(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態におけるサポートアセンブリを含む鍵盤装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率(各構成間の比率、縦横高さ方向の比率等)は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
【0010】
[第1の実施形態]
〈鍵盤装置1の構成〉
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る鍵盤装置の概要を説明する。
図1は、鍵盤装置1における鍵、サポートアセンブリ及びハンマアセンブリの構成を示す。本実施形態に係る鍵盤装置1は、例えば、電子ピアノのアクション機構として適用することが可能である。この電子ピアノは、鍵の操作時にグランドピアノに近いタッチ感を得るために、グランドピアノが備えているサポートアセンブリに近い構成を備えている。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る鍵盤装置1の機械構成を示す側面図である。本発明の一実施形態に係る鍵盤装置1は、複数の鍵110(例えば88鍵)および鍵110の各々に対応したアクション機構を備える。アクション機構は、サポートアセンブリ20、ハンマアセンブリ30を備える。なお、
図1では、鍵110が白鍵である場合を示しているが、黒鍵であっても同様である。また、以下の説明において、演奏者手前側、演奏者奥側、上方、下方、側方等の向きを表す用語は、鍵盤装置を演奏者側から見た場合の向きとして定義される。例えば、
図1の例では、サポートアセンブリ20は、鍵110から見て演奏者奥側に配置され、かつ上方に配置されている。側方は、鍵110が配列される方向に対応する。
【0012】
鍵110は、バランスレール910によって回動可能に支持されている。鍵110は、
図1に示すレスト位置からエンド位置までの範囲で所定のストロークで回動する。ここで、「レスト位置」とは押下されていない状態の鍵位置であり、「エンド位置」とは鍵を押下しきった状態の鍵位置をいう。鍵110は、キャプスタンスクリュー120を備えている。サポートアセンブリ20は、サポートレール920に設けられる支持部材290によって回動可能に支持され、キャプスタンスクリュー120上に載置されている。サポートアセンブリ20の回動はレギュレーティング部360により規制される。また、サポートアセンブリ20にはジャック250が回動可能に設けられている。
【0013】
サポートレール920は、鍵110が配列される側方に沿って伸長する長手部材である。サポートレール920には、サポート210を支持する支持部材290が設けられる。支持部材290は、個別部品としてサポートレール920に取り付けられてもよいし、サポートレール920に一体成形されていてもよい。なお、サポートレール920は、サポートアセンブリ20の回動の基準となるフレームの一例であり、サポートを回動自在に支持できればよく、その形態は本実施形態の構造に限られない。
【0014】
ハンマアセンブリ30は、シャンクレール930及びシャンクフレンジ390と、これらに対して回動可能に設けられるハンマ320、ハンマシャンク310及びハンマローラ315を含む。シャンクフレンジ390は、シャンクレール930に固定されている。ハンマシャンク310は、シャンクフレンジ390に対して回動可能に接続されている。ハンマシャンク310は、ハンマローラ315を備えていてもよく、これを介してサポートアセンブリ20上に載置されている。ハンマ320は、ハンマシャンク310の端部に固定されている。ハンマストッパ410は、ハンマストッパレール940に固定されて、押鍵によりハンマシャンク310が回動するとき、その回動軌道上に配置されている。
【0015】
なお、
図1は、ハンマアセンブリ30の構成部材として、ハンマ320、ハンマシャンク310及びハンマローラ315を例示するが、本発明はこれに限定されず様々な態様をとることができる。すなわち、シャンクレールに相当する部材に対して回動自在なハンマユニットであればよく、ハンマアセンブリ30はこのような態様に限定されない。例えば、ハンマユニットとして、ハンマシャンク310とハンマローラ315が部材として一体に形成されていてもよい。すなわち、ハンマローラ315に相当する部材がハンマシャンク310の構造に含まれていてもよい。或いは、ハンマローラ315に相当する部材がジャック250の側に設けられていてもよい。また、シャンクレール930も、上述の態様に限定されず、ハンマアセンブリ30を回動自在に支持できればよい。例えば、レール状の形態でなくてもよい。いずれにしても、ハンマアセンブリ30は、固定部と、後述されるようにジャック250の作用を受けて回動する回動部を含んで構成される。
