオクチル錫オキサイド等のジアルキル錫オキサイドが好ましい。
【0041】
本発明の組成物における(D)触媒の含有率は、0.005〜2.0質量%であることが好ましく、0.01〜0.10質量%であることがより好ましく、0.03〜0.07質量%であることがさらに好ましい。
【0042】
<(E)溶剤>
本発明の組成物が含有する(E)溶剤について説明する。
本発明の組成物において(E)溶剤は、他の成分に対して不活性であればよく、各種の溶剤を用いることができる。具体的には、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類等が挙げられ、2種以上を混合して用いてもよい。なお、上記溶剤は、充分に乾燥または脱水してから用いることが好ましい。これらのうち、酢酸エチルやトルエンが、沸点が低く、乾きが速い等の点から好ましい。
【0043】
本発明の組成物における(E)溶剤の含有率は、50〜85質量%であることが好ましく、65〜85質量%であることがより好ましい。
【0044】
本発明の組成物は、(A)シロキサン架橋型アクリルシリコン、(B)シランカップリング剤、(C)多官能イソシアネート、(D)触媒、および(E)溶剤を主成分として含む。
ここで「主成分」とは、含有率が70質量%以上であることを意味する。すなわち、本発明の組成物において、(A)シロキサン架橋型アクリルシリコン、(B)シランカップリング剤、(C)多官能イソシアネート、(D)触媒、および(E)溶剤の合計の含有率は70質量%以上である。この合計の含有率は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがより好ましく、100質量%である、すなわち、本発明の組成物は、実質的に(A)シロキサン架橋型アクリルシリコン、(B)シランカップリング剤、(C)多官能イソシアネート、(D)触媒、および(E)溶剤から構成されることがさらに好ましい。ここで「実質的になる」とは、原料や製造過程から不可避的に含まれる不純物や破損物は含まれ得るが、それ以外は含まないことを意味する。
【0045】
本発明の組成物は、本発明の特性を損なわない範囲で、種々の充填剤、可塑剤、揺変剤、脱水剤、軟化剤、安定剤、着色剤、タレ防止剤、物性調整剤、難燃剤、補強剤、揺変剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料・顔料等の公知で種々の添加剤を配合することができる。
充填剤としては、各種形状の有機または無機のものがあり、具体的には、例えば、塩素化ゴム、炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;あるいはカーボンブラック、あるいはこれらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物等を用いることができる。
【0046】
本発明の組成物は、上記各成分を混合して得ることができる。混合する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ボールミルを用いる方法が挙げられる。
【0047】
本発明の組成物の使用方法は、通常のプライマー組成物と同様である。即ち、本発明の組成物を基材に塗布し、適当な時間放置して乾燥させた後、シーリング材を塗布して、通常の方法で接着させればよい。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されない。
【0049】
<硬化剤成分の調製>
実施例1〜6および比較例1〜8の各々において、各成分を第1表に示す質量比(質量部)で配合し、十分に混合して、各プライマー組成物を調製した。
そして、下記の方法で初期接着性、耐候性および耐水接着性を評価した。評価結果を第1表に示す。
【0050】
<初期接着性の評価>
50mm×50mm、厚さ3mmの陽極酸化処理を施したアルミニウム基板を用意した。そして、この基板の表面へ実施例および比較例の各々におけるプライマー組成物を塗布し、23℃、相対湿度(RH):50%の条件下、30分間放置して硬化させた後、JIS A 1439:2010 532項に基づいてH型試験片を作成、さらに変成シリコーン系シーリング材(商品名:スーパーII、横浜ゴム社製)を塗布して試験片を得た。
次に、得られた試験片を23±2℃で72時間養生した後、50℃環境において試験片に垂直方向へ30%の伸張を加え、シーリング材の層とプライマー組成物の層との間に剥離が無かったものを初期接着性が優れるとして「○」と評価し、一方、剥離が有ったものを初期接着性が劣るとして「×」と評価した。
【0051】
<耐候性の評価>
50mm×50mm、厚さ3mmの陽極酸化処理を施したアルミニウム基板を用意した。そして、この基板の表面へ実施例および比較例の各々におけるプライマー組成物を塗布し、23±2℃で72時間養生して硬化させ、試験片を得た。
次に、得られた各試験片について、JIS A 1415 WS−aに準拠し、サンシャインカーボンアーク灯を用いて100時間照射した。その結果、黄変しなかったものを耐候性が優れるとして「○」と評価し、一方、黄変したものを耐候性が劣るとして「×」と評価した。
【0052】
<耐水接着性>
50mm×50mm、厚さ3mmの陽極酸化処理を施したアルミニウム基板を用意した。この基板の表面へ、実施例および比較例の各々におけるプライマー組成物を塗布し、23℃、相対湿度(RH):50%の条件下、30分間放置して硬化させた後、さらに変成シリコーン系シーリング材(商品名:スーパーII、横浜ゴム社製)を3mm厚に塗布して試験片を得た。
次に、得られた試験片を20℃で72時間養生し、さらに50℃で168時間養生した後、50℃の温水に168時間浸漬した。
次に、シーリング材の層をナイフでカットし、カット部分を手で摘んで引張り、その剥離状態を観察(ナイフカットによる手剥離試験)し、シーリング材の層とプライマー組成物の層との間に剥離が無かったものを耐水接着性が優れるとして「○」と評価し、一方、剥離が有ったものを耐水接着性が劣るとして「×」と評価した。
【0053】
第1表に示されている各成分は、以下のとおりである。
・シロキサン架橋型アクリルシリコン1:ゼムラック、数平均分子量:15,000、カネカ社製
・シロキサン架橋型アクリルシリコン2:ゼムラックYC−4383、数平均分子量:20,000、カネカ社製
・塩化ゴム:ペルグートS170、バイエル社製
・シランカップリング剤:メルカプトシラン、KBM−803、信越化学工業社製
・多官能イソシアネート:HDI/TDIイソシアヌレートL、デスモジュール HL BA、住化バイエルウレタン社製
・触媒:ジブチル錫オキサイド、MS−CAT02、日本化学産業社製
・溶剤:酢酸エチル、昭和電工社製
【0054】
【表1】
【0055】
実施例1〜6のプライマー組成物は、いずれも本発明の組成物に該当する。これらの初期接着性、耐候性および耐水接着性は、いずれも良好であった。
これに対して比較例1〜3は(A)シロキサン架橋型アクリルシリコンを含まず、代わりに(X)塩化ゴムを含むものである。この場合、初期接着性および耐候性が不良であった。
比較例4は(A)シロキサン架橋型アクリルシリコンを含まないものである。この場合、接着性が不良であった。
比較例5は(A)シロキサン架橋型アクリルシリコンの含有率が高く、本発明の組成物には該当しない。この場合、接着性が不良であった。
比較例6は(B)シランカップリング剤を含まないものであり、比較例7は(C)多官能イソシアネートを含まないものであり、比較例8は(E)触媒を含まないものである。これらの場合、初期接着性および耐水接着性が不良であった。