【0016】
ハンマアセンブリ30は、ハンマ320及びハンマシャンク310が、シャンクフレンジ390で支持される一端を中心として回動する。本実施形態に係る鍵盤装置1は、ハンマシャンク310の回動軌道上に、ハンマシャンクストッパ325が設けられる。ハンマシャンクストッパ325は、ハンマシャンク310の回動軌道上に設けられることにより、ハンマシャンク310の回動範囲を規制する。本実施形態において、ハンマシャンクストッパ325は、サポートレール920によって支持される。サポートレール920は固定部であるので、ハンマシャンクストッパ325の位置はこれにより画定され、鍵110が操作されてサポートアセンブリ20及びハンマアセンブリ30が動作してもその影響を受けず、ハンマシャンク310と確実に当接する位置に配置される。
【0017】
センサ510は、ハンマアセンブリ30の動作を検出する。
図1で例示されるセンサ510は、ハンマシャンク310の位置および移動速度(特にハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突する直前の速度)を測定するためのセンサである。センサ510は、センサレール950に固定されている。この例では、センサ510はフォトインタラプタである。ハンマシャンク310に固定された遮蔽板520がフォトインタラプタの光軸を遮蔽する量に応じて、センサ510からの出力値が変化する。この出力値に基づいて、ハンマシャンク310の位置および移動速度を測定することができる。なお、センサ510に代えて、またはセンサ510と共に、鍵110の操作状態を測定するためのセンサが設けられてもよい。
【0018】
上述したサポートレール920、シャンクレール930、ハンマストッパレール940およびセンサレール950は、ブラケット900に支持されている。すなわち、
図1で示す鍵盤装置1において、シャンクフレンジ390及びこれを固定するシャンクレール930、サポートレール920は、ブラケット900で固定され、これらの部材が固定部であるのに対し、ハンマアセンブリ30及びサポートアセンブリ20は、鍵110の押下により回動する可動部となっている。なお、この構造は、本発明を実施するうえでの一形態であり、これらの構造に限定されるものではない。
【0019】
〈サポートレールとサポートアセンブリの構成〉
図2は、本発明の一実施形態に係るサポートレールとサポートアセンブリの構成を示す側面図である。サポートアセンブリ20は、支持部材290を介してサポートレール920に支持される。サポートアセンブリ20は、サポート210、レペティションレバー240、ジャック250、ねじりコイルスプリング280を含む。
【0020】
サポート210とレペティションレバー240とは、可撓部220を介して結合している。可撓部220によって、レペティションレバー240は、サポート210に対して回動可能に支持される。サポートアセンブリ20のうち、ねじりコイルスプリング280および他の部材と衝突する部分に設けられた緩衝材等(不織布、弾性体等)以外は、射出成形などによって製造された樹脂製の構造体であってもよい。この例では、サポート210およびレペティションレバー240は一体形成されている。なお、サポート210およびレペティションレバー240を個別の部品として形成し、それらを接着または接合させてもよい。
【0021】
サポート210は一端に貫通孔2109が形成され、他端側にジャック支持部2105が形成されている。サポート210は、貫通孔2109とジャック支持部2105との間において、下方に突出するサポートヒール212および上方に突出するスプリング支持部218を備える。
【0022】
サポートヒール212は、その下面において、上述したキャプスタンスクリュー120と接触する。スプリング支持部218は、ねじりコイルスプリング280を支持する。ジャック支持部2105は、ジャック250を回動可能に支持する。そのため、ジャック支持部2105はジャック250の回動中心となる。
【0023】
サポート210は、一端側に設けられた貫通孔2109により、サポートレール920に設けられる支持部材290と連結される。
図3は、サポート210と支持部材290との連結部分の斜視図を示す。支持部材290は、サポートレール920に設けられている。サポート210の一端は、二股に分かれており、この二股部211が支持部材290を挟むように設けられる。サポート210と支持部材290とはシャフト2902によって連結される。
図4Aは、サポート210と支持部材290の連結部分の平面図を示す。支持部材290には、貫通孔2901が設けられる。支持部材290の貫通孔2901は、サポート210の貫通孔2109と整合する位置に設けられる。貫通孔2901と貫通孔2109とにシャフト2902が挿入されることにより、サポート210はサポートレール920に対して回動自在に連結される。サポートレール920が鍵110の配列に沿って側方に伸長する場合、それぞれの鍵110に対応するサポート210及び支持部材290における貫通孔2109と貫通孔2901を連通するシャフト2902を用いることにより、1本のシャフトで複数のサポートを支持することができる。
【0024】
支持部材290は、サポートレール920一面から突出し、サポート210の二股部211に挟まれる板状の形状を有している。
図4Aは、支持部材290が、サポート210の二股部211に対応して、2片の構造体から形成される態様を示すが、本発明はこれに限定されず、二股部211に挟まれる1片の構造体であってもよい。また、
図4Bで示すように、サポート210の二股部211の一方に貫通孔2109が設けられ、支持部材の貫通孔2901とピン2903により連結されていてもよい。いずれの場合でも、サポート210の一端が、支持部材290を介してサポートレール920に対して回動可能に配置される。これによって、貫通孔2109は、サポート210の回動中心となる。
【0025】
サポートレール920の形状は任意であるが、コの字型やL字型の断面形状を有していることが好ましい。また、サポートレール920は金属製又は樹脂製であってもよい。サポートレール920が樹脂製であると軽量化を図ることができる。
図4AはL字型の断面形状を例示している。サポートレール920がコの字型やL字型の断面形状を有することによって、長手方向に作用する曲げモーメントに対する剛直性を高めることができる。また、支持部材290は、サポートレール920に対して、別部品として装着される態様の他、サポートレール920と一体形成されていてもよい。サポートレール920の複数のサポート210を連結する場合、支持部材290がサポートレール920と一体形成されていることで、鍵盤装置1を構成するための部品点数を削減することができる。
【0026】
図2を再び参照すると、貫通孔2109(サポート210の回動中心)とジャック支持部2105(ジャック250の回動中心)との間には、サポートヒール212よりジャック支持部2105側において空間が形成される。ジャック支持部2105がサポート210から上方に突出する。また、サポート210の端部には、ストッパ216が結合している。サポートヒール212は、サポート210の下方に配置されている。
【0027】
レペティションレバー240には、スプリング接触部242、および延設部244が結合されている。スプリング接触部242および延設部244はレペティションレバー240からサポート210側へ延びている。スプリング接触部242は、ねじりコイルスプリング280の第1アーム2802と接触する。レペティションレバー240および延設部244は、ジャック250の両側面の側から挟み込む2枚の板状の部材を含む。この例では、この2枚の板状の部材によって挟まれた空間の少なくとも一部において、延設部244とジャック250とが摺接している。
【0028】
延設部244は、内側部2441、外側部2442、結合部2443およびストッパ接触部2444を含む。内側部2441は、レペティションレバー240においてジャック大2502よりも演奏者奥側(可撓部220側)に結合されている。内側部2441は、ジャック大2502を挟み込んで交差し、ジャック大2502よりも演奏者手前側(可撓部220とは反対側)まで延在している。内側部2441は、ジャック大2502を挟み込む部分において、ジャック大2502側に突出する線形状の凸部を備えていてもよい。
【0029】
外側部2442は、レペティションレバー240においてジャック250(ジャック大2502)よりも演奏者手前側(可撓部220とは反対側)に結合されている。内側部2441と外側部2442とは、結合部2443において結合されている。結合部2443は、ジャック小2504を挟み込んでいる。ストッパ接触部2444は、結合部2443に結合し、ストッパ216に対してストッパ216の下方から接触する。これによれば、ストッパ216はレペティションレバー240とサポート210とが拡がる方向(上方)へのレペティションレバー240の回動範囲を規制する。ガイド部215は、サポート210からジャック250の一部を挟み込むように上方に突出する一対の部材を備える。
【0030】
ジャック250は、ジャック大2502、ジャック小2504および突出部2508を備える。ジャック250は、サポート210に対して回動可能に配置される。ジャック大2502とジャック小2504との間において、ジャック支持部2105に回動可能に支持されるためのサポート接続部2505が形成されている。サポート接続部2505は、ジャック支持部2105の一部を囲む形状であり、ジャック250の回動範囲を規制する。また、サポート接続部2505の形状とその素材の弾性変形により、ジャック250は、ジャック支持部2105の上方から嵌めることができる。突出部2508は、ジャック大2502からジャック小2504とは反対側に突出し、ジャック250と共に回動する。突出部2508は、その側面にスプリング接触部2562を備える。スプリング接触部2562は、ねじりコイルスプリング280の第2アーム2804と接触する。
【0031】
図2において、ねじりコイルスプリング280は、スプリング支持部218を支点とし、第1アーム2802がスプリング接触部242と接触し、第2アーム2804がスプリング接触部2562と接触する。第1アーム2802は、レペティションレバー240の演奏者側を上方(サポート210から離れる方向)に移動するように、スプリング接触部242を介してレペティションレバー240に回動力を付与する弾性体として機能する。第2アーム2804は、突出部2508が下方(サポート210側)に移動するように、スプリング接触部2562を介してジャック250に回動力を付与する弾性体として機能する。
【0032】
このような構成を有するサポートアセンブリ20は、サポートレール920によって支持される。サポートレール920は、鍵110が配列する方向に伸長していることで、複数のサポートアセンブリ20を支持することができる。
図5は、サポートレール920により複数のサポートアセンブリ20が支持されている態様を示す。複数のサポートアセンブリ20のそれぞれは、
図4A又は
図4Bで示す形態の支持部材290によって支持される。例えば、
図4Aで示すように、サポート210の貫通孔2109と、支持部材290の貫通孔2901を連通するシャフト2902を用いることにより、1本のシャフト2902で複数のサポートアセンブリ20を支持することが可能となる。
【0033】
図5は、サポートレール920が伸長する方向に沿って、ハンマシャンクストッパ325が設けられている。例えば、サポートレール920がL字型の断面形状を有する場合、ハンマシャンクストッパ325は、ハンマシャンク310の回動半径上の配置されるように、L字の上部に設けられる。
図5では図示されないが、ハンマアセンブリ30は、サポートアセンブリ20に対応して設けられる。すなわち、
図5は複数のハンマアセンブリ30に対して、ハンマシャンクストッパ325が一体で設けられている。例えば、ハンマシャンクストッパ325は、1オクターブを構成する複数のハンマアセンブリごとに共有されるように設けることができる。このように、ハンマシャンクストッパ325を複数のハンマアセンブリ30に対して一体化することで、部品点数を削減することができる。また、ハンマシャンク310とハンマシャンクストッパ325の位置関係は、サポートレール920の形状によって画定されるため、相互の位置調整が簡略化される。
【0034】
〈鍵盤装置の動作〉
鍵110がレスト位置にある状態からエンド位置に押下された場合における、鍵盤装置1の動作を、ハンマアセンブリ30を中心に説明する。
【0035】
図6A及び
図6Bは、本発明の一実施形態に係るサポートアセンブリ20の動きを説明するための側面図を示す。
図6Aは、鍵110が押下される状態を示す。鍵110がエンド位置まで押下されると、キャプスタンスクリュー120がサポートヒール212を押し上げて、貫通孔2109の軸を回動中心としてサポート210を上方に回動させる。この動作によってジャック250がハンマアセンブリ30に作用して、ハンマアセンブリ30を回動させる。すなわち、ハンマアセンブリ30は、押鍵により、ハンマシャンク310がジャック250から、直接または他の部材を介して作用を受けて動作する。ジャック250の作用を受けたハンマシャンク310はハンマストッパ410に衝突する。なお、一般的なグランドピアノである場合には、この衝突は、ハンマによる打弦動作に相当する。
【0036】
ハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突する直前に、ジャック小2504がレギュレーティング部360に当接し、上方への回動が規制されつつ、さらにサポート210が上昇する。レギュレーティング部360による上方への回動の規制とサポート210の上昇によって、ジャック大2502は、ハンマローラ315から外れるように回動する。レペティションレバー240は、レギュレーティング部360により上方への回動が規制されてサポート210に近づくように変位する。その後、鍵110をレスト位置に戻していくと、レペティションレバー240によってハンマローラ315が支えられ、ハンマローラ315の下方にジャック大2502が戻る。ハンマストッパ410に衝突したハンマシャンク310は、ジャック大2502が外れると共に、下方に回動する。この回動半径上にはハンマシャンクストッパ325が設けられていることにより、回動が規制され、レスト位置を超えて回動してしまうのを防ぐことができる。このとき、ハンマシャンクストッパ325は、ハンマシャンク310の衝突による衝撃を吸収し、雑音の発生を防ぐ。このため、ハンマシャンクストッパ325は、軟質材であることが好ましく、例えば、フェルト材が用いられる。
【0037】
ハンマシャンクストッパ325は、サポートレール920に設けられることにより、複数の可動部が含まれるアクション機構の中で安定的に支持される。そのため、鍵110が連打されハンマアセンブリ30がこれに連動して回動しても、ハンマシャンク310による衝撃を効果的に吸収することができる。
【0038】
〈鍵盤装置の発音機構〉
鍵盤装置1は、上述したように電子ピアノへの適用例であって、鍵110の操作をセンサ510によって測定し、測定結果に応じた音を出力する。
【0039】
図7は、本発明の一実施形態における鍵盤装置の発音機構の構成を示すブロック図である。鍵盤装置1の発音機構50は、センサ510(88の鍵110に対応したセンサ510−1、510−2、・・・510−88)、信号変換部550、音源部560および出力部570を備える。信号変換部550は、センサ510から出力された電気信号を取得し、各鍵110における操作状態に応じた操作信号を生成して出力する。この例では、操作信号はMIDI形式の信号である。そのため、押鍵操作によってハンマシャンク310がハンマストッパ410に衝突したタイミングに対応して、信号変換部550はノートオンを出力する。このとき、88個の鍵110のいずれが操作されたかを示すキーナンバ、および衝突する直前の速度に対応するベロシティについてもノートオンに対応付けて出力される。一方、離鍵操作がされると、グランドピアノであればダンパによって弦の振動が止められるタイミングに対応して、信号変換部550はキーナンバとノートオフとを対応付けて出力する。信号変換部550には、ペダル等の他の操作に応じた信号が入力され、操作信号に反映されてもよい。音源部560は、信号変換部550から出力された操作信号に基づいて、音信号を生成する。出力部570は、音源部560によって生成された音信号を出力するスピーカまたは端子である。
【0040】
[第2の実施形態]
〈鍵盤装置の構成〉
図8を参照して、本発明の第2実施形態に係る鍵盤装置2の概要を説明する。
図8は、鍵盤装置2における鍵、サポートアセンブリ60及びハンマアセンブリ30の構成を示す。本実施形態に係る鍵盤装置2は、第1実施形態と同様に、電子ピアノのアクション機構として適用することが可能である。鍵盤装置2は鍵盤装置1と類似しているが、サポートアセンブリの構造が相違している。そのため、サポートレール960の構成も相違する部分がある。本実施形態では、第1実施形態と相違する部分を中心に説明し、共通する部分については説明を省略する。
【0041】
図8は、本発明の第2実施形態に係る鍵盤装置2の構成を示す側面図である。サポートアセンブリ60はサポートレール960に固定されている。サポートレール960はブラケット900に支持されている。本実施形態においてサポートアセンブリ60は、サポート610がサポートレール960に回動可能に支持される点についてはサポートアセンブリ20と同様であるが、その支持方法が後述するように異なっている。なお、サポートレール960は、サポートアセンブリ60の回動の基準となるフレームの一例である。サポートレール960は一つの部材で形成されていてもよいし、複数の部材で形成されていてもよい。また、サポートレール960は金属製又は樹脂製であればよい。サポートレール960を樹脂製とすることで軽量化を図ることができる。サポートレール960は、鍵110の配列方向に長手を有するレール状の形態を有していてもよいし、鍵110毎に独立した部材であってもよい。なお、本実施形態においてもハンマシャンク310の回動軌道上に、ハンマシャンクストッパ325が設けられる。例えば、ハンマシャンクストッパ325は、サポートレール960に設けられている。
【0042】
〈サポートアセンブリ60の構成〉
図9は、本発明の第2実施形態に係るサポートアセンブリ60の構成を示す側面図である。サポートアセンブリ60は、サポート610、レペティションレバー640、ジャック650、動作規制部660、およびコイルスプリング682、684を備える。レペティションレバー640は、レペティションレバーヒンジ620を介してサポート610に回動可能に接続されている。この例では、サポート610とレペティションレバーヒンジ620とは、レペティションレバーヒンジ620に結合した固定部648を介して固定具674によって固定されている。サポートアセンブリ60のうち、コイルスプリング682、684、他の部材と衝突する部分に設けられた緩衝材等(不織布、弾性体等)、および固定具以外は、射出成形などによって製造された樹脂製の構造体である。
【0043】
サポート610は、サポートヒール612、フレーム固定部632、可撓部634、および台座638を有する。サポート610は、フレーム固定部632が、サポートレール960と支持部材635に挟まれて支持される。サポートレール960には、ハンマシャンクストッパ325が設けられる。
図9は、ハンマシャンクストッパ325が支持部材635の上部に設けられている。支持部材635は、サポートレール960に締結具で固定されるので、ハンマシャンクストッパ325は実質的にサポートレール960によって支持されているとみなすことができる。なお、サポートレール960の形状は任意であるが、コの字型やL字型の断面形状を有していることが好ましい。サポートレール960がコの字型やL字型の断面形状を有することによって、長手方向に作用する曲げモーメントに対する剛直性を高めることができる。
【0044】
サポート610とフレーム固定部632との間に設けられる可撓部634は、可撓性(弾性)を有している。可撓部634はサポート610およびフレーム固定部632と一体形成されており、サポートアセンブリ60の回動方向または可撓部634の板厚方向において、少なくともサポート610よりも板厚が薄くされている。なお、
図9では、サポート610、フレーム固定部632、および可撓部634が一体形成された構造を例示すが、この構造に限定されない。例えば、可撓部634が固定具、接着剤、または溶接等によってサポート610およびフレーム固定部632の両方または一方に固定されていてもよい。ここで、可撓部634はサポートアセンブリ60の回動中心となる。
【0045】
台座638は、サポート610のレペティションレバー640側に接続され、台座638の上面(レペティションレバー640側)には、台座638およびレペティションレバー640に作用するコイルスプリング682と、ジャック大6502が台座638に近づく方向へのジャック650の回動を規制するジャック大ストッパ6382と、が設けられている。コイルスプリング682は台座638およびレペティションレバー640が互いに離れる方向に台座638およびレペティションレバー640に作用し、レペティションレバー640に回動力を付与する弾性体として機能する圧縮スプリングである。ジャック大ストッパ6382とジャック大6502との間には、ジャック大ストッパ6382とジャック大6502とが接触することによって発生する雑音を低減するための緩衝材等(不織布、弾性体等)が設けられていてもよい。
【0046】
レペティションレバー640は、レペティションレバーヒンジ620によって、サポート610に対して回動可能に支持されている。サポート610は、ジャック650を支持するジャック支持部6105がフレーム固定部632とは反対側の領域に設けられる。台座638は、サポート610のレペティションレバー640側に接続されている。台座638とレペティションレバー640との間には、コイルスプリング682が配置されている。コイルスプリング682は、台座638とレペティションレバー640とが互いに離れる方向にレペティションレバー640に回動力を与える圧縮スプリングである。
【0047】
レペティションレバー640は、ジャック大6502に対してレペティションレバーヒンジ620とは反対側において、延設部644が結合されている。延設部644はスリット6442、6444を有している。
【0048】
ジャック650は、ジャック大6502およびジャック小6504を備える。ジャック650は、ジャック支持部6105においてサポート610に対して回動可能に接続されている。ジャック大6502とサポート610との間には、コイルスプリング684が配置されている。コイルスプリング684は、ジャック大6502が台座638に近づくようにジャック650に対して回動力を与える引張スプリングである。ジャック大6502が台座638と接触することによって、コイルスプリング680によるジャック650の回動範囲が規制される。
【0049】
動作規制部660は、サポート610のジャック支持部6105側から上方(レペティションレバー640側)に結合されている。動作規制部660は、サポート610から上方に突出する支持部662、ストッパ664およびガイド666を備える。ストッパ664およびガイド666は、支持部662から演奏者手前側に突出している。ストッパ664は延設部644に設けられたスリット6442を貫通している。ガイド666は延設部644に設けられたスリット6444を貫通している。
【0050】
図10は、サポート610とサポートレール960の取り付け部の詳細を斜視図で示す。また、
図11は、サポート610、サポートレール960、支持部材635及びハンマシャンクストッパ325の組み立て図を示す。
図10及び
図11は、複数のサポート(サポート610a及びサポート610b)がサポートレール960に取り付けられる態様を示す。サポート610a及びサポート610bは、それぞれのフレーム固定部632a及びフレーム固定部632bが重ね合わされて、サポートレール960に固定される。また、支持部材635は、締結具によってサポートレール960に取り付けられる。サポート610a及びサポート610bは、フレーム固定部632a及びフレーム固定部632bの上部に支持部材635が配置され、サポートレール960の間に挟み込まれることで固定される。なお、サポート610a及びサポート610bは、フレーム固定部632aフレーム固定部632bを重ね会わせた上でさらに締結具によってサポートレール960に固定されてもよい。
【0051】
サポートレール960は鍵が配列する方向に伸長しており、複数のサポートアセンブリ60を支持する。支持部材635は、サポートレール960に対応して矩形状の形態を有することで、複数のサポートアセンブリ60を挟み込む。このように、複数のサポートアセンブリ60は、支持部材635を用いて、サポートレール960に挿着される。支持部材635は、両端を締結具によってサポートレール960に取り付けられることで、複数のサポートアセンブリ60を安定的に保持することができる。
【0052】
図10は、ハンマシャンクストッパ325が、サポートレール960に沿って設けられる態様を示す。ハンマシャンクストッパ325は、支持部材635に取り付けられるが、支持部材635はサポートレール960に固定されるので、実質的にはサポートレール960によって支持されているとみなすことができる。なお、本実施形態は、このような形態に限定されず、サポートレール960の一部が、支持部材635の上方に延長され、
図1で示すように、サポートレール960の一端にハンマシャンクストッパ325が設けられてもよい。
図10では図示されないが、ハンマアセンブリ30は、サポートアセンブリ60に対応して設けられるので、複数のハンマアセンブリ30に対してハンマシャンクストッパ325が一体で設けられる。例えば、ハンマシャンクストッパ325は、1オクターブを構成する複数のハンマアセンブリごとに共有されるように設けることができる。ハンマシャンクストッパ325を複数のハンマアセンブリ30に対して一体化することで、部品点数を削減することができる。また、ハンマシャンク310とハンマシャンクストッパ325の位置関係は、サポートレール920によって画定されるため、相互の位置調整が簡略化される。
【0053】
なお、押鍵により、サポートアセンブリ60がハンマアセンブリ30に作用して、ハンマシャンク310ないしハンマ320が動作する仕組みは、第1実施形態におけるものと同様である。ハンマシャンクストッパ325が、ハンマシャンク310の回動軌道上にあることで、ハンマシャンク310の回動を規制して、ハンマアセンブリ30の動作を安定化させることができる